(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043926
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】送出システムおよび送出方法、ならびに送出システムに適用されるIPゲートウェイおよび効果装置
(51)【国際特許分類】
H04L 7/00 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
H04L7/00 910
H04L7/00 990
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149171
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】岩見 敬太
【テーマコード(参考)】
5K047
【Fターム(参考)】
5K047AA01
5K047AA18
5K047CC02
5K047CC08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】システム構築時に最適な位相設定のパラメータを自動的に発見し、システムの設計コストの増加を抑え、PTP(Precision Time Protocol)同期の障害時に放送に与える悪影響を緩和するIPゲートウェイ及び効果装置を提供する。
【解決手段】マスター送出システムに適用するIPゲートウェイは、RTP送信機からIP送信されたRTPパケットを受信し、RTPパケットのRTPヘッダからヘッダ情報を取得するRTP受信部と、PTPメッセージ送受信することにより、PTPに基づく時刻同期を行う時刻同期部と、ターゲット位相情報を受け取る装置設定部と、ヘッダ情報からタイミング情報を取得し、タイミング情報、装置時刻情報およびターゲット位相情報に基づいて、RTPパケットをSDIへ変換する処理の開始タイミングを導出するタイミング導出部と、開始タイミングに従って、処理を開始するIP/SDI変換部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送出システムに適用されるIPゲートウェイであって、
IP(Internet Protocol)送信されたRTP(Real-time Transport Protocol)パケットを受信し、前記RTPパケットのRTPヘッダから、ヘッダ情報を取得するRTP受信部と、
PTP(Precision Time Protocol)メッセージを送受信することにより、PTPに基づく時刻同期を行う時刻同期部と、
出力されたターゲット位相情報を受け取る装置設定部と、
前記ヘッダ情報からタイミング情報を取得し、前記タイミング情報、装置時刻情報、および前記ターゲット位相情報に基づいて、前記RTPパケットをSDI(Serial Digital Interface)へ変換する処理の開始タイミングを導出するタイミング導出部と、
前記導出された開始タイミングに従って、前記処理を開始するIP/SDI変換部とを備えた、IPゲートウェイ。
【請求項2】
前記ターゲット位相情報は、基準点に対する相対ラインとピクセルとを含む、請求項1に記載のIPゲートウェイ。
【請求項3】
前記ターゲット位相情報は、揺らぎ情報を含み、
前記揺らぎ情報は、同期信号を発生する同期信号発生器の時刻と、前記時刻同期部の時刻との比較に基づいて取得される時刻の揺らぎの大きさを含む、請求項1に記載のIPゲートウェイ。
【請求項4】
前記ターゲット位相情報は、前記SDIのカウント値に対する位相と、指定されたターゲット位相との位相差を含む、請求項1に記載のIPゲートウェイ。
【請求項5】
ホールドオーバーによって、前記時刻同期部が、前記PTPメッセージを受け取ることができなくなった場合、前記タイミング導出部は、前記開始タイミングに前記位相差を加算することによって、前記開始タイミングを更新し、
前記IP/SDI変換部は、前記更新された開始タイミングに従って、前記処理を開始する、請求項4に記載のIPゲートウェイ。
【請求項6】
前記タイミング導出部は、前記開始タイミングの導出を、毎フレーム実施する、請求項1乃至5の何れか1項に記載のIPゲートウェイ。
【請求項7】
前記時刻同期部は、前記装置時刻情報で示される時刻と、前記時刻同期部が有している時刻とを比較し、比較結果である揺らぎの大きさを、前記タイミング導出部へ出力し、
前記タイミング導出部は、前記揺らぎの大きさに基づいて、ターゲット位相範囲情報を取得する、請求項6に記載のIPゲートウェイ。
【請求項8】
送出システムに適用されるIPゲートウェイであって、
IP(Internet Protocol)送信されたRTP(Real-time Transport Protocol)パケットを受信し、前記RTPパケットからRTPペイロードヘッダを取得するRTP受信部と、
PTP(Precision Time Protocol)メッセージを送受信することにより、PTPに基づく時刻同期を行う時刻同期部と、
装置時刻情報からフレームをカウントし、カウント値を出力するフレームカウンタと、
出力されたターゲット位相情報を受け取る装置設定部と、
前記RTPペイロードヘッダと、前記カウント値と、前記ターゲット位相情報とに基づいて、前記RTPパケットをSDI(Serial Digital Interface)へ変換する処理の開始タイミングを導出する位相差検出部と、
前記導出された開始タイミングに従って、前記処理を開始するIP/SDI変換部とを備えた、IPゲートウェイ。
【請求項9】
マスター送出システムに適用される効果装置であって、
請求項1に記載のIPゲートウェイの前記IP/SDI変換部によって変換されたSDIを受け取り、前記SDIを、適切な位相で出力するAVDL部と、
出力されたブラックバースト信号を受け取り、前記ブラックバースト信号からフレームをカウントし、カウント値を出力するフレームカウンタと、
前記AVDL部によって出力されたSDIを、前記フレームカウンタによって出力されたカウント値に従って信号処理する信号処理部と
を備えた、効果装置。
【請求項10】
位相差検出部をさらに備え、
前記AVDL部および前記位相差検出部は、前記IP/SDI変換部によって任意の開始タイミングで変換された前記SDIを受け取り、
前記フレームカウンタは、前記カウント値を、前記位相差検出部へ出力し、
