(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043956
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ルーツポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 29/00 20060101AFI20240326BHJP
F04C 18/18 20060101ALI20240326BHJP
F04C 25/02 20060101ALI20240326BHJP
F16C 23/06 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
F04C29/00 E
F04C18/18 A
F04C25/02 K
F04C29/00 B
F16C23/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149215
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】岩田 滉平
(72)【発明者】
【氏名】正木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】森 達志
(72)【発明者】
【氏名】柏 真太郎
【テーマコード(参考)】
3H129
3J012
【Fターム(参考)】
3H129AA06
3H129AB05
3H129BB21
3H129BB33
3H129CC03
3H129CC05
3H129CC17
3J012AB02
3J012BB01
3J012CB10
3J012DB20
3J012FB09
(57)【要約】
【課題】軸方向クリアランスの軸方向への変化を抑制できるとともに、回転軸の軸ブレを抑制できるルーツポンプを提供すること。
【解決手段】ルーツポンプ10において、ロータハウジング14の材質における線膨張係数は、回転軸16の材質における線膨張係数よりも大きく、かつスペーサ40の材質における線膨張係数は、ロータハウジング14の材質における線膨張係数及び回転軸16の材質における線膨張係数と異なる。スペーサ40は、ロータハウジング14の軸方向への熱膨張及び回転軸16の軸方向への熱膨張に合わせて、ロータハウジング14及び回転軸16の線膨張係数の差に基づく軸方向への軸方向クリアランスCLの変化を低減すべく、第2軸受32とともに回転軸16を軸方向に変位させるように第2凹部14c内で熱膨張する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングにそれぞれ挿入され、軸受を介して回転可能に支持された一対の回転軸と、
前記回転軸にそれぞれ取り付けられ、互いに逆方向へ回転される一対の二葉まゆ形のロータと、を有し、
前記軸受は、前記回転軸を保持する内輪と、前記内輪を囲む外輪と、前記内輪と前記外輪との間に設けられる転動子と、を有し、
前記ハウジングには、一対の前記ロータを収容し、流体を吸入する吸入孔及び流体を吐出する吐出孔を備えたロータ室が画定され、
前記ロータ室は、
前記回転軸の軸方向において、前記ロータの端面と所定の軸方向クリアランスを介して対向する一対のロータ室端面と、
前記回転軸の径方向において、前記吸入孔と前記吐出孔との間を繋ぐ一対の円弧面からなり、前記ロータの周面と所定の径方向クリアランスを介して対向するロータ室周面と、を有し、
一対の前記ロータが回転することで、前記吸入孔から吸入された流体が、前記ロータ室周面の前記円弧面に案内されて、前記吐出孔から吐出されるルーツポンプであって、
前記ハウジングと前記外輪との間には、前記ハウジング及び前記外輪に取り付けられる筒状のスペーサが設けられ、
前記ハウジングには、前記軸受と前記スペーサが収容される収容室が形成され、
前記ハウジングの材質における線膨張係数は、前記回転軸の材質における線膨張係数よりも大きく、かつ前記スペーサの材質における線膨張係数は、前記ハウジングの材質における線膨張係数及び前記回転軸の材質における線膨張係数と異なり、
前記スペーサは、前記ハウジングの前記軸方向への熱膨張及び前記回転軸の前記軸方向への熱膨張に合わせて、前記ハウジング及び前記回転軸の前記線膨張係数の差に基づく前記軸方向への前記軸方向クリアランスの変化を低減すべく、前記軸受とともに前記回転軸を前記軸方向に変位させるように前記収容室内で熱膨張することを特徴とするルーツポンプ。
【請求項2】
前記スペーサは、外筒と、当該外筒の内周側に一体に保持された内筒と、を有し、前記内筒は、前記軸受の前記外輪の外周面を囲んだ状態で当該外輪に取り付けられるとともに、前記外筒は、当該外筒の外周面が前記ハウジングによって囲まれた状態で前記ハウジングに取り付けられており、前記外筒の材質における線膨張係数と前記内筒の材質における線膨張係数とは異なる請求項1に記載のルーツポンプ。
【請求項3】
前記スペーサにおける軸方向の第1端面は、前記ロータ室側であり、かつ前記スペーサにおける軸方向の第2端面は、前記ロータ室側とは反対側であり、前記スペーサの前記第1端面側が前記軸受の前記外輪に取り付けられるとともに、前記第2端面には位置決め部材が接触しており、前記スペーサの材質における線膨張係数は、前記ハウジングの材質における線膨張係数より大きいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のルーツポンプ。
【請求項4】
前記スペーサにおける軸方向の第1端面は、前記ロータ室側であり、かつ前記スペーサにおける軸方向の第2端面は、前記ロータ室側とは反対側であり、前記スペーサの前記第2端面側が前記軸受の前記外輪に取り付けられるとともに、前記第1端面には位置決め部材が接触しており、前記スペーサの材質における線膨張係数は、前記回転軸の材質における線膨張係数より小さいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のルーツポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ルーツポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ルーツポンプとしての水素ポンプが開示されている。特許文献1に開示された水素ポンプは、ハウジングと、二つの支持軸と、を有する。二つの支持軸の各々は、ラジアル軸受を介して軸受ハウジングに支持されている。各支持軸には、ロータが取り付けられている。一対のロータは、ポンプ室に組み込まれている。動作環境等によってルーツポンプの周囲温度が変化すると、ハウジング及び支持軸の熱膨張及び収縮といった熱変形が発生する。
