IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リスパック株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-包装用容器 図1
  • 特開-包装用容器 図2
  • 特開-包装用容器 図3
  • 特開-包装用容器 図4
  • 特開-包装用容器 図5
  • 特開-包装用容器 図6
  • 特開-包装用容器 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043921
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】包装用容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20240326BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240326BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240326BHJP
   B65D 1/00 20060101ALI20240326BHJP
   B65D 1/34 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B27/00 H
B32B27/36
B65D1/00 111
B65D1/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149163
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】396000422
【氏名又は名称】リスパック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】浅野 悦男
(72)【発明者】
【氏名】竹山 陽一
【テーマコード(参考)】
3E033
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E033AA10
3E033BA17
3E033BB08
3E033CA03
3E033DD01
3E033FA04
3E086AB01
3E086AD05
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA33
3E086BB22
3E086BB85
3E086CA01
4F100AK42A
4F100AK42B
4F100AT00
4F100BA02
4F100BA15
4F100BA16
4F100DA05
4F100EH202
4F100EJ382
4F100GB16
4F100JK01
4F100JN01
4F100JN08
(57)【要約】
【課題】樹脂シートによって形成される包装用容器において、樹脂シートの透明性を良くしつつ、樹脂シートの剛性を高めることができる。
【解決手段】包装用容器10は、樹脂シート20によって形成された包装用容器である。樹脂シート20は、使用済みポリエステルからなる再生ポリエステルを含む再生ポリエステル層21と、再生ポリエステル層21の片側または両側に積層され、再生ポリエステルを含まないバージンポリエステルを含むバージンポリエステル層22とを有し、厚みが0.3mm以下であり、かつ、二軸延伸させて形成されたシートである。再生ポリエステルの固有粘度IV値が0.60dl/g以上かつ0.85dl/g以下である。バージンポリエステルの固有粘度IV値が0.58dl/g以上かつ0.80dl/g以下である。包装用容器10のヘーズ値が3%未満である。包装用容器10の全光線透過率が85%以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートによって形成された包装用容器であって、
前記樹脂シートは、
使用済みポリエステルからなる再生ポリエステルを含む再生ポリエステル層と、
前記再生ポリエステル層の片側または両側に積層され、前記再生ポリエステルを含まないバージンポリエステルを含むバージンポリエステル層と、
を有し、厚みが0.3mm以下であり、かつ、二軸延伸させて形成されたシートであり、
前記再生ポリエステルの固有粘度IV値が0.60dl/g以上かつ0.85dl/g以下であり、
前記バージンポリエステルの固有粘度IV値が0.58dl/g以上かつ0.80dl/g以下であり、
前記樹脂シートによって形成された容器のヘーズ値が3%未満であり、
前記樹脂シートによって形成された容器の全光線透過率が85%以上である、包装用容器。
【請求項2】
前記樹脂シートの全体厚みに対する前記再生ポリエステル層の厚みの割合は、60%以上かつ98%以下である、請求項1に記載された包装用容器。
【請求項3】
前記再生ポリエステル層に含まれる前記再生ポリエステルは、80質量%以上である、請求項1または2に記載された包装用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題を背景に、使用済みプラスチック製品の再利用が注目されている。使用済みプラスチック製品の中でもペットボトルなどのポリエステル品の回収は、積極的に行われている。
【0003】
例えば特許文献1には、食品用の容器を回収して再利用することで得られる包装用容器が開示されている。特許文献1に開示された包装用容器は、ポリエステル層と再生ポリエステル層が積層された樹脂シートによって形成されている。ポリエステル層は、未利用の(言い換えると、再利用されていない)ポリエステルによって形成された層である。再生ポリエステル層は、使用済みのポリエステル製容器を再利用することで得られる層である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-278739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、包装用容器において剛性を高めるために、樹脂シートに対して二軸延伸させることがあり得る。しかしながら、本願発明者は、樹脂シートに対して二軸延伸させることで、二軸延伸させない樹脂シートと比較して、透明性が悪くなることがあり得るという知見を得ている。