前記位相差検出部は、前記受け取ったSDIの、前記カウント値に対する位相を求め、前記位相と、前記位相差検出部が保持する前記効果装置のターゲット位相との位相差を導出する、請求項9に記載の効果装置。
【請求項11】
揺らぎ測定部をさらに備え、
前記AVDL部および前記揺らぎ測定部は、前記IP/SDI変換部によって変換された前記SDIを受け取り、
前記フレームカウンタは、前記カウント値を、前記揺らぎ測定部へ出力し、
前記揺らぎ測定部は、前記SDIの、単位時間当たりの位相ずれを観測し、観測された位相ずれを出力し、
前記位相ずれの大きさは、揺らぎ情報に含まれる、請求項9に記載の効果装置。
【請求項12】
請求項1に記載のIPゲートウェイと、
請求項9に記載の効果装置と、
前記ターゲット位相情報を出力する制御装置と、
前記PTPメッセージおよび前記ブラックバースト信号を出力する同期信号発生器とを備えた、送出システム。
【請求項13】
請求項7に記載のIPゲートウェイと、
請求項9に記載の効果装置と、
前記ターゲット位相情報を出力する制御装置と、
前記PTPメッセージおよび前記ブラックバースト信号を出力する同期信号発生器とを備えた、送出システム。
【請求項14】
請求項5に記載のIPゲートウェイと、
請求項10に記載の効果装置と、
前記ターゲット位相情報を出力する制御装置と、
前記PTPメッセージおよび前記ブラックバースト信号を出力する同期信号発生器とを備え、
前記位相差検出部は、前記指定されたターゲット位相を有しており、前記SDIの前記カウント値に対する位相と、前記指定されたターゲット位相との位相差を、前記制御装置へ送信し、
前記制御装置は、前記送信された位相差を受信し、前記位相差を、前記装置設定部へ出力し、
前記装置設定部は、前記位相差を、前記タイミング導出部へ出力する、送出システム。
【請求項15】
請求項12に記載の送出システムによって実施される送出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、IP伝送に適用される送出システムおよび送出方法、ならびに送出システムに適用されるIPゲートウェイおよび効果装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放送技術に適用されるマスター送出システムでは、スタジオ、回線センター、およびサーバシステムなどから入力される素材を、送出スケジュールに従いスイッチャで自動的に切り替えたり、効果処理を施したりした後、符号化、多重化して送信システムに送出する。ここで、入力素材が周波数非同期な場合はフレーム同期部によってシステムの同期に同期結合が行われる。
【0003】
効果処理を行う効果装置は、多段に構成され、番組提供者や速報・地震・津波などの緊急な情報を映像に重畳するスーパインポーズ、チャイム音の重畳、番組の切替時に行う映像・音声信号のフェードインとフェードアウト、大雪や台風などのときに、本編の映像信号をコーナーに縮小し、ちょうどL字のように空いた部分に大雪や台風などの気象情報を流すL字処理などが行われる。
【0004】
一般に、この種の効果処理を行う効果装置は、システムの同期に対し決まった位相で処理を開始するが、実際は信号に伝送遅延や前段装置の処理遅延が生じ、所望のタイミングで信号が到達するとは限らない。そこで、効果装置は、AVDL(Automatic Video Delay Line)と呼ばれるラインメモリを有しており、AVDLによって1ライン程度の位相ずれを吸収する。しかし、システム位相に対する入力位相のずれがAVDLで吸収できる範囲を超えると、効果装置で処理ができなくなり、映像に不体裁が生じる。そのため、効果装置に入力する信号の位相を適切に管理する必要がある。
【0005】
各効果装置にフレームメモリを持たせれば、どのような位相の入力信号も処理することができるが、フレームメモリは、多くのメモリリソースを必要とし、入出力レイテンシも非常に大きくなる。特に、入出力レイテンシは、放送のリアルタイム性を損なう。
【0006】
近年、SDI(Serial Digital Interface)をRTP(Real-time Transport Protocol)パケット化してIP(Internet Protocol)ネットワークで伝送する伝送方式が実現されている(非特許文献1,2,3参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】SMPTE ST2110-20
【非特許文献2】SMPTE ST2110-30
【非特許文献3】SMPTE ST2110-40
【非特許文献4】SMPTE ST2022-7
【非特許文献5】RFC 4175
【非特許文献6】SMPTE ST2059
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような伝送方式では、以下のような問題がある。
【0009】
すなわち、マスター送出システムでRTPパケット化された素材を扱うためには、伝送されるRTPパケットをIPゲートウェイによってSDIに変換した後、SDIインタフェースを持つ効果装置を使用する方式が採用される。この方式では、IP/SDIの変換処理の開始タイミングは、RTPを送信するRTP送信機がRTPパケットに打刻するRTPタイムスタンプに対する値であるPTで指定される。
【0010】
RTPタイムスタンプは90kHzのクロックが使用される(非特許文献5)ことから、PTは通常90kHz単位の時間で指定される。したがって、従来のSDIの位相調整(HDの場合は74MHz)と比較して大きな単位でしか位相調整ができない。AVDLの範囲は通常1ライン(HDの場合は1ライン29.7[μ秒])程度なので、90[kHz](=11.1[μ秒])単位での位相調整は設定単位が大きく、マスター送出システムに入力される素材それぞれに対し位相調整を行うことは容易ではない。
【0011】
また、IPゲートウェイはPTP(Precision Time Protocol)によって同期がなされるため、IPゲートウェイの出力のSDIは、PTP同期の揺らぎの影響を受ける。そのため、あるタイミングでAVDL範囲内の位相に収まったとしても、揺らぎの影響でAVDL範囲内から外れることがあり得る。
【0012】
