(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004394
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】防水構造
(51)【国際特許分類】
E01B 26/00 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
E01B26/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104044
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】307038540
【氏名又は名称】三和シヤッター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103137
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 滋
(72)【発明者】
【氏名】高井 直人
(72)【発明者】
【氏名】辻 健夫
(57)【要約】
【課題】軌条の敷設部における浸水を防止する。
【解決手段】
軌条1と、軌条1を両側から挟む立設部(支持体3)と軌条1が載設された床面(躯体床面2)を備えた躯体と、軌条1の側面1´と立設部との間の隙間を塞ぐ防水ブロック4と、を備え、防水ブロック4は、軌条1の側面1´に密着する第1面(内側見込面40)と、躯体の前記立設部の外側見付面(30)に密着する第2面(第2内側見付面451)と、前記床面に密着する第3面(下面43)と、を備えている。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌条と、
前記軌条を両側から挟む立設部と前記軌条が載設された床面を備えた躯体と、
前記軌条の側面と前記躯体との間の隙間を塞ぐ防水ブロックと、
を備え、
前記防水ブロックは、前記軌条の側面に密着する第1面と、前記躯体の前記立設部の外側見付面に密着する第2面と、前記躯体の前記床面に密着する第3面と、を備えている、
防水構造。
【請求項2】
前記防水ブロックは、ブロック本体と、ブロック本体の表面の少なくとも部分に設けた、前記ブロック本体よりも軟質の水密部材と、からなり、
前記防水ブロックの前記第1面、前記第2面、前記第3面は、それぞれ、前記ブロック本体の第1面、第2面、第3面に設けられた水密部材からなる、
請求項1に記載の防水構造。
【請求項3】
前記軌条は、断面視において、第1の幅寸法を備えた頭部と、第1の幅寸法よりも大きい第2の幅寸法を備えた脚部と、頭部と脚部との間で延びる細幅の立ち上がり部と、からなり、
前記軌条の前記側面は、略垂直状の上側部分と、傾斜状の下側部分と、略垂直状の中間部分と、前記上側部分と前記中間部分との間の上側湾曲部と、前記下側部分と前記中間部分との間の下側湾曲部と、からなり、
前記ブロック本体の前記第1面は、前記軌条の前記側面に適合する形状を有しており、前記ブロック本体の前記第1面の上側湾曲部のR形状は、前記軌条の前記上側湾曲部のR形状よりも小さく、前記第1面の下側湾曲部のR形状は、前記軌条の前記下側湾曲部のR形状よりも小さく、
前記防水ブロックの前記第1面を形成する前記水密部材は、前記軌条の前記側面と前記ブロック本体の前記第1面との間で圧縮状態となる、
請求項2に記載の防水構造。
【請求項4】
前記防水ブロックの前記第1面は内側見込面であり、前記防水ブロックは前記軌条から離間する側の外側見込面を備えており、
前記防水ブロックの前記内側見込面の見込寸法は前記外側見込面の見込寸法よりも大きく、
前記防水ブロックは前記立設部の見込面と前記軌条の前記側面との間に位置する部分を備えている、
請求項1に記載の防水構造。
【請求項5】
前記防水ブロックの前記第1面を前記軌条の前記側面に水平方向に押圧する第1押圧手段を備えている、
請求項1~4いずれか1項に記載の防水構造。
【請求項6】
前記防水ブロックの前記第2面を前記立設部の前記外側見付面に水平方向に押圧する第2押圧手段を備えている、
請求項5に記載の防水構造。
【請求項7】
前記防水ブロックの前記第3面は、少なくとも前記第2面に比べて滑動性が高い材質から形成されている、
請求項6に記載の防水構造。
【請求項8】
軌条と、前記軌条と略同高であり、前記軌条を両側から挟む立設部と前記軌条が載設された床面を備えた躯体と、を含む軌条敷設部において、
軌条の側面に密着する第1面と、前記躯体の前記立設部の外側見付面に密着する第2面と、前記躯体の前記床面に密着する第3面と、を備えた防水ブロックを用意し、
前記防水ブロックによって、前記軌条の側面と前記躯体との間の隙間を塞ぐ工程は、
前記第3面を床面に押圧する工程と、
前記第1面を前記軌条の前記側面に押圧する工程と、
前記第2面を前記立設部の前記外側見付面に押圧する工程と、
からなる、
防水構造の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水構造に係り、詳しくは、軌条の敷設部における防水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、気象の変化による台風やゲリラ豪雨が頻繁に発生し、河川洪水や内水氾濫の浸水害が生じる場合が増えている。通常、建物開口部を止水状態で閉鎖して内部への浸水を防水する場合には、建物開口部に防止扉を設置することが行われているが、軌条が敷設された部位における浸水を防止したい場合には(例えば、列車を格納する車両基地への浸水を防止したい場合)、地面に軌条が存在することから、扉体で防水構造を構成することは困難である。特許文献1には、引戸式防潮扉が開示されているが、路面軌条と扉体走行用軌条との間の隙間や扉体下端から浸水するおそれがある。
【0003】
従来は、軌条に隣接して土嚢を積んで防水対策を行っているが、土嚢と軌条との間にはどうしても隙間が生じてしまい、漏水が発生する。土嚢に代えていわゆる防水ブロックを用いて軌条の側方を塞ぐことが考えられるが、軌条の形状や防水ブロックの形状の僅かな誤差に起因して漏水が発生し得る。
