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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043971
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】撮像装置、及び、画像生成方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20180101AFI20240326BHJP
   G01T 7/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
G01N23/04
G01T7/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149238
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山根 武
【テーマコード(参考)】
2G001
2G188
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA08
2G001FA06
2G001GA01
2G001HA07
2G001JA09
2G001LA11
2G001MA05
2G001PA11
2G188AA25
2G188BB02
2G188CC42
2G188DD04
(57)【要約】
【課題】高精度に再構成像を取得することができる、撮像装置、及び、画像生成方法を提供する。
【解決手段】撮像装置は、被検体41を保持しX方向に走査可能なステージ22と、X方向に延在するライン状の画素142をY方向に複数かつ等間隔に並べて配置してなる1次元検出器14と、被検体41を透過し1次元検出器14で検出された撮像光の検出強度から被検体41の像を再構成する制御解析部31と、を備える。
1次元検出器14は、ステージ22が画素142のライン長さの距離を走査する時間の半分以下に設定されたサンプリング間隔Δt毎に検出強度を出力する。制御解析部31は、検出強度分布を、像強度分布と窓関数によるコンボリューションであるとして、デコンボリューションによって、画素142ごとに像強度分布を算出し、すべての画素142の像強度分布をY方向に配置して被検体の像を生成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を保持するステージと、
第1方向に延在するライン状の受光面を有するライン状画素を、前記第1方向と直交する第2方向に複数かつ等間隔に並べて配置してなる検出器と、
前記被検体を透過する撮像光を前記検出器の検出面に結像させる結像光学部材と、
前記検出器で検出された前記撮像光の強度である検出強度から前記被検体の像を再構成する画像処理部と、を備え、
前記ステージは、前記第1方向と平行な方向に走査可能であり、
前記検出器は、前記ステージが前記ライン状画素のライン長さの距離を走査する時間の半分以下をサンプリング間隔として、前記サンプリング間隔毎に前記検出強度を出力し、
前記画像処理部は、前記ステージの位置座標に対する前記検出強度を示す検出強度分布を、前記ライン状画素のライン延長線上における像強度分布と、前記ライン長さに相当する前記ステージの位置座標の範囲にて1を示し、その他の範囲では0を示す窓関数によるコンボリューションであるとして、前記検出強度分布からデコンボリューションによって、前記ライン状画素ごとに前記像強度分布を算出し、すべての前記ライン状画素において算出された前記像強度分布を、前記ライン状画素の配列方向に配置して前記被検体の像を生成する、撮像装置。
【請求項2】
前記サンプリング間隔は、前記第2方向に配列された前記ライン状画素の画素ピッチを、前記ステージの走査速度の2倍で除した値である、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記ステージが走査する距離は、前記サンプリング間隔に、前記ステージが走査する速度を乗じた値の100倍以上である、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記被検体は、少なくとも一部に周期構造を有し、前記ステージが走査を開始する位置と終了する位置において前記周期構造が連続するように、前記走査を開始する位置と前記走査を終了する位置が設定される、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