このように、RTPパケットをIPネットワークで伝送する従来の伝送方式では、マスター送出システム特有の位相制約が考慮されていない。このため、IPゲートウェイ出力の位相を効果装置のAVDL範囲内に設定する難易度が上がり、設計コストの増加をもたらす。また、IPゲートウェイ出力の位相をPTP同期の揺らぎを想定して設定することも容易ではないため、運用中の時刻同期の不安定により、放送の乱れを引き起こす恐れがある。
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、システム構築時に最適な位相設定のパラメータを自動的に発見し、システムの設計コストの増加を抑えるとともに、PTP同期の揺らぎを考慮して位相設定を行うことで、PTP同期の障害時に放送に与える悪影響を緩和することが可能な、送出システムおよび送出方法、ならびに送出システムに適用されるIPゲートウェイおよび効果装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
実施形態のIPゲートウェイは、送出システムに適用され、IP(Internet Protocol)送信されたRTP(Real-time Transport Protocol)パケットを受信し、RTPパケットのRTPヘッダから、ヘッダ情報を取得するRTP受信部と、PTP(Precision Time Protocol)メッセージを送受信することにより、PTPに基づく時刻同期を行う時刻同期部と、ターゲット位相情報を受け取る装置設定部と、ヘッダ情報からタイミング情報を取得し、タイミング情報、装置時刻情報、およびターゲット位相情報に基づいて、RTPパケットをSDI(Serial Digital Interface)へ変換する処理の開始タイミングを導出するタイミング導出部と、導出された開始タイミングに従って、処理を開始するIP/SDI変換部とを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、第1の実施形態の送出方法が適用されたマスター送出システムの一例を示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態の送出方法が適用されたマスター送出システムを実現するIPゲートウェイ23および効果装置26の構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、
図2に示すIPゲートウェイ23および効果装置26の動作例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、RTPヘッダの一例を示すデータ構成図である。
【
図5】
図5は、タイミング導出部34の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、送信時刻、IP/SDI変換レイテンシ、およびターゲット位相のタイミングの関係を示す図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態の変形例1の送出方法が適用されたマスター送出システムを実現するIPゲートウェイ23aおよび効果装置26を含む構成例を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、
図7に示すIPゲートウェイ23aおよび効果装置26の動作例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、RTPペイロードヘッダの一例を示すデータ構成図である。
【
図10】
図10は、位相差検出部37の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、第1の実施形態の変形例2の送出方法が適用されたマスター送出システムを実現するIPゲートウェイ23および効果装置26aを含む構成例を示すブロック図である。
【
図13】
図13は、
図11に示す効果装置26aの位相差検出部44の動作例を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、送信時刻、IP/SDI変換レイテンシ、およびターゲット位相のタイミングの詳細な関係を示す図である。
【
図15】
図15は、第2の実施形態の送出方法が適用されたマスター送出システムを実現するIPゲートウェイ23および効果装置26を含む構成例を示すブロック図である。
【
図16】
図16は、第2の実施形態の送出方法が適用されたマスター送出システムの動作例を示すフローチャートである。
【
図17】
図17は、第2の実施形態の送出方法が適用されたマスター送出システムで考慮される送信時刻、IP/SDI変換レイテンシ、およびターゲット位相のタイミングの関係を示す図である。
【
図18】
図18は、第2の実施形態の変形例1の送出方法が適用されたマスター送出システムを実現するIPゲートウェイ23および効果装置26bを含む構成例を示すブロック図である。
【
図21】
図21は、第2の実施形態の変形例2の送出方法が適用されたマスター送出システムを実現するIPゲートウェイ23および効果装置26を含む構成例を示すブロック図である。
【
図23】
図23は、第3の実施形態の送出方法が適用されたマスター送出システムを実現するIPゲートウェイ23および効果装置26aを含む構成例を示すブロック図である。
【
図25】
図25は、第3の実施形態の変形例のマスター送出システムの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照して説明する。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0017】
[第1の実施形態]
第1の実施形態の送出方法が適用されたマスター送出システムについて説明する。
【0018】
図1は、第1の実施形態の送出方法が適用されたマスター送出システムの一例を示す概略構成図である。
【0019】
すなわち、第1の実施形態の送出方法が適用されたマスター送出システム10は、同一構成を有する現用系20Aと予備系20Bとの2系統を有する。通常は現用系20Aにて動作するが、現用系20Aが動作不能な場合であっても、予備系20Bが動作することで、冗長性を確保している。
【0020】
以下、2系統の構成を、現用系20Aを例に説明する。
【0021】
現用系20Aは、制御装置21、同期信号発生器22、IPゲートウェイ23、フレーム同期部(以下、対応する英語であるFrame Synchronizerを略して「FS」とも称する)24、スイッチャ25、効果装置26、符号化装置27、および多重化装置28を備えている。
