(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043942
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】電動移動車、トレッド幅変更方法、及び、最低地上高変更方法
(51)【国際特許分類】
B60K 1/02 20060101AFI20240326BHJP
B62D 21/12 20060101ALI20240326BHJP
F16H 7/06 20060101ALI20240326BHJP
F16H 7/02 20060101ALI20240326BHJP
B60L 15/28 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B60K1/02
B62D21/12
F16H7/06
F16H7/02
B60L15/28 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149193
(22)【出願日】2022-09-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業先導委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】511032280
【氏名又は名称】株式会社エムスクエア・ラボ
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 百合子
(72)【発明者】
【氏名】森原 崇行
【テーマコード(参考)】
3D203
3D235
3J049
5H125
【Fターム(参考)】
3D203DA82
3D235AA13
3D235BB20
3D235BB23
3D235CC12
3D235DD11
3D235FF03
3D235FF32
3D235FF34
3D235HH52
3D235HH61
3J049AA01
3J049AA08
3J049AB01
3J049BB06
3J049BH20
3J049CA07
5H125AA20
5H125BA06
5H125CA08
5H125FF01
(57)【要約】
【課題】車輪とその駆動機構が本体フレームに対して容易に着脱可能な電動移動車を提供すること。
【解決手段】電動移動車(1,2)であって、本体フレーム(10)と、車体左右方向における本体フレーム(10)の両側に取り付けられている一対のベースプレート(20)とを備え、一対のベースプレート(20)の各々には、車体前後方向に並んで位置する一対の車輪(30)と、一対の車輪(30)を回転駆動する1つのモーター(40)と、モーター(40)から一対の車輪(30)のそれぞれに回転駆動力を伝達する伝達機構(50)と、が取り付けられていることを特徴とする電動移動車(1,2)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する車体前後方向及び車体左右方向を備える電動移動車であって、
本体フレームと、
前記車体左右方向における前記本体フレームの両側に取り付けられている一対のベースプレートと、を備え、
前記一対のベースプレートの各々には、
前記車体前後方向に並んで位置する一対の車輪と、
前記一対の車輪を回転駆動する1つのモーターと、
前記モーターから前記一対の車輪のそれぞれに回転駆動力を伝達する伝達機構と、
が取り付けられていること、を特徴とする電動移動車。
【請求項2】
請求項1に記載の電動移動車であって、
前記モーターは、前記車体前後方向において、前記一対の車輪の中央部に位置していること、を特徴とする電動移動車。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電動移動車であって、
前記一対の車輪は、それぞれ、前記車体左右方向に沿う揺動軸を中心に揺動するスイングアームを介して、前記ベースプレートに取り付けられていること、を特徴とする電動移動車。
【請求項4】
請求項3に記載の電動移動車であって、
前記スイングアームの揺動部は、上下方向の振動を吸収する振動吸収機構を介して、前記本体フレーム、又は、前記ベースプレートに取り付けられていること、を特徴とする電動移動車。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の電動移動車であって、
前記伝達機構は、
前記モーターによって回転する第1環状ベルト、及び、第2環状ベルトと、
前記一対の車輪のうち前側の車輪の回転軸に固定され、且つ、前記第1環状ベルトが巻き掛けられた第1従動回転体と、
前記一対の車輪のうち後側の車輪の回転軸に固定され、且つ、前記第2環状ベルトが巻き掛けられた第2従動回転体と、を有すること、を特徴とする電動移動車。
【請求項6】
請求項5に記載の電動移動車であって、
前記伝達機構は、
前記モーターの回転軸に固定された駆動歯車と、
前記駆動歯車に噛み合う第1従動歯車、及び、第2従動歯車と、を有し、
前記第1環状ベルトは、前記第1従動歯車の回転によって回転し、
前記第2環状ベルトは、前記第2従動歯車の回転によって回転すること、を特徴とする電動移動車。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の電動移動車のトレッド幅を変更するトレッド幅変更方法であって、
前記本体フレームから、前記一対のベースプレートを取り外す工程と、
前記車体左右方向の長さが前記本体フレームと異なる他の本体フレームに、前記一対のベースプレートを取り付ける工程と、
を有することを特徴とするトレッド幅変更方法。
【請求項8】
請求項4に記載の電動移動車の最低地上高を変更する最低地上高変更方法であって、
前記一対の車輪のうち前側の車輪に取り付けられている前記スイングアームを揺動し、当該スイングアームに取り付けられている前記振動吸収機構の前記上下方向の長さを変更する工程と、
前記一対の車輪のうち後側の車輪に取り付けられている前記スイングアームを揺動し、当該スイングアームに取り付けられている前記振動吸収機構の前記上下方向の長さを変更する工程と、