記画像処理部は、第1方向における前記ステージの走査範囲外の検出強度分布をシミュレーションするシミュレーターを備え、前記シミュレーターによって生成される、計前記走査範囲よりも前記第1方向負側の前記検出強度分布である第1シミュレート検出強度分布と、前記シミュレーターによって生成される、前記走査範囲よりも前記第1方向正側の前記検出強度分布である第2のシミュレート検出強度分布と、前記1次元検出器によって検出される前記検出強度分布を合成した合成強度分布を生成し、前記像強度分布を用いて前記像強度分布を算出する、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記被検体は、メモリセルアレイが形成された半導体記憶装置である、請求項4に記載の撮像装置。
【請求項7】
ステージに保持された被検体に撮像光を照射し、
前記被検体を第1方向に所定の速度で走査しながら、第1方向に延在するライン状の受光面を有するライン状画素を、前記第1方向と直交する第2方向に複数かつ等間隔に並べて配置してなる検出器によって、前記ステージが前記ライン状画素のライン長さの距離を走査する時間の半分以下に設定されたサンプリング間隔ごとに、前記被検体を透過する撮像光の強度である検出強度を出力し、
前記ステージの位置座標に対する前記検出強度を示す検出強度分布を、前記ライン状画素のライン延長線上における像強度分布と、前記ライン状画素の長さに相当する前記ステージの位置座標の範囲にて1を示し、その他の範囲では0を示す窓関数とによるコンボリューションであるとして、前記検出強度分布からデコンボリューションによって、前記ライン状画素ごとに前記像強度分布を算出し、
すべての前記ライン状画素において算出された前記像強度分布を、前記ライン状画素の配列方向に配置して前記被検体の像を生成する、画像生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、撮像装置、及び、画像生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体の構造を高分解能かつ非破壊で観察する装置として、透過X線顕微鏡が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6478433号公報
【特許文献2】特開2020-16543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態は、高精度に再構成像を取得することができる、撮像装置、及び、画像生成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態の撮像装置は、被検体を保持するステージと、第1方向に延在するライン状の受光面を有するライン状画素を、前記第1方向と直交する第2方向に複数かつ等間隔に並べて配置してなる検出器と、前記被検体を透過する撮像光を前記検出器の検出面に結像させる結像光学部材と、前記検出器で検出された前記撮像光の強度である検出強度から前記被検体の像を再構成する画像処理部と、を備える。前記ステージは、前記第1方向と平行な方向に走査可能である。前記検出器は、前記ステージが前記ライン状画素のライン長さの距離を走査する時間の半分以下をサンプリング間隔として、前記サンプリング間隔毎に前記検出強度を出力する。前記画像処理部は、前記ステージの位置座標に対する前記検出強度を示す検出強度分布を、前記ライン状画素のライン延長線上における像強度分布と、前記ライン長さに相当する前記ステージの位置座標の範囲にて1を示し、その他の範囲では0を示す窓関数によるコンボリューションであるとして、前記検出強度分布からデコンボリューションによって、前記ライン状画素ごとに前記像強度分布を算出する。また、前記画像処理部は、すべての前記ライン状画素において算出された前記像強度分布を、前記ライン状画素の配列方向に配置して前記被検体の像を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態の撮像装置の構成の一例を説明する概略図。
図2】被検体の一例を説明する概略図。
図3】メモリチップ対応領域に形成されたメモリセルアレイの一例を説明する平面図。
図4】メモリセルアレイの詳細な構造の一例を説明する平面図。
図5】1次元検出器の構成を説明する概略図。
図6】1次元検出器の原理回路構成図。
図7】超電導ストリップにおけるX線光子の検出原理を説明する図。
図8A】画素nの検出強度分布の一例を示す図。