【0022】
制御装置21、同期信号発生器22、スイッチャ25、および多重化装置28は、現用系20Aに1つ存在するが、IPゲートウェイ23、FS24、効果装置26、および符号化装置27は、現用系20Aに多数存在する。
【0023】
マスター送出システム10には、スタジオα、回線センターβ、およびサーバシステムγなどから素材が入力されるが、入力素材がIPの場合、IPゲートウェイ23が受け取り、入力素材がSDIの場合、FS24またはスイッチャ25が受け取る。
【0024】
IPゲートウェイ23は、IPで受け取った入力素材が、周波数同期されている場合は、この入力素材をスイッチャ25へ出力する。このようなIPゲートウェイ23の例を、
図1において、IPゲートウェイ23
1として示す。
【0025】
一方、IPゲートウェイ23は、IPで受け取った入力素材が、周波数非同期な場合は、FS24へ出力する。FS24は、入力素材に対して、システムの同期のための同期結合を行う。このようなIPゲートウェイ23およびFS24の例を、
図1において、IPゲートウェイ23
nおよびFS24
nとして示す。
【0026】
入力素材が、周波数同期されているSDIである場合、スイッチャ25によって受け取られる。
【0027】
入力素材が、周波数非同期なSDIは、FS24によって受け取られ、FS24が、入力素材SDIに対して、システムの同期のための同期結合を行う。このようなFS24の例を、
図1において、FS24
mとして示す。
【0028】
スイッチャ25は、このように周波数同期された入力素材を、送出スケジュールに従い自動的に切り替える。また、スイッチャ25には、多くの効果装置26が接続されており、切り替えた入力素材を、対応する効果装置26へそれぞれ出力する。
【0029】
スイッチャ25に接続されている効果装置26(例えば、効果装置2611、・・・、26n1、26(n+1)1、・・・、26m1)は、それぞれ下流に単数または複数の効果装置26が直接に接続されることによって、多段構成されている。例えば、効果装置2611の下流には、効果装置2612、・・・、261N1が接続されている。そして、これら多段構成された各効果装置26は、周波数同期された入力素材に対して、前述したような効果処理を行い、最終段の各効果装置261N1、・・・、26nN2、26(n+1)N3、・・・、26mN4はそれぞれ、効果処理した入力素材を、対応する符号化装置271、・・・、27n、27n+1、・・・、27mへ出力する。
【0030】
各符号化装置27は、対応する効果装置26からそれぞれ出力された入力素材に対して符号化処理を行い、符号化された入力素材を、多重化装置28へ出力する。
【0031】
多重化装置28は、各符号化装置27から出力された入力素材に対して多重化処理を行い、多重化された入力素材を、送信システム50へ出力する。
【0032】
本実施形態の送出方法が適用されたマスター送出システムの技術的特徴は、伝送されるRTPパケットを、IPゲートウェイ23によってSDIに変換した後、SDIインタフェースを持つ効果装置26によって効果処理を行うことにある。
【0033】
したがって、以下では、本実施形態の送出方法が適用されたマスター送出システムを実現するIPゲートウェイ23および効果装置26について説明する。
【0034】
図2は、第1の実施形態の送出方法が適用されたマスター送出システムを実現するIPゲートウェイ23および効果装置26の構成例を示すブロック図である。
【0035】
図2に示すIPゲートウェイ23および効果装置26は、
図1におけるIPゲートウェイ23
1および効果装置26
11に相当するが、以下では、IPゲートウェイ23および効果装置26として説明する。
図2では、IPゲートウェイ23へRTPパケットをIPによって送信するスタジオα、回線センターβ、およびサーバシステムγを、RTP送信機60として総称して示している。また、
図2では、スイッチャ25が省略されている。
【0036】
IPゲートウェイ23と効果装置26には、同期信号発生器22が共通して接続されており、これによって、同期信号発生器22は、IPゲートウェイ23と効果装置26とを同期させる。
【0037】
図3は、
図2に示すIPゲートウェイ23および効果装置26の動作例を示すフローチャートである。
【0038】
【0039】
IPゲートウェイ23は、RTP受信部31、IP/SDI変換部32、装置設定部33、タイミング導出部34、および時刻同期部35を備えている。
【0040】
効果装置26は、AVDL部41、フレームカウンタ42、および信号処理部43を備えている。
【0041】
RTP受信部31は、RTP送信機60からIP送信されたRTPパケットを受信し(S1)、受信したRTPパケットをIP/SDI変換部32へ出力するとともに、RTPパケットのRTPヘッダから、ヘッダ情報hを取得し、取得したヘッダ情報hを、タイミング導出部34へ出力する(S2)。
【0042】
図4は、RTPヘッダの一例を示すデータ構成図である。
【0043】
同期信号発生器22は、時刻同期部35へPTPメッセージaを出力する。また、効果装置26のフレームカウンタ42へBB(Black Burst)信号bを出力する。
【0044】
時刻同期部35は、同期信号発生器22とPTPメッセージaを送受信することにより、PTPに基づく時刻同期を行い、同期信号発生器22と同期した時刻をタイミング導出部34へ出力する(S3)。
【0045】
制御装置21は、マスター送出システム10全体の位相を管理しており、IPゲートウェイ23の装置設定部33に対し、効果装置26のAVDL部41に入力すべきターゲット位相情報cを出力する。
【0046】
装置設定部33は、制御装置21から出力されたターゲット位相情報cを受け取り、受け取ったターゲット位相情報cを、タイミング導出部34へ出力する(S4)。
【0047】
タイミング導出部34は、ヘッダ情報hからタイミング情報tを取得し、取得したタイミング情報tに加えて、装置時刻情報d、およびターゲット位相情報cに基づいて、IP/SDI変換処理の開始タイミングPTを導出し、導出したPTを、IP/SDI変換部32へ出力する(S5)。この処理のために、タイミング導出部34は、具体的には、
図5のフローチャートに従って動作する。
【0048】
図5は、タイミング導出部34の処理の流れを示すフローチャートである。