【特許文献1】実昭公47-27784
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、軌条の敷設部における浸水を防止することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が採用した技術手段は、
軌条と、
前記軌条を両側から挟む立設部と前記軌条が載設された床面を備えた躯体と、
前記軌条の側面と前記躯体との間の隙間を塞ぐ防水ブロックと、
を備え、
前記防水ブロックは、前記軌条の側面に密着する第1面と、前記躯体の前記立設部の外側見付面に密着する第2面と、前記躯体の前記床面に密着する第3面と、を備えている、
防水構造、
【0006】
1つの態様では、前記防水ブロックは、ブロック本体と、ブロック本体の表面の少なくとも部分に設けた、前記ブロック本体よりも軟質の水密部材と、からなり、
前記防水ブロックの前記第1面、前記第2面、前記第3面は、それぞれ、前記ブロック本体の第1面、第2面、第3面に設けられた水密部材からなる。
【0007】
1つの態様では、前記軌条は、断面視において、第1の幅寸法を備えた頭部と、第1の幅寸法よりも大きい第2の幅寸法を備えた脚部と、頭部と脚部との間で延びる細幅の立ち上がり部と、からなり、
前記軌条の前記側面は、略垂直状の上側部分と、傾斜状の下側部分と、略垂直状の中間部分と、前記上側部分と前記中間部分との間の上側湾曲部と、前記下側部分と前記中間部分との間の下側湾曲部と、からなり、
前記ブロック本体の前記第1面は、前記軌条の前記側面に適合する形状を有しており、前記ブロック本体の前記第1面の上側湾曲部のR形状は、前記軌条の前記上側湾曲部のR形状よりも小さく、前記第1面の下側湾曲部のR形状は、前記軌条の前記下側湾曲部のR形状よりも小さく、
前記防水ブロックの前記第1面を形成する前記水密部材は、前記軌条の前記側面と前記ブロック本体の前記第1面との間で圧縮状態となる。
【0008】
1つの態様では、前記防水ブロックの前記第1面は内側見込面であり、前記防水ブロックは前記軌条から離間する側の外側見込面を備えており、
前記防水ブロックの前記内側見込面の見込寸法は前記外側見込面の見込寸法よりも大きく、
前記防水ブロックは前記立設部の見込面と前記軌条の前記側面との間に位置する部分を備えている。
【0009】
1つの態様では、前記防水ブロックの前記第1面を前記軌条の前記側面に水平方向に押圧する第1押圧手段を備えている。
1つの態様では、前記防水ブロックの前記第2面を前記立設部の前記外側見付面に水平方向に押圧する第2押圧手段を備えている。
1つの態様では、前記防水ブロックの前記第3面は、少なくとも前記第2面に比べて滑動性が高い材質から形成されている。
1つの態様では、前記防水ブロックの前記第3面と前記第1面は、前記第2面に比べて滑動性が高い材質から形成されている。
【0010】
1つの態様では、前記立設部の高さは、前記軌条と略同高であり、前記防水ブロックの高さは、前記軌条及び前記躯体と略同高である。
1つの態様では、前記立設部、前記軌条、前記防水ブロックと、から下側の防水壁が形成され、防水壁の上面には、下面及び幅方向両端部位に三方状の水密部材を備え、幅方向両端部位が前記立設部の上面に立設された一対の支柱の溝部に受け入れられた止水パネルが設けられ、前記止水パネルの下面の水密部材が前記下側の防水壁の上面に密着しており、前記止水パネルが上側の防水壁を形成している。
【0011】
1つの態様では、前記防水ブロックの上面と前記立設部の上面に亘って上蓋が設けられており、前記上蓋は前記下側の防水壁の上面の部分を形成しており、前記止水パネルの下面の水密部材が、前記軌条の上面、前記防水ブロックの上面、前記上蓋の上面、前記立設部の上面に亘って連続状に密着して止水ラインを形成する。
【0012】
本発明が採用した防水構造の設置方法は、
軌条と、前記軌条と略同高であり、前記軌条を両側から挟む立設部と前記軌条が載設された床面を備えた躯体と、を含む軌条敷設部において、
軌条の側面に密着する第1面と、前記躯体の前記立設部の外側見付面に密着する第2面と、前記躯体の前記床面に密着する第3面と、を備えた防水ブロックを用意し、
前記防水ブロックによって、前記軌条の側面と前記躯体との間の隙間を塞ぐ工程は、
前記第3面を床面に押圧する工程と、
前記第1面を前記軌条の前記側面に押圧する工程と、
前記第2面を前記立設部の前記外側見付面に押圧する工程と、
からなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明において、防水ブロックは、前記軌条の側面に密着する第1面と、前記躯体の前記立設部の外側見付面に密着する第2面と、前記躯体の前記床面に密着する第3面と、を備えており、これらの3つの面の密着方向(押し付け方向)は互いに相反しないため、良好な水密構造が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】防水構造を形成する前の状態を示す平面図である。
【
図2】防水構造を形成する前の状態を示す正面図である。
【
図3】防水構造が形成された状態を示す平面図である。
【
図4】防水構造が形成された状態を示す正面図である。
【
図6】
図3において止水パネルを取り除いた状態を示す図である。
【
図7】
図6において上蓋を取り除いた状態を示す図である。
【
図9】軌条の側面と防水ブロックとの密着状態を示す断面図である。
【
図10】
図3の中央の支柱を含む部分拡大図である。
【
図11】
図5におけるA矢視から見た断面図である(軌条を除いた状態)。
【
図13】
図5におけるB矢視から見た断面の部分拡大図である。
【
図14】
図5におけるC矢視から見た断面の部分拡大図である。
【
図15】
図5におけるD矢視から見た断面の部分拡大図である。
【
図19】防水ブロックのブロック本体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[A]防水構造の構成要素
[A-1]全体構成
