(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043982
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】薬液洗浄システムおよび薬液洗浄方法
(51)【国際特許分類】
B01D 24/46 20060101AFI20240326BHJP
B01D 33/04 20060101ALI20240326BHJP
C02F 11/123 20190101ALI20240326BHJP
【FI】
B01D33/36
B01D33/04 F ZAB
C02F11/123
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149258
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】北川 義雄
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 善男
(72)【発明者】
【氏名】安堂 豪
(72)【発明者】
【氏名】冨田 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】石川 公博
【テーマコード(参考)】
4D059
4D116
【Fターム(参考)】
4D059AA01
4D059AA03
4D059BE09
4D059BE13
4D059CA21
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4D116RR01
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4D116RR21
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4D116RR25
4D116VV09
4D116VV12
4D116VV14
(57)【要約】
【課題】固液分離装置を備え、オンラインでフィルタの薬液洗浄を行うことができる薬液洗浄システム、および、フィルタの薬液洗浄を行うことができる薬液洗浄方法を提供する。
【解決手段】ロータの回転により移動可能な固液分離部11が設けてある固液分離装置と、固液分離部11を洗浄溶媒Cで洗浄する洗浄ユニット60と、を備え、洗浄ユニット60は、固液分離部11に洗浄溶媒Cを吹き付け可能な単一あるいは複数のスプレー部62aを有するスプレー機構62を備え、複数種類の洗浄溶媒C(C1,C2)を択一的にまたは同時に固液分離部11に吹き付け可能に構成してある薬液洗浄システム、および、固液分離部11の汚れを検知する汚れ検知工程と、汚れ検知工程によって固液分離部11の汚れを検知した後に、洗浄工程と、を有する薬液洗浄方法。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータの回転により移動可能な固液分離部が設けてある固液分離装置と、当該固液分離部を洗浄溶媒で洗浄する洗浄ユニットと、を備え、
前記洗浄ユニットは、前記固液分離部に前記洗浄溶媒を吹き付け可能な単一あるいは複数のスプレー部を有するスプレー機構を備え、
複数種類の洗浄溶媒を択一的にまたは同時に前記固液分離部に吹き付け可能に構成してある薬液洗浄システム。
【請求項2】
前記洗浄ユニットは、前記洗浄溶媒として洗浄水を供給する洗浄水供給部と、薬液を供給する薬液供給部と、を備え、前記洗浄水が流下する洗浄管部と、前記薬液が流下する薬液管部と、を接続してある請求項1に記載の薬液洗浄システム。
【請求項3】
前記洗浄ユニットは、薬液を供給する薬液供給部を備え、前記スプレー機構は、前記固液分離部に前記洗浄水を吹き付け可能な洗浄水スプレー部と、前記固液分離部に前記薬液を吹き付け可能な薬液スプレー部と、を備えてある請求項1に記載の薬液洗浄システム。
【請求項4】
前記洗浄ユニットは、前記薬液供給部が外部の汚泥処理装置からの洗浄排液を供給可能に構成してあり、
前記薬液スプレー部によって前記固液分離部に前記洗浄排液を前記洗浄溶媒として吹き付け可能に構成してある請求項3に記載の薬液洗浄システム。
【請求項5】
前記洗浄ユニットは、前記薬液供給部が外部の汚泥処理装置からの洗浄排液を供給可能に構成してある請求項2に記載の薬液洗浄システム。
【請求項6】
洗浄の要否を判断できる制御装置をさらに備え、
前記洗浄ユニットは、前記洗浄溶媒による前記固液分離部の洗浄開始あるいは洗浄停止の指令を前記制御装置から受け取るように構成してある請求項1~5の何れか一項に記載の薬液洗浄システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記固液分離部の運転状態に基づいて前記固液分離部の汚れの蓄積を検知するように構成し、当該汚れの蓄積を検知したとき、前記固液分離部の洗浄を開始するように構成してある請求項6に記載の薬液洗浄システム。
【請求項8】
前記固液分離装置がロータリフィルタ装置であり、前記固液分離部が無端帯状フィルタである請求項1~5の何れか一項に記載の薬液洗浄システム。
【請求項9】