【0003】
例えば、特許文献2には、熱膨張による変位を補償することを可能とした技術が開示されている。特許文献2のスクリュー圧縮機は、ケーシングと、ケーシングの内部に形成されたボアと、ボアに収納された雄ロータ及び雌ロータと、を有する。雄ロータと雌ロータは、吸入側軸受と吐出側軸受によってケーシングに支持されている。吐出側軸受は、軸受ブロックに外周を固定されている。軸受ブロックは、軸受変位機構を介してケーシングに固定されている。軸受変位機構の材質における線膨張係数は、ケーシングの材質における線膨張係数よりも大きい。そして、スクリュー圧縮機の運転に伴って温度上昇したとき、軸受変位機構の温度は上昇するとともに、軸受変位機構は熱膨張する。軸受変位機構の膨張量は、他の部材に比べて大きいため、軸受変位機構は軸受ブロックを変位させる。これにより、熱膨張による変位が補償される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-250215号公報
【特許文献2】特開平11-336679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2において、熱膨張によって軸受ブロックを径方向に変位させるために、軸受変位機構は、径方向に容易に変位可能である。このため、特許文献2の軸受変位機構では、運転時の振動を受けたときや、吐出圧と吸入圧の差圧をロータが受けたとき、ロータが径方向に容易に変位して軸ブレが発生してしまう。また、特許文献2には、ロータとボアとの間の軸方向クリアランスについて、軸方向への変化については何ら言及されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するためのルーツポンプは、ハウジングと、前記ハウジングにそれぞれ挿入され、軸受を介して回転可能に支持された一対の回転軸と、前記回転軸にそれぞれ取り付けられ、互いに逆方向へ回転される一対の二葉まゆ形のロータと、を有し、前記軸受は、前記回転軸を保持する内輪と、前記内輪を囲む外輪と、前記内輪と前記外輪との間に設けられる転動子と、を有し、前記ハウジングには、一対の前記ロータを収容し、流体を吸入する吸入孔及び流体を吐出する吐出孔を備えたロータ室が画定され、前記ロータ室は、前記回転軸の軸方向において、前記ロータの端面と所定の軸方向クリアランスを介して対向する一対のロータ室端面と、前記回転軸の径方向において、前記吸入孔と前記吐出孔との間を繋ぐ一対の円弧面からなり、前記ロータの周面と所定の径方向クリアランスを介して対向するロータ室周面と、を有し、一対の前記ロータが回転することで、前記吸入孔から吸入された流体が、前記ロータ室周面の前記円弧面に案内されて、前記吐出孔から吐出されるルーツポンプであって、前記ハウジングと前記外輪との間には、前記ハウジング及び前記外輪に取り付けられる筒状のスペーサが設けられ、前記ハウジングには、前記軸受と前記スペーサが収容される収容室が形成され、前記ハウジングの材質における線膨張係数は、前記回転軸の材質における線膨張係数よりも大きく、かつ前記スペーサの材質における線膨張係数は、前記ハウジングの材質における線膨張係数及び前記回転軸の材質における線膨張係数と異なり、前記スペーサは、前記ハウジングの前記軸方向への熱膨張及び前記回転軸の前記軸方向への熱膨張に合わせて、前記ハウジング及び前記回転軸の前記線膨張係数の差に基づく前記軸方向への前記軸方向クリアランスの変化を低減すべく、前記軸受とともに前記回転軸を前記軸方向に変位させるように前記収容室内で熱膨張することを要旨とする。
【0007】
これによれば、軸受の外輪は、スペーサに囲まれた状態でスペーサに取り付けられるとともに、スペーサは、ハウジングに囲まれた状態でハウジングに取り付けられている。このため、スペーサによって、軸受の径方向への振動が抑制される。その結果、軸受に支持された回転軸の軸ブレが抑制される。また、スペーサの外周側は、ハウジングに取り付けられているため、ハウジングが軸方向へ熱膨張した際、スペーサの外周側は、ハウジングに追従しつつ軸方向へ熱膨張する。このとき、スペーサの内周側は、ハウジングに追従しにくいため、スペーサの外周側とは異なる量で軸方向へ熱膨張する。そして、スペーサは、ハウジングの軸方向への熱膨張及び回転軸の軸方向への熱膨張に合わせて、軸受とともに回転軸を軸方向に変位させる。このとき、スペーサは、ハウジング及び回転軸の線膨張係数の差に基づく軸方向クリアランスの変化を低減するように熱膨張する。これにより、軸方向クリアランスの軸方向への変化を抑制できる。
【0008】
ルーツポンプについて、前記スペーサは、外筒と、当該外筒の内周側に一体に保持された内筒と、を有し、前記内筒は、前記軸受の前記外輪の外周面を囲んだ状態で当該外輪に取り付けられるとともに、前記外筒は、当該外筒の外周面が前記ハウジングによって囲まれた状態で前記ハウジングに取り付けられており、前記外筒の材質における線膨張係数と前記内筒の材質における線膨張係数とは異なっていてもよい。
【0009】
これによれば、スペーサの外筒は、ハウジングに囲まれた状態でハウジングに取り付けられている。このため、ハウジングの軸方向への熱膨張及びスペーサの軸方向への熱膨張の際、外筒は、ハウジングの熱膨張に追従しつつ軸方向へ熱膨張する。一方、外筒と材質の異なる内筒は、外筒とは異なる量で独立して軸方向へ熱膨張して変位する。したがって、スペーサが外筒と内筒とに別れていない場合と比べると、スペーサに生じる歪みを抑制できる。
【0010】
ルーツポンプについて、前記スペーサにおける軸方向の第1端面は、前記ロータ室側であり、かつ前記スペーサにおける軸方向の第2端面は、前記ロータ室側とは反対側であり、前記スペーサの前記第1端面側が前記軸受の前記外輪に取り付けられるとともに、前記第2端面には位置決め部材が接触しており、前記スペーサの材質における線膨張係数は、前記ハウジングの材質における線膨張係数より大きくてもよい。
【0011】
