(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043963
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】パターン形成方法、半導体装置の製造方法、及びインプリント装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149227
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】光安 将騎
(72)【発明者】
【氏名】小川 諒
(72)【発明者】
【氏名】ミトラ オヌポン
【テーマコード(参考)】
5F146
【Fターム(参考)】
5F146AA31
(57)【要約】
【課題】基板に対するパターンの重ね合わせ精度を向上させること。
【解決手段】実施形態のパターン形成方法は、複数のショット領域を有する基板を、基板の外縁部を吸引する第1の吸引領域と、外縁部の内側領域を吸引する第2の吸引領域とを有する吸引チャック上に保持し、複数のショット領域は、外縁部と内側領域とに跨って配置され、内側領域に第1のアライメントマークを有し、外縁部に第2のアライメントマークを有し、外縁部側で一部が欠けた第1のショット領域を含み、テンプレートを樹脂膜に押し当てた状態で、第1及び第3のアライメントマークの位置合わせを行うとともに、テンプレートを介して第2及び第4のアライメントマークを観測しつつ第1の吸引領域における吸引力を調整して外縁部の反り量を変化させ、第2及び第4のアライメントマークの位置合わせを行う。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のショット領域を有する基板を、前記基板の外縁部を吸引する第1の吸引領域と、前記外縁部の内側領域を吸引する第2の吸引領域とを有する吸引チャック上に保持し、
前記複数のショット領域のうち少なくとも1つのショット領域上に樹脂膜を形成し、
前記1つのショット領域上の前記樹脂膜にテンプレートのパターンを押し当てて、前記パターンを前記樹脂膜に転写するパターン形成方法であって、
前記複数のショット領域は、
前記外縁部と前記内側領域とに跨って配置され、前記内側領域に第1のアライメントマークを有し、前記外縁部に第2のアライメントマークを有し、前記外縁部側で一部が欠けた第1のショット領域を含み、
前記テンプレートは、
前記第1のアライメントマークとの位置合わせに用いられる第3のアライメントマークと、前記第2のアライメントマークとの位置合わせに用いられる第4のアライメントマークとを有しており、
前記パターンを前記第1のショット領域上の前記樹脂膜に転写するときは、
前記テンプレートを前記樹脂膜に押し当てた状態で、前記第1及び第3のアライメントマークの位置合わせを行うとともに、前記テンプレートを介して前記第2及び第4のアライメントマークを観測しつつ前記第1の吸引領域における吸引力を調整して前記外縁部の反り量を変化させ、前記第2及び第4のアライメントマークの位置合わせを行う、
パターン形成方法。
【請求項2】
前記パターンを前記第1のショット領域上の前記樹脂膜に転写するときは、
前記第1の吸引領域における吸引力を段階的に高めていきながら、前記第2及び第4のアライメントマークの位置合わせを行う、
請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記パターンを前記第1のショット領域上の前記樹脂膜に転写するときは、
前記テンプレートの傾き、前記パターンを押し当てる力、及び前記パターンの撓みの少なくともいずれかを調整して、前記第2及び第4のアライメントマークの位置合わせを行う、
請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
被加工膜が形成され複数のショット領域を有する基板を、前記基板の外縁部を吸引する第1の吸引領域と、前記外縁部の内側領域を吸引する第2の吸引領域とを有する吸引チャック上に保持し、
前記複数のショット領域のうち少なくとも1つのショット領域上に樹脂膜を形成し、
前記1つのショット領域上の前記樹脂膜にテンプレートのパターンを押し当てて、前記パターンを前記樹脂膜に転写し、
前記樹脂膜に転写された前記パターンを介して前記被加工膜を加工する半導体装置の製造方法であって、
前記複数のショット領域は、
前記外縁部と前記内側領域とに跨って配置され、前記内側領域に第1のアライメントマークを有し、前記外縁部に第2のアライメントマークを有し、前記外縁部側で一部が欠けた第1のショット領域を含み、
前記テンプレートは、
前記第1のアライメントマークとの位置合わせに用いられる第3のアライメントマークと、前記第2のアライメントマークとの位置合わせに用いられる第4のアライメントマークとを有しており、
前記パターンを前記第1のショット領域上の前記樹脂膜に転写するときは、
前記テンプレートを前記樹脂膜に押し当てた状態で、前記第1及び第3のアライメントマークの位置合わせを行うとともに、前記テンプレートを介して前記第2及び第4のアライメントマークを観測しつつ前記第1の吸引領域における吸引力を調整して前記外縁部の反り量を変化させ、前記第2及び第4のアライメントマークの位置合わせを行う、
半導体装置の製造方法。
【請求項5】
複数のショット領域を有する基板を保持することが可能に構成され、前記基板の外縁部を吸引する第1の吸引領域と、前記外縁部の内側領域を吸引する第2の吸引領域とを有する吸引チャックと、
パターンを有する面を前記基板に対向させた状態でテンプレートを保持し、前記基板と前記テンプレートとの面方向の相対位置を調整し、前記テンプレートを前記基板に対して上下動させるテンプレートステージと、
前記テンプレートを介して前記基板を撮像する第1及び第2の撮像素子と、
前記吸引チャック、前記テンプレートステージ、並びに前記第1及び第2の撮像素子を制御する制御部と、を備え、
前記複数のショット領域は、
前記外縁部と前記内側領域とに跨って配置され、前記内側領域に第1のアライメントマークを有し、前記外縁部に第2のアライメントマークを有し、前記外縁部側で一部が欠けた第1のショット領域を含み、
前記テンプレートは、
前記第1のアライメントマークとの位置合わせに用いられる第3のアライメントマークと、前記第2のアライメントマークとの位置合わせに用いられる第4のアライメントマークとを有しており、
前記制御部は、
前記吸引チャックによって、保持した前記基板の前記外縁部および前記内側領域を吸引させ、
前記テンプレートを前記第1のショット領域上に形成された樹脂膜に押し当てた状態で、前記第1の撮像素子により前記テンプレートを介して前記第1及び第3のアライメントマークを撮像した画像に基づいて、前記第1及び第3のアライメントマークの位置合わせを行うとともに、前記第2の撮像素子により前記第2及び第4のアライメントマークを撮像した画像に基づいて、前記吸引チャックによって前記第1の吸引領域における吸引力を調整して前記外縁部の反り量を変化させ、前記第2及び第4のアライメントマークの位置合わせを行う、
インプリント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、パターン形成方法、半導体装置の製造方法、及びインプリント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程に、インプリント処理が含まれる場合がある。インプリント処理では、例えば基板を吸引チャック上に吸着し、基板上に形成した樹脂膜にテンプレートを押し当てて、テンプレートのパターンを転写する。
【0003】
上記のようにパターンを転写する際には、基板とテンプレートとの双方に形成されたアライメントマークを用いて、基板に対するパターンの転写位置の合わせ込みを行う。しかしながら、吸引チャック上への吸着によって基板に反りが生じると、パターンの転写位置にずれが生じてしまうことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6732419号公報
【特許文献2】特開2022-002275号公報
【特許文献3】特開2019-186343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