本願発明者は、透明性を良くしつつ、樹脂シートの剛性を高めたいと考えている。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、樹脂シートによって形成される包装用容器において、樹脂シートの透明性を良くしつつ、樹脂シートの剛性を高めることができる包装用容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る包装用容器は、樹脂シートによって形成された包装用容器である。前記樹脂シートは、使用済みポリエステルからなる再生ポリエステルを含む再生ポリエステル層と、前記再生ポリエステル層の片側または両側に積層され、前記再生ポリエステルを含まないバージンポリエステルを含むバージンポリエステル層と、を有している。前記樹脂シートは、厚みが0.3mm以下であり、かつ、二軸延伸させて形成されたシートである。前記再生ポリエステルの固有粘度IV値が0.60dl/g以上かつ0.85dl/g以下である。前記バージンポリエステルの固有粘度IV値が0.58dl/g以上かつ0.80dl/g以下である。前記樹脂シートによって形成された容器のヘーズ値が3%未満である。前記樹脂シートによって形成された容器の全光線透過率が85%以上である。
【0008】
上記包装用容器によれば、樹脂シートを二軸延伸させることで、樹脂シートを薄肉化して剛性を高めることができる。本願発明者は、樹脂シートを二軸延伸させることで、二軸延伸させない樹脂シートと比較して、透明性が悪くなるという知見を得ている。しかしながら、樹脂シートの厚みが0.3mm以下になるように樹脂シートを二軸延伸させることで、包装用容器のヘーズ値を3%未満にして、かつ、包装用容器の全光線透過率を85%以上にすることができ、透明性を良くすることができる。したがって、厚みが0.3mm以下になるように樹脂シートを二軸延伸させることで、樹脂シートの透明性を良くしつつ、樹脂シートの剛性を高めることができる。
【0009】
本発明の好ましい一態様によれば、前記樹脂シートの全体厚みに対する前記再生ポリエステル層の厚みの割合は、60%以上かつ98%以下である。
【0010】
上記態様によれば、再生ポリエステル層の厚みの割合を、樹脂シートの全体厚みに対して60%以上かつ98%以下にすることで、樹脂シートによって形成された包装用容器を落下させた場合であっても、より割れ難くすることができるため、包装用容器の剛性を高めることができる。
【0011】
本発明の好ましい他の一態様によれば、前記再生ポリエステル層に含まれる前記再生ポリエステルは、80質量%以上である。
【0012】
上記態様によれば、再生ポリエステルを多く使用することができるため、環境負荷の低減に貢献することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、樹脂シートによって形成される包装用容器において、樹脂シートの透明性を良くしつつ、樹脂シートの剛性を高めることができる包装用容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る包装用容器の斜視図である。
図2図1のII-II断面における包装用容器の断面図である。
図3】実施形態に係る樹脂シートの断面図である。
図4】二軸延伸されるMD方向とTD方向を示す樹脂シートの図である。
図5】樹脂シートおよび包装用容器を作製する手順を示すフローチャートである。
図6】押出成形において使用される押出装置を模式的に示した図である。
図7】熱成形において使用される金型およびプラグを模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る包装用容器の実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る包装用容器10の斜視図である。図2は、図1のII-II断面における包装用容器10の断面図である。本実施形態に係る包装用容器10は、例えば食品が収容される容器である。ただし、包装用容器10は、食品が収容される容器に限定されない。図1に示すように、包装用容器10は、樹脂シート20を備え、樹脂シート20によって形成された容器である。包装用容器10は、樹脂シート20によって形成されたものであれば、その種類、用途および形状などは特に限定されるものではない。
【0017】
樹脂シート20は、ポリエステルによって形成されたシートであり、いわゆるポリエステルシートである。例えば樹脂シート20は、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETともいう。)によって形成されている。ただし、樹脂シート20を形成する材料は、PETに限定されず、例えばポリ乳酸(以下、PLAともいう。)であってもよい。PLAは、トウモロコシ、芋、サトウキビ、ビートなどの農産物を原料とする生分解性プラスチックの一種である。
【0018】
図3は、樹脂シート20の断面図である。図3に示すように、樹脂シート20は、複数の層から形成されている。なお、樹脂シート20を構成する層の数は、特に限定されないが、以下では、3つの場合について説明する。
【0019】
本実施形態では、樹脂シート20は、再生ポリエステル層21と、バージンポリエステル層22(ここでは2つのバージンポリエステル層22)とを備えている。樹脂シート20は、再生ポリエステル層21と、バージンポリエステル層22とが積層されたシートである。
【0020】
再生ポリエステル層21は、再生ポリエステルを含む層のことである。再生ポリエステル層21は、再生ポリエステルによって形成された層である。ここで、再生ポリエステルとは、使用済みポリエステルからなるものである。使用済みポリエステルとは、使用済みのポリエステル品から得られるポリエステルのことである。使用済みのポリエステル品は、例えば市場から回収した使用済みのポリエステル品である。ここでは、ポリエステル品とは、例えばPETボトルやPETトレイなどのことをいう。再生ポリエステルとは、使用済みのポリエステル品を回収することで得られるポリエステルであって、再利用されたポリエステルのことである。
【0021】