を前記一対のベースプレートの各々に対して行うことを特徴とする最低地上高変更方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動移動車、トレッド幅変更方法、及び、最低地上高変更方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動で走行する電動移動車には、左右に一対の車輪が設けられている。この左右の車輪の中心間距離であるトレッド幅を可変にすることが求められている。例えば、特許文献1には、農業機械であるコンバインにおいて、油圧シリンダーにより拡開する二又リンクによって、車輪を支持するフレームをスライドさせ、車輪を左右方向の外側に移動させる機構が開示されている。これにより、グレンタンクの籾量が増大した場合にも、機体の重心位置をずらすことができ、安全に作業できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1には、コンバインにおいてトレッド幅を可変にすることしか開示されておらず、コンバインに取り付けられている車輪とその駆動機構を、他の本体フレーム(例えば異なる機能を備える本体フレーム等)に付け替えることまでは考慮されていない。このように、電動移動車が備える車輪とその駆動機構は、その移動車専用の物とすることが従来の考え方であった。そのため、車輪とその駆動機構を、多岐に亘り利用することは難しく、仮に車輪とその駆動機構を他の本体フレームに付け替えようとすると、その作業は煩雑なものであった。
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、車輪とその駆動機構が本体フレームに対して容易に着脱可能な電動移動車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の主たる発明は、互いに直交する車体前後方向及び車体左右方向を備える電動移動車であって、本体フレームと、前記車体左右方向における前記本体フレームの両側に取り付けられている一対のベースプレートと、を備え、前記一対のベースプレートの各々には、前記車体前後方向に並んで位置する一対の車輪と、前記一対の車輪を回転駆動する1つのモーターと、前記モーターから前記一対の車輪のそれぞれに回転駆動力を伝達する伝達機構と、が取り付けられていること、を特徴とする電動移動車である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車輪とその駆動機構が本体フレームに対して容易に着脱可能な電動移動車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】電動移動車1の一部を上から見た概略平面図である。
【
図3】
図3Aは、電動移動車1の概略正面図であり、
図3Bは、本体フレーム10からベースプレート20を取り外した状態の説明図である。
【
図8】第2実施形態の移動車2の概略側面図である。
【
図9】
図9A及び
図9Bは、第2実施形態の移動車2のトレッド幅変更方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
(態様1)
互いに直交する車体前後方向及び車体左右方向を備える電動移動車であって、本体フレームと、前記車体左右方向における前記本体フレームの両側に取り付けられている一対のベースプレートと、を備え、前記一対のベースプレートの各々には、前記車体前後方向に並んで位置する一対の車輪と、前記一対の車輪を回転駆動する1つのモーターと、前記モーターから前記一対の車輪のそれぞれに回転駆動力を伝達する伝達機構と、が取り付けられていること、を特徴とする電動移動車。
【0010】
態様1によれば、一対の車輪とその駆動機構がベースプレートによって一体化されているため、本体フレームからベースプレートを着脱することで、一対の車輪と駆動機構も本体フレームから容易に着脱できる。よって、車体左右方向の長さの異なる本体フレームにベースプレートを付け替えることで、車体のトレッド幅を容易に変更できる。また、一対の車輪に対して設けられるモーターが1つであるため、低コスト化を図ることができる。また、ベースプレートに取り付けられる駆動機構(モーター)の軽量化により、ベースプレートの着脱が更に容易となる。
【0011】
(態様2)
前記モーターは、前記車体前後方向において、前記一対の車輪の中央部に位置していること、を特徴とする態様1に記載の電動移動車。
【0012】
態様2によれば、重量のあるモーターが一対の車輪の中央部に設けられることで、車体の重心が中央部に位置しやすくなり、車体の安定性が高まる。また、モーターから前後の車輪に回転駆動力を伝達する距離を均等にでき、一方の車輪とモーターとの距離が長くなり回転駆動力の伝達損失が大きく生じてしまうことを抑制できる。
【0013】
(態様3)
前記一対の車輪は、それぞれ、前記車体左右方向に沿う揺動軸を中心に揺動するスイングアームを介して、前記ベースプレートに取り付けられていること、を特徴とする態様1又は態様2に記載の電動移動車。
【0014】
態様3によれば、スイングアームを揺動することで、本体フレームに対する車輪の上下方向の位置が可変となり、最低地上高を容易に調整できる。よって、凹凸の大きい道の走行や、車輪サイズの変更に対応できる。
【0015】
(態様4)
前記スイングアームの揺動部は、上下方向の振動を吸収する振動吸収機構を介して、前記本体フレーム、又は、前記ベースプレートに取り付けられていること、を特徴とする態様3に記載の電動移動車。
【0016】
態様4によれば、車輪の振動によるスイングアームの揺動が振動吸収機構によって吸収され、本体フレームに伝達される振動を軽減できる。
【0017】
(態様5)
前記伝達機構は、前記モーターによって回転する第1環状ベルト、及び、第2環状ベルトと、前記一対の車輪のうち前側の車輪の回転軸に固定され、且つ、前記第1環状ベルトが巻き掛けられた第1従動回転体と、前記一対の車輪のうち後側の車輪の回転軸に固定され、且つ、前記第2環状ベルトが巻き掛けられた第2従動回転体と、を有すること、を特徴とする態様1から態様4の何れかに記載の電動移動車。
【0018】
態様5によれば、一対の車輪に対して設けられるモーターが1つであっても、前後一対の車輪にモーターの回転駆動力を伝達できる。第1従動回転体及び第2従動回転体の径や歯数を調整することにより、モーターの回転速度を調整して車輪を回転させることができる。
【0019】
(態様6)