1つの実施形態は、基板に対するパターンの重ね合わせ精度を向上させることができるパターン形成方法、半導体装置の製造方法、及びインプリント装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態のパターン形成方法は、複数のショット領域を有する基板を、前記基板の外縁部を吸引する第1の吸引領域と、前記外縁部の内側領域を吸引する第2の吸引領域とを有する吸引チャック上に保持し、前記複数のショット領域のうち少なくとも1つのショット領域上に樹脂膜を形成し、前記1つのショット領域上の前記樹脂膜にテンプレートのパターンを押し当てて、前記パターンを前記樹脂膜に転写するパターン形成方法であって、前記複数のショット領域は、前記外縁部と前記内側領域とに跨って配置され、前記内側領域に第1のアライメントマークを有し、前記外縁部に第2のアライメントマークを有し、前記外縁部側で一部が欠けた第1のショット領域を含み、前記テンプレートは、前記第1のアライメントマークとの位置合わせに用いられる第3のアライメントマークと、前記第2のアライメントマークとの位置合わせに用いられる第4のアライメントマークとを有しており、前記パターンを前記第1のショット領域上の前記樹脂膜に転写するときは、前記テンプレートを前記樹脂膜に押し当てた状態で、前記第1及び第3のアライメントマークの位置合わせを行うとともに、前記テンプレートを介して前記第2及び第4のアライメントマークを観測しつつ前記第1の吸引領域における吸引力を調整して前記外縁部の反り量を変化させ、前記第2及び第4のアライメントマークの位置合わせを行う。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態にかかるインプリント装置の構成の一例を示す模式図。
【
図2】実施形態にかかるインプリント装置が備えるウェハチャックの構成の一例を示す模式図。
【
図3】実施形態にかかるインプリント装置が備えるテンプレートステージの構成の一例を示す模式図。
【
図4】実施形態にかかるウェハの構成の一例を示す上面図。
【
図5】実施形態にかかる半導体装置の製造方法の手順の一部を順に例示する断面図。
【
図6】実施形態にかかる半導体装置の製造方法の手順の一部を順に例示する断面図。
【
図7】実施形態にかかるインプリント装置が行うアライメント動作の一例を示す図。
【
図8】比較例にかかるテンプレート及びウェハのアライメントマークの相対位置とウェハの反り量との関係を示す模式図。
【
図9】実施形態の変形例にかかるインプリント装置が行うアライメント動作の一例を示す図。
【
図10】実施形態のその他の変形例にかかるテンプレート及びウェハに設けられるモアレ型のアライメントマークの構成の一例を示す上面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の実施形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0009】
(インプリント装置の構成例)
図1は、実施形態にかかるインプリント装置1の構成の一例を示す模式図である。
図1(a)はインプリント装置1の全体図であり、
図1(b)はインプリント装置1が備える撮像素子84(84a~84d)の詳細構成を示す検出系86aの拡大図である。
【0010】
図1に示すように、インプリント装置1は、テンプレートステージ81、ウェハステージ82、撮像素子83,84a~84d、基準マーク85、アライメント部86、液滴下装置87、ステージベース88、光源89、制御部90、及び記憶部91を備えている。インプリント装置1には、ウェハ20上のレジストにパターンを転写するテンプレート10がインストールされている。
【0011】
ウェハステージ82は、ウェハチャック82b、及び本体82aを備える。ウェハチャック82bは、ウェハ20の裏面を吸引する複数の吸引路820を備え、ウェハ20を本体82a上の所定位置に固定する。複数の吸引路820は、図示しないポンプにそれぞれ接続される。
【0012】
ウェハステージ82上には、基準マーク85が設けられている。基準マーク85は、ウェハ20をウェハステージ82上にロードする際の位置合わせに用いられる。
【0013】
ウェハステージ82は、ウェハ20を載置するとともに、載置したウェハ20と平行な平面内(水平面内)を移動する。ウェハステージ82は、ウェハ20にレジストを滴下する際にはウェハ20を液滴下装置87の下方側に移動させ、ウェハ20への転写処理を行う際には、ウェハ20をテンプレート10の下方側に移動させる。
【0014】
ステージベース88は、テンプレートステージ81によってテンプレート10を支持するとともに、上下方向(鉛直方向)に移動することにより、テンプレート10のパターンをウェハ20上のレジストに押し当てる。
【0015】
ステージベース88上には、複数の撮像素子83を備えるアライメント部86が設けられている。アライメント部86は、ウェハ20及びテンプレート10にそれぞれ設けられたアライメントマークに基づき、ウェハ20の位置検出、及びテンプレート10の位置検出を行う。
【0016】
アライメント部86は、検出系86a及び照明系86bを備える。照明系86bは、ウェハ20及びテンプレート10に光を当てて、これらに形成されたアライメントマークを視認可能にする。検出系86aは、アライメントマークの画像を検出し、これらの位置を合わせることで、ウェハ20とテンプレート10との位置合わせを行う。
【0017】
検出系86a及び照明系86bは、それぞれ結像部としてのダイクロイックミラー等のミラー86x,86yを備える。ミラー86x,86yは、照明系86bからの光によってアライメントマーク等のウェハ20及びテンプレート10からの画像を結像させる。
【0018】
具体的には、照明系86bからの光Lbは、ミラー86yによりウェハ20等の配置される下方へと反射される。また、ウェハ20等からの光Laは、ミラー86xにより検出系86a側へと反射される。また、ウェハ20等からの一部の光Lcは、ミラー86x,86yを透過して、上方の撮像素子83の側へと進行する。
【0019】
撮像素子83は、この一部の光Lcを、アライメントマーク等を含む画像として撮像する。撮像素子83により撮像された画像は、アライメントマークの状態を制御部90により判定するために用いられる。
【0020】
一方、ミラー86xにより検出系86a側へと反射された光Laは、検出系86aが備える複数の撮像素子84a~84d側へと進行する。
【0021】
図1(b)に示すように、複数の撮像素子84a~84dは、例えばテンプレート10の押印領域であるウェハ20上の1つのショット領域SHの異なるポイントをそれぞれ撮像可能なように配置されている。
【0022】
撮像素子84a~84dは、ミラー86xにより反射された光Laを、アライメントマーク等を含む画像として撮像する。撮像素子84a~84dにより撮像された画像は、ウェハ20とテンプレート10との位置合わせを行うために、制御部90により用いられる。
【0023】
液滴下装置87は、インクジェット方式によってウェハ20上にレジストを滴下する装置である。液滴下装置87が備えるインクジェットヘッドは、レジストの液滴を噴出する複数の微細孔を有しており、レジストの液滴をウェハ20上の1つのショット領域SHに滴下する。
【0024】
なお、実施形態のインプリント装置1では、ウェハ20上にレジストを滴下するように構成されているが、スピンコート塗布法によって、ウェハ20の全面にレジストを塗布してもよい。
【0025】
光源89は、例えばレジストを硬化させる紫外線等の光を照射する装置であり、ステージベース88の上方に設けられている。光源89は、テンプレート10がレジストに押し当てられた状態で、テンプレート10上から光を照射する。
【0026】
制御部90は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサ、メモリ、及びHDD(Hard Disk Drive)等を備えるコンピュータとして構成されている。制御部90は、テンプレートステージ81、ウェハステージ82、基準マーク85、撮像素子83,84a~84dを含むアライメント部86、液滴下装置87、ステージベース88、および光源89を制御する。
【0027】
次に、
図2を用いて、インプリント装置1が備えるウェハチャック82bの詳細の構成例について説明する。
【0028】
図2は、実施形態にかかるインプリント装置1が備えるウェハチャック82bの構成の一例を示す模式図である。
図2(a)はウェハチャック82bの上面図であり、
図2(b)はウェハチャック82bの一部拡大断面図である。
【0029】
図2(a)に示すように、吸引チャックとしてのウェハチャック82bは、複数のリング状突起821~825によって、複数のゾーンZ1~Z5に分割されている。
【0030】
複数のリング状突起821~825は、この順に、ウェハチャック82bの内側から外側へと同心円状に配置されている。これらのリング状突起821~825の間隔は、ウェハチャック82bの外側へと向かうほど狭まっていく。
【0031】
ゾーンZ1は、ウェハチャック82bの最も中央寄りに配置されたリング状突起821の更に内側の円形領域である。なお、ゾーンZ1には、複数のピン孔82pが設けられている。複数のピン孔82pには、図示しないウェハピンが収納されている。ウェハピンは、ウェハ20を搬入出する際に、ウェハチャック82bの表面から突出してウェハチャック82b上方にウェハ20を保持する。
【0032】
ゾーンZ2は、リング状突起821,822間に位置する円環状の領域である。ゾーンZ3は、リング状突起822,823間に位置する円環状の領域である。ゾーンZ4は、リング状突起823,824間に位置する円環状の領域である。ゾーンZ5は、リング状突起824,825間に位置する円環状の領域である。