【0049】
タイミング導出部34は、
図4にそのデータ構造を示すRTPヘッダから、タイミング情報として、フレームの最後尾を示す「M」ビットと、RTP送信機60が送信時に打刻したタイムスタンプである「Time Stamp」とを取得する(S11)。そして、タイミング導出部34は、取得した「M」ビットと、「Time Stamp」とから、RTPパケットが送信された送信時刻を取得する(S12)。さらに、タイミング導出部34は、IP/SDI変換部32の出力がターゲット位相になるように、IP/SDI変換部32のレイテンシ(以下、「IP/SDI変換レイテンシ」と称する)を考慮して、PTを設定し、IP/SDI変換部32へ出力する(S13)。
【0050】
図6は、送信時刻、IP/SDI変換レイテンシ、およびターゲット位相のタイミングの関係を示す図である。
【0051】
【0052】
PT=Ti+Ta-IP/SDI変換レイテンシ、
Ti=基準点(Alignment point)時刻-送信時刻、
Ta=ターゲット位相の時刻-基準点(Alignment point)時刻、
ここで、IP/SDI変換レイテンシは、IPゲートウェイ23の固有の値であり、ターゲット位相は、基準点に対して相対ライン+ピクセルで表され、効果装置26の固有の値である。なお、時刻と位相との変換方法については、非特許文献6を参照されたい。
【0053】
IP/SDI変換部32は、タイミング導出部34から出力されたPTに従って、RTPパケットのIP/SDI変換を開始し、得られたSDIを効果装置26のAVDL部41へ出力する(S6)。
【0054】
AVDL部41は、IP/SDI変換部32から出力されたSDIを受け取り、受け取ったSDIを、後述するように適切な位相で、信号処理部43へ出力する。
【0055】
フレームカウンタ42は、同期信号発生器22から出力されたBB信号bを受け取り、BB信号bからフレームをカウントし、カウント値eを信号処理部43へ出力する。
【0056】
信号処理部43は、このカウント値eに従い処理を行うため、AVDL部41は、信号処理部43に適切な位相で、SDIを入力する。
【0057】
ただし、AVDL部41は、1ライン程度のメモリを有しているので、IP/SDI変換部32から入力されるSDIの位相ずれが小さい場合は、信号処理部43は、所望の位相でSDIを読み出し、出力することができる。
【0058】
上述したように、本実施形態の送出方法が適用されたマスター送出システムテム10によれば、タイミング情報t、装置時刻情報d、およびターゲット位相情報cに基づいて、最適なIP/SDI変換の開始タイミングPTを求めることができる。このように、最適な位相設定パラメータを自動的に発見できるので、システムの設計コストの増加を抑えるとともに、PTP同期の揺らぎを考慮して位相設定を行うことで、PTP同期の障害時に放送に与える悪影響を緩和することが可能となる。
【0059】
(第1の実施形態の変形例1)
第1の実施形態の変形例1について説明する。説明は、第1の実施形態と同じ点については省略し、異なる点について行う。
【0060】
図7は、第1の実施形態の変形例1の送出方法が適用されたマスター送出システムを実現するIPゲートウェイ23aおよび効果装置26を含む構成例を示すブロック図である。
【0061】
図8は、
図7に示すIPゲートウェイ23aおよび効果装置26の動作例を示すフローチャートである。
【0062】
【0063】
本変形例の送出方法が適用されたマスター送出システムは、IPゲートウェイ23aの構成に特徴があり、RTP受信部31が、RTPペイロードから、RTPヘッダではなく、RTPペイロードヘッダpを取得する。このような構成でも、第1の実施形態と同様な作用効果を奏する。
【0064】
このようなIPゲートウェイ23aは、IPゲートウェイ23のタイミング導出部34を排除し、代わりに位相差検出部37を備え、さらに、位相差検出部37と時刻同期部35との間にフレームカウンタ36を付加した構成としている。
【0065】
RTP受信部31は、RTP送信機60からIP送信されたRTPパケットを受信し(S1)、RTPパケットをIP/SDI変換部32へ出力するとともに、RTPパケットからRTPペイロードヘッダpを取得して、位相差検出部37へ出力する(S2A)。
【0066】
図9は、RTPペイロードヘッダの一例を示すデータ構成図である。
【0067】
図9に例示されるRTPペイロードヘッダpは、RTPパケットにおいて、
図4に例示するRTPヘッダに後続している。
【0068】
時刻同期部35は、前述したように、同期信号発生器22とPTPメッセージaを送受信することにより、PTPに基づく時刻同期を行い、同期信号発生器22と同期した時刻をタイミング導出部34へ出力する(S3)。
【0069】
フレームカウンタ36は、この装置時刻情報dからカウント値eを生成し、カウント値eを位相差検出部37へ出力する(S3A)。
【0070】
装置設定部33は、前述したように、制御装置21から出力されたターゲット位相情報cを取得する(S4)。そして、装置設定部33は、本変形例では、ターゲット位相情報cを、位相差検出部37へ出力する。
【0071】
位相差検出部37は、RTP受信部31から出力されたRTPペイロードヘッダpと、フレームカウンタ36から出力されたカウント値eと、装置設定部33から出力されたターゲット位相情報cとに基づいて、IP/SDI変換処理の開始タイミングPTを導出し、IP/SDI変換部32へ出力する(S5)。この処理のために、位相差検出部37は、具体的には、
図10のフローチャートに従って動作する。
【0072】
図10は、位相差検出部37の処理の流れを示すフローチャートである。
【0073】
位相差検出部37は、
図9にそのデータ構造を示すRTPペイロードヘッダから、フィールド識別子「F」、ライン番号「SRD Row Number」、およびサンプルオフセット「SRD Offset」を取得し(S21)、カウント値eに対する受信RTPパケットの位相を求め(S22)、ターゲット位相と受信RTPパケットとの位相差から、関係式「(IP/SDI変換開始タイミング)=(ターゲット位相)-(受信RTPパケット位相)-(IP/SDI変換レイテンシ)」を使って、IP/SDI変換処理の開始タイミングPTを算出する(S23)。そして、算出した開始タイミングPTを、IP/SDI変換部32へ出力する(S5)。