本実施形態は、軌条の敷設部の防水構造に関するものである。
図1~
図4に示すように、一対の軌条1が平行状に敷設されており、軌条1の長さ方向の所定位置において、防水構造が取り外し可能に設置されるようになっている。本実施形態に係る防水構造の一部の要素は躯体(躯体下面2、支持体3、側壁9)として常設された常設要素であり、防水構造を構成する組立分解可能な要素を常設要素に設置して防水構造を構成することで、軌条1に直交する方向に延びる堤防(防水ブロック4、上蓋6、止水パネル8)が形成可能となっている。
図3において、堤防の上側が堤内、下側が堤外となっており、本実施形態では、堤内には列車を格納する車両基地が位置するようになっている。
図1、
図2に示す躯体の構造(形状)は例示であって、図示の態様に限定されない。
【0016】
本実施形態に係る防水構造において、軌条1、躯体下面2、軌条1に直交する方向に延びる支持体3、軌条1に平行して延びる左右の側壁9、支持体3から側壁9に沿って立ち上がる左右の支柱7は、常設要素であり、防止ブロック4、固定部材5、上蓋6、支柱7´、止水パネル8は、取り外し可能な要素である。軌条1及び躯体(躯体下面2、支持体3、側壁9、支柱7)に対して、防止ブロック4、固定部材5、上蓋6、支柱7´、止水パネル8を取り付けることで防水構造を備えた堤防が形成される。なお、支柱7を取り外し可能な要素としてもよい。
【0017】
[A-2]軌条
図9に示すように、軌条1は、断面視において、第1の幅寸法を備えた頭部10と、第1の幅寸法よりも大きい第2の幅寸法を備えた脚部ないし底部11と、頭部10と底部11との間で延びる細幅の立ち上がり部ないし腹部12と、からなる。軌条1の側面1´は、略垂直状の上側部分(頭部10の側面)と、傾斜状の下側部分(底部11の側面)と、略垂直状の中間部分(腹部12の側面)と、前記上側部分と前記中間部分との間の上側湾曲部(上首部)13と、前記下側部分と前記中間部分との間の下側湾曲部(下首部)14と、からなる。軌条1の形状は規格化されており、上側湾曲部(上首部)13、下側湾曲部(下首部)14は、それぞれ所定のR形状を備えている。
【0018】
[A-3]躯体
[A-3-1]躯体下面
軌条1は、地面ないし床面上に敷設されている。地面ないし床面下には、軌条1の下方に位置して、支持構造物が埋設されている。地面ないし床面下には、支持体3、側壁9の下方に位置して、支持構造物が埋設されている。支持構造物の詳細な説明は省略する。本明細書では、地面ないし床面と支持構造物を含めて躯体下面2と称する。
【0019】
[A-3-2]支持体及び側壁
支持体3は、躯体下面2に立設されており、軌条1と略同じ高さ寸法を備え、軌条1と直交する方向に延設されている。
図1、
図2に示すように、支持体3は、垂直面からなる外側見付面30と、垂直面からなる内側見付面31と、水平面からなる上面32と、垂直面からなる見込面33と、を備えている。複数の支持体3の各見込面33が、軌条1を両側から挟むように、軌条1の側面1´に対向しており、支持体3の見込面33と軌条1の側面1´との間には空間が形成されている。図示の態様では、一対の軌条1が離間して平行状に敷設されており、左側の軌条1の左側に位置する左側の支持体3、右側の軌条1の右側に位置する右側の支持体3、左側の軌条1と右側の軌条1の間に位置する中央の支持体3の3つの支持体3が設けてある。支持体3において、見込面33と反対側、すなわち、軌条1から離間する側は幅広部34、35が一体形成されている。
【0020】
本実施形態に係る支持体3はコンクリートから形成されており、支持体3のコンクリートの外側見付面には鋼板30´が設けてあり、鋼板30´から外側見付面30が形成されている(
図6参照)。外側見付面30(鋼板30´)には、ボルトB1の螺子孔300が形成されている。支持体3の外側見付面30の所定位置(螺子孔300よりも見込面33から離間した位置)には、位置決め部材55が設けてある。
図22に示すように、本実施形態に係る位置決め部材55は、垂直面からなる後面550と、水平面からなる下面551と、垂直面からなる左右の見込面552と、を備えており、下面551が躯体下面2に載置され、後面550が鋼板30´の所定位置に固定(例えば、溶接)されている。位置決め部材55の取付位置は、固定部材5の第1押圧手段が適切な押圧を実行できるような所定位置(例えば、左右の見込面552のいずれか一方を、見込面33からの所定距離に一致させる)に決定されており、この所定位置に取り付けられる。
【0021】
左側の支持体3の見込面33は、左側の軌条1の左側の側面1´に離間対向しており、左側の支持体3において、左側の軌条1から離間する側には幅広部34が一体形成されており、幅広部34から内側に向かって軌条1に平行して側壁9が立ち上がり形成されている。
【0022】
中央の支持体3の左側の見込面33は、左側の軌条1の右側の側面1´に離間対向しており、右側の見込面33は、右側の軌条1の左側の側面1´に離間対向している。中央の支持体3の幅方向の中央部位は幅広部35となっている。幅広部35の上面にはボルトB4の螺子孔350が形成されている。
【0023】
右側の支持体3の見込面33は、右側の軌条1の右側の側面1´に離間対向しており、右側の支持体3において、右側の軌条1から離間する側には幅広部34が一体形成されており、幅広部34から内側に向かって軌条1に平行して側壁9が立ち上がり形成されている。
【0024】
[A-4]防水ブロック
支持体3の見込面33と軌条1の側面1´と躯体下面2とから形成された空間を塞ぐように防水ブロック4が設けられる。
図8、
図9に示すように、防水ブロック4の高さ寸法は、軌条1の高さ寸法、支持体3の高さ寸法と略同じ高さ寸法を備えている。本実施形態に係る防水ブロック4は、全体が支持体3の見込面33と軌条1の側面1´の間に位置するものではなく、平面視において、半部が支持体3の見込面33と軌条1の側面1´の間に位置し、残りの半部の見付寸法は、軌条1の側面1´と支持体3の見込面33との間隔よりも大きく、支持体3の外側見付面30よりも外側に位置している(
図7参照)。