前記伝達機構は、前記モーターの回転軸に固定された駆動歯車と、前記駆動歯車に噛み合う第1従動歯車、及び、第2従動歯車と、を有し、前記第1環状ベルトは、前記第1従動歯車の回転によって回転し、前記第2環状ベルトは、前記第2従動歯車の回転によって回転すること、を特徴とする態様5に記載の電動移動車。
【0020】
態様6によれば、駆動歯車に対する第1従動歯車及び第2従動歯車の歯数を調整することで、モーターの回転速度を調整して車輪を回転させることができる。第1従動歯車及び第2従動歯車と、第1従動回転体及び第2従動回転体と、の2段階に亘りモーターの回転速度を調整でき、車輪の回転速度の調整幅が大きくなる。
【0021】
(態様7)
態様1から態様6の何れかに記載の電動移動車のトレッド幅を変更するトレッド幅変更方法であって、前記本体フレームから、前記一対のベースプレートを取り外す工程と、前記車体左右方向の長さが前記本体フレームと異なる他の本体フレームに、前記一対のベースプレートを取り付ける工程と、を有することを特徴とするトレッド幅変更方法。
【0022】
態様7によれば、車体左右方向の長さが異なる本体フレームにベースプレートを付け替えるだけで、トレッド幅を容易に変更できる。トレッド幅が可変になることで、細い通路の走行が可能となり、本体フレームに重い物が搭載される場合には、トレッド幅を広くすることで、車体の安定性が高まる。
【0023】
(態様8)
態様4に記載の電動移動車の最低地上高を変更する最低地上高変更方法であって、前記一対の車輪のうち前側の車輪に取り付けられている前記スイングアームを揺動し、当該スイングアームに取り付けられている前記振動吸収機構の前記上下方向の長さを変更する工程と、前記一対の車輪のうち後側の車輪に取り付けられている前記スイングアームを揺動し、当該スイングアームに取り付けられている前記振動吸収機構の前記上下方向の長さを変更する工程と、を前記一対のベースプレートの各々に対して行うことを特徴とする最低地上高変更方法。
【0024】
態様8によれば、スイングアームを揺動し、振動吸収機構の長さを調整することで、本体フレームに対する車輪の上下方向の位置が可変となり、最低地上高を容易に調整できる。よって、凹凸の大きい道の走行や、車輪サイズの変更に対応できる。
【0025】
===第1実施形態===
<<電動移動車1の構成について>>
図1は、電動移動車1の概略側面図である。
図2は、電動移動車1の一部を上から見た概略平面図である。
図3Aは、電動移動車1の概略正面図であり、
図3Bは、本体フレーム10からベースプレート20を取り外した状態の説明図である。
図4Aは、
図1の線AAにおける概略断面図であり、
図4Bは、
図1の線BBにおける概略断面図である。
なお、図面の煩雑さを防ぐために一部の部品を除いて示した図もある。例えば、
図1では車輪30のホイール部32を除いて図示したり、
図2ではベースプレートカバー21の上部を除いて図示したりしている。後述する
図5以降の図面についても同様である。
【0026】
電動移動車1(以下「移動車」とも称す)において、車体が進行する方向を車体前後方向(以下「前後方向」とも称す)とし、それに直交する方向を車体左右方向(以下「左右方向」とも称す)とし、鉛直方向に沿う方向を上下方向とする。
移動車1は、本体フレーム10と、左右一対のベースプレート20と、左右一対のベースプレートカバー21と、前後左右に設けられた4つの車輪30と、左右一対のモーター40と、左右一対の伝達機構50と、4つのスイングアーム60及びその揺動軸61と、4つの振動吸収機構70と、を有する。
【0027】
各伝達機構50は、1つの駆動歯車51と、一対の従動歯車52及びその回転軸である従動回転軸521と、一対のローラーチェーン53と、一対の駆動側スプロケット54と、一対の従動側スプロケット55と、を有する。
本実施形態の移動車1は、左右方向に対称な構成であるため、以下、左右方向の一方側の前後一対の車輪30とその駆動機構等について説明する。
【0028】
本体フレーム10は、天板部11と、支持部12と、底部13とを有する。天板部11は、水平な上面を有する板状部材であり、その上面に物を載置可能に形成されている。底部13は、天板部11と平行に配置された板状部材である。支持部12は、天板部11と底部13の間に設けられた板状部材であり、天板部11を下方から支持している。
図3に示すように、支持部12は、左右に配置されたモーター40等と緩衝しないように、天板部11及び底部13の左右方向の中央部に配置されている。
【0029】
ベースプレート20は、左右方向を板厚方向とし、前後方向及び上下方向に沿う平面部位を有する板状部材である。一対のベースプレート20は、左右方向における本体フレーム10の両側に取り付けられている。具体的には、一対のベースプレート20は、
図3Aに示すように、本体フレーム10を構成する底部13の上面のうち左右方向の両側部上に載置されている。
【0030】
また、ベースプレート20は、固定具203によって底部13に取り付けられており、本体フレーム10(底部13)から着脱可能となっている。
図3では、固定具203としてL型金具と締結部材(例えばボルト)を例示するが、固定具203は、特に限定されるものではなく、例えば、ベースプレート20と底部13を跨ぐI型金具と締結部材の組み合わせや、ベースプレート20と底部13に設けられた穴に埋め込まれた雌ネジとそれに螺合するボルトの組み合わせ等であってもよい。
【0031】
ベースプレートカバー21は、ベースプレート20に比べて前後方向の長さが短く、ベースプレート20の左右方向外側の側面のうちの前後方向の中央部に、ボルト等の固定具213を用いて取り付けられている。また、
図4Aに示すように、ベースプレートカバー21は、断面略C字形状の部材であり、上下方向に対向配置された上部214及び下部215と、左右方向の外側において上部214と下部215を繋ぐ側部216とを有し、それらで囲まれた空間内に駆動歯車51や従動歯車52等が収められている。
【0032】
4つの車輪30は、本体フレーム10の前後左右のそれぞれに配置されている。各車輪30は、ゴム等で形成されたタイヤ31と、金属材料等で形成されたホイール32と、ホイール32の中心部にホイール32に対して回転不能に固定された車輪回転軸33と、を有する。
