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特開2024-43950糞便培養用培地及び当該培地を用いる分析方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043950
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】糞便培養用培地及び当該培地を用いる分析方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20240326BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240326BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20240326BHJP
【FI】
C12N1/20 A
C12Q1/02
C12Q1/6869 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149205
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006127
【氏名又は名称】森永乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和馬
(72)【発明者】
【氏名】守田 俊介
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QA19
4B063QA20
4B063QQ03
4B063QQ07
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR42
4B063QR56
4B063QR62
4B063QR82
4B063QS24
4B063QS34
4B063QS39
4B063QX02
4B065AA01X
4B065AC20
4B065BA30
4B065BB10
4B065BB12
4B065BB19
4B065CA16
4B065CA41
4B065CA46
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本技術は、腸内環境の改善のための手法を提供することを目的とする。また、本技術は、腸内環境のモデルを提供することも目的とする。
【解決手段】尿素を含む糞便培養用培地であって、前記培地は、pH7以上の腸内環境を再現するためのモデル、腎臓病を有するヒト又は腎臓病予備軍のヒトの腸内環境を再現するためのモデル、または、全身の尿素量が高値を有するヒトの腸内環境を再現するためのモデルとして用いられる培地、もしくは、尿素を含む糞便培養用培地を用いる分析方法であって、糞便試料を前記培地において培養する培養工程、および、前記培養工程において得られた培養物の分析を行う分析工程を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿素を含む糞便培養用培地。
【請求項2】
尿素含有割合が、前記培地の質量に対して0.1質量%以上である、請求項1に記載の培地。
【請求項3】
前記培地は、腸内細菌を培養するために用いられるものである、請求項1又は2に記載の培地。
【請求項4】
前記培地は、生育促進用エキスをさらに含む、請求項1又は2に記載の培地。
【請求項5】
前記培地は、たんぱく質分解物をさらに含む、請求項1又は2に記載の培地。
【請求項6】
前記培地は、脂肪酸をさらに含む、請求項1又は2に記載の培地。
【請求項7】
前記培地は、pH7以上の腸内環境を再現するためのモデルとして用いられる、請求項1又は2に記載の培地。
【請求項8】
前記培地は、24時間の糞便培養後のアンモニア産生量が100mM以上となるように構成されている、請求項1又は2に記載の培地。
【請求項9】
前記培地は、糞便培養に伴う短鎖脂肪酸産生を抑制するものである、請求項1又は2に記載の培地。
【請求項10】
前記培地は、腎臓病を有するヒト又は腎臓病予備軍のヒトの腸内環境を再現するためのモデルとして用いられる、請求項1又は2に記載の培地。
【請求項11】
前記培地は、全身の尿素量が高値を有するヒトの腸内環境を再現するためのモデルとして用いられる、請求項1又は2に記載の培地。
【請求項12】
尿素を含む糞便培養用培地を用いる分析方法。
【請求項13】
前記培地は、尿素含有量が0.1質量%以上である、請求項12に記載の分析方法。
【請求項14】
前記分析方法は、糞便試料を前記培地において培養する培養工程を含む、請求項12又は13に記載の分析方法。
【請求項15】
前記分析方法は、前記培養工程において得られた培養物の分析を行う分析工程を含む、請求項14に記載の分析方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、糞便培養用培地及び当該培地を用いる分析方法に関し、特には特定の腸内環境のモデルとして利用できる糞便培養用培地及び当該培地を用いる分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
疾患と腸内環境との関連性に関してこれまでに種々の研究が行われてきている。例えば腎臓病の患者において、腎臓からの排泄量はしばしば低下し、これに伴い腸内環境の悪化を招く場合がある。当該排泄量の低下は、例えば腸内細菌由来の毒素の体内における蓄積をもたらすことがあり、これは病状の悪化をもたらしうる。また、腎臓病だけでなく、肝臓病などの他の疾患に関しても、腸内環境との関連性について研究が行われている。
【0003】
このような疾患と腸内環境との関連性に着目した種々の提案も行われている。例えば下記特許文献1には、「肝性脳症及び/又は大腸癌及び/又は大腸の難病疾患を治療/予防する目的で消化管内のpH環境を改善し、腐敗産物を減少させるために、オリゴ糖及び食物繊維を混合してなることを特徴とする組成物。」(請求項1)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平03-151854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のとおり、腎臓病患者における腎臓からの排泄量低下は、腸内環境の悪化をもたらすことがある。また、肝臓病患者においても、腸内環境の悪化が起こることがある。このような腸内環境悪化は、腸内細菌由来の毒素の体内における蓄積や、さらには病状の悪化ももたらしうる。そこで、腎臓又は肝臓の疾患を有する患者の腸内環境を改善することができれば、毒素の蓄積を防ぐことや、さらなる病状の悪化を防ぐことに貢献できると考えられる。
そこで、本技術は、腸内環境の改善のための手法を提供することを目的とする。本技術は、例えば腎臓病患者又は肝臓病患者の腸内環境など特定の腸内環境を改善するための技術を提供することを目的とする。
【0006】
また、上記の患者の腸内環境を再現するモデルがこれまでに存在していなかった。そのため、従前は、当該患者の腸内環境の改善に関する評価をすることができなかった。そのようなモデルは、患者の腸内環境を改善するための手段を検討するために有用であると考えられる。
そこで、本技術は、腸内環境のモデルを提供することを目的とする。本技術は、例えば上記腸内環境を再現するモデルを提供すること及び当該モデルと用いた分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定の培地が、特定の腸内環境を再現するモデルとして有用であることを見出した。当該培地は、例えば腸内環境の改善をもたらす手段の調査又は評価のための分析方法において利用されることができる。
また、本発明者らは、当該培地を利用して検討を行ったところ、特定の組成物が、腸内環境を改善するために有用であることを見出した。より具体的には、当該特定の組成物が、腸内のアンモニア濃度を低減するために有用であることを見出した。
【0008】
本技術は、以下を提供する。
[1]難消化性デキストリンとイヌリンとを含む、腸内のアンモニア濃度低減用組成物。
[2]前記組成物中の前記難消化性デキストリン及び前記イヌリンの質量比が、1:99~99:1である、[1]に記載の組成物。
[3]前記組成物中の前記難消化性デキストリン及び前記イヌリンの質量比が、5:95~95:5である、[1]に記載の組成物。
[4]前記組成物中の前記難消化性デキストリン及び前記イヌリンの質量比が、5:95~60:40である、[1]に記載の組成物。
[5]前記組成物は栄養組成物である、[1]~[4]のいずれか一つに記載の組成物。
[6]前記組成物は、腸内環境を良好にするために用いられる組成物である、[1]~[5]のいずれか一つに記載の組成物。
[7]前記組成物は、悪玉菌増加を抑制するために用いられる組成物である、[1]~[6]のいずれか一つに記載の組成物。
[8]前記組成物は、体内の尿素量の低減のために用いられる組成物である、[1]~[7]のいずれか一つに記載の組成物。
[9]前記組成物は、前記難消化性デキストリン及び前記イヌリンをプレバイオティクス成分として含み、
前記プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリン及び前記イヌリンの質量割合の合計が50質量%以上である、[1]~[8]のいずれか一つに記載の組成物。
[10]前記組成物は、腎臓病又は肝臓病を有するヒトに投与されるものである、[1]~[9]のいずれか一つに記載の組成物。
[11]前記組成物は、腸内細菌に起因するアンモニア産生を抑制し、腸内環境を改善するためのものである、[1]~[10]のいずれか一つに記載の組成物。
【0009】
また、本技術は、以下を提供する。
<1>尿素を含む糞便培養用培地。
<2>尿素含有割合が、前記培地の質量に対して0.1質量%以上である、<1>に記載の培地。
<3>前記培地は、腸内細菌を培養するために用いられるものである、<1>又は<2>に記載の培地。
<4>前記培地は、生育促進用エキスをさらに含む、<1>~<3>のいずれか一つに記載の培地。
<5>前記培地は、たんぱく質分解物をさらに含む、<1>~<4>のいずれか一つに記載の培地。
<6>前記培地は、脂肪酸をさらに含む、<1>~<5>のいずれか一つに記載の培地。
<7>前記培地は、pH7以上の腸内環境を再現するためのモデルとして用いられる、<1>~<6>のいずれか一つに記載の培地。
<8>前記培地は、24時間の糞便培養後のアンモニア産生量が100mM以上となるように構成されている、<1>~<7>のいずれか一つに記載の培地。
<9>前記培地は、糞便培養に伴う短鎖脂肪酸産生を抑制するものである、<1>~<8>のいずれか一つに記載の培地。
<10>前記培地は、腎臓病を有するヒト又は腎臓病予備軍のヒトの腸内環境を再現するためのモデルとして用いられる、<1>~<9>のいずれか一つに記載の培地。
<11>前記培地は、全身の尿素量が高値を有するヒトの腸内環境を再現するためのモデルとして用いられる、<1>~<10>のいずれか一つに記載の培地。
<12>尿素を含む糞便培養用培地を用いる分析方法。
<13>前記培地は、尿素含有量が0.1質量%以上である、<12>に記載の分析方法。
<14>前記分析方法は、糞便試料を前記培地において培養する培養工程を含む、<12>又は<13>に記載の分析方法。
<15>前記分析方法は、前記培養工程において得られた培養物の分析を行う分析工程を含む、<14>に記載の分析方法。
【発明の効果】
【0010】
本技術に従う組成物は、腸内のアンモニア濃度を低減することができる。当該組成物は、例えば腸内細菌によるアンモニア産生を抑制するために有用である。当該組成物は、例えば腎臓病又は肝臓病など、アンモニア又は尿素の代謝に関係する疾患を有するヒトにおける腸内環境の改善のために有用である。
【0011】
本技術に従う培地は、当該疾患を有するヒトにおける腸内環境モデルとして利用することができる。当該培地は、当該疾患を有するヒトの腸内環境を改善するために有用な手段(例えば組成物や方法など)を検討するために有用である。
【0012】
なお、本技術の効果は、ここに記載された効果に限定されず、本明細書内に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】嫌気培養におけるpHの測定結果を示す図である。
図2】嫌気培養におけるアンモニア量の測定結果を示す図である。
図3】細菌占有率の測定結果を示す図である。
図4】嫌気培養におけるアンモニア量の測定結果を示す図である。
図5】嫌気培養におけるアンモニア量の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本技術の好ましい実施形態について説明する。ただし、本技術は以下の好ましい実施形態のみに限定されず、本技術の範囲内で自由に変更することができる。