これによれば、ハウジングの軸方向への熱膨張及び回転軸の軸方向への熱膨張のとき、ハウジング及び回転軸の線膨張係数の差に基づいて、軸方向クリアランスが変化するように、ハウジングと回転軸との軸方向への相対位置が変位する。このとき、位置決め部材によって、スペーサの第2端面側への軸方向への熱膨張は規制される。このため、スペーサは、第1端面がロータ室に接近するように軸方向へ熱膨張する。すると、スペーサの第1端面側に取り付けられた軸受もロータ室に接近するように軸方向へ変位する。その結果、軸方向クリアランスの軸方向への変化を抑制できる。
【0012】
ルーツポンプについて、前記スペーサにおける軸方向の第1端面は、前記ロータ室側であり、かつ前記スペーサにおける軸方向の第2端面は、前記ロータ室側とは反対側であり、前記スペーサの前記第2端面側が前記軸受の前記外輪に取り付けられるとともに、前記第1端面には位置決め部材が接触しており、前記スペーサの材質における線膨張係数は、前記回転軸の材質における線膨張係数より小さくてもよい。
【0013】
これによれば、ハウジングの軸方向への熱膨張及び回転軸の軸方向への熱膨張のとき、ハウジング及び回転軸の線膨張係数の差に基づいて、軸方向クリアランスが変化するように、ハウジングと回転軸との軸方向への相対位置が変位する。このとき、位置決め部材によって、スペーサの第1端面側への軸方向への熱膨張は規制される。そして、回転軸の線膨張係数よりもスペーサの線膨張係数が小さいため、スペーサの内周側の第2端面側は、ロータ室に接近するように軸方向へ相対的に変位する。このため、スペーサの第2端面側に取り付けられた軸受もロータ室に接近するように軸方向へ変位する。その結果、軸方向クリアランスの軸方向への変化を抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、軸方向クリアランスの軸方向への変化を抑制できるとともに、回転軸の軸ブレを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態のルーツポンプを示す断面図である。
【
図3】第1の実施形態の第2軸受及びスペーサを示す拡大断面図である。
【
図5】第2の実施形態の第2軸受及びスペーサを示す拡大断面図である。
【
図7】別例の第2軸受及びスペーサを示す拡大断面図である。
【
図8】その他の別例の第2軸受及びスペーサを示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、ルーツポンプを具体化した第1の実施形態を
図1~
図4にしたがって説明する。
<ルーツポンプの全体>
燃料電池車には、酸素及び水素を供給して発電させる燃料電池システムが搭載されている。ルーツポンプは、燃料電池システムにおける水素ポンプとして燃料電池車に搭載されている。ルーツポンプは、燃料電池から排出された水素ガスを燃料電池に再び供給する。したがって、ルーツポンプは、流体としての水素ガスを吸入して吐出する。
【0017】
<ハウジング>
図1に示すように、ルーツポンプ10は、筒状のハウジング11を有する。ハウジング11は、モータハウジング12と、ギアハウジング13と、ロータハウジング14と、カバー部材15と、を有する。モータハウジング12、ギアハウジング13、ロータハウジング14、及びカバー部材15の各々は、アルミニウム製である。
【0018】
モータハウジング12は、ギアハウジング13と連結されている。また、ロータハウジング14は、ギアハウジング13と連結されている。カバー部材15はロータハウジング14と連結されている。
【0019】
モータハウジング12は、板状の底壁12aと、底壁12aの外周部から筒状に延びる周壁12bと、を有する。ギアハウジング13は、板状の底壁13aと、底壁13aの外周部から筒状に延びる周壁13bと、を有する。ギアハウジング13の底壁13aには、一対の第1凹部13cが形成されている。一対の第1凹部13cの各々は、ギアハウジング13の内底面から円形状に凹む。なお、一対の第1凹部13cのうち、後述する駆動軸16aが挿通される第1凹部13cは、大径側と小径側とを有する。
【0020】
ロータハウジング14は、板状の底壁14aと、底壁14aの外周部から筒状に延びる周壁14bと、を有する。ロータハウジング14の底壁14aには、一対の第2凹部14cが形成されている。一対の第2凹部14cの各々は、底壁14aの端面から円形状に凹む。一対の第2凹部14cの各々は、一対の第1凹部13cの各々と同軸上に位置している。また、一対の第2凹部14cの各々は、底壁14aの端面での開口側を大径とするとともに、開口側より奥側を小径とする。カバー部材15は、板状である。
【0021】
ギアハウジング13の底壁13aとモータハウジング12の周壁12bとが突き合わされている。ロータハウジング14の底壁14aとギアハウジング13の周壁13bとが突き合わされている。カバー部材15は、ロータハウジング14の周壁14bに突き合わされている。カバー部材15は、内壁面15aと外壁面15bと、を有する。
【0022】
ハウジング11には、ギア室24が画定されている。ギア室24は、ギアハウジング13の底壁13a、ギアハウジング13の周壁13b、及びロータハウジング14の底壁14aによって画定されている。
【0023】
<ロータ室>
ルーツポンプ10は、ハウジング11に画定されたロータ室25を有する。ロータ室25は、ロータハウジング14の底壁14a、ロータハウジング14の周壁14b、及びカバー部材15によって画定されている。
【0024】
ハウジング11は、一対のロータ室端面26と、ロータ室周面27と、を有する。一対のロータ室端面26のうちの一方は、ロータハウジング14の底壁14aの内壁面14eによって形成されるとともに、一対のロータ室端面26のうちの他方は、カバー部材15の内壁面15aによって形成されている。一対のロータ室端面26は、ロータ室25を挟んで互いに反対側に位置する。ロータ室周面27は、周壁14bの内周面14dによって形成されている。ロータ室周面27は、後述する吸入孔45と吐出孔46との間を繋ぐ一対の円弧面27aを有する。
【0025】
<回転軸>
ルーツポンプ10は、回転軸16としての駆動軸16a及び従動軸16bを有する。駆動軸16a及び従動軸16bは、鋼製である。駆動軸16aと従動軸16bは平行である。回転軸16の軸心Lの延びる方向を軸方向とする。駆動軸16aは、ギアハウジング13の底壁13a及びロータハウジング14の底壁14aを貫通している。従動軸16bは、ロータハウジング14の底壁14aを貫通している。