ここでは、PETボトルなどのポリエステル品のリサイクル方法として、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、および、メカニカルリサイクルなどが挙げられる。マテリアルリサイクルとは、回収されたポリエステル品を粉砕した後にアルカリ洗浄をして繊維などに再利用することである。ケミカルリサイクルとは、回収されたポリエステル品を化学分解して、原料レベルに差し戻して、PETを再合成することである。メカニカルリサイクルは、回収されたポリエステル品に対して、上述のマテリアルリサイクルにおけるアルカリ洗浄をより厳密に行うこと、または、高温で真空乾燥することなどでポリエステル品の汚れを確実に取り除いて再利用することである。ここで、メカニカルリサイクルによって再利用されたポリエステルのことをメカニカルリサイクルポリエステルという。ここでは、再生ポリエステルは、例えばメカニカルリサイクルポリエステルである。
【0022】
なお、再生ポリエステル層21には、再生ポリエステル以外のポリエステル(例えばPET)が含まれていてもよい。ここで、再生ポリエステル以外のポリエステルとして、例えば後述のバージンポリエステルが挙げられる。本実施形態では、再生ポリエステル層21に含まれる再生ポリエステルは、80質量%以上であり、好ましくは85質量%以上であり、特に好ましくは90質量%以上である。
【0023】
本実施形態では、再生ポリエステル層21に含まれる再生ポリエステルの固有粘度IV値は、0.60dl/g以上かつ0.85dl/g以下であり、好ましくは0.62dl/g以上かつ0.83dl/g以下であり、特に好ましくは0.64dl/g以上かつ0.81dl/g以下である。
【0024】
なお、再生ポリエステル層21には、成形性を著しく損なわない範囲において、樹脂シート20や、包装用容器10を作製する際に発生する耳ロス、スケルトンなどの製造工程内ロスを含んでいてもよい。
【0025】
バージンポリエステル層22は、再生ポリエステルを含まない層のことである。バージンポリエステル層22は、いわゆるバージンポリエステルを含む層である。バージンポリエステル層22は、バージンポリエステルによって形成されている。ここで、バージンポリエステルとは、再生ポリエステルを含まないポリエステルのことであり、かつ、未利用の(言い換えると再利用されていない、新材ともいう。)ポリエステルのことである。バージンポリエステル層22は、未利用のポリエステルによって形成された層である。バージンポリエステルとは、市場から回収した使用済みのポリエステル品から得られる再生ポリエステルとは異なるものである。
【0026】
例えばバージンポリエステルは、バイオマス由来のポリエステルを含んでいる。バイオマス由来のポリエステルとして、バイオマス由来のPETが挙げられる。ここで、バイオマス由来のポリエステルとは、トウモロコシ、芋、サトウキビ、ビートなどの植物由来の原料を使用して作製されたポリエステルのことをいう。バイオマス由来のPETとは、上記の植物由来の原料を使用して作製されたPETのことをいい、結晶性ポリエステルである。また、バージンポリエステルは、例えば石油由来のポリエステルを含んでもよい。石油由来のポリエステル(例えばPET)とは、石油を原料としたポリエステルのことをいう。
【0027】
本実施形態では、バージンポリエステル層22に含まれるバージンポリエステルの固有粘度IV値は、0.58dl/g以上かつ0.80dl/g以下であり、好ましくは0.62dl/g以上かつ0.79dl/g以下であり、特に好ましくは0.64dl/g以上かつ0.78dl/g以下である。
【0028】
なお、バージンポリエステル層22には、透明性や機能性を著しく損なわない範囲において、必要に応じてポリエステル(例えばPET)以外の他の成分が含まれていてもよい。当該他の成分の一例として、公知の樹脂シートに使用されている添加剤(例えば難燃材、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、防雲剤、滑剤(例えば滑剤MB(マスターバッチ))、アンチブロッキング剤、流動性改質剤、可塑剤、分散剤、および抗菌剤など)が挙げられる。
【0029】
本実施形態では、図3に示すように、バージンポリエステル層22は、再生ポリエステル層21の両側に積層されている。すなわち、バージンポリエステル層22は、再生ポリエステル層21の幅広な面の両面(図3では、上面および下面)に設けられている。ここでは、バージンポリエステル層22の数は2つである。再生ポリエステル層21は、2つのバージンポリエステル層22によって挟まれている。
【0030】
なお、1つの再生ポリエステル層21は、単層であってもよいし、複数の層(ここでは、再生ポリエステル層)が積層されて形成されてもよい。同様に、1つのバージンポリエステル層22は、単層であってもよいし、複数の層(ここでは、バージンポリエステル層)が積層されて形成されてもよい。
【0031】
本実施形態では、樹脂シート20の全体厚み(言い換えると、包装用容器10の厚み)は、0.3mm以下であり、好ましくは0.25mm以下である。ここで、樹脂シート20の厚みとは、再生ポリエステル層21とバージンポリエステル層22とを合わせた全体の厚みのことである。ここでは、樹脂シート20の再生ポリエステル層21とバージンポリエステル層22のうち、再生ポリエステル層21の方が、厚みが大きい。例えば樹脂シート20の全体厚みに対する、再生ポリエステル層21の厚みの割合は、60%以上かつ98%以下であり、好ましくは70%以上かつ95%以下、特に好ましくは80%以上かつ92%以下である。例えば再生ポリエステル層21とバージンポリエステル層22の厚みの比率は、再生ポリエステル層:バージンポリエステル層=80:20、または、92:8である。2つのバージンポリエステル層22の厚みは、同じであるが、異なっていてもよい。
【0032】
樹脂シート20は、二軸延伸させて形成されたシートである。図4は、二軸延伸されるMD方向とTD方向を示す樹脂シート20の図である。ここでは、図4に示すように、樹脂シート20の長手方向、短手方向を、それぞれMD方向、TD方向と定義する。TD方向は、MD方向に対して垂直な方向である。MD方向とTD方向とは直交している。ここでの二軸延伸とは、樹脂シート20を、MD方向とTD方向に延伸させて、薄肉に形成することをいう。ただし、樹脂シート20に対して二軸延伸させる方向は、MD方向とTD方向に限定されない。