【0025】
図18に示すように、本実施形態に係る防水ブロック4は、軌条1の側面1´に適合する形状を備えた内側見込面40と、軌条1の側面1´から離間した側の垂直状の外側見込面41と、水平状の上面42と、水平状の下面43と、垂直状の外側見付面44と、垂直状の内側見付部45と、を備えており、内側見付部45は、第1内側見付面450と、第2内側見付面451と、傾斜面452と、からなる。本実施形態において、防水ブロック4の内側見込面40、下面43、第2内側見付面451は、水密部材40a、43a、451aから形成されている。
【0026】
防水ブロック4の内側見込面40は、上側垂直面400と、下側傾斜面401と、中間垂直面402と、上側湾曲面403と、下側湾曲面404と、からなる。防水ブロック4の内側見込面40の上側垂直面400、下側傾斜面401、中間垂直面402、上側湾曲面403、下側湾曲面404は、それぞれ、軌条1の側面1´の上側部分(頭部10の側面)、下側部分(底部11の側面)、中間部分(腹部12の側面)、上側湾曲部(上首部)13、下側湾曲部(下首部)14に対応している。
【0027】
本実施形態に係る防水ブロック4は、ブロック本体4´と、ブロック本体4´の所定の面に設けた水密部材40a、43a、451aと、からなる。ブロック本体4´は、軌条1の側面1´に適合する形状を備えた内側見込面40´と、軌条1の側面1´から離間した側の外側見込面41と、水平状の上面42と、水平状の下面43´と、外側見付面44と、内側見付部45´と、を備えており、内側見付部45´は、第1内側見付面450と、第2内側見付面451´と、傾斜面452と、からなる。ブロック本体4´の内側見込面40´、下面43´、第2内側見付面451´には、水密部材40a、43a、451aが設けてある。
【0028】
ブロック本体4´は、水密部材40a、43a、451aよりも硬質の材料から形成されている。本実施形態では、ブロック本体4´は、ABS樹脂から形成されているが、所定の硬度を備えていれば材質は限定されず、他の樹脂や硬質のゴム材等であってもよい。水密部材は、例えば、水密ゴムであり、より具体的には、例えば、EPDMゴム発泡体を主材としたシール材から形成されている。本実施形態において、防水ブロック4の下面43を形成する水密部材43a及び内側見込面40を形成する水密部材40aは、防水ブロック4の第2内側見付面451を形成する水密部材451aに比べて、滑動性に優れた材料から形成されている。
【0029】
ブロック本体4´の内側見込面40´は、軌条1の側面1´に適合する形状を有している。具体的には、ブロック本体4´の内側見込面40´は、上側垂直面400´と、下側傾斜面401´と、中間垂直面402´と、上側湾曲面403´と、下側湾曲面404´と、からなり、それぞれ、軌条1の側面1´の上側部分(頭部10の側面)、下側部分(底部11の側面)、中間部分(腹部12の側面)、上側湾曲部(上首部)13、下側湾曲部(下首部)14に対応している。ブロック本体4´の内側見込面40´の上側湾曲面403´のR形状は、軌条1の上側湾曲部13のR形状よりも小さく、内側見込面40´の下側湾曲面404´のR形状は、軌条1の下側湾曲部14のR形状よりも小さい。
図9に示すように、防水ブロック4の内側見込面40を軌条1の側面1´に密着させた状態において、ブロック本体4´の内側見込面40´と軌条1の側面1´の間隔に関して、傾斜部(下側傾斜面401と底部11の傾斜面、上側湾曲面403の傾斜面と上側湾曲部13の傾斜面、下側湾曲面404の傾斜面と下側湾曲部14の傾斜面)の間隔が垂直部(上側垂直面400と頭部10の側面、中間垂直面402と腹部12の側面)の間隔よりも大きくなっている。こうすることで、防水ブロック4を水平方向に軌条1の側面1´に押圧する時に、傾斜部における水密部材40aと軌条1の側面1´との当接部が抵抗となって、防水ブロック4の内側見込面40(水密部材40a)の軌条1の側面1´の密着が不十分となることを防止している。
【0030】
[A-5]固定部材5
図20に示すように、固定部材5は、本体50を備え、本体50には、第1押圧体51、第2押圧体52、第1操作部53、第2操作部54が装着されている。本体50は、所定厚の鋼板を折り曲げ形成してなり、軌条1から遠い側の垂直状の第1見付面500と、垂直状の見込面501と、軌条1に近い側の垂直状の第2見付面502と、水平状の上面503と、水平状の下面504と、からなる。第1見付面500には、ボルトB1の挿通孔5000が形成されている。挿通孔5000の径は、ボルトB1の軸径に対してクリアランスを備えている。
【0031】
本体50の見込面501には、第1押圧体51が見付方向に移動可能に設けてある。第1押圧体51は、縦長方形状の第1押圧プレート510と、第1押圧プレート510の裏面側に高さ方向に間隔を存して突設した複数(本実施形態では2本)の円筒状の軸部511と、を備え、軸部511は、見込面501に高さ方向に間隔を存して形成された孔部を挿通しており、軸部511には、見込面501を挟んで、第1押圧プレート510と反対側に位置して抜け止めリング512が形成されている。第1見付面500には、第1操作部53が設けてあり、第1操作部53によって、第1押圧体51を見付方向に押し出すようになっている。第1操作部53による第1押圧体51の押圧量は調整可能となっている。
【0032】
本体50の第2見付面502には、第2押圧体52が見込方向に移動可能に設けてある。第2押圧体52は、縦長方形状の第2押圧プレート520と、第2押圧プレート520の裏面側に高さ方向に間隔を存して突設した複数(本実施形態では2本)の円筒状の軸部521と、を備え、軸部521は、第2見付面502に高さ方向に間隔を存して形成された孔部を挿通しており、軸部521には、第2見付面502を挟んで、第2押圧プレート520と反対側に位置して、抜け止めリング522が形成されている。第2見付面502には、第2操作部54が設けてあり、第2操作部54によって、第2押圧体52を見込方向に押し出すようになっている。第2操作部54による第2押圧体52の押圧量は調整可能となっている。