【0026】
<軸受>
一対の第1軸受31は、ギアハウジング13の底壁13aに配置されている。一対の第1軸受31の一方は、一方の第1凹部13cにおける大径側に圧入されているとともに、一対の第1軸受31の他方は、他方の第1凹部13cに圧入されている。一対の第2軸受32は、ロータハウジング14の底壁14aに配置されている。一対の第2軸受32の一方は、スペーサ40を介して一方の第2凹部14cにおける大径側に保持されているとともに、一対の第2軸受32の他方は、スペーサ40を介して他方の第2凹部14cにおける大径側に保持されている。スペーサ40及び第2軸受32は、後に詳述する。第3軸受33は、モータハウジング12の底壁12aに配置されている。駆動軸16aは、一方の第1軸受31、一方の第2軸受32及び第3軸受33を介してハウジング11に回転可能に支持されている。従動軸16bは、他方の第1軸受31、及び他方の第2軸受32を介してハウジング11に回転可能に支持されている。したがって、一対の回転軸16は、ハウジング11にそれぞれ挿入されるとともに、各軸受31,32,33を介して回転可能に支持されている。
【0027】
<シール部材>
第1シール部材17aは、ギアハウジング13の底壁13aに設けられている。第1シール部材17aは、一方の第1凹部13cにおける小径側に圧入されている。第1シール部材17aは、駆動軸16aとギアハウジング13の底壁13aとの間をシールする。第1シール部材17aは、ギア室24とモータ室12cとの間をシールする。一対の第2シール部材17bは、ロータハウジング14の底壁14aに設けられている。一対の第2シール部材17bの各々は、第2凹部14cにおける小径側に圧入されている。第2シール部材17bは、第2軸受32とロータ室25との間に配置されている。第2シール部材17bは、回転軸16と底壁14aとの間をシールする。第2シール部材17bは、ギア室24とロータ室25との間をシールする。
【0028】
<電動モータ>
ルーツポンプ10は、駆動軸16aを回転させる電動モータ50を有する。電動モータ50は、ハウジング11に画定されたモータ室12cに収容されている。モータ室12cは、モータハウジング12の底壁12a、モータハウジング12の周壁12b、及びギアハウジング13の底壁13aによって画定されている。電動モータ50は、駆動軸16aを回転させる。
【0029】
<動力伝達機構>
ルーツポンプ10は、動力伝達機構Gを有する。動力伝達機構Gは、駆動ギア18と従動ギア19と、を有する。駆動ギア18は、駆動軸16aに固定されている。従動ギア19は、従動軸16bに固定されている。駆動ギア18及び従動ギア19は、ギア室24に収容されている。したがって、動力伝達機構Gは、ハウジング11に収容されている。従動ギア19は、駆動ギア18と噛み合って回転する。従動軸16bは、動力伝達機構Gによって駆動軸16aと逆方向に回転する。
【0030】
<吸入孔及び吐出孔>
図2に示すように、ロータ室25は、ロータ室25内に水素ガスを吸入する吸入孔45、及びロータ室25内の水素ガスを吐出する吐出孔46を備える。吸入孔45及び吐出孔46は、ロータハウジング14の周壁14bに形成されている。吸入孔45と吐出孔46は、ロータ室25を挟んで対向する。吸入孔45及び吐出孔46は、ロータ室25と外部とを連通する。上述したロータ室周面27は、回転軸16の径方向において、吸入孔45と吐出孔46とを繋ぐ一対の円弧面27aからなる。
【0031】
<駆動ロータ及び従動ロータ>
ルーツポンプ10は、一対の二葉まゆ形のロータ22としての駆動ロータ20と、従動ロータ21と、を有する。駆動ロータ20は、駆動ギア18によって回転されるロータである。従動ロータ21は、従動ギア19によって回転されるロータである。一対のロータ22は、ロータ室25に収容されている。駆動ロータ20は、駆動軸16aに取り付けられている。従動ロータ21は、従動軸16bに取り付けられている。従動ロータ21は、駆動ロータ20とともに回転する。したがって、駆動ロータ20と従動ロータ21は、ロータ室25内で互いに逆方向へ回転される一対のロータ22である。ロータ室周面27は、一対のロータ22の径方向の外周域を取り囲む。
【0032】
図3に示すように、ロータ22は、一対のロータ端面22cと、ロータ周面22dと、を有する。一対のロータ端面22cは、ロータ22の軸方向の両端面である。一方のロータ端面22cは、一方のロータ室端面26である底壁14aの内壁面14eと所定の軸方向クリアランスCLを介して対向するとともに、他方のロータ端面22cは、他方のロータ室端面26であるカバー部材15の内壁面15aと所定の軸方向クリアランスCLを介して対向する。したがって、ロータ室25は、回転軸16の軸方向において、ロータ端面22cと所定の軸方向クリアランスCLを介して対向する一対のロータ室端面26を有する。
【0033】
図2に示すように、ロータ周面22dは、ロータ室25のロータ室周面27に対向する。ロータ周面22dは、一対のロータ端面22cを繋ぐ面である。ロータ22の先端部P1は、ロータ室周面27の円弧面27aから離間している。先端部P1とロータ室周面27の円弧面27aとの間には、径方向クリアランスCL1が存在している。したがって、ロータ室周面27は、ロータ22の先端部P1と所定の径方向クリアランスCL1を介して対向する。そして、ルーツポンプ10において、一対のロータ22が回転することで、吸入孔45から吸入された水素ガスが、ロータ室25の円弧面27aに案内される。円弧面27aに案内された水素ガスは、吐出孔46からルーツポンプ10の外へ吐出される。
【0034】
軸方向クリアランスCLは、予め設定された規定範囲に維持される。軸方向クリアランスCLが規定範囲より広くなると、水素ガスの圧送の際に、閉じ込められた水素ガスが軸方向クリアランスCLに漏れて好ましくないためである。したがって、所定の軸方向クリアランスCLとは、水素ガスの圧送の際に、閉じ込められた水素ガスが軸方向クリアランスCLに漏れないように設定された大きさのクリアランスである。
【0035】
そして、一対のロータ22が回転することで、吸入孔45から吸入された水素ガスは、ロータ22の先端部P1によって閉じ込められる。閉じ込められた水素ガスは、閉じ込められたまま、吐出孔46に向けて圧送される。閉じ込められた水素ガスは、吐出孔46から吐出される。