ロータの回転により移動可能な固液分離部が設けてある固液分離装置と、当該固液分離部を洗浄溶媒で洗浄する洗浄ユニットと、を備えた薬液洗浄システムにおいて、
前記固液分離部の汚れを検知する汚れ検知工程と、
当該汚れ検知工程によって前記固液分離部の汚れを検知した後に、薬液を供給する薬液供給部からの前記薬液を前記洗浄溶媒として、前記固液分離部を前記洗浄ユニットによって洗浄する薬液洗浄工程と、を有する薬液洗浄方法。
【請求項10】
前記薬液洗浄工程が、外部の汚泥処理装置からの洗浄排液を前記薬液としてある請求項9に記載の薬液洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータの回転により移動可能な固液分離部が設けてある固液分離装置を備えた薬液洗浄システムおよび薬液洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理等に使用される固液分離装置、例えばロータリフィルタ装置は、パネルフィルタが複数枚連結された無端帯状フィルタの態様で設けられた装置であり、当該無端帯状フィルタを回転駆動することによって、フィルタを再生しながら被処理水中の固形物を分離する装置である。この種の装置では、無端帯状フィルタの回転速度を調節することによって、装置の処理能力を調節できる。
【0003】
通常、被処理水がフィルタを通過する際、し渣(固形物)をフィルタで捕捉する。捕捉物は、洗浄水の吹き付けにより除去回収する。
【0004】
特許文献1には、フィルタユニットの裏側から洗浄水を吹き付けてし渣をフィルタユニットから剥離させる洗浄機構を備えたし渣分離システム(ロータリフィルタ装置)が記載してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
洗浄機構によって洗浄水を吹き付けてフィルタを洗浄する場合、例えば吹き付けの弱い箇所等で、し渣の絡みや固形物の付着が徐々に多くなり、フィルタの汚れが次第に蓄積することがあった。フィルタの汚れが蓄積すると、ロータリフィルタ装置の処理能力が低下するため、駆動モータの回転速度を大きくする必要がある。
【0007】
ロータリフィルタ装置に流入する被処理水の水質と水量は、生活時間や天候、季節により、大きく変動するため、駆動モータの回転速度の瞬時変化だけでは、フィルタの汚れの蓄積を容易に見分けられず、気づいた時にはフィルタ閉塞に至る場合があった。
【0008】
フィルタ閉塞まで至ると、上限速度に達しても処理量を維持できず、オーバーフローさせる、或いは、処理量を下げる、等の方策をとる必要があった。また、フィルタ閉塞まで至ってしまうと容易に汚れの除去ができなくなり、フィルタの薬液浸漬洗浄などのオフライン洗浄が必要となる。これについて、下水処理施設の前処理としてロータリフィルタ装置が導入してある場合、下水処理施設の構成によっては被処理水の流入を一時的に止める必要があった。
【0009】
また、フィルタの薬液浸漬洗浄をオフライン洗浄によって実施する場合、ロータリフィルタ装置を停止してフィルタを取り外し、装置外で浸漬洗浄作業を実施する必要があった。装置外には、フィルタを浸漬させる水槽や、洗浄するスペースが必要となっていた。洗浄時間は、作業時間や薬液浸漬時間など、通常、丸1日以上を要し、薬液の取扱いや手洗い洗浄などの手作業が発生し、作業者の負担が大きくなっていた。
【0010】
従って、本発明の目的は、固液分離装置を備え、オンラインでフィルタの薬液洗浄を行うことができる薬液洗浄システム、および、フィルタの薬液洗浄を行うことができる薬液洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係る薬液洗浄システムの特徴構成は、ロータの回転により移動可能な固液分離部が設けてある固液分離装置と、当該固液分離部を洗浄溶媒で洗浄する洗浄ユニットと、を備え、前記洗浄ユニットは、前記固液分離部に前記洗浄溶媒を吹き付け可能な単一あるいは複数のスプレー部を有するスプレー機構を備え、複数種類の洗浄溶媒を択一的にまたは同時に前記固液分離部に吹き付け可能に構成した点にある。
【0012】
本構成によれば、例えば通常運転時は、洗浄水を吹き付け可能なスプレー部から高圧の洗浄水を固液分離部にむけて吹き付けることで、固液分離部を再生することができる。洗浄水の吹き付けの弱い箇所等では、し渣の絡みや固形物の付着が徐々に多くなり、固液分離部の汚れが次第に蓄積してくる。本発明における薬液洗浄システムは、例えば固液分離部に洗浄溶媒を吹き付け可能な単一のスプレー部を有するスプレー機構を備え、複数種類の洗浄溶媒(例えば洗浄水および薬液)を同時に固液分離部に吹き付け可能に構成してあり、洗浄水を吹き付け可能なスプレー部によって薬液を固液分離部に吹き付けることができるため、汚れが蓄積した固液分離部の薬液洗浄を行うことができる。この薬液洗浄はオンライン洗浄で行うことができ、予期せぬタイミングで固液分離部のオフライン洗浄をしなくてよいため、固液分離装置の水処理に支障をきたす虞がなくなる。即ち、被処理水の流入の停止や大きな作業負荷などが生じ得るオフライン洗浄を回避し得るため、オフライン洗浄が不要となる本構成の意義は大きいと考えられる。
【0013】
