(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043953
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】プログラム、情報処理方法、情報処理装置及びモデル生成方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20240326BHJP
【FI】
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149212
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】松崎 太亮
(72)【発明者】
【氏名】福田 聡
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ケーブルの移動量を予測するプログラム、情報処理方法、情報処理装置及びモデル生成方法を提供する。
【解決手段】プログラムは、地中送電線のケーブルに関する所定の情報を取得し、ケーブルに関する所定の情報の入力を受け付けた場合に、該ケーブルを構成する少なくとも一部の軸方向における移動量を推定するように学習された学習済モデルに、取得した前記所定の情報を入力することで、前記移動量を推定し、推定結果を出力する処理をコンピュータに実行させる。好適には、前記所定の情報は、マンホール間のケーブルの重量、ケーブルが埋設されている車道の交通量又は地表からケーブルまでの埋設深さを含む。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中送電線のケーブルに関する所定の情報を取得し、
ケーブルに関する所定の情報の入力を受け付けた場合に、該ケーブルを構成する少なくとも一部の軸方向における移動量を推定するように学習された学習済モデルに、取得した前記所定の情報を入力することで、前記移動量を推定し、
推定結果を出力する
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項2】
前記所定の情報は、マンホール間のケーブルの重量、ケーブルが埋設されている車道の交通量、又は地表からケーブルまでの埋設深さの少なくとも一つを含む
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記所定の情報は、ケーブル接続部の施工日からの経過年数、ケーブル接続部の敷設環境、又はマンホール間のケーブルの傾斜角度の少なくとも一つを含む
請求項1に記載のプログラム。
【請求項4】
前記所定の情報は、ケーブル埋設位置の車道に対する水平位置、ケーブルが埋設されている地盤の弱さを表す地盤状況、ケーブルの導体温度、循環油の流量、コア移動が群ごとに発生しているコア移動群に該当するか否か、対象のケーブル接続部の両隣の接続部が改良後か否かの少なくとも一つを含む
請求項1に記載のプログラム。
【請求項5】
前記ケーブルはPOFケーブルであり、
前記移動量は、前記ケーブルのケーブルコアの移動量である
請求項1に記載のプログラム。
【請求項6】
前記ケーブルは、CVケーブルである
請求項1に記載のプログラム。
【請求項7】
前記移動量が所定の条件を満たした場合、前期推定結果としてアラートを出力する
請求項1に記載のプログラム。
【請求項8】
地中送電線のケーブルに関する所定の情報を取得し、
ケーブルに関する所定の情報の入力を受け付けた場合に、該ケーブルを構成する少なくとも一部の軸方向における移動量を推定するように学習された学習済モデルに、取得した前記所定の情報を入力することで、前記移動量を推定し、
推定結果を出力する
処理をコンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項9】
制御部を備えた情報処理装置であって、
前記制御部が、
地中送電線のケーブルに関する所定の情報を取得し、
ケーブルに関する所定の情報の入力を受け付けた場合に、該ケーブルを構成する少なくとも一部の軸方向における移動量を推定するように学習された学習済モデルに、取得した前記所定の情報を入力することで、前記移動量を推定し、
推定結果を出力する
情報処理装置。
【請求項10】
地中送電線のケーブルに関する所定の情報と、該ケーブルを構成する少なくとも一部の
軸方向における移動量とを対応付けた訓練データを取得し、
前記訓練データに基づき、前記所定の情報を入力した場合に前記移動量を推定する学習済モデルを生成する
処理をコンピュータが実行するモデル生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、情報処理方法、情報処理装置及びモデル生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中送電線ケーブルにおいて、波乗り現象(車両の荷重や振動等により道路下のケーブルがたわみ、車両進行方向に沿ってケーブルが移動する現象)等によるケーブルの移動が原因の地絡事故が過去に発生しており、これに鑑みたケーブル移動量点検が定期的に実施されている。