【0074】
IP/SDI変換部32は、位相差検出部37から出力された開始タイミングPTに従って、RTPパケットのIP/SDI変換を開始し、得られたSDIを効果装置26のAVDL部41へ出力する(S6)。
【0075】
効果装置26は、このようにIPゲートウェイ23aからSDIが入力された場合も、第1の実施形態で説明したように動作する。
【0076】
本変形例の送出方法が適用されたマスター送出システムによれば、RTP受信部31が、RTPペイロードから、RTPヘッダではなく、RTPペイロードヘッダpを取得する本変形例の送出方法が適用されたマスター送出システム10でも、第1の実施形態と同様な作用効果を奏することができる。
【0077】
(第1の実施形態の変形例2)
第1の実施形態の変形例2について説明する。説明は、第1の実施形態と同じ点については省略し、異なる点について行う。
【0078】
図11は、第1の実施形態の変形例2の送出方法が適用されたマスター送出システムを実現するIPゲートウェイ23および効果装置26aを含む構成例を示すブロック図である。
【0079】
図12は、
図11に示すIPゲートウェイ23の動作例を示すフローチャートである。
【0080】
図13は、
図11に示す効果装置26aの位相差検出部44の動作例を示すフローチャートである。
【0081】
本変形例の送出方法が適用されたマスター送出システムは、効果装置26aの構成に特徴があり、効果装置26aに位相差検出部44を付加し、IPゲートウェイ23で任意のPTでIP/SDI変換した際の、効果装置26aのフレームカウンタ42に対する入力SDIの位相を位相差検出部44によって測定し、測定結果を、IPゲートウェイ23へフィードバックすることによって、IPゲートウェイ23が最適なPTを導出するようにしたものである。
【0082】
【0083】
ステップS1~S3についは既に説明済であるので、再度の説明は省略する。
【0084】
ステップS3の後、IPゲートウェイ23では、ステップS3Bにおいて、IP/SDI変換部32が、RTP受信部31から出力されたRTPパケットに対して、任意のPTで、IP/SDI変換処理を行い、IP/SDI変換処理によって得られたSDIを、AVDL部41および位相差検出部44へ出力する(S3B)。
【0085】
一方、効果装置26aでは、フレームカウンタ42が、同期信号発生器22から出力されたBB信号bを受け取り、BB信号bからカウント値eを生成し、生成したカウント値eを、信号処理部43および位相差検出部44へ出力する(S27)。
【0086】
位相差検出部44は、ステップ3BにおいてIP/SDI変換部32から出力されたSDIを受信し、SDIの、ステップS27においてフレームカウンタ42から出力されたカウント値eに対する位相を求める(S28)。
【0087】
位相差検出部44はさらに、この位相と、位相差検出部44が内部に保持する効果装置26aのターゲット位相との位相差fを導出し、制御装置21へ送信する(S29)。
【0088】
制御装置21は、送信された位相差fを受信する。これによって、制御装置21は、マスター送出システム10全体の位相を管理する。そして制御装置21は、IPゲートウェイ23の装置設定部33に対して位相差fを出力する。装置設定部33は、この位相差fを受け取り、受け取った位相差fを、タイミング導出部34へ出力する(S3C)。
【0089】
タイミング導出部34は、位相差fを受け取り、位相差fをPTに加算して、IP/SDI変換部32へ出力する(S3D)。
【0090】
これに応じて、IP/SDI変換部32は、位相差fを加算されたPTを新たな開始タイミングとしてIP/SDI変換処理を行い、変換処理の結果得られたSDIを、効果装置26aへ出力する(S6)。
【0091】
本変形例の送出方法が適用されたマスター送出システムによれば、制御装置21の位相差fを更新でき、もって、IP/SDI変換部32でなされるIP/SDI変換処理の開始タイミングPTの最適化を図ることが可能となる。
【0092】
(第1の実施形態の変形例3)
第1の実施形態の変形例3について説明する。説明は、第1の実施形態と同じ点については省略し、異なる点について行う。
【0093】
本変形例の送出方法が適用されたマスター送出システムは、IPゲートウェイ23、特にタイミング導出部34に特徴がある。本変形例の送出方法が適用されたマスター送出システムは、その構成は、第1の実施形態のマスター送出システムと同様、
図2に示す通りであり、タイミング導出部34の動作が異なるのみである。
【0094】
具体的には、本変形例では、タイミング導出部34は、PTの算出を、毎フレーム実施する。これは、第1の実施形態では、
図6に示すように、送信時刻と、基準点(Alignment point)との時間差が一定であることを前提とし、タイミング導出部34は、IP/SDI変換開始時に一度だけPTを算出することとは異なる。
【0095】
本変形例では、タイミング導出部34が、フレーム毎にPTを算出することによって、以下のような作用効果を奏することが可能となる。
【0096】
図14は、送信時刻、IP/SDI変換レイテンシ、およびターゲット位相のタイミングの詳細な関係を示す図である。
【0097】
RTPタイムスタンプは90kHz単位で打刻されるため、
図14に示すように、送信時刻Tiが90kHz(11.1μ秒)の幅で揺らぐことが考えられる。しかしながら、本変形例によれば、揺らぎに連動するように送信時刻の取得を毎フレーム実施できるので、送信時刻のタイムスタンプの揺らぎに対処して、最適なPTを算出することが可能となる。
【0098】
また、RTPタイムスタンプは、RTP送信機60の時刻情報に基づいて打刻されるため、RTP送信機60の切替によって特性が変化することが考えられる。しかしながら、本変形例によれば、変化に連動するように送信時刻の取得を毎フレーム実施できるので、RTP送信機60の切替などによる送信時刻のタイムスタンプの特性の変化に対処して、最適なPTを算出することが可能となる。
【0099】
[第2の実施形態]
第2の実施形態の送出方法が適用されたマスター送出システムについて説明する。説明は、第1の実施形態と同じ点については省略し、異なる点について行う。
【0100】
図15は、第2の実施形態の送出方法が適用されたマスター送出システムを実現するIPゲートウェイ23および効果装置26を含む構成例を示すブロック図である。
