(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043981
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】フィルタシステム、フィルタ閉塞検知方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B01D 37/04 20060101AFI20240326BHJP
B01D 33/04 20060101ALI20240326BHJP
B01D 35/143 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B01D37/04
B01D33/04 F
B01D35/14 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149257
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】北川 義雄
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 善男
(72)【発明者】
【氏名】安堂 豪
(72)【発明者】
【氏名】冨田 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】石川 公博
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116AA02
4D116BB11
4D116BC62
4D116BC64
4D116BC66
4D116BC67
4D116BC70
4D116DD01
4D116FF12B
4D116GG02
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4D116KK02
4D116QA13C
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4D116QC03A
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4D116QC39
4D116QC51
4D116RR01
4D116RR04
4D116RR07
4D116RR14
4D116RR19
4D116RR21
4D116RR22
4D116RR25
4D116VV09
4D116VV14
(57)【要約】
【課題】固液分離装置のフィルタの閉塞を容易に検知できるフィルタシステム、フィルタの閉塞を検知できるフィルタ閉塞検知方法および閉塞を検知するプログラムを提供する。
【解決手段】ロータ21の回転により移動可能な固液分離部11が設けてある固液分離装置Xと、固液分離部11の運転状態に関する運転値を記録でき、一次側の水位に基づいて運転値を制御できる制御装置30と、を備え、制御装置30は、設定した所定期間毎に、運転値の平均値である期間平均値を算出するように構成してあるフィルタシステムS、および、制御装置30が、設定した所定期間毎に、運転値の平均値である期間平均値を算出する期間平均値算出工程と、期間平均値に基づいて固液分離部11の汚れの具合を判断する判断工程と、を有するフィルタ閉塞検知方法、および、期間平均値算出機能と判断機能とを前記制御装置に実現させるプログラム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータの回転により移動可能な固液分離部が設けてある固液分離装置と、当該固液分離部の運転状態に関する運転値を記録でき、一次側の水位に基づいて前記運転値を制御できる制御装置と、を備え、
当該制御装置は、設定した所定期間毎に、前記運転値の平均値である期間平均値を算出するように構成してあるフィルタシステム。
【請求項2】
算出した期間平均値を表示する表示装置を備え、
当該表示装置は、前記期間平均値をグラフ化して表示する請求項1に記載のフィルタシステム。
【請求項3】
前記表示装置は、設定した閾値をグラフ上に表示する請求項2に記載のフィルタシステム。
【請求項4】
使用者に前記固液分離部の汚れ具合を報知できる警報装置を備え、
前記制御装置は、前記期間平均値が設定した閾値を超えたときに前記警報装置によって警報アラームを発するように構成してある請求項3に記載のフィルタシステム。
【請求項5】
前記固液分離装置がロータリフィルタ装置であり、前記固液分離部が無端帯状フィルタである請求項1に記載のフィルタシステム。
