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特開2024-43962補正量算出装置、移動体測位システム、補正量算出方法、及び補正量算出プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043962
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】補正量算出装置、移動体測位システム、補正量算出方法、及び補正量算出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/10 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
G01S5/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149226
(22)【出願日】2022-09-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和1年度~令和3年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト/無人航空機の運航管理システム及び衝突回避技術の開発/遠隔からの機体識別および有人航空機との空域共有に関する研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】501204525
【氏名又は名称】国立研究開発法人 海上・港湾・航空技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古賀 禎
(72)【発明者】
【氏名】角張 泰之
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062AA04
5J062BB03
5J062CC12
(57)【要約】
【課題】受信局の設置位置が制限されることなく、移動体の測位精度を向上させること。
【解決手段】受信局3は、測位した自身の位置を示す移動体位置情報を含む移動体情報を送信する移動体からの移動体情報を受信し、移動体情報に当該移動体情報を受信した受信時刻を示す受信時刻情報を付与した位置時刻情報を送信する。補正量算出装置4のプロセッサ42は、複数の受信局3からそれぞれ送信された位置時刻情報を取得する情報取得部と、位置時刻情報に含まれる移動体位置情報に基づく移動体の位置と、複数の受信局3の各設置位置と、複数の受信局3からそれぞれ送信された位置時刻情報にそれぞれ含まれる各受信時刻情報に基づく各受信時刻とに基づいて、複数の受信局のうち基準となる基準受信局と他の受信局との間の受信時刻差を本来の受信時刻差に補正するための補正量を算出する補正量算出部とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受信局同士の時刻同期に用いられる補正量を算出するプロセッサを備え、
前記複数の受信局は、
測位した自身の位置を示す移動体位置情報を含む移動体情報を送信する移動体からの前記移動体情報をそれぞれ受信し、前記移動体情報に当該移動体情報を受信した受信時刻を示す受信時刻情報を付与した位置時刻情報をそれぞれ送信し、
前記プロセッサは、
前記複数の受信局からそれぞれ送信された前記位置時刻情報を取得する情報取得部と、
前記位置時刻情報に含まれる前記移動体位置情報に基づく前記移動体の位置と、前記複数の受信局の各設置位置と、前記複数の受信局からそれぞれ送信された前記位置時刻情報にそれぞれ含まれる各前記受信時刻情報に基づく各受信時刻とに基づいて、前記複数の受信局のうち基準となる基準受信局と他の受信局との間の受信時刻差を本来の受信時刻差に補正するための前記補正量を算出する補正量算出部とを備える補正量算出装置。
【請求項2】
前記移動体は、
航空機であり、
前記移動体情報は、
放送型自動従属監視信号である請求項1に記載の補正量算出装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記基準受信局と前記他の受信局との2つの受信局からそれぞれ送信された前記位置時刻情報にそれぞれ含まれる各前記受信時刻情報に基づく各受信時刻と、前記2つの受信局の各設置位置とに基づいて算出される双曲面であって前記2つの受信局同士の受信時刻差に基づく前記2つの受信局同士の前記移動体までの距離差が同一となる双曲面と前記移動体の進行方向とが特定の関係を有しているか否かを判定する関係判定部をさらに備え、
前記補正量算出部は、
前記関係判定部にて前記2つの受信局について前記特定の関係を有していると判定された場合に、前記2つの受信局についての前記補正量を算出する請求項1に記載の補正量算出装置。
【請求項4】
前記情報取得部は、
互いに異なる複数の前記移動体毎の前記位置時刻情報を前記複数の受信局からそれぞれ取得し、
前記補正量算出部は、
前記複数の移動体毎に、前記位置時刻情報に含まれる前記移動体位置情報に基づく前記移動体の位置と、前記複数の受信局の各設置位置と、前記複数の受信局からそれぞれ送信された前記位置時刻情報にそれぞれ含まれる各前記受信時刻情報に基づく各受信時刻とに基づいて、前記基準受信局と前記他の受信局との間の受信時刻差を本来の受信時刻差に補正するための候補となる候補補正量をそれぞれ算出し、当該算出した各前記候補補正量から前記補正量を算出する請求項1に記載の補正量算出装置。
【請求項5】
前記補正量算出部は、
算出した前記各候補補正量の平均値を前記補正量として算出する請求項4に記載の補正量算出装置。
【請求項6】
前記補正量算出部は、
算出した前記各候補補正量のうち、前記各候補補正量の平均値または中央値から特定の値だけ離れた前記候補補正量を除いた他の前記候補補正量から前記補正量を算出する請求項4に記載の補正量算出装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、
前記補正量算出部にて従前に算出された前記補正量と、前記補正量算出部にて現時点で算出された前記補正量と、前記補正量の経時変化に応じた変動幅を示す変動幅情報とに基づいて、前記現時点で算出した前記補正量が異常値であるか否かを判定する異常判定部をさらに備える請求項1に記載の補正量算出装置。
【請求項8】
測位した自身の位置を示す移動体位置情報を含む移動体情報を送信する移動体からの前記移動体情報をそれぞれ受信し、前記移動体情報に当該移動体情報を受信した受信時刻を示す受信時刻情報を付与した位置時刻情報をそれぞれ送信する複数の受信局と、
前記複数の受信局同士の時刻同期に用いられる補正量を算出するプロセッサを有する補正量算出装置と、
前記補正量を用いて前記移動体の位置を測位する移動体測位装置とを備え、
前記プロセッサは、
前記複数の受信局からそれぞれ送信された前記位置時刻情報を取得する情報取得部と、
前記位置時刻情報に含まれる前記移動体位置情報に基づく前記移動体の位置と、前記複数の受信局の各設置位置と、前記複数の受信局からそれぞれ送信された前記位置時刻情報にそれぞれ含まれる各前記受信時刻情報に基づく各受信時刻とに基づいて、前記複数の受信局のうち基準となる基準受信局と他の受信局との間の受信時刻差を本来の受信時刻差に補正するための前記補正量を算出する補正量算出部とを備える移動体測位システム。
【請求項9】
複数の受信局同士の時刻同期に用いられる補正量を算出する補正量算出装置のプロセッサが実行する補正量算出方法であって、
前記複数の受信局は、