【0101】
第2の実施形態の送出方法が適用されたマスター送出システムを実現するIPゲートウェイ23および効果装置26の構成は、既に示した
図2と同様である。
【0102】
しかしながら、本実施形態では、IPゲートウェイ23、特に、装置設定部33、タイミング導出部34、および時刻同期部35に特徴がある。前述したように、時刻同期部35では、PTPに基づいて時刻同期を行っている。しかしながら、PTPの時刻同期精度は1μ秒であるので、IPゲートウェイ23から出力されるSDIのタイミングは、PTPの精度で揺らぐことになる。そのため、ある時間にAVDLの範囲に位相を設定できたとしても、PTPの揺らぎによってAVDLの範囲から外れる可能性がある。そこで、本実施形態の送出方法が適用されたマスター送出システムでは、PTPの揺らぎを考慮してPTを設定する。
【0103】
図16は、第2の実施形態の送出方法が適用されたマスター送出システムの動作例を示すフローチャートである。
【0104】
【0105】
図16に示すフローチャートは、
図3に示すフローチャートのステップS3と、ステップS4の一部を、ステップS2Bと、ステップS2Cにそれぞれ置き換えたものである。したがって、以下では、ステップS2B、S2Cについて説明する。
【0106】
時刻同期部35は、同期信号発生器22とPTPメッセージaを送受信し、同期信号発生器22の時刻と、時刻同期部35の時刻との比較を都度行うことで、時刻の揺らぎの大きさ、すなわち揺らぎ情報mを取得して、装置時刻情報dと一緒にタイミング導出部34へ出力する(S2B)。
【0107】
揺らぎの大きさは、同期信号発生器22やネットワーク等の環境要因によって変化すると考えられる。このため、時刻同期部35は、システム毎に、揺らぎの大きさを求める。
【0108】
タイミング導出部34は、揺らぎ情報mから得られる揺らぎの大きさと、ステップS4において装置設定部33から出力されたターゲット位相範囲(上限、下限)と、RTP受信部31からのヘッダ情報hとに基づいて、PTを導出する(S2C)。
【0109】
図17は、第2の実施形態の送出方法が適用されたマスター送出システムで考慮される送信時刻、IP/SDI変換レイテンシ、およびターゲット位相のタイミングの関係を示す図である。
【0110】
タイミング導出部34はさらに、
図17に示すような以下の関係、すなわち、
PT≦Ta2-Ti-IP/SDI変換レイテンシ-揺らぎ情報、かつ
PT≧Ta1-Ti-IP/SDI変換レイテンシ+揺らぎ情報、
を満たすようにPTを導出し、導出したPTをIP/SDI変換部32へする(S5)。
【0111】
このように、第2の実施形態の送出方法が適用されたマスター送出システムによれば、IPゲートウェイ23が、揺らぎの大きさを考慮することによって、ターゲット位相に幅を持たせ、揺らぎが存在した場合であっても、それがターゲット位相の範囲に収まるようにPTを設定することが可能となる。
【0112】
(第2の実施形態の変形例1)
第2の実施形態の変形例1について説明する。説明は、第2の実施形態と同じ点については省略し、異なる点について行う。
【0113】
図18は、第2の実施形態の変形例1の送出方法が適用されたマスター送出システムを実現するIPゲートウェイ23および効果装置26bを含む構成例を示すブロック図である。
【0114】
図19は、
図18に示すIPゲートウェイ23の動作例を示すフローチャートである。
【0115】
図20は、
図18に示す効果装置26bの動作例を示すフローチャートである。
【0116】
【0117】
図19に示すフローチャートは、
図3に示すフローチャートのステップS4を、ステップS3Eと、既に説明したステップS2Cとに置き換えたものである。また、
図20に示すフローチャートは、
図13に示すフローチャートのステップS28、S29を、ステップS28A、S29Aに置き換えたものである。
【0118】
したがって、以下では、主にステップS3E、S28A、S29Aについて説明する。
【0119】
すなわち、本変形例の送出方法が適用されたマスター送出システムは、効果装置26bおよび制御装置21に特徴があり、効果装置26bに、揺らぎ測定部45を付加する。揺らぎ測定部45は、IP/SDI変換部32から出力されたSDIを受信し、受信したSDIの、ステップS27において取得されたカウント値eに対する位相の揺らぎを測定し(S28A)、測定された揺らぎの大きさを含む揺らぎ情報mを、制御装置21へ送信する(S29A)。
【0120】
制御装置21は、揺らぎ測定部45から送信された揺らぎ情報mを受信する。そして、装置設定部33に対し、ターゲット位相情報cに加えて、揺らぎ情報mをも出力する。
【0121】
装置設定部33は、制御装置21から出力されたターゲット位相情報cおよび揺らぎ情報mを受け取り、ターゲット位相情報cおよび揺らぎ情報mを、タイミング導出部34へ出力する(S3E)。
【0122】
タイミング導出部34は、ターゲット位相情報c、揺らぎ情報m、ヘッダ情報h、および装置時刻情報dに基づいて、IPゲートウェイ23の出力位相がターゲット位相の範囲を超えないようにPTを導出し、IP/SDI変換部32に出力する。
【0123】
本変形例の送出方法が適用されたマスター送出システムによれば、このように、位相の揺らぎがあった場合でも、IP/SDI変換部32でなされるIP/SDI変換処理の開始タイミングPTの最適化を図ることが可能となる。
【0124】
(第2の実施形態の変形例2)
第2の実施形態の変形例2について説明する。説明は、第2の実施形態と同じ点については省略し、異なる点について行う。
【0125】
図21は、第2の実施形態の変形例2の送出方法が適用されたマスター送出システムを実現するIPゲートウェイ23および効果装置26を含む構成例を示すブロック図である。
【0126】
本変形例の送出方法が適用されたマスター送出システムは、
図18において効果装置26bの内部に備えられていた揺らぎ測定部45を、IPゲートウェイ23および効果装置26の外部に設けられた測定器29の内部に備えたことに特徴がある。
【0127】
図21に示すIPゲートウェイ23の動作例を示すフローチャートは、
図19と同様である。
【0128】
図22は、
図21に示す測定器29の動作例を示すフローチャートである。
【0129】
【0130】
図22に示すフローチャートは、