【0015】
1.組成物
【0016】
本技術の組成物は、難消化性デキストリン及びイヌリンを含む。難消化性デキストリン及びイヌリンの組合せは、腸内のアンモニア濃度を低減するために適しており、当該濃度を低減するために用いられる。より具体的には、本技術の組成物は、腸内細菌に起因するアンモニア産生を抑制するために適しており、腸内におけるアンモニア産生を抑制するために用いられてよい。
【0017】
当該アンモニア濃度は、ヒトの腸内(特には大腸内)におけるアンモニア濃度を意味してよい。当該アンモニア濃度の低減は、投与前の腸内アンモニア濃度の比べた場合における腸内アンモニア濃度の低減であってよい。
また、当該アンモニア濃度の低減は、当該組成物が投与されない場合に想定される腸内アンモニア濃度と比べたときの低減であってもよく、腸内アンモニア濃度の増加を防ぐこと、腸内アンモニア濃度の増加の程度を弱めること、又は、腸内アンモニア濃度を維持することを意味してもよい。すなわち、本技術の組成物は、腸内アンモニア濃度の維持又は腸内アンモニア濃度の増加抑制のために用いられてもよい。
また、本明細書内において「腸内細菌」は、腸内に存在する細菌であり、特には大腸内に存在する細菌を意味してよい。また、前記腸内細菌は、アンモニア産生を引き起こす細菌であり、例えばアンモニア産生を引き起こす酵素を産生する細菌であってよい。当該酵素は、例えばウレアーゼであってよい。このような細菌の例として、Enterobacteriaceae科に属する細菌を挙げることができる。
【0018】
本技術の組成物は、例えば生体内(特には腸内)におけるアンモニア産生を抑制するために用いられてよい。より具体的には、本技術の組成物は、腸内細菌によるアンモニア産生、特には腸内細菌が産生する物質(例えば酵素、特にはウレアーゼ)によるアンモニア産生を抑制するために用いられてよい。
【0019】
また、本技術の組成物は、腸内環境を良好にするために用いられてよい。上記で述べた腸内アンモニア濃度の増加及び腸内におけるアンモニア産生は、腸内環境を悪化させることがある。本技術の組成物は、腸内アンモニア濃度を低減することができる。また、本技術の組成物は、当該アンモニア産生を抑制することができる。アンモニア濃度低減及びアンモニア産生抑制は、腸内環境を改善することに貢献する。
【0020】
また、本技術の組成物は、悪玉菌増加を抑制するために用いられてよい。上記で述べたアンモニア産生は、腸内環境(例えば腸内pH)を変化させ、これに伴い悪玉菌が増加しうる。本技術の組成物は、当該アンモニア産生を抑制することができるので、これにより悪玉菌増加を抑制することができる。
本明細書内において、悪玉菌は、腸内の腐敗を促進し、腐敗産物やその他有害物質(例えばアンモニア、硫化水素、及びインドールなど)を産生する菌であってよい。
前記悪玉菌の例として、Clostridium属細菌、Enterobacteriacea科細菌、Fusobacteriaceae科細菌、Staphylococcus属細菌を挙げることができるが、これらに限定されない。前記悪玉菌のより具体的な例として、例えばC.perfringens、C.difficile、C.paraputrificum、及びE.coliなどが挙げられる。
例えば腎臓病を有するヒトにおいては、Enterobacteriaceae科細菌、Brachybacterium科細菌、Catenibacterium科細菌、Moraxellaceae科細菌、Nesterenkonia科細菌、Polyangiaceae科細菌、Pseudomonadaceae科細菌、及びThiothrix科細菌などの増加がみられる。
肝臓病を有するヒトにおいては、Enterococcus科細菌、Enterobacteriaceae科細菌、Streptococcus saliviusなどの増加がみられる。
本技術の組成物は、これらの細菌のうちの1つ又は2つ以上の増加を抑制するために用いられてよい。
【0021】
また、本技術の組成物は、体内の尿素量の低減のために用いられてよい。上記で述べたアンモニア産生によって腸内に存在するアンモニアは、再度血中に取り込まれて、血中アンモニア濃度を上昇させうる。血中アンモニア濃度の上昇は、体内の尿素量を高めうる。本技術の組成物は、当該アンモニア産生を抑制することができるので、これにより体内の尿素量を低減することができる。
【0022】
また、本技術の組成物は、体臭改善のために用いられてよい。上記で述べたアンモニア産生によって腸内に存在するアンモニアは、再度血中に取り込まれて、血中アンモニア濃度を上昇させうる。血中アンモニア濃度の上昇は、アンモニアに起因する体臭(例えば疲労臭など)を発生させうる。本技術の組成物は、当該アンモニア産生を抑制することができるので、これにより体臭を改善することができる。
【0023】
また、本技術の組成物は、腎臓病又は肝臓病を有するヒトに投与されてよい。このような疾患を有するヒトにおいてしばしば腸内環境は悪化しており、当該悪化は、前記アンモニア産生に起因する場合がある。本技術の組成物は、アンモニア産生を抑制することができるので、このようなヒトにおける腸内環境の改善に役立つ。また、当該アンモニア産生の抑制は、体内尿素量の低減にも役立ち、これは疾患に対処するためにも役立つ。
このように、本技術の組成物は、腸内細菌に起因するアンモニア産生を抑制し、腸内環境を改善するために用いられてよい。
【0024】
以下で、本技術の組成物について、より詳細に説明する。
【0025】
(1)プレバイオティクス成分
前記難消化性デキストリン及び前記イヌリンは、いずれもプレバイオティクス成分である。すなわち、本技術の組成物は、プレバイオティクス成分を含むものであってよい。
「プレバイオティクス」は、消化管上部で分解・吸収されず、大腸に共生する有益な細菌の選択的な栄養源となりそれらの増殖を促進し、大腸の腸内フローラ構成を健康的なバランスに改善し維持し、ヒトの健康の増進維持に役立つものを一般に意味する。前記プレバイオティクス成分は、腸内環境を改善するために有用である。
【0026】
本技術の組成物は、前記プレバイオティクス成分の1日当たり摂取量が例えば2~26g、好ましくは3g~25g、より好ましくは4g~24g、さらにより好ましくは5g~23gとなるように摂取されるものであってよい。すなわち、前記組成物の1日当たりの摂取量によって、前記プレバイオティクス成分が上記数値範囲内の摂取量で摂取されてよい。このような1日当たりのプレバイオティクス成分摂取量によって、前記アンモニア産生が抑制されるだけでなく、腸内環境が効果的に改善される。前記組成物は、前記プレバイオティクス成分の体重1kg当たりの摂取量が、例えば0.03g~0.65g、好ましくは0.04g~0.63g、より好ましくは0.05g~0.60g、さらにより好ましくは0.06g~0.58gとなるように摂取されるものであってよい。
【0027】
本技術の組成物は、前記プレバイオティクス成分として、難消化性デキストリン及びイヌリンを含む。これら2成分の組合せは、前記アンモニア産生を抑制するために適している。さらに、これら2成分の組合せは、前記アンモニア産生の抑制に加え、腸内有用細菌、より特にはビフィドバクテリウム属細菌を増加させるためにも適している。
すなわち、本技術の組成物は、アンモニア産生を抑制し、且つ、腸内有用細菌を増加させるために用いられてよい。このため、本技術の組成物は、腸内環境の改善のために非常に有用である。また、これら2成分の組合せは、プレバイオティクスによる腸内細菌のガス産生抑制のためにも有用である。以下(1-1)及び(1-2)において、これらの成分について説明する。
【0028】
前記組成物中の前記難消化性デキストリン及び前記イヌリンの質量比は、例えば1:99~99:1であり、好ましくは5:95~95:5である。このような比率でこれら2成分を含むことは、本技術に従う組成物による効果を発揮するために望ましい。
【0029】
好ましくは、前記組成物中の前記難消化性デキストリン及び前記イヌリンの質量比は、例えば1:99~90:10であり、より好ましくは3:97~85:15であり、さらにより好ましくは5:95~80:20であり、特に好ましくは10:90~75:25であってよい。
【0030】
特に好ましくは、前記組成物中の前記難消化性デキストリン及び前記イヌリンの質量比は、5:95~60:40であり、7:93~55:45であり、10:95~50:50であってよい。このように、イヌリンの含有質量比が難消化性デキストリンの含有質量比よりも高いことが、アンモニア産生抑制効果を効果的に発揮することに貢献する。
【0031】
本技術の組成物に含まれる前記プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリン及び前記イヌリンの質量割合の合計が、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらにより好ましくは60質量%以上、61質量%以上、62質量%以上、63質量%以上、64質量%以上、65質量%以上、66質量%以上、67質量%以上、68質量%以上、又は69質量%以上、さらにより好ましくは70質量%以上、71質量%以上、72質量%以上、73質量%以上、74質量%以上、75質量%以上、又は80質量%以上であってよい。前記割合がこのような数値範囲内にあることによって、アンモニア産生抑制効果をより効果的に発揮することができる。
本技術の組成物に含まれる前記プレバイオティクス成分に占める前記難消化性デキストリン及び前記イヌリンの質量割合の合計は、例えば100質量%以下、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下であってよい。
【0032】
一実施態様において、本技術の組成物は、前記プレバイオティクス成分として、さらにラクチュロースを含んでよい。本技術の組成物がラクチュロースをさらに含むことも、アンモニア産生抑制のために貢献すると考えられる。また、本技術の組成物がラクチュロースをさらに含むことは、前記アンモニア産生の抑制に貢献すると考えられる。また、ラクチュロースは、有用腸内細菌を増加させることにも貢献し、また、プレバイオティクス成分による腸内細菌からのガス産生を抑制するためにも貢献する。すなわち、一実施態様において、本技術の組成物は、難消化性デキストリン、イヌリン、及びラクチュロースを含んでよい。ラクチュロースについて、以下(1-3)において説明する。
【0033】
(1-1)難消化性デキストリン
本技術の組成物は難消化性デキストリンを含む。前記難消化性デキストリンは、本技術の組成物に含まれるプレバイオティクス成分の一つである。
【0034】
難消化性デキストリンは、澱粉から得られる水溶性の食物繊維の一種である。本明細書内において、難消化性デキストリンの「難消化性」とは、ヒトの消化酵素で消化されにくいことをいう。難消化性デキストリンは、例えば、植物由来の澱粉を加酸(鉱酸を添加)及び/又は加熱して得た焙焼デキストリンを、必要に応じてαアミラーゼ及び/又はグルコアミラーゼで酵素処理した後、必要に応じて脱塩及び/又は脱色して得られた水溶性食物繊維であってよい。前記植物由来の澱粉は、例えばとうもろこし、小麦、大麦、米、豆類、イモ類(馬鈴薯、甘藷)、又はタピオカに由来する澱粉であってよい。
【0035】
前記難消化性デキストリンには、平成11年4月26日付衛新第13号(「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について」)に記載の食物繊維の分析方法である高速液体クロマトグラフ法(酵素-HPLC法)で測定される難消化性成分を含むデキストリンが包含されてよく、好ましくは85~95重量%の難消化性成分を含むデキストリンが包含されてよい。前記難消化性デキストリンには、難消化性デキストリンに水素添加することによって製造される還元難消化性デキストリンも包含される。前記難消化性デキストリンは、粉末、細粒、顆粒などの形態で市販されており、いずれの形態のものでも本技術において使用することができる。
【0036】
また、難消化性デキストリンは、高速液体クロマトグラフ法(酵素-HPLC法(AOAC2001.03))にて定量することができる。定量方法については、例えば特開2001-252064号公報を参照されたい。
【0037】
前記難消化性デキストリンとして、商品名「パインファイバー」、「ファイバーソル2」(松谷化学工業(株)製)、「オクノス食物繊維」(ホリカフーズ(株)製)、「ニュートリオースFB06」(ロケットジャパン(株)製)などの、澱粉又は小麦粉を加熱及び酵素処理して得られる難消化性の食物繊維が用いられてよい。