測位した自身の位置を示す移動体位置情報を含む移動体情報を送信する移動体からの前記移動体情報をそれぞれ受信し、前記移動体情報に当該移動体情報を受信した受信時刻を示す受信時刻情報を付与した位置時刻情報をそれぞれ送信し、
前記プロセッサが、
前記複数の受信局からそれぞれ送信された前記位置時刻情報を取得する情報取得ステップと、
前記位置時刻情報に含まれる前記移動体位置情報に基づく前記移動体の位置と、前記複数の受信局の各設置位置と、前記複数の受信局からそれぞれ送信された前記位置時刻情報にそれぞれ含まれる各前記受信時刻情報に基づく各受信時刻とに基づいて、前記複数の受信局のうち基準となる基準受信局と他の受信局との間の受信時刻差を本来の受信時刻差に補正するための前記補正量を算出する補正量算出ステップとを実行する補正量算出方法。
【請求項10】
複数の受信局同士の時刻同期に用いられる補正量を算出する補正量算出装置のプロセッサに実行させる補正量算出プログラムであって、
前記複数の受信局は、
測位した自身の位置を示す移動体位置情報を含む移動体情報を送信する移動体からの前記移動体情報をそれぞれ受信し、前記移動体情報に当該移動体情報を受信した受信時刻を示す受信時刻情報を付与した位置時刻情報をそれぞれ送信し、
前記プロセッサに、
前記複数の受信局からそれぞれ送信された前記位置時刻情報を取得する情報取得ステップと、
前記位置時刻情報に含まれる前記移動体位置情報に基づく前記移動体の位置と、前記複数の受信局の各設置位置と、前記複数の受信局からそれぞれ送信された前記位置時刻情報にそれぞれ含まれる各前記受信時刻情報に基づく各受信時刻とに基づいて、前記複数の受信局のうち基準となる基準受信局と他の受信局との間の受信時刻差を本来の受信時刻差に補正するための前記補正量を算出する補正量算出ステップとを実行させる補正量算出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補正量算出装置、移動体測位システム、補正量算出方法、及び補正量算出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動体としての航空機の位置を測位するマルチラテレーションシステムが知られている。このようなマルチラテレーションシステムでは、複数の受信局が航空機から送信される信号を受信する。また、各受信局は、受信した信号に対して当該受信した受信時刻を付与して中央局に送信する。そして、中央局は、各受信局からそれぞれ送信された信号及び受信時刻を参照し、受信時刻差を用いた所謂、双曲線測位によって航空機の位置を測位する。すなわち、マルチラテレーションシステムでは、航空機の位置を正確に測位するためには、複数の受信局同士の時刻同期が重要となる。
【0003】
そして、従来では、例えば、以下に示す第1,第2の方式により、複数の受信局同士の時刻同期を行っている。
第1の方式は、各受信局が有する時計として、所謂GPS(Global Positioning System)時計を用いることによって、各受信局同士の時刻を一致させる方式である(例えば、特許文献1参照)。
また、第2の方式では、特定の位置に設置された固定局を用いる。具体的に、各受信局は、固定局から送信される信号を受信する。また、各受信局は、受信した信号に対して当該受信した受信時刻を付与して中央局に送信する。そして、中央局は、各受信局からそれぞれ送信された信号に付与された受信時刻と、固定局及び各受信局の各設置位置とに基づいて、複数の受信局同士の時刻同期を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2013/136648号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、マルチラテレーションシステムにおいて、航空機の位置を正確に測位するためには、受信局同士の時刻同期を相対的に一致させることが望ましい。しかしながら、第1の方式におけるGPS時計では、現時点において、受信局同士の時刻同期を数十ns程度とすることが限界であり、航空機に大きな位置測定誤差が生じる。
また、第2の方式では、受信局間の距離が大きくなると、固定局、受信局、及び中央局間で通信を行うことができなくなる。すなわち、受信局の設置位置が制限されてしまう。
そこで、受信局の設置位置が制限されることなく、移動体の測位精度を向上させることができる技術が要望されている。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、受信局の設置位置が制限されることなく、移動体の測位精度を向上させることができる補正量算出装置、移動体測位システム、補正量算出方法、及び補正量算出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る補正量算出装置は、複数の受信局同士の時刻同期に用いられる補正量を算出するプロセッサを備え、前記複数の受信局は、測位した自身の位置を示す移動体位置情報を含む移動体情報を送信する移動体からの前記移動体情報をそれぞれ受信し、前記移動体情報に当該移動体情報を受信した受信時刻を示す受信時刻情報を付与した位置時刻情報をそれぞれ送信し、前記プロセッサは、前記複数の受信局からそれぞれ送信された前記位置時刻情報を取得する情報取得部と、前記位置時刻情報に含まれる前記移動体位置情報に基づく前記移動体の位置と、前記複数の受信局の各設置位置と、前記複数の受信局からそれぞれ送信された前記位置時刻情報にそれぞれ含まれる各前記受信時刻情報に基づく各受信時刻とに基づいて、前記複数の受信局のうち基準となる基準受信局と他の受信局との間の受信時刻差を本来の受信時刻差に補正するための前記補正量を算出する補正量算出部とを備える。
【0008】
また、本発明に係る補正量算出装置では、上記発明において、前記移動体は、航空機であり、前記移動体情報は、放送型自動従属監視信号である。
【0009】
また、本発明に係る補正量算出装置では、上記発明において、前記プロセッサは、前記基準受信局と前記他の受信局との2つの受信局からそれぞれ送信された前記位置時刻情報にそれぞれ含まれる各前記受信時刻情報に基づく各受信時刻と、前記2つの受信局の各設置位置とに基づいて算出される双曲面であって前記2つの受信局同士の受信時刻差に基づく前記2つの受信局同士の前記移動体までの距離差が同一となる双曲面と前記移動体の進行方向とが特定の関係を有しているか否かを判定する関係判定部をさらに備え、前記補正量算出部は、前記関係判定部にて前記2つの受信局について前記特定の関係を有していると判定された場合に、前記2つの受信局についての前記補正量を算出する。
【0010】
また、本発明に係る補正量算出装置では、上記発明において、前記情報取得部は、互いに異なる複数の前記移動体毎の前記位置時刻情報を前記複数の受信局からそれぞれ取得し、前記補正量算出部は、前記複数の移動体毎に、前記位置時刻情報に含まれる前記移動体位置情報に基づく前記移動体の位置と、前記複数の受信局の各設置位置と、前記複数の受信局からそれぞれ送信された前記位置時刻情報にそれぞれ含まれる各前記受信時刻情報に基づく各受信時刻とに基づいて、前記基準受信局と前記他の受信局との間の受信時刻差を本来の受信時刻差に補正するための候補となる候補補正量をそれぞれ算出し、当該算出した各前記候補補正量から前記補正量を算出する。
【0011】
また、本発明に係る補正量算出装置では、上記発明において、前記補正量算出部は、算出した前記各候補補正量の平均値を前記補正量として算出する。
【0012】
また、本発明に係る補正量算出装置では、上記発明において、前記補正量算出部は、算出した前記各候補補正量のうち、前記各候補補正量の平均値または中央値から特定の値だけ離れた前記候補補正量を除いた他の前記候補補正量から前記補正量を算出する。