【0036】
<スペーサ>
図3に示すように、上記のスペーサ40は、ハウジング11のロータハウジング14と第2軸受32との間に設けられている。スペーサ40はロータハウジング14に取り付けられるとともに、第2軸受32に取り付けられている。これにより、スペーサ40は、ロータハウジング14に保持されるとともに、第2軸受32を内側に保持している。スペーサ40は、円筒状である。スペーサ40は、外筒41と、当該外筒41の内周側に一体の内筒42と、を有する。スペーサ40は、軸方向における一端面に第1端面40aを有するとともに、軸方向における他端面に第2端面40bを有する。第1端面40aは、スペーサ40の軸方向におけるロータ室25側の端面である。第2端面40bは、スペーサ40の軸方向におけるロータ室25側とは反対側の端面である。第1端面40aは、回転軸16の軸方向において第2シール部材17bと対向する。第2端面40bは、第1端面40aと反対側の面である。
【0037】
外筒41は、円筒状である。外筒41は、第2凹部14cの大径側で、第2凹部14cの内側に圧入されている。これにより、スペーサ40は、ロータハウジング14に取り付けられている。外筒41の外周面の全体は、第2凹部14cの内側でロータハウジング14と接触している。外筒41は、当該外筒41の外周面がロータハウジング14によって囲まれた状態でロータハウジング14に取り付けられている。したがって、スペーサ40の外周側、詳細にはスペーサ40の外周面の周方向の全体は、ロータハウジング14に囲まれた状態でハウジング11に保持されている。
【0038】
内筒42は、円筒状である。内筒42の外径は、内筒42の軸方向に一定である。内筒42の内径は、内筒42の軸方向に異なる。内筒42は、大径部42aと小径部42bと、を有する。大径部42aの内径は、小径部42bの内径より大きい。内筒42は、軸方向の全体に亘って外筒41の内側に圧入されている。内筒42の外周面の全体は、外筒41の内周面の全体に接触している。これにより、内筒42は、当該内筒42の外周面の全体が外筒41に囲まれた状態で当該外筒41に保持されている。
【0039】
外筒41及び内筒42の軸方向の一端面は、スペーサ40の第1端面40aで同一面上に位置するとともに、外筒41及び内筒42の軸方向の他端面は、スペーサ40の第2端面40bで同一面上に位置する。したがって、外筒41の軸方向への長さは、内筒42の軸方向への長さと同じである。
【0040】
<第2軸受>
第2軸受32は、外輪32aと、内輪32bと、複数の転動子32cと、を有する。内輪32bは、回転軸16を保持する。外輪32aは、内輪32bを囲む。転動子32cは球状である。転動子32cは、内輪32bと外輪32aとの間に設けられている。外輪32aは、内筒42の大径部42aの内側に圧入されている。内輪32bは、内筒42の大径部42aの内側に圧入されていない。第2軸受32は、内筒42によって囲まれた状態で内筒42の内側に保持されている。したがって、第2軸受32は、スペーサ40の内周側に取り付けられている。また、スペーサ40は、第2軸受32の外周面、つまり、外輪32aの外周面を周方向の全体に亘って囲む筒状である。そして、スペーサ40は、第2軸受32を内側に保持している。つまり、スペーサ40は、第2軸受32における外輪32aに取り付けられている。第2軸受32は、スペーサ40の軸方向における第1端面40a側に取り付けられるとともに、保持されている。
【0041】
外輪32aの軸方向の第1端面は、スペーサ40の第1端面40aと同一面上に位置しているとともに、外輪32aの軸方向の第2端面は、スペーサ40の内側において、小径部42bにおける軸方向の端面に接触している。第2軸受32の外周面とスペーサ40の内周面とは接触している。
【0042】
一方の第2軸受32の内輪32bは、駆動軸16aの周面に嵌合されている。よって、一方の第2軸受32の内輪32bは、駆動軸16aを保持している。一方の第2軸受32の内輪32bは、駆動軸16aと一体回転する。他方の第2軸受32の内輪32bは、従動軸16bの周面に嵌合されている。よって、他方の第2軸受32の内輪32bは、従動軸16bを保持している。他方の第2軸受32の内輪32bは、従動軸16bと一体回転する。
【0043】
転動子32cは、外輪32aと内輪32bの間で転動する。これにより、駆動軸16a及び従動軸16bは、第2軸受32によってロータハウジング14に回転可能に支持されている。
【0044】
上記第2軸受32とスペーサ40は、第2凹部14cに収容されている。したがって、第2凹部14cは、第2軸受32とスペーサ40が収容される収容室である。
第2凹部14cでは、スペーサ40及び第2軸受32は、第2シール部材17bとの間に空隙Sを空けて配置されている。空隙Sは、回転軸16の軸方向において、スペーサ40及び第2軸受32と第2シール部材17bとを離している。
【0045】
ロータハウジング14の底壁14aには、位置決め部材44が装着されている。位置決め部材44は、第2凹部14cを画定した底壁14aの内周面に装着されている。位置決め部材44は、スペーサ40の第2端面40bに接触している。この接触により、スペーサ40の第2凹部14cからの抜け出しが規制されている。
【0046】
ここで、ロータハウジング14の材質であるアルミニウムの線膨張係数は、回転軸16の材質である鋼の線膨張係数より大きい。そして、スペーサ40の材質における線膨張係数は、アルミニウムの線膨張係数、及び鋼の線膨張係数よりも大きい。したがって、スペーサ40の材質における線膨張係数は、ロータハウジング14の材質における線膨張係数、及び回転軸16の材質における線膨張係数と異なる。内筒42の材質における線膨張係数は、外筒41の材質における線膨張係数より大きい。外筒41は、例えばジュラルミンで形成されている。また、内筒42は、例えば鉛で形成されている。したがって、外筒41の材質における線膨張係数と、内筒42の材質における線膨張係数とは異なっている。
【0047】
例えば、ルーツポンプ10が気温の高い地域で使用される場合、その気温や使用状況に応じてルーツポンプ10の温度は高くなる。すると、ロータハウジング14、回転軸16及びスペーサ40は、熱膨張する。ロータハウジング14、回転軸16及びスペーサ40の熱膨張は、回転軸16の軸方向及び径方向に発生する。なお、回転軸16の軸方向を、単に「軸方向」と記載する。ロータハウジング14、回転軸16及びスペーサ40について、温度上昇する前と温度上昇した後の軸方向への熱膨張量の差を変化量とする。