【0038】
前記難消化性デキストリンの数平均分子量は、好ましくは500~10000、より好ましくは500~5000、さらにより好ましくは1000~4000、最も好ましくは1000~3000である。例えば、数平均分子量が約2000である難消化性デキストリンが本技術の組成物に含まれてよい。
【0039】
本技術の組成物に含まれる前記プレバイオティクス成分の全質量のうち、前記難消化性デキストリンの質量が占める割合は、例えば1質量%以上、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは6質量%以上、さらにより好ましくは7質量%以上、8質量%以上、9質量%以上、又は10質量%以上であってよい。前記割合がこのような数値範囲内にあることは、前記アンモニア産生抑制効果を発揮するために適している。
本技術の組成物に含まれる前記プレバイオティクス成分の全質量のうち、前記難消化性デキストリンの質量が占める割合は、例えば99質量%以下、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、又は75質量%以下であってよく、特に好ましくは70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、又は50質量%以下であってよい。
前記割合がこのような数値範囲内にあることは、前記アンモニア産生抑制効果を発揮するために適している。
さらに、前記割合がこのような数値範囲内にあることは、腸内有用細菌を増加させることにも貢献し、また、プレバイオティクス成分による腸内細菌からのガス産生を抑制するためにも貢献する。
【0040】
(1-2)イヌリン
本技術の組成物はイヌリンを含む。前記イヌリンは、本技術の組成物に含まれるプレバイオティクス成分の一つである。
【0041】
前記イヌリンは、例えばスクロースのフルクトース残基にフルクトース分子がβ(2-1)結合で直鎖状に結合した多糖類である。前記イヌリンの重合度は、好ましくは5~40、より好ましくは7~20であってよい。
前記イヌリンとしては、市販のイヌリンが用いられてよい。前記イヌリンの例として、例えばFujiFF(フジ日本精糖株式会社製)及びイヌリア(帝人株式会社製)などが挙げられる。
【0042】
本技術の組成物に含まれる前記プレバイオティクス成分の全質量のうち、前記イヌリンの質量が占める割合は、例えば99質量%以下であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは94質量%以下、93質量%以下、92質量%以下、91質量%以下、又は90質量%以下であってよい。
本技術の組成物に含まれる前記プレバイオティクス成分の全質量のうち、前記イヌリンの質量が占める割合は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらにより好ましくは10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、又は25質量%以上であり、特に好ましくは30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、又は50質量%以上であってよい。
前記割合がこのような数値範囲内にあることは、前記アンモニア産生抑制効果を発揮するために適している。
さらに、前記割合がこのような数値範囲内にあることは、腸内有用細菌を増加させることにも貢献し、また、プレバイオティクス成分による腸内細菌からのガス産生を抑制するためにも貢献する。
【0043】
(1-3)ラクチュロース
本技術の組成物は、さらにラクチュロースを含んでもよい。ラクチュロースは、フラクトースとガラクトースからなる二糖類である。ラクチュロースは、無水物であってもよく又は水和物であってもよい。
【0044】
ラクチュロースは、公知の方法により製造することができる。例えば、市販乳糖の10%水溶液に、水酸化ナトリウムを添加し、該混合液を70℃の温度で30分間加熱し、冷却し、のち冷却した溶液をイオン交換樹脂により精製し、濃縮し、冷却し、結晶化し、未反応の乳糖を除去し、固形分含量約68%(固形分中ラクチュロースを約79%含有する。)のラクチュロース水溶液を得る。この水溶液をイオン交換樹脂カラムに通液し、ラクチュロースを含む画分を採取し、濃縮し、固形分含量約68%(固形分中ラクチュロース約86%を含有する。)の精製ラクチュロース水溶液を得る(特開平3-169888号公報に記載の方法)。
さらに、前記の方法により得たラクチュロース水溶液(シロップ)を固形分含量約72%に濃縮し、この濃縮液を15℃に冷却し、ラクチュロース三水和物結晶を種晶として添加し、攪拌しながら7日間を要して5℃まで徐々に冷却し、結晶を生成させ、10日後に上澄み液の固形分含量が約61%に低下した結晶を含む液から濾布式遠心分離器により結晶を分離し、5℃の冷水で洗浄し、乾燥させ、純度95%以上のラクチュロースの結晶を得ることができる(特開平6-228179号公報に記載の方法)。
また、ラクチュロースは、市販されているものを使用することもできる。
【0045】
本技術の組成物に含まれる前記プレバイオティクス成分の全質量のうち、前記ラクチュロースの質量が占める割合は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらにより好ましくは10質量%以上であってよい。
前記プレバイオティクス成分のうち前記ラクチュロースが占める質量割合は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、さらにより好ましくは20質量%以下であってよい。
前記割合がこのような数値範囲内にあることは、前記アンモニア産生抑制効果を発揮するために適している。
前記割合がこのような数値範囲内にあることは、腸内有用細菌をより確実に増加させることに貢献し、且つ/又は、プレバイオティクス成分による腸内細菌からのガス産生をより確実に抑制することにも貢献する。
【0046】
(1-4)他のプレバイオティクス成分
本技術の一実施態様において、前記組成物は、プレバイオティクス成分として、難消化性デキストリン及びイヌリン以外の他のプレバイオティクス成分(又は難消化性デキストリン及びイヌリン及びラクチュロース以外の他のプレバイオティクス成分)をさらに含んでもよい。前記他のプレバイオティクス成分として、例えばガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、乳果オリゴ糖、キシロオリゴ糖、イソマルオリゴ糖、ラフィノース、コーヒー豆マンノオリゴ糖、グルコン酸、ポリデキストロース、グアーガム分解物、アルギン酸塩、ペクチン、イソマルトデキストリン、レジスタントスターチ、及び大麦-βグルカンを挙げることができ、これらのうち1つ又は2以上の組合せが、本技術の組成物に含まれてよい。
本技術の他の実施態様において、前記組成物は、プレバイオティクス成分として、難消化性デキストリン及びイヌリンのみを含んでよく、又は、難消化性デキストリン、イヌリン、及びラクチュロースのみを含んでもよい。すなわち、この実施態様において、他のプレバイオティクス成分は、前記組成物に含まれない。
【0047】
(2)他の成分
本技術の組成物は、プレバイオティクス成分以外の他の成分を含んでよい。前記他の成分は、例えば、たんぱく質、脂質、糖質、アミノ酸類、ペプチド、ビタミン類、およびミネラルを挙げることができる。例えば、前記組成物は、脂質、糖質、又はこれらの両方をさらに含んでよい。前記他の成分は、腸内有用細菌であってよく、例えばビフィズス菌、乳酸菌、又はこれらの組合せであってもよい。本技術の組成物は、これらの成分のうちの1つ又は2以上の組合せを含んでよく、例えばこれらすべてを含んでもよい。これらの成分について以下で説明する。
【0048】
(たんぱく質)
本技術の組成物は、たんぱく質をさらに含んでよい。当該たんぱく質は、乳たんぱく質、卵たんぱく質、コラーゲン等の動物性たんぱく質、大豆たんぱく質、米たんぱく質、小麦たんぱく質等の植物性たんぱく質等、食品に用いられるものであれば特に制限されない。前記たんぱく質は、特に好ましくは乳たんぱく質である。乳たんぱく質として、カゼイン分解物、カゼインナトリウムやカゼインカルシウム等のカゼイネート、乳たんぱく質濃縮物(MPC)、ホエイたんぱく質濃縮物(WPC)、ホエイたんぱく質分解物等を用いることができる。また、上記分解物に含まれるペプチドが、本技術の組成物に含まれてもよい。当該ペプチドとして、例えばトリペプチドMKPを挙げることができる。トリペプチドMKPは、メチオニン(M)、リジン(K)、及びプロリン(P)の三つのアミノ酸が結合したペプチドである。
【0049】
本技術の組成物は、前記たんぱく質の1日当たり投与量が10g以上となるように対象に投与されてよく、特には当該1日当たり投与量が15g以上、又は20g以上となるように投与されてよい。当該1日当たり投与量の上限値については、例えば80g以下、70g以下、又は60g以下であってよい。
また、本技術の組成物は、前記乳たんぱく質の1日当たり投与量が10g以上となるように対象に投与されてよく、特には当該1日当たり投与量が15g以上、又は20g以上となるように投与されてよい。当該1日当たり投与量の上限値については、例えば80g以下、70g以下、又は60g以下であってよい。
【0050】
前記たんぱく質の含有量は、本技術の組成物のエネルギー量100kcal当たり、例えば0.5g以上、1g以上、1.5g以上、又は2g以上であってよい。また、前記たんぱく質の含有量は、当該組成物のエネルギー量100kcal当たり、例えば8g以下、7g以下、又は6g以下であってよい。
【0051】
(脂質)
本技術の組成物は、脂質をさらに含んでよい。当該脂質は、大豆油、菜種油、コーン油等の植物油、魚油等の動物油等、食品に用いられる油脂を特に制限なく用いることができる。好ましくは、前記脂質は、植物油を含む。
本技術の好ましい一実施態様において、前記脂質は中鎖脂肪酸トリグリセリド(以下MCTともいう)を含む。MCTは、長鎖脂肪酸トリグリセリドと比較して消化吸収が良く、エネルギー源になりやすい。そのため、MCTは、疾病によりグルコースを利用しにくい人又は食事摂取量が少ない人のエネルギー源となり、エネルギー効率改善の観点から有用である。
また、本技術の他の好ましい実施態様において、前記組成物は脂質を含まなくてもよい。
【0052】
本技術の組成物は、前記脂質の1日当たり投与量が10g以上となるように対象に投与されてよく、特には当該1日当たり投与量が12g以上、又14g以上となるように投与されてよい。当該1日当たり投与量の上限値については、例えば50g以下、45g以下、又は40g以下であってよい。
また、本技術の組成物は、前記MCTの1日当たり投与量が1g以上となるように対象に投与されてよく、特には当該1日当たり投与量が3g以上、又は5g以上となるように投与されてよい。当該1日当たり投与量の上限値については、例えば30g以下、25g以下、又は20g以下であってよい。
【0053】
前記脂質の含有量は、本技術の組成物のエネルギー量100kcal当たり、例えば1g以上、1.2g以上、又1.4g以上であってよい。また、前記脂質の含有量は、当該組成物のエネルギー量100kcal当たり、例えば5g以下、4.5g以下、又は4g以下であってよい。
【0054】
(糖質)
本技術の組成物は、糖質をさらに含んでよい。なお、本明細書内において、前記糖質は、プレバイオティクス成分以外でない糖質を意味する。前記糖質としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類、多糖類等、食品に用いられる糖質を特に制限なく用いることができる。前記糖質は、好ましくは多糖類を含み、特に好ましくはデキストリンを含む。
【0055】
本技術の組成物は、前記糖質の1日当たり投与量が30g以上となるように対象に投与されてよく、特には当該1日当たり投与量が30g以上、又は50g以上となるように投与されてよい。当該1日当たり投与量の上限値については、例えば150g以下、120g以下、又は100g以下であってよい。
【0056】
前記糖質の合計含有量は、本技術の組成物のエネルギー量100kcal当たり、例えば8g以上、10g以上、又12g以上であってよい。また、前記糖質の合計含有量は、当該組成物のエネルギー量100kcal当たり、例えば25g以下、20g以下、又は18g以下であってよい。
【0057】
(アミノ酸類)