図20に示すフローチャートのステップS27、S28Aを、ステップS27A、S28Bに置き換えたものである。
【0131】
したがって、以下では、主にステップS27A、S28Bについて説明する。
【0132】
揺らぎ測定部45は、同期信号発生器22から出力されたBB信号bを受け取る(S27A)。揺らぎ測定部45はまた、ステップS6においてIP/SDI変換部32から出力されたSDIを受信し、SDIのBB信号bに対する位相を監視し、位相の揺らぎの大きさを測定し(S28B)、測定された揺らぎの大きさを含む揺らぎ情報mを、制御装置21へ出力する(S29A)。
【0133】
このように、揺らぎ測定部45を付加した構成によって奏される効果は、第2の実施形態の変形例1で奏されるものと同じであるが、本変形例では、揺らぎ測定部45を、効果装置26の外部に備えているので、
図18に示すように効果装置26bに揺らぎ測定部45を内蔵できない場合であっても、実現することが可能である。
【0134】
[第3の実施形態]
第3の実施形態の送出方法が適用されたマスター送出システムについて説明する。説明は、第1および第2の実施形態と同じ点については省略し、異なる点について行う。
【0135】
図23は、第3の実施形態の送出方法が適用されたマスター送出システムを実現するIPゲートウェイ23および効果装置26aを含む構成例を示すブロック図である。
【0136】
第3の実施形態の送出方法が適用されたマスター送出システムは、PTP同期の環境が不安定でPTPの精度1μ秒を超える場合に対処することを想定している。
【0137】
PTP同期の環境が不安定でPTPの精度1μ秒を超える事象としては例えば、同期信号発生器22と、IPゲートウェイ23との通信が不安定で、IPゲートウェイ23の時刻同期部35がホールドオーバーする場合を含む。ホールドオーバー中は同期信号発生器22の時刻にずれが生じ、BB信号bとの同期がずれる。このとき、AVDL引き込み範囲を超える恐れがある。
【0138】
図23におけるIPゲートウェイ23および効果装置26aの構成は、
図11におけるIPゲートウェイ23および効果装置26aの構成と同一である。ただし、前述したように、同期信号発生器22と、IPゲートウェイ23との通信が不安定で、IPゲートウェイ23の時刻同期部35がホールドオーバーしている。
図23では、ホールドオーバーを点線で示している。
【0139】
図24は、
図23に示すIPゲートウェイ23の動作例を示すフローチャートである。
【0140】
図24におけるステップ番号は、
図23にも示されている。既出のステップ番号の説明は省略する。
【0141】
図24に示すステップ番号のうち、既出ではないステップS5Aが、本実施形態における特徴的な処理に対応する。したがって、以下では主にステップS5Aについて説明する。
【0142】
IPゲートウェイ23の運用中にホールドオーバーが発生した場合(S5A:Yes)、前述したステップS3CおよびS3Dが行なわれる。
【0143】
すなわち、ステップS3Cでは、制御装置21が、位相差検出部44から送信された位相差fを受信し、装置設定部33に対して位相差fを出力し、この位相差fを装置設定部33が受け取り、受け取った位相差fを、タイミング導出部34へ出力する(S3C)。
【0144】
次に、ステップS3Dでは、タイミング導出部34が、位相差fを受け取り、位相差fを加算することによってPTを更新し、更新されたPTをIP/SDI変換部32へ出力する(S3D)。
【0145】
これに応じて、IP/SDI変換部32は、更新されたPTを新たな開始タイミングとしてIP/SDI変換処理を行い、変換処理の結果得られたSDIを、効果装置26aへ出力する(S6)。
【0146】
その後、効果装置26aにおいて、前述したステップS27~S29の処理が行われ、位相差fが制御装置21へフィードバックされ、
図24に示す動作が繰り返されることによって、制御装置21の位相差fを更新でき、もって、IP/SDI変換部32でなされるIP/SDI変換処理の開始タイミングPTを再設定することで、AVDL引き込み範囲を超えないようにし、放送への悪影響を抑えることができる。
【0147】
なお、運用中にホールドオーバーが発生しない場合(S5A:No)、ステップS5の後にステップS6に進む。この処理の流れは、
図3に示すフローチャートと同様である。
【0148】
次に、本実施形態の変形例として、ホールドオーバー耐力を持たせるために、システム構築時にホールドオーバー時の単位時間あたりの位相ずれ量を測定しておき、ホールドオーバー発生時に、AVDL範囲を超えないようにPTを設定する方法について、
図25のフローチャートを用いて説明する。
【0149】
ステップS6では、前述したように、IPゲートウェイ23のIP/SDI変換部32において、IP/SDI変換が実行され(S6)、SDIが効果装置26aのAVDL部41および位相差検出部44へ出力される。これによって、位相差検出部44においてSDIが受け取られる(S32)。また、IPゲートウェイ23の時刻同期部35が、ホールドオーバー状態とされる(S33)。
【0150】
次に、位相差検出部44において、受け取ったSDIの、単位時間当たりの位相ずれが観測され(S34)、観測された位相ずれが、位相差検出部44から制御装置21へ送信される(S35)。
【0151】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0152】
10・・マスター送出システム、20A・・現用系、20B・・予備系、21・・制御装置、22・・同期信号発生器、23・・ゲートウェイ、24・・フレーム同期部、25・・スイッチャ、26・・効果装置、27・・符号化装置、28・・多重化装置、29・・測定器、31・・RTP受信部、32・・IP/SDI変換部、33・・装置設定部、34・・タイミング導出部、35・・時刻同期部、36・・フレームカウンタ、37・・位相差検出部、41・・AVDL部、42・・フレームカウンタ、43・・信号処理部、44・・位相差検出部、45・・揺らぎ測定部、50・・送信システム、60・・RTP送信機、a・・PTPメッセージ、b・・BB信号、c・・ターゲット位相情報、d・・装置時刻情報、e・・カウント値、f・・位相差、h・・ヘッダ情報、m・・揺らぎ情報、p・・ペイロードヘッダ、PT・・開始タイミング、t・・タイミング情報、α・・スタジオ、β・・回線センター、γ・・サーバシステム。