【0013】
また、本発明に係る補正量算出装置では、上記発明において、前記プロセッサは、前記補正量算出部にて従前に算出された前記補正量と、前記補正量算出部にて現時点で算出された前記補正量と、前記補正量の経時変化に応じた変動幅を示す変動幅情報とに基づいて、前記現時点で算出した前記補正量が異常値であるか否かを判定する異常判定部をさらに備える。
【0014】
また、本発明に係る移動体測位システムは、測位した自身の位置を示す移動体位置情報を含む移動体情報を送信する移動体からの前記移動体情報をそれぞれ受信し、前記移動体情報に当該移動体情報を受信した受信時刻を示す受信時刻情報を付与した位置時刻情報をそれぞれ送信する複数の受信局と、前記複数の受信局同士の時刻同期に用いられる補正量を算出するプロセッサを有する補正量算出装置と、前記補正量を用いて前記移動体の位置を測位する移動体測位装置とを備え、前記プロセッサは、前記複数の受信局からそれぞれ送信された前記位置時刻情報を取得する情報取得部と、前記位置時刻情報に含まれる前記移動体位置情報に基づく前記移動体の位置と、前記複数の受信局の各設置位置と、前記複数の受信局からそれぞれ送信された前記位置時刻情報にそれぞれ含まれる各前記受信時刻情報に基づく各受信時刻とに基づいて、前記複数の受信局のうち基準となる基準受信局と他の受信局との間の受信時刻差を本来の受信時刻差に補正するための前記補正量を算出する補正量算出部とを備える。
【0015】
また、本発明に係る補正量算出方法は、複数の受信局同士の時刻同期に用いられる補正量を算出する補正量算出装置のプロセッサが実行する補正量算出方法であって、前記複数の受信局は、測位した自身の位置を示す移動体位置情報を含む移動体情報を送信する移動体からの前記移動体情報をそれぞれ受信し、前記移動体情報に当該移動体情報を受信した受信時刻を示す受信時刻情報を付与した位置時刻情報をそれぞれ送信し、前記プロセッサが、前記複数の受信局からそれぞれ送信された前記位置時刻情報を取得する情報取得ステップと、前記位置時刻情報に含まれる前記移動体位置情報に基づく前記移動体の位置と、前記複数の受信局の各設置位置と、前記複数の受信局からそれぞれ送信された前記位置時刻情報にそれぞれ含まれる各前記受信時刻情報に基づく各受信時刻とに基づいて、前記複数の受信局のうち基準となる基準受信局と他の受信局との間の受信時刻差を本来の受信時刻差に補正するための前記補正量を算出する補正量算出ステップとを実行する。
【0016】
また、本発明に係る補正量算出プログラムは、複数の受信局同士の時刻同期に用いられる補正量を算出する補正量算出装置のプロセッサに実行させる補正量算出プログラムであって、前記複数の受信局は、測位した自身の位置を示す移動体位置情報を含む移動体情報を送信する移動体からの前記移動体情報をそれぞれ受信し、前記移動体情報に当該移動体情報を受信した受信時刻を示す受信時刻情報を付与した位置時刻情報をそれぞれ送信し、前記プロセッサに、前記複数の受信局からそれぞれ送信された前記位置時刻情報を取得する情報取得ステップと、前記位置時刻情報に含まれる前記移動体位置情報に基づく前記移動体の位置と、前記複数の受信局の各設置位置と、前記複数の受信局からそれぞれ送信された前記位置時刻情報にそれぞれ含まれる各前記受信時刻情報に基づく各受信時刻とに基づいて、前記複数の受信局のうち基準となる基準受信局と他の受信局との間の受信時刻差を本来の受信時刻差に補正するための前記補正量を算出する補正量算出ステップとを実行させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る補正量算出装置、移動体測位システム、補正量算出方法、及び補正量算出プログラムによれば、受信局の設置位置が制限されることなく、移動体の測位精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施の形態1に係る航空機測位システムの構成を示す図である。
図2図2は、受信局及び中央局の構成を示すブロック図である。
図3図3は、プロセッサが実行する補正量算出方法を示すフローチャートである。
図4図4は、補正量算出方法を説明する図である。
図5図5は、プロセッサが実行する航空機測位方法を示すフローチャートである。
図6図6は、実施の形態2に係る補正量算出方法を説明する図である。
図7図7は、特定の関係を説明する図である。
図8図8は、実施の形態3に係る補正量算出方法を説明する図である。
図9図9は、実施の形態4に係る補正量算出方法を説明する図である。
図10図10は、実施の形態4に係る補正量算出方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態)について説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付している。
【0020】
(実施の形態1)
〔航空機測位システムの概略構成〕
図1は、実施の形態1に係る航空機測位システム1の構成を示す図である。
航空機測位システム1は、本発明に係る移動体測位システムに相当する。この航空機測位システム1は、移動体としての航空機2(図1)の位置を測位するシステムである。本実施の形態1では、航空機測位システム1は、飛行中の航空機2を監視対象とする所謂、広域マルチラテレーション(WAM:Wide Area Multilateration)システムによって構成されている。そして、航空機測位システム1は、図1に示すように、複数の受信局3と、中央局4とを備える。
【0021】
ここで、航空機2は、図1に示すように、測位装置21と、応答装置22とを備える。
測位装置21は、GNSS(Global Navigation Satellite System)を利用して、航法衛星から送信された測位用データを含む電波を受信し、航空機2の3次元位置を測位する。なお、利用されるGNSSは、例えば、GPS(Global Positioning System)であってもよいし、他のシステムであっても構わない。
応答装置22は、測位装置21にて測位された航空機2の3次元位置を示す航空機位置情報(移動体位置情報)を含む航空機情報(移動体情報)を定期的に送信する。本実施の形態1では、当該航空機情報は、放送型自動従属監視(ADS-B:Automatic Dependent surveillance-Broadcast)信号である。具体的に、ADS-B信号は、航空機位置情報の他、航空機2のID番号、航空機2の速度(水平速度、上昇・下降速度)、及び航空機2の進行方向等を含む。すなわち、航空機2は、ADS-Bを使用した航空機によって構成されている。
【0022】
なお、航空機測位システム1において、測位対象とする航空機は、ADS-Bを使用した航空機2の他、ADS-B信号を送信することなく、通常のSSR(Secondary Surveillance Rader)モードA/C/S応答信号やスキッタ信号等のSSR信号を送信する航空機を含むものである。以下では、説明の便宜上、ADS-B信号及びSSR信号を含めて航空機信号と記載する。
【0023】
受信局3は、航空機2から送信された航空機信号を受信し、当該航空機信号に当該航空機信号を受信した受信時刻を示すタイムスタンプ(受信時刻情報)を付与した受信局信号(位置時刻情報)を送信する。本実施の形態1では、受信局3は、受信局3A~3Dの4つ設けられている。なお、受信局3の数は、4つに限らず、その他の数だけ設けても構わない。これら4つの受信局3A~3D相互間の距離は、例えば、50km~70km程度である。また、これら4つの受信局3A~3Dは、同一の構成を有する。