図8B図8Aの領域Aを拡大した図。
図9】窓関数の一例を説明する図。
図10】再構成された被検体の2次元像の一例を説明する図。
図11】デコンボリューション前後の強度分布、および、実際の強度分布の一例を示す図。
図12】デコンボリューション後における走査領域内外の強度分布を模式的に示した図。
図13】第1実施形態における画像生成方法の一例を説明するフローチャート。
図14】第2実施形態における走査領域内外の強度分布を模式的に示した図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
(第1実施形態)
実施形態の撮像装置は、例えば、透過X線顕微鏡である。透過X線顕微鏡は、波長が短い電磁波を用いた結像光学系であり、数十nm程度の高い分解能を有する。また、X線は透過率が高いため、表面に半導体デバイスなどが形成されたシリコンウェーハなど、比較的厚い被検体の表面構造や内部構造を観察可能である。
【0008】
図1は、実施形態の撮像装置の構成の一例を説明する概略図である。撮像装置は、光源11と、照明ミラー12と、結像ミラー13と、1次元検出器14とを備えている。また、撮像装置は、ステージ22と、ステージ駆動部23と、制御解析部31とを備えている。光源11は、モリブデン等を材料とするターゲットに電子線を照射してX線を発生させるX線源である。照明ミラー12は、光源11より発せられるX線を、ステージ22に載置された被検体41に向かって集光するために用いられる。照明ミラー12には、例えばモンテルミラーが用いられる。
【0009】
被検体41は、例えば、半導体デバイスが形成されたシリコンウェーハである。図2は、被検体の一例を説明する概略図である。被検体であるシリコンウェーハ41は、複数のメモリチップ対応領域200が、X方向およびY方向に行列状に配列される。シリコンウェーハ41をメモリチップ対応領域200の境界にダイシング(die cutting)することにより、複数のメモリチップが取り出される。シリコンウェーハ41上に、CVD技術などにより各種の膜を堆積させたり、イオン注入技術により各種膜に不純物を注入したり、リソグラフィ技術及びエッチング技術により堆積された膜をパターニングしたりする様々な工程を繰り返し、複数のメモリチップ対応領域200のそれぞれに不揮発性メモリが形成される。
【0010】
本実施形態においては、ステージ22にシリコンウェーハ41を載置し、ステージ22をX方向に移動させながら、観察を行う。例えば、ステージ22にシリコンウェーハ41を載置した状態で、ステージ22を図2における矢印つき点線で示す方向に沿って所定の速度で移動させることで、シリコンウェーハ41上のX線の照射位置を移動させる。
【0011】
メモリチップ対応領域200は、例えば、メモリセルアレイと周辺回路とから構成されている。図3は、メモリチップ対応領域200に形成されたメモリセルアレイの一例を説明する平面図である。図3には、メモリセルアレイの一部領域を拡大して示している。メモリセルアレイに含まれる各ブロックBLKは、X方向に直交する方向(Y方向)を長手方向としY方向に所定の幅を有する帯状領域として形成される。各ブロックBLKの間にはスリットSTが形成されている。スリットSTには絶縁材料が充填されており、隣り合うブロックBLK間を電気的に分離する。各ブロックBLKは、複数のストリングユニットSUを含む。ストリングユニットSUは、ブロックBLKのX方向の辺を分割した帯状領域として形成される。各ストリングユニットSUの間にはスリットSHEが形成されている。このように、メモリセルアレイは、ブロックBLKを単位とする周期構造を有する。図3に示すように、例えば、観察領域421が含まれるブロックBLKを走査領域411として設定し、観察を行う。
【0012】
ここで、観察領域421とは、構造の観察対象となる領域である。また、走査領域411とは、観察領域421の構造を観察するために、被検体41を走査しながらX線を照射する領域である。より具体的には、走査領域411のX方向の範囲は、被検体41を走査しながら観察する際に、被検体41に照射されるX線の中心位置が移動する範囲と一致する。走査領域411のY方向の範囲は、観察領域421のY方向の範囲、または、1次元検出器14におけるY方向の検出範囲のうちの大きいほうと一致する。観察領域421のX方向の長さをS、走査領域141のX方向の長さをTとする。
【0013】