また、本構成では、洗浄溶媒を吹き付け可能な複数のスプレー部を有するスプレー機構を備え、複数種類の洗浄溶媒(例えば洗浄水および薬液)を択一的に固液分離部に吹き付け可能に構成することができる。洗浄水を吹き付け可能なスプレー部とは別に薬液専用のスプレー部を備えて、当該薬液専用のスプレー部によって薬液を固液分離部に吹き付けることができる。
【0014】
このように本構成ではオフライン洗浄をしなくて済むため、固液分離装置から、固液分離部のフィルタを取り外す手間、薬液の取扱い、および、手洗い洗浄などの手作業を省略することができ、作業者の負担を軽減することができる。また、オフライン洗浄をしないため、前記フィルタを浸漬させる水槽や、洗浄するスペースが不要となる。
【0015】
本発明に係る薬液洗浄システムの更なる特徴構成は、前記洗浄ユニットは、前記洗浄溶媒として洗浄水を供給する洗浄水供給部と、薬液を供給する薬液供給部と、を備え、前記洗浄水が流下する洗浄管部と、前記薬液が流下する薬液管部と、を接続した点にある。
【0016】
本構成によれば、薬液を薬液供給部から連続式で薬液を供給し、当該薬液を洗浄管部に合流させて固液分離部に吹き付けることができるため、効率よく固液分離部の薬液洗浄を行うことができる。
【0017】
また、本構成では、薬液を、洗浄水を吹き付け可能なスプレー部によって固液分離部に吹き付けることができるため、既存の洗浄水によるスプレー部および洗浄管部を、そのまま用いることができる。そのため、薬液洗浄システムの配管部品点数が減り、配管系統が複雑化し難くなる。
【0018】
本発明に係る薬液洗浄システムの更なる特徴構成は、前記洗浄ユニットは、薬液を供給する薬液供給部を備え、前記スプレー機構は、前記固液分離部に前記洗浄水を吹き付け可能な洗浄水スプレー部と、前記固液分離部に前記薬液を吹き付け可能な薬液スプレー部と、を備えた点にある。
【0019】
本構成によれば、洗浄水を吹き付け可能な洗浄水スプレー部とは別に薬液専用の薬液スプレー部を備えて、当該薬液スプレー部によって薬液を固液分離部に吹き付けることができる。そのため、設定した薬液の濃度を維持した状態で固液分離部の薬液洗浄をオンライン洗浄で行うことができる。
【0020】
本発明に係る薬液洗浄システムの更なる特徴構成は、前記洗浄ユニットは、前記薬液供給部が外部の汚泥処理装置からの洗浄排液を供給可能に構成してあり、前記薬液スプレー部によって前記固液分離部に前記洗浄排液を前記洗浄溶媒として吹き付け可能に構成した点にある。
【0021】
本構成によれば、外部の汚泥処理装置の洗浄排液を再利用することができる。即ち、当該洗浄排液には次亜塩素酸ナトリウム等の薬液が含まれており、本発明の薬液洗浄システムの薬液洗浄においても使用することができる。そのため、当該洗浄排液を再利用すれば薬液使用量が減って薬液洗浄システムのランニングコストの低減ができるとともに、排液量も低減することができ、環境負荷も低減することができる。
【0022】
また、本構成では、洗浄水を吹き付け可能な洗浄水スプレー部とは別に薬液専用の薬液スプレー部を備えて、当該薬液スプレー部によって洗浄排液を固液分離部に吹き付けることができる。そのため、洗浄排液による固液分離部の薬液洗浄をオンライン洗浄で行うことができる。
【0023】
本発明に係る薬液洗浄システムの更なる特徴構成は、前記洗浄ユニットは、前記薬液供給部が外部の汚泥処理装置からの洗浄排液を供給可能に構成した点にある。
【0024】
本構成によれば、通常の洗浄水を吹き付け可能なスプレー部および洗浄管部をそのまま用いて、外部の汚泥処理装置の洗浄排液を再利用することができる。即ち、当該洗浄排液には次亜塩素酸ナトリウム等の薬液が含まれており、本発明の薬液洗浄システムの薬液洗浄においても使用することができる。そのため、薬液洗浄システムの配管部品点数が減り、配管系統が複雑化し難くなり、さらに、薬液使用量が減って薬液洗浄システムのランニングコストの低減ができるとともに、排液量も低減することができ、環境負荷も低減することができる。
【0025】
本発明に係る薬液洗浄システムの更なる特徴構成は、洗浄の要否を判断できる制御装置をさらに備え、前記洗浄ユニットは、前記洗浄溶媒による前記固液分離部の洗浄開始あるいは洗浄停止の指令を制御装置から受け取るように構成した点にある。
【0026】
本構成によれば、薬液洗浄の開始あるいは停止を、制御装置によって容易に制御することができる。
【0027】
本発明に係る薬液洗浄システムの更なる特徴構成は、前記制御装置は、前記固液分離部の運転状態に基づいて前記固液分離部の汚れの蓄積を検知するように構成し、当該汚れの蓄積を検知したとき、前記固液分離部の洗浄を開始するように構成した点にある。
【0028】
本構成によれば、制御装置における運転プログラムに、オンライン洗浄プログラムを組み込み、固液分離部の汚れの蓄積の検知、および、薬液洗浄の自動化を図ることができる。そのため、計画的に固液分離部の薬液洗浄を実施することができる。また、薬液洗浄の自動化を図ることで、使用者のスキルやノウハウによるところが減り、維持管理メンテナンスの省力化につながる。
【0029】