【0033】
図2(b)に示すように、複数のリング状突起821~825は、ウェハチャック82bの表面から突出している。複数のリング状突起821~825のうち、リング状突起821~824の突出高さは互いに等しい。ウェハチャック82bの最外周に配置されるリング状突起825は、他のリング状突起821~824よりも低い突出高さを有する。
【0034】
ウェハチャック82bの内部には、下流側がポンプPに接続された複数の吸引路820が設けられている。これらの吸引路820は、複数のリング状突起821~825で分割されたゾーンZ1~Z5にそれぞれ開口している。
【0035】
ウェハチャック82bの最も外周寄りに配置されたリング状突起825の更に外側、つまり、ゾーン5の外側のウェハチャック82bの外縁部までの円環状の領域には、吸引路820は開口していない。
【0036】
ウェハ20は、複数のリング状突起821~825のうち、少なくともリング状突起821~824の上端部に裏面を支持された状態で、ウェハステージ82上に載置される。これにより、ウェハ20の内側領域は、ウェハチャック82bのゾーンZ1~Z4と重なる位置に配置され、ウェハ20の外縁部は、ウェハチャック82bのゾーンZ5と重なる位置に配置されることとなる。
【0037】
リング状突起821~824の上端部にウェハ20を支持した状態で、複数の吸引路820に接続されたポンプPを稼働させ、それぞれのゾーンZ1~Z5に設けられた吸引路820の複数の開口からウェハ20の裏面を吸引することで、ウェハチャック82bの上面にウェハ20が吸着される。
【0038】
このとき、ポンプPの稼働状態を制御すること等により、ゾーンZ1~Z5ごとに吸引力を調整することが可能である。また、ウェハ20裏面を吸引して負圧とするだけでなく、ウェハ20裏面を陽圧とすることも可能である。なお、複数の吸引路820のそれぞれにバルブ等を設け、これらを開閉させることにより、ゾーンZ1~Z5ごとの吸引力を調整可能であってもよい。これにより、例えば吸引路820に接続されるポンプPの数を削減することができる。
【0039】
次に、
図3を用いて、インプリント装置1が備えるテンプレートステージ81、及びテンプレートステージ81に保持されるテンプレート10の詳細の構成例について説明する。
【0040】
図3は、実施形態にかかるインプリント装置1が備えるテンプレートステージ81の構成の一例を示す模式図である。
図3(a)はテンプレートステージ81の断面図であり、
図3(b)はテンプレートステージ81に保持されるテンプレート10が有するパターンPTの上面図である。
【0041】
図3(a)に示すように、テンプレートステージ81は、本体811、テンプレートチャック812、加圧部813、及び駆動部814を備える。
【0042】
テンプレートステージ81の本体811は、平板状の部材であって、テンプレートチャック812によって下面にテンプレート10を保持する。テンプレートチャック812は、本体811の下面に設けられており、図示しない吸引機構により真空吸着することによって、パターン10pを下方に向けてテンプレート10をウェハ20上方に保持する。
【0043】
加圧部813は、テンプレートステージ81の本体811と、テンプレート10との間の空間である加圧室813r、本体811に設けられ、加圧室813rに連通する貫通孔813h、及び貫通孔318hに接続されるチューブ813tを備える。
【0044】
加圧部813は、チューブ813tから貫通孔813hを介して加圧室813rに空気等を流入させることで、テンプレート10の背面を空気圧等により加圧することができる。テンプレート10をウェハ20上のレジストに押し当てる際には、加圧部813により、テンプレート10の背面を加圧して、テンプレート10が有するパターン10pの中央部分をウェハ20側に撓ませた状態とする。
【0045】
駆動部814は、テンプレート10を保持した状態で、図示しないモータ等により、テンプレートステージ81を昇降させる。このとき、駆動部814のモータ等の駆動力を調整することで、テンプレートステージ81の昇降速度、テンプレート10のウェハ20に対する傾き、及びテンプレート10のパターン10pをウェハ20上のレジストに押し当てる力等を制御することができる。
【0046】
より具体的には、駆動部814は、例えば矩形状のテンプレート10の四隅に個別に力を加えることが可能である。したがって、駆動部814は、テンプレート10の四隅に加える力を異ならせることで、テンプレート10の傾きを調整可能である。また、駆動部814は、テンプレート10の四隅に加える力の強度を変化させることで、テンプレート10をレジストに押し当てる力を調整可能である。なお、これ以降、テンプレート10をレジストに押し当てる力をテンプレート10の押印力とも呼ぶ。
【0047】
また、駆動部814は、テンプレート10を保持した状態で、図示しないモータ等により、テンプレートステージ81をテンプレート10及びウェハ20の面に沿う方向、つまり、水平方向に移動させる。これにより、テンプレート10とウェハ20との水平方向における相対位置が調整される。
【0048】
テンプレート10は、略平板状の石英部材等であり、テンプレートステージ81に保持した状態で、下面から突出するメサ部10mと、メサ部10mの面上に形成されたパターン10pとを備える。パターン10pは、例えばラインアンドスペースパターン、ドットパターン、ホールパターン等の任意の形状を有するパターンであって、ウェハ20上のレジストに転写される。ウェハ20上のパターン10pが転写された領域は、半導体装置の素子領域となる。
【0049】
テンプレート10のパターン10pの周囲には、複数のアライメントマーク10aが設けられている。個々のアライメントマーク10aは、例えばテンプレート10がウェハ20上のレジストに押し当てられた際のレジストとの接触面から窪んだ凹状の形状を有する。
【0050】
(半導体装置の製造方法)
次に、
図4~
図6を用いて、実施形態の半導体装置の製造方法について説明する。実施形態の半導体装置の製造工程は、上述のインプリント装置1によるインプリント処理を含む。
【0051】
まずは、
図4に、インプリント装置1の処理対象となるウェハ20の例を示す。
図4は、実施形態にかかるウェハ20の構成の一例を示す模式図である。
図4(a)はウェハ20の上面図であり、
図4(b)は1つのショット領域SHの拡大上面図である。
【0052】
図4(a)に示すように、基板としてのウェハ20の上面は複数のショット領域SHに区画されている。複数のショット領域SHは、それぞれが例えば矩形状の形状を有し、ウェハ20の全面にマトリクス状に配置されている。これらのショット領域SHは、半導体装置の複数の製造工程のうちインプリント処理を含む幾つかの工程において、1回あたりの処理単位となる領域である。
【0053】
つまり、例えば後述するインプリント処理においては、1つのショット領域SHが、1回のインプリント処理でテンプレート10のパターン10pが転写される領域に相当する。したがって、1つのショット領域SHは、例えば上述のテンプレート10のメサ部10mの上面の面積および形状と略等しい面積および形状を有していてよい。
【0054】
ただし、複数のショット領域SHには、ウェハ20外周の端部に配置される欠けショット領域SHcが含まれる。欠けショット領域SHcは、ウェハ20外周の端部に配置されることにより、一部が欠けた状態となっており、設計上、ショット領域SHが備えるべき所定の構成の一部を有していない。
【0055】
つまり、欠けショット領域SHcは、通常のショット領域SHが有するべき面積に満たない所定の割合の面積しか有していない。欠けショット領域SHcが有する面積および形状は、その欠けショット領域SHcが配置されるウェハ20の外周位置によって種々に異なり得る。
【0056】
図4(b)には、欠けのないショット領域SHが示されている。
図4(b)に示すように、個々のショット領域SHは、テンプレート10のパターン10pが転写される転写領域20tを中央部に有する。転写領域20tは、所定の工程を経た後、半導体装置の素子領域となる。素子領域からは、1つまたは複数の半導体装置が得られる。
【0057】
なお、欠けショット領域SHcには、その欠けショット領域SHcの形状および面積等に応じて、1つ以上の半導体装置が得られる欠けショット領域SHcと、半導体装置が1つも得られない欠けショット領域SHcとが存在しうる。半導体装置が1つも得られない欠けショット領域SHcに対しては、通常、インプリント処理は行われない。
【0058】
転写領域20tの周囲には、複数のアライメントマーク20aが設けられている。これらのアライメントマーク20aは、例えばウェハ20の上面に形成された被加工膜21、被加工膜21の下層膜、またはウェハ20に形成されている。個々のアライメントマーク20aは、上述のテンプレート10の対応するアライメントマーク10aと対で用いられ、ウェハ20とテンプレート10との位置合わせに用いられる。
【0059】
