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特開2024-43972光ファイバケーブルの製造方法および製造装置
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  • 特開-光ファイバケーブルの製造方法および製造装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043972
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】光ファイバケーブルの製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
G02B6/44 391
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149239
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】川井 健司
(72)【発明者】
【氏名】荒井 雄太
(72)【発明者】
【氏名】西川 二郎
【テーマコード(参考)】
2H201
【Fターム(参考)】
2H201AX01
2H201BB06
2H201BB42
2H201BB75
2H201DD13
2H201MM02
2H201MM31
(57)【要約】
【課題】光ファイバケーブルの外形異常を検知可能な、光ファイバケーブルの製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【解決手段】光ファイバケーブルの製造方法は、ケーブルコアを有する光ファイバケーブルの製造方法であって、前記ケーブルコアの周囲に樹脂を押出して、外被となる前記樹脂を塗布する塗布工程と、前記樹脂が塗布された前記光ファイバケーブルの外径を測定する第1測定工程と、前記第1測定工程後、前記樹脂を固化して前記外被を形成する外被形成工程と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルコアを有する光ファイバケーブルの製造方法であって、
前記ケーブルコアの周囲に樹脂を押出して、外被となる前記樹脂を塗布する塗布工程と、
前記樹脂が塗布された前記光ファイバケーブルの外径を測定する第1測定工程と、
前記第1測定工程後、前記樹脂を固化して前記外被を形成する外被形成工程と、を含む、光ファイバケーブルの製造方法。
【請求項2】
前記塗布工程は、押出部により前記樹脂を塗布し、
前記第1測定工程は、第1測定部により前記外径を測定し、
前記第1測定部は、前記光ファイバケーブルの走行方向において、前記押出部から200mm以上400mm以下の下流に設けられている、請求項1に記載の光ファイバケーブルの製造方法。
【請求項3】
前記外被形成工程後、前記外被の厚みを測定する第2測定工程を更に含む、請求項1に記載の光ファイバケーブルの製造方法。
【請求項4】
前記外被形成工程は、
前記光ファイバケーブルをサイジングダイスに入線させる入線工程と、
前記サイジングダイス内の少なくとも一部の領域を陰圧にし、前記領域に前記光ファイバケーブルを通過させるサイジング工程と、
前記領域を通過した前記光ファイバケーブルの前記樹脂を冷却する冷却工程と、を含む請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光ファイバケーブルの製造方法。
【請求項5】
ケーブルコアを有する光ファイバケーブルの製造装置であって、
前記ケーブルコアの周囲に樹脂を押出して、外被となる前記樹脂を塗布する押出部と、
前記樹脂が塗布された前記光ファイバケーブルの外径を測定する第1測定部と、
前記第1測定部より下流に設けられ、前記樹脂を固化して前記外被を形成する外被形成部と、を備える、光ファイバケーブルの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光ファイバケーブルの製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ルースチューブ型光ファイバケーブルの製造装置および製造方法として、水槽で冷却後に外径測定器でケーブルの外径を測定することを開示している。また、特許文献2は、光ファイバを収納するチューブの平均長円率を、真空サイジング法によって改善させる、光ファイバチューブの製造方法を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/132376号