【0033】
[A-6]上蓋
上蓋6は、所定の見付寸法と所定の見込寸法を備えた方形状の金属製のプレート60を備え、プレート60の見込方向の外側端には垂下片61が折り曲げ形成されており、プレート60の見込方向の外側部位600にはボルトB2の挿通孔62が形成されている。垂下片61は、固定部材5の上面503の屋外側端部と当接させることで、上蓋6のプレート60の挿通孔62と固定部材5の上面503の螺子孔5030との位置合わせに用いられる。
【0034】
上蓋6のプレート60の下面には、下側水密部材63が設けてある。下側水密部材63は、プレート60の下面において、外側部位600を除く全域に設けてあり、下側水密部材63の幅方向(見付方向)両端部位は、プレート60の幅方向両端を越えて延びる延出部630を備えている。下側水密部材63の延出部630の上面には、プレート60の幅方向両端面に沿ってプレート60の上面よりも上方に突出する端部上側水密部材64が形成されている。なお、端部上側水密部材64に加えて、プレート60の上面に亘って上側水密部材を設けてもよい。下側水密部材63、端部上側水密部材64は、例えば、水密ゴムであり、より具体的には、例えば、EPDMゴム発泡体を主材としたシール材から形成されている。
【0035】
[A-7]支柱
左右の支持体3の幅広部34の上面には、支柱7が立設されている。左側の支持体3の幅広部34の上面には、溝部70を備えた断面視コ字形状の支柱7が立設されており、支柱7は、溝部70の底壁をボルトで側壁9に固定することで取り付けられている。右側の支持体3の幅広部34の上面には、溝部70を備えた断面視コ字形状の支柱7が立設されており、支柱7は、溝部70の底壁をボルトB3で側壁9に固定することで取り付けられている。本実施形態では、支柱7は常設要素であり、支柱7の側壁9の間にはコーキングが施されているが、支柱7を着脱可能に設けてもよい。
【0036】
中央の支持体3の幅広部35の上面には、断面視H形状の支柱7´が立設されており、支柱7´は、下面部をボルトB4で幅広部35の上面に固定することで着脱可能に取り付けられている。断面視H形状の支柱7´は一対の溝部70を形成している。
【0037】
左側の支持体3の幅広部34に立設した支柱7の溝部70と、中央の支持体の幅広部35に立設した支柱7´の一方の溝部70は対向する一対の溝部70を形成しており、一方の止水パネル8の幅方向端部を受け入れるようになっている。右側の支持体3の幅広部34に立設した支柱7の溝部70と、中央の支持体の幅広部35に立設した支柱7´の他方の溝部70は対向する一対の溝部70を形成しており、他方の止水パネル8の幅方向端部を受け入れるようになっている。
【0038】
[A-8]止水パネル
止水パネル8は、設置時に外側(水圧が直接作用し得る側)に位置する第1見付面80と、設置時に内側に位置する第2見付面81と、上面82と、下面83と、幅方向両端の見込面84と、を有しており、下面83には、全幅に亘って下方水密部材85が設けてあり、第2見付面81の幅方向両端には、全高に亘って左右の側方水密部材86が設けてあり、左右の側方水密部材86の下端と下方水密部材85は密着して接続されており、下方水密部材85と左右の側方水密部材86は、三方に連続して設けてある。下方水密部材85、側方水密部材86は、例えば、水密ゴムであり、より具体的には、例えば、EPDMゴム発泡体を主材としたシール材から形成されている。
【0039】
止水パネル8の第1見付面80の幅方向両端部位には、左右の操作部87が設けてあり、止水パネル8の幅方向両端部を支柱7の溝部70に受け入れた状態で、操作部87を操作することで、止水パネル8は、下方及び内方に押圧されるようになっている。
図10、
図11に示すように、側方水密部材86は溝部70の内側見付面700に圧接している。このような止水パネル自体は公知である。
【0040】
[B]防水構造の設置方法
[B-1]防水ブロックの仮設置
防水ブロック4を用意し、軌条1の側面1´と支持体3の見込面33と躯体下面2で形成された空間を塞ぐように、防水ブロック4を設ける。防水ブロック4の内側見込面40を軌条1の側面1´に近接ないし当接させ、内側見付部45の第2内側見付面451を支持体3の外側見付面30の端部(見込面33に近い部位)に近接ないし当接させて、下面43を躯体下面2に載置する。
【0041】
[B-2]固定部材の設置
固定部材5を用意し、固定部材5の本体50の第1見付面500を、支持体3の外側見付面30の所定部位に当接させ、本体50の下面504を躯体下面2に載置させ、第1見付面500と支持体3の外側見付面30をボルトB1で固定する。この時、固定部材5の本体50の端縁を、支持体3の外側見付面30の所定部位に固定されている位置決め部材55の見込面552に当接させて位置決めする。本実施形態において、挿通孔5000の径は、ボルトB1の軸径に対してクリアランスを備えているが、固定部材5を、位置決め部材55を用いて位置決めして固定するようになっている。固定部材5を取り付けた後に、防水ブロック4を仮設置できるような態様においては、防水ブロックの仮設置と固定部材の設置の順序が入れ替わってもよい。
【0042】
[B-3]防水ブロックの固定
固定部材5を設置した状態において、固定部材5の本体50の見込面501は、防水ブロック4の外側見込面41に離間対向している。固定部材5の第1押圧プレート510は、固定部材5の本体50の見込面501と防水ブロック4の外側見込面41の間に位置して、防水ブロック4の外側見込面41に近接ないし当接しており、第1操作部53の操作によって、第1押圧プレート510が防水ブロック4の外側見込面41を押圧することで、防水ブロック4の内側見込面40(水密部材40a)を軌条1の側面1´に密着させる。
【0043】
固定部材5を設置した状態において、固定部材5の本体50の第2見付面502は、防水ブロック4の外側見付面44に離間対向している。固定部材5の第2押圧プレート520は、固定部材5の本体50の第2見付面502と防水ブロック4の外側見付面44の間に位置して、防水ブロック4の外側見付面44に近接ないし当接しており、第2操作部54の操作によって、第2押圧プレート520が防水ブロック4の外側見付面44を押圧することで、防水ブロック4の第2内側見付面451(水密部材451a)を支持体3の外側見付面30に密着させる。