【0003】
例えば特許文献1では、マンホール内に設けられた検出手段により検出されたケーブル移動量検出値から、検出手段が設けられていないマンホール内のケーブルの移動量を予測し、予測されたケーブル移動量推定値が一定の閾値を超えた場合には警告を発する波乗り現象予測システム等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、定期的なケーブル移動量の点検を行わずとも、ケーブル移動量を定量的に評価する手法が求められている。
【0006】
一つの側面では、ケーブルの移動量を予測することができるプログラム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの側面では、プログラムは、地中送電線のケーブルに関する所定の情報を取得し、ケーブルに関する所定の情報の入力を受け付けた場合に、該ケーブルを構成する少なくとも一部の軸方向における移動量を推定するように学習された学習済モデルに、取得した前記所定の情報を入力することで、前記移動量を推定し、推定結果を出力する処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0008】
一つの側面では、ケーブルの移動量を予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ケーブル移動量推定システムの構成例を示す説明図である。
【
図5】推定モデルの説明変数となる各パラメータの説明図である。
【
図6】推定モデルの生成処理の手順を示すフローチャートである。
【
図7】ケーブルコアの移動量の推定処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態)
図1は、ケーブル移動量推定システムの構成例を示す説明図である。本実施の形態では、地中に敷設されたPOFケーブル(Pipe Type Oil Filled Cable)のケーブルコアの軸方向における移動量を推定するケーブル移動量推定システムについて説明する。
【0011】
なお、本実施の形態では推定対象のケーブルがPOFケーブルであるものとして説明するが、対象のケーブルはCVケーブル(Cross-linked polyethylene insulated Vinyl sheath cable)やその他のケーブルであってもよい。
【0012】
また、本実施の形態ではPOFケーブルのケーブルコア、すなわちケーブルの一部の移動量を推定するものとするが、ケーブル全体の移動量を推定してもよい。すなわち、本実施の形態では、ケーブルを構成する少なくとも一部の軸方向における移動量を推定可能であればよい。なお、波乗り現象等により、ケーブルの一部であるケーブルコアのみが大きく移動するか、ケーブルコアのみでなく外側の鋼管等も含めたケーブル全体が移動するかは、主にはケーブル構造の違いによるものと考えられる。
ここで、ケーブルコアとは、ケーブルを構成する主要な部位であって、電気を流す導体や、導体の周囲を覆う絶縁体等により構成されているものである。POFケーブルにおいては、
図1に示すように、外側にPOF鋼管があり、その内側にケーブルコアが収容された構造となっている。さらに、POF鋼管内は絶縁油が収容されており、POF鋼管内のケーブルコアは絶縁油に含浸されている。また、POFケーブルは、内側に収容されたケーブルコアの外径に対し、外側のケーブル鋼管の内径が相対的に大きく設計されており、さらに、POF鋼管内に絶縁油が注入された構造となっている。そのため、ケーブル構造上、その他のCVケーブル等と比較し、外側の金属管(POF鋼管)に対し、ケーブルコアが相対的に移動しやすい。
CVケーブルやその他のケーブルにおいても、絶縁体等の構成材料に違いはあるものの、外側に金属管に相当する部材があり、その内側にケーブルコアに相当する部材が収容されている構成は、基本的には同様である。ただし、例えば、CVケーブルにおいては、POFケーブルと比較し、外側の鋼管の内径と内側に収容されたケーブルコアの外径との差が小さく、ケーブルコアを収容する空間が狭い。また、絶縁材料として、架橋ポリエチレン(Cross-linked polyethylene)を用いており、ケーブルコアが絶縁油に含浸された構造ではない。そのため、例えば、CVケーブルにおいては、ケーブルコアの移動に合わせて、外側の鋼管を含めたケーブル全体が移動する可能性が大きいことから、ケーブルコアの移動に合わせて、ケーブル全体が移動するものと捉えてもよい。
【0013】
ケーブル移動量推定システムは、サーバ1、端末2を含む。サーバ1及び端末2は、インターネット等のネットワークNを介して通信接続されている。
【0014】