【請求項6】
前記運転値が前記運転状態に関する測定値の積算値である請求項1~5の何れか一項に記載のフィルタシステム。
【請求項7】
前記固液分離装置がロータリフィルタ装置であり、前記固液分離部が無端帯状フィルタであり、
前記運転値が前記無端帯状フィルタの走行距離である請求項6に記載のフィルタシステム。
【請求項8】
前記期間平均値の算出において、前記所定期間のうち前記固液分離装置が運転していた期間のみを考慮する請求項1に記載のフィルタシステム。
【請求項9】
ロータの回転により移動可能な固液分離部が設けてある固液分離装置と、当該固液分離部の運転状態に関する運転値を記録でき、一次側の水位に基づいて前記運転値を制御できる制御装置と、を備えたフィルタシステムにおいて、
当該制御装置が、設定した所定期間毎に、前記運転値の平均値である期間平均値を算出する期間平均値算出工程と、
当該期間平均値に基づいて前記固液分離部の汚れの具合を判断する判断工程と、を有するフィルタ閉塞検知方法。
【請求項10】
前記判断工程は、前記期間平均値および設定した閾値に基づいて汚れの具合を判断する請求項9に記載のフィルタ閉塞検知方法。
【請求項11】
ロータの回転により移動可能な固液分離部が設けてある固液分離装置と、当該固液分離部の運転状態に関する運転値を記録でき、一次側の水位に基づいて前記運転値を制御できる制御装置と、を備えたフィルタシステムの前記固液分離部の閉塞を検知するプログラムであって、
前記制御装置によって実行されたときに、
当該制御装置が、設定した所定期間毎に、前記運転値の平均値である期間平均値を算出する期間平均値算出機能と、
当該期間平均値に基づいて前記固液分離部の汚れの具合を判断する判断機能と、を前記制御装置に実現させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータの回転により移動可能な無端帯状フィルタが設けられた固液分離装置を備えたフィルタシステム、フィルタ閉塞検知方法およびフィルタの閉塞を検知するプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理等に使用される固液分離装置、例えばロータリフィルタ装置は、パネルフィルタが複数枚連結された無端帯状フィルタの態様で設けられた装置であり、当該無端帯状フィルタを回転駆動することによって、フィルタを再生しながら被処理水中の固形物を分離する装置である。この種の装置では、無端帯状フィルタの回転速度を調節することによって、装置の処理能力を調節できる。
【0003】
特許文献1には、水位が設定水位に上昇したことを検出した場合には除塵機を高速で運転したあと徐々に運転速度を下げるようにして制御し、水位が設定水位以下の場合には除塵機を停止または微速運転をして待機するように制御するスクリーン移動式除塵機の運転方法が開示されている。
【0004】
通常、被処理水がフィルタを通過する際、し渣(固形物)をフィルタで捕捉する。捕捉物は、洗浄水の吹き付けにより除去回収するが、フィルタには次第に汚れが蓄積する。フィルタの汚れが蓄積すると、装置の処理能力が低下するため、駆動モータの回転速度を大きくする必要がある。
【0005】
また、フィルタの汚れ状況の把握は、主に目視確認によって行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ロータリフィルタ装置に流入する被処理水の水質と水量は、生活時間や天候、季節により、大きく変動するため、駆動モータの回転速度の瞬時変化だけでは、フィルタの汚れの蓄積を容易に見分けられず、気づいた時にはフィルタ閉塞に至る場合があった。
【0008】
フィルタ閉塞まで至ると、駆動モータの回転速度が上限速度に達しても処理量を維持できず、オーバーフローさせる、或いは、処理量を下げる、等の方策をとる必要があった。また、フィルタ閉塞まで至ってしまうと、例えばブラシなどでフィルタをこすっても、容易に汚れの除去ができなくなり、装置内部のフィルタを取り外しての薬液浸漬洗浄などのオフライン洗浄が必要となる。施設への被処理水の流入を止めたオフライン洗浄を行えば、施設の水処理に支障をきたす虞がある。
【0009】
また、ロータリフィルタ装置の運転中にフィルタの汚れ状況の目視確認を行うのは困難である。仮に装置停止中に確認する場合であっても、装置内部のフィルタを取り外して観察する必要があるため、煩雑であった。フィルタの汚れの見分けは、感覚的で定性的であり、使用者のスキルやノウハウによるところが大きかった。