図2に示すように、車輪回転軸33は、スイングアーム60に設けられたベアリング604(例えばボールベアリング等)に左右方向に通され、スイングアーム60に対して回転可能に軸支されている。また、車輪回転軸33には、従動側スプロケット55が固定して取り付けられている。従動側スプロケット55が回転することにより、車輪回転軸33が左右方向を軸方向として回転し、車輪30が回転する。
【0033】
モーター40は、モーター回転軸41と、本体部42と、を有する。本体部42は、ボルト等の固定具(不図示)によってベースプレート20に取り付けられている。モーター回転軸41は、ベースプレート20とベースプレートカバー21にそれぞれ設けられたベアリング201,211(例えばボールベアリング等)に左右方向に通され、ベースプレート20及びベースプレートカバー21に対して回転可能に軸支されている。また、モーター回転軸41には、駆動歯車51が固定して取り付けられている。駆動歯車51は、モーター回転軸41の回転により、左右方向を軸方向として回転する。
【0034】
伝達機構50は、駆動歯車51を中心に、前後方向に対称な構成となっている。駆動歯車51に噛み合うように、一対の従動歯車52が駆動歯車51の前側と後側に配置されている。前側の従動歯車52fと後側の従動歯車52bの各々が従動回転軸521に固定して取り付けられている。前後一対の従動回転軸521は、モーター回転軸41と同様に、ベースプレート20とベースプレートカバー21にそれぞれ設けられたベアリング202,212に左右方向に通され、ベースプレート20及びベースプレートカバー21に対して回転可能に軸支されている。
【0035】
また、前後一対の従動回転軸521の各々には、駆動側スプロケット54が固定して取り付けられている。前側の駆動側スプロケット54fには、前側の車輪回転軸33に固定されている前側の従動側スプロケット55fと共に、前側のローラーチェーン53fが巻き掛けられている。同様に、後側の駆動側スプロケット54bには、後側の車輪回転軸33に固定されている後側の従動側スプロケット55bと共に、後側のローラーチェーン53bが巻き掛けられている。
【0036】
一対のスイングアーム60は、前側の車輪30fと後側の車輪30bに対して1つずつ設けられている。各スイングアーム60は、
図2に示すように、左右方向に間隔を空けて対向配置された一対の側板部601,602と、それらを繋ぐ周壁部603と、を有する。
図1に示すように、側板部601,602を左右方向に見た平面形状は、前後方向の両側端が円弧状を成し、前後方向の中央側へ行くにつれて先細りした略矩形状を成している。周壁部603は、スイングアーム60のうち前後方向の外側の一部にだけ設けられ、従動側スプロケット55を上下と前後方向の外側の3方から囲っている。そのため、前後方向の中央側(駆動側スプロケット54側)のローラーチェーン53の部位は、一対の側板部601,602に挟まれるだけであり、上下方向に露出している。
【0037】
スイングアーム60の揺動の中心となる揺動軸61は、スイングアーム60の前後方向の中央側に位置し、
図2に示すように、一対の側板部601,602を左右方向に貫通している。スイングアーム60は、揺動軸61に対して揺動可能に取り付けられており、左右方向を軸方向として上下に揺動可能となっている。また、揺動軸61の一端部はベースプレート20に固定して取り付けられており、揺動軸61の他端部は、ベースプレートカバー21に固定して取り付けられている。
【0038】
具体的には、
図4Aに示すように、中空円筒形状の揺動軸61が、ベースプレート20と、スイングアーム60と、ベースプレートカバー21を左右方向に貫通して設けられている。揺動軸61には、ベースプレートカバー21の外側からボルト64が通されて、ベースプレート20から突出するボルト64にナット65が締結されている。これにより、揺動軸61は、ベースプレート20及びベースプレートカバー21に対して揺動不能に固定して取り付けられる。また、揺動軸61は、スイングアーム60の一対の側板部601,602に設けられたベアリング62(例えば、ニードルベアリングやボールベアリング等)に通されている。よって、スイングアーム60は、揺動軸61に対して揺動可能となっている。なお、ベアリング62とベースプレート20及びベースプレートカバー21との間にはスペーサー63を設け、ボルト64及びナット65を締結した際の各部材の撓みを抑制するとよい。
【0039】
上記とは逆に、スイングアーム60が揺動軸61に固定して取り付けられており、揺動軸61の両端部がベースプレート20及びベースプレートカバー21に対して揺動可能に取り付けられていてもよい。何れにしても、スイングアーム60は、ベースプレート20に対して揺動可能に取り付けられていればよい。また、スイングアーム60に取り付けられている車輪30も、スイングアーム60と共に揺動する。
【0040】
振動吸収機構70は、車輪30が路面から受ける上下方向の振動を吸収するためのものである。
図1や
図3に示すように、振動吸収機構70の上端部は、本体フレーム10の天板部11に取り付けられており、振動吸収機構70の下端部は、スイングアーム60の揺動部に取り付けられている。振動吸収機構70は、周知の物、例えば、コイルばねや、ゴム等の弾性部材、油圧シリンダー、エアーシリンダー等が単体又は複数組み合わされて構成されたもの(サスペンション等)を採用できる。
【0041】
なお、上記移動車1の構成は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、本体フレーム10の構成は上記に限定されることなく、ベースプレート20の取り付け方は、本体フレーム10の構成に応じて異なるものとする。例えば、本体フレーム10が箱形状である場合には、本体フレーム10の左右方向の側面にベースプレート20が取り付けられるようにしてもよい。また、例えば、移動車1は、ベースプレートカバー21を有さない構成であってもよい。また、例えば、スイングアーム60が一対の側板部601,602の一方だけを有する板状部材であってもよい。
【0042】
<<移動車1の動作について>>