【0033】
樹脂シート20に対する二軸延伸は、同時二軸延伸であってもよいし、逐次二軸延伸であってもよい。同時二軸延伸とは、樹脂シート20を、MD方向とTD方向の両方向に同時に延伸させることをいう。逐次二軸延伸とは、樹脂シート20を、MD方向とTD方向のうちの一方の方向に延伸させ、その後、他方の方向に延伸させることをいう。例えば逐次二軸延伸では、樹脂シート20を、MD方向に延伸させた後に、TD方向に延伸させる、もしくは、TD方向に延伸させた後に、MD方向に延伸させる。
【0034】
本実施形態では、樹脂シート20は、透明性を有している。言い換えると、再生ポリエステル層21およびバージンポリエステル層22は、透明性を有している。樹脂シート20(言い換えると、包装用容器10)のヘーズ値は、3%未満であり、好ましくは2%未満であり、特に好ましくは1.7%未満であり、例えば1.55%未満である。また、樹脂シート20(言い換えると、包装用容器10)の全光線透過率は、85%以上であり、好ましくは86%以上であり、特に好ましくは87%以上であり、例えば88%以上である。
【0035】
本実施形態では、再生ポリエステル層21のヘーズ値は、1.9%以下であり、好ましくは1.8%以下であり、特に好ましくは1.7%以下である。再生ポリエステル層21の全光線透過率は、85%以上であり、好ましくは86%以上であり、特に好ましくは87%以上である。また、本実施形態では、バージンポリエステル層22のヘーズ値は、1.8%以下であり、好ましくは1.7%以下であり、特に好ましくは1.6%以下である。バージンポリエステル層22の全光線透過率は、86%以上であり、好ましくは88%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
【0036】
以上、本実施形態に係る樹脂シート20について説明した。本実施形態では、樹脂シート20を成形することで、包装用容器10が作製される。図1に示すように、包装用容器10は、底壁11と、底壁11から立ち上った周壁12とを備えている。底壁11および周壁12は、樹脂シート20によって形成されている。周壁12は、例えば底壁11の端(例えば周端)から上方に向かって延びている。周壁12は、平面視において底壁11を囲むようにして配置されている。なお、周壁12は、底壁11に対して垂直方向に延びていてもよいし、図2に示すように、底壁11に対して斜めに延びるものであってもよい。例えば周壁12は、底壁11に対して斜め上方に延びるものであってもよい。言い換えると、周壁12は、底壁11から上方に離れるにしたがって、底壁11の外方に向かうように傾斜していてもよい。底壁11および周壁12は、平らな面を有していてもよいし、剛性を高めるために、凸部または凹部(図示せず)が設けられてもよい。ここでは、底壁11と周壁12とに囲まれた空間に、食品などが収容される。
【0037】
本実施形態では、底壁11は、四角形状である。ただし、底壁11の形状は特に限定されず、例えば円形状などであってもよい。包装用容器10の形状も特に限定されるものではない。ここでは、図1に示すように、包装用容器10は、底壁11と周壁12によって容器状に形成されている。周壁12の上縁によって、周壁12に囲まれた開口13が形成されている。開口13は、上方に向かって開口している。
【0038】
なお、包装用容器10は、開口13を開閉自在な蓋(図示せず)を備えていてもよい。蓋は、周壁12の上端に装着されることによって、開口13を閉鎖する。本実施形態に係る包装用容器10は、上下反転させて、蓋として使用されることが可能である。包装用容器10を蓋として使用した場合、底壁11は、天壁となる。周壁12は、当該天壁から下方に延びたものになり、開口13は下方に向かって開口した状態になる。
【0039】
本実施形態では、図2に示すように、包装用容器10は、内層31と、外層32と、中間層33とを備えている。底壁11および周壁12は、内層31と外層32と中間層33とから形成されている。内層31は、包装用容器10を構成する複数の層のうち、最も内側に配置される層である。内層31は、包装用容器10の内周面を構成する層である。内層31は、包装用容器10に食品を収容した状態において、食品が直接触れる層である。外層32は、包装用容器10を構成する複数の層のうち、最も外側に配置される層であり、包装用容器10の外周面を構成する層である。外層32は、例えば利用者が包装用容器10を手で持ったときに、手が直接触れる層である。
【0040】
中間層33は、内層31と外層32との間に配置された層である。図2に示すように、中間層33は、内層31と外層32とによって挟まれている。そのため、中間層33は、食品や利用者が直接触れない層になり得る。なお、内層31、外層32、中間層33は、それぞれ単層であってもよいし、複数の層が積層されて形成された層であってもよい。
【0041】
本実施形態では、包装用容器10において、内層31および外層32は、樹脂シート20のバージンポリエステル層22によって形成されている。中間層33は、樹脂シート20の再生ポリエステル層21によって形成されている。
【0042】
次に、本実施形態に係る樹脂シート20および包装用容器10を作製する手順について説明する。図5は、樹脂シート20および包装用容器10を作製する手順を示すフローチャートである。本実施形態では、図5に示すように、ペレットを用意(ステップS101)し、ペレットに対して押出成形(ステップS103)を行うことで樹脂シート20を作製することができる。そして、樹脂シート20に対して、二軸延伸(ステップS105)と、熱成形(ステップS107)を順に行うことで、包装用容器10を作製することができる。
【0043】
本実施形態では、ステップS101において、ペレットを用意する。ペレットとして、バージンポリエステルによって形成されたバージンペレットと、再生ポリエステルによって形成された再生ペレットとを用意する。再生ペレットは、例えば市場から回収された使用済みのポリエステル系樹脂成型品(言い換えると、使用済みのポリエステル品)から作製される。使用済みのポリエステル品とは、例えば使用済みのPETボトルや、使用済みのPETトレイなどの使用済みPET容器のことである。ここでは、市場から回収された使用済みのポリエステル品を粉砕し、異物を除去し、洗浄し、乾燥させることで、再生ペレットが作製される。