【特許文献2】特表2006-526793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光ファイバケーブルの外被は、高温で溶融状態にある樹脂をクロスヘッドから押し出してケーブルコア上に塗布させ、その後に冷却設備で固めることで形成される。ここで、溶融状態にある樹脂内に気泡があると、樹脂がケーブルコアに均一に塗布されない場合がある。また光ファイバケーブルは通常一定速度でクロスヘッドから押し出されるが、樹脂の粘性によって押出速度が一定にならず、樹脂の塗布量が変動することもある。このような気泡や塗布量の変動により、光ファイバケーブルの外形が、本来意図していた丸い形状とならず、変形することがあった。
【0005】
このような光ファイバケーブルの外形の変形を検知するため、特許文献1に開示されているように、冷却設備の下流に設けられ、光ファイバケーブルの外径を測定する測定部を備えた光ファイバケーブルの製造装置がある。しかしながら、冷却設備を通過後、樹脂が固化した光ファイバケーブルの外径を測定しても、外形が変形する原因が、樹脂の塗布工程にあるのか、樹脂を固化する工程にあるのか、特定しにくい。仮に、上述した真空サイジング法を用いた場合、光ファイバケーブルの外形は丸い形状となり、外形の変形を抑制することはできる。しかしながら外形としては異常がないため、冷却設備を通過後に外径を測定しても、気泡や塗布量の変動の影響により、外被の厚みが不均一となっていることを検知できない可能性がある。
【0006】
外形が歪んでいたり、外被の厚みが不均一な光ファイバケーブルでは、径方向の応力が周方向で不均一であるため、破損強度が低い。またケーブル内において、光ファイバの実装密度が一部高くなることで、光ファイバに応力集中を伴う高応力がかかって、伝送特性が低下することがあった。
【0007】
本開示は、光ファイバケーブルの外形異常を検知可能な、光ファイバケーブルの製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る光ファイバケーブルの製造方法は、
ケーブルコアを有する光ファイバケーブルの製造方法であって、
前記ケーブルコアの周囲に樹脂を押出して、外被となる前記樹脂を塗布する塗布工程と、
前記樹脂が塗布された前記光ファイバケーブルの外径を測定する第1測定工程と、
前記第1測定工程後、前記樹脂を固化して前記外被を形成する外被形成工程と、を含む。
【0009】
本開示の一態様に係る光ファイバケーブルの製造装置は、
ケーブルコアを有する光ファイバケーブルの製造装置であって、
前記ケーブルコアの周囲に樹脂を押出して、外被となる前記樹脂を塗布する押出部と、
前記樹脂が塗布された前記光ファイバケーブルの外径を測定する第1測定部と、
前記第1測定部より下流に設けられ、前記樹脂を固化して前記外被を形成する外被形成部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、光ファイバケーブルの外形異常を検知可能な、光ファイバケーブルの製造方法および製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示の実施形態に係る光ファイバケーブルの製造装置を示す概略構成図である。
図2図2は、本開示の変形例1に係る光ファイバケーブルの製造装置を示す概略構成図である。
図3図3は、本開示の変形例2に係る光ファイバケーブルの製造装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本開示の一形態の説明)
まず本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示の一態様に係る光ファイバケーブルの製造方法は、
ケーブルコアを有する光ファイバケーブルの製造方法であって、
前記ケーブルコアの周囲に樹脂を押出して、外被となる前記樹脂を塗布する塗布工程と、
前記樹脂が塗布された前記光ファイバケーブルの外径を測定する第1測定工程と、
前記第1測定工程後、前記樹脂を固化して前記外被を形成する外被形成工程と、を含む。
【0013】
本開示によれば、樹脂の塗布後であって、樹脂が固化して外被が形成される前に、光ファイバケーブルの外径が測定される。このため、樹脂内の気泡や塗布量の変動による、光ファイバケーブルの外形の異常を、樹脂が固化する前に検知することができる。さらに本開示によれば、外形が変形する原因を特定することが容易となる。これにより、外形の異常または外被の厚みの不均一に起因する、光ファイバケーブルの破損や伝送損失の低下を抑制することができる。
【0014】
なお外形の異常を検知した場合、ケーブル上における外形異常部の位置に応じて、光ファイバケーブルの部分的廃棄を行ったり、形成した被覆を全て剥がし、再度被覆し直したりすることで、外形が歪ではない光ファイバケーブルや被覆厚が不均一ではない光ファイバケーブルを製造することができる。
【0015】
(2)上記(1)において、前記塗布工程は、押出部により前記樹脂を塗布し、
前記第1測定工程は、第1測定部により前記外径を測定し、
前記第1測定部は、前記光ファイバケーブルの走行方向において、前記押出部から200mm以上400mm以下の下流に設けられていてもよい。