【0010】
従って、本発明の目的は、固液分離装置のフィルタの閉塞を容易に検知できるフィルタシステム、フィルタの閉塞を検知できるフィルタ閉塞検知方法、および、フィルタの閉塞を検知するプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係るフィルタシステムの特徴構成は、ロータの回転により移動可能な固液分離部が設けてある固液分離装置と、当該固液分離部の運転状態に関する運転値を記録でき、一次側の水位に基づいて前記運転値を制御できる制御装置と、を備え、当該制御装置は、設定した所定期間毎に、前記運転値の平均値である期間平均値を算出するように構成した点にある。
【0012】
ロータの回転速度は、固液分離装置に流入する被処理水の水質と水量によって決まるため、その固液分離装置固有であり、一概に決まらない。本構成のように、所定期間を設定して期間平均値を算出することで、水質と水量の変動による固液分離装置への影響を、平均化して固液分離部の汚れの具合を判断することができる。これにより、ロータの運転値の瞬時変化だけでは見分けることのできない固液分離部の汚れの蓄積を見分けることができるようになる。また、所定期間を設定することで監視期間を設定することとなり、常時監視せずに済むため、労力を削減することができる。
【0013】
使用者は、算出された期間平均値に基づいて固液分離部の汚れの具合を容易に判断することができる。また、例えば当該期間平均値の推移から、固液分離部の閉塞に至るまでに、固液分離部の汚れの蓄積の予兆に気付くことができるようになる。
【0014】
本構成のように、期間平均値に基づいて使用者が固液分離部の汚れの具合を判断できれば、予期せぬ時に、固液分離部の薬液浸漬洗浄などのオフライン洗浄(COP)をしなくても済むようになる。そのため、施設の水処理に支障をきたす虞を未然に防止することができる。また、固液分離部の汚れが蓄積している(或いは汚れの蓄積の予兆)ことが判断できるようになることで、薬液噴霧洗浄などのオンライン洗浄(CIP)を、計画的に実施することができる。
【0015】
本発明に係るフィルタシステムの更なる特徴構成は、算出した期間平均値を表示する表示装置を備え、当該表示装置が、前記期間平均値をグラフ化して表示する点にある。
【0016】
本構成によれば、使用者は表示装置に表示された期間平均値のグラフに基づいて、固液分離部の運転状態に関する運転値の変化を、視覚的に、直感的に認識することができるため、固液分離部の汚れの具合をより容易かつ直感的に判断することができる。また、従来、固液分離部の汚れの見分けは、感覚的で定性的であったが、本構成のように固液分離部の汚れの具合を直感的に判断することができれば、当該汚れの見分けにおいて使用者のスキルやノウハウによるところが減り、維持管理メンテナンスの省力化につながる。
【0017】
本発明に係るフィルタシステムの更なる特徴構成は、設定した閾値をグラフ上に表示する点にある。
【0018】
本構成によれば、表示装置に表示した期間平均値および閾値に基づいて固液分離部の汚れの具合を視覚的に容易に判断することができる。
【0019】
本発明に係るフィルタシステムの更なる特徴構成は、使用者に前記固液分離部の汚れ具合を報知できる警報装置を備え、前記制御装置は、前記期間平均値が設定した閾値を超えたときに前記警報装置によって警報アラームを発するように構成した点にある。
【0020】
本構成によれば、設定した閾値に基づいて警報アラームを警報装置によって発するようにできるため、使用者に固液分離部に汚れが蓄積している、或いは汚れの蓄積の予兆があることを確実に報知することができる。
【0021】
本発明に係るフィルタシステムの更なる特徴構成は、前記固液分離装置をロータリフィルタ装置とし、前記固液分離部を無端帯状フィルタとした点にある。
【0022】
本構成によれば、既設のロータリフィルタ装置に適用して、当該ロータリフィルタ装置の無端帯状フィルタの汚れの具合を容易に判断することができる。
【0023】
本発明に係るフィルタシステムの更なる特徴構成は、前記運転値を前記運転状態に関する測定値の積算値とした点にある。
【0024】
本構成によれば、種々の運転値を前記運転状態に関する測定値の積算値に基づいて、無端帯状フィルタの汚れの具合を容易に判断することができる。
【0025】
本発明に係るフィルタシステムの更なる特徴構成は、前記固液分離装置がロータリフィルタ装置であり、前記固液分離部が無端帯状フィルタであり、前記運転値を前記無端帯状フィルタの走行距離とした点にある。