【0044】
次に、ステップS103では、バージンペレットと、再生ペレットを押出成形することで、樹脂シート20を作製する。図6は、押出成形で使用される押出装置50を模式的に示した図である。本実施形態では、押出成形として、図6に示すような押出装置50を使用する。図6に示すように、押出装置50は、第1ホッパー51Aと、第1スクリュー52Aと、第2ホッパー51Bと、第2スクリュー52Bと、フィードブロック58と、合流ダイ53と、冷却ローラ54と、巻取機55とを有している。
【0045】
本実施形態では、第1ホッパー51Aと第1スクリュー52Aは、バージンペレット用(以下、バージン用という。)である。第2ホッパー51Bと第2スクリュー52Bは、再生ペレット用(以下、再生用という。)である。第1ホッパー51Aは、第1スクリュー52Aに接続されており、第1スクリュー52Aの周囲には、第1ヒータ57Aが設けられている。第2ホッパー51Bは、第2スクリュー52Bに接続されており、第2スクリュー52Bの周囲には、第2ヒータ57Bが設けられている。また、第1スクリュー52Aおよび第2スクリュー52Bは、フィードブロック58に接続されている。フィードブロック58は、合流ダイ53に接続されている。
【0046】
押出成形では、まずバージンペレット40Aを第1ホッパー51Aに入れる。第1ホッパー51Aに入れられたバージンペレット40Aは、第1スクリュー52Aに流され、第1ヒータ57Aによって加熱されながら、第1スクリュー52Aによって混ぜ合わされる。第1スクリュー52Aによって混ぜ合わされたバージンペレット40Aは、幅の狭いフィードブロック58に向かって流される。同様に、再生ペレット40Bを第2ホッパー51Bに入れる。第2ホッパー51Bに入れられた再生ペレット40Bは、第2スクリュー52Bに流され、第2ヒータ57Bによって加熱されながら、第2スクリュー52Bによって混ぜ合わされる。第2スクリュー52Aによって混ぜ合わされた再生ペレット40Bは、フィードブロック58に向かって流される。
【0047】
フィードブロック58では、バージンペレット40Aと、再生ペレット40Bとが合流し、合流ダイ53に流される。合流ダイ53では、バージンペレット40Aの層と、再生ペレット40Bの層とになって、フィードブロック58によって押し出されて(ここでは、共押出されて)排出される。ここで、フィードブロック58を通じて合流ダイ53から押し出されたバージンペレット40Aの層が、バージンポリエステル層22(図3参照)になる。フィードブロック58を通じて合流ダイ53から押し出された再生ペレット40Bの層が、再生ポリエステル層21(図3参照)になる。
【0048】
本実施形態では、詳しい図示は省略するが、加熱された状態で、バージンポリエステル層22、再生ポリエステル層21、バージンポリエステル層22の順に重ねられてシート状になって排出される。このとき、バージンポリエステル層22と再生ポリエステル層21とが接着し、樹脂シート20になる。
【0049】
ここでの樹脂シート20は、加熱された状態であるため、図6に示すように、冷却ローラ54を通過することで冷却される。樹脂シート20は、冷却ローラ54によって巻取機55に向かって搬送され、巻取機55によってロール状に巻き取られる。以上の手順によって、樹脂シート20が作製される。
【0050】
次に、図5のステップS105において、ステップS103にて作製された樹脂シート20を二軸延伸させる。上述のように、二軸延伸は、同時二軸延伸であってもよいし、逐次二軸延伸であってもよい。ここでは、図4に示すように、MD方向とTD方向に樹脂シート20を延伸させることで、二軸延伸を行う。本実施形態では、例えば樹脂シート20の全体厚みが0.3mm以下となるように、樹脂シート20を二軸延伸することで薄肉化を図る。
【0051】
次に、図5のステップS107において、二軸延伸された樹脂シート20を熱成形することで、包装用容器10を作製する。ここで、熱成形は、真空成形、圧空成形、または、真空成形と圧空成形の併用とも言い換えられる。図7は、熱成形において使用される金型60およびプラグ65を模式的に示した図である。図7に示すように、熱成形では、金型60とプラグ65が使用される。金型60には、凹部61が形成されている。プラグ65には、金型60の凹部61に挿入される凸部66が形成されている。ここでは、熱成形のとき、凹部61と凸部66が向かい合うように、金型60とプラグ65を離間させた状態で配置する。その後、加熱された樹脂シート20を金型60とプラグ65との間に配置する。このとき、樹脂シート20の2つのバージンポリエステル層22のうちの一方が内層31(図2参照)となり、プラグ65側に位置し、2つのバージンポリエステル層22のうちの他方が外層32(図2参照)となり、金型60側に位置するように、樹脂シート20を配置する。
【0052】
その後、図7の矢印のように、金型60またはプラグ65を移動させて、金型60の凹部61に、プラグ65の凸部66を挿入する。このことによって、樹脂シート20は、凹部61と凸部66との間で、凹部61と凸部66の形状に沿って熱成形されることで、底壁11および周壁12が作製される。そして、熱成形された後の樹脂シート20を適宜カットすることで、包装用容器10が作製される。
【0053】
上述のように、樹脂シート20、および、樹脂シート20によって形成された包装用容器10は、透明性を有している。ところで、本実施形態のような樹脂シート20や、樹脂シート20によって形成された包装用容器10において、様々な要因および影響を基にして透明性の程度が決定される。
【0054】