本発明に係る薬液洗浄システムの更なる特徴構成は、前記固液分離装置をロータリフィルタ装置とし、前記固液分離部を無端帯状フィルタとした点にある。
【0030】
本構成によれば、既設のロータリフィルタ装置に適用して、当該ロータリフィルタ装置の無端帯状フィルタの薬液洗浄をオンライン洗浄で容易に行うことができる。
【0031】
本発明に係る薬液洗浄方法の特徴構成は、ロータの回転により移動可能な固液分離部が設けてある固液分離装置と、当該固液分離部を洗浄溶媒で洗浄する洗浄ユニットと、を備えた薬液洗浄システムにおいて、前記固液分離部の汚れを検知する汚れ検知工程と、当該汚れ検知工程によって前記固液分離部の汚れを検知した後に、薬液を供給する薬液供給部からの前記薬液を前記洗浄溶媒として、前記固液分離部を前記洗浄ユニットによって洗浄する薬液洗浄工程と、を有する点にある。
【0032】
本構成によれば、固液分離部の汚れを検知した後に、汚れが蓄積した固液分離部の薬液洗浄を行うことができる。この薬液洗浄は、オンライン洗浄で行うことができ、予期せぬタイミングで固液分離部のオフライン洗浄をしなくてよいため、固液分離装置の水処理に支障をきたす虞がなくなる。
【0033】
本発明に係る薬液洗浄方法の特徴構成は、前記薬液洗浄工程が、外部の汚泥処理装置からの洗浄排液を前記薬液とした点にある。
【0034】
本構成によれば、固液分離部の汚れを検知した後に、外部の汚泥処理装置の洗浄排液を洗浄溶媒として再利用することで、汚れが蓄積した固液分離部の薬液洗浄を行うことができる。この薬液洗浄は、オンライン洗浄で行うことができ、予期せぬタイミングで固液分離部のオフライン洗浄をしなくてよいため、施設の水処理に支障をきたす虞がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】実施形態の薬液洗浄システムを示す概略図である。
【
図2】無端帯状フィルタを備えたフィルタ機構を示す平面図である。
【
図4】実施形態の洗浄ユニットおよび無端帯状フィルタの態様を示す概略図である。
【
図5】別実施形態1の洗浄ユニットおよび無端帯状フィルタの態様を示す概略図である。
【
図6】別実施形態2の洗浄ユニットおよび無端帯状フィルタの態様を示す概略図である。
【
図7】別実施形態3の洗浄ユニットおよび無端帯状フィルタの態様を示す概略図である。
【
図8】別実施形態4の洗浄ユニットおよび無端帯状フィルタの態様を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1,2に示したように、本発明の薬液洗浄システムSは、ロータ21の回転により移動可能な固液分離部11が設けてある固液分離装置Xと、当該固液分離部11を洗浄溶媒Cで洗浄する洗浄ユニット60と、を備える。
【0037】
洗浄ユニット60は、固液分離部11に洗浄溶媒Cを吹き付け可能な単一あるいは複数のスプレー部を有するスプレー機構62を備え、複数種類の洗浄溶媒Cを択一的にまたは同時に固液分離部11に吹き付け可能に構成してある(
図1,4)。本実施形態では、スプレー機構62が単一のスプレー部(洗浄水スプレー部62a)を有し、複数種類の洗浄溶媒C(洗浄水C1,薬液C2)を同時に固液分離部11に吹き付け可能に構成した場合について説明する。
【0038】
具体的には、
図4に示したように、洗浄ユニット60は、洗浄溶媒Cとして洗浄水C1を供給する洗浄水供給部61と、固液分離部11に洗浄水C1を吹き付け可能な洗浄水スプレー部62a(スプレー機構62)と、洗浄水供給部61および洗浄水スプレー部62aを接続して洗浄水C1が流下する洗浄管部63aと、を備える。
【0039】
さらに、薬液洗浄システムSは、薬液C2を供給する薬液供給部64からの薬液C2を洗浄溶媒Cとして、固液分離部11を洗浄水スプレー部62aによって洗浄するように構成してある。
【0040】
本発明の薬液洗浄方法は、上記の薬液洗浄システムSにおいて、固液分離部11の汚れを検知する汚れ検知工程A1と、当該汚れ検知工程A1によって固液分離部11の汚れを検知した後に、薬液C2を供給する薬液供給部64からの薬液C2を洗浄溶媒Cとして、固液分離部11を洗浄ユニット60によって洗浄する薬液洗浄工程A2と、を有する(
図3,4)。
【0041】
薬液C2は、次亜塩素酸ナトリウム等を使用することができるが、これに限定されるものではない。また、薬液C2の濃度は、通常の薬液洗浄が得行える濃度であれば、特に限定されるものではない。
【0042】
本実施形態では、固液分離装置Xをロータリフィルタ装置とし、固液分離部11を無端帯状フィルタとした場合について説明するが、これらの態様に限定されるものではない。
【0043】
ロータリフィルタ装置Xは、通流経路1を横切るように配置され、当該通流経路1を流れる被処理水W1に含まれる固体を濾過する装置である。当該通流経路1は、水槽である筐体2の内部に設けてある。筐体2には被処理水W1の流入口3と流出口4とが設けてある。
【0044】
ロータリフィルタ装置Xは、