図5及び
図6は、実施形態にかかる半導体装置の製造方法の手順の一部を順に例示する断面図である。
図5及び
図6に示す処理は、ウェハ20上に形成された被加工膜21に、テンプレート10のパターン10pに基づくパターンを形成するパターン形成方法でもある。
【0060】
これらの
図5及び
図6中、
図5(a)~
図6(a)に示す処理は、インプリント装置1によるインプリント方法の手順の一例を示している。また、
図5(a)~
図6(a)に示す処理は、ウェハ20上に形成されたレジスト膜30に、テンプレート10のパターン10pを形成するパターン形成方法でもある。このように、インプリント装置1によるインプリント処理、及びパターン形成処理は、半導体装置の製造工程の一工程として実施される。
【0061】
図5(a)に示すように、ウェハ20には、例えば被加工膜21が形成されている。被加工膜21は、例えばシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、または金属膜等であり、テンプレート10のパターン10pに応じた形に加工される膜である。
【0062】
これまでにウェハ20が経てきた製造工程の段階によって、被加工膜21の下に、1つまたは複数の下層膜が形成されていてもよい。あるいは、インプリント処理が、ウェハ20の表面を加工することを目的に行われる場合、被加工膜21は、シリコンウェハ等であるウェハ20の表層部分であってもよい。
【0063】
被加工膜21、下層膜、またはウェハ20には、上述したように、テンプレート10との位置合わせに用いられる複数のアライメントマーク20aが形成されている。
【0064】
このようなウェハ20をインプリント装置1のウェハチャック82bに吸着させ、ウェハステージ82を液滴下装置87の下方に移動させる。また、液滴下装置87によって、複数のショット領域SHのうち、これからインプリント処理を行うショット領域SHの被加工膜21上に、インクジェット方式を用いてレジストを被加工膜21上に滴下する。
【0065】
液滴下装置87から滴下するレジストは、例えば紫外線等を照射することで硬化する光硬化型レジスト等の有機系材料である。液滴下装置87から滴下される際、レジストは未硬化の液状である。
【0066】
これにより、1つのショット領域SHの被加工膜21上に樹脂膜としてのレジスト膜30が形成される。
【0067】
このように、インクジェット方式で形成された未硬化のレジスト膜30は、
図5(a)の例によらず、ショット領域SHに液滴状に配列されていてよい。また、上述のように、スピンコート塗布法等を用いてレジストを塗布することでレジスト膜30を形成してもよい。この場合、レジスト膜30はウェハ20の全面に略均一に形成される。
【0068】
ウェハ20が保持されたウェハステージ82を移動させ、これからインプリント処理を行うショット領域SHを、インプリント装置1のテンプレートステージ81に保持されたテンプレート10の下方に配置する。
【0069】
図5(b)に示すように、テンプレートステージ81を下降させて、テンプレート10のパターン10pをウェハ20のレジスト膜30に押し当てる。
【0070】
このとき、テンプレートステージ81に設けられた駆動部814により、テンプレートステージ81の下降速度、下降距離、ウェハ20に対するテンプレート10の水平度、及びテンプレート10の押印力等を調整する。
【0071】
また、駆動部814は、テンプレート10と、ウェハ20の被加工膜21との間に所定の間隙が生じるよう、テンプレートステージ81の下降位置を調整する。これにより、テンプレート10と被加工膜21とが接触してしまうことが抑制される。
【0072】
また、パターン10pをレジスト膜30に接触させる際には、テンプレートステージ81に設けられた加圧部813によってテンプレート10の背面を加圧して、テンプレート10のパターン10pの中央部分をウェハ20側に撓ませておく。これにより、パターン10pの凹凸部分に気泡がトラップされることが抑制される。
【0073】
このように、パターン10pをレジスト膜30に接触させた状態で、インプリント装置1の撮像素子83によって、テンプレート10に設けられた複数のアライメントマーク10aを観測し、これらのアライメントマーク10a内がレジスト膜30で充填されるまで、パターン10pとレジスト膜30との接触状態を維持する。なお、この間に、テンプレート10のパターン10pが有する凹部内にもレジスト膜30が充填されていく。
【0074】
アライメントマーク10a内がレジスト膜30で充填されることにより、アライメントマーク10a、及びテンプレート10を透かして見たウェハ20のアライメントマーク20aの視認性が向上する。つまり、インプリント装置1の撮像素子84a~84dによるアライメントマーク10a,20aの観測が容易となる。
【0075】
このため、レジスト膜30の充填後、テンプレート10の個々のアライメントマーク10aと、これらにそれぞれ対応するウェハ20の個々のアライメントマーク20aとを、撮像素子84a~84dによって観測し、ウェハ20とテンプレート10とのウェハ20の面に沿う方向の位置合わせを行う。このとき、例えば使用する撮像素子84a~84dを適宜切り替えながら、これらにそれぞれ対応する位置にあるアライメントマーク10a,20aを観測してこれらの位置合わせを適宜行う。
【0076】
図5(c)~
図5(d)は、いずれかの撮像素子84a~84dによって撮像されたアライメントマーク10a,20aの画像であって、アライメントマーク10a,20aを用いてウェハ20とテンプレート10との位置合わせを行う様子を示している。
【0077】
図5(c)に示すように、ウェハ20のアライメントマーク20aは、例えば4つのバーで構成される矩形状を有している。また、テンプレート10のアライメントマーク10aは、ウェハ20のアライメントマーク20aと同様、例えば4つのバーで構成され、アライメントマーク20aよりも小さな矩形状を有している。
【0078】
理想的には、撮像素子84a~84d側から観測して、ウェハ20のアライメントマーク20a内に、アライメントマーク10a,20a同士の中心位置が一致した状態で、テンプレート10のアライメントマーク10aが配置されるよう、ウェハ20とテンプレート10との相対位置を調整する。これにより、ウェハ20とテンプレート10との位置合わせを行うことができ、その状態でテンプレート10のパターン10pをウェハ20のレジスト膜30に転写することで、ウェハ20上の所望の位置にパターンを形成することができる。
【0079】
なお、上記のように構成されるアライメントマーク10a,20aは、バーインバー型マークなどと呼ばれ、ウェハ20上のレジスト膜30にテンプレート10を接触させた後に行う精密な位置合わせに用いられる。ただし、アライメントマーク10a,20aは、ボックスインボックス型マーク等の他の型のマークであってもよい。
【0080】
ここで、
図5(c)に示す例では、アライメントマーク10a,20aには、ウェハ20の面に沿うX方向、及びウェハ20の面に沿いX方向に直交するY方向の両方向に位置ずれが生じている。
【0081】
図5(d)に示すように、例えばテンプレートステージ81に設けられた駆動部814により、テンプレート10をX方向に移動させ、アライメントマーク10a,20aのX方向における位置合わせを行う。
【0082】
図5(e)に示すように、例えば駆動部814により、テンプレート10をY方向に移動させ、アライメントマーク10a,20aのY方向における位置合わせを行う。
【0083】
これにより、ウェハ20とテンプレート10とが位置合わせされる。ただし、ウェハ20とテンプレート10との位置を合わせるためのアライメント動作は、
図5(c)~
図5(e)に例示的に示す動作よりも複雑であり得る。
【0084】
例えば、アライメントマーク10a,20aのX方向およびY方向における位置を、同時並行で繰り返し微調整しつつ、徐々に合わせ込んでいってよい。このため、インプリント装置1のアライメント動作は、ウェハ20上のレジスト膜30に、例えば円を描くようにテンプレート10を摺動させながら位置合わせを行うような動作となり得る。
【0085】
また、上述の例では、ウェハ20に対してテンプレート10を動かして、これらの位置合わせを行うものとしたが、例えばウェハステージ82によりウェハ20をテンプレート10に対して動かして位置合わせを行ってもよい。
【0086】
また、
図5(e)に示す例は、ウェハ20とテンプレート10との位置合わせが理想的に行われた場合、つまり、ウェハ20とテンプレート10との位置ずれがゼロの場合であって、実際には、所定量以下の位置ずれ量を許容する形でアライメント動作を終了させてよい。
【0087】
この場合、例えばアライメント動作を行う期間を予め設定しておき、所定時間に達したらアライメント動作を終了することとしてよい。あるいは、アライメントマーク10a,20aのX方向およびY方向の位置ずれ量の上限値を予め設定しておき、位置ずれ量が上限値以下になったらアライメント動作を終了することとしてもよい。