【0016】
本開示によれば、第1測定部は、光ファイバケーブルの走行方向において、押出部から200mm以上の下流に設けられている。このため、押出部により塗布された高温の樹脂により、第1測定部が劣化あるいは損傷することを防ぐことができる。また、第1測定部は、光ファイバケーブルの走行方向において、押出部から400mm以下の下流に設けられている。仮に第1測定部が押出部から遠く離れて設けられる場合、押出部から押し出された、溶融状態の樹脂が重力により下方に変形してしまうこともある。しかしながら本開示よれば、このような樹脂の変形が発生する前に、外径を測定することができる。
【0017】
(3)上記(1)または(2)の製造方法は、前記外被形成工程後、前記外被の厚みを測定する第2測定工程を更に含んでもよい。
ケーブルコアに被覆された樹脂は、固化すると収縮する。また、外形が歪んでいたり、気泡を含んでいたりすると、固化する過程で、外被の厚みが変動することがある。また、光ファイバケーブルの外形は丸い形状になるものの、外被の厚みが不均一である場合もある。このような場合、表面的には外形に異常が見られない。本開示によれば、固化する前に外径を測定することに加えて、固化後に外被の厚みを測定しているので、表面的には外形に異常が無い場合でも、外被の厚みの異常を、さらに正確に検知することができる。外被の厚みの一部が薄くなることで、光ファイバ心線へかかる側圧が部分的に集中することにより、伝送特性が低下することがある。しかしながら本開示の製造方法は、固化した外被の厚みを測定するため、外被形成工程における外被の厚みの異常を検知することができ、光ファイバへの側圧集中を避けることができる。
【0018】
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、
前記外被形成工程は、
前記光ファイバケーブルをサイジングダイスに入線させる入線工程と、
前記サイジングダイス内の少なくとも一部の領域を陰圧にし、前記領域に前記光ファイバケーブルを通過させるサイジング工程と、
前記領域を通過した前記光ファイバケーブルの前記樹脂を冷却する冷却工程と、を含んでもよい。
【0019】
ケーブルコアが角形状や楕円形上の場合、その上に形成される外被も同様の形状となって、光ファイバケーブルの外形が、本来意図していた、丸い形状とはならないことがある。しかしながら本開示によれば、外被形成工程が、光ファイバケーブルをサイジングダイスに入線させる入線工程と、サイジングダイス内の少なくとも一部の領域を陰圧にし、当該領域に光ファイバケーブルを通過させる、サイジング工程と、当該領域を通過した光ファイバケーブルの樹脂を冷却する冷却工程と、を含むため、光ファイバケーブルの外形を丸い形状とすることができる。
【0020】
なお、樹脂内の気泡や塗布量の変動により、外形が歪な状態のまま光ファイバケーブルがサイジングダイス内を通過した場合、光ファイバケーブルの外形は丸い形状となるが、外被の厚みが不均一となることがある。外被の厚みの不均一性は、光ファイバケーブルの曲げ方向に異方性を生じさせ、空気圧送などで光ファイバケーブルを布設する場合、光ファイバケーブルが座屈することがある。しかしながら本開示によれば、光ファイバケーブルをサイジングダイスへ入線させる入線工程の前に、光ファイバケーブルの外径が測定されるため、外被形成後には外形に異常が無い場合でも、外被の厚みの不均一性などの異常を検知することができる。
【0021】
(5)本開示の一態様に係る光ファイバケーブルの製造装置は、
ケーブルコアを有する光ファイバケーブルの製造装置であって、
前記ケーブルコアの周囲に樹脂を押出して、外被となる前記樹脂を塗布する押出部と、
前記樹脂が塗布された前記光ファイバケーブルの外径を測定する第1測定部と、
前記第1測定部より下流に設けられ、前記樹脂を固化して前記外被を形成する外被形成部と、を備える。
【0022】
本開示によれば、樹脂の塗布後であって、樹脂が固化して外被が形成される前に、第1測定部が光ファイバケーブルの外径を測定する。このため、樹脂内の気泡や塗布量の変動による、光ファイバケーブルの外形の異常を、樹脂が固化する前に検知することができる。さらに本開示によれば、外形変形の原因を特定することが容易となる。これにより、外形の異常または外被の厚みの不均一に起因する、光ファイバケーブルの破損や伝送損失の低下を抑制することができる。
【0023】
(本開示の一形態の詳細)
以下、本開示に係る光ファイバケーブルの製造方法および製造装置の実施の形態の例を、図面を参照しつつ説明する。以下の説明では、異なる図面であっても同一又は相当の要素には同一の符号又は名称を付し、重複する説明を適宜省略する。また、各図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上のものであって、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0024】