図1に示したように、被処理水W1が流入する筐体2の内部の一次側(流入側)に設けた開口部2Aに沿って移動する無端帯状フィルタ11が備えられ、無端帯状フィルタ11に被処理水を通流させて固体を濾過するように構成してある。本実施形態のロータリフィルタ装置Xは、周回軌道Pに沿って無端状に配列された複数のパネルフィルタ(無端帯状フィルタの例)11を備えて通流経路1を横切るように配置してあるフィルタ機構10と、各パネルフィルタ11を周回軌道Pに沿って移動させる移動機構20と、が備えられ、移動機構20によって各パネルフィルタ11を移動させながら、パネルフィルタ11によって構成される濾過面Fに周回軌道Pの外方から内方へと被処理水W1を通流させて固体を濾過するように構成してある場合について説明する。
【0045】
ロータリフィルタ装置Xは、
図1,4に示したように、さらに、パネルフィルタ11の裏面から表面にむけて高圧の洗浄溶媒Cを噴射するスプレー機構62(洗浄水スプレー部62a:洗浄ユニット60の一部)と、各パネルフィルタ11が濾過した被処理水W1中の固体を各パネルフィルタ11から除去する除去機構(図外)と、筐体であるハウジング6と、を備える。ロータリフィルタ装置Xの各部は、他の材質を明記する場合を除き、ステンレス鋼、例えばSUS304を適当に加工することによって製造してある。
【0046】
本実施形態のロータリフィルタ装置Xは、被処理水W1の流路の上流側から下流側に傾く態様で設けられ、移動機構20によって、被処理水W1が流入する一次側においてパネルフィルタ11が下方から上方に移動する。このとき、被処理水W1に含まれる固体(し渣など)はパネルフィルタ11によって構成される濾過面Fに遮られ、被処理水W1中の水分であるろ過水W2は濾過面Fを通過して流出口4へ移流する。
【0047】
本実施形態における周回軌道Pが、
図1に示したように、二か所の折返部Pa,Pcと、折返部Pa,Pc間を結ぶ二か所の直線部Pb,Pdと、を有する場合について説明する。折返部Paは、通流経路1における通流方向の上流側に設けてあり、折返部Pcは、通流経路1における通流方向の下流側であって水面上に設けてある。直線部Pbは、通流経路1における通流方向の上流側において折返部Pa,Pc間に設けてあり、直線部Pdは、通流経路1における通流方向の下流側において折返部Pa,Pc間に設けてある。
【0048】
各パネルフィルタ11は、
図1において時計回りの矢印で示されるとおり、移動機構20によって周回軌道Pに沿って、折返部Pa、直線部Pb、折返部Pc、直線部Pdの順に移動させられる。その際、直線部Pbにあるときに当該フィルタ機構10の濾過面Fとして機能する。
【0049】
除去機構は、パネルフィルタ11の表面の固体を掻き落とすスクレーパや、パネルフィルタ11から除去された固体を回収する回収部等を備えて構成してある。濾過された固体は、折返部Pcから直線部Pdへ移行する際に、除去機構5によって各パネルフィルタ11から除去される。
【0050】
濾材13は、網目が0.1mm~1.0mm程度の金網から構成され、濾材13は枠体12の濾材配設部に対して溶接や焼結等によって取り付けてあるが、このような態様に限定されるものではない。また、当該金網は、平織、綾織、平畳織、綾畳織等であってよく、網目は濾過する固体の流径に応じて適当なものを採用するとよい。
【0051】
移動機構20は、
図1,2に示したように、折返部Pcを構成するスプロケット(ロータ)21と、折返部Pa及び直線部Pb、Pdを構成する案内レール22(22a,22b,22d)と、各パネルフィルタ11が取り付けられるとともに、ロータ21と噛み合う状態で当該ロータ21と案内レール22とに亘って巻き掛けられたローラチェーン23と、ロータ21を回転駆動させる電動機24と、を備える。尚、電動機24の駆動軸からの出力は、伝達機構25を介してロータ21の回転軸に伝達される。
【0052】
このように構成された移動機構20によってロータ21を回転させるとこれに噛み合わされたローラチェーン23が案内レール22に沿って案内されつつ、周回軌道Pに沿って移動する。
【0053】
ロータ21を回転駆動させる電動機24は、制御装置30と電気的に接続されており、ロータ21の運転状態に関する情報(回転数、電流値など)を制御装置30に送信するように構成してある。
【0054】
制御装置30は、電動機24から受信した運転状態に関する情報に基づいてパネルフィルタ11の走行距離を演算し、演算して得られた結果を記録するように構成してある公知のコンピュータの態様とすることができる。即ち、制御装置30は、演算装置、記憶装置、および入出力装置などの、コンピュータとして一般的な構成要素を含む。ロータリフィルタ装置Xにおいて、パネルフィルタ11の一次側には、水位計7が設けてあり、パネルフィルタ11の一次側の水位を検出できる。水位計7の出力は、制御装置30に入力される。制御装置30には、ロータリフィルタ装置Xの水位に応じてロータ21(電動機24)の回転数を制御するPID制御を行うための制御プログラムがインストールしてある。
【0055】
図4に示したように、薬液洗浄システムSは、洗浄水供給部61から供給される洗浄水C1を洗浄溶媒Cとして使用し、洗浄管部63aを経由して洗浄水スプレー部62aによって洗浄水C1をパネルフィルタ11に吹き付けるように構成してある。洗浄水供給部61は、洗浄水C1を貯留する洗浄水槽とすればよい。洗浄水C1は水であれば特に限定されるものではないが、水道水や雑用水等を使用するとよい。本実施形態では、雑用水を使用した場合について説明する。