【0088】
またあるいは、アライメントの動作期間、及びアライメント誤差の閾値の両方を定めておき、アライメント誤差が閾値以下となるか、あるいは、アライメントの動作期間が経過してタイムアウトとなったところで、アライメント動作を終了することとすることもできる。
【0089】
ウェハ20とテンプレート10との位置合わせが終了した後、ウェハ20とテンプレート10との位置を維持しつつ、テンプレート10を介してレジスト膜30に紫外線を照射する。これにより、パターン」0pの凹部内に充填された状態で、レジスト膜30が硬化する。
【0090】
図6(a)に示すように、テンプレートステージ81に設けられた駆動部814により、テンプレート10を上昇させる。このとき、ウェハ20はウェハチャック82bに吸着されているので、ウェハステージ82からウェハ20が剥がれてしまうことなく、テンプレート10をウェハ20から離型することができる。
【0091】
これにより、テンプレート10のパターン10pが転写されたレジストパターン30pが形成される。レジストパターン30pが有するパターンの底部には、レジスト残膜30rと呼ばれる薄膜が形成されている。上述のように、テンプレート10とウェハ20との接触を抑制するため、ウェハ20との間に間隙がある状態でテンプレート10を押し当てたからである。
【0092】
以上により、実施形態のインプリント装置1によるインプリント処理が終了する。
【0093】
図6(b)に示すように、例えば酸素プラズマ等を用いた処理により、レジストパターン30pの全面を処理して、パターン底部のレジスト残膜30rを除去する。これにより、パターン底部には被加工膜21の表面が露出する。
【0094】
図6(c)に示すように、レジストパターン30pを介して被加工膜21をエッチング加工することにより、レジストパターン30pが被加工膜21に転写された被加工膜パターン21pが形成される。
【0095】
この後、例えばタングステンまたは銅などの金属膜を被加工膜パターン21pに埋め込むことで、半導体装置の一部となる所望の構造が得られる。
【0096】
例えばテンプレート10のパターン10pがラインアンドスペースパターンである場合、被加工膜パターン21pもまたラインアンドスペースパターンを有することとなる。ここに金属膜を埋め込むことで、半導体装置の配線等が得られる。
【0097】
また、テンプレート10のパターン10pがドットパターンである場合、被加工膜パターン21pは、ドットパターンが反転されたホールパターンを有することとなる。ここに金属膜を埋め込むことで、半導体装置のコンタクトまたはビア等が得られる。
【0098】
これ以降、ウェハ20上に更に各種の膜を形成し、それらの膜に所望の加工を施すことを繰り返すことで、実施形態にかかる半導体装置が製造される。
【0099】
上述のように、実施形態のインプリント装置1では、テンプレート10とウェハ20とのアライメントマーク10a,20aを用い、テンプレート10とウェハ20とのX方向およびY方向の位置合わせを行う。これにより、テンプレート10のパターン10pをレジスト膜30に転写する際、これまでの工程でウェハ20に形成済みの種々の構成に対するパターン10pの重ね合わせ精度を向上させることができる。
【0100】
パターン10pの重ね合わせ精度が向上することで、例えば上記のインプリント処理が被加工膜21に配線を形成するための処理であった場合、被加工膜21の下層に形成済みのコンタクト等と被加工膜21の配線とがより確実に接続される。
【0101】
また例えば、上記のインプリント処理が被加工膜21にコンタクト等を形成するための処理であった場合、被加工膜21の下層に形成済みの配線等と被加工膜21のコンタクトとがより確実に接続される。
【0102】
(インプリント装置の動作例)
次に、
図7を用いて、実施形態のインプリント装置1によるアライメント動作の詳細例について説明する。
【0103】
図7は、実施形態にかかるインプリント装置1が行うアライメント動作の一例を示す図である。
図7(a)(d)は、テンプレート10がレジスト膜30に押し当てられた状態を、テンプレート10の上方から見た上面図である。
図7(b)(e)は、テンプレート10をレジスト膜30に押し当てたときの状態を横方向から見た模式図である。
図7(c)(f)は、アライメント時にインプリント装置1が行うアライメント動作を示すグラフである。
図7(g)は、アライメント時にインプリント装置1が行う他のアライメント動作を示すグラフである。
【0104】
インプリント装置1の制御部90は、アライメント動作を行うにあたり、ウェハ20上のレジスト膜30にテンプレート10を押し当て、テンプレート10の複数のアライメントマーク10aを撮像素子83によって継続的に撮像させる。また、制御部90は、撮像素子83が撮像した画像に基づき、これらのアライメントマーク10aの凹部内にレジスト膜30が充填されたことの判定を行う。
【0105】
アライメントマーク10aにレジスト膜30が充填され、上下方向に重なり合うアライメントマーク10aとウェハ20側のアライメントマーク20aとの視認性が向上したところで、制御部90は、撮像素子84a~84dによってこれらのアライメントマーク10a,20aを撮像させ、それらの撮像画像に基づいて、アライメントマーク10a,20aの位置合わせを行う。
【0106】
図7(a)~(c)は、欠けのないショット領域SHに対するインプリント処理の際に、インプリント装置1が行うアライメント動作の例を示している。
【0107】
図7(a)に示すように、アライメント動作を行う際、制御部90は、ショット領域SH内に存在する複数のアライメントマーク10a,20aののうち、撮像素子84a~84dによって、特定のアライメントマーク10a,20aをそれぞれ撮像させる。
【0108】
図7(a)の例では、制御部90は、矩形のショット領域SHの紙面左上隅のアライメントマーク10a,20aを撮像素子84aにより撮像させ、紙面右上隅のアライメントマーク10a,20aを撮像素子84bにより撮像させ、紙面右下隅のアライメントマーク10a,20aを撮像素子84cにより撮像させ、紙面左下隅のアライメントマーク10a,20aを撮像素子84dにより撮像させている。
【0109】
このように、アライメント動作に際しては、ショット領域SH内に存在するアライメントマーク10a,20aのうち、例えばインプリント装置1が備える撮像素子84a~84d全てを活用して、ショット領域SHの四隅等、互いに極力離れたアライメントマーク10a,20a同士を撮像し、これらの画像に基づきアライメントを行うことが好ましい。これにより、ショット領域SH全体に亘って位置ずれ量を検出することができ、テンプレート10のパターン10pの重ね合わせ精度を向上させることができる。
【0110】
図7(b)に示すように、制御部90はまた、テンプレート10をレジスト膜30(
図5(b)参照)に接触させる際、テンプレートステージ81の加圧部813(
図3参照)によりテンプレート10の背面を加圧して、テンプレート10のパターン10p(
図3参照)が形成された面をウェハ20側に撓ませる。
【0111】
また、制御部90は、例えばショット領域SHの四隅のアライメントマーク10a,20aを撮像素子84a~84dによって順次、観測しつつ、例えばテンプレートステージ81の駆動部814(
図3参照)によりテンプレート10のウェハ20に対するX方向およびY方向の位置を微調整していく。
【0112】
図7(c)に示すように、テンプレート10のアライメントマーク10aへのレジスト膜30の充填待ちの間、大きく振れていたアライメント誤差が、アライメントが開始されると徐々にその振幅を小さくしていく。アライメント誤差が予め定められた閾値以下となった後、または、予め定められた所定時間の経過後、制御部90は、光源89を制御して紫外光等を照射させ、レジスト膜30の露光を行う。
【0113】
なお、
図7(a)などに示す欠けのないショット領域SHは、ウェハ20の端部よりも中央寄りに配置されており、例えばウェハチャック82bのゾーンZ1~Z4のいずれかと重なる位置に、あるいは、これらゾーンZ1~Z4の複数領域に跨って載置されている。
【0114】
制御部90は、アライメント動作を行う間、少なくともこれらのゾーンZ1~Z4、あるいは、これらに加えてゾーンZ5の吸引力を一定に保つ。これにより、インプリント処理の対象となるショット領域SHと重なるウェハ20裏面には、一定の負圧が加わっている。
【0115】
図7(d)~(g)は、欠けショット領域SHcに対するインプリント処理の際に、インプリント装置1が行うアライメント動作の例を示している。
【0116】
図7(d)の例では、欠けショット領域SHcは、ウェハ20面上の紙面右下方位置のウェハエッジ20e近傍に配置されており、欠けショット領域SHc右下方の欠けのある部分は、ウェハチャック82bのゾーンZ5と重なる位置に載置されている。
【0117】