本技術の組成物は、アミノ酸類をさらに含んでよい。前記アミノ酸類は、例えばバリン、ロイシン、イソロイシン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、アラニン、プロリン、システイン、リジン、スレオニン、アスパラギン、フェニルアラニン、セリン、メチオニン、グリシン、チロシン、ヒスチジン、及びトリプトファンから選ばれる1つ又は2つ以上の組み合わせであってよい。
【0058】
本技術の組成物は、前記アミノ酸類の1日当たり合計投与量が5g以上となるように対象に投与されてよく、特には当該1日当たり合計投与量が7g以上、又9g以上となるように投与されてよい。当該1日当たり合計投与量の上限値については、例えば40g以下、35g以下、又は30g以下であってよい。
【0059】
前記アミノ酸類の合計含有量は、本技術の組成物のエネルギー量100kcal当たり、例えば1g以上、1.2g以上、又1.4g以上であってよい。また、前記アミノ酸類の合計含有量は、当該組成物のエネルギー量100kcal当たり、例えば4g以下、3.5g以下、又は3g以下であってよい。
【0060】
(ビタミン類)
本技術の組成物は、ビタミン類をさらに含んでよい。当該ビタミン類は、例えばビタミンA、ビタミンB(例えばビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、ビタミンB12、葉酸など)、ビタミンC、ビタミンD、及びビタミンEのうちのいずれか1つ以上を含んでよい。一つの実施態様において、本技術の組成物は、ビタミンA、B、C、D、及びEを含んでよい。
【0061】
本技術の組成物は、前記ビタミンBの1日当たり投与量が10mg以上となるように対象に投与されてよく、特には当該1日当たり投与量が20mg以上、又は25mg以上となるように投与されてよい。当該1日当たり投与量の上限値については、例えば80mg以下、70mg以下、60mg以下、又は50mg以下であってよい。なお、ビタミンB1の1日当たりの投与量は0.5mg以上となるように対象に投与されてよく、特には当該1日当たり投与量が1.0mg以上、又は1.5mg以上となるように投与されてよい。当該1日当たり投与量の上限値については、例えば10mg以下、9mg以下、又は8mg以下であってよい。
本技術の組成物は、前記ビタミンCの1日当たり投与量が50mg以上となるように対象に投与されてよく、特には当該1日当たり投与量が100mg以上、又は300mg以上となるように投与されてよい。当該1日当たり投与量の上限値については、例えば2000mg以下、1900mg以下、又は1800mg以下であってよい。
本技術の組成物は、前記ビタミンEの1日当たり投与量が8mg以上となるように対象に投与されてよく、特には当該1日当たり投与量が20mg以上、又は30mg以上となるように投与されてよい。当該1日当たり投与量の上限値については、例えば200mg以下、190mg以下、又は180mg以下であってよい。
【0062】
前記ビタミンBの含有量は、本技術の組成物のエネルギー量100kcal当たり、例えば0.5mg以上、1.0mg以上、又は2.0mg以上であってよい。また、前記ビタミンBの含有量は、当該組成物のエネルギー量100kcal当たり、例えば10mg以下、8mg以下、又は7mg以下であってよい。なお、ビタミンB1の含有量は、本技術の組成物のエネルギー量100kcal当たり、例えば0.05mg以上、0.1mg以上、0.2mg以上、又は0.3mg以上であってよい。また、前記ビタミンB1の含有量は、当該組成物のエネルギー量100kcal当たり、例えば1mg以下、0.9mg以下、又は0.8mg以下であってよい。
前記ビタミンCの含有量は、本技術の組成物のエネルギー量100kcal当たり、例えば1mg以上、5mg以上、又は10mg以上であってよい。また、前記ビタミンCの含有量は、当該組成物のエネルギー量100kcal当たり、例えば200mg以下、190mg以下、又は180mg以下であってよい。
前記ビタミンEの含有量は、本技術の組成物のエネルギー量100kcal当たり、例えば1mg以上、2mg以上、又は3mg以上であってよい。また、前記ビタミンEの含有量は、当該組成物のエネルギー量100kcal当たり、例えば35mg以下、30mg以下、又は25mg以下であってよい。
【0063】
(ミネラル)
本技術の組成物は、ミネラルをさらに含んでよい。ミネラルの例として、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、及びモリブデンを挙げることができる。本技術の組成物は、これらミネラルのうちの1つ以上を含んでよい。
【0064】
本技術の組成物は、例えば水、甘味料、果汁、野菜汁、香料、着色料、及び酸味料などの成分を含みうる。これらの成分の種類及び含有割合は、所望の物性、形状、味、又は外観に応じて当業者により適宜選択されてよい。
また、本技術の組成物は、アンモニア産生の抑制のために有用であると考えられる他の成分を含んでもよい。そのような成分として、例えばマッシュルーム由来ポリフェノール(例えばシャンピニオンエキスなど)を挙げることができる。
また、本技術の組成物は、体臭を低減又は改善するために有用であると考えられる他の成分を含んでもよい。そのような成分として、例えば、前記マッシュルーム由来ポリフェノール、ローズオイル、柿タンニン、ブドウ葉エキス、リンゴ酸、及びカテキンを挙げることができ、これらのうちの1つ以上が本技術の組成物に含まれてもよい。
なお、本技術の組成物は、サラシアエキスを含まないものであってよい。
【0065】
(3)組成物の物性
本技術の組成物は、液状、ペースト状、ゲル状(ゼリー状)、粉末状又は固形状であってよく、好ましくは液状又はゲル状である。
【0066】
本技術の組成物は、好ましくは流動性を有する。例えば、流動性を有する液状又はゲル状の組成物であってよい。例えば、本技術の組成物は流動食であってよい。
また、本技術の組成物は、粉末状又は固形状であってもよい。例えば、本技術の組成物は、粉状、顆粒状、又は錠剤状の形状を有していてもよい。
本技術の組成物は、このような物性又は形状を有するサプリメントとして用いられてもよい。
【0067】
本技術の組成物は、液状であることによって、例えば高齢者が摂取しやすくなり、さらに、経口的に又は経管的に対象に投与することができる。本技術の組成物が液状である場合における当該組成物の各種物性は例えば以下のとおりに設定されてよい。
【0068】
本技術の組成物の浸透圧は、例えば100mOsm/L~1000mOsm/L、好ましくは200mOsm/L~800mOsm/L、より好ましくは300mOsm/L~700mOsm/Lであってよい。当該浸透圧は、浸透圧計により測定される。当該浸透圧計は、アドバンスド・インストルメンツ社のオズモメーター モデル3250である。
【0069】
本技術の組成物の20℃におけるpHは、例えば3.0~8.0、好ましくは3.5~7.5、より好ましくは4.0~7.0であってよい。
【0070】
本技術の組成物の20℃における比重は、例えば0.8~1.5、好ましくは0.9~1.4、より好ましくは1.0~1.2であってよい。当該比重は、ガラス製の標準比重計を用いて測定される。
【0071】
本技術の組成物の20℃における粘度は、例えば1mPa・s~30000mPa・s、好ましくは2mPa・s~1800mPa・sであってよい。本技術の組成物が液状である場合、前記粘度は、例えば5mPa・s~100mPa・sであってよい。本技術の組成物がゲル状である場合、前記粘度は、例えば1000mPa・s~3000mPa・sであってよい。当該粘度は、粘度計を用いて測定される。当該粘度計は、VISCOMETER TVB-10である。
【0072】
本技術の一つの実施態様において、本技術の組成物1ml当たりのエネルギー量は0.5kcal以上、0.6kcal以上、0.7kcal以上、0.8kcal以上、又は0.9kcal以上であってよい。このように、組成物1ml当たりのエネルギー量が高いことによって、効率的なエネルギー摂取が可能となる。この実施態様において、本技術の組成物1ml当たりのエネルギー量は、例えば5kcal以下、4kcal以下、3kcal以下、又は2kcal以下であってよい。例えば、本技術の組成物は、1ml当たりのエネルギー量が1.2kcal~2.0kcalであってよい。
【0073】
(4)組成物の使用方法
本技術の組成物は、ヒトに栄養を補給するために用いられてよい。例えば、本技術の組成物は、栄養組成物であってよい。一実施態様において、本技術の組成物は、ヒトに栄養を補給するために且つ前記アンモニア産生を抑制するために用いられてよい。
また、本技術の組成物は、当該ヒトの腸内有用細菌(特にはビフィドバクテリウム属細菌)を増加させるため(且つプレバイオティクス成分による腸内細菌からのガス産生を抑制する)ために用いられてもよい。
【0074】
本技術の組成物は、例えば経口的に又は経管的に摂取されてよい。後者の場合、例えば胃ろうを介して、本技術の組成物はヒトに投与される。
【0075】
本技術の一つの実施態様において、前記組成物は、当該組成物によって1日当たり例えば50kcal~1400kcal、好ましくは100kcal~1200kcal、好ましくは150kcal~1000kcalのエネルギー量が投与対象に与えられるように投与されてよい。当該組成物によって1回当たり100~1200kcalがヒトに投与されてよく、当該投与が1日当たり1回~5回、特には1回~3回行われてよい。
【0076】
(5)組成物の製造方法
本技術の組成物の製造方法は、難消化性デキストリン及びイヌリン(並びにラクチュロース)を混合する混合工程を含む。当該混合工程において、これらの成分は、任意の媒体、例えば液体媒体中で行われてよい。当該混合工程において、本技術の組成物に含まれる前記他の成分がさらに混合されてよい。当該混合工程において、最終製品としての組成を有する組成物が形成されてよい。
【0077】
前記製造方法は、得られた組成物を殺菌する殺菌工程を含んでよい。当該殺菌は、高温短時間殺菌(HTST)、UHT(超高温殺菌)、加圧加熱殺菌など当技術で既知のいずれかの手法により行われてよい。
【0078】
前記製造方法は、前記混合工程において得られた組成物を前記殺菌工程の前又は後に容器に充填する充填工程をさらに含んでよい。殺菌工程の後に行う場合、当該充填工程は、無菌的に行われてよい。当該容器は、例えば紙パック、プラスチックバッグ、プラスチックボトル、プラスチックカップ、アルミパウチ、金属缶、又はガラス容器であってよい。
【0079】
(6)飲食品組成物
本技術の組成物は、飲食品組成物として用いられてよい。本技術における飲食品組成物は、例えば液状又はゲル状の形態を有していてよい。
【0080】
本技術の飲食品組成物は、腸内環境改善用などの用途が表示された飲食品として提供又は販売されることが可能である。また、本技術の飲食品組成物は、摂取対象として例えば「腸内環境を良好にしたい方」、「腸内アンモニアを減らしたい方」、「腸内悪玉菌を減らしたい方」、「体内尿素量を減らしたい方」、「腸内尿素量を減らしたい方」、「体臭が気になる方」、「体臭を低減させたい方」、「体内アンモニア量を減らしたい方」、「尿素窒素(BUN)が気になる方や高めの方」などと表示して提供及び/又は販売されることが可能である。「表示」行為には、需要者に対して本技術の組成物の用途を知らしめるための全ての行為が含まれ、前記用途を想起及び/又は類推させうるような表現であれば、表示の目的、表示の内容、表示する対象物及び/又は媒体の如何に拘わらず、全て本技術の「表示」行為に該当する。
【0081】
また、「表示」は、需要者が上記用途を直接的に認識できるような表現により行われることが好ましい。具体的には、飲食品に係る商品又は商品の包装に前記用途を記載したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引き渡しのために展示し、輸入する行為、商品に関する広告、価格表若しくは取引書類に上記用途を記載して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に上記用途を記載して電磁的(インターネット等)方法により提供する行為等が挙げられる。
【0082】
一方、表示内容としては、行政等によって認可された表示(例えば、行政が定める各種制度に基づいて認可を受け、そのような認可に基づいた態様で行う表示等)であることが好ましい。また、そのような表示内容を、包装、容器、カタログ、パンフレット、POP等の販売現場における宣伝材、その他の書類等へ付することが好ましい。
【0083】
また、「表示」には、健康食品、機能性食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、医薬用部外品等としての表示も挙げられる。