(光ファイバケーブルの製造装置)
まず、図1を参照して、本実施形態に係る光ファイバケーブルの製造装置について説明する。図1は、本開示の一実施形態に係る光ファイバケーブル102の製造装置1を示す概略構成図である。図1に示すように、製造装置1は、供給ドラム10と、繰出機20と、押出機30と、光学センサ80と、第1の水槽40と、引取機60と、巻取ドラム70と、を備える。
【0025】
供給ドラム10は、光ファイバケーブル102の内部材であるケーブルコア101を供給する。ケーブルコア101は、内部に複数の光ファイバ心線を含んでいる。ケーブルコア101は、例えば、スロットロッド内に複数の光ファイバ心線が収納されたスロット型でもよいし、スロットロッドを有さないスロットレス型でもよい。ケーブルコア101に含まれる複数の光ファイバ心線は、例えば、複数の光ファイバテープ心線として構成されていてもよい。光ファイバテープ心線は、複数の光ファイバ心線が並列に配置されてテープ樹脂で被覆された構造を有するものである。光ファイバテープ心線は、例えば、並列に配置された複数の光ファイバ心線のうち隣接する光ファイバ心線が軸方向に沿って間欠的にテープ樹脂で接着された間欠接着型の光ファイバテープ心線であってもよい。ケーブルコア101の外周は、例えば、押さえ巻きテープで巻かれている。
【0026】
繰出機20は、キャプスタンベルトを備えている。繰出機20は、例えば、制御装置(不図示)からの制御信号に基づいて、押出機30へのケーブルコア101の繰り出し速度を制御する。
【0027】
押出機30は、ケーブルコア101の周囲に溶融樹脂を押出して、外被となる溶融樹脂を塗布する装置である。溶融樹脂としては、例えば、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂を特に制限なく用いることができる。溶融樹脂は、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)であってもよい。押出機30は、クロスヘッド31を備えている。押出機30は、熱可塑性樹脂を加熱して溶融樹脂とし、溶融樹脂をクロスヘッド31に供給する。繰出機20から送られたケーブルコア101の周囲には、クロスヘッド31において溶融樹脂が塗布される。押出機30は押出部の一例である。
【0028】
本実施形態のクロスヘッド31は、引き落としにより溶融樹脂を押出している。クロスヘッド31は、下流に設けられ、中央にケーブルコア101を通過させるダイス孔を有するダイスと、上流に設けられ、中央にケーブルコア101を通過させ、ダイス孔と同心上に設けられるポイント孔を有するポイントと、ダイスとポイントの間に設けられ、溶融樹脂を供給する流路とを有する。ケーブルコア101がダイス孔及びポイント孔を通過する際に、流路から供給された溶融樹脂がケーブルコア101に塗布される。このとき、流路の吐出口から押し出された溶融樹脂は、すぐにはケーブルコア101には接触せず、徐々に細くなって、クロスヘッド31の出口から離れた地点でケーブルコア101に接触して塗布され、光ファイバケーブル102が形成される。溶融樹脂が塗布された光ファイバケーブル102は、光学センサ80へと送られる。
【0029】
光学センサ80は、溶融樹脂が塗布された光ファイバケーブル102の外径を測定するよう構成されている。光学センサ80は、例えばレーザ式光学センサである。光学センサ80は、例えばU字形状を有しており、第1端部に設けられ、光を出力する発光部81と、第2端部に設けられ、発光部81から出力された光を受光する受光部82と、を有する。光学センサ80は、発光部81と受光部82の間を走行する光ファイバケーブル102へ向かって、発光部81から光を出力する。出力された光の一部は光ファイバケーブル102によって遮られるため、発光部81から出力された光は、その光量が減少した状態で受光部82に到達する。光学センサ80は、光ファイバケーブル102によって遮られて受光されない光の範囲(光ファイバケーブル102の影の大きさ)に基づき、光ファイバケーブル102の外径を測定する。光学センサ80は第1測定部の一例である。
【0030】
光学センサ80は、光ファイバケーブル102の走行方向において、押出機30から200mm以上400mm以下の下流に設けられている。言い換えると、押出機30の下流端部から光学センサ80の上流端部までの距離dは200mm以上400mm以下である。なお、本明細書において、「上流側」とは、光ファイバケーブル102の走行方向の上流側のことをいう。また、本明細書において、「下流側」とは、光ファイバケーブル102の走行方向の下流側のことをいう。光学センサ80が外径を測定した後、光ファイバケーブル102は、第1の水槽40へと送られる。