図4は、メモリセルアレイの詳細な構造の一例を説明する平面図である。図4には、1つのブロックBLKの構造を示しており、1ブロックBLK内に、スリットSHEによって分離された5つの選択ゲート線SGD0~SGD4をそれぞれ含む5つのストリングユニットSU0~SU4が構成された例を示している。スリットSHEには絶縁材料が充填されており、隣り合うストリングユニットSU間の選択ゲート線SGDは電気的に分離されている。各々のストリングユニットSUは、複数のNANDストリングを含む。各NANDストリングは、Z方向に延伸する円柱状のメモリホールMHに形成される。1ストリングユニットSUにはNANDストリングNSを構成するメモリホールMHが複数配置される。1ストリングユニット中のNANDストリング数(メモリホール数)は極めて多く、チップサイズを縮小するために、メモリホールMHは千鳥配列に配置される。1ストリングユニットSU内の各メモリホールMHは、それぞれコンタクトプラグCPによってビット線BLに接続される。各ビット線BLは、それぞれコンタクトプラグCPを介してストリングユニットSU毎に1つのメモリホールMHに接続される。なお、各ビット線BLを各ストリングの1つのメモリホールMHに接続するために、コンタクトプラグCPの位置は、ビット線BLの延伸方向に直交する方向にずらしてある。実施形態の撮像装置は、例えば、図4に示すようなメモリホールMHが形成された領域の表面構造の観察に用いられる。
【0014】
図1に戻り、実施形態の撮像装置の詳細な構成について説明する。結像光学部材としての結像ミラー13は、被検体41を透過したX線を集光し、被検体41の像を1次元検出器14の検出面141に結像させる。図5は、1次元検出器の構成を説明する概略図である。図5に示すように、1次元検出器14は、D1方向に延伸する、ライン状の画素として機能する超電導ストリップ142を、検出面141内にD2方向に等間隔にN本配置して構成される。X-Y平面と平行に配置されている被検体41の像は、検出面141のD1-D2平面に結像される。また、X線の光軸はZ方向に沿って被検体41に入射され、D3方向に沿って1次元検出器14の検出面141に入射される。すなわち、検出面141のD1方向は、被検体41のX方向と対応しており、検出面141のD2方向は、被検体41のY方向と対応しており、検出面141のD3方向は、被検体41のZ方向と対応している。なお、D1方向とD2方向とD3方向とは、互いに直交する。1次元検出器14には、例えば、超電導ストリップ(超電導単一光子検出器)が複数配置された超電導ストリップ検出器が用いられる。ライン状の画素である超電導ストリップ142の断面積が、超電導領域の分断が発生する程度に小さくするように、超電導ストリップ142の幅(図5におけるD2方向の長さ)と厚さ(図5におけるD3方向の長さ)を決定する。なお、以下の説明において、1本の超電導ストリップ142の幅と、隣接する超電導ストリップ142間の間隔との和を、画素ピッチLPとする。また、超電導ストリップ142の長さをLとする。1次元検出器14の検出面141は、なるべく広い範囲のX線を検出できるように、光源11から発せられたX線が照射された領域146内であり、なるべく大きい面積になるように設定される。
【0015】
図6は、1次元検出器の原理回路構成図である。図6は、複数配置された超電導ストリップ142のうち1つと、当該1つの超電導ストリップ142に対応した電流源143、増幅器144、および計測器145を示している。図6に示すように、各々の超電導ストリップ142は、一端が接地される。超電導ストリップ142の他端には電流源143と増幅器144が接続される。電流源143は、超電導ストリップ142にバイアス電流Ibを供給する。増幅器144は、超電導ストリップ142で発生した電気信号を増幅し、計測器145に出力信号(電気信号)を送信する。計測器145は、超電導ストリップ142によるX線光子の検出時に増幅器144から送信されるパルス状の出力信号(電気信号)をカウントする。なお、電流源143、増幅器144、および、計測器145は、1次元検出器14の外部に設けることも可能である。例えば、電流源143、増幅器144、および、計測器145を、制御解析部31内に設ける構成にすることも可能である。
【0016】
図7は、超電導ストリップにおけるX線光子の検出原理を説明する図である。まず、超電導ストリップ142を図示しない冷凍機により転移温度以下に冷却して超電導状態にする。そして、超電導ストリップ142の超電導状態を維持する臨界電流をわずかに下回る程度のバイアス電流Ibを電流源143から供給する。この状態で、X線光子を超電導ストリップ142に入射させる。