【0026】
本構成によれば、ロータリフィルタ装置における無端帯状フィルタの走行距離に基づいて、無端帯状フィルタの汚れの具合を容易に判断することができる。
【0027】
本発明に係るフィルタシステムの更なる特徴構成は、前記期間平均値の算出において、前記所定期間のうち前記固液分離装置が運転していた期間のみを考慮する点にある。
【0028】
本構成によれば、固液分離装置が停止した期間を考慮しないため、正確な期間に基づいて無端帯状フィルタの汚れの具合を容易に判断することができる。
【0029】
本発明に係るフィルタ閉塞検知方法の特徴構成は、ロータの回転により移動可能な固液分離部が設けてある固液分離装置と、当該固液分離部の運転状態に関する運転値を記録でき、一次側の水位に基づいて前記運転値を制御できる制御装置と、を備えたフィルタシステムにおいて、当該制御装置が、設定した所定期間毎に、前記運転値の平均値である期間平均値を算出する期間平均値算出工程と、当該期間平均値に基づいて前記固液分離部の汚れの具合を判断する判断工程と、を有する点にある。
【0030】
本構成によれば、所定期間を設定して期間平均値を算出することで、水質と水量の変動による固液分離装置への影響を、平均化して固液分離部の汚れの具合を判断することができる。これにより、ロータの運転値の瞬時変化だけでは見分けることのできない固液分離部の汚れの蓄積を見分けることができるようになる。また、所定期間を設定することで監視期間を設定することとなり、常時監視せずに済むため、労力を削減することができる。
【0031】
本構成のように、期間平均値に基づいて使用者が固液分離部の汚れの具合を判断できれば、予期せぬ時に、固液分離部の薬液浸漬洗浄などのオフライン洗浄(COP)をしなくても済むようになる。そのため、施設の水処理に支障をきたす虞を未然に防止することができる。また、固液分離部の汚れが蓄積している(或いは汚れの蓄積の予兆)ことが判断できるようになることで、薬液噴霧洗浄などのオンライン洗浄(CIP)を、計画的に実施することができる。
【0032】
本発明に係るフィルタ閉塞検知方法の更なる特徴構成は、前記判断工程が、前記期間平均値および設定した閾値に基づいて汚れの具合を判断する点にある。
【0033】
本構成によれば、期間平均値および閾値に基づいて固液分離部の汚れの具合を容易に判断することができる。
【0034】
本発明に係るプログラムの特徴構成は、ロータの回転により移動可能な固液分離部が設けてある固液分離装置と、当該固液分離部の運転状態に関する運転値を記録でき、一次側の水位に基づいて前記運転値を制御できる制御装置と、を備えたフィルタシステムの前記固液分離部の閉塞を検知するプログラムであって、前記制御装置によって実行されたときに、当該制御装置が、設定した所定期間毎に、前記運転値の平均値である期間平均値を算出する期間平均値算出機能と、当該期間平均値に基づいて前記固液分離部の汚れの具合を判断する判断機能と、を前記制御装置に実現させる点にある。
【0035】
本構成によれば、所定期間を設定して期間平均値を算出することで、水質と水量の変動による固液分離装置への影響を、平均化して固液分離部の汚れの具合を判断することができるプログラムを供することができる。当該プログラムにより、ロータの運転値の瞬時変化だけでは見分けることのできない固液分離部の汚れの蓄積を見分けることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】実施形態のフィルタシステムを示す概略図である。
【
図2】無端帯状フィルタを備えたフィルタ機構を示す平面図である。
【
図3】本発明のフィルタ閉塞検知方法を示す流れ図である。
【
図4】ロータリフィルタ装置に流入する被処理水の24時間の変動パターンを示したグラフである。
【
図5】無端帯状フィルタの1日の平均速度を算出したものを2週間分示したグラフである。
【
図6】所定期間(1週間)毎に期間平均速度を算出した結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1,2に示したように、本発明のフィルタシステムSは、ロータ21の回転により移動可能な固液分離部11が設けてある固液分離装置Xと、当該固液分離部11の運転状態に関する運転値を記録でき、一次側の水位に基づいて前記運転値を制御できる制御装置30と、を備える。
【0038】