【0084】
(7)医薬組成物
本技術の組成物は、医薬組成物として用いられてもよい。本技術における医薬組成物は、例えば液状又はゲル状の形態を有していてよい。
【0085】
本技術に係る組成物を医薬組成物として利用する場合、当該医薬組成物は、経口投与及び非経口投与のいずれで投与されてもよく、投与方法に応じて、適宜所望の剤形に製剤化することができる。例えば、経口投与の場合、所望の剤形(液剤又はペースト)に製剤化されてよい。また、非経口投与の場合、例えば胃ろうを介して本技術の組成物を投与することができ、例えば経腸的に投与されてよい。
【0086】
また、製剤化に際しては、本技術に係る医薬組成物には、通常製剤化に用いられている添加剤(例えばpH調整剤、着色剤、矯味剤等)の成分が含まれてよい。また、本技術の効果を損なわない限り、本技術に係る医薬組成物には、公知の又は将来的に見出される急性期患者向けの状態を改善するための成分が含まれてもよい。
加えて、製剤化は剤形に応じて適宜公知の方法により実施できる。製剤化に際しては、適宜、製剤担体を配合して製剤化してもよい。
【0087】
(8)組成物の栄養組成の例
本技術の組成物が有する、100kcal当たりの栄養組成の例を以下に記載する。
【0088】
本技術の組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、たんぱく質を0.5g~8g、好ましくは0.5g~5g含んでよい。
本技術の組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、脂質を1g~10g、好ましくは2.5g~6g含んでよい。
本技術の組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、炭水化物を8g~25g、好ましくは10g~22g含んでよい。
本技術の組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、糖質を5g~20g、好ましくは8g~18g含んでよい。
本技術の組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、食物繊維を0.5g~8g、好ましくは1g~5g含んでよい。
本技術の組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、灰分を0.03g~1.0g、好ましくは0.05g~0.7g含んでよい。
本技術の組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、水分を10g~80g、好ましくは30g~70g含んでよい。
【0089】
本技術の組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、ナトリウムを例えば20mg~160mg含み、好ましくは30mg~120mg含んでよい。
本技術の組成物の食塩相当量は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、例えば0.03g~0.5gであってよく、好ましくは0.05g~0.3gであってよい。
本技術の組成物は、カリウム含有量はゼロ又は実質的に含まなくてよく、又は、本技術の組成物がカリウムを含む場合は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たりで、当該組成物はカリウムを例えば0mg超~100mg含み、好ましくは3mg~80mg含んでもよい。
本技術の組成物は、塩素含有量はゼロ又は実質的に含まなくてよく、又は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、塩素を例えば0mg超~170mg含み、好ましくは10mg~150mg含んでよい。
本技術の組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、カルシウムを例えば0.1mg~100mg含み、好ましくは1mg~50mg含んでよい。
本技術の組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、マグネシウムを例えば0.1mg~30mg含み、好ましくは1.0mg~20mg含んでよい。
本技術の組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、リンを例えば1mg~90mg含み、好ましくは3mg~70mg含んでよい。
【0090】
本技術の組成物は、鉄含有量はゼロ又は実質的に含まなくてよく、又は、本技術の組成物が鉄を含む場合は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たりで、当該組成物は鉄を例えば0mg超~1.2mg含み、好ましくは0.10mg~0.9mg含んでもよい。
本技術の組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、亜鉛を例えば0.5mg~4.0mg含み、好ましくは0.7mg~3.5mg含んでもよい。
本技術の組成物は、銅含有量はゼロ又は実質的に含まなくてよく、又は、本技術の組成物が銅を含む場合は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、銅を例えば0mg超~0.15mg含み、好ましくは0.05mg~0.10mg含んでもよい。
本技術の組成物は、マンガン含有量はゼロ又は実質的に含まなくてよく、又は、本技術の組成物がマンガンを含む場合は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、マンガンを例えば0mg超~0.20mg含み、好ましくは0.10mg~0.18mg含んでよい。
本技術の組成物は、ヨウ素含有量はゼロ又は実質的に含まなくてよく、又は、本技術の組成物がヨウ素を含む場合は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、ヨウ素を例えば0μg超~20μg含み、好ましくは5μg~15μg含んでよい。
本技術の組成物は、セレン含有量はゼロ又は実質的に含まなくてよく、又は、本技術の組成物がセレンを含む場合は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、セレンを例えば0μg超~10μg含み、好ましくは1μg~5μg含んでよい。
本技術の組成物は、クロム含有量はゼロ又は実質的に含まなくてよく、又は、本技術の組成物がクロムを含む場合は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、クロムを例えば0μg超~10μg含み、好ましくは1μg~4μg含んでよい。
本技術の組成物は、モリブデン含有量はゼロ又は実質的に含まなくてよく、又は、本技術の組成物がモリブデンを含む場合は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、モリブデンを例えば0μg超~8μg含み、好ましくは1μg~3μg含んでよい。
【0091】
本技術の組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、ビタミンAを例えば30μgRAE~130μgRAE含み、好ましくは40μgRAE~100μgRAE含んでよい。
本技術の組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、ビタミンDを例えば0.1μg~13μg含み、好ましくは0.15μg~12μg含んでよい。
本技術の組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、ビタミンEを例えば0.5mg~35mg含み、好ましくは1.0mg~25mg含んでよい。
本技術の組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、ビタミンKを例えば2μg~20μg含み、好ましくは4μg~8μg含んでよい。
本技術の組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、ビタミンB1を例えば0.05mg~1.0mg含み、好ましくは0.1mg~0.8mg含んでよい。
本技術の組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、ビタミンB2を例えば0.05mg~0.5mg含み、好ましくは0.1mg~0.4mg含んでよい。
本技術の組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、ナイアシンを例えば1mgNE~8mgNE含み、好ましくは1.2mgNE~4.5mgNE含んでよい。
本技術の組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、ビタミンB6を例えば0.1mg~1.0mg含み、好ましくは0.2mg~0.9mg含んでよい。
本技術の組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、ビタミンB12を例えば0.1μg~2.0μg含み、好ましくは0.2μg~1.5μg含んでよい。
本技術の組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、葉酸を例えば10μg~100μg含み、好ましくは20μg~80μg含んでよい。
本技術の組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、パントテン酸を例えば0.1mg~3mg含み、好ましくは0.5mg~2mg含んでよい。
本技術の組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、ビオチンを例えば1μg~15μg含み、好ましくは3μg~10μg含んでよい。
本技術の組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、ビタミンCを例えば1mg~70mg含み、好ましくは5mg~50mg含んでよい。
【0092】
本技術の組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、MCTを例えば0.1g~5g含み、好ましくは0.3g~3g含んでよい。
本技術の組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、EPAを例えば10mg~120mg含み、好ましくは20mg~100mg含んでよい。
本技術の組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、DHAを例えば5mg~60mg含み、好ましくは10mg~50mg含んでよい。
本技術の組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、ラクチュロースを例えば0.01g~1.2g含み、好ましくは0.05g~0.7g含んでよい。
本技術の組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、カルニチンを例えば5mg~50mg含み、好ましくは10mg~20mg含んでよい。
本技術の組成物は、当該組成物が有するエネルギー100kcal当たり、乳酸菌を例えば5億個~200億個含み、好ましくは10億個~100億個含んでよい。
【0093】
なお、本技術は、以下の方法及び物も提供する。
[1]
難消化性デキストリン及びイヌリンの、腸内のアンモニア濃度低減のための使用。
[2]
腸内のアンモニア濃度低減のための、難消化性デキストリン及びイヌリンの組合せ。
[3]
難消化性デキストリン及びイヌリンを投与することを含む、腸内のアンモニア濃度低減方法。
【0094】
また、本技術は、難消化性デキストリン及びイヌリンを含む、腸内のアンモニア濃度低減のために用いられるプレバイオティクス材料も提供する。前記プレバイオティクス材料の組成は、上記(1)において説明したとおりであってよい。当該プレバイオティクス材料は、例えば栄養組成物、飲食品組成物、又は医薬組成物に添加されてよい。当該プレバイオティクス材料は、添加される組成物を摂取したヒトにおいて腸内のアンモニア濃度の低減のために用いられてよい。
【0095】
また、本技術は、腸内のアンモニア濃度の低減方法も提供する。前記方法は、プレバイオティクス成分を腸内に供給することを含む。前記プレバイオティクス成分は、上記で述べたとおり、難消化性デキストリンとイヌリンとを少なくとも含む。前記プレバイオティクス成分の組成は、上記(1)において説明したとおりであってよい。