【0017】
このとき、超電導ストリップ142の幅及び厚さは200nm程度で形成されており、超電導ストリップ142の断面積は小さい。そのため、X線光子が超電導ストリップ142に吸収されると、図7に示すように、超電導ストリップ142の超電導領域内にホットスポットと呼ばれる常伝導に転移する領域(ホットスポット領域)51が形成される。ホットスポット領域51の電気抵抗は増加するので、図7に示すように、バイアス電流Ibはホットスポット領域51を迂回して別の領域である迂回領域52内を流れる。
【0018】
そして、迂回領域52に臨界電流以上の電流が流れると、迂回領域52が常伝導に転移して電気抵抗が増大し、最終的に超電導ストリップ142の超電導領域は分断される。すなわち、上述した超電導ストリップ142の超電導領域が分断された状態(分断状態)が発生する。この後、常伝導に転移したホットスポット領域51および迂回領域52は冷却により速やかに消滅するため、超電導ストリップ142の超電導領域の分断により発生する一時的な電気抵抗によってパルス状の電気信号が発生する。このパルス状の電気信号を増幅器144で増幅し、計測器145でカウントすることによって、X線光子の数を検出することができる。計測器145でカウントされた、超電導ストリップ142ごとのX線光子(フォトン)の数、すなわち、1次元検出器14の検出結果は、制御解析部31に出力される。
【0019】
画像処理部としての制御解析部31は、1次元検出器14から出力された信号(検出結果)を解析し、被検体41の像(2次元像)を再構成する。2次元像の具体的な再構成の方法については、後に詳述する。制御解析部31には、例えば、中央演算処理装置(CPU)とメモリ(RAM)とを備えた、パーソナルコンピュータを用いることができる。被検体41の像を再構成する動作は、例えば、予めプログラムとしてメモリに格納しておき、CPUにおいて実行することにより、ソフトウェア的に行われる。また、被検体41の像を再構成する動作は、ハードウェアとして構成された1つ以上のプロセッサが行うようにしてもよい。例えば、電子回路として構成されたプロセッサであっても構わないし、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路で構成されたプロセッサであってもよい。また、制御解析部31は、ステージ22をX方向またはY方向に移動させるステージ駆動部23に制御信号を出力し、移動タイミング、移動方向、移動速度vなどを指示する。
【0020】
次に、制御解析部31において、2次元像を再構成する具体的な方法について、図8A図10を用いて説明する。図8Aは、画素nの検出強度分布の一例を示す図である。また、すなわち、検出面141に配置されたN本の超電導ストリップ(画素)142のうちの1本の画素についての検出強度分布の一例を示している。図8Bは、図8Aの領域Aを拡大した図である。図9は、窓関数の一例を説明する図である。図10は、再構成された被検体の2次元像の一例を説明する図である。なお、以下の説明において、被検体41上において、検出面141の中心147に相当するD1(X)座標上の位置をxとする。換言すると、xは、検出面141の中心147に入射されるX線が、被検体41を透過するX座標上の位置である。X方向にステージ22を走査させながら被検体41を観察する際の、xの走査範囲を-T/2≦x<T/2とする(図3参照)。
【0021】
1次元検出器14として超伝導ナノストリップ検出器を用いる場合、ある画素にてX線フォトン1個を検出すると、1個のパルス信号を出力する。ある一定のサンプリング間隔Δtの間に検出されたフォトンの累積数を強度とし、X座標に対して強度をプロットすることによって、図8Aに示すような検出強度分布i(x)を取得する。検出面141に配置されているN本の超電導ストリップ(画素)142のそれぞれについて、検出強度分布i(x)(1≦n≦N)が得られる。ステージ22の走査速度をvとすると、図8Bに示すように、in(x)はxのグリッド間隔がvΔtである離散データとなる(x=-T/2、-T/2+vΔt、-T/2+2vΔt、・・・、T/2-vΔt)。
【0022】
次に、デコンボリューションによって、画素nのライン延長線上(図5における二点鎖線で示す直線142aの線上)における像強度分布a'(x)を求める。あるX座標上の位置(x)における画素nの検出強度i(x)は、画素nのライン延長線上に結像される被検体41の像強度分布a(x)と、-L/2≦x≦L/2の区間にて1、その他は0となる窓関数w(x)(図9参照)を用いて以下の(1)式で表される。