【0044】
防水ブロック4の下面43は滑動性に優れた部材からなり、防水ブロック4は、下面43が躯体下面2の表面に接触した状態で摺動可能となっている。防水ブロック4が固定部材5によって固定された状態において、防水ブロック4の内側見込面40(水密部材40a)は軌条1の側面1´に密着しており、防水ブロック4の下面43(水密部材43a)は躯体下面2に密着しており、内側見込面40(水密部材40a)と下面43(水密部材43a)は連続している(
図9参照)。防水ブロック4の内側見付部45の第2内側見付面451(水密部材451a)は、支持体3の外側見付面30に密着しており、防水ブロック4の内側見付部45の傾斜面452と支持体3の見込面33は離間している。本実施形態において、固定部材5を用いて防水ブロック4の固定は、止水パネル8の設置後に行われる。
【0045】
[B-4]上蓋の設置
上蓋6を、防水ブロック4の上面42の部分42a、固定部材5の上面503の部分503a、支持体3の上面32の部分32aを覆うように載置し、上蓋6のプレート60の外側部位600を固定部材5の上面503の部分503aに載置し、上蓋6のプレート60の外側部位600の挿通孔62を、固定部材5の上面503の螺子孔5030に一致させ、ボルトB2で固定する。なお、防水ブロック4の上面42の一部(例えば、止水パネル8の下方水密部材85と密着する部分、上蓋6の下側水密部材63と密着する部分)あるいは全面に水密部材を設けてもよい。
【0046】
上蓋6のプレート60の下側水密部材63は、防水ブロック4の内側見付部45の第2内側見付面451と支持体3の外側見付面30の密着部位の上端、及び、支持体3の見込面33と防水ブロック4の内側見付部45の傾斜面452との間の隙間の上端を含む領域に位置している。上蓋6の幅方向一側の端部上側水密部材64は、軌条1の底部11の端部を通る垂直面上に位置しており、幅方向他側の端部上側水密部材64は、固定部材5の本体50の見込面501を通る垂直面上に位置している。本実施形態では、上蓋6は、軌条1の上面100を覆っていない。
【0047】
[B-5]支柱の設置
左側の支持体3の幅広部34の上面に、支柱7を立設する。支柱7は、下端を幅広部34の上面に載置し、溝部70の底壁をボルトB3で側壁9に固定することで着脱可能に取り付けられている。右側の支持体3の幅広部34の上面に、支柱7を立設する。支柱7は、下端を幅広部34の上面に載置し、溝部70の底壁をボルトB3で側壁9に固定することで着脱可能に取り付けられている。中央の支持体3の幅広部35の上面に、支柱7´を立設する。支柱7´は、下面をボルトB4で幅広部35の上面に固定することで着脱可能に取り付けられている。
【0048】
[B-6]止水パネルの設置
左側の支持体3の幅広部34に立設した支柱7の溝部70と、中央の支持体の幅広部35に立設した支柱7´の一方の溝部70は対向する一対の溝部70を形成しており、一対の溝部に一方の止水パネル8の幅方向端部を受け入れた状態で、止水パネル8の下面83の下方水密部材85を、軌条1の上面100、防水ブロック4の上面42、上蓋6の上面(プレート60の上面、端部上側水密部材64)、支持体3の上面32に載置する。
【0049】
この状態で、操作部87を回動操作することで、止水パネル8が内方に向かって斜め下方に移動し、止水パネル8の第2見付面81の幅方向の一端が支柱7の溝部70の内側見付面700に密着し、第2見付面81の幅方向の他端が支柱7´の一方の溝部の内側見付面700に密着し、止水パネル8の下端の下方水密部材85が軌条1の上面100、防水ブロック4の上面42の部分、上蓋6の上面(プレート60の上面、端部上側水密部材64)の部分、支持体3の上面32に密着する。止水パネル8が防水ブロック4、上蓋6を下方に押圧することで、防水ブロック4の内側見込面40の下側傾斜面401が軌条1の脚部11に密着し、防水ブロック4の下面43(水密部材43a)が躯体下面2に密着する。
【0050】
右側の支持体3の幅広部34に立設した支柱7の溝部70と、中央の支持体の幅広部35に立設した支柱7´の他方の溝部70は対向する一対の溝部70を形成しており、一対の溝部に一方の止水パネル8の幅方向端部を受け入れた状態で、止水パネル8の下面83の水密部材85を、軌条1の上面100、防水ブロック4の上面42、上蓋6、支持体3の上面32に載置する。
【0051】
この状態で、操作部87を回動操作することで、止水パネル8が内方に向かって斜め下方に移動し、止水パネル8の第2見付面81の幅方向の一端が支柱7の溝部70の内側見付面700に密着し、第2見付面81の幅方向の他端が支柱7´の他方の溝部の内側見付面700に密着し、止水パネル8の下端の下方水密部材85が軌条1の上面100、防水ブロック4の上面42の部分、上蓋6の上面(プレート60の上面、端部上側水密部材64)の部分、支持体3の上面32に密着する。止水パネル8が防水ブロック4、上蓋6を下方に押圧することで、防水ブロック4の内側見込面40の下側傾斜面401が軌条1の脚部11に密着し、防水ブロック4の下面43(水密部材43a)が躯体下面2に密着する。本実施形態では、止水パネル8の設置後に、固定部材5の第1押圧手段、第2押圧手段によって、防水ブロック4の密着状態の固定が行われる。
【0052】
[C]防水構造
[C-1]全体構造
図3、
図4に示すように、本実施形態に係る防水構造は、軌条1と、軌条1と略同高であり、軌条1を両側から挟むように立設された支持体3と、軌条1及び支持体3と略同高であり、軌条1の側面1´と支持体3との間の隙間を塞ぐ防水ブロック4と、防水ブロック4の上面42と支持体3の上面32に亘って設けた上蓋6と、軌条1の両側に位置して、支持体3上に離間して立設され、対向状の溝部70を備えた一対の支柱7、7´と、下面83及び第2見付面81の幅方向両端部位に三方状の水密部材85、86を備え、幅方向両端部位が一対の支柱7、7´の溝部70に受け入れられている止水パネル8と、からなる。