なお、受信局3の詳細な構成については後述する「受信局の構成」において説明する。
【0024】
中央局4は、4つの受信局3A~3D同士の時刻同期に用いられる補正量を算出するとともに、当該補正量を用いて航空機(ADS-B信号を送信する航空機2の他、ADS-B信号を送信せずにSSR信号を送信する航空機を含む)の3次元位置を測位する。すなわち、中央局4は、本発明に係る補正量算出装置及び移動体測位装置に相当する。
なお、中央局4の詳細な構成については後述する「中央局の構成」において説明する。
【0025】
〔受信局の構成〕
次に、上述した受信局3の構成について説明する。
図2は、受信局3及び中央局4の構成を示すブロック図である。
受信局3は、図2に示すように、受信部31と、時計部32と、タイムスタンプ付与部33と、送信部34とを備える。
【0026】
受信部31は、アンテナ(図示略)を介して、航空機2から送信された航空機信号を受信する部分である。
時計部32は、受信局3の内部時計である。この時計部32は、図2に示すように、発振器321と、クロックカウンタ322とを備える。
発振器321は、クロックを発生するクロック源である。本実施の形態1では、発振器321は、ルビジウム発振器によって構成されている。なお、発振器321としては、ルビジウム発振器に限らず、水晶発振器等の他の発振器によって構成しても構わない。
クロックカウンタ322は、発振器321からのクロックを計測する。このクロックカウンタ322にて計測されたカウンタ値は、時計部32によって計時された時刻に相当する。
【0027】
タイムスタンプ付与部33は、受信部31にて受信した航空機信号に対して、当該航空機信号を受信した時点で時計部32によって計時された時刻(受信時刻)を示すタイムスタンプ(受信時刻情報)を付与した受信局信号を生成する。
送信部34は、中央局4との間で通信接続し、タイムスタンプ付与部33にて生成された受信局信号を当該中央局4に送信する。
【0028】
〔中央局の構成〕
次に、上述した中央局4の構成について、図2を参照しつつ説明する。
中央局4は、図2に示すように、受信部41と、プロセッサ42と、記憶部43とを備える。
受信部41は、アンテナ(図示略)を介して、4つの受信局3A~3Dから送信された受信局信号を受信する部分である。
【0029】
プロセッサ42は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等のコントローラによって、記憶部43に記憶された各種のプログラムが実行されることにより実現され、中央局4全体の動作を制御する。なお、プロセッサ42は、CPUやMPUに限らず、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の集積回路によって構成されても構わない。そして、プロセッサ42は、本発明に係る情報取得部及び補正量算出部としての機能を有する。
なお、プロセッサ42における情報取得部及び補正量算出部としての機能の詳細については、後述する「プロセッサが実行する補正量算出方法」において説明する。
【0030】
記憶部43は、プロセッサ42が実行する各種のプログラム(本発明に係る補正量算出プログラムを含む)の他、当該プロセッサ42が処理を行うときに必要なデータ等を記憶する。当該データとしては、4つの受信局3A~3Dの各設置位置(3次元位置)を示す各設置位置情報、電波の速度を示す電波速度情報、及びプロセッサ42にて算出された補正量等を例示することができる。
【0031】
〔プロセッサが実行する補正量算出方法〕
次に、上述したプロセッサ42が実行する補正量算出方法について説明する。
図3は、プロセッサ42が実行する補正量算出方法を示すフローチャートである。図4は、補正量算出方法を説明する図である。
ここで、図4では、受信局3Aの設置位置(受信局3Aに対応する設置位置情報に基づく3次元位置)を(XA,YA,ZA)としている。また、受信局3Bの設置位置(受信局3Bに対応する設置位置情報に基づく3次元位置)を(XB,YB,ZB)としている。さらに、受信局3Cの設置位置(受信局3Cに対応する設置位置情報に基づく3次元位置)を(XC,YC,ZC)としている。また、受信局3Dの設置位置(受信局3Dに対応する設置位置情報に基づく3次元位置)を(XD,YD,ZD)としている。さらに、航空機2の3次元位置(航空機2から送信されたADS-B信号に含まれる航空機位置情報に基づく3次元位置)を(XF,YF,ZF)としている。
【0032】
先ず、プロセッサ42(情報取得部)は、受信部41を介して、航空機2からのADS-B信号に対して当該ADS―B信号を受信した受信時刻を示すタイムスタンプが付与された受信局信号を4つの受信局3A~3Dからそれぞれ取得する(ステップS1A:情報取得ステップ)。
【0033】
以下では、受信局3AにてADS-B信号を受信した受信時刻(受信局3Aから送信された受信局信号に含まれるタイムスタンプに基づく受信時刻)を受信時刻TmAとする。ここで、当該受信時刻TmAは、本来の受信時刻(時刻にずれのない受信時刻)TAと同一であるものとする。
また、受信局3BにてADS-B信号を受信した受信時刻(受信局3Bから送信された受信局信号に含まれるタイムスタンプに基づく受信時刻)を受信時刻TmBとする。ここで、当該受信時刻TmBは、本来の受信時刻(時刻にずれのない受信時刻)TBから時刻のずれδAB(受信局3Aにて計時された時刻と受信局3Bにて計時された時刻とのずれ)があるものとする。すなわち、TmB=TB+δABである。
【0034】
さらに、受信局3CにてADS-B信号を受信した受信時刻(受信局3Cから送信された受信局信号に含まれるタイムスタンプに基づく受信時刻)を受信時刻TmCとする。ここで、当該受信時刻TmCは、本来の受信時刻(時刻にずれのない受信時刻)TCから時刻のずれδAC(受信局3Aにて計時された時刻と受信局3Cにて計時された時刻とのずれ)があるものとする。すなわち、TmC=TC+δACである。
また、受信局3DにてADS-B信号を受信した受信時刻(受信局3Dから送信された受信局信号に含まれるタイムスタンプに基づく受信時刻)を受信時刻TmDとする。ここで、当該受信時刻TmDは、本来の受信時刻(時刻にずれのない受信時刻)TDから時刻のずれδAD(受信局3Aにて計時された時刻と受信局3Dにて計時された時刻とのずれ)があるものとする。すなわち、TmD=TD+δADである。
【0035】
そして、図4において、符号「HAB」で示した双曲面は、2つの受信局3A,3B同士の本来の受信時刻TA,TBの差に基づく当該2つの受信局3A,3B同士の航空機2までの距離差(C×(TB-TA))が同一となる双曲面である。なお、Cは、記憶部43に記憶された電波速度情報に基づく電波の速度である。また、符号「HAC」で示した双曲面は、2つの受信局3A,3C同士の本来の受信時刻TA,TCの差に基づく当該2つの受信局3A,3C同士の航空機2までの距離差(C×(TC-TA))が同一となる双曲面である。さらに、符号「HAD」で示した双曲面は、2つの受信局3A,3D同士の本来の受信時刻TA,TDの差に基づく当該2つの受信局3A,3D同士の航空機2までの距離差(C×(TD-TA))が同一となる双曲面である。
【0036】