当該制御装置30は、設定した所定期間毎に、前記運転値の平均値である期間平均値を算出するように構成してある。本実施形態では、当該制御装置30は、設定した所定期間毎に、記録した固液分離部11の運転値を集計して期間運転値を算出し、当該期間運転値を走行時間で割った期間平均値を算出するように構成した場合について説明する。
【0039】
また、フィルタシステムSは、算出した期間平均値を表示する表示装置40を備える。
【0040】
本発明のフィルタ閉塞検知方法は、設定した所定期間毎に、前記運転値の平均値である期間平均値を算出する期間平均値算出工程A1と、当該期間平均値に基づいて固液分離部11の汚れの具合を判断する判断工程A2と、を有する(
図3)。本実施形態では、期間平均値算出工程A1は、設定した所定期間毎に、記録した固液分離部11の運転値を集計して期間運転値を算出し、当該期間運転値を走行時間で割った期間平均値を算出する場合について説明する。
【0041】
本発明のフィルタシステムSの固液分離部11の閉塞を検知するプログラムは、制御装置30によって実行されたときに、制御装置30が、設定した所定期間毎に、前記運転値の平均値である期間平均値を算出する期間平均値算出機能と、当該期間平均値に基づいて前記固液分離部の汚れの具合を判断する判断機能と、を制御装置30に実現させるように構成してある。本実施形態では、期間平均値算出機能は、設定した所定期間毎に、記録した固液分離部11の運転値を集計して期間運転値を算出し、当該期間運転値を走行時間で割った期間平均値を算出する場合について説明する。
【0042】
運転値は前記運転状態に関する測定値の積算値とすればよく、例えば走行距離、ロータ21の積算回転数や積算処理水量などを適用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
本実施形態では、固液分離装置Xをロータリフィルタ装置とし、固液分離部11を無端帯状フィルタとし、運転値を走行距離とした場合について説明する。この場合、制御装置30は、当該無端帯状フィルタ11の走行距離を演算して記録できるように構成してある。さらに、当該制御装置30は、設定した所定期間毎に、記録した無端帯状フィルタ11の走行距離を集計して期間走行距離(期間運転値の一例)を算出し、当該期間走行距離を走行時間で割った期間平均速度(期間平均値の一例)を算出するように構成してある。
【0044】
ロータリフィルタ装置Xは、通流経路1を横切るように配置され、当該通流経路1を流れる被処理水W1に含まれる固体を濾過する装置である。当該通流経路1は、水槽である筐体2の内部に設けてある。筐体2には被処理水W1の流入口3と流出口4とが設けてある。
【0045】
ロータリフィルタ装置Xは、
図1に示したように、被処理水W1が流入する筐体2の内部の一次側(流入側)に設けた開口部2Aに沿って移動する無端帯状フィルタ11が備えられ、無端帯状フィルタ11に被処理水を通流させて固体を濾過するように構成してある。本実施形態のロータリフィルタ装置Xは、周回軌道Pに沿って無端状に配列された複数のパネルフィルタ(無端帯状フィルタの例)11を備えて通流経路1を横切るように配置してあるフィルタ機構10と、各パネルフィルタ11を周回軌道Pに沿って移動させる移動機構20と、が備えられ、移動機構20によって各パネルフィルタ11を移動させながら、パネルフィルタ11によって構成される濾過面Fに周回軌道Pの外方から内方へと被処理水W1を通流させて固体を濾過するように構成してある場合について説明する。
【0046】
ロータリフィルタ装置Xは、
図1に示したように、さらに、各パネルフィルタ11が濾過した被処理水W1中の固体を各パネルフィルタ11から除去する除去機構5と、これらを収容するハウジング6と、を備える。ロータリフィルタ装置Xの各部は、他の材質を明記する場合を除き、ステンレス鋼、例えばSUS304を適当に加工することによって製造してある。
【0047】
本実施形態のロータリフィルタ装置Xは、被処理水W1の流路の上流側から下流側に傾く態様で設けられ、移動機構20によって、被処理水W1が流入する一次側においてパネルフィルタ11が下方から上方に移動する。このとき、被処理水W1に含まれる固体(し渣など)はパネルフィルタ11によって構成される濾過面Fに遮られ、被処理水W1中の水分であるろ過水W2は濾過面Fを通過して流出口4へ移流する。
【0048】
本実施形態における周回軌道Pが、