上記構成の移動車1によれば、左右一対のモーター40が作動し、各モーター40のモーター回転軸41が回転すると、駆動歯車51が回転し、それに噛み合う前後の従動歯車52f,52bが回転し、従動回転軸521に取り付けられている前後の駆動側スプロケット54f,54bが回転する。その結果、本体フレーム10の左右方向の両側部において、前側と後側に延在する一対のローラーチェーン53f,53bが回転し、前後の従動側スプロケット55f,55bが回転する。そうして、左右前後の4つの車輪30が回転し、移動車1は前後方向に走行する。
【0043】
本実施形態で例示する移動車1の本体フレーム10は、上面が水平な天板部11を有する。そのため、移動車1は電動台車として機能し、移動車1のユーザーは、天板部11に物を載置し、物を電動で運搬できる。電動台車は、農作業において収穫物を運んだり、工場において部品を運んだり、倉庫において荷物を運んだり等、様々な場面で活用できる。
【0044】
<<車輪30と駆動機構の着脱について>>
前述したように、移動車1は、本体フレーム10と、左右方向における本体フレーム10の両側に取り付けられている一対のベースプレート20と、を備える。
そして、一対のベースプレート20の各々には、前後方向に並んで位置する一対の車輪30(30f,30b)と、一対の車輪30を回転駆動する1つのモーター40と、モーター40から一対の車輪30のそれぞれに回転駆動力を伝達する伝達機構50と、が取り付けられている。なお、車輪30や伝達機構50の一部(従動側スプロケット55等)は、スイングアーム60を介してベースプレート20に取り付けられている。
【0045】
つまり、移動車1では、前後一対の車輪30とその駆動機構(モーター40及び伝達機構50)が、ベースプレート20に集約して取り付けられて一体化されている。そのため、固定具203(L型金具とボルト等)を取り外し、
図3Bに示すように、ベースプレート20を本体フレーム10から取り外すだけで、一対の車輪30とその駆動機構(40,50)も本体フレーム10から同時に取り外すことができる。逆に、固定具203を用いてベースプレート20を本体フレーム10に取り付けることで、一対の車輪30とその駆動機構(40,50)も同時に本体フレーム10に取り付けることができる。
【0046】
したがって、一対の車輪30や駆動機構(40,50)が個別に直接に本体フレーム10に取り付けられている場合に比べて、本実施形態の移動車1では、一対の車輪30と駆動機構(40,50)が本体フレーム10に対して容易に着脱可能となる。そのため、一対の車輪30と駆動機構(40,50)を、他の本体フレーム10に容易に付け替えることができ、一対の車輪30と駆動機構(40,50)を多岐に亘り利用できる。
【0047】
例えば、一対の車輪30と駆動機構(40,50)を、左右方向の長さの異なる本体フレーム10に付け替えることで、トレッド幅(左右一対の車輪30の左右方向の中心間距離)を容易に変更できる。
また、本実施形態のように台車機能を備える本体フレーム10から、別の機能を備える本体フレーム、例えば、着座機能(椅子)を有する本体フレームや、ロボットアームを有する本体フレームや、測定機器や医療機器等を積載した本体フレームに、一対の車輪30と駆動機構(40,50)を容易に付け替えることができる。よって、移動車1を、電動台車としてだけでなく、様々な用途に活用できる。換言すると、用途の異なる本体フレーム毎に車輪30と駆動機構(40,50)を設ける場合に比べて、車輪30と駆動機構(40,50)を様々な本体フレーム10に汎用的に利用できる。
また、本体フレーム10が破損した場合にも、新たな本体フレーム10に車輪30と駆動機構(40,50)を付け替えることで、破損していない車輪30と駆動機構を有効に活用できる。また、移動車1を保管したり移動したりする際に、スペースに応じて、本体フレーム10から車輪30と駆動機構(40,50)を容易に取り外すことができる。
【0048】
また、本実施形態の移動車1では、前後一対の車輪30に対して1つのモーター40が設けられている。そのため、前後一対の車輪に対して2つのモーターが設けられる場合に比べて、ベースプレート20に取り付けられる駆動機構(モーター40)の軽量化を図ることができる。よって、本体フレーム10に対するベースプレート20の着脱作業が更に容易となる。また、移動車1に搭載するモーター40の数を少なくすることで、低コスト化にも繋がる。
【0049】
<<トレッド幅変更方法>>
図5A及び
図5Bは、移動車1のトレッド幅変更方法を説明する図であり、移動車1の概略正面図である。上記構成の移動車1のトレッド幅を変更する「トレッド幅変更方法」は、以下の工程を有する。
【0050】
第1に、本体フレーム10から、一対のベースプレート20を取り外す工程である。第2に、左右方向の長さが前記本体フレーム10と異なる他の本体フレーム10に、一対のベースプレート20を取り付ける工程である。
なお、左右方向の長さが異なる本体フレーム10とは、本体フレーム10のうち、ベースプレート20が取り付けられる部位(ここでは底部13)の左右方向の長さであり、トレッド幅に影響する部位の長さである。
【0051】
例えば、
図5Aに示すように、底部13の左右方向の長さd1が短い或る本体フレーム10Aから、一対のベースプレート20を取り外す。次に、
図5Bに示すように、先の本体フレーム10Aに比べて底部13の左右方向の長さd2が長い他の本体フレーム10Bに、一対のベースプレート20を取り付ける。そうすることで、移動車1のトレッド幅を変更(ここでは長く)できる。
【0052】
なお、本実施形態の移動車1のように、振動吸収機構70(上端)が本体フレーム10に取り付けられている場合には、ベースプレート20を別の本体フレーム10に付け替える際に、先の本体フレーム10Aから振動吸収機構70を取り外し、後の本体フレーム10Bに振動吸収機構70を取り付ける作業も行う。
【0053】
上記トレッド幅変更方法によれば、一対のベースプレート20の着脱だけで、簡単にトレッド幅を変更できる。トレッド幅が可変となることで、例えば、細い通路であっても、トレッド幅を狭くすることで、移動車1が通行可能となる。一方、重い荷物を運搬する場合には、トレッド幅を広くすることで、車体の安定性が高まり、転倒を防止できる。
【0054】
また、上記トレッド幅変更方法によれば、移動車1は、車輪30と駆動ユニット(40,50)を取り外さずにトレッド幅を変更する為の複雑な機構(例えば油圧シリンダーと二又リンク等で車輪の位置をスライドさせる機構)が不要となる。よって、本体フレーム10の構成を簡素化できる。