【0056】
また、薬液洗浄システムSは、薬液供給部64から供給される薬液C2を洗浄溶媒Cとして使用し、洗浄管部63aを経由して洗浄水スプレー部62aによって薬液C2をパネルフィルタ11に吹き付けるように構成してある。薬液供給部64は、例えば薬液C2を収容した薬液容器(ポリタンク等)の態様とすればよいが、このような態様に限定されるものではない。この態様では、例えば薬液容器の薬液C2を洗浄水C1が貯留してある洗浄水槽に注入(バッチ式)することで、薬液C2を洗浄水スプレー部62aによってパネルフィルタ11に吹き付けることができる。このときパネルフィルタ11に吹き付けられる洗浄溶媒Cは、洗浄水C1および薬液C2の混合溶媒となる。
【0057】
即ち、通常運転時は、洗浄水スプレー部62aから高圧の洗浄水C1をパネルフィルタ11の裏面から表面にむけて吹き付けることで、付着したし渣や固形物を除去してパネルフィルタ11を再生することができる。しかし、洗浄水C1の吹き付けの弱い箇所等で、し渣の絡みや固形物の付着が徐々に多くなり、パネルフィルタ11の汚れが次第に蓄積することがあった。本発明における薬液洗浄システムSは、パネルフィルタ11に洗浄溶媒Cを吹き付け可能な単一のスプレー部(洗浄水スプレー部62a)を有するスプレー機構62を備え、複数種類の洗浄溶媒C(洗浄水C1および薬液C2)を同時にパネルフィルタ11に吹き付け可能に構成してあり、洗浄水スプレー部62aによって薬液C2をパネルフィルタ11に吹き付けることができるため、汚れが蓄積したパネルフィルタ11の薬液洗浄を行うことができる。この薬液洗浄はオンライン洗浄で行うことができ、オフライン洗浄をしなくてよい。
【0058】
このようにオフライン洗浄をしなくて済むため、ロータリフィルタ装置Xから、パネルフィルタ11を取り外す手間、薬液の取扱い、および、手洗い洗浄などの手作業を省略することができ、作業者の負担を軽減することができる。また、オフライン洗浄をしないため、パネルフィルタ11を浸漬させる水槽や、洗浄するスペースが不要となる。
【0059】
本発明における薬液洗浄システムSは、洗浄の要否を判断できる制御装置30をさらに備え、洗浄ユニット60は、洗浄溶媒Cによるパネルフィルタ11の洗浄開始あるいは洗浄停止の指令を制御装置30から受け取るように構成してある。
【0060】
本構成では、例えば使用者がパネルフィルタ11の薬液洗浄を開始する場合、あるいは停止する場合に、スイッチ(図外)をオン操作あるいはオフ操作することで、洗浄ユニット60の洗浄管部63aに備えてあるポンプ65aを駆動あるいは停止させる指令を制御装置30から受け取るように構成すればよいが、このような態様に限定されるものではない。ポンプ65aを駆動させることで、洗浄溶媒C(洗浄水C1および薬液C2の混合溶媒)によるパネルフィルタ11の薬液洗浄を開始することができる。また、ポンプ65aを停止させることで、当該薬液洗浄を停止することができる。
【0061】
本構成では、薬液洗浄の開始あるいは停止を、制御装置30によって容易に制御することができる。
【0062】
薬液洗浄を行うタイミングは、例えば使用者が目視などでパネルフィルタ11の汚れが蓄積したことを判断したときとすればよいが、このような態様に限定されるものではない。他の態様としては、制御装置30が、パネルフィルタ11の運転状態に基づいてパネルフィルタ11の汚れの蓄積を検知するように構成し、当該汚れの蓄積を検知したとき、パネルフィルタ11の洗浄を開始するように構成してもよい(詳細は後述する)。
【0063】
本構成では、制御装置30における運転プログラムに、オンライン洗浄プログラムを組み込み、パネルフィルタ11の汚れの蓄積の検知、および、薬液洗浄の自動化を図ることができる。そのため、計画的にパネルフィルタ11の薬液洗浄を実施することができる。また、薬液洗浄の自動化を図ることで、使用者のスキルやノウハウによるところが減り、維持管理メンテナンスの省力化につながる。
【0064】
このように、パネルフィルタ11の汚れを検知する汚れ検知工程A1を行った後、パネルフィルタ11を洗浄ユニット60によって洗浄する薬液洗浄工程A2を行う。
当該薬液洗浄工程A2は、パネルフィルタ11に薬液C2を吹き付ける処理の他、スクレーパによってパネルフィルタ11の表面の固体を掻き落とす処理、パネルフィルタ11に洗浄水C1を吹き付けてパネルフィルタ11の表面の固体を洗い流す処理などを追加して行ってもよい。
【0065】
本発明の薬液洗浄方法によれば、パネルフィルタ11の汚れを検知した後に、汚れが蓄積したパネルフィルタ11の薬液洗浄を行うことができる。この薬液洗浄は、オンライン洗浄で行うことができる。
【0066】
制御装置30において汚れの蓄積を検知する構成を以下に説明する。
汚れの蓄積の検知は、制御装置30が、パネルフィルタ11の運転状態に基づいて検知するように構成するとよい。この場合、制御装置30は、パネルフィルタ11の運転状態に関する運転値を記録できるように構成する。即ち、当該制御装置30は、設定した所定期間毎に、記録したパネルフィルタ11の運転値を集計して期間運転値を算出し、当該期間運転値を走行時間で割った期間平均値を算出するように構成してある。