例えば押出成形時における溶融状態によって、樹脂シート20の透明性の程度が決定される。ここで、例えば使用済みのPETボトルに使用されるポリエステルは、透明性の観点から高融点(例えば260℃~290℃)の結晶が存在していることが多いと考えられる。ここで、押出成形時の溶融が十分な程度の温度(例えば310℃程度)の場合には、溶融したポリエステルの分布状態(分散状態)が良好であるため、樹脂シート20の透明性が良くなる。一方、押出成形時の溶融が不十分な程度の温度(例えば295℃未満)の場合には、樹脂シート20に未溶融部分が存在する可能性があり得る。未溶融部分が大きいと、溶融樹脂の流れが悪くなり、樹脂シート20の表面が損傷することで透明性が悪くなる。そのため、樹脂シート20の透明性をよくするためには、押出成形時の温度を例えば310℃程度にするとよく、このことによって、再生ポリエステルを多く使用した場合であっても、均一に混錬されて溶融される。
【0055】
また、押出成形によってロール状に樹脂シート20を成形したとき、ロール状の樹脂シート20の表面の平滑性が高い程、樹脂シート20の透明性は良くなる。言い換えると、樹脂シート20の表面における凹凸が少ない程、樹脂シート20の透明性は良くなる。ここでは、例えば樹脂シート20に滑剤を含ませることで、樹脂シート20内の粒子同士の摩擦を軽減することができるため、滑り性を向上させることができる。その結果、樹脂シート20の表面の平滑性を高くすることができるため、樹脂シート20の透明性をより良くすることができる。また、例えば加熱ロールを用いた延伸装置による樹脂シート20の延伸の工程(例えば二軸延伸の工程)において、樹脂シート20の表面平滑状態は、加熱ロールの表面状態に影響される。そのため、延伸の工程では、平滑性に優れた加熱ロールを使用することで、樹脂シート20の表面平滑性が向上し、樹脂シート20の透明性も優れた値を示すと考えられる。
【0056】
また、樹脂シート20の再生ポリエステル層21に含まれる異物が少ない程、透明性は良くなる。例えば再生ポリエステル層21に異物が含まれる場合、この異物に光が当たることで乱反射する。再生ポリエステル層21に含まれる異物が少ない程、光の乱反射を抑えることができるため、透明性がよくなる。また、上記異物は、樹脂シート20内において結晶化核剤として機能するため、結晶化することがあり得る。そのため、再生ポリエステル層21に含まれる異物が少ない程、異物を起因として結晶化したものの数を抑えることができるため、透明性が良くなる。なお、再生ポリエステル層21に含まれる異物を少なくするには、市場から回収されたリサイクル品に対して、アルカリ洗浄を行うとよい。このことによって、再生ポリエステル内に異物が残存し難くすることができる。異物の残存が少ないと、延伸した樹脂シート20(以下、延伸シートともいう。)の内部における光の乱反射が減少するため、樹脂シート20の全光線透過率が高くなり、その結果、透明性に優れた樹脂シート20が得られると考えられる。
【0057】
なお、押出成形時において、再生ペレットを作製する際、市場から回収されたポリエステル品を粉砕などしてそのまま再生フレークとして用いてもよい。しかしながら、この場合、再生フレークの形状やサイズが不揃いになり、多量のエアートラップが発生して、不均一に混錬される可能性がある。また、再生ペレットの重合度が、熱や水分の影響により低下するため、結果として透明性が悪くなることがあり得る。そのため、再生ペレットを作製する際、ポリエステル品を粉砕後、再度溶融させた後に、再生ペレットを作製するとよい。再生ペレットが再度溶融されたことによって、再生ペレットの重合度が、熱や水分の影響により低下し難くなるため、透明性を良くすることができる。
【0058】
また、樹脂シート20を熱成形して包装用容器10を作製する際、樹脂シート20を加熱するものの加熱温度(例えばヒータの温度)が高く、樹脂シート20を加熱する時間が長い程、樹脂シート20が結晶化し易くなり、透明性が悪くなる。そのため、熱成形時において、樹脂シート20を加熱し過ぎないように、加熱温度や加熱時間を調整するとよい。また、一般的に、延伸した樹脂シート20は、延伸効果を維持するために、延伸の工程の最後に一定温度で樹脂シート20を保持するという熱固定を実施することが多い。熱固定を実施することで、延伸した樹脂シート20は、未延伸シートと比べると軟化し難いため、熱成形時の加熱温度を高くする、または、加熱時間を長くする必要がある。そのため、樹脂シート20は、加熱温度を高くする、または、加熱時間を長くすることで、結晶化が進み、透明性が悪くなる可能性がある。更に、再生ポリエステルを含む樹脂シート20においては、異物が結晶化核剤として働くため、加熱温度を高くする、または、加熱時間が長くなると、樹脂シート20の透明性の低下が顕著になると考えられる。
【0059】
また、樹脂シート20の厚みに応じて、樹脂シート20における透明性の程度が決定される。例えば樹脂シート20の全体厚みが薄い程、透明性は良くなる。例えば深さが比較的に浅い包装用容器10の場合、強度の観点から、樹脂シート20の厚みが薄くなる傾向にある。そのため、深さが比較的に浅い包装用容器10の場合、透明性が良くなり易い。一方、深さが比較的に深い包装用容器10の場合、強度の観点から、樹脂シート20の厚みが厚くなる傾向にある。そのため、深さが比較的に深い包装用容器10の場合、透明性が悪くなり易い。
【0060】
本実施形態では、樹脂シート20に対して剛性を高めるために、樹脂シート20に対して二軸延伸を行っている。ここでは、樹脂シート20に対して二軸延伸を行わない、すなわち樹脂シートが未延伸の場合と比較して、樹脂シート20に対して二軸延伸を行うことで、樹脂シート20において分子鎖が配向されるため、剛性を高めることができる。しかしながら、本願発明者は、種々の試験の結果、樹脂シート20を二軸延伸することで、透明性が悪くなることがあり得るという知見を得た。これは、樹脂シート20を二軸延伸させることで、樹脂シート20内に結晶が形成されることで、透明性に影響を与えると考えられる。また、樹脂シート20を二軸延伸させることで、伸び難くなり、伸び難い状態の樹脂シート20を使用して熱成形する際、例えば金型60(またはプラグ65)(図7参照)と樹脂シート20との間に空気溜まりが発生することで、透明性が悪くなる可能性がある。
【0061】