しかし、これに限らず、本体フレーム10が、トレッド幅に影響する部位(例えば底部13)の左右方向の長さが可変となる機構を有していてもよい。
【0055】
<<駆動機構(モーター40,伝達機構50)について>>
移動車1が備えるモーター40は、前後一対の車輪30に対して1つ設けられるが、
図1に示すように、モーター40は、前後方向において一対の車輪30の中央部に位置していることが好ましい。
前後方向における一対の車輪30の中央部とは、前側の車輪30fの中心から後側の車輪30bの中心までの領域を前後方向に3分割した領域(1A,1B,1C)の中央部1Bとする。その中央部1Bにモーター40の少なくとも一部が位置していればよく、好ましくはモーター40の全てが中央部1Bに位置しているとよい。
【0056】
このように、重量のあるモーター40が移動車1の中央部に位置することで、移動車1の重心が車体の中央部に位置しやすくなる。よって、車体が安定し、転倒等を防止できる。また、モーター40から前後の車輪30f,30bまでの距離(回転駆動力の伝達距離)を均等にできる。そのため、前後一方の車輪30側に偏ってモーター40が配置され、一方側のローラーチェーン53が長くなり、回転駆動力の伝達損失が大きくなったり、ローラーチェーン53が弛みやすくなったりしてしまうことを防止できる。
【0057】
より好ましくは、前後の車輪30f,30bの各中心の中央位置に、モーター回転軸41の中心が位置するとよい。そうすることで、移動車1の重心がより安定する。また、前後の車輪30f,30bに回転駆動力を伝達する伝達機構50やスイングアーム60を前後方向に対称な構成にすることができる。よって、伝達機構50の構成部品やスイングアーム60を前側と後側において共通化でき、移動車1を構成する部品の種類を減らすことができる。
【0058】
しかし、上記に限定されることなく、モーター40が前後一対の車輪30の中央部1Bから外れた領域に位置していてもよい。また、移動車1において、左右両側のモーター40が中央部1Bに位置していることが好ましいが、左右片側のモーター40だけが中央部1Bに位置していてもよい。
【0059】
また、既述の通り、伝達機構50は、1つのモーター40によって回転する2つのローラーチェーン53、すなわち前側のローラーチェーン53f(第1環状ベルト)、及び、後側のローラーチェーン53b(第2環状ベルト)と、前側の車輪30fの車輪回転軸33に固定され、且つ、前側のローラーチェーン53fが巻き掛けられた前側の従動側スプロケット55f(第1従動回転体)と、後側の車輪30bの車輪回転軸33に固定され、且つ、後側のローラーチェーン53bが巻き掛けられ後側の従動側スプロケット55b(第2従動回転体)と、を有する。
【0060】
上記の伝達機構50によれば、移動車1では前後一対の車輪30f,30bに対して1つのモーター40しか設けられていないが、モーター40の駆動回転力を前後一対の車輪30f,30bに伝達できる。
また、駆動側スプロケット54に対する従動側スプロケット55の歯数(径)を調整することによって、モーター40の回転速度を調整して車輪30を回転させることができる。例えば、
図2に示すように、駆動側スプロケット54に対して従動側スプロケット55の歯数を多く(径を大きく)することで、モーター回転軸41の回転速度に対して車輪30の回転速度を減速させることができる。よって、所望の速度で移動車1を走行させることができる。
【0061】
本実施形態では、第1環状ベルト及び第2環状ベルトとして、金属製のローラーチェーンを例示したが、これに限らず、例えばゴム製の歯付きベルトやVベルト等を採用してもよい。また、第1従動回転体及び第2従動回転体は、環状ベルトの種類に応じて、スプロケット(歯車)を採用したり、回転プーリーを採用したりするとよい。
【0062】
さらに、伝達機構50は、モーター40の回転軸(モーター回転軸41)に固定された駆動歯車51と、駆動歯車51に噛み合う2つの従動歯車52、すなわち、前側の従動歯車52f(第1従動歯車)、及び、後側の従動歯車52b(第2従動歯車)と、を有する。そして、前側のローラーチェーン53fは、前側の従動歯車52fの回転によって回転し、後側のローラーチェーン53bは、後側の従動歯車52bの回転によって回転する。
【0063】
そのため、駆動歯車51に対する従動歯車52の歯数(径)を調整することによって、モーター40の回転速度を調整して車輪30を回転させることができる。図面では、駆動歯車51と従動歯車52の歯数(径)を同じに描いているが、例えば、駆動歯車51に対して従動歯車52の歯数を多く(径を大きく)することで、モーター回転軸41の回転速度に対して車輪30の回転速度を減速させることができる。
上記の伝達機構50によれば、駆動歯車51及び一対従動歯車52と、一対の従動側スプロケット55によって、モーター40の回転速度を2段階に亘り調整して車輪30を回転させることができる。そのため、モーター40の回転速度の調整幅が広がり、所望の速度で移動車1を走行させやすくなる。
【0064】
しかし、上記に限定されることなく、例えば、伝達機構50が駆動歯車51と一対の従動歯車52を有していなくてもよく、前後一対の駆動側スプロケット54がモーター回転軸41に直接取り付けられていてもよい。この場合、モーター40の回転速度の調整幅は小さくなるが、伝達機構50の構成を簡素化できる。
前後一対の駆動側スプロケット54をモーター回転軸41に直接取り付ける場合には、前側の駆動側スプロケット54fと後側の駆動側スプロケット54bの左右方向の位置をずらすとよい。
逆に言えば、伝達機構50が駆動歯車51と一対の従動歯車52を有することで、前後一対の駆動側スプロケット54を別の回転軸(従動回転軸521)に取り付けることができる。そのため、前後一対の駆動側スプロケット54やローラーチェーン53を左右方向の同じ位置に配置でき、その結果、伝達機構50やスイングアーム60を前後方向に対称な構成にすることができる。
【0065】
【0066】
左右一対のベースプレート20に各々取り付けられる前後一対の車輪30は、それぞれ、左右方向に沿う揺動軸61を中心に揺動するスイングアーム60を介して、ベースプレート20に取り付けられていることが好ましい。