【0031】
第1の水槽40は、溶融樹脂を冷却することで固化して、外被を形成する。第1の水槽40内の圧力は、例えば、大気圧と同程度である。押出機30によって塗布された樹脂は高温で溶融状態にあるが、光ファイバケーブル102が第1の水槽40内を通過することで、樹脂の温度は下がり、樹脂は固化する。この固化した樹脂が、光ファイバケーブル102の外被となる。言い換えると、第1の水槽40は、光ファイバケーブル102の樹脂を冷却することで、外被を形成している。なお、本実施形態の第1の水槽40は、媒体として水を含んでいるが、水以外の媒体を含んでもよい。第1の水槽40は、外被形成部の一例である。
【0032】
引取機60は、キャプスタンベルトを備えている。引取機60は、例えば、制御装置(不図示)からの制御信号に基づいて、巻取ドラム70への光ファイバケーブル102の巻き取り速度を制御する。巻取ドラム70は、光ファイバケーブル102を巻き取るドラムである。
【0033】
(光ファイバケーブルの製造方法)
本開示の一実施形態に係る光ファイバケーブルの製造方法として、上述の製造装置1を用いた例について説明する。本実施形態に係る光ファイバケーブル102の製造方法は、例えば、塗布工程と、第1測定工程と、第1通過工程と、を含む。本実施形態に係る光ファイバケーブル102の製造方法において、光ファイバケーブルの線速は、特に制限はされないが、例えば、5m/分以上40m/分以下であることが好ましい。
【0034】
塗布工程は、押出機30により、光ファイバケーブル102の内部材であるケーブルコア101の周囲に溶融樹脂を押出して、外被となる溶融樹脂で塗布する工程である。塗布工程において、押出温度(溶融樹脂の樹脂温度)は、例えば、170℃以上210℃以下であることが好ましい。
【0035】
第1測定工程は、光学センサ80により、溶融樹脂が塗布された光ファイバケーブル102の外径を測定する工程である。例えば、製造装置1が、外径が250μmである光ファイバ心線を864心有し、外径が20mmである光ファイバケーブル102を製造する場合において、光学センサ80による実測値が、光学センサ80により測定される測定値の平均と比較して1.6mm以上大きい、または小さい場合、制御装置(不図示)は、光ファイバケーブル102の外形に異常があると判断してもよい。例えば、製造装置1が、外径が250μmである光ファイバ心線を432心有し、外径が10mmである光ファイバケーブル102を製造する場合において、光学センサ80による実測値が、光学センサ80により測定される測定値の平均と比較して0.8mm以上大きい、または小さい場合、制御装置(不図示)は、光ファイバケーブル102の外形に異常があると判断してもよい。
【0036】
第1通過工程は、第1測定工程の後に、光ファイバケーブル102を第1の水槽40内に通過させ、樹脂を固化して外被を形成する工程である。第1の水槽40内の圧力は、大気圧と同程度にする。第1通過工程において、第1の水槽40内の温度は、例えば、15℃以上50℃以下にすることが好ましい。第1通過工程は、外被形成工程の一例である。
【0037】
以上説明したように、本実施形態では、溶融樹脂の塗布後であって、溶融樹脂が固化して外被が形成される前に、光学センサ80により光ファイバケーブル102の外径が測定される。押出機30では、溶融樹脂内において気泡が発生したり、供給する溶融樹脂の塗布量が変動したりする場合があるが、本実施形態によれば、溶融樹脂が固化する前に、光ファイバケーブル102の外形の異常を検知することができる。さらに本実施形態によれば、溶融樹脂が固化する前に光ファイバケーブル102の外径を測定するため、外形変形の原因が塗布工程であると特定することがより容易となる。これにより、塗布工程中に起こり得る、外形の異常または外被の厚みの不均一に起因する、光ファイバケーブルの破損や伝送損失の低下を抑制することができる。
【0038】
なお本実施形態では、光ファイバケーブル102の外形の異常が検知された場合には、ケーブル上における外形異常部の位置に応じて、光ファイバケーブルの製造のやり方を変えてもよい。例えば外形異常部が、製造する光ファイバケーブルの全長のうち、余長部分などの、比較的端部に近い位置にある場合には、全長製造した後に、当該外形異常部をケーブル全体から部分的に廃棄してもよい。例えば外形異常部が、製造する光ファイバケーブルの全長のうち、比較的中央に近い位置にある場合には、全長製造した後に、形成した全ての外被をケーブルコア101から剥がし、再度外被を形成し直してもよい。このような方法により本実施形態では、外形が歪ではない光ファイバケーブルや、被覆厚が不均一ではない光ファイバケーブルを製造することができる。
【0039】