ステップS1Aの後、プロセッサ42(補正量算出部)は、当該ステップS1Aにて取得した受信局信号に含まれる航空機位置情報に基づく航空機2の3次元位置(XF,YF,ZF)と、記憶部43に記憶された各設置位置情報に基づく4つの受信局3A~3Dの各設置位置(XA,YA,ZA),(XB,YB,ZB),(XC,YC,ZC),(XD,YD,ZD)及び電波速度情報と、当該ステップS1Aにて取得した各受信局信号に含まれる各タイムスタンプに基づく各受信時刻TmA~TmDとに基づいて、4つの受信局3A~3Dのうち基準となる基準受信局3Aと他の受信局3B~3Dとの間の受信時刻差を本来の受信時刻差に補正するための補正量δAB,δAC,δADを算出する(ステップS1B:補正量算出ステップ)。
【0037】
具体的に、航空機2と4つの受信局3A~3Dとの間には、以下の式(1)~式(3)が成り立つ。
【0038】
【数1】
【0039】
【数2】
【0040】
【数3】
【0041】
そして、プロセッサ42は、ステップS1Bにおいて、式(1)に、航空機2の3次元位置(XF,YF,ZF)、2つの受信局3A,3Bの各設置位置(XA,YA,ZA),(XB,YB,ZB)、電波の速度C、及び2つの受信局3A,3Bの各受信時刻TmA,TmBを代入することにより、基準受信局3Aと受信局3Bとの間の受信時刻差を本来の受信時刻差に補正するための補正量δABを算出する。
【0042】
また、プロセッサ42は、ステップS1Bにおいて、式(2)に、航空機2の3次元位置(XF,YF,ZF)、2つの受信局3A,3Cの各設置位置(XA,YA,ZA),(XC,YC,ZC)、電波の速度C、及び2つの受信局3A,3Cの各受信時刻TmA,TmCを代入することにより、基準受信局3Aと受信局3Cとの間の受信時刻差を本来の受信時刻差に補正するための補正量δACを算出する。
【0043】
さらに、プロセッサ42は、ステップS1Bにおいて、式(2)に、航空機2の3次元位置(XF,YF,ZF)、2つの受信局3A,3Dの各設置位置(XA,YA,ZA),(XD,YD,ZD)、電波の速度C、及び2つの受信局3A,3Dの各受信時刻TmA,TmDを代入することにより、基準受信局3Aと受信局3Dとの間の受信時刻差を本来の受信時刻差に補正するための補正量δADを算出する。
【0044】
そして、プロセッサ42は、算出した各補正量δAB,δAC,δADを記憶部43に記憶させる。
【0045】
〔プロセッサが実行する航空機測位方法〕
次に、上述したプロセッサ42が実行する航空機測位方法について説明する。
図5は、プロセッサ42が実行する航空機測位方法を説明するフローチャートである。
なお、航空機測位方法における測位対象となる航空機は、ADS-B信号を送信することなく、通常のSSR信号を送信する航空機である。
【0046】
先ず、プロセッサ42は、受信部41を介して、航空機からのSSR信号に対して当該SSR信号を受信した受信時刻を示すタイムスタンプが付与された受信局信号を4つの受信局3A~3Dからそれぞれ取得する(ステップS2A)。
【0047】
以下では、上述した「プロセッサが実行する補正量算出方法」と同様に、受信局3AにてSSR信号を受信した受信時刻(受信局3Aから送信された受信局信号に含まれるタイムスタンプに基づく受信時刻)を受信時刻TmAとする。また、受信局3BにてSSR信号を受信した受信時刻(受信局3Bから送信された受信局信号に含まれるタイムスタンプに基づく受信時刻)を受信時刻TmBとする。さらに、受信局3CにてSSR信号を受信した受信時刻(受信局3Cから送信された受信局信号に含まれるタイムスタンプに基づく受信時刻)を受信時刻TmCとする。また、受信局3DにてSSR信号を受信した受信時刻(受信局3Dから送信された受信局信号に含まれるタイムスタンプに基づく受信時刻)を受信時刻TmDとする。
【0048】
また、以下では、上述した「プロセッサが実行する補正量算出方法」と同様に、受信局3Aの設置位置(受信局3Aに対応する設置位置情報に基づく3次元位置)を(XA,YA,ZA)としている。また、受信局3Bの設置位置(受信局3Bに対応する設置位置情報に基づく3次元位置)を(XB,YB,ZB)としている。さらに、受信局3Cの設置位置(受信局3Cに対応する設置位置情報に基づく3次元位置)を(XC,YC,ZC)としている。また、受信局3Dの設置位置(受信局3Dに対応する設置位置情報に基づく3次元位置)を(XD,YD,ZD)としている。さらに、航空機2の3次元位置(航空機2から送信されたADS-B信号に含まれる航空機位置信号に基づく3次元位置)を(XF,YF,ZF)としている。
【0049】
さらに、以下では、測位対象となる航空機の未知の3次元位置を(XN,YN,ZN)とする。
【0050】
ステップS2Aの後、プロセッサ42は、記憶部43に記憶された各設置位置情報に基づく4つの受信局3A~3Dの各設置位置(XA,YA,ZA),(XB,YB,ZB),(XC,YC,ZC),(XD,YD,ZD)、電波速度情報、及び補正量δAB,δAC,δADと、当該ステップS2Aにて取得した各受信局信号に含まれる各タイムスタンプに基づく各受信時刻TmA~TmDとに基づいて、所謂、双曲線測位により、航空機の未知の3次元位置(XN,YN,ZN)を算出する(ステップS2B)。
【0051】
具体的に、プロセッサ42は、ステップS2Bにおいて、以下の式(4)~(6)で示される3元連立方程式を解くことにより、航空機の未知の3次元位置(XN,YN,ZN)を算出する。
【0052】
【数4】
【0053】
【数5】
【0054】
【数6】
【0055】
なお、式(4)で示される双曲面は、図4で示した双曲面HABに相当する。また、式(5)で示される双曲面は、図4で示した双曲面HACに相当する。さらに、式(6)で示される双曲面は、図4で示した双曲面HADに相当する。
【0056】
以上説明した本実施の形態1によれば、以下の効果を奏する。
本実施の形態1に係る航空機測位システム1を構成するプロセッサ42は、受信局3A~3Dからそれぞれ送信された受信局信号を取得する。また、プロセッサ42は、受信局信号に含まれる航空機位置情報に基づく航空機2の3次元位置(XF,YF,ZF)と、受信局3A~3Dの各設置位置(XA,YA,ZA),(XB,YB,ZB),(XC,YC,ZC),(XD,YD,ZD)と、当該受信局3A~3Dからそれぞれ送信された受信局信号にそれぞれ含まれる各タイムスタンプに基づく各受信時刻TmA~TmDとに基づいて、基準受信局3Aと他の受信局3B~3Dとの間の受信時刻差を本来の受信時刻差に補正するための補正量δAB,δAC,δADを算出する。そして、プロセッサ42は、補正量δAB,δAC,δADを用いて、航空機の位置を測位する。
すなわち、本実施の形態1に係る受信局3A~3D同士の時刻同期は、従来の第1の方式のようにGPS時計を用いた受信局3A~3D同士の時刻同期ではない。そして、上記のように補正量δAB,δAC,δADを算出することにより、受信局3A~3D同士の時刻同期を相対的に一致させることができる。また、航空機2から送信されたADS-B信号を利用して受信局3A~3D同士の時刻同期を行っているため、当該受信局3A~3D間の距離が大きくても問題が生じない。
したがって、本実施の形態1に係る航空機測位システム1によれば、受信局3の設置位置が制限されることなく、航空機の測位精度を向上させることができる。
【0057】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。
以下の説明では、上述した実施の形態1と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略または簡略化する。
本実施の形態2では、上述した実施の形態1に対して、プロセッサ42が実行する補正量算出方法が異なる。
【0058】
図6は、実施の形態2に係る補正量算出方法を説明する図である。なお、図6では、説明の便宜上、4つの受信局3A~3Dのうち、受信局3Dの図示を省略している。