【0067】
本実施形態では、運転値を走行距離とした場合について説明する。この場合、制御装置30は、当該無端帯状フィルタ11の走行距離を演算して記録できるように構成してある。さらに、当該制御装置30は、設定した所定期間毎に、記録した無端帯状フィルタ11の走行距離を集計して期間走行距離(期間運転値の一例)を算出し、当該期間走行距離を走行時間で割った期間平均速度(期間平均値の一例)を算出するように構成してある。
【0068】
制御装置30は、パネルフィルタ11の走行距離を、設定した設定時間毎(例えば1分毎)に電動機24から受信した運転状態に関する情報に基づいて演算し、演算して得られた結果を記録する。設定時間は適宜設定すればよいため、上記の時間に限定されるものではない。
【0069】
所定期間は、所望の範囲の時間を設定することができる。本実施形態では所定期間を1週間とした場合について説明する。
【0070】
このようにして設定した所定期間毎に、記録したパネルフィルタ11の走行距離を集計して期間走行距離を算出する。即ち、上記の設定時間毎に得られた走行距離の複数の結果を、所定期間(1週間)毎に集計(加算)して期間走行距離を算出する。
【0071】
次に、当該期間走行距離を走行時間で割った期間平均速度を算出する。算出された期間平均速度は、制御装置30に記憶される。
【0072】
本構成のように、所定期間を設定して期間平均速度を算出することで、水質と水量の変動によるロータリフィルタ装置Xへの影響を、平均化してパネルフィルタ11の汚れの具合を判断することができる。これにより、ロータ21の回転速度の瞬時変化だけでは見分けることのできないパネルフィルタ11の汚れの蓄積を見分けることができるようになる。また、所定期間を設定することで監視期間を設定することとなり、常時監視せずに済むため、労力を削減することができる。
【0073】
制御装置30に記憶された期間平均速度は、表示装置40に表示することができる(
図1)。当該表示装置40は、制御装置30に記憶されたデータを表示できる態様であれば、特に限定されるものではなく、公知のモニタ等を使用することができる。このとき、使用者は、表示装置40に表示された期間平均速度に基づいてパネルフィルタ11の汚れの具合を判断することができる。
【0074】
表示装置40は、当該期間平均速度のみを表示してもよいし、算出した期間平均速度をグラフ化して表示するように構成してもよい。また、表示装置40は、設定した閾値をグラフ上に表示してもよい。
【0075】
薬液洗浄システムSは、使用者にパネルフィルタ11の汚れ具合を報知できる警報装置50を備えることができる(
図1)。
【0076】
警報装置50は制御装置30と電気的に接続してある。当該制御装置30は、制御装置30に記憶してある期間平均速度および設定した閾値に基づいてパネルフィルタ11の汚れの具合を判断し、当該汚れが蓄積していると判断すれば警報装置50によって警報アラームを発するように構成してある。
【0077】
制御装置30は、記憶してある期間平均速度および設定した閾値を比較し、例えば期間平均速度が閾値より大きくなると、パネルフィルタ11に汚れが蓄積している(或いは汚れの蓄積の予兆)と判断するように構成するとよい。
【0078】
制御装置30は、前記判断に基づき、使用者にパネルフィルタ11に汚れが蓄積している、或いは汚れの蓄積の予兆があることを報知する警報アラームを警報装置50によって発するためのシグナルを、警報装置50に伝達するように構成するとよい。
【0079】
当該警報アラームは、例えば音、光および振動など、使用者に警報を報知することができる態様であれば、特に限定されるものではない。
【実施例0080】
〔実施例1〕
本発明の薬液洗浄システムSにおける薬液洗浄方法について、以下に説明する。
ロータリフィルタ装置Xにおいて、制御装置30はパネルフィルタ11の汚れを検知する汚れ検知工程A1を行い、汚れを検知した。この後、薬液洗浄工程A2を行うに際し、電動機24は最低速度(例えば6Hz)で駆動させた。
【0081】
薬液洗浄工程A2では、ポリタンク(薬液供給部64)に収容してある所定濃度の次亜塩素酸ナトリウム(薬液C2)を洗浄水C1が貯留してある洗浄水槽(洗浄水供給部61)に注入(バッチ式)した。次亜塩素酸ナトリウムの濃度は洗浄効果が認められる濃度であれば特に限定されるものではない。薬液C2を洗浄水供給部61に注入する際には、事前に薬液C2の濃度が調整できれば、バッチ式の注入の態様は限定されるものではない。その後、ポンプ65aを駆動させて薬液C2をパネルフィルタ11に所定量噴霧した。
【0082】