サーバ1は、種々の情報処理、情報の送受信が可能なサーバコンピュータである。本実施の形態においてサーバ1は、所定の訓練データを学習することで、ケーブルに関する所定の情報(後述のケーブル重量、車道の交通量、ケーブルの埋設深さ等)を入力した場合に、ケーブルコアの移動量を推定する推定モデル50(
図4参照)を生成する。
【0015】
端末2は、本システムのユーザ(電力会社等の保守点検員)が使用する端末装置であり、例えばパーソナルコンピュータ、タブレット端末等である。端末2にはサーバ1が生成した推定モデル50のデータがインストールされており、端末2は当該推定モデル50を用いてケーブルコアの移動量を推定する。
【0016】
なお、本実施の形態では推定モデル50を構築(生成)するコンピュータと推定モデル50を利用したコア移動量の推定を行うコンピュータとが別個のものであるものとして説明するが、各処理は一のコンピュータで実行されてもよい。
【0017】
図2は、サーバ1の構成例を示すブロック図である。サーバ1は、制御部11、主記憶部12、通信部13、補助記憶部14、及びモデル生成部15を備える。
制御部11は、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)等の演算処理装置を有し、補助記憶部14に記憶されたプログラムP1を読み出して実行することにより、種々の情報処理、制御処理等を行う。主記憶部12は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の一時記憶領域であり、制御部11が演算処理を実行するために必要なデータを一時的に記憶する。通信部13は、通信に関する処理を行うための通信モジュールであり、外部と情報の送受信を行う。補助記憶部14は、大容量メモリ、ハードディスク等の不揮発性記憶領域であり、制御部11が処理を実行するために必要なプログラムP1(プログラム製品)、その他のデータを記憶している。モデル生成部15は、GPU(Graphics Processing Unit)等の大規模演算処理装置であり、推定モデル50を生成する。
【0018】
なお、補助記憶部14はサーバ1に接続された外部記憶装置であってもよい。また、サーバ1は複数のコンピュータからなるマルチコンピュータであっても良く、ソフトウェアによって仮想的に構築された仮想マシンであってもよい。
【0019】
また、本実施の形態においてサーバ1は上記の構成に限られず、例えば操作入力を受け付ける入力部、画像を表示する表示部等を含んでもよい。また、サーバ1は、CD(Compact Disk)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM等の可搬型記憶媒体1aを読み取る読取部を備え、可搬型記憶媒体1aからプログラムP1を読み取って実行するようにしても良い。
【0020】
図3は、端末2の構成例を示すブロック図である。制御部21、主記憶部22、通信部23、表示部24、入力部25、及び補助記憶部26を備える。
制御部21は、一又は複数のCPU等のプロセッサを有し、補助記憶部26に記憶されたプログラムP2を読み出して実行することにより、種々の情報処理を行う。主記憶部22は、RAM等の一時記憶領域であり、制御部21が演算処理を実行するために必要なデータを一時的に記憶する。通信部23は、通信に関する処理を行うための通信モジュールであり、外部と情報の送受信を行う。表示部24は、液晶ディスプレイ等の表示画面であり、画像を表示する。入力部25は、キーボード、マウス等の操作インターフェイスであり、ユーザから操作入力を受け付ける。
【0021】
補助記憶部26は、ハードディスク等の不揮発性記憶領域であり、制御部21が処理を実行するために必要なプログラムP2(プログラム製品)、その他のデータを記憶している。また、補助記憶部26は、推定モデル50を記憶している。推定モデル50は、所定の訓練データを学習済みの機械学習モデルであり、ケーブルに関する所定の情報を入力した場合に、ケーブルコアの移動量を推定する学習済モデルである。推定モデル50は、人工知能ソフトウェアの一部を構成するプログラムモジュールとしての利用が想定される。
【0022】
なお、端末2は、CD-ROM等の可搬型記憶媒体2aを読み取る読取部を備え、可搬型記憶媒体2aからプログラムP2を読み取って実行するようにしても良い。
【0023】
図4は、推定モデル50に関する説明図である。
図5は、推定モデル50の説明変数となる各パラメータの説明図である。
図4及び
図5に基づき、本実施の形態の概要を説明する。
【0024】
図4では、POFケーブルに関する所定の情報(ケーブル長、ケーブル重量、交通量等)を推定モデル50に入力した場合に、ケーブルコアの移動量の推定値が出力される様子
を図示している。