【0048】
外筒41の変化量は、軸方向への外筒41の長さと、外筒41の材質における線膨張係数と、によって決まる。内筒42の変化量は、軸方向への内筒42の長さと、内筒42の材質における線膨張係数によって決まる。軸方向への外筒41の長さと、軸方向への内筒42の長さとは同じである。そして、内筒42の材質における線膨張係数は、外筒41の材質における線膨張係数より大きい。このため、スペーサ40が熱膨張したとき、内筒42の方が外筒41よりも変化量が大きい。
【0049】
また、ロータハウジング14の変化量は、軸方向へのロータハウジング14の長さと、ロータハウジング14の材質における線膨張係数と、によって決まる。回転軸16の変化量は、軸方向への回転軸16の長さと、回転軸16の材質における線膨張係数と、によって決まる。
【0050】
ロータハウジング14の材質における線膨張係数は、回転軸16の材質における線膨張係数より大きい。このため、ロータハウジング14の変化量は、回転軸16の変化量よりも大きくなる。ロータハウジング14の変化量と、回転軸16の変化量との差を第1変化量とする。一方、スペーサ40の材質における線膨張係数は、ロータハウジング14の材質における線膨張係数より大きい。このため、スペーサ40の変化量は、ロータハウジング14の変化量よりも大きくなる。スペーサ40の変化量と、ロータハウジング14の変化量との差を第2変化量とする。第1変化量と第2変化量との差がゼロ又はほぼゼロになるように、スペーサ40の材質及び軸方向への長さが調整されている。その結果として、スペーサ40は、ロータハウジング14の軸方向への熱膨張及び回転軸16の軸方向への熱膨張に合わせて第2凹部14c内で熱膨張する。スペーサ40は、ロータハウジング14及び回転軸16の線膨張係数の差に基づく軸方向への軸方向クリアランスCLの変化を低減すべく、第2軸受32とともに回転軸16を軸方向に変位させるように熱膨張する。
【0051】
[第1の実施形態の作用]
スペーサ40によって、第2軸受32は、径方向への振動が抑制されている。よって、第2軸受32に支持された回転軸16においても、径方向への振動が抑制されている。
【0052】
図4に示すように、ルーツポンプ10の温度上昇に伴い、ロータハウジング14、回転軸16及びスペーサ40は、熱膨張する。上記のように、ロータハウジング14の変化量は、回転軸16の変化量よりも大きい。言い換えると、回転軸16の変化量は、ロータハウジング14の変化量よりも小さい。このため、第2軸受32がスペーサ40を介さずにロータハウジング14に直接取り付けられていると、第2軸受32の変位量は、ロータハウジング14の変位量に追従する。その結果、ロータ室25における内壁面14eが、ロータ22の一方のロータ端面22cに接近する。すると、例えば、ロータ22の一方のロータ端面22cと、内壁面14eとの間の軸方向クリアランスCLが軸方向に狭くなるとともに、他方のロータ端面22cと、内壁面15aとの間の軸方向クリアランスCLが軸方向に広くなる。つまり、ロータハウジング14の材質における線膨張係数と、回転軸16の材質における線膨張係数の差とに基づいて、軸方向クリアランスCLが変化するように、ロータハウジング14と回転軸16との相対位置が軸方向に変位する。
【0053】
これに対し、ロータハウジング14と第2軸受32の外輪32aとの間には、スペーサ40が設けられている。スペーサ40は、ロータハウジング14及び外輪32aに取り付けられている。また、スペーサ40は、位置決め部材44によって、スペーサ40の第2端面40b側への軸方向への熱膨張が規制されている。このため、スペーサ40は、第1端面40aがロータ室25に接近するように軸方向へ熱膨張する。詳細には、スペーサ40の外周側となる外筒41は、ロータハウジング14の軸方向への熱膨張に追従しつつ軸方向へ熱膨張する。一方、スペーサ40の内周側となる内筒42は、ロータハウジング14に追従しにくいため、外筒41とは異なるように軸方向へ熱膨張する。具体的には、内筒42は、外筒41よりも大きく軸方向へ熱膨張する。このようなスペーサ40の軸方向への熱膨張に伴って、当該スペーサ40の内周側となる内筒42に取り付けられている第2軸受32は、ロータ室25に接近するように軸方向へ変位する。つまり、スペーサ40の内周側は、ロータハウジング14及びスペーサ40の外周側とは異なる量で軸方向へ熱膨張して変位する。すると、第2軸受32における、ロータハウジング14及び回転軸16に対する相対的な位置は、熱膨張前とほぼ同じになる。すなわち、スペーサ40は、熱膨張によって、第2軸受32の軸方向の変位を抑制するものの、ロータハウジング14と回転軸16との軸方向の相対的な変位量を低減するように、第2軸受32を軸方向に変位させる。その結果、スペーサ40によって、ロータ22の一方のロータ端面22cと、内壁面14eとの間の軸方向クリアランスCL、及び他方のロータ端面22cと、内壁面15aとの間の軸方向クリアランスCLの各々の軸方向への変化が抑制される。
【0054】
[第1の実施形態の効果]
上記第1の実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1-1)第2軸受32の外輪32aは、スペーサ40に囲まれた状態でスペーサ40に取り付けられるとともに、スペーサ40は、ロータハウジング14に囲まれた状態でロータハウジング14に取り付けられている。このため、ルーツポンプ10における水素ガスの圧送の際や、電動モータ50による振動の際に、スペーサ40によって、第2軸受32の径方向への振動が抑制される。その結果、第2軸受32に支持された回転軸16の軸ブレが発生することを抑制できる。
【0055】
ルーツポンプ10の温度上昇に伴って、ロータハウジング14及び回転軸16が軸方向へ熱膨張しても、その熱膨張に合わせて、スペーサ40は第2軸受32とともに回転軸16を軸方向に変位させる。このとき、スペーサ40は、ロータハウジング14及び回転軸16の線膨張係数の差に基づく軸方向クリアランスCLの変化を低減するように熱膨張する。これにより、ロータハウジング14と回転軸16とが軸方向へ熱膨張しても、第2軸受32の相対位置を熱膨張前とほぼ同じにすることができる。つまり、ルーツポンプ10の温度上昇に伴う軸方向クリアランスCLの軸方向への変化を抑制できる。その結果として、水素ガスの圧送量が、軸方向クリアランスCLの変化に伴って変化することを抑制できる。よって、ルーツポンプ10による水素ガスの圧送を安定して行うことができる。