具体的には、被処理水W1の流入を止めた後に薬液C2をパネルフィルタ11に噴霧した。このとき、被処理水W1に接していない水面より上のパネルフィルタ11に薬液C2を噴霧した後に電動機24を停止して数分間(例えば10分間)静置し、電動機24を再駆動して薬液C2を噴霧していないパネルフィルタ11の部位に薬液C2を噴霧した後に電動機24を停止して数分間静置した。この噴霧~静置の処理を複数回(例えば3~4回)繰り返した。パネルフィルタ11の全体に薬液C2をできるだけ均一に噴霧するため、パネルフィルタ11を1~2周させた。これにより、通流経路1より被処理水W1を抜くことなくパネルフィルタ11の洗浄効果を得ることができた。尚、被処理水W1の流入を止め、筐体2から被処理水W1を抜き、パネルフィルタ11の全体に薬液C2を噴霧した後に静置してもよい。これにより一度に噴霧できる利点がある。
【0083】
薬液C2の噴霧を終了して充分量の薬液C2をパネルフィルタ11に吹き付けた後、1時間程度静置して汚れの内部まで浸透させた。静置後、被処理水W1の流入を開始し、パネルフィルタ11に洗浄水C1を吹き付けてパネルフィルタ11の表面の固体を洗い流した。
【0084】
このように、本発明の薬液洗浄方法では、オンラインでパネルフィルタ11の薬液洗浄を行うことができた。
【0085】
〔別実施形態1〕
上述した実施形態では、薬液供給部64を、薬液C2を収容した薬液容器の態様とした場合(バッチ式)について説明したが、これに限定されず、薬液供給部64を、薬液C2を貯留する薬液貯留槽64aを設置した態様としてもよい(
図5)。
【0086】
即ち、本実施形態では、
図5に示したように、洗浄ユニット60は、洗浄水供給部61と、薬液C2を供給する薬液供給部64(薬液貯留槽64a)と、を備え、洗浄水C1が流下する洗浄管部63aと、薬液供給部64から薬液C2が流下する薬液管部63bと、を接続してある場合について説明する。本実施形態では、薬液管部63bをポンプ65aの上流に接続する場合について説明するが、これに限らず、ポンプ65aの下流に接続してもよい。
【0087】
薬液管部63bにはポンプ65bを備え、当該ポンプ65bを駆動させる指令を制御装置30から受け取るように構成してある。
【0088】
本実施形態では、パネルフィルタ11の汚れが蓄積して薬液洗浄を行うタイミングになれば、ポンプ65bを駆動させて薬液貯留槽64aから薬液管部63bを経由して薬液C2を流下させる。このとき、薬液管部63bおよび洗浄管部63aが接続してあり、ポンプ65aも駆動させることで、薬液C2は洗浄管部63aを経由して洗浄水スプレー部62aに至り、洗浄水スプレー部62aによって薬液C2をパネルフィルタ11に吹き付けることができる。このときパネルフィルタ11に吹き付けられる洗浄溶媒Cは、洗浄水C1および薬液C2の混合溶媒となるため、本構成では、複数種類の洗浄溶媒C(洗浄水C1および薬液C2)を同時にパネルフィルタ11に吹き付けることができる。
【0089】
本構成では、薬液C2を薬液貯留槽64aから連続式で薬液を供給し、当該薬液を洗浄管部63aに合流させてパネルフィルタ11に吹き付けることができるため、効率よくパネルフィルタ11の薬液洗浄を行うことができる。
【0090】
また、本構成では、薬液C2を洗浄水スプレー部62aによってパネルフィルタ11に吹き付けることができるため、既存の洗浄水C1による洗浄水スプレー部62aおよび洗浄管部63aを、そのまま用いることができる。そのため、薬液洗浄システムSの配管部品点数が減り、配管系統が複雑化し難くなる。
【0091】
〔別実施形態2〕
上述した実施形態では、薬液管部63bおよび洗浄管部63aを接続してある場合について説明したが、薬液管部63bおよび洗浄管部63aを接続せずに、薬液C2をパネルフィルタ11に吹き付けるように構成してもよい(
図6)。
【0092】
即ち、本実施形態では、
図6に示したように、洗浄ユニット60は、薬液C2を供給する薬液供給部(薬液貯留槽)64を備え、スプレー機構62は、パネルフィルタ11に洗浄水C1を吹き付け可能な洗浄水スプレー部62aと、パネルフィルタ11に薬液C2を吹き付け可能な薬液スプレー部62bと、を備えてある。このように、本実施形態では、スプレー機構62が複数のスプレー部62a,62bを有する場合について説明する。
【0093】
本実施形態では、薬液供給部64および薬液スプレー部62bを接続して薬液C2が流下する薬液管部63bを備え、当該薬液管部63bにはポンプ65bを備え、当該ポンプ65bを駆動させる指令を制御装置30から受け取るように構成してある。
【0094】
本実施形態では、パネルフィルタ11の汚れが蓄積して薬液洗浄を行うタイミングになれば、ポンプ65bを駆動させて薬液供給部64から薬液管部63bを経由して薬液C2を流下させる。薬液C2は薬液管部63bを経由して薬液スプレー部62bに至り、薬液スプレー部62bによって薬液C2をパネルフィルタ11に吹き付けることができる。
【0095】
このように、薬液洗浄時にパネルフィルタ11に吹き付けられる洗浄溶媒Cは薬液C2のみとなる。一方、通常運転時は、洗浄水スプレー部62aから洗浄水C1をパネルフィルタ11に吹き付ける。そのため、本構成では、複数種類の洗浄溶媒C(洗浄水C1および薬液C2)を択一的にパネルフィルタ11に吹き付けることができる。
【0096】
図6には、周回軌道Pにおける直線部Pbの側から薬液スプレー部62bによって薬液C2をパネルフィルタ11に吹き付ける場合を示したが、これに限定されず