【0053】
軌条1と同じ高さにおいて、防水ブロック4と支持体3からなる下側の防水壁が形成され、下側の防水壁の直上に位置して、止水パネル8と支柱7、7´からなる上側の防水壁が形成されている。下側の防水壁の上面の所定部位には、上蓋6が固定され、上側の防水壁の下面の下方水密部材85が、下側の防水壁の上面(上蓋6、軌条1の上面100、防水ブロック4の上面42、支持体3の上面32)に密着することで、上側の防水壁と下側の防水壁とから所定高さを備えた堤防が形成される。
図3において、堤防の上側が堤内、下側が堤外となっており、本実施形態では、堤内には列車を格納する車両基地が位置するようになっている。
【0054】
止水パネル8の下面83の下方水密部材85が、軌条1の上面100、防水ブロック4の上面42、上蓋6の上面(プレート60の上面、端部上側水密部材64)、支持体3の上面32に亘って連続状に密着して止水ラインを形成する。
図12に示すように、止水パネル8の下面83の下方水密部材85は、防水ブロック4の上面42及び防水ブロック4の内側見込面40の上縁と密着している。
図13に示すように、止水パネル8の下面83の下方水密部材85と防水ブロック4の上面42に挟まれた状態で、端部上側水密部材64及び下側水密部材63は、圧縮状態(64´、63´)にある。
図14に示すように、止水パネル8の下面83の下方水密部材85が上蓋6のプレート60に密着しており、下側水密部材63は、プレート60と支持体3の上面32の部分32aとの間で圧縮状態(63´)にある。本実施形態では、平面視において、止水パネル8の第1見付面80と支持体3の外側見付面30が一致しているが、これには限定されない。例えば、止水パネル8の下面83の下方水密部材85の見込方向中間位置に、支持体3の外側見付面30が位置するようにしてもよい。この場合、下方水密部材85が、防水パネル4の第2内側見付面451(水密部材451a)と支持体3の外側見付面30の密着面の直上に位置することになり、上蓋6を用いることなく、止水ラインを形成することができる。また、止水パネル8の第2見付面81と防水ブロック4の第1内側見付面450が一致しているが、これには限定されない。
【0055】
[C-2]防水ブロックの止水状態の固定
図7~
図9に示すように、本実施形態において、軌条1の側面1´と支持体3との間の隙間を塞ぐ防水ブロック4は、軌条1と略同じ高さ寸法を備え、軌条1の側面1´に密着する第1面(内側見込面40)と、支持体3の外側見付面30に密着する第2面(第2内側見付面451)と、躯体下面2に密着する第3面(下面43)を備えている。防水ブロック4の下面43(水密部材43a)は、内側見込面40(水密部材40a)及び第2内側見付面451(水密部材451a)に比べて滑動性が高い材質から形成されており、下面43(水密部材43a)が躯体下面2に圧接された状態で、防水ブロック4の見付方向及び見込方向の摺動が可能となっている。
【0056】
本実施形態に係る防水ブロック4の外側見込面41の見込寸法は内側見込面40の見込寸法よりも小さく、防水ブロック4は、平面視において、半部(第1内側見付面450と、傾斜面452と、内側見込面40の半部からなる平面視台形部分)が支持体3の見込面33と軌条1の側面1´の間に位置し、残りの半部(外側見付面44と、外側見込面41と、第2内側見付面451と、内側見込面40の残りの半部からなる平面視長方形部分)の見付寸法は、軌条1の側面1´と支持体3の見込面33との間隔よりも大きく、支持体3の外側見付面30よりも外側に位置している(
図7参照)。防水ブロック4の内側見付部45の傾斜面452は、支持体3の見込面33と離間対向している。なお、支持体3の見込面を平面視傾斜状とし、防水ブロック4の内側見付部45の傾斜面(例えば、水密部材が設けられる)452と密着ないし近接するようにしてもよい。
【0057】
本実施形態に係る防水ブロック4は、固定部材5によって、止水状態に固定されている。固定部材5によって防水ブロック4の止水状態を固定することで、水密性が要求される部位における密着性を高めると共に、防水ブロック4に水圧が作用した場合であっても、防水ブロック4が移動して、防水ブロック4と軌条1の側面1´との間に隙間が生じるようなことがない。また、防水ブロック4は、第2内側見付面451が支持体3の外側見付面30に当接しているので、防水ブロック4の外側見付面44に作用する水圧による力を支持体3で受けるようになっている。固定部材5は、位置決め部材55を用いて位置決めした状態で、第1見付面500が支持体3の外側見付面30の所定部位にボルトB1によって着脱可能に固定されている。
【0058】
固定部材5は、防水ブロック4の第1面(内側見込面40)を軌条1の側面1´に密着状態で押圧する第1押圧手段を備えている。防水ブロック4は、内側見込面40と、軌条1から離間した側の外側見込面41を備え、第1押圧手段は、第1操作部53と、第1操作部53の操作に連動して、防水ブロック4の外側見込面41を押圧する第1押圧プレート510と、を備えている。第1押圧手段は、防水ブロック4を水平方向に押圧することで、防水ブロック4は、下面43が躯体下面2に摺接しながら見付方向に移動して、内側見込面40(水密部材40a)が軌条1の側面1´に密着する。
【0059】
支持体3の外側見付面30における固定部材5の見付方向の位置は、位置決め部材55によって決定されており、ボルトB1の軸径と固定部材5の第1見付面500に形成した挿通孔5000のクリアランスが大きい場合であっても、固定部材5を位置決め固定することで、第1操作部53の操作に連動して、防水ブロック4が設計通りに適切に押圧されて、防水ブロック4の内側見込面40が軌条1の側面1´に密着するようになっており、安定した止水状態を得ることができる。なお、固定部材5の位置決め手段は、図示の態様のものに限定されない。
【0060】