【0056】
(1-2)スペーサ40は、外筒41と、内筒42と、を有する。外筒41は、ロータハウジング14に囲まれた状態でロータハウジング14に取り付けられている。このため、ロータハウジング14の軸方向への熱膨張及びスペーサ40の軸方向への熱膨張の際、外筒41は、ロータハウジング14の熱膨張に追従しつつ軸方向へ熱膨張する。このとき、内筒42は、外筒41とは別に独立して軸方向へ熱膨張して、外筒41に対して異なる量で熱膨張する。したがって、スペーサ40が外筒41と内筒42とに別れていない場合と比べると、スペーサ40に生じる歪みを抑制できる。
【0057】
(1-3)外筒41の材質における線膨張係数は、内筒42の材質における線膨張係数よりも小さい。これによれば、外筒41は、ロータハウジング14に囲まれた状態で取り付けられているため、軸方向へのスペーサ40の熱膨張の際、スペーサ40は、ロータハウジング14の熱膨張に追従して熱膨張するが、内筒42は、外筒41とは別に独立して大きく軸方向へ熱膨張する。このため、内筒42によって、第2軸受32をロータ室25に向けてより接近させることができる。したがって、スペーサ40の材質及び長さを調節することで、軸方向クリアランスCLの軸方向への変化をより抑制しやすくなる。
【0058】
(1-4)ロータハウジング14及び回転軸16が軸方向へ熱膨張したとき、ロータハウジング14と回転軸16との線膨張係数の差に基づいて、軸方向クリアランスCLが軸方向へ変化するように、ロータハウジング14と回転軸16との相対位置が軸方向へ変位する。このとき、位置決め部材44によって、スペーサ40の第2端面40b側への軸方向への熱膨張は規制される。このため、スペーサ40は、第1端面40aがロータ室25に接近するように軸方向へ熱膨張する。すると、スペーサ40の第1端面40a側に取り付けられた第2軸受32もロータ室25に接近するように軸方向へ変位する。その結果、軸方向クリアランスCLの軸方向への変化が抑制される。
【0059】
(第2の実施形態)
以下、ルーツポンプを具体化した第2の実施形態を
図5~
図6にしたがって説明する。なお、第2の実施形態の説明では、第1の実施形態と同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0060】
図5及び
図6に示すように、スペーサ40は、軸方向における小径部42bを第2シール部材17bに対向させて配置されている。したがって、スペーサ40の軸方向における第1端面40aは、小径部42b側の端面である。また、スペーサ40の軸方向における第2端面40bは、大径部42a側の端面である。
【0061】
ロータハウジング14の底壁14aには、位置決め部材44が装着されている。位置決め部材44は、第2凹部14cを画定した底壁14aの内周面に装着されている。位置決め部材44は、第2凹部14cの大径側において、開口側より小径側に近い位置に装着されている。そして、位置決め部材44は、スペーサ40の第1端面40aに接触している。
【0062】
スペーサ40の材質における線膨張係数は、ロータハウジング14の材質であるアルミニウムの線膨張係数よりも小さい。スペーサ40の材質における線膨張係数は、回転軸16の材質である鋼の線膨張係数よりも小さい。また、内筒42の材質における線膨張係数は、外筒41の材質における線膨張係数よりも小さい。例えば、外筒41は、チタンで形成されている。また、例えば、内筒42は、タングステンで形成されている。
【0063】
[第2の実施形態の作用]
第2軸受32の外輪32aは、スペーサ40によって囲まれるとともに、スペーサ40に取り付けられている。また、スペーサ40は、ロータハウジング14によって囲まれるとともに、ロータハウジング14に取り付けられている。このため、スペーサ40によって、第2軸受32は、径方向への振動が抑制されている。よって、第2軸受32に支持された回転軸16においても、径方向への振動が抑制されている。
【0064】
図6に示すように、ルーツポンプ10の温度上昇に伴い、ロータハウジング14、回転軸16及びスペーサ40は、熱膨張する。上記のように、ロータハウジング14の変化量は、回転軸16の変化量よりも大きい。言い換えると、回転軸16の変化量は、ロータハウジング14の変化量よりも小さい。このため、第2軸受32がスペーサ40を介さずにロータハウジング14に直接取り付けられていると、第2軸受32の変位量は、ロータハウジング14の変位量に追従する。その結果、ロータ室25における内壁面14eが、ロータ22の一方のロータ端面22cに接近する。すると、例えば、ロータ22の一方のロータ端面22cと、内壁面14eとの間の軸方向クリアランスCLが軸方向に狭くなるとともに、他方のロータ端面22cと、内壁面15aとの間の軸方向クリアランスCLが軸方向に広くなる。つまり、ロータハウジング14の材質における線膨張係数と、回転軸16の材質における線膨張係数の差とに基づいて、軸方向クリアランスCLが変化するように、ロータハウジング14と回転軸16との相対位置が軸方向に変位する。
【0065】
これに対し、ロータハウジング14と第2軸受32の外輪32aとの間には、スペーサ40が設けられている。スペーサ40は、ロータハウジング14及び外輪32aに取り付けられている。また、スペーサ40は、位置決め部材44によって、スペーサ40の第1端面40a側への軸方向への熱膨張が規制されている。このとき、回転軸16の材質における線膨張係数よりもスペーサ40の材質における線膨張係数が小さいため、スペーサ40の内周側における第2端面40b側は、ロータ室25に接近するように軸方向へ熱膨張して変位する。このため、スペーサ40の第2端面40b側に取り付けられている第2軸受32もロータ室25に接近するように軸方向へ変位する。つまり、スペーサ40の内周側は、ロータハウジング14及びスペーサ40の外周側とは異なる量で軸方向へ変位する。すると、第2軸受32における、ロータハウジング14及び回転軸16に対する相対的な位置は、熱膨張前とほぼ同じになる。すなわち、スペーサ40は、熱膨張によって、第2軸受32の軸方向の変位を抑制するものの、ロータハウジング14と回転軸16との軸方向の相対的な変位量を低減するように、第2軸受32を軸方向に変位させる。その結果、スペーサ40によって、ロータ22の一方のロータ端面22cと、内壁面14eとの間の軸方向クリアランスCL、及び他方のロータ端面22cと、内壁面15aとの間の軸方向クリアランスCLの各々の軸方向への変化が抑制される。