ここで、図6において、符号「HAC」で示される双曲面は、式(5)で示される双曲面に相当する。また、図6では、航空機2が双曲面HACに沿って進行している場合を例示しており、一点鎖線で当該航空機2の進行経路を表現している。
【0059】
ところで、航空機2では、測位装置21が当該航空機2の位置を測位したタイミング(以下、測位タイミングと記載)と、応答装置22が航空機信号を送信するタイミング(以下、送信タイミングと記載)とは異なるものである。以下、測位タイミングと送信タイミングとの時間のずれを遅延時間Δtと記載する。図6では、測位タイミングでの航空機2の位置を位置P1で示し、送信タイミングでの航空機2の位置を位置P2で示している。
【0060】
このような遅延時間Δtが存在していると、ステップS1Bにて適切な補正量δAB,δAC,δADを算出することができない場合がある。
図6の例では、プロセッサ42は、ステップS1Bにおいて、本来、双曲面HABに応じた式(1)によって補正量δABを算出しなければいけないところ、双曲面HABから遅延時間Δtだけ航空機2の進行方向にずれた双曲面HAB´に応じた式(1)によって補正量δABを算出することとなる。このため、ステップS1Bにて適切な補正量δABを算出することができない。補正量δADも同様である。
一方、図6の例では、航空機2が双曲面HACに沿って進行している。このため、プロセッサ42は、ステップS1Bにおいて、双曲面HACに応じた式(2)によって適切な補正量δACを算出することができる。
【0061】
そこで、本実施の形態2では、プロセッサ42は、以下に示すように、ステップS1Bを実行する。
具体的に、プロセッサ42は、基準受信局3Aと他の受信局3B~3Dのいずれかの受信局との2つの受信局からそれぞれ送信された受信局信号にそれぞれ含まれる各タイムスタンプに基づく各受信時刻と、記憶部43に記憶された4つの設置位置情報のうち、当該2つの受信局に対応する各設置位置情報に基づく各設置位置とに基づいて算出される双曲面であって当該2つの受信局同士の受信時刻差に基づく当該2つの受信局同士の航空機2までの距離差が同一となる双曲面と当該航空機2の進行方向とが特定の関係を有しているか否かを判定する。すなわち、プロセッサ42は、本発明に係る関係判定部としての機能を有する。
【0062】
図7は、特定の関係を説明する図である。
ここで、図7において、破線で示す双曲面は、式(4)で示される双曲面HAB、式(5)で示される双曲面HAC、及び式(6)で示される双曲面HADのいずれかの双曲面である。また、符号「Ar1」で示した方向は、受信局3から送信された受信局信号(ADS-B信号)に含まれる航空機2の進行方向である。さらに、符号「Ar2」で示した方向は、破線で示す双曲面の接線方向である。また、「θ」は、航空機2の進行方向Ar1と双曲面の接線方向Ar2とのなす角度である。さらに、「V」は、受信局3から送信された受信局信号(ADS-B信号)に含まれる航空機2の速度である。また、「Vn」は、破線で示す双曲面の法線方向の航空機2の速度(V×sinθ)である。
【0063】
上述した特定の関係は、法線方向の航空機2の速度Vn×遅延時間Δtが所望の時刻同期精度δtd以下となればよいという条件から導き出される以下の式(7)で設定される関係である。なお、所望の時刻同期精度δtd及び遅延時間Δtは、記憶部43に記憶されている。
【0064】
【数7】
【0065】
例えば、航空機2の速度Vが100m/secであり、遅延時間Δtが0.5secであり、所望の時刻同期精度δtdが10nsecであった場合には、θ<3.44degであれば、式(7)で設定される特定の関係を満たすこととなる。
【0066】
すなわち、図6の例では、プロセッサ42は、受信局3から送信された受信局信号と記憶部43に記憶された設置位置情報、電波速度情報、時刻同期精度δtd、及び遅延時間Δtとに基づいて、双曲面HABと航空機2の進行方向とが式(7)で設定される特定の関係を満たさないと判定する。なお、プロセッサ42は、双曲面HADと航空機2の進行方向とについても式(7)で設定される特定の関係を満たさないと判定する。一方、プロセッサ42は、双曲面HACと航空機2の進行方向とが式(7)で設定される特定の関係を満たすと判定する。
【0067】
そして、プロセッサ42は、2つの受信局について式(7)で設定される特定の関係を有していると判定した場合に、当該2つの受信局についての補正量を算出する。
すなわち、図6の例では、プロセッサ42は、双曲面HACと航空機2の進行方向とが式(7)で設定される特定の関係を満たすと判定したため、式(2)から補正量δACを算出する。一方、プロセッサ42は、双曲面HAB,HADと航空機2の進行方向とが式(7)で設定される特定の関係を満たさないと判定したため、当該航空機2から送信された航空機信号(当該航空機信号を含む4つの受信局3A~3Dから送信された各受信局信号)に基づいて補正量δAB,δADを算出しない。すなわち、プロセッサ42は、式(7)で設定される特定の関係を満たす他の航空機2から送信された航空機信号(当該航空機信号を含む4つの受信局3A~3Dから送信された各受信局信号)に基づいて補正量δAB,δADを算出する。
【0068】
以上説明した本実施の形態2によれば、上述した実施の形態1と同様の効果の他、以下の効果を奏する。
本実施の形態2に係るプロセッサ42は、基準受信局3Aと他の受信局3B~3Dのいずれかの受信局との2つの受信局からそれぞれ送信された受信局信号にそれぞれ含まれる各タイムスタンプに基づく各受信時刻と、当該2つの受信局の各設置位置とに基づいて算出される双曲面であって当該2つの受信局同士の受信時刻差に基づく当該2つの受信局同士の航空機2までの距離差が同一となる双曲面と当該航空機2の進行方向とが特定の関係を有しているか否かを判定する。そして、プロセッサ42は、特定の関係を有していると判定した場合に、当該2つの受信局についての補正量を算出する。
このため、不正確な補正量が算出されることが予測される場合に、当該補正量の算出を行わないため、不要な演算処理を回避することができる。また、不正確な補正量を航空機の測位に用いることがなく、当該航空機の測位精度が劣化することがない。
【0069】
なお、上述した実施の形態2では、航空機2の進行方向として、受信局3から送信された受信局信号(ADS-B信号)に含まれる航空機2の進行方向を採用していたが、これに限らない。例えば、ADS-B信号に航空機2の進行方向が含まれていない場合には、以下のように、当該航空機2の進行方向を算出しても構わない。
すなわち、従前に受信局3から送信された受信局信号(ADS-B信号)に含まれる航空機位置情報に基づく航空機2の3次元位置と、現時点で受信局3から送信された受信局信号(ADS-B信号)に含まれる航空機位置情報に基づく航空機2の3次元位置とから当該航空機2の進行方向を算出する。
【0070】
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。
以下の説明では、上述した実施の形態1と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略または簡略化する。
本実施の形態3では、上述した実施の形態1に対して、プロセッサ42が実行する補正量算出方法が異なる。
【0071】