【0023】
(1)式に示すように、i(x)はa(x)とw(x)のコンボリューションである。X方向の空間周波数をu、i(x)、a(x)、w(x)のフーリエ変換をI(u)、A(u)、W(u)とすると、フーリエ変換の畳み込み定理により、I(u)は以下の(2)式で表される。
【0024】
(u)=A(u)W(u) …(2)式
従ってI(u)/W(u)にて得られるA(u)を逆フーリエ変換することにより、画素nの延長線上における像強度分布a'(x)を得ることができる。
【0025】
最後に、各画素n(1≦n≦N)の像強度分布a'(x)をY方向に配置することによって、図10に示すような2次元像が再構成される。
【0026】
図11は、デコンボリューション前後の強度分布、および、実際の強度分布の一例を示す図である。図11において、一点鎖線で示すプロファイル402は、デコンボリューション前、すなわち、1次元検出器41から出力された検出強度分布i(x)を示している。また、実線で示すプロファイル401は、デコンボリューション後の像強度分布a'(x)を示している。さらに、点線で示すプロファイル403は、実際の像強度分布である被検体41の像強度分布a(x)を示している。図11に示すように、像強度分布a(x)に対する検出強度分布i(x)のずれよりも、像強度分布a(x)に対する像強度分布a'(x)のずれのほうが小さい。すなわち、上述のようにデコンボリューションを行うことで、高精度に再構成像を取得することができる。
【0027】
ライン状の画素を持つ1次元検出器で被検体41を透過するX線強度を検出し、再構成像を取得する方法としては、被検体41を回転させながら1次元像強度分布を取得し2次元像を再構成する方法が、比較例としてあげられる。比較例においては、透過X線の強度を検出する際に、中心軸がずれないように被検体41を高精度に回転させる必要がある。回転時に中心軸がずれてしまうと、本来検出されるべき画素とは異なる画素でX線光子が検出されてしまう。画素位置に基づき像強度分布を積算するため、回転軸がずれてしまうと正しい積算ができず、再構成像の精度が低下してしまう。これに対し、実施形態の撮像装置は、被検体41を回転させず、ライン状の画素の長手方向に沿って被検体41を走査することで強度分布を取得し、デコンボリューションにより再構成像を取得しているので、比較例に対して高精度に再構成像を取得することができる。
【0028】
次に、サンプリング間隔Δtと認識できるX方向の最小サイズについて説明する。X方向の長さがUである観察対象を認識するためには、最終的に取得する2次元像のX方向の最小検出単位(分解能)はU以下である必要がある。超電導ストリップ(画素)142のD1(X)方向の長さLに対し、L≦Uの場合、ΔtをL/vとすると各サンプリングにて取得する検出領域が重複せず、デコンボリューションを行うことなく検出強度分布がそのまま分解能Lの像強度分布となり、サイズがUの観察対象を認識可能である。従って、本実施形態の撮像装置は、L>Uの場合、すなわち、観察対象のX方向の長さが、超電導ストリップ(画素)142の長さよりも短い場合において、高精度に再構成像を取得することができる。標本化定理によりサンプリング間隔ΔtはU/(2v)以下でなければならない。故に、ΔtはL/(2v)未満となる。
【0029】
デコンボリューションによって算出される像強度分布a'(x)のグリッド間隔vΔtは、X方向の分解能Pxに相当する。ΔtはL/(2v)未満であるので、PxはL/2未満となる。一方、Y方向の分解能Pyは、D2(Y)方向に配列した超電導ストリップ(画素)142のピッチLPに相当する。従って本手法により、X方向の分解能がL/2未満であり、Y方向の分解能が超電導ストリップ(画素)142のピッチLPに相当する2次元像を取得することが可能になる。
【0030】
また、認識できる観察対象のX方向の最小サイズは2vΔtである。Y方向に認識できる最小サイズはY方向の分解能と等しくPyであり、通常、認識できる最小サイズはXとY方向で同一であるため、この場合はΔtはPy/(2v)となる。
【0031】
なお、実施形態では、X線が被検体41に入射する時点での光学的な倍率と、X線が検出面141に入射する時点での光学的な倍率とが等しいものと仮定している。これらの倍率が異なる場合は、適宜係数を乗ずるなどして数値を変換してもよい。
【0032】