【0096】
2.培地
【0097】
本技術は、尿素を含む培地も提供する。当該培地は、例えば糞便培養を行うために用いられてよい。尿素を含む培地は、特定の腸内環境を再現するために適している。また、当該尿素を含む培地は、例えば腸内細菌を培養するために用いられてよい。
【0098】
(尿素)
前記培地中の尿素含有割合は、前記培地の質量に対して、例えば0.001質量%以上であってよく、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、又は0.7質量%以上であってよい。
前記培地中の尿素含有割合は、前記培地の質量に対して、例えば5質量%以下であってよく、好ましくは4質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下、2.5質量%以下、又は2質量%以下であってよく、特に好ましくは1.5質量%以下であってよい。
このような尿素含有割合は、例えば後述の疾患を有するヒト又は後述の疾患を患う可能性があるヒトにおける腸内環境を再現するために適している。
【0099】
(エキス)
前記培地は、例えば生育促進用エキスをさらに含んでよい。当該生育促進用エキスは、培養対象(特には細菌)の生育又は増殖を促進するためのエキスであってよい。当該生育促進用エキスは、例えば細菌培養分野において用いられるエキスであってよく、培養対象に応じて当業者により適宜選択されてよい。
【0100】
当該生育促進用エキスは、例えば酵母エキス、肉エキス、及び植物エキスのうちのいずれか1つ又は2つ以上の組合せあってよいが、これらに限定されない。前記酵母エキスは、例えばパン酵母又はビール酵母の熱水浸出物、自己融解物、又は酵素消化物であってよい。前記肉エキスは、例えば動物肉エキス又は魚肉エキスであってよい。動物肉エキスは、例えば牛肉エキス若しくは豚肉エキスであってよい。また、動物肉エキスは、心臓浸出液(ハートインフュージョン)又は脳心臓浸出液(ブレインハートインフュージョン)であってもよい。前記植物エキスは、例えば麦芽エキス、ポテトエキス、又はトマトジュースであってよい。
一実施態様において、前記生育促進用エキスは、酵母エキスであってよく、又は、酵母エキスと他のエキスとの組合せであってもよい。
他の実施態様において、前記生育促進用エキスは、肉エキスであってよく、又は、肉エキスと他のエキスとの組合せであってもよい。
【0101】
前記生育促進用エキスの含有割合は、前記培地の質量に対して、例えば0.0001質量%以上、好ましくは0.001質量%以上、0.003質量%以上、0.005質量%以上、0.007質量%以上、0.01質量%以上、0.05質量%以上、又は0.1質量%以上であってよい。
前記生育促進用エキスの含有割合は、前記培地の質量に対して、例えば2質量%以下、好ましくは1.5質量%以下、1.0質量%以下、0.5質量%以下、又は0.3質量%以下であってよい。
【0102】
例えば、前記生育促進用エキスは、酵母エキスであり、当該酵母エキスの含有割合は、前記培地の質量に対して、例えば0.05質量%以上であり、好ましくは0.1質量%以上である。また、前記酵母エキスの含有割合は、前記培地の質量に対して、例えば1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下であってよい。
【0103】
(たんぱく質分解物)
前記培地は、例えばたんぱく質分解物をさらに含んでよい。当該たんぱく質分解物は、例えばたんぱく質の酵素分解物であってよく、例えばペプトンであってよい。当該たんぱく質分解物のより具体的な例として、当該たんぱく質分解物は、カゼインペプトン(例えばカジトン又はトリプトンなど)、獣肉ペプトン、ゼラチンペプトン、及び大豆ペプトンが揚げられ、当該たんぱく質分解物は、これらのうちの1つ又は2つ以上の組合せであってよい。
一実施態様において、前記たんぱく質分解物は、カゼインの酵素分解物を含んでよく、特にはカゼインペプトンを含んでよい。前記たんぱく質分解物は、カゼインペプトンであってよく、又は、カゼインペプトンと他のペプトンとの組合せであってもよい。
他の実施態様において、前記たんぱく質分解物は、獣肉ペプトンを含んでよい。前記タンパク質分解物は、獣肉ペプトンであってよく、又は、獣肉ペプトンと他のペプトンとの組合せであってもよい。
【0104】
前記たんぱく質分解物の含有割合は、前記培地の質量に対して、例えば0.01質量%以上、好ましくは0.03質量%以上、0.05質量%以上、又は0.07質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上、0.3質量%以上、又は0.5質量%以上であってよい。
前記たんぱく質分解物の含有割合は、前記培地の質量に対して、例えば5質量%以下、好ましくは4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、又は1質量%以下であってよい。
【0105】
(脂肪酸)
一実施態様において、前記培地は、さらに脂肪酸を含んでよい。前記脂肪酸は、例えば揮発性脂肪酸であってよい。前記脂肪酸として、例えば酢酸、プロピオン酸、吉草酸(例えばn-吉草酸及び/又はイソ吉草酸)、及び酪酸(例えばn-酪酸及び/又はイソ酪酸)を挙げることができ、前記培地には、これらのうちの1つ又は2つ以上の組合せが前記培地に含まれてよい。
【0106】
前記脂肪酸(特には揮発性脂肪酸)の含有割合は、前記培地の質量に対して、例えば0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、0.15質量%以上、又は0.2質量%以上であってよい。
前記脂肪酸(特には揮発性脂肪酸)の含有割合は、前記培地の質量に対して、例えば2質量%以下、好ましくは1.0質量%以下、0.7質量%以下、又は0.5質量%以下であってよい。
【0107】
(ミネラル源)
前記培地は、さらにミネラル源を含んでよい。当該ミネラル源は、例えば無機ミネラル源を含んでよい。当該ミネラル源の例として、リン源、イオウ源、カリウム源、カルシウム源、マグネシウム源、鉄源、及びナトリウム源を挙げることができ、当該ミネラル源は、これらのうちの1つ又はこれらのうちの2つ以上の組合せ、特には2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又は7つの組合せ、を含んでよい。当該ミネラル源は、例えばリン源を含んでよく、さらにリン源及びイオウ源を含んでよい。前記リン源は、例えばリン酸塩であってよい。前記イオウ源は、例えば硫酸塩であってよい。
【0108】
前記ミネラル源の合計含有割合は、前記培地の質量に対して、例えば0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上であってよい。
前記ミネラル源の合計含有割合は、前記培地の質量に対して、例えば10質量%以下、好ましくは1質量%以下であってよい。
【0109】
(炭水化物)
一実施態様において、前記培地は、例えば炭水化物をさらに含んでよい。当該炭水化物は、例えば単糖類又は二糖類であってよい。例えば、前記炭水化物は、グルコース、フルクトース、マンノース、マルトース、セロビオース、トレハロース、及びガラクトースのうちのいずれか1つ又は2つ以上の組合せであってよい。例えば、前記炭水化物は、単糖類を含み、例えばグルコースを含んでよい。
他の実施態様において、前記培地は、炭水化物を含まなくてよく、例えば単糖類又は二糖類を含まなくてよい。例えば、前記培地は、炭水化物が添加されたものでなくてよく、特には単糖類又は二糖類が添加されたものでなくてよい。
【0110】
前記培地が前記炭水化物を含む場合、前記炭水化物の含有割合は、前記培地の質量に対して、例えば0.01質量%以上、好ましくは0.03質量%以上、0.05質量%以上、0.07質量%以上、又は0.1質量%以上であってよい。
前記培地が前記炭水化物を含む場合、前記炭水化物の含有割合は、前記培地の質量に対して、例えば5質量%以下、好ましくは4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、又は1質量%以下であってよい。
【0111】
(その他の成分)
前記培地は、さらにビタミンを含んでよい。前記ビタミンとして、例えばビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、及びビオチンを挙げることができ、前記培地には、これらのうちの1つ又は2つ以上の組合せが含まれてよい。
前記培地は、さらに還元剤を含んでよい。前記還元剤として、システイン及びチオグリコール酸を挙げることができ、前記培地には、これらのうちの1つ又は2つの組合せが含まれてよい。
前記培地は、さらにポルフィリンを含んでよい。前記ポルフィリンは、例えば鉄含有ポルフィリンであってよく、より具体的にはヘミンであってよい。
前記培地は、さらに指示薬を含んでよい。前記指示薬は、例えば酸化還元指示薬及びpH指示薬を挙げることができ、前記培地には、これらのうちの1つが含まれていてよいが、2つが含まれていてよい。前記酸化還元指示薬として、レサズリンを挙げることができるがこれに限定されない。前記pH指示薬としてフェノールレッドを挙げることができるがこれに限定されない。なお、一実施態様において、前記培地は、前記pH指示薬を含まないものであってよい。
前記培地は、さらに選択物質を含んでいてもよい。当該選択物質は、例えば所定の細菌を選択的に増殖されるために用いられる物質であってよい。当該選択物質として、例えば抗生物質、亜テルル酸塩、アジ化物、及び胆汁塩などを挙げることができ、前記培地は、これらのうちの1つ又は2つ以上の組合せを含んでよい。
これら成分の含有割合は、当技術分野における通常の値であってよく、当業者により適宜選択されてよい。
【0112】
(培地の具体例)
一実施態様において、前記培地は、例えば尿素、たんぱく質分解物、生育促進用エキス、及び脂肪酸を含む。この実施態様において、前記たんぱく質分解物は、カゼインの分解物であってよく、特にはカゼインの酵素分解物であってよい。この実施態様において、前記生育促進用エキスは、酵母エキスであってよい。この実施態様において、前記脂肪酸は、揮発性脂肪酸であってよい。
また、前記培地は、さらにビタミン、還元剤、及びミネラル源を含んでよい。前記培地は、さらに指示薬、特には酸化還元指示薬を含んでよい。
このような培地の例として、尿素含有YCFA培地を挙げることができる。
【0113】
(培地の形態)
前記培地は、液体培地であってよく、又は、固形培地であってもよい。前記液体培地は、上記で述べた成分が水に含まれている液体培地であってよい。前記固形培地は、上記で述べた成分が含まれた液が固化された培地であってよい。当該固化のために、前記固形培地には、例えば寒天などの固形化剤が含まれてよい。
【0114】
(培地の製造方法)
前記培地は、尿素及びその他の培地成分を液体(例えば水)に添加及び混合して培地液を調製し、そして、当該培地液を滅菌することによって製造されてよい。液体培地の場合は、当該滅菌後に当該培地液が容器中で冷却されてよい。また、固形培地の場合は、当該滅菌後に培地液が容器中で、例えば冷却により、固化されてよい。当該製造における各工程(添加、混合、滅菌、冷却など)は、当技術分野において一般的に用いられる手法により実行されてよい。
【0115】
(培地の使用方法)
前記培地は、上記のとおり糞便培養のために用いられてよい。また、前記培地は、糞便培養以外の培養のために用いられてもよい。
【0116】
前記培地は、例えば腸内細菌を培養するために用いられてよい。当該腸内細菌は、例えば糞便試料中に存在する細菌であってよい。すなわち、前記培地は、糞便培養のために用いられ、当該糞便培養において、当該糞便中に存在する細菌が培養されてよい。
また、当該腸内細菌は、糞便試料又は他の試料から分離された細菌であってもよい。
【0117】
前記培地は、pH7以上の腸内環境を再現するためのモデルとして用いられてよい。前記培地は、尿素を含むことによって、pH7以上の腸内環境を再現することができる。例えば腸内環境が悪化しているヒト又は疾患(例えば腎臓病など)を有するヒトの腸内環境において、腸内のpHが7以上になることがある。前記培地はpH7以上の腸内環境を再現することができ、これにより、このようなヒトにおける腸内環境を再現するためのモデルとして有用である。
すなわち、前記培地は、糞便培養開始後24時間以降において(例えば糞便培養開始後24時間~48時間、24時間~36時間、又は24時間~30時間)においてpHが7以上となるように構成されてよい。
【0118】