【0067】
そうすることで、スイングアーム60と共に車輪30も揺動し、本体フレーム10に対する車輪30の上下方向の位置を変更できる。そのため、車輪30の最低地上高、つまり地面(車輪30の下端)から車体の最も低い箇所(本体フレーム10の底部13の下面)までの上下方向の間隔(h1,h2)を調整できる。
【0068】
最低地上高が可変であると、例えば、凹凸の大きい道を走行する際には、
図6Bに示すように、最低地上高h2を高くすることで、車体(底部13)と道との接触を防止できる。また、最低地上高が可変であると、車輪30のサイズを変更でき、例えば、車輪30のサイズを小さくすることで、移動車1の駆動力を高めることができ、車輪30のサイズを大きくすることで、移動車1の悪路走破性を高めることができる。
【0069】
また、スイングアーム60もベースプレート20に取り付けられている。そのため、本体フレーム10からベースプレート20を着脱することにより、スイングアーム60も、車輪30と駆動機構(40,50)と共に同時に着脱できる。よって、本体フレーム10に対するスイングアーム60の着脱も容易となる。
【0070】
より好ましくは、スイングアーム60の揺動部は、上下方向の振動を吸収する振動吸収機構70を介して、本体フレーム10、又は、ベースプレート20に取り付けられているとよい。
なお、スイングアーム60の揺動部とは、ベースプレート20及び本体フレーム10に対してスイングアーム60が揺動する部位である。好ましくは、揺動軸61が設けられた部位とは反対側の揺動が大きくなるスイングアーム60の部位(車輪30に近い部位)に、振動吸収機構70が取り付けられているとよい。
【0071】
そうすることで、移動車1の走行中に車輪30が路面から受ける上下の振動が、振動吸収機構70によって吸収され、本体フレーム10への振動伝達を軽減できる。詳しくは、車輪30と共にスイングアーム60がベースプレート20及び本体フレーム10に対して揺動するが、その揺動が、振動吸収機構70の伸縮によって軽減されて、本体フレーム10に伝達され難くなる。そのため、本体フレーム10に載置した物を安定して運搬できる。また、本体フレーム10に人が乗車する場合には乗り心地が向上する。
【0072】
本実施形態のベースプレート20は、上下方向の長さが短く、ベースプレート20とスイングアーム60の上端の位置が同程度となっている。そのため、振動吸収機構70の上端が本体フレーム10(天板部11)に取り付けられている。
しかし、図示しないが、ベースプレート20を上方に延在させて、振動吸収機構70の上端をベースプレート20に取り付つけてもよい。この場合も、車輪30の振動がベースプレート20に伝達され難く、ベースプレート20が取り付けられた本体フレーム10にも振動が伝達され難くなる。
本実施形態のベースプレート20によれば、上下方向の長さが短く、ベースプレート20の軽量化や低コスト化に繋がる。一方、振動吸収機構70がベースプレート20に取り付けられる場合には(不図示)、本体フレーム10を付け替える際に(例えば
図5Aや
図5B)、振動吸収機構70の付け替え作業が不要となる。
【0073】
上記構成の移動車1の最低地上高を変更する最低地上高変更方法は、以下の工程を有する。
第1に、前側の車輪30fに取り付けられているスイングアーム60fを揺動し、当該スイングアーム60fに取り付けられている振動吸収機構70の上下方向の長さを変更する工程である。
第2に、後側の車輪30bに取り付けられているスイングアーム60bを揺動し、当該スイングアーム60bに取り付けられている振動吸収機構70の上下方向の長さを変更する工程である。
この第1工程及び第2工程を、一対のベースプレート20の各々に対して行う(左右両側にて行う)。
【0074】
例えば、
図6A及び
図7Aに示すように最低地上高h1が低い状態から、
図6B及び
図7Bに示すように最低地上高h2を高くするためには、各車輪30に取り付けられているスイングアーム60の自由端部(揺動軸61とは反対側の端部)を下方に揺動させる。そうして、スイングアーム60及び車輪30の位置を、本体フレーム10に対して下方に下げる。また、振動吸収機構70の上下方向の長さを長くする。
【0075】
なお、振動吸収機構70には、振動吸収機構70の本体部(コイルばねやシリンダー部等)をスイングアーム60や本体フレーム10に接続する接続部材も含まれるものとする。そのため、振動吸収機構70の上下方向の長さを変更するとは、振動吸収機構70の本体部の長さの変更(例えば
図6Bに示すようにコイルばねを伸長させた状態にすることと)と、接続部材の長さの変更とのうちの、少なくとも一方を行うこととする。
【0076】
また、
図6Aから
図6Bに示すように、スイングアーム60を下方に揺動させることで、前後一対の車輪30f,30bの位置が前後方向の中央側に若干ずれる。そのため、ローラーチェーン53の長さは調整せずに、そのまま使用できる。このときのホイールベース(前側の車輪30fの中心から後側の車輪30bの中心までの前後方向の長さ)の変化量は小さい為、走行安定性に影響し難い。
【0077】
上記最低地上高変更方法によれば、スイングアーム60を揺動し、振動吸収機構70の長さを調整するだけで、本体フレーム10に対する車輪30の上下方向の位置を調整でき、最低地上高を容易に変更できる。また、最低地上高を調整するために、例えば、異なるサイズの車輪30に付け替える必要もなく、所望する車輪30の機能(駆動力や走破性)を維持できる。
【0078】
また、スイングアーム60を揺動させると、車輪30だけでなく、スイングアーム60に取り付けられている伝達機構50の一部(従動側スプロケット55とそれに巻き掛けられるローラーチェーン53)も揺動する。スイングアーム60は揺動軸61を中心に揺動するが、ローラーチェーン53は、駆動側スプロケット54を中心に揺動する。そのため、
図6Bに示すように、水平方向に対するスイングアーム60の傾きとローラーチェーン53の傾きが異なる。そこで、
図2に示すように、スイングアーム60において、前後方向の中央側(駆動側スプロケット54側)では、一対の側板部601,602の間に周壁部603を設けず、スイングアーム60とローラーチェーン53の干渉を防止するとよい。
【0079】
また、