固定部材5は、防水ブロック4の第2面(第2内側見付面451)を支持体3の外側見付面30に密着状態で押圧する第2押圧手段を備えている。防水ブロック4は、第2内側見付面451と、支持体3の外側見付面30から離間した側の外側見付面44を備え、第2押圧手段は、第2操作部54と、第2操作部54の操作に連動して、防水ブロック4の内側見付面44を押圧する第2押圧プレート520と、を備えている。第2押圧手段は、防水ブロック4を水平方向に押圧することで、防水ブロック4は、下面43が躯体下面2に摺接しながら見込方向に移動して、第2内側見付面451(水密部材451a)が支持体3の外側見付面30に密着する。
【0061】
防水ブロック4は、ブロック本体4´と、ブロック本体4´の表面の少なくとも部分に設けた、ブロック本体4´よりも軟質の水密部材40a、43a、451aと、からなり、防水ブロック4の内側見込面40、第2内側見付面451、下面43は、それぞれ、ブロック本体4´の内側見込面40´、第2内側見付面451´、下面43´に設けられた水密部材40a、451a、43aからなる。軌条1は、断面視において、第1の幅寸法を備えた頭部10と、第1の幅寸法よりも大きい第2の幅寸法を備えた脚部11と、頭部10と脚部11との間で延びる細幅の立ち上がり部12と、からなり、軌条1の側面1´は、略垂直状の上側部分と、傾斜状の下側部分と、略垂直状の中間部分と、前記上側部分と前記中間部分との間の上側湾曲部13と、前記下側部分と前記中間部分との間の下側湾曲部14と、からなる。防水ブロック4を硬質のブロック本体4´とブロック本体4´の内側見込面40´、第2内側見付面451´、下面43´に設けられた水密部材40a、451a、43aと、から形成することで、防水ブロック4の形状をなるべく維持しつつ、水密性が要求される部位における密着性を向上させている。
【0062】
ブロック本体4´の内側見込面40´は、軌条1の側面1´に適合する形状を有しており、ブロック本体4´の内側見込面40´の上側湾曲面403´のR形状は、軌条1の上側湾曲部13のR形状よりも小さく、第1面の下側湾曲面404´のR形状は、軌条1の下側湾曲部14のR形状よりも小さくなっており、水密部材が設けられた防水ブロック4の第1面において、上側湾曲面403のR形状は、軌条1の上側湾曲部13のR形状よりも小さく、防水ブロック4の第1面の下側湾曲面404のR形状は、軌条1の下側湾曲部14のR形状よりも小さくなっている。
【0063】
防水ブロック4の内側見込面40を形成する水密部材40aは、軌条1の側面1´とブロック本体4´の内側見込面40´との間で圧縮状態となる。軌条1の側面1´に、防水ブロック4の内側見込面40が水平方向から接近して密着する時に、湾曲部分や傾斜部分は垂直部分に比べて押圧力が弱くなる傾向があるが、本実施形態では、防水ブロック4が軌条1の側面1´に密着する方向に押圧された時に、より小さいR形状を備えた防水ブロック4の内側見込面40の上側湾曲面403、下側湾曲面404が、軌条1の上側湾曲部13、下側湾曲部14を良好に押圧するようになっている。
【0064】
[C-3]上蓋を備えた防水構造
固定部材5は、支持体3、防水ブロック4と略同高であり、上蓋6は、固定部材5の本体50の上面503の部分503aに固定されている。防水ブロック4は、軌条1の側面1´に密着する内側見込面40と、支持体3の外側見付面30に密着する第2内側見付面451と、を備え、上蓋6は、支持体3の外側見付面30と防水ブロック4の第2内側見付面451の密着面を上方から覆っている。防水ブロック4の部分(内側見付部45の傾斜面452)は、支持体3の見込面33と離間して隙間が形成されており、上蓋6は、前記隙間を上方から覆っている。
【0065】
上蓋6のプレート60の下面には下側水密部材63が設けてあり、下側水密部材63は、防水ブロック4の上面42の部分42a、支持体3の上面32の部分32a、固定部材5の本体50の上面503の部分503aに密着している。上蓋6は、その上に設けた止水パネル8によって、下方に押圧されており、下側水密部材63は、防水ブロック4の上面42の部分42a、支持体3の上面32の部分32aに対して圧接した状態にある(
図11~
図16参照)。
図12~
図16において、下側水密部材63の押し潰された圧縮状態を下側水密部材63´で示す。
【0066】
上蓋6において、下側水密部材63の幅方向両端部は上蓋6のプレート60の幅方向両端縁に沿って上蓋6のプレート60の上面よりも上方に突出する端部上側水密部材64が形成されており、端部上側水密部材64は、止水パネル8の下面83の下方水密部材85と密着している。
図15、
図16において、端部上側水密部材64の押し潰された圧縮状態を端部上側水密部材64´で示す。
図17の参考図に示すように、端部上側水密部材64を有しない場合には、プレート60の幅方向端縁の外側に隣接して、下方水密部材85と支持体3の上面32との間に隙間Sが形成されてしまうおそれがある。本実施形態では、圧縮状態となった端部上側水密部材64´によって、上記隙間の形成が防止されている。
【符号の説明】
【0067】
1 軌条
1´ 側面
10 頭部
11 底部(脚部)
12 腹部(立ち上がり部)
13 上側湾曲部
14 下側湾曲部
2 躯体下面(躯体)
3 支持体(立設部、躯体)
30 外側見付面
33 見込面
4 防水ブロック
40 内側見込面(第1面)
40a 水密部材
41 外側見込面
42 上面
43 下面(第3面)
43a 水密部材
44 外側見付面
45 内側見付部
450 第1内側見付面
451 第2内側見付面(第2面)
451a 水密部材
452 傾斜面
4´ ブロック本体
40´ 内側見込面(第1面)
43´ 下面(第3面)
451´ 第2内側見付面(第2面)
5 固定部材
50 本体
51 第1押圧体(第1押圧手段)
52 第2押圧体(第2押圧手段)
53 第1操作部(第1押圧手段)
54 第2操作部(第2押圧手段)
55 位置決め部材
6 上蓋
60 プレート
63 下側水密部材
64 端部上側水密部材
7、7´ 支柱
70 溝部
8 止水パネル
85 下方水密部材
86 側方水密部材
9 側壁(躯体)