【0066】
[第2の実施形態の効果]
第2の実施形態によれば、第1の実施形態に記載の(1-1)及び(1-2)の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
【0067】
(2-1)スペーサ40における第1端面40aには位置決め部材44が接触しているとともに、スペーサ40における第2端面40b側には第2軸受32が取り付けられている。スペーサ40の線膨張係数は、回転軸16の線膨張係数より小さい。
【0068】
このため、ロータハウジング14及び回転軸16が軸方向へ熱膨張したとき、ロータハウジング14と回転軸16との線膨張係数の差に基づいて、軸方向クリアランスCLが軸方向へ変化するように、ロータハウジング14と回転軸16との相対位置が軸方向へ変位する。このとき、位置決め部材44によって、スペーサ40の第1端面40a側への軸方向への熱膨張は規制される。そして、回転軸16の線膨張係数よりもスペーサ40の線膨張係数が小さいため、スペーサ40の内周側の第2端面40b側は、ロータ室25に接近するように相対的に軸方向へ変位する。このため、スペーサ40の第2端面40b側に取り付けられた第2軸受32もロータ室25に接近するように軸方向へ変位する。その結果、軸方向クリアランスCLの軸方向への変化を抑制できる。
【0069】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○
図7に示すように、スペーサ60は、筒部61と、鍔部62と、を有する形状でもよい。筒部61は、円筒状である。鍔部62は、円盤状である。鍔部62は、筒部61の軸方向の端部から筒部61の径方向に延在する。鍔部62は、第2凹部14cの大径側で、第2凹部14cの内側に圧入されている。鍔部62は、ロータハウジング14と接触しているとともに、鍔部62はロータハウジング14に保持されている。したがって、スペーサ60の外周側は、ロータハウジング14によって囲まれた状態でハウジング11に取り付けられている。筒部61の外径及び内径は、筒部61の軸方向に一定である。
【0070】
第2軸受32の外輪32aは、筒部61の内側に圧入されている。したがって、第2軸受32は、スペーサ60の内側に取り付けられている。第2軸受32の外周面の周方向の全体は筒部61によって保持されている。外輪32aの軸方向の第1端面は、スペーサ60の第1端面60aと同一面上に位置しているとともに、外輪32aの軸方向の第2端面は、スペーサ60の内側において、第2端面60bよりも内側に位置している。第2軸受32とスペーサ60は接触している。
【0071】
スペーサ60の材質における線膨張係数は、ロータハウジング14の材質であるアルミニウム及び回転軸16の材質である鋼における線膨張係数より大きい。スペーサ60は、例えばジュラルミン、鉛等で形成されている。
【0072】
位置決め部材44は、スペーサ60の第2端面60bに接触している。
なお、
図8に示すように、スペーサ60は、鍔部62をロータ室25側に近付けてロータハウジング14に配置されていてもよい。スペーサ60の第1端面60aは、鍔部62側の端面となるとともに、第2端面60bは、筒部61の先端面となる。この場合、位置決め部材44は、スペーサ60の鍔部62側にて第1端面60aに接触する。この場合、スペーサ60の材質における線膨張係数は、回転軸16の材質である鋼の線膨張係数より大きい。スペーサ60は、例えば、タングステン、チタン、23クロム等で形成されている。
【0073】
また、
図7及び
図8に示すスペーサ60は、鍔部62を含む外筒と、外筒より内側の内筒とに別れて形成されていてもよい。
このように構成した場合も第1の実施形態に記載の(1-1)又は第2の実施形態に記載の(2-1)の効果に加えて以下の効果を得ることができる。
【0074】
筒部61の外周面は、ロータハウジング14から離れている。つまり、スペーサ60において、第2軸受32に取り付けられる部分は、第2凹部14cの内側にてロータハウジング14に直接取り付けられていない。このため、筒部61は、ロータハウジング14の影響を受けずに軸方向へ熱膨張できる。よって、第2軸受32を軸方向へ変位させやすい。
【0075】
○第1及び第2の実施形態において、スペーサ40は、外筒41と内筒42と、を有していなくてもよい。
○第1及び第2の実施形態において、内筒42は、小径部42bを有していなくてもよい。
【0076】
○ルーツポンプ10は、例えば、エンジンを駆動源としてもよい。この場合、電動モータ50は削除されるとともに、駆動軸16aは、ギア室24外に設けられる駆動源であるエンジンに連結されるためにギアハウジング13の底壁13aを貫通している。
【0077】
○ルーツポンプ10によって吸入及び吐出される流体は、水素ガス以外でもよいし、ルーツポンプ10の用途は、燃料電池システムの水素ポンプとしての用途以外でもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0078】
(イ)前記スペーサは、筒部と、当該筒部の外周面から延在する円盤状の鍔部と、を有し、前記軸受は前記筒部の内側に取り付けられるとともに、前記スペーサの外周側となる前記鍔部は、前記ハウジングに取り付けられているルーツポンプ。
【符号の説明】
【0079】
CL…軸方向クリアランス、CL1…径方向クリアランス、10…ルーツポンプ、11…ハウジング、14…ロータハウジング、14c…収容室としての第2凹部、16…回転軸、16a…駆動軸、16b…従動軸、22…ロータ、22c…ロータ端面、22d…ロータ周面、25…ロータ室、26…ロータ室端面、27…ロータ室周面、27a…円弧面、32…第2軸受、32a…外輪、32b…内輪、32c…転動子、40,60…スペーサ、40a,60a…第1端面、40b,60b…第2端面、41…外筒、42…内筒、44…位置決め部材、45…吸入孔、46…吐出孔。