図7(d)に示すように、欠けショット領域SHcにおいてアライメント動作を行う際にも、制御部90は、欠けショット領域SHc内に存在する複数のアライメントマーク10a,20aのうち、撮像素子84a~84dによって、特定のアライメントマーク10a,20aをそれぞれ撮像させる。
【0118】
図7(d)の例では、制御部90は、欠けショット領域SHcの紙面左上隅のアライメントマーク10a,20aを撮像素子84aにより撮像させ、紙面右上隅のアライメントマーク10a,20aを撮像素子84bにより撮像させ、紙面左下隅のアライメントマーク10a,20aを撮像素子84dにより撮像させている。
【0119】
しかし、上記のとおり、
図7(d)に示す欠けショット領域SHcは紙面右下方に欠けがあり、本来、この位置に存在するアライメントマーク10a,20aの撮像が行えない。制御部90は、欠けのないショット領域SHにおいて紙面右下方の撮像を行うはずの撮像素子84cによって、ゾーンZ5と重なる位置に配置されたアライメントマーク10a,20aを撮像させる。
【0120】
図7(e)に示すように、制御部90はまた、欠けショット領域SHcに対するインプリント処理においても、テンプレート10をレジスト膜30に接触させる際には、テンプレートステージ81の加圧部813によりテンプレート10の背面を加圧して、テンプレート10のパターン10pが形成された面をウェハ20側に撓ませる。
【0121】
また、制御部90は、ゾーン5における圧力が基準圧力に対して負圧となるようウェハチャック82bを制御する。基準圧力は、インプリント装置1内のインプリント処理を行う環境下の圧力であって、例えば大気圧である。また、制御部90は、ゾーン5より内側のゾーンであって、少なくともゾーン5に隣接するゾーン4を基準圧力に対して陽圧とする。また、制御部90は、更に内側のゾーンを負圧とする。
【0122】
これにより、ウェハエッジ20e近傍の陽圧とされたゾーンと重なる部分のウェハ20がテンプレート10側へと撓むとともに、負圧のゾーン5に重なる部分からウェハエッジ20eまでの部分が下方側へと反り返った状態となる。
【0123】
このように、テンプレート10とウェハ20との双方を撓ませることにより、テンプレート10のパターン10eと、ウェハ20のパターン転写面とを略平行になるよう維持しつつ、テンプレート10をレジスト膜30に押し当てることができる。また、レジスト膜30が、テンプレート10のパターン10pに充填されやすくなる。
【0124】
制御部90は、例えばショット領域SHのゾーン5と重なる位置のアライメントマーク10a,20a、及びその他のアライメントマーク10a,20aを撮像素子84a~84dによって順次、観測しつつ、それぞれのアライメントマーク10a,20aの位置ずれ量が最小となるよう調整していく。
【0125】
図7(f)に示すように、制御部90は、ゾーン5と重なる位置以外に配置されるアライメントマーク10a,20aを撮像素子84a,84b,84dにより観測しつつ、アライメント誤差の振幅が小さくなるよう、例えばテンプレートステージ81の駆動部814によりテンプレート10のウェハ20に対するX方向およびY方向の位置を微調整する。
【0126】
アライメント誤差が予め定められた閾値以下となった後、または、予め定められた所定時間の経過後、制御部90は、光源89を制御して紫外光等を照射させ、レジスト膜30の露光を行う。
【0127】
図7(g)に示すように、制御部90は、例えばテンプレート10の位置調整による上記のアライメント動作と並行して、ゾーン5と重なる位置のアライメントマーク10a,20aを撮像素子84cにより観測しつつ、ウェハチャック82bを制御して、ゾーン5における吸着力、つまり、負圧の調整を行う。
【0128】
ゾーン5の圧力は、当初より、例えば基準圧力である大気圧未満の圧力であって、予め定められた圧力である0kpa等に調整されている。制御部90は、テンプレート10の上記位置調整と並行して、ゾーン5の圧力を、例えば0kpaから-10kpa、-15kpa等へと段階的に低下させていく。このとき、制御部90は、ゾーン5の圧力を、例えばー2.5kpa刻みで落としていくことができる。
【0129】
このように、圧力を低下させていくことでゾーン5における吸引力が高まって、欠けショット領域SHcのゾーン5に重なる部分からウェハエッジ20eまでの部分の下方側への反りが増大していく。また、これに伴って、ゾーン5と重なる位置のアライメントマーク10a,20aの相対的な位置関係も変化していく。ウェハエッジ20eの反り量と比較して、ウェハ20上に重ね合わされるテンプレート10の加圧による撓み量は略変化しないからである。
【0130】
制御部90は、このようなアライメントマーク10a,20aの位置変化に基づいて、これらのアライメントマーク10a,20aのアライメント誤差が最小となるよう、ゾーン5の圧力を調整する。このようなアライメント動作のときにも、これらのアライメントマーク10a,20aのアライメント誤差は、上述の
図7(f)と同様、徐々に振幅が小さくなるよう変動すると考えられる。
【0131】
上述のように、欠けショット領域SHcにおいては、四隅のうち一隅、または複数の隅に欠けがあり、これらの位置にあるはずのアライメントマーク10a,20aを撮像し、テンプレート10のウェハ20に対するX方向およびY方向の位置調整に使用されるはずであった1つ以上の撮像素子84が未使用となる。このような1つ以上の撮像素子84を、ゾーン5と重なる位置にあるアライメントマーク10a,20aの観測に用い、アライメント誤差が最小となるよう圧力を変化させることで、ウェハ20の反り量を適正化することが可能である。
【0132】
その後、上述したように、ゾーン5と重なる位置以外のアライメントマーク10a,20aのアライメント誤差が所定の閾値以下となった後、あるいは、これらのアライメントマーク10a,20aに基づくアライメント動作を開始してから所定時間が経過した後に、レジスト膜30の露光が行われる。
【0133】
ただし、これらのアライメントマーク10a,20aのアライメント誤差に所定の閾値を設ける場合、ゾーン5と重なる位置のアライメントマーク10a,20aのアライメント誤差についても所定の閾値を設けてもよい。
【0134】
この場合、ゾーン5以外のアライメントマーク10a,20aのアライメント誤差、及びゾーン5のアライメントマーク10a,20aのアライメント誤差の少なくともいずれかが、対応する閾値以下となった場合に、アライメント動作を終了してレジスト膜30の露光を行うこととすることができる。
【0135】
あるいは、これらのアライメント誤差の両方がともに、対応する閾値以下となった場合に、アライメント動作を終了してレジスト膜30の露光を行うこととしてもよい。
【0136】
図7(g)に示すアライメント動作により、テンプレート10のパターン10pへのレジスト膜30の充填性、及び欠けショット領域SHcのゾーン5と重なる領域近傍へのパターン10pの重ね合わせ精度を共に満足するよう、ウェハ20の反り量が適正化される。
【0137】
なお、ゾーン5と重なる位置のアライメントマーク10a,20aを、ゾーンZ5の圧力調整によるウェハ20の反り量調整の用途のほか、ゾーン5と重なる位置以外のアライメントマーク10a,20aと同様の用途に兼用してもよい。すなわち、ゾーンZ5の圧力調整によるウェハ20の反り量を調整するとともに、ゾーン5と重なる位置のアライメントマーク10a,20aを観測しつつ、テンプレート10とウェハ20とのX方向おびY方向の位置調整を行ってもよい。
【0138】
(比較例)
インプリント装置によるインプリント処理の際、ウェハステージからのウェハ剥がれを抑制しつつテンプレートを離型することができるよう、インプリント処理中には、ウェハチャックによりウェハを吸引しておく。ウェハには複数のショット領域が設けられ、インプリント処理は、個々のショット領域ごとに行われる。
【0139】
ここで、ウェハに加わる離型力は、ショット領域の位置等に依存する。このため、個々のショット領域ごとにウェハチャックの吸引力を制御できるよう、例えばゾーン分割型のウェハチャックを用いることができる。これにより、インプリント処理の進行に応じて、処理対象となっているショット領域に対し、リアルタイムでウェハチャックの吸引力を調整することができる。
【0140】
しかしながら、欠けショット領域はそれぞれ、様々な形状および異なる面積を有している。ウェハに加わる離型力は、ショット領域の面積によっても異なるため、ウェハエッジに位置する欠けショット領域に対して所定の吸引力を一律に適用すると、欠けショット領域ごとにウェハの反り量が変動してしまう。これにより、パターンの重ね合わせ精度もまた変動してしまう。
図8に、ウェハの反り量とパターンの重ね合わせ精度の関係を示す。
【0141】
図8は、比較例にかかるテンプレート10x及びウェハ20xのアライメントマーク10xa,20xaの相対位置とウェハ20xの反り量との関係を示す模式図である。
【0142】
図8に示すように、比較例のウェハ20xは、比較例のウェハチャック82x上に載置されている。また、ウェハ20x上には比較例のテンプレート10xが重ね合わされている。