図4に示すように、推定モデル50は、ケーブルに関する所定の情報を入力した場合にケーブルコアの移動量を推定するモデルであり、具体的には、決定木のモデルをアンサンブルした勾配ブースティングの手法を用いて構築される推定モデル(Light GBM等)である。
【0025】
なお、本実施の形態では推定モデル50が勾配ブースティングに係る決定木であるものとして説明するが、本実施の形態はこれに限定されるものではない。例えば推定モデル50は、バギングの手法を用いた決定木(ランダムフォレスト)、あるいはアンサンブル学習を行わずに構築される決定木であってもよい。また、推定モデル50は、ニューラルネットワーク、SVM(Support Vector Machine)など、決定木以外の機械学習モデルであってもよい。
【0026】
サーバ1は、訓練用の所定の情報に対し、ケーブルコアの移動量の正解値が対応付けられた訓練データを用いて、推定モデル50を生成する。訓練データは、例えばコア移動量を計測済みのケーブルコアのデータである。
【0027】
本実施の形態では、推定モデル50に入力する説明変数として、
図4左側に示すように、13種類のパラメータを採用する。
【0028】
「ケーブル長」は、マンホール間のケーブルの長さである。「ケーブル重量」は、マンホール間のケーブルの重量である。これらの「ケーブル長」、「ケーブル重量」については、ケーブル敷設工事時等において管理され、データとして保管されることが多い。一般的に、対象物の重量が小さいほどケーブル移動量は大きくなると考えられることから、これらのパラメータがコア移動量に対しても影響を及ぼすと考えられる。また、種々のケーブル移動力の算出式にこれらのパラメータが採用されているため、本実施の形態では推定モデル50の説明変数に採用する。
なお、本実施形態では、移動量推定の対象箇所は、各マンホール間の途中箇所ではなく、各マンホール内のケーブルコアとした。そのため、上述の通り、ケーブル長とケーブル重量については、マンホール間におけるものとした。また、移動量算出における時期的な基準については、任意の時期を起点としてよい。例えば、ケーブル敷設時の状態を起点としてもよいし、ケーブル敷設後、移動量を推定または測定した任意の時期を起点としてもよい。
【0029】
「交通量」は、ケーブルが埋設されている車道の交通量であり、例えば単位時間当たりの通行車両のピーク台数や平均台数等である。「埋設深さ」は、地表からケーブルまでの深さである。「水平位置」は、ケーブル埋設位置の車道に対する水平位置である(
図5右側参照)。「地盤状況」は、ケーブルが埋設されている地盤の弱さを表す情報であり、例えばN値である。ケーブルの移動量はケーブルのたわみ量が重要な要因である。ケーブルのたわみは、車道の乗用車による荷重や振動等に影響を受けることから、交通量に比例して増加し、埋設深さに比例して減少すると考えられる。また、水平位置が車両側面から離れるほど減少し、地盤状況が軟弱なほどたわみやすい。従って、本実施の形態ではこれらのパラメータを推定モデル50の説明変数に採用する。
【0030】
「傾斜角度」は、マンホール間のケーブルの傾斜角度である。POF鋼管内のケーブルは波乗り現象だけでなく、ケーブルの滑落によっても移動する。そこで本実施の形態では、ケーブルの滑落移動力の推定式に傾斜角度が採用されているため、推定モデル50の説明変数に採用する。
【0031】
「導体温度」は、ケーブルの導体温度である。ケーブルの導体温度差が大きくなるほどケーブル接続部側に働くケーブル軸力差が大きくなることから、本実施の形態では推定モ
デル50の説明変数に採用する。
【0032】
「流量」は、POF鋼管内を循環する絶縁油の流量である。POF鋼管内を循環する絶縁油の循環方向にケーブルが移動する傾向が確認されていることから、本実施形態では推定モデル50の説明変数に採用する。
【0033】
「経過年数」は、ケーブル接続部の施工日からの経過年数である。経過年数が大きい程、ケーブルコアの移動量が蓄積され、経過年数は移動量に影響を及ぼすと考えられる。「敷設環境」は、ケーブルの敷設環境を示すものであって、ケーブルが、直埋部、洞道部又は管路部のどの敷設環境に該当するかを表す。直埋部は、ケーブルを地面に直埋めした状態を示す。洞道部は、ケーブルを洞道内に敷設した状態を示す。洞道は、作業員が保守、点検等で内部を移動できる程度の空間を有した地中トンネル構造状のものである。管路部は、ケーブルを管路内に布設した状態を示す。管路は、ケーブルを収容可能な程度の外径を有するPFP管や鋼管等である。敷設環境は、ケーブルに対する地面からの振動等の伝わり具合に影響を及ぼすと考えられることから、敷設環境は、移動量に影響を及ぼすと考えられる。「コア移動群」は、連続する複数区間において一連の群としてコア移動する現象のことを定義し、ケーブル接続部がコア移動群に属するか否かを表す。「隣接マンホール接続部の種類」は、対象とするケーブル接続部の両隣の接続部が、コア移動防止型として改良後か否かを表す。コア移動防止型の接続部としては、例えば、ケーブルコアが移動しないように、接続部内でケーブルコアの導体部を機械的に固定するもの等がある。なお、ここでは、接続部がコア移動防止型として改良後か否かについては、マンホール内において、ケーブルの移動の防止対策が実施されたものを含むこととしてもよい。例えば、マンホール内のケーブルをクリート等で外側から機械的に固定し、ケーブル本体の軸方向における移動の防止対策を実施したものについても、改良後の接続部として扱ってもよい。本実施の形態では、その他のケーブルコアの移動の発生要因として、これらのパラメータを推定モデル50の説明変数に採用する。