図8は、実施の形態3に係る補正量算出方法を説明する図である。具体的に、図8の(a)は、縦軸に時間を取り、横軸に補正量を取り、航空機2(以下、第1のターゲットと記載)から送信された航空機信号(当該航空機信号を含む2つの受信局3A,3Bから送信された各受信局信号)に基づいて算出された補正量δABの時間変化を示すグラフである。図8の(b)は、縦軸に時間を取り、横軸に補正量を取り、第1のターゲットとは異なる航空機2(以下、第2のターゲットと記載)から送信された航空機信号(当該航空機信号を含む2つの受信局3A,3Bから送信された各受信局信号)に基づいて算出された補正量δABの時間変化を示すグラフである。図8の(c)は、縦軸に時間を取り、横軸に補正量を取り、第1,第2のターゲットとは異なる航空機2(以下、第3のターゲットと記載)から送信された航空機信号(当該航空機信号を含む2つの受信局3A,3Bから送信された各受信局信号)に基づいて算出された補正量δABの時間変化を示すグラフである。
【0072】
ここで、図8の(a)に示す補正量δ11は、期間T11内のタイミングで、第1のターゲットから送信された航空機信号に基づいて算出された補正量である。また、補正量δ12は、期間T12内のタイミングで、第1のターゲットから送信された航空機信号に基づいて算出された補正量である。さらに、補正量δ13は、期間T13内のタイミングで、第1のターゲットから送信された航空機信号に基づいて算出された補正量である。また、補正量δ14は、期間T14内のタイミングで、第1のターゲットから送信された航空機信号に基づいて算出された補正量である。さらに、補正量δ15は、期間T15内のタイミングで、第1のターゲットから送信された航空機信号に基づいて算出された補正量である。
【0073】
また、図8の(b)に示す補正量δ21は、期間T21内のタイミングで、第2のターゲットから送信された航空機信号に基づいて算出された補正量である。また、補正量δ22は、期間T22内のタイミングで、第2のターゲットから送信された航空機信号に基づいて算出された補正量である。さらに、補正量δ23は、期間T23内のタイミングで、第2のターゲットから送信された航空機信号に基づいて算出された補正量である。また、補正量δ24は、期間T24内のタイミングで、第2のターゲットから送信された航空機信号に基づいて算出された補正量である。さらに、補正量δ25は、期間T25内のタイミングで、第2のターゲットから送信された航空機信号に基づいて算出された補正量である。
【0074】
さらに、図8の(c)に示す補正量δ31は、期間T31内のタイミングで、第3のターゲットから送信された航空機信号に基づいて算出された補正量である。また、補正量δ32は、期間T32内のタイミングで、第3のターゲットから送信された航空機信号に基づいて算出された補正量である。さらに、補正量δ33は、期間T33内のタイミングで、第3のターゲットから送信された航空機信号に基づいて算出された補正量である。また、補正量δ34は、期間T34内のタイミングで、第3のターゲットから送信された航空機信号に基づいて算出された補正量である。さらに、補正量δ35は、期間T35内のタイミングで、第3のターゲットから送信された航空機信号に基づいて算出された補正量である。
【0075】
なお、期間T11,T21,T31は、時刻が互いに同一の期間、または、時刻が互いに近接する期間である。また、期間T12,T22,T32は、時刻が互いに同一の期間、または、時刻が互いに近接する期間である。さらに、期間T13,T23,T33は、時刻が互いに同一の期間、または、時刻が互いに近接する期間である。また、期間T14,T24,T34は、時刻が互いに同一の期間、または、時刻が互いに近接する期間である。さらに、期間T15,T25,T35は、時刻が互いに同一の期間、または、時刻が互いに近接する期間である。
【0076】
ところで、測位装置21では、GNSSを利用して航空機2の3次元位置を測位しているため、妨害電波や近接する周波数帯からの電波干渉を受け易く、測位した航空機2の3次元位置に誤差が生じる場合がある。このように誤差を有する航空機2の3次元位置に基づいて補正量δAB,δAC,δADを算出した場合には、当該補正量δAB,δAC,δADが不正確なものとなってしまう。図8の例では、期間T13内のタイミングで、第1のターゲットから送信された航空機信号に基づいて算出された補正量δ13(補正量δAB)が不正確なものとなった場合を示している。
【0077】
そこで、本実施の形態2では、プロセッサ42は、ステップS1Bにおいて、複数の航空機2毎に、ステップS1Aにて取得した受信局信号に含まれる航空機位置情報に基づく航空機2の3次元位置と、記憶部43に記憶された各設置位置情報に基づく4つの受信局3A~3Dの各設置位置及び電波速度情報と、当該ステップS1Aにて取得した各受信局信号に含まれる各タイムスタンプに基づく各受信時刻とに基づいて、基準受信局3Aと他の受信局3B~3Dとの間の受信時刻差を本来の受信時刻差に補正するための候補となる候補補正量をそれぞれ算出し、当該算出した各候補補正量から補正量δAB,δAC,δADを算出する。
【0078】
具体的に、プロセッサ42は、ステップS1Bにおいて、複数の航空機2毎に、式(1)により算出される補正量δABを基準受信局3Aと受信局3Bとの間の候補補正量として算出する。また、プロセッサ42は、ステップS1Bにおいて、複数の航空機2毎に、式(2)により算出される補正量δACを基準受信局3Aと受信局3Cとの間の候補補正量として算出する。さらに、プロセッサ42は、ステップS1Bにおいて、複数の航空機2毎に、式(3)により算出される補正量δADを基準受信局3Aと受信局3Dとの間の候補補正量として算出する。
【0079】
図8の例では、補正量δ11,δ21,δ31が第1~第3のターゲット毎に略同一のタイミングで算出された基準受信局3Aと受信局3Bとの間の候補補正量に相当する。また、補正量δ12,δ22,δ32が第1~第3のターゲット毎に略同一のタイミングで算出された基準受信局3Aと受信局3Bとの間の候補補正量に相当する。さらに、補正量δ13,δ23,δ33が第1~第3のターゲット毎に略同一のタイミングで算出された基準受信局3Aと受信局3Bとの間の候補補正量に相当する。また、補正量δ14,δ24,δ34が第1~第3のターゲット毎に略同一のタイミングで算出された基準受信局3Aと受信局3Bとの間の候補補正量に相当する。さらに、補正量δ15,δ25,δ35が第1~第3のターゲット毎に略同一のタイミングで算出された基準受信局3Aと受信局3Bとの間の候補補正量に相当する。
【0080】
そして、プロセッサ42は、ステップS1Bにおいて、複数の航空機2毎に略同一のタイミングでそれぞれ算出した各候補補正量から、以下に示す第1,第2の方法により補正量を算出する。
【0081】
第1の方法では、プロセッサ42は、複数の航空機2毎に略同一のタイミングでそれぞれ算出した基準受信局3Aと受信局3Bとの間の各候補補正量の平均値を補正量(ステップS2Bで用いる補正量δAB)として算出する。また、プロセッサ42は、複数の航空機2毎に略同一のタイミングでそれぞれ算出した基準受信局3Aと受信局3Cとの間の各候補補正量の平均値を補正量(ステップS2Bで用いる補正量δAC)として算出する。さらに、プロセッサ42は、複数の航空機2毎に略同一のタイミングでそれぞれ算出した基準受信局3Aと受信局3Dとの間の各候補補正量の平均値を補正量(ステップS2Bで用いる補正量δAD)として算出する。
図8の例では、期間T13,T23,T33については、プロセッサ42は、第1~第3のターゲット毎に略同一のタイミングでそれぞれ算出した候補補正量δ13,δ23,δ33の平均値を基準受信局3Aと受信局3Bとの間の補正量(ステップS2Bで用いる補正量δAB)として算出する。
【0082】