本実施形態では、光学センサ80が、光ファイバケーブルの走行方向において、押出機30から200mm以上の下流に設けられている。仮に光学センサ80が押出機30の近くに設けられる場合、押出機30において塗布される高温の溶融樹脂により、光学センサ80が劣化あるいは損傷することがある。しかしながら本実施形態では、光学センサ80は押出機30に近すぎない位置に設けられている、このような光学センサ80の劣化あるいは損傷を防ぐことができる。
【0040】
本実施形態では、光学センサ80が、光ファイバケーブルの走行方向において、押出機30から400mm以下の下流に設けられている。仮に光学センサ80が押出機30から遠く離れて設けられる場合、押出機30において塗布された、溶融状態の樹脂が重力によって下方に変形してしまうことがある。しかしながら本実施形態では、光学センサ80が押出機30から遠すぎない位置に設けられているため、重力による溶融樹脂の変形が起こる前に、光ファイバケーブル102の外径を測定することができる。
【0041】
(光ファイバケーブルの製造装置の変形例1)
製造装置1は、光学センサ80に加えて、第2の水槽50と、光ファイバケーブル102の外被の厚みを測定する肉厚センサ90と、を有してもよい。図2は、変形例1に係る光ファイバケーブル102の製造装置1Aを示す概略構成図である。図2に示す構成のうち、図1に示した構成と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0042】
図2に示すように、製造装置1Aは、供給ドラム10と、繰出機20と、押出機30と、光学センサ80と、第1の水槽40と、引取機60と、巻取ドラム70に加えて、第2の水槽50と、肉厚センサ90を備える。
【0043】
第2の水槽50は、第1の水槽40の下流に設けられている。第2の水槽50内の圧力は、例えば、大気圧と同程度である。第2の水槽50は、光ファイバケーブル102の外被をさらに冷却するよう設けられている。第2の水槽50は、水ではなく、水以外の冷媒を含むように構成してもよい。
【0044】
肉厚センサ90は、光ファイバケーブル102の外被の厚みを測定するよう構成されている。肉厚センサ90は、例えば超音波センサである。肉厚センサ90は、第2の水槽50の上方に設けられている。肉厚センサ90は、第2の水槽50の水中を通過する光ファイバケーブル102に向かって超音波を発信する。発信された超音波の一部は、光ファイバケーブル102の外被の外面で反射し、出力された超音波の他の一部は、光ファイバケーブル102の外被の内面で反射する。反射されたこれらの超音波を受信することで、肉厚センサ90は、二つの超音波の受光タイミングの差に基づき、光ファイバケーブル102の外被の厚みを測定する。肉厚センサ90は第2測定部の一例である。
【0045】
(光ファイバケーブルの製造方法の変形例1)
製造装置1Aを用いた、光ファイバケーブル102の製造方法は、第2通過工程と、第2測定工程を含む。第2通過工程は、第1通過工程の後に、光ファイバケーブル102を、第2の水槽50内を通過させる工程である。第2の水槽50内の圧力は、大気圧と同程度にする。また、第2の水槽50内の温度は、例えば、15℃以上50℃以下とすることが好ましい。第2の水槽50内の温度は、第1の水槽40内の温度と同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0046】
第2測定工程は、第1通過工程の後、第2の水槽50を通過する際に、肉厚センサ90により、光ファイバケーブル102の外被の厚みを測定する工程である。例えば、製造装置1Aが、外径が20mmであって、外被の厚みが1.5mmである光ファイバケーブルを製造する場合において、肉厚センサ90による実測値が、肉厚センサ90により測定される測定値の平均と比較して0.5mm以上大きい、または小さい場合、制御装置(不図示)は、光ファイバケーブル102の外被の厚みに異常があると判断してもよい。例えば、製造装置1Aが、外径が10mmであって、外被の厚みが1.3mmである光ファイバケーブル102を製造する場合において、肉厚センサ90による実測値が、肉厚センサ90により測定される測定値の平均と比較して0.5mm以上大きい、または小さい場合、制御装置(不図示)は、光ファイバケーブル102の外被の厚みに異常があると判断してもよい。
【0047】
ここで、ケーブルコア101に塗布された溶融樹脂は、第1の水槽40や第2の水槽50を通過することで固化し、収縮する。本変形例では、第1通過工程および第2通過工程が、外被形成工程の一例である。塗布工程で溶融樹脂が気泡を含んでいたり、塗布工程で光ファイバケーブル102の外形が歪んだりすると、固化する過程で、外被の厚みが変動することがある。また、光ファイバケーブル102の外形は丸いものの、外被の厚みが不均一である場合もある。このような場合、表面的には外形に異常が見られない。外被の厚みの一部が薄くなると、光ファイバ心線へかかる側圧が部分的に集中することにより、伝送特性が低下することがある。
【0048】