次に、ステージの走査領域411のX方向の長さTの設定について説明する。図8Aに示すように、検出強度分布i(x)が得られる範囲は、-T/2≦x<T/2である。図12は、デコンボリューション後における走査領域内外の強度分布を模式的に示した図である。デコンボリューションによって-T/2≦x<T/2の範囲の像強度分布a'(x)を求める際に、図12に示すように、x<-T/2、x≧T/2の区間ではa'(x)が繰り返し現れるとみなされ、a'(x)=a'(x+T)とみなされる。従ってa'(-T/2)=a'(T/2)となり、xが-T/2、T/2の近傍における像強度分布a'(x)は実際の像強度分布a(x)と必ずしも一致しない(図11参照)。従って、観察領域421のX方向の範囲が、実際の像強度分布との誤差が少ないと思われる-T/4<x<T/4の間に含まれるように、走査領域411のX方向の長さTを設定する必要がある。すなわち、走査領域411のX方向の長さTを、観察領域421のX方向の長さSの2倍以上に設定することが好ましい。
【0033】
ただし、観察領域421が、図3に示すように、半導体メモリセルのブロックBLKなどの周期構造を有する領域内に設定されている場合、x=-T/2またはT/2において周期構造が連続するように走査領域411を設定すると、a'n(-T/2)=a'n(T/2)となっても実際の像強度分布との誤差が小さくなるため、取得した2次元像にて誤差の少ない範囲を広くすることが可能になる。すなわち、走査領域411のX方向の長さTは、観察領域421のX方向の長さS以上であればよく、2倍以上に設定しなくてもよい。
【0034】
このように、周期構造を観察する場合、走査領域411の境界と周期構造の境界とを一致させることで、再構成された2次元像の精度をよりいっそう高めることができる。なお、2周期以上の周期構造が含まれるように、走査領域411を設定してもよい。例えば、図3に示す一例の場合、走査領域411に2つのブロックBLKが含まれるように設定してもよい。
【0035】
次に、サンプリング回数について説明する。サンプリング回数はT/(vΔt)にて表され、i(x)やI(u)、A(u)、a'(x)の離散データの数はサンプリング回数と同一である。i(x)からI(u)へのフーリエ変換によりサンプリング回数と同じ数の空間周波数成分に分けられるが、サンプリング回数が少ないとi(x)にて実際に存在する空間周波数を欠落させ、a'(x)にてa(x)との差異を大きくさせる可能性がある。このため、サンプリング回数は多い程望ましい。具体的には、Tはサンプリング間隔にて走査する距離(vΔt)の100倍以上であることが望ましい。一方で、サンプリング回数が多すぎると1回のサンプリングで検出される強度が少なくなり、検出される強度におけるノイズ成分(例えば、ショットノイズなど)の占める割合が多くなる。従って、サンプリング回数は、検出強度のノイズが許容できるサンプリング回数以下である必要がある。
【0036】
次に、実施形態の撮像装置を用いた画像生成方法について説明する。図13は、第1実施形態における画像生成方法の一例を説明するフローチャートである。なお、被検体41をステージ22に載置してから観察(画像生成)を開始する。
【0037】
まず、ステージ22の移動速度vと、サンプリング間隔Δtとを設定する(S1)。そして、検出開始位置(-T/2)と検出終了位置(T/2)とを設定する(S2)。具体的には、被検体41上において、検出面141の中心147に入射されるX線が被検体41を透過するX座標上の位置(=x)について、検出開始時点における位置と、検出終了時点における位置とを設定する。S2は、走査領域411の設定ともいえる。S2における走査領域411の設定は、上述したように、観察領域421のX方向の長さSや、被検体41の構造(周期構造であるか否か)などを考慮して行われる。
【0038】
続いて、S2で設定した検出開始位置(-2/T)にxが一致するように、ステージ22の位置を調整し(S3)、光源11から被検体41にX線を照射して、1次元検出器41から出力された検出強度を取得する(S4)。
【0039】
xを、現在の座標からグリッド間隔であるvΔtだけX方向正側に移動させ(S5)、移動後のxの位置がS2で設定された検出終了位置(T/2)を超えていない場合(S6、NO)、S4に戻って移動後の位置における検出強度を取得する。一方、移動後のxの位置がS2で設定された検出終了位置(T/2)を超えている場合(S6、YES)、設定された走査領域411における強度の取得が完了しているため、S7に進む。
【0040】