図1に示したように、二か所の折返部Pa,Pcと、折返部Pa,Pc間を結ぶ二か所の直線部Pb,Pdと、を有する場合について説明する。折返部Paは、通流経路1における通流方向の上流側に設けてあり、折返部Pcは、通流経路1における通流方向の下流側であって水面上に設けてある。直線部Pbは、通流経路1における通流方向の上流側において折返部Pa,Pc間に設けてあり、直線部Pdは、通流経路1における通流方向の下流側において折返部Pa,Pc間に設けてある。
【0049】
各パネルフィルタ11は、
図1において時計回りの矢印で示されるとおり、移動機構20によって周回軌道Pに沿って、折返部Pa、直線部Pb、折返部Pc、直線部Pdの順に移動させられる。その際、直線部Pbにあるときに当該フィルタ機構10の濾過面Fとして機能する。
【0050】
除去機構5は、パネルフィルタ11の表面の固体を掻き落とすスクレーパや、パネルフィルタ11の裏面から表面にむけて高圧の洗浄水を噴射するスプレー機構や、パネルフィルタ11から除去された固体を回収する回収部等を備えて構成してある。濾過された固体は、折返部Pcから直線部Pdへ移行する際に、除去機構5によって各パネルフィルタ11から除去される。
【0051】
濾材13は、網目が0.1mm~1.0mm程度の金網から構成され、濾材13は枠体12の濾材配設部に対して溶接や焼結等によって取り付けてあるが、このような態様に限定されるものではない。また、当該金網は、平織、綾織、平畳織、綾畳織等であってよく、網目は濾過する固体の流径に応じて適当なものを採用するとよい。
【0052】
移動機構20は、
図1,2に示したように、折返部Pcを構成するスプロケット(ロータ)21と、折返部Pa及び直線部Pb、Pdを構成する案内レール22(22a,22b,22d)と、各パネルフィルタ11が取り付けられるとともに、ロータ21と噛み合う状態で当該ロータ21と案内レール22とに亘って巻き掛けられたローラチェーン23と、ロータ21を回転駆動させる電動機24と、を備える。尚、電動機24の駆動軸からの出力は、伝達機構25を介してロータ21の回転軸に伝達される。
【0053】
このように構成された移動機構20によってロータ21を回転させるとこれに噛み合わされたローラチェーン23が案内レール22に沿って案内されつつ、周回軌道Pに沿って移動する。
【0054】
ロータ21を回転駆動させる電動機24は、制御装置30と電気的に接続されており、ロータ21の運転状態に関する情報(回転数、電流値など)を制御装置30に送信するように構成してある。
【0055】
制御装置30は、電動機24から受信した運転状態に関する情報に基づいてパネルフィルタ11の走行距離を演算し、演算して得られた結果を記録するように構成してある公知のコンピュータの態様とすることができる。即ち、制御装置30は、演算装置、記憶装置、および入出力装置などの、コンピュータとして一般的な構成要素を含む。ロータリフィルタ装置Xにおいて、パネルフィルタ11の一次側には、水位計7が設けてあり、パネルフィルタ11の一次側の水位を検出できる。水位計7の出力は、制御装置30に入力される。制御装置30には、ロータリフィルタ装置Xの水位に応じてロータ21(電動機24)の回転数を制御するPID制御を行うための制御プログラムがインストールしてある。例えば、制御装置30は、一次側の水位を所定の範囲に保つようにロータ21の回転数を制御する。即ち、パネルフィルタ11に汚れが蓄積することによって処理効率が低下するため、汚れが蓄積(水位上昇を検出)すれば、汚れが蓄積していない状態よりもロータ21の回転数を上げるよう制御プログラムが指示をする。
【0056】
制御装置30は、パネルフィルタ11の走行距離を、設定した設定時間毎(例えば1分毎)に電動機24から受信した運転状態に関する情報に基づいて演算し、演算して得られた結果を記録する。設定時間は適宜設定すればよいため、上記の時間に限定されるものではない。
【0057】
また、制御装置30は、設定した所定期間毎に、記録したパネルフィルタ11の走行距離を集計して期間走行距離を算出する。
【0058】
所定期間は、所望の範囲の時間を設定することができる。例えばロータリフィルタ装置Xへの被処理水W1流入パターンをもとに設定すればよく、具体的には、被処理水の水質と水量の変動の小さい期間、或いは、当該変動の大きい期間などに基づいて設定するとよい。これら期間は、例えば1~24時間のうちの何れかの期間、1日~7日間のうちの何れかの期間、1~4週間のうちの何れかの期間など、適宜設定することができる。本実施形態では所定期間を1週間とした場合について説明する。
【0059】