しかしながら本開示によれば、溶融樹脂が固化する前に外径を測定することに加えて、肉厚センサ90により、溶融樹脂の固化後に、光ファイバケーブル102の外被の厚みを測定しているため、表面的には外形に異常が無い場合でも、外被の厚みの異常を、さらに正確に検知することができる。このため光ファイバケーブル102内に収納されている光ファイバ心線への側圧集中を避けることができる。
【0049】
(光ファイバケーブルの製造装置の変形例2)
製造装置1または製造装置1Aは、サイジングダイス43を有してもよい。図3は、変形例2に係る光ファイバケーブル102の製造装置1Bを示す概略構成図である。図3に示す構成のうち、図1及び図2に示した構成と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0050】
図3に示すように、製造装置1Bの第1の水槽40は、光ファイバケーブル102のサイジングのために設けられたサイジング槽である。図3に示すように、第1の水槽40は、冷却部41と、入線口42と、サイジングダイス43と、排気管44と、真空ポンプ45と、を備えている。
【0051】
図3の例では、冷却部41は、入線口42の上流側に設けられている。冷却部41は、入線口42の上流側ではなく、入線口42に設けられてもよい。冷却部41には、例えばシャワー孔(不図示)や、徐冷水槽(不図示)が設けられている。シャワー孔は、クロスヘッド31で被覆された外被を予備冷却するための水等を、サイジングダイス43に入線させる前に、外被へ向けて噴出させるものである。徐冷水槽は、光ファイバケーブル102の進行方向における長さが比較的短い水槽を有しており、光ファイバケーブル102を、サイジングダイス43に入線させる前に、水槽内に通過させるものである。押出機30により形成された外被の粘性抵抗は、冷却前では比較的高いため、光ファイバケーブル102が入線口42やサイジングダイス43に入線される際に、外被の形状が乱れたり、外被がケーブルコア101の外周から剥がれたりして、ケーブルの外観を損なってしまうことがある。しかしながら、シャワー孔や徐冷水槽の水によって外被を予備的にある程度固めることで、このような外被の形状の乱れを低減することができる。
【0052】
排気管44は、第1の水槽40内の空気を外部へと導く管である。真空ポンプ45は、排気管44上に設けられている。真空ポンプ45は、排気管44を通して第1の水槽40内の気体を第1の水槽40の外部へと排出し、第1の水槽40内を陰圧にする。
【0053】
入線口42は、第1の水槽40への入口であり、サイジングダイス43への入口でもある。クロスヘッド31において外被が形成された光ファイバケーブル102は、入線口42から第1の水槽40の内部に配置されたサイジングダイス43へと入線する。
【0054】
サイジングダイス43は、光ファイバケーブル102を所望の形状および大きさにサイジングするためのダイスである。本実施形態において、サイジングダイス43は円筒状であり、内周の形状は真円状である。サイジングダイス43の内径は、光ファイバケーブル102に所望する外径と等しい。なお、本明細書における「等しい」とは、厳密に等しい場合だけではなく、両者の差が十分に小さく、実質的に等しいと評価される場合をも含む。
【0055】
サイジングダイス43は、陰圧にされた第1の水槽40内に配置されているため、サイジングダイス43の内側の領域は陰圧である。サイジングダイス43には、複数の孔(不図示)が設けられている。複数の孔は、例えば、サイジングダイス43の周方向および軸方向に沿って所定の間隔で設けられている。複数の孔を設けることによって、サイジングダイス43内を光ファイバケーブル102が通過している際においても、サイジングダイス43の内側の領域を第1の水槽40内と同じ圧力に保ちやすくなる。第2の水槽50は、第1の水槽40の下流に設けられ、光ファイバケーブル102の外被をさらに冷却する。
【0056】
(光ファイバケーブルの製造方法の変形例2)
製造装置1Bを用いた、光ファイバケーブル102の製造方法の第1通過工程は、予備冷却工程と、入線工程と、サイジング工程と、冷却工程と、を含む。
【0057】
予備冷却工程は、光ファイバケーブル102がサイジングダイス43に入線する前に、冷却部41によって光ファイバケーブル102の外被を予備冷却する工程である。本実施形態の予備冷却工程では、例えば徐冷水槽や、シャワー孔からの水で光ファイバケーブル102の外被が冷却される。入線工程は、予備冷却工程の後に、外被が塗布された光ファイバケーブル102を入線口42へと導いてサイジングダイス43に入線させる工程である。
【0058】