前記培地は、24時間の糞便培養後のアンモニア産生量が100mM以上となるように構成されていてよい。このように培地を構成するために、上記のとおりの組成が採用されてよく、特には上記のとおりに尿素が培地に含まれてよい。前記アンモニア産生量が100mM以上となることは、例えば、ヒトの腸内環境が悪化していることを示す指標として利用することができる。
【0119】
すなわち、前記培地は、アンモニア量が100mM以上である腸内環境のモデルとして用いられてよい。このようなモデルは、上述のとおり、腎臓病又は腎臓病予備軍の腸内環境を改善するための手法の調査又は評価のために有用である。
なお、当該アンモニア量は、後述の実施例で説明するとおり、糞便培養が行われた培地を遠心分離処理して得られた上清に対して、所定のキットを用いた測定を実行することにより測定される。
【0120】
前記培地は、糞便培養に伴う短鎖脂肪酸産生を抑制するものであってよい。当該抑制は、例えば培地に尿素が含まれる場合と含まれない場合とを比較することによって確認されうる。
例えば、前記培地は、24時間の糞便培養後の酢酸産生量が例えば25mM以下、好ましくは23mM以下となるように構成されてよい。
また、前記培地は、24時間の糞便培養後のプロピオン酸産生量が例えば5.5mM以下、好ましくは5.3mM以下となるように構成されてよい。
また、前記培地は、24時間の糞便培養後の酪酸産生量が例えば1.5mM以下、好ましくは1.0mM以下となるように構成されてよい。
また、前記培地は、24時間の糞便培養後の酢酸、プロピオン酸、及び酪酸の合計産生量が例えば32mM以下、好ましくは30mM以下となるように構成されてよい。
このように培地を構成するために、上記のとおりの組成が採用されてよく、特には上記のとおりに尿素が培地に含まれてよい。例えば腎臓病患者においては短鎖脂肪酸産生菌が減少し、これに伴い短鎖脂肪酸量が低下しうる。前記培地は、糞便培養後に上記のとおり短鎖脂肪酸量が低下した状態となるので、このような患者の腸内環境モデルとして利用することができる。
【0121】
すなわち、前記培地は、酢酸量が例えば25mM以下、好ましくは23mM以下である腸内環境のモデルとして用いられてよい。
また、前記培地は、プロピオン酸量が例えば5.5mM以下、好ましくは5.3mM以下である腸内環境のモデルとして用いられてよい。
また、前記培地は、酪酸量が例えば1.5mM以下、好ましくは1.0mM以下である腸内環境のモデルとして用いられてよい。
また、前記培地は、酢酸、プロピオン酸、及び酪酸の合計量が例えば32mM以下、好ましくは30mM以下である腸内環境のモデルとして用いられてよい。
このようなモデルは、上述のとおり、上記のような腎臓病患者又はその予備軍の腸内環境を改善するための手法の調査又は評価のために有用である。
なお、これらの脂肪酸の量は、後述の実施例で説明するとおり、糞便培養が行われた培地を遠心分離処理して得られた上清に対して、HPLCを行うことにより測定される。
【0122】
前記培地は、腎臓病を有するヒト又は腎臓病予備軍のヒトの腸内環境を再現するためのモデルとして用いられてよい。腎臓病を有するヒト及び腎臓病予備軍のヒトの腸内のアンモニア量は、しばしば高値になる。前記培地は尿素を含み、当該培地によって糞便培養した場合において、当該培地中の状況は腎臓病を有するヒト又は腎臓病予備軍のヒトの腸内と同様の状態となる。そのため、前記培地は、腎臓病を有するヒト又は腎臓病予備軍のヒトの腸内環境を研究するために有用である。
腎臓病は、原発性の腎臓病又は続発性の腎臓病であってよい。腎臓病は、急性又は慢性の腎臓病であってよい。
原発性の腎臓病は、腎臓それ自体に問題が起きる腎臓病である。原発性の腎臓病の例として、腎炎を挙げることができる。腎炎のより具体的な例として糸球体腎炎及び間質性腎炎を挙げることができる。
続発性の腎臓病は、例えば糖尿病、痛風、高血圧、又は膠原病などの腎臓以外の病気が原因となって起こる腎臓病である。続発性の腎臓病の例として、糖尿病性腎症、腎硬化症、及び痛風腎を挙げることができる。
代表的な腎臓病として、急性糸球体腎炎、慢性糸球体腎炎、急速進行性糸球体腎炎、及び糖尿病性腎症を挙げることができる。
腎臓病予備軍とは、腎臓病とは診断されていないが、例えば後述のとおり尿素量が高値であるヒトなど、腎臓病になる可能性が高いヒトを意味してよい。
前記培地は、このような腎臓病を有するヒト又は腎臓病予備軍のヒトの腸内環境を再現するためのモデルとして用いられてよい。
【0123】
前記培地は、全身(若しくは体内)の尿素量が高値を有するヒトの腸内環境を再現するためのモデルとして用いられてよい。前記尿素量が高値であるヒトは、血中尿素窒素(BUN、blood urea nitrogen)が正常値よりも高いヒトを意味してよい。血中尿素窒素の正常値は、例えば23mg/dl以下、22mg/dl以下、21mg/dl以下、又は20mg/dl以下である。そこで、前記培地は、血中尿素窒素の検査値がこの正常値の数値範囲の上限値(23mg/dl、22mg/dl、21mg/dl、又は20mg/dl)よりも高いヒトの腸内環境を再現するモデルとして用いられてよい。なお、当該血中尿素窒素は、健康診断などにおいて行われる一般的な血液検査において用いられる測定方法によって測定されてよく、BUN(blood urea nitrogen)とも呼ばれる。
【0124】
前記培地は、例えば試料を培養するために用いられてよい。すなわち、本技術は、前記培地を用いて試料を培養することを含む培養方法も提供する。一実施態様において、当該試料は、例えば糞便試料であってよい。他の実施態様において、当該試料は、細菌、特には上記の腸内細菌であってよい。前記培養方法における前記培養は、例えば嫌気培養であってよいが、好気培養であってもよい。前記培養方法のより具体的な手順は、例えば培地の組成、試料の種類、又は培養目的などに応じて、当業者によって適宜選択されてよい。
【0125】
(培地製造用組成物)
本技術は、前記培地を製造するために用いられる組成物も提供する。当該組成物は、当該組成物を所定の液体(例えば水など)に添加することによって(必要に応じて混合すること)して前記培地を形成するように構成されてよい。前記組成物は、例えば固形状又は液状であってよい。固形状の前記組成物は、例えば粉末状又は顆粒状であってよい。液状の前記組成物は、例えば前記所定の液体によって薄めることによって、前記培地を形成するように構成されてよい。
【0126】
3.分析方法
【0127】
本技術は、上記2.において記載した培地を用いる分析方法も提供する。前記培地は、上記2.において説明した組成を有してよく、その説明が本分析方法においても当てはまる。
【0128】
前記分析方法は、試料を前記培地において培養する培養工程を含んでよい。当該試料は、例えば糞便試料であってよい。当該糞便試料は、動物(例えばヒト)から得られた糞便を含む試料であってよく、例えば当該糞便が、所定の液体(例えば水、生理食塩水、又は緩衝液など)中に添加されて得られた試料であってよい。
【0129】
前記培養は、例えば嫌気培養であってよいが、好気培養であってもよい。これら培養は、当技術分野において既知の装置を用いて実行されてよい。前記培養の期間は、例えば1時間~100時間、特には5時間~80時間、より特には10時間~50時間であってよい。前記培養の期間は、100時間超であってもよく、例えば100時間~200時間であってもよい。前記培養は、例えば0℃~70℃で実行されてよく、特には10℃~65℃、より特には30℃~40℃、さらにより特には35℃~38℃で実行されてよいが、培養温度は、培養対象の細菌の種類又は培養の目的に応じて適宜変更されてよい。
【0130】
前記方法は、さらに、分析工程を含んでよい。当該分析工程において、分析対象が分析されてよい。当該分析対象の例として、前記培養において生じる物質若しくは減少する物質、前記培養の培養物自体、及び、前記培養物中の細菌を挙げることができるが、これらに限定されない。当該分析対象は、これらのうちの1つ又は2つ以上であってよい。
前記培養において生じる物質若しくは減少する物質は、例えば細菌由来の分泌物又は代謝物、又は、細菌由来の分泌物又は代謝物に起因して生じる物質(例えば前記アンモニア又は短鎖脂肪酸など)若しくは減少する物質(例えば細菌によって消費される物質など)であってよい。これらの物質の分析は、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー、GC/MS、又はイオンクロマトグラフィーなどによって行われてよい。また、これらの物質の分析は、市販入手可能な測定キットを用いて行われてもよい。前記アンモニアを測定するために、例えばベルテロー反応に基づく測定が行われてよく、当該反応を用いてアンモニア量の測定を行う測定キットが用いられてよい。また、前記短鎖脂肪酸を測定するために、例えば2-ニトロフェニルヒドラジンなどの誘導体化試薬を用いた短鎖脂肪酸の誘導体化が行われてよく、当該誘導体化を行うための測定キットが用いられてよい。
分析対象が前記培養の培養物自体である場合は、当該分析対象は、例えば当該培養物の状態(色又は形状など)であってよい。
分析対象が前記培養物中の細菌である場合は、当該分析対象は、例えば1種類又は2種類以上の細菌(例えば1つ若しくは2つ以上の門、科、属、又は種の細菌など)であってよく、又は、細菌叢であってもよい。細菌又は細菌叢の分析は、例えばFISH、クローンライブラリー法、リアルタイムPCR、又はターミナルRFLPなどによって行われてよい。
当該分析工程において用いられる分析手法は、分析対象に応じて当業者により適宜選択されてよい。
【0131】
以下で実施例を参照して本技術をより詳しく説明するが、本技術はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例0132】
4.実施例
【0133】
4.1 培地の評価
【0134】
4.1.1 培地調製
尿素を添加されたYCFA培地(以下「尿素含有YCFA培地」ともいう)が調製された。当該YCFA培地の組成は、以下の表1に示されるとおりであった。
【0135】
【表1】

【0136】
前記尿素含有YCFA培地は、Murakami R et al., Food Res Int., Volume 144, June 2021に記載された方法に準じて作製され、そして、上記のビタミン・システイン溶液が添加されて得られた。
また、尿素を添加されていないYCFA培地(以下「尿素不含YCFA培地」ともいう)も作成された。当該尿素不含YCFA培地は、尿素の代わりに同量の水が添加されたこと以外は、前記尿素含有YCFA培地と同じように製造された。
【0137】
4.1.2 培養方法
糞便試料を三検体用意した。当該三検体を、前記尿素含有YCFA培地及び前記尿素不含YCFA培地にそれぞれ添加し、48時間にわたって嫌気培養を行った。
【0138】
前記嫌気培養は以下の通りに行われた。すなわち、上記培地に糞便希釈液を添加し、培養装置(Bio Jar.8、株式会社バイオット)を用いて、嫌気条件且つpHコントロール下で培養した。
前記培養装置の複数のベッセルそれぞれに、尿素含有YCFA培地又は尿素不含YCFA培地が90mLずつ入れられ、そして、115℃20分間オートクレーブ処理された。その後、各ベッセル中の培地に、フィルター滅菌処理した前記ビタミン・システイン溶液が、無菌的に添加された。その後、各ベッセルに脱イオン滅菌水10mLを添加した。その後、各ベッセル中の培地を、窒素置換を一晩行うことで嫌気状態とし、各培地に、糞便検体を生理食塩水で10%(w/v)に予め調整された糞便溶液100μLが添加され、1MのNaCO液でpHを6.4とし、48時間にわたって37℃で嫌気培養された。
培養はpH6.4~6.5より開始し、pHコントロールによりpH6.0を下限として培養した。
【0139】
4.1.3 分析方法
前記嫌気培養における培養物の(1)pH、(2)アンモニア濃度、(3)短鎖脂肪酸量、及び(4)菌叢構成及び菌数が分析された。
より具体的には、前記嫌気培養開始後24時間及び48時間で各ベッセル中の培地を回収し、遠心を行った。当該遠心は、1.0mLの培地に対して8000rpmで行われた。当該遠心後の上清は短鎖脂肪酸やアンモニア濃度の分析に使用され、ペレットは菌叢構成及び菌数の分析のために使用された。
pHは、前記培養装置に付属のセンサーによって測定された。
アンモニア濃度は、Lab assay ammonia kit(和光純薬社)を用いて、当該キットに付属のプロトコルに沿って分析された。
短鎖脂肪酸量は、長鎖・短鎖脂肪酸分析用ラベル化試薬(株式会社YMC)を用いて当該試薬に付属の説明書の指示に従い前記培地上清を前処理後、抽出した短鎖脂肪酸をYMC-PackカラムでHPLC(Waters社)を用いて分析された。