図4Aに示すように、スイングアーム60とローラーチェーン53は、ベースプレートカバー21の空間内に収容されている。そのため、スイングアーム60とローラーチェーン53が揺動した際に、ベースプレートカバー21との干渉を防止するために、スイングアーム60及びローラーチェーン53と、ベースプレートカバー21(下部215)との間の、上下方向のスペースを確保するとよい。また、スイングアーム60は、ローラーチェーン53の上下方向の長さに応じて、前後方向の中央側へ行くにつれて先細りした形状を成している。この点からも、スイングアーム60とベースプレートカバー21の干渉を防止できるといえる。
【0080】
また、上記の構成に限定されることなく、スイングアーム60に振動吸収機構70が取り付けられていなくてもよい。例えば、スイングアーム60を揺動軸61に固定し、揺動軸61を締結部材(ボルトとナット等)でベースプレート20及びベースプレートカバー21に固定する構成とする。そして、走行前に締結部材を緩めて揺動軸61とスイングアーム60をベースプレート20及びベースプレートカバー21に対して揺動させて、最低地上高(車輪30の上下方向の位置)を調整し、その後は、締結部材を締め付けて、走行中は揺動軸61及びスイングアーム60の位置をベースプレート20及びベースプレートカバー21に固定してもよい。この場合にもスイングアーム60を揺動するだけで、容易に最低地上高を変更できる。なお、この場合には、本体フレーム10とベースプレート20の間に振動吸収機構(コイルばねやゴムダンパー等)を設けて、走行中の車輪30の振動を吸収するようにすることが好ましい。
【0081】
===第2実施形態===
図8は、第2実施形態の移動車2の概略側面図である。
図9A及び
図9Bは、第2実施形態の移動車2においてトレッド幅を変更する方法の説明図であり、移動車2の概略正面図である。
【0082】
第2実施形態の移動車2も、第1実施形態の移動車1と同様に、本体フレーム10の左右両側に取り付けられている一対のベースプレート20を備え、各ベースプレート20には、前後一対の車輪30(30f,30b)と、1つのモーター40と、モーター40から一対の車輪30のそれぞれに回転駆動力を伝達する伝達機構50と、が取り付けられている。
【0083】
ただし、第2実施形態の移動車2は、スイングアーム60を有さない。そのため、車輪30はベースプレート20に直接取り付けられている。具体的には、
図9Aに示すように、ベースプレート20に設けられたベアリング204に、車輪30の車輪回転軸33が通され、車輪30はベースプレート20に対して回転可能に軸支されている。そのため、
図8に示すように、ベースプレート20は、前後方向に長い部材となっている。同様に、ベースプレートカバー21も前後方向に長い部材とし、ベースプレートカバー21が、駆動歯車51と一対の従動歯車52と共に、前後一対のローラーチェーン53f,53bと前後一対の従動側スプロケット55f,55bも覆う構成にするとよい。そのため、
図9Aに示すように、車輪回転軸33は、ベースプレートカバー21を貫通し、ベースプレートカバー21に設けられたベアリング217に通され、車輪30はベースプレートカバー21に対して回転可能に軸支されている。
【0084】
第2実施形態の移動車2においても、不図示の固定具を用いて、本体フレーム10からベースプレート20を着脱することで、前後一対の車輪30と駆動機構(40,50)も本体フレーム10から同時に容易に着脱できる。そのため、
図9A及び
図9Bに示すように、左右方向の長さ(ここでは本体フレーム10の支持部12間の長さ)d1,d2が異なる本体フレーム10A,10Bに、ベースプレート20を付け替えることで、車輪30のトレッド幅D1,D2を容易に変更できる。また、前後一対の車輪30に対して設けられるモーター40が1つであるため、駆動機構(モーター40)の軽量化、低コスト化を図ることができる。
【0085】
また、第2実施形態の移動車2はスイングアーム60を有さないため、第1実施形態の移動車1に比べて、最低地上高の調整は難しくなる。ただし、第2実施形態の移動車2では、スイングアーム60の分だけ、ベースプレート20に取り付けられている部品の軽量化を図ることができる。そのため、本体フレーム10からのベースプレート20の着脱が更に容易となる。また、第2実施形態の移動車2では、第1実施形態の移動車1に比べて、部品数が少なくなるため、構成を簡素化でき、低コスト化を図ることができる。
【0086】
また、
図8等では、本体フレーム10の支持部12の下方にベースプレート20が取り付けられる移動車2を例示する。この場合、本体フレーム10の支持部12とベースプレート20の上下方向の間に振動吸収機構70(コイルばねやゴムダンパ等)を設けるとよい。そうすることで、車輪30が路面から受ける上下方向の振動を軽減でき、本体フレーム10への振動伝達を抑制できる。また、第2実施形態の移動車2では、振動吸収機構70よりも下方に位置する部品、すなわち、ベースプレート20とそれに取り付けられている部品(車輪30、モーター40、伝達機構50)の重量が、スイングアーム60の分だけ軽量化する。そのため、バネ下の軽量化を図ることができ、本体フレーム10の振動をより軽減できる。しかし、これに限らず、第2実施形態の移動車2においても、第1実施形態の移動車1と同様に、本体フレーム10の底部13にベースプレート20が載置される構成であってよい。
【0087】
以上、上記の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱すること無く、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0088】
1、2 移動車(電動移動車)、
10 本体フレーム、
11 天板部、12 支持部、13 底部、
20 ベースプレート、
21 ベースプレートカバー、
30 車輪、
31 タイヤ、32 ホイール、
33 車輪回転軸(回転軸)、
40 モーター、
41 モーター回転軸、42 本体部、
50 伝達機構、
51 駆動歯車、
52 従動歯車(第1従動歯車、第2従動歯車)、
53 ローラーチェーン(第1環状ベルト、第2環状ベルト)、
54 駆動側スプロケット、
55 従動側スプロケット(第1従動回転体、第2従動回転体)、
60 スイングアーム、
61 揺動軸、
70 振動吸収機構、