サイジング工程は、サイジングダイス43内の少なくとも一部の領域を陰圧にし、該領域に光ファイバケーブル102を通過させる工程である。本実施形態では、真空ポンプ45によって陰圧にした第1の水槽40内にサイジングダイス43を配置しているため、サイジングダイス43内の全領域が陰圧になっている。サイジングダイス43内の圧力は、例えば、-60kPa以上-5kPa以下にすることが好ましい。なお、サイジングダイス43内の圧力は、第1の水槽40内の圧力と等しいため、第1の水槽40内の圧力を制御することにより、サイジングダイス43内の圧力も制御できる。
【0059】
第1の水槽40内の温度は、例えば、15℃以上50℃以下にすることが好ましい。サイジングダイス43内の温度は、第1の水槽40内の温度と等しくなる。また、塗布工程において溶融樹脂が塗布された後、第1通過工程において陰圧の領域内に光ファイバケーブル102が入るまでの時間は、0秒より大きく10秒以下であることが好ましい。この時間は、例えば、クロスヘッド31と第1の水槽40のとの間の距離や、光ファイバケーブル102の線速を調整することによって制御できる。
【0060】
サイジングダイス43内が陰圧であるため、光ファイバケーブル102内の圧力は、光ファイバケーブル102の周囲の圧力よりも高くなっている。そのため、光ファイバケーブル102がサイジングダイス43内を通過する際、光ファイバケーブル102内の空気は膨張し、外被は径方向外側へと押し広げられ、外被120がサイジングダイス43の内壁と接するようになる。よって、光ファイバケーブル102の形状は、サイジングダイス43内に入線する前に歪な円状であったとしても、第1通過工程を経ることによって、サイジングダイス43の内周によって規定される真円状となる。また、光ファイバケーブル102の外径は、サイジングダイス43の内径と略等しくなる。
【0061】
冷却工程は、陰圧となっているサイジングダイス43内の少なくとも一部の領域を通過した光ファイバケーブル102の樹脂を冷却する工程である。本実施形態においては、陰圧になっているサイジングダイス43の全領域を通過した光ファイバケーブル102の樹脂は、第1の水槽40を通過することにより、冷却される。冷却工程の後、光ファイバケーブル102は第2の水槽50へと送られ、第2通過工程へ続く。なお、第2通過工程も冷却工程の一例である。
【0062】
ここで、ケーブルコア101が角形状や楕円形上の場合、その上に形成される外被も同様の形状となって、光ファイバケーブル102の外形が丸い形状とはならないことがある。しかしながら本実施形態によれば、第1通過工程が、光ファイバケーブル102をサイジングダイス43に入線させる入線工程と、サイジングダイス43内の少なくとも一部の領域を陰圧にし、当該領域に光ファイバケーブル102を通過させるサイジング工程と、当該領域を通過した光ファイバケーブルの樹脂を冷却する冷却工程と、を含むため、光ファイバケーブル102の外形を丸い形状とすることができる。
【0063】
また、押出機30における溶融樹脂内の気泡や塗布量の変動により、外形が歪な状態のまま光ファイバケーブル102がサイジングダイス43内を通過すると、光ファイバケーブル102の外形は丸い形状となるが、外被の厚みは不均一となることがある。外被の厚みの不均一性は、光ファイバケーブルの曲げ方向に異方性を生じさせ、空気圧送などで光ファイバケーブルを布設する場合、光ファイバケーブルが座屈することがある。しかしながら本実施形態によれば、入線工程の前に、光学センサ80により光ファイバケーブル102の外径が測定されるため、外形に異常が無い場合でも発生し得る、外被の厚みの不均一性などの異常を検知することができる。
【0064】
以上、本開示を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本開示の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。また、上記説明した構成部材の数、位置、形状等は上記実施の形態に限定されず、本開示を実施する上で好適な数、位置、形状等に変更することができる。
【0065】
例えば、本実施形態の押出機30のクロスヘッド31は、引き落としにより溶融樹脂を押出しているが、押出方法はこれに限定されない。クロスヘッド31内でケーブルコア101に溶融樹脂を接触させてから押し出す充実押出方式により、溶融樹脂は押し出されてもよい。また製造装置1、1A、1Bは、冷却設備の下流に、外径を測定する他の光学センサをさらに備え、冷却後の光ファイバケーブルの外径を測定してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1、1A、1B:(光ファイバケーブルの)製造装置
10:供給ドラム
20:繰出機
30:押出機
31:クロスヘッド
40:第1の水槽
41:冷却部
42:入線口
43:サイジングダイス
44:排気管
45:真空ポンプ
50:第2の水槽
60:引取機
70:巻取ドラム
80:光学センサ
90:肉厚センサ
101:ケーブルコア
102:光ファイバケーブル
d:距離
図1
図2
図3