菌叢構成は、前記ペレット中の細菌DNAを抽出し、そして、次世代シークエンサーMiseqによって解析された。
【0140】
4.1.4 分析結果
(1)pH、(2)アンモニア濃度、(3)短鎖脂肪酸量、及び(4)菌叢構成及び菌数が分析結果は以下のとおりである。
【0141】
(1)pH変化
前記48時間の嫌気培養におけるpHの測定結果が図1に示されている。また、培養開始時点(0時間)並びに培養開始後24時間及び48時間におけるpH値の測定結果が表2に示されている。なお、これらの測定結果は、前記三検体の平均値である。
【0142】
【表2】
【0143】
これらの測定結果に示されるとおり、尿素含有YCFA培地において、培養後18時間からpHが上昇し、培養後24時間~48時間においてpHは7.2~7.3で維持された。一方で、尿素不含YCFA培地においては、pHは、培養の48時間にわたって6.4~6.5程度であった。
正常なヒトの腸内pHは6.5程度である。一方で、腎臓病を有するヒトにおいては、腸内pHは上昇し、しばしば7.0を超える。また、尿毒症患者では腸管下部pHが7.5まで上昇することもある。
上記のとおり、尿素含有YCFA培地においては、糞便培養開始後にpHが上昇し、7.2~7.3が維持される。そのため、尿素含有YCFA培地は、腸内pHが高いヒトの腸内モデル、特には腸内pHが7.0以上であるヒト(例えば腎臓病を有するヒト)の腸内モデルとして利用できると考えられる。
【0144】
(2)アンモニア量変化
前記嫌気培養開始後24時間及び48時間におけるアンモニア量の測定結果が図2及び表3に示されている。なお、これらの測定結果は、前記三検体の平均値である。
【0145】
【表3】
【0146】
これらの測定結果に示されるとおり、尿素含有YCFA培地における培養後24時間及び48時間でのアンモニア産生量は、尿素不含YCFA培地におけるアンモニア産生量よりも有意に高い。
例えば腎臓病患者では、腸管内アンモニア産生量が増加する。これは、マウスモデルによる実験によって、ウレアーゼ産生菌によるものと考えられる。
上記のとおり、尿素含有YCFA培地においては、糞便培養開始後におけるアンモニア産生量が高い。そのため、尿素含有YCFA培地は、アンモニア産生量が高いヒト(例えば腎臓病を有するヒト)の腸内モデルとして利用できると考えられる。
【0147】
(3)短鎖脂肪酸量変化
前記嫌気培養開始後24時間及び48時間における短鎖脂肪酸量の測定結果が表4に示されている。なお、これらの測定結果は、前記三検体の平均値である。
【0148】
【表4】
【0149】
これらの測定結果に示されるとおり、尿素含有YCFA培地における培養後24時間及び48時間での酢酸、プロピオン酸、及び酪酸のいずれ量も、尿素不含YCFA培地における量よりも低かった。酢酸及び短鎖脂肪酸合計量については、48時間において有意差があった。
例えば腎臓病患者では、腸内の短鎖脂肪酸産生菌が減少する。これは、腸内の短鎖脂肪酸量の低下をもたらすと考えられる。
上記のとおり、尿素含有YCFA培地においては、糞便培養開始後における短鎖脂肪酸量が低い。そのため、尿素含有YCFA培地は、腸内の短鎖脂肪酸量が低いヒト(例えば腎臓病を有するヒト)の腸内モデルとして利用できると考えられる。
【0150】
(4)菌叢
前記嫌気培養開始後24時間及び48時間における菌叢のうちのProteobacteria門及びEnterobacteriaceae科の占有率の測定結果が図3及び表5に示されている。なお、これら測定結果は、菌叢全体を1とした場合における占有率である。また、これらの測定結果は、前記三検体の平均値である。
【0151】
【表5】
【0152】
これらの測定結果に示されるとおり、尿素含有YCFA培地における培養後24時間及び48時間でのProteobacteria門の占有率及びEnterobacteriaceae科の占有率は、尿素不含YCFA培地における占有率よりも高い。
例えば腎臓病患者では、Proteobacteria門及びEnterobacteriadeae科菌の占有率が増加する。
上記のとおり、尿素含有YCFA培地においては、糞便培養開始後におけるProteobacteria門及びEnterobacteriadeae科菌の占有率が高くなる。そのため、尿素含有YCFA培地は、Proteobacteria門及びEnterobacteriadeae科菌の占有率が高いヒト(例えば腎臓病を有するヒト)の腸内モデルとして利用できると考えられる。
【0153】
以上(1)~(4)に示される結果より、培地に尿素を含めることによって、当該培地は、例えば腎臓病などの疾患を有するヒトの腸内環境を再現するためのモデルとして利用できることが分かる。
【0154】
4.2 尿素含有培地を用いたプレバイオティクス試料の評価1
【0155】
以下の試料1~4を用意した。試料1は、対照試料である。試料2~4は、プレバイオティクス試料である。試料2~4のプレバイオティクス成分の量は同じである。
試料1:水
試料2:イヌリン
試料3:難消化性デキストリン
試料4:難消化性デキストリン及びイヌリンの組合せ(これら2成分の質量比は1:1)
【0156】
試料2~4のそれぞれは、プレバイオティクス成分の濃度が10%(w/v)になるように脱イオン水に溶解されて、各試料の10%溶解液が調製された。
【0157】
上記4.1.1において説明したように尿素含有YCFA培地が用意された。そして、当該尿素含有YCFA培地を用いて、上記4.1.2において説明したように、嫌気培養が24時間にわたって行われた。
当該嫌気培養の開始に先立ち、各ベッセル中の尿素含有YCFA培地に、糞便溶液100μLと、試料2~4のいずれかの10%溶解液10mL又は試料1(水のみ)10mLと、が添加された。
【0158】
前記嫌気培養後のアンモニア産生量が、上記4.1.3において説明したとおりに測定された。測定結果が、以下の表6及び図4に示されている。
【0159】
【表6】
【0160】
これらの測定結果に示されるように、難消化性デキストリン又はイヌリンを添加した場合(試料2又は3の場合)のアンモニア産生量は、対照群(試料1の場合)のアンモニア産生量よりも低い。そのため、難消化性デキストリン又はイヌリンの単独添加によって、アンモニア産生量を低減させることができることが分かる。
また、難消化性デキストリン及びイヌリンの組合せを添加した場合(試料4の場合)のアンモニア産生量も、対照群(試料1の場合)のアンモニア産生量よりも低い。そのため、難消化性デキストリン及びイヌリンの組合せの添加によっても、アンモニア産生量を低減させることができることが分かる。
さらに、試料2~4のプレバイオティクス成分の量は同じであるにも関わらず、難消化性デキストリン及びイヌリンの組合せを添加した場合(試料4の場合)のアンモニア産生量は、難消化性デキストリン又はイヌリンを添加した場合(試料2又は3の場合)のアンモニア産生量よりもさらに低い。そのため、当該組合せによるアンモニア産生量低減効果は、相乗的な効果である。
【0161】
これらの結果より、難消化性デキストリン及びイヌリンの組合せは、極めて優れたアンモニア産生抑制作用を発揮することが分かる。
また、前記培地は、例えば腎臓病を有するヒト又は腎臓病予備軍などの腸内環境のモデルであり、例えば腸内細菌に起因するアンモニア産生を評価するために有用である。前記組合せは、前記培地を用いた培養試験において優れたアンモニア産生抑制効果を示すので、前記組合せは、腸内細菌に起因するアンモニア産生の抑制のために有用であることが分かる。
【0162】
4.3 尿素含有培地を用いたプレバイオティクス試料の評価2
【0163】
以下の試料11~17を用意した。試料11は、対照試料である。試料12~17は、プレバイオティクス試料である。試料12~17のプレバイオティクス成分の量は同じである。
試料11:水
試料12:イヌリン
試料13:難消化性デキストリン及びイヌリンの組合せ(難消化性デキストリン10質量%:イヌリン90質量%)
試料14:難消化性デキストリン及びイヌリンの組合せ(難消化性デキストリン25質量%:イヌリン75質量%)
試料15:難消化性デキストリン及びイヌリンの組合せ(難消化性デキストリン50質量%:イヌリン50質量%)
試料16:難消化性デキストリン及びイヌリンの組合せ(難消化性デキストリン75質量%:イヌリン25質量%)
試料17:難消化性デキストリン
【0164】
試料12~17のそれぞれは、プレバイオティクス成分の濃度が10%(w/v)になるように脱イオン滅菌水に溶解されて、各試料の10%溶解液が調製された。
【0165】
上記4.1.1において説明したように尿素含有YCFA培地が用意された。そして、当該尿素含有YCFA培地を用いて、上記4.1.2において説明したように、嫌気培養が24時間にわたって行われた。
当該嫌気培養の開始に先立ち、各ベッセル中の尿素含有YCFA培地に、糞便溶液100μLと、試料12~17のいずれかの10%溶解液10mL又は試料1(脱イオン滅菌水のみ)10mLと、が添加された。
【0166】
前記嫌気培養後のアンモニア産生量が、上記4.1.3において説明したとおりに測定された。測定結果が、以下の表7及び図5に示されている。
【0167】
【表7】
【0168】
これらの測定結果に示されるように、難消化性デキストリン又はイヌリンを添加した場合(試料12又は17の場合)のアンモニア産生量は、対照群(試料11の場合)のアンモニア産生量よりも低い。そのため、上記4.2と同様に、難消化性デキストリン又はイヌリンの単独添加によって、アンモニア産生量を低減させることができることが確認された。
また、難消化性デキストリン及びイヌリンの組合せを添加した場合(試料13~16の場合)のアンモニア産生量も、対照群(試料1の場合)のアンモニア産生量よりも低い。そのため、難消化性デキストリン及びイヌリンの組合せの添加によっても、アンモニア産生量を低減させることができることが分かる。
【0169】
さらに、試料12~17のプレバイオティクス成分の量は同じであるにも関わらず、難消化性デキストリン及びイヌリンの組合せを添加した場合(試料13~16の場合)のアンモニア産生量は、難消化性デキストリン又はイヌリンを添加した場合(試料12又は17の場合)のアンモニア産生量よりもさらに低い。そのため、当該組合せによるアンモニア産生量低減効果は、相乗的な効果である。
例えば、試料13~16の難消化性デキストリン質量とイヌリン質量の比率を踏まえると、難消化性デキストリン及びイヌリンの質量比が、例えば1:99~90:10、より好ましくは3:97~85:15、さらにより好ましくは5:95~80:20、特に好ましくは10:90~75:25であることが、アンモニア産生量を抑制するために好ましいことが分かる。
【0170】
さらに、試料13~16のうち、試料13~15の場合において、特にアンモニア産生量が低かった。試料13~15の場合の難消化性デキストリン質量とイヌリン質量の比率は、10:90、25:75、及び、50:50である。そのため、難消化性デキストリン及びイヌリンの質量比が、例えば5:95~60:40であること、特には7:93~55:45であること、より特には10:90~50:50であることが、アンモニア産生量を抑制するために特に好ましいことも分かる。
【0171】
4.4 製造例
以下の表8の製造例1及び2に示されるとおりの組成を有する2種の組成物を製造した。当該製造に関して、具体的にはでんぷん分解物、難消化性デキストリン、植物油、イヌリン、ラクチュロース、精製魚油、乾燥酵母、カルニチン、カゼインナトリウム、セルロース、pH調整剤、乳化剤、グルコン酸亜鉛を混合し、当該混合物に対してレトルト殺菌を行った。なお、表8に示される数値は、125ml当たり(150kcal当たり)の数値であり、100kcal当たりの各成分の含有量は、同表に示される各値に0.67を乗じた値である。
【0172】
当該組成物はプレバイオティクス成分を含む。当該プレバイオティクス成分は、難消化性デキストリン及びイヌリンの組合せであった。また、当該組成物はオリゴ糖を含む。当該オリゴ糖はラクチュロースを含む。前記難消化性デキストリン、前記イヌリン、及び前記ラクチュロースが、前記組成物に含まれるプレバイオティクス成分であった。
【0173】
前記難消化性デキストリンの含有質量と前記イヌリンの含有質量の比率は、10:90、もしくは25:75であった。
【0174】
【表8】
【0175】
これら組成物は液状であり、その粘度は7.5mPa・s、20℃であった。これら組成物の水分含有量は、125ml当たり約100gであった。
本技術の組成物は、以上の組成及び物性を有する液状組成物として構成されてよい。
図1
図2
図3
図4
図5