熱成形時、伸び易いシートは、金型との密着性が高まるため、透明性に優れた成形品(例えば容器)が得られ易い。一方、延伸シートなどの伸び難いシートは、金型との密着性が低く、平滑な表面を有する金型の形状が、延伸シートに反映され難いため、透明性が劣る成形品になり易いと考えられる。加えて、再生ポリエステルを含むシートは、内部に異物が残存しており、熱成形時に伸ばされると、異物の周囲の樹脂部分は伸ばされるが、異物自体は伸ばされない。このことによって、異物と、異物の周囲の伸ばされた樹脂の間に小さな空隙(ボイド)が発生すると考えられる。この空隙(ボイド)により光の乱反射が起こり、透明性と全光線透過率の低下が懸念される。さらに、再生ポリエステルを含む延伸シートは、延伸の工程、および、熱成形時に異物と、異物の周囲の樹脂部分との間で空隙(ボイド)の発生が顕著になり、より透明性と全光線透過率が低下すると考えられる。
【0062】
しかしながら、本願発明者は、更なる種々の試験の結果、樹脂シート20に対して二軸延伸する際、樹脂シート20がより薄くなる(例えば厚みが0.3mm以下になる)ように二軸延伸することで、透明性が良くなるとの知見を得た。すなわち、二軸延伸をする際の強度が同じ場合であれば、樹脂シート20をより薄くすることで、透明性を良くすることができる知見を得た。そのため、本実施形態では、二軸延伸させた樹脂シート20によって形成された包装用容器10であっても、樹脂シート20の厚みが0.3mm以下になるまで二軸延伸させることで、包装用容器10のヘーズ値が3%未満となる程度の透明性を得ることができる。
【0063】
上述のことを留意して、樹脂シート20および包装用容器10を作製することで、透明性を有する樹脂シート20、および、透明性を有する包装用容器10を作製することができる。
【0064】
次に、本実施形態に係る包装用容器10に対する透明性を評価するための透明性評価試験を行った。ここでは、透明性評価試験を行うにあたり、以下のサンプル1~6の包装用容器を用意した。サンプル1~6において、樹脂シートの厚み(言い換えると、包装用容器の厚み)は、0.25mmである。また、サンプル1~6における包装用容器の寸法(長辺×短辺×高さ)が170mm×110mm×35mmである矩形状容器である。
【0065】
<サンプル1>
サンプル1は、本実施形態に係る樹脂シートによって形成された包装用容器である。サンプル1では、中間層は、再生ポリエステル層であり、内層および外層は、バージンポリエステル層である。サンプル1では、包装用容器における内層、中間層、外層の厚みの比率(以下、層比という。)は、内層:中間層:外層=4:92:4である。
【0066】
サンプル1における再生ポリエステル層は、バージンポリエステルと、再生ポリエステルとによって構成されており、20質量%のバージンポリエステルと、80質量%の再生ポリエステルを含んでいる。サンプル1におけるバージンポリエステル層は、バージンポリエステルと、滑剤MB(マスターバッチ)とによって構成されており、94質量%のバージンポリエステルと、6質量%の滑剤MBを含んでいる。
【0067】
サンプル1において、再生ポリエステルとして、市場から回収されたPETボトルからなるメカニカルリサイクルポリエステルを使用した。メカニカルリサイクルポリエステルとして、ウツミリサイクルシステム株式会社製の「VF-31A」を使用した。この再生ポリエステル(メカニカルリサイクルポリエステル)の固有粘度IV値は、0.74dl/gであった。サンプル1のバージンポリエステルとして、中国海南逸盛石化有限公司製のPET樹脂「YS-H01」を使用した。このバージンポリエステルの固有粘度IV値は、0.78dl/gであった。サンプル1の滑剤MBとして、東洋紡績株式会社製の「RE555」を使用した。この滑剤MBは、極限粘度が0.62dl/gのポリエステル樹脂に、平均粒子径が2.4μmの球状シリカ7000ppmを重合時に混合した微粒子を含有するポリエステル樹脂を含んでいる。
【0068】
サンプル1において、樹脂シートおよび包装用容器は、以下のように作製された。まず、94質量%のバージンポリエステルと、6質量%の滑剤MBを混合し、バージンポリエステル層用混合物を調製した。次に、20質量%のバージンポリエステルと、80質量%の再生ポリエステルを混合し、再生ポリエステル層用混合物を調製した。
【0069】
その後、株式会社プラスチック工学研究所製の型式「SBIN-42-S2-30-L」の二軸押出機(ここでは押出装置)を使用し、押出成形を行った。ここでは、上記のバージンポリエステル層用混合物と、再生ポリエステル層用混合物とを上記押出装置に供給し、温度280℃で溶融混錬押出しを行うことで、厚みが0.3mmの樹脂シートを作製した。
【0070】
次に、厚みが0.3mmの樹脂シートに対して、延伸温度が80℃の環境下において、MD方向およびTD方向を1.2倍に延伸することで二軸延伸を行い、二軸延伸後の樹脂シートを作製した。二軸延伸後の樹脂シートの厚みは、0.25mmである。その後、二軸延伸後の樹脂シートを、熱盤圧空成形機を用いて、成形圧力が3kg/cm、成形時間が4秒、成形温度が90℃の環境下で熱成形を行い、サンプル1の包装用容器を作製した。
【0071】
<サンプル2>
サンプル2は、サンプル1と同様に、本実施形態に係る樹脂シートによって形成された包装用容器である。サンプル2は、包装用容器における内層、中間層、外層の層比が、内層:中間層:外層=10:80:10である以外は、サンプル1と同様の構成および作製手順で作製された包装用容器である。
【0072】
<サンプル3>
サンプル3は、押出成形によって作製された樹脂シートに対して、二軸延伸を行わずに、未延伸の樹脂シートに対して熱成形をして包装用容器を作製したこと以外は、サンプル1と同様の構成および作製手順で作製された包装用容器である。なお、サンプル3において、押出成形された後の樹脂シートの厚みは、0.25mmである。
【0073】
<サンプル4>
サンプル4は、押出成形によって作製された樹脂シートに対して、二軸延伸を行わずに、未延伸の樹脂シートに対して熱成形をして包装用容器を作製したこと以外は、サンプル2と同様の構成および作製手順で作製された包装用容器である。なお、サンプル4において、サンプル3と同様に、押出成形された後の樹脂シートの厚みは、0.25mmである。
【0074】
<サンプル5>
サンプル5は、包装用容器の中間層の構成が異なる以外、サンプル3と同様の構成および作製手順で作製された包装用容器である。サンプル5では、包装用容器の中間層は、再生ポリエステル層ではなく、再生ポリエステルを含まない層である。サンプル5における中間層は、バージンポリエステルによって形成されており、100質量%のバージンポリエステルを含んでいる。