S7では、S4で取得した検出強度分布i(x)を用いてデコンボリューションを行い、像強度分布a'(x)を取得する。最後に、各画素n(1≦n≦N)の像強度分布a'(x)をY方向に配置して、2次元像を再構成し(S8)、第1実施形態の画像生成方法に関する一連の手順を終了する。
【0041】
このように、実施形態の撮像装置によれば、長さLのライン状の画素である超電導ストリップ142による検出強度分布から、解像度がL以下である像強度分布を算出することが可能になる。従って1次元検出器14を走査することによってX方向の解像度が画素のライン長さL以下であり、Y方向の解像度がライン配列ピッチLPである、高精度な2次元像を取得することができる。また、実施形態の撮像装置によれば、1次元検出器14に配置された超電導ストリップ142の長手方向に沿って被検体41を走査させながら透過X線の強度分布を取得し、デコンボリューションにより再構成像を取得している。強度分布の取得において、被検体41を回転させる必要がないので、被検体41を走査時の位置ずれ(回転軸のずれ)が発生しないため、高精度に再構成像を生成することができる。また、被検体41を回転走査する必要がないので、ステージ22を駆動する機構を簡素化することができ、装置の小型化やコストの低減も可能である。
【0042】
以上の実施形態は透過X線顕微鏡を想定したものであるが、被検体41の像を取得するものであれば何でもよい。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態の画像生成方法は、デコンボリューション時に用いる検出強度分布i(x)が上述した第1実施形態と異なる。撮像装置、及び、画像形成装置の構成については、上述した第1実施形態と同様であるので説明を省略し、以下、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0043】
上述した第1実施形態では、検出強度分布i(x)が得られる範囲は、-T/2≦x<T/2であるため、-T/2≦x<T/2の範囲の像強度分布a'n(x)を求める際に、x<-T/2、x≧T/2の区間ではa'n(x)が繰り返し現れるとみなしてデコンボリューションを行う。これに対し、本実施形態では、被検体41に相当する半導体デバイスの設計データと、デバイスを構成する材料の光学定数を用いたシミュレーションにより、x<-T/2、x≧T/2の区間について、予め像強度分布を取得する。以下、第2実施形態の画像生成方法について、図14を用いて説明する。
【0044】
図14は、第2実施形態における走査領域内外の強度分布を模式的に示した図である。シミュレーションにより得られた像強度分布と、(1)式とを用いて、-αT/2<x<-T/2におけるシミュレート検出強度分布501と、T/2<x<αT/2の範囲におけるシミュレート検出強度分布502を取得する。ここでαは1以上の値とする。-T/2<x<T/2の範囲は、1次元検出器14から検出される検出強度分布503を取得する。シミュレート検出強度分布501、502と、実際に1次元検出器14によって得られる検出強度分布503を合成することによって、-αT/2<x<αT/2の範囲における強度分布i(x)を取得する。このようにして生成した強度分布i(x)を用い、第1実施形態と同様のデコンボリューションを行うことで、像強度分布a'(x)を取得する。各画素n(1≦n≦N)の像強度分布a'(x)をY方向に配置することによって、2次元像が再構成される。
【0045】
このように、実施形態の画像生成方法によれば、x<-T/2、x≧T/2の区間について、被検体41の構造や材料に基づくシミュレーションにより生成した検出強度分布を用いてデコンボリューションを行う。このため、xが-T/2、T/2の近傍における像強度分布a'(x)における、実際の像強度分布a(x)との誤差が小さくなる。故に、より高精度な再構成像を取得することができる。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、一例として示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
11…光源、12…照明ミラー、13…結像ミラー、14…1次元検出器、22…ステージ、23…ステージ駆動部、31…制御解析部、41…被検体、141…検出面、142…画素(超電導ストリップ)、411…走査領域、421…観察領域、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14