【0034】
サーバ1は、以上の各パラメータを入力した場合に、ケーブルコアの移動量を推定する推定モデル50を生成する。本実施の形態では勾配ブースティングの手法を用いて学習を行い、推定モデル50として決定木を生成する。具体的には、サーバ1は、訓練用の所定の情報群を不純度等の基準値に応じて分割し、複数のノードから成る弱識別器(決定木)を生成する。各ノードでは、入力された各パラメータ(特徴量)を基準に判定を行う。サーバ1は、弱識別器による推定結果と、訓練用の所定の情報に対応付けられた正解値とを比較し、両者の誤差(残差)に応じて次の弱識別器を生成する。サーバ1は、前の弱識別器の学習結果を考慮するように、両者の誤差によって定義される損失関数の勾配を参照して弱識別器を逐次生成し、最終的な識別器、すなわち推定モデル50を生成する。
【0035】
例えば端末2には、サーバ1が生成した推定モデル50のデータがインストールされている。端末2は、実際にケーブルコアの移動量を推定する場合、推定モデル50を用いて移動量を推定する。すなわち、端末2は、ケーブル長、ケーブル重量等のデータを推定モデル50に入力することで、ケーブルコアの移動量を推定する。
【0036】
端末2は、ケーブルコアの移動量の推定値が所定条件を満たす場合(例えば移動量の推定値が所定の閾値以上である場合)、ユーザに向けてアラートを出力する。これにより、ユーザ(保守点検者)はいずれのケーブルから改修すべきか優先順位付けを行うことができ、ユーザの作業を好適に支援することができる。
【0037】
図6は、推定モデル50の生成処理の手順を示すフローチャートである。
図6に基づき、機械学習により推定モデル50を生成する際の処理内容について説明する。
サーバ1の制御部11は、推定モデル50を生成するための訓練データを取得する(ス
テップS11)。訓練データは、ケーブルに関する所定の情報に対し、ケーブルコアの移動量の正解値を対応付けたデータである。所定の情報とは、上述の如く、ケーブルの重量、交通量、埋設深さ等のデータを含む。
【0038】
制御部11は訓練データに基づき、ケーブルに関する所定の情報を入力した場合に、ケーブルコアの移動量を推定する推定モデル50を生成する(ステップS12)。例えば制御部11は、上述の如く、勾配ブースティングに係る決定木を推定モデル50として生成する。制御部11は、訓練用の所定の情報群を不純度等の基準値に応じて分割することで、弱識別器(決定木)を生成する。制御部11は、弱識別器の推定結果と正解との誤差(残差)で定義される損失関数の勾配から弱識別器を逐次生成し、最終的な推定モデル50を生成する。制御部11は一連の処理を終了する。
【0039】
図7は、ケーブルコアの移動量の推定処理の手順を示すフローチャートである。
図7に基づき、推定モデル50を用いてケーブルコアの移動量を推定する際の処理内容について説明する。
端末2の制御部21は、推定対象のケーブルに関する所定の情報を取得する(ステップS31)。制御部21は、取得した情報を推定モデル50に入力することで、ケーブルコアの移動量を推定する(ステップS32)。
【0040】
制御部21は、推定した移動量が所定条件を満たすか否かを判定する(ステップS33)。例えば制御部21は、移動量が所定の閾値以上であるか否かを判定する。所定条件を満たさないと判定した場合(S33:NO)、制御部21は、推定した移動量を出力(表示)する(ステップS34)。所定条件を満たすと判定した場合(S33:YES)、制御部21は、推定結果としてアラートを出力し(ステップS35)、一連の処理を終了する。
【0041】
以上より、本実施の形態によれば、ケーブルの移動量を定量的に評価し、改修作業の優先順位付けを行うことができる。
【0042】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0043】
各実施の形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載しても良い。
【符号の説明】
【0044】
1 サーバ
11 制御部
12 主記憶部
13 通信部
14 補助記憶部
15 モデル生成部
P1 プログラム
2 端末
21 制御部
22 主記憶部
23 通信部
24 表示部
25 入力部
26 補助記憶部
P2 プログラム
50 推定モデル