このようにして設定した所定期間毎に、記録したパネルフィルタ11の走行距離を集計して期間走行距離を算出する。即ち、上記の設定時間毎に得られた走行距離の複数の結果を、所定期間(1週間)毎に集計(加算)して期間走行距離を算出する。
【0060】
次に、当該期間走行距離を走行時間で割った期間平均速度を算出する(期間平均値算出工程A1)。当該走行時間は、通常は上記の所定期間であるが、例えばロータリフィルタ装置Xを停止した期間(停止期間)がある場合は当該所定期間から停止期間を引いた時間とすればよい。即ち、期間平均値の算出において、前記所定期間のうちロータリフィルタ装置Xが運転していた期間のみを考慮する。このように走行時間を、前記停止期間を考慮しない期間とすることで、正確な期間に基づいて無端帯状フィルタの汚れの具合を容易に判断することができる。このようにして算出された期間平均速度は、制御装置30に記憶される。
【0061】
制御装置30に記憶された期間平均速度は、表示装置40に表示することができる。当該表示装置40は、制御装置30に記憶されたデータを表示できる態様であれば、特に限定されるものではなく、公知のモニタ等を使用することができる。
【0062】
このとき、使用者は、表示装置40に表示された期間平均速度に基づいてパネルフィルタ11の汚れの具合を判断する(判断工程A2)ことができる。
【0063】
ロータ21(電動機24)の回転速度は、ロータリフィルタ装置Xに流入する被処理水の水質と水量によって決まるため、そのロータリフィルタ装置X固有であり、一概に決まらない。本構成のように、所定期間を設定して期間平均速度を算出することで、水質と水量の変動によるロータリフィルタ装置Xへの影響を、平均化してパネルフィルタ11の汚れの具合を判断することができる。これにより、ロータ21の回転速度の瞬時変化だけでは見分けることのできないパネルフィルタ11の汚れの蓄積を見分けることができるようになる。また、所定期間を設定することで監視期間を設定することとなり、常時監視せずに済むため、労力を削減することができる。
【0064】
使用者は、表示装置40に表示された期間平均速度に基づいてパネルフィルタ11の汚れの具合を容易に判断することができる。また、例えば当該期間平均速度の推移から、パネルフィルタ11の閉塞に至るまでに、パネルフィルタ11の汚れの蓄積の予兆に気付くことができるようになる。
【0065】
本構成のように、期間平均速度に基づいて使用者がパネルフィルタ11の汚れの具合を判断できれば、予期せぬ時に、パネルフィルタ11の薬液浸漬洗浄などのオフライン洗浄(COP)をしなくても済むようになる。そのため、施設の水処理に支障をきたす虞を未然に防止することができる。また、パネルフィルタ11の汚れが蓄積している(或いは汚れの蓄積の予兆)ことが判断できるようになることで、薬液噴霧洗浄などのオンライン洗浄(CIP)を、計画的に実施することができる。
【0066】
表示装置40は、当該期間平均速度のみを表示してもよいし、算出した期間平均速度をグラフ化して表示するように構成してもよい。当該グラフは、例えば横軸を所定期間、縦軸を期間平均速度とすればよい。
【0067】
本構成では、使用者は表示装置40に表示されたグラフに基づいて、パネルフィルタ11の速度の変化を、視覚的に、直感的に認識することができるため、パネルフィルタ11の汚れの具合をより容易かつ直感的に判断することができる。また、従来、パネルフィルタ11の汚れの見分けは、感覚的で定性的であったが、本構成のようにパネルフィルタ11の汚れの具合を直感的に判断することができれば、当該汚れの見分けにおいて使用者のスキルやノウハウによるところが減り、維持管理メンテナンスの省力化につながる。
【0068】
表示装置40は、設定した閾値をグラフ上に表示してもよい。当該閾値は、グラフ上に例えば点線などの線を引くことで表示することができるが、このような態様に限定されるものではない。
【0069】
当該閾値は任意に設定することができる。使用者が閾値を決定すれば、制御装置30にその値を入力することによって記憶させ、表示装置40に表示したグラフ上に表示すればよい。
【0070】
本構成では、表示装置40に表示した期間平均速度および閾値に基づいてパネルフィルタ11の汚れの具合を容易に判断することができる。
【0071】
フィルタシステムSは、使用者にパネルフィルタ11の汚れ具合を報知できる警報装置50を備えることができる。
【0072】
警報装置50は制御装置30と電気的に接続してある。当該制御装置30は、制御装置30に記憶してある期間平均速度が設定した閾値を超えたときに警報装置50によって警報アラームを発するように構成してある。