【0143】
図8(a)に示すように、例えばウェハチャック82xによる吸引を行っておらず、ウェハ20xに反りがない状態で、ウェハ20xと略平行になるようテンプレート10xを重ね合わせたものとする。この状態では、ウェハ20xのアライメントマーク20xaと、テンプレート10xのアライメントマーク10xaとの位置が、上下方向で一致している。
【0144】
図8(b)に示すように、例えばウェハチャック82xによる吸引が行われ、ウェハ20xに反りが生じた状態で、がウェハ20xと略平行になるようテンプレート10xを重ね合わせたものとする。この場合、互いに重なり合っていたアライメントマーク10xa,20xaにずれが生じる。
【0145】
ウェハチャック82xに吸着されることで、ウェハ20xに反りが生じる一方で、ウェハ20上に重ね合わされたテンプレート10はウェハチャック82xの影響を殆ど受けないためである。
【0146】
以上のことから、ウェハの反りが増すほどパターンの重ね合わせ精度は低下する。一方で、ウェハの反り量が小さすぎると、テンプレートのパターンへのレジスト膜の充填性が低下してしまう。したがって、ウェハエッジの欠けショット領域に対するインプリント処理において、ウェハの反り量には適正値が存在する。また、ウェハの反り量を適正に保つためのウェハチャックの吸引力は、上記のように、個々に面積の異なる欠けショット領域ごとに異なり得る。
【0147】
実施形態のパターン形成方法によれば、ゾーン5外のアライメントマーク10a,20aを観測しつつテンプレート10とウェハ20との面方向の相対位置を調整して、これらのアライメントマーク10a,20aの位置合わせを行うとともに、ゾーン5のアライメントマーク10a,20aを観測しつつウェハチャック82bのゾーン5における吸引力を調整してウェハエッジ20eの反り量を変化させ、これらのアライメントマーク10a,20aの位置合わせを行う。
【0148】
これにより、ウェハエッジ20eに配置される欠けショット領域SHcに対して、ウェハチャック82bの負圧を一律にしてインプリント処理を行うのではなく、個々の欠けショット領域SHcごとにリアルタイムでウェハ20の反り量を適正化することができる。よって、ウェハ20に対するテンプレート10のパターン10pの重ね合わせ精度を向上させることができる。
【0149】
実施形態のパターン形成方法によれば、ゾーン5外のアライメントマーク10a,20aの位置合わせと、ゾーン5のアライメントマーク10a,20aの位置合わせとを並行して行う。これにより、テンプレート10とウェハ20との面方向の位置合わせと、ウェハ20の反り量の適正化とを効率的に行うことができる。
【0150】
実施形態のパターン形成方法によれば、ウェハチャック82bのゾーン5における吸引力を段階的に高めていきながら、ゾーン5のアライメントマーク10a,20aの位置合わせを行う。このように、応答性が高い吸引力を高める方向にウェハ20の反り量を調整するので、ゾーン5のアライメントマーク10a,20aの位置合わせを素早く行うことができる。
【0151】
実施形態のパターン形成方法によれば、ゾーン5のアライメントマーク20aとの位置合わせに用いられるアライメントマーク10aの凹部内にレジスト膜30が充填された後に、これらのアライメントマーク10a,20aの位置合わせを開始する。これにより、アライメントマーク10a,20aの視認性を高めた状態で、これらの位置合わせを行うことができる。
【0152】
実施形態のインプリント装置1によれば、撮像素子84a~84dのうちの幾つかによりゾーン5外のアライメントマーク10a,20aを撮像した画像に基づいて、テンプレート10とウェハ20との面方向の相対位置を調整して、これらのアライメントマーク10a,20aの位置合わせを行うとともに、撮像素子84a~84dのうち未使用の撮像素子84によりゾーン5のアライメントマーク10a,20aを撮像した画像に基づいて、ウェハチャック82bのゾーン5における吸引力を調整してウェハエッジ20eの反り量を変化させ、これらのアライメントマーク10a,20aの位置合わせを行う。
【0153】
これにより、欠けショット領域に対するインプリント処理の際、例えば比較例のインプリント処理では未使用となっていた撮像素子84を用いてウェハエッジ20eの反り量を適正化することができる。よって、インプリント装置1に更なる構成を追加することなく、個々の欠けショット領域SHcごとにリアルタイムでウェハ20の反り量を適正化し、ウェハ20に対するテンプレート10のパターン10pの重ね合わせ精度を向上させることができる。
【0154】
(変形例)
次に、
図9を用いて、実施形態の変形例の構成について説明する。変形例のインプリント装置は、ゾーン5のアライメントマーク10a,20aを観測しつつ、テンプレート10の傾き調整等も行う点が、上述の実施形態とは異なる。
【0155】
以下においては、上述の実施形態のインプリント装置1の全体構成および各部の図面を引用し、同様の符号を用いて説明を行う。
【0156】
図9は、実施形態の変形例にかかるインプリント装置が行うアライメント動作の一例を示す図である。
図9(a)は、テンプレート10がレジスト膜30に押し当てられた状態を、テンプレート10の上方から見た上面図である。
図9(b)~(d)は、テンプレート10をレジスト膜30に押し当てたときの状態を横方向から見た模式図である。
図9(e)は、アライメント時にインプリント装置1が行うアライメント動作を示すグラフである。
図9(f)は、アライメント時にインプリント装置1が行う他のアライメント動作を示すグラフである。
【0157】
図9(a)に示すように、紙面右下方が欠けた欠けショット領域SHcにおいて、上述の実施形態の
図7(d)の例と同様、例えば撮像素子84a,84b,84dを、ゾーンZ5と重なる位置から外れた位置のアライメントマーク10a,20aの観測に用いる。また、未使用の撮像素子84cをゾーンZ5と重なる位置のアライメントマーク10a,20aの観測に用いる。
【0158】
図9(b)に示すように、ゾーンZ5外のアライメントマーク10a,20aを観測しつつ、テンプレートステージ81の駆動部814によって、テンプレート10とウェハ20とのX方向およびY方向の位置を調整する。また、ゾーンZ5のアライメントマーク10a,20aを観測しつつ、ウェハチャック82bによってウェハ20裏面の吸引力を変化させ、ウェハ20の反り量を調整する。
【0159】
図9(e)に「圧力調整」と付した、アライメント動作の前半部分、及び「圧力調整」期間と重なる
図9(f)のゾーンZ5の圧力変化の前半部分は、上記の
図9(b)の処理の実施期間に相当する。
【0160】
ここで、変形例のアライメント動作においては、例えばゾーンZ5外のアライメントマーク10a,20aのアライメント動作の期間よりも、ゾーンZ5のアライメントマーク10a,20aのアライメント動作の期間を短く設定し、ゾーンZ5外におけるアライメント動作よりも、ゾーンZ5におけるアライメント動作が先にタイムアウトするよう設定しておくことができる。
【0161】
そのうえで、ゾーンZ5のアライメントマーク10a,20aのアライメント誤差が所定の閾値以下となることなくタイムアウトした場合、制御部90は、引き続き、ゾーンZ5のアライメントマーク10a,20aを観測しつつ、テンプレートステージ81を用いて、テンプレート10の傾き、押印力、及びウェハ20側への撓み量の少なくともいずれかを調整し、これらのアライメントマーク10a,20aの位置合わせを行う。
【0162】
ウェハエッジ20eに配置される欠けショット領域SHcに対するインプリント処理の際、上記に挙げた、テンプレート10の傾き、押印力、及びウェハ20側への撓み量はいずれも、テンプレート10のパターン10pに対するレジスト膜30の充填性、及びウェハエッジ20eの反り量に影響を与える。テンプレート10の傾き、押印力、及びウェハ20側への撓み量によって、テンプレート10が押し当てられたときに欠けショット領域SHcの各部に加わる力のバランスが変化するためである。
【0163】
より具体的には、例えばテンプレート10がウェハ20に対して傾いている場合、テンプレート10のウェハ20に近づく方向に傾いた側でウェハ20に加わる力が強くなり、ウェハ20の反り量が異なり得る。
【0164】
また、テンプレート10の押印力は、上述したとおり、テンプレート10の四隅をウェハ20へと押し当てる力である。したがって、テンプレート10の押印力を強めることで、例えば欠けショット領域SHc内の中央部に比べて外周側に加わる力が強くなり、その部分がウェハエッジ20eに近ければ、ウェハ20の反り量が大きくなり得る。反対に、テンプレート10の押印力を弱めることで、例えば欠けショット領域SHc内の中央部に比べて外周側に加わる力が弱くなり、ウェハ20の反り量が小さくなり得る。
【0165】