【0075】
<サンプル6>
サンプル6は、包装用容器の中間層の構成が異なる以外、サンプル4と同様の構成および作製手順で作製された包装用容器である。サンプル6では、包装用容器の中間層は、サンプル5と同様に、再生ポリエステル層ではなく、再生ポリエステルを含まない層である。サンプル6における中間層は、サンプル5と同様に、バージンポリエステルによって形成されており、100質量%のバージンポリエステルを含んでいる。
【0076】
サンプル1~6における各層の材料、配合、層比などについて、下記の表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
ここでは、サンプル1~6の包装用容器に対して、透明性評価試験を行った。透明性評価試験では、サンプル1~6における包装用容器の底壁を用いて、JIS K7136に準拠して、サンプル1~6における包装用容器の全光線透過率(Tt)(%)と、拡散透過率(Td)(%)を測定した。そして、測定した全光線透過率と拡散透過率を用いて、包装用容器のヘーズ値(%)を算出した。ヘーズ値は、例えば100×Td/Ttの式を用いて算出される。サンプル1~6の包装用容器(言い換えると、包装用容器を形成する樹脂シート)に対する全光線透過率と、ヘーズ値を、上記の表1に示す。なお、ヘーズ値は、低い程、透明性が良いことを示している。
【0079】
さらに、サンプル1~6の包装容器に対して、JIS K7367-5に準拠して、固有粘度IV値(dl/g)を測定した。ここでは、溶媒として、フェノール/1,1,2,2-テトラクロロエタン(重量比3/1)の混合溶媒を用いた。サンプル1~6の包装用容器の固有粘度IV値を、上記の表1に示す。
【0080】
上記表1に示すように、二軸延伸をしていないサンプル3~6において、ヘーズ値は、0.79dl/g~1.49dl/gであり、全光線透過率が89%以上であるため、十分に透明性が良い。一方、樹脂シートに対して二軸延伸をさせたサンプル1、2であっても、樹脂シートの全体厚みを0.25mmとすることで、ヘーズ値が1.24%~1.55%であり、全光線透過率が88%以上であった。そのため、サンプル1、2のように、二軸延伸させた樹脂シートで形成された包装用容器であっても、二軸延伸をさせていないサンプル3~6と同程度の透明性を得ることができる。これは、0.25mmの厚さになるまで樹脂シートを二軸延伸させたことで、樹脂シート内が結晶化することが抑制され、透明性を良くすることができたと考えられる。
【0081】
以上、本実施形態では、図1に示すように、包装用容器10は、樹脂シート20によって形成された容器である。図3に示すように、樹脂シート20は、使用済みポリエステルからなる再生ポリエステルを含む再生ポリエステル層21と、再生ポリエステル層21の両側に積層され、再生ポリエステルを含まないバージンポリエステルを含むバージンポリエステル層22と、を有している。樹脂シート20は、厚みが0.3mm以下であり、かつ、二軸延伸させて形成されたシートである。再生ポリエステルの固有粘度IV値は、0.60dl/g以上かつ0.85dl/g以下である。バージンポリエステルの固有粘度IV値は、0.58dl/g以上かつ0.80dl/g以下である。樹脂シート20によって形成された包装用容器10のヘーズ値は、3%未満である。樹脂シート20によって形成された包装用容器10の全光線透過率は、85%以上である。このように、樹脂シート20を二軸延伸させることで、樹脂シート20を薄肉化して剛性を高めることができる。本願発明者は、樹脂シート20を二軸延伸させることで、二軸延伸させない樹脂シートと比較して、透明性が悪くなるという知見を得ている。しかしながら、樹脂シート20の厚みが0.3mm以下になるように樹脂シート20を二軸延伸させることで、包装用容器10のヘーズ値を3%未満にして、かつ、包装用容器10の全光線透過率を85%以上にすることができ、透明性を良くすることができる。したがって、厚みが0.3mm以下になるように樹脂シート20を二軸延伸させることで、樹脂シート20の透明性を良くしつつ、樹脂シート20の剛性を高めることができる。
【0082】
本実施形態では、再生ポリエステルおよびバージンポリエステルの固有粘度IV値を上記の範囲にすることによって、押出成形、延伸工程(二軸延伸の工程)、包装用容器10への成形をはじめとする各種の成形性と、剛性や耐衝撃性などの機械特性が良好となり、包装用容器として好ましい特性となる。
【0083】
本実施形態では、樹脂シート20の全体厚みに対する再生ポリエステル層21の厚みの割合は、60%以上かつ98%以下である。このことによって、樹脂シート20によって形成された包装用容器10を落下させた場合であっても、より割れ難くすることができるため、包装用容器10の剛性を高めることができる。
【0084】
本実施形態では、再生ポリエステル層21に含まれる再生ポリエステルは、80質量%以上である。このことによって、再生ポリエステルを多く使用することができるため、環境負荷の低減に貢献することができる。
【0085】
上記実施形態では、図3に示すように、バージンポリエステル層22は、再生ポリエステル層21の両側に積層されていた。言い換えると、バージンポリエステル層22は、再生ポリエステル層21の幅広な面の両面に配置されており、バージンポリエステル層22の数は2つであった。しかしながら、バージンポリエステル層22は、再生ポリエステル層21の片側に積層されていてもよい。すなわち、バージンポリエステル層22は、再生ポリエステル層21の幅広な面のうちの一方の面にのみ配置されており、バージンポリエステル層22の数は1つであってもよい。この場合、包装用容器10において、外層32が省略されてもよい。
【符号の説明】
【0086】
10 包装用容器
11 底壁
12 周壁
13 開口
20 樹脂シート
21 再生ポリエステル層
22 バージンポリエステル層
31 内層
32 外層
33 中間層
50 押出装置
60 金型
65 プラグ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7