【0073】
本実施形態では、該制御装置30は、期間平均速度および設定した閾値を比較し、例えば期間平均速度が設定した閾値を超えたときにパネルフィルタ11の汚れの具合を判断し、当該汚れが蓄積している(或いは汚れの蓄積の予兆がある)と判断すれば警報装置50によって警報アラームを発するように構成する場合について説明する。
【0074】
制御装置30は、前記判断に基づき、使用者にパネルフィルタ11に汚れが蓄積している、或いは汚れの蓄積の予兆があることを報知する警報アラームを警報装置50によって発するためのシグナルを、警報装置50に伝達するように構成するとよい。
【0075】
当該警報アラームは、例えば音、光、振動および携帯端末へのメール通知など、使用者に警報を報知することができる態様であれば、特に限定されるものではない。
【0076】
本構成では、設定した閾値に基づいて警報アラームを警報装置50によって発するようにできるため、使用者にパネルフィルタ11に汚れが蓄積している、或いは汚れの蓄積の予兆があることを確実に報知することができる。
【実施例0077】
本発明のフィルタシステムSにおけるフィルタ閉塞検知方法について、以下に説明する。
図4に、ロータリフィルタ装置Xに流入する被処理水W1の24時間の時間流入量(m
3/h)の変動パターンを示す。これによれば、8時から流入量が増加し、22時にピークとなっていることが判った。
【0078】
図4に示した被処理水W1の流入結果に基づいて自動制御されたロータリフィルタ装置Xにおいて、パネルフィルタ11の1日の平均速度(m/min)を算出したものを2週間分示した(
図5)。ここで、1日の平均速度(m/min)は、パネルフィルタ11の1日間の走行距離(m)を、1日間の走行時間(min)で除して算出した。これによれば、日によって速度にバラツキがあることが判った。
【0079】
図5のデータに基づき、所定期間を1週間と設定し、所定期間毎に、パネルフィルタ11の前記1日間の走行距離を全て集計して期間走行距離を算出し、当該期間走行距離を走行時間で割った期間平均速度(m/min)を算出した(期間平均値算出工程A1)。算出された期間平均速度は制御装置30に記憶し、グラフ化して表示装置40に表示した(
図6)。
【0080】
図6には、設定した閾値を破線で示した。これによれば、ロータリフィルタ装置Xを運転開始した11週間後に期間平均速度が閾値より大きくなり、パネルフィルタ11に汚れが蓄積していると判断することができた(判断工程A2)。このとき、制御装置30は、シグナルを警報装置50に伝達して警報装置50によって警報アラームを発し、使用者にパネルフィルタ11に汚れが蓄積していることを報知した。
【0081】
図6に示したように、表示装置40には期間平均速度がグラフ化して表示され、設定した閾値をグラフ上に表示できるため、パネルフィルタ11の汚れの具合を視覚的に、かつ確実に判断することができた。
【0082】
〔別実施例1〕
上述した実施形態では、固液分離装置Xとして、無端帯状フィルタ11を備えたロータリフィルタ装置を適用した場合について説明した。しかし、固液分離装置Xはロータリフィルタ装置に限定されず、円筒ドラムを備えた帯状フィルタ式ドラム型濾過装置や、固液分離部11としてドラムスクリーンを備えた固液分離装置など、施設に流入する被処理水の水質と水量によって、1次側の水位変動に対して、駆動モータを速度制御する固液分離装置であれば、適用できる。
【0083】
〔別実施例2〕
上述した実施形態では、運転値を走行距離とし、期間平均速度(期間平均値の一例)に基づいて使用者がパネルフィルタ11の汚れの具合を判断する場合について説明した。しかし、このような態様に限定されず、運転値を、ロータを回転駆動させる電動機の回転数とし、当該期間平均速度の代わりに、ロータ21の期間平均回転数(期間平均値の一例)に基づいて使用者がパネルフィルタ11の汚れの具合を判断してもよい。
【0084】
この場合、制御装置30は、ロータを回転駆動させる電動機の回転数を記録できるように構成するとよい。さらに、制御装置30は、設定した所定期間毎に、記録した前記回転数を集計して期間回転数を算出し、当該期間回転数を走行時間で割った期間平均回転数を算出するように構成するとよい。
本発明は、ロータの回転により移動可能な固液分離部が設けてある固液分離装置を備えたフィルタシステム、フィルタ閉塞検知方法およびフィルタの閉塞を検知するプログラムに利用できる。