また、テンプレート10の背面に加わる圧力が低ければ、テンプレート10のウェハ20側への撓み量が小さくなり、例えば欠けショット領域SHc全面に亘って、より均等に力が加わって、ウェハ20の反り量が小さくなり得る。反対に、テンプレート10の背面に加わる圧力が高ければ、テンプレート10のウェハ20側への撓み量が大きくなり、その部分がウェハエッジ20eに近ければ、ウェハ20の反り量が大きくなり得る。
【0166】
したがって、テンプレート10の傾き、押印力、及びウェハ20側への撓み量を制御することによっても、ウェハエッジ20eの反り量を調整して、ゾーンZ5のアライメントマーク10a,20aの位置合わせを行うことができる。具体例を
図9(c)(d)に示す。
【0167】
図9(c)に示すように、ウェハチャック82bの吸引力制御によるウェハ20の反り量の調整がタイムアウトした後、制御部90は、例えばゾーンZ5のアライメントマーク10a,20aを引き続き観測しつつ、テンプレートステージ81の駆動部814を制御して、テンプレート10のウェハ20に対する傾きを調整する。
【0168】
図9(d)に示すように、ウェハチャック82bの吸引力制御によるウェハ20の反り量の調整がタイムアウトした後、制御部90はまた、例えばゾーンZ5のアライメントマーク10a,20aを引き続き観測しつつ、テンプレートステージ81の駆動部814を制御してテンプレート10の押印力を調整することもできる。
【0169】
また、制御部90は、例えばゾーンZ5のアライメントマーク10a,20aを引き続き観測しつつ、テンプレートステージ81の加圧部813を制御して、テンプレート10背面の圧力を変更し、テンプレート10のウェハ20側への撓み量を調整することもできる。
【0170】
図9(e)に示すように、ゾーンZ5の圧力調整期間の後も、ゾーンZ5外のアライメントマーク10a,20aを用いたテンプレート10とウェハ20との面方向の位置合わせと並行して、ゾーンZ5のアライメントマーク10a,20aを用いたテンプレート10の傾き、押印力、及びウェハ20側への撓み量の少なくともいずれかの調整を継続することで、アライメント誤差の振幅を更に抑え、良好な重ね合わせ精度でテンプレート10のパターン10pをレジスト膜30に転写することができる。
【0171】
図9(f)に示すように、ゾーンZ5の圧力調整期間の後、テンプレート10の傾き、押印力、及びウェハ20側への撓み量等の調整中、ゾーン5における吸引力は、ゾーンZ5の圧力調整期間がタイムアウトした時点において得られていた適正値に維持される。
【0172】
なお、テンプレート10の傾き、押印力、及びウェハ20側への撓み量のうち、ウェハ20の反り量は、ゾーンZ5における吸引力調整に次いで、テンプレート10の傾きによってより顕著に影響を受ける。また、テンプレート10の押印力および撓み量は、欠けショット領域SHcの中央部と外周部とに加わる力のバランスを変更するという点において、同様の(逆向きの)効果を有する。
【0173】
したがって、ゾーンZ5の圧力調整期間がタイムアウトした後には、テンプレート10の傾き、押印力、及びウェハ20側への撓み量のうち、例えばテンプレート10の傾き調整を優先して行うことができる。
【0174】
この場合、ゾーンZ5のアライメントマーク10a,20aのアライメント誤差が所定の閾値以下となることなく再びタイムアウトした場合には、テンプレート10の押印力の調整、及びウェハ20側への撓み量の調整のいずれかを行うこととしてよい。その後、ゾーンZ5のアライメントマーク10a,20aのアライメント誤差が所定の閾値以下となり、あるいは、ゾーンZ5外のアライメントマーク10a,20aのアライメント動作がタイムアウトした場合には、テンプレート10の押印力または撓み量の調整を終了することとしてよい。
【0175】
また、ゾーンZ5の圧力調整、テンプレート10の傾き、押印力、及び撓み量の少なくともいずれかの調整を行っているときに、ゾーンZ5のアライメントマーク10a,20aを、ゾーンZ5外の他のアライメントマーク10a,20aと同様、テンプレート10とウェハ20との面方向の位置合わせに用いてもよい。
【0176】
変形例のパターン形成方法によれば、テンプレート10とウェハ20との相対位置を調整し、ウェハチャック82bのゾーン5における吸引力を調整するとともに、テンプレート10の傾き、パターン10pを押し当てる力、及びテンプレート10の背圧調整によるパターン10pの撓みの少なくともいずれかを調整して、ゾーン5のアライメントマークの位置合わせを行う。これにより、ウェハ20に対するテンプレート10のパターン10pの重ね合わせ精度をよりいっそう向上させることができる。
【0177】
変形例のパターン形成方法によれば、ゾーン5外のアライメントマーク10a,20aの位置合わせと並行してこれらのアライメントマーク10a,20aの位置合わせを行った後、ゾーンZ5のアライメントマーク10a,20aの位置合わせ状態が所定条件を満たしていない場合には、ゾーンZ5外のアライメントマーク10a,20aの位置合わせと並行して、テンプレート10の傾き、パターン10pを押し当てる力、及びパターン10pの撓みの少なくともいずれかを調整して、ゾーンZ5のアライメントマーク10a,20aの位置合わせを行う。
【0178】
このように、ウェハ20の反り量調整に対してより実効性のあるウェハチャック82bの圧力調整を行った後、所定のアライメント条件を満たしていない場合には、さらに、テンプレート10の傾き、パターン10pを押し当てる力、及びパターン10pの撓みの少なくともいずれかを調整することで、効率的に、かつ、より精密にアライメントマーク10a,20aの位置合わせを行うことができる。
【0179】
変形例のパターン形成方法によれば、上述の実施形態のパターン形成方法と同様の効果を奏する。
【0180】
なお、上述の実施形態および変形例では、アライメントマーク10a,20aとして、バーインバー型マークを用いる例について説明した。しかし、上述のように、テンプレート10及びウェハ20に設けられるアライメントマークは、バーインバー型マークとは異なるタイプのマークであってもよい。他のマークの一例として、モアレ型マークを
図10に示す。
【0181】
図10は、実施形態のその他の変形例にかかるテンプレート及びウェハに設けられるモアレ型のアライメントマーク110a,120aの構成の一例を示す上面図である。
【0182】
図10(a)に示すように、その他の変形例のテンプレート側には、例えばY方向に沿う方向に延びる複数のラインアンドスペースが、互いに一定の間隔を空けてX方向に配置された1次元周期構造を有するアライメントマーク110aが設けられている。
【0183】
また、その他の変形例のウェハ側には、例えばX方向およびY方向に等間隔で配列された市松格子(チェック模様)状の2次元周期構造を有するアライメントマーク120aが設けられている。アライメントマーク120aが有する構造のX方向の周期は、アライメントマーク110aのX方向の周期と僅かに異なる。
【0184】
このような構成を有することにより、アライメントマーク110a,120aが上下に重ね合わさると、モアレと呼ばれる干渉縞が発生する。また、アライメントマーク110a,120aが重なり合った状態で、その他の変形例のテンプレートとウェハとの相対位置をX方向に移動させていくと、X方向に干渉縞が移動していく。
【0185】
このような干渉縞の移動を、例えば上述の撮像素子84で撮像した画像において信号波形として検出することで、テンプレートとウェハとのX方向における位置ずれ量を算出することができる。
【0186】
一方、テンプレートとウェハとのY方向における位置ずれ量を検出するには、
図10のアライメントマーク110a,120aを共に90°回転させて、テンプレートとウェハとに配置させておけばよい。これにより、アライメントマーク110a,120aは、互いにY方向に僅かに異なる周期を有することとなる。
【0187】
これらのアライメントマーク110a,120aを上下に重ね合わせてテンプレートとウェハとの相対位置をY方向に移動させていくと、Y方向に干渉縞が移動していく。
【0188】
このような干渉縞の移動を、例えば上述の撮像素子84で撮像した画像において信号波形として検出することで、テンプレートとウェハとのY方向における位置ずれ量を算出することができる。
【0189】
以上のように、例えばモアレ型のアライメントマーク110a,120aにおける干渉縞を電気信号として検出して解析することで、テンプレートとウェハとの位置ずれ量をより高精度に定量化することができ、より精密にテンプレートとウェハとの位置合わせを行うことができる。
【0190】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0191】
1…インプリント装置、10…テンプレート、10a,20a,110a,120a…アライメントマーク、10p…パターン、20…ウェハ、21…被加工膜、30…レジスト膜、81…テンプレートステージ、812…テンプレートチャック、813…加圧部、814…駆動部、82…ウェハステージ、82b…ウェハチャック、83,84a~84d…撮像素子、90…制御部、SH…ショット領域、SHc…欠けショット領域、Z1~Z5…ゾーン。