第2の方法では、プロセッサ42は、複数の航空機2毎に略同一のタイミングでそれぞれ算出した基準受信局3Aと受信局3Bとの間の各候補補正量のうち、当該各候補補正量の平均値または中央値から特定の値だけ離れた候補補正量を除いた他の候補補正量から補正量(ステップS2Bで用いる補正量δAB)を算出する。また、プロセッサ42は、複数の航空機2毎に略同一のタイミングでそれぞれ算出した基準受信局3Aと受信局3Cとの間の各候補補正量のうち、当該各候補補正量の平均値または中央値から特定の値だけ離れた候補補正量を除いた他の候補補正量から補正量(ステップS2Bで用いる補正量δAC)を算出する。さらに、プロセッサ42は、複数の航空機2毎に略同一のタイミングでそれぞれ算出した基準受信局3Aと受信局3Dとの間の各候補補正量のうち、当該各候補補正量の平均値または中央値から特定の値だけ離れた候補補正量を除いた他の候補補正量から補正量(ステップS2Bで用いる補正量δAD)を算出する。
図8の例では、期間T13,T23,T33については、プロセッサ42は、第1~第3のターゲット毎に略同一のタイミングでそれぞれ算出した候補補正量δ13、δ23,δ33のうち、当該各候補補正量δ13,δ23,δ33の平均値または中央値から特定の値だけ離れた候補補正量δ13を除いた他の候補補正量δ23,δ33から基準受信局3Aと受信局3Bとの間の補正量(ステップS2Bで用いる補正量δAB)を算出する。
【0083】
以上説明した本実施の形態3によれば、上述した実施の形態1と同様の効果の他、以下の効果を奏する。
本実施の形態3に係るプロセッサ42は、複数の航空機2毎に、受信局信号に含まれる航空機位置情報に基づく航空機2の3次元位置と、受信局3A~3Dの各設置位置と、当該受信局3A~3Dからそれぞれ送信された各受信局信号に含まれる各タイムスタンプに基づく各受信時刻とに基づいて、基準受信局3Aと他の受信局3B~3Dとの間の受信時刻差を本来の受信時刻差に補正するための候補となる候補補正量をそれぞれ算出する。そして、プロセッサ42は、第1の方法または第2の方法により、当該算出した各候補補正量から補正量δAB,δAC,δADを算出する。
このため、不正確な補正量(図8の例での補正量δ13)を航空機の測位に用いることがなく、当該航空機の測位精度が劣化することがない。
【0084】
なお、複数の航空機2毎に略同一のタイミングでそれぞれ算出される各候補補正量としては、複数の航空機2のうち、遠方の航空機2よりも近い航空機2に応じて算出された候補補正量の方が高い精度を有する。このため、各候補補正量に対して、受信局3からの航空機2の距離に応じて重み付け(距離が小さいほど大きい重み付け)をして補正量を算出しても構わない。
【0085】
(実施の形態4)
次に、実施の形態4について説明する。
以下の説明では、上述した実施の形態1と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略または簡略化する。
本実施の形態4では、上述した実施の形態1に対して、プロセッサ42が実行する補正量算出方法が異なる。
【0086】
図9及び図10は、実施の形態4に係る補正量算出方法を説明する図である。具体的に、図9は、縦軸に時間を取り、横軸に補正量を取り、上述した実施の形態3で説明した第1のターゲットである航空機2から送信された航空機信号(当該航空機信号を含む2つの受信局3A,3Bから送信された各受信局信号)に基づいて算出された補正量δABの時間変化を示すグラフである。図10は、図8の(a)に対応した図である。図9に示した時間の範囲は、図10に示した時間の範囲よりも大幅に大きいものである。
【0087】
ところで、基準受信局3Aと他の受信局3B~3Dとの間の計時時刻のずれに相当する補正量は、例えば図9に示された補正量δABの経時変化を見て分かるように、時間の経過とともに当該計時時刻のずれが蓄積されるために大きくなっていく。そして、当該補正量の経時変化に応じた変動量は、受信局3に設けられた発振器321の種別固有のものである。例えば、発振器321が高精度のクロック源であるルビジウム発振器である場合には、補正量の経時変化に応じた変動量は、少ないものとなる。一方、発振器321が例えば水晶発振器等である場合には、補正量の経時変化に応じた変動量は、多いものとなる。
【0088】
本実施の形態4では、記憶部43には、補正量の経時変化に応じた変動幅を示す変動幅情報が記憶されている。そして、プロセッサ42は、ステップS1Bにて従前に算出した補正量と、現時点で算出した補正量と、記憶部43に記憶された変動幅情報とに基づいて、当該現時点で算出した補正量が異常値であるか否かを判定する。すなわち、プロセッサ42は、本発明に係る異常判定部としての機能を有する。
図10の例では、現時点で算出された補正量を補正量δ13とした場合に、プロセッサ42は、ステップS1Bにて従前に算出した補正量δ12と、当該現時点で算出した補正量δ13と、変動幅情報に基づく変動幅RAとに基づいて、当該補正量δ13が異常値であるか否かを判定する。ここで、変動幅RAは、補正量δ12を中心とする変動幅である。そして、図10の例では、補正量δ13は、変動幅RA内に入っていない。このため、プロセッサ42は、当該補正量δ13を異常値として判定し、ステップS2Bで用いる補正量δABに当該補正量δ13を採用しない。
【0089】
以上説明した本実施の形態4によれば、上述した実施の形態1と同様の効果の他、以下の効果を奏する。
本実施の形態4に係るプロセッサ42は、従前に算出した補正量と、現時点で算出した補正量と、変動幅情報とに基づいて、当該現時点で算出した補正量が異常値であるか否かを判定する。
このため、不正確な補正量(図10の例での補正量δ13)を航空機の測位に用いることがなく、当該航空機の測位精度が劣化することがない。
【0090】
(その他の実施の形態)
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。
上述した実施の形態1~4では、航空機2を本発明に係る移動体として説明していたが、これに限らない。本発明に係る移動体としては、測位装置21及び応答装置22が搭載された車両や、当該測位装置21及び当該応答装置22が搭載され、人が携帯する機器(ノート型PC(Personal Computer)、タブレット端末、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)等)を採用しても構わない。
【0091】
上述した実施の形態1~4では、本発明に係る補正量算出装置を中央局4に搭載していたが、これに限らず、本発明に係る補正量算出装置を当該中央局4とは別に設けた構成を採用しても構わない。
【0092】
上述した実施の形態1~4では、ステップS1Bで算出した補正量をステップS2Bで用いていたが、これに限らず、当該補正量によって基準受信局3A以外の他の受信局3B~3Dの時計部32にて計時される時刻を補正しても構わない。
【符号の説明】
【0093】
1 航空機測位システム
2 航空機
3,3A~3D 受信局
4 中央局
21 測位装置
22 応答装置
31 受信部
32 時計部
33 タイムスタンプ付与部
34 送信部
41 受信部
42 プロセッサ
43 記憶部
321 発振器
322 クロックカウンタ
Ar1 航空機の進行方向
Ar2 双曲面の接線方向
HAB,HAB´,HAC,HAD 双曲面
P1,P2 航空機の位置
RA 変動幅
T11~T15,T21~T25,T31~T35 期間
δ11~δ15,δ21~δ25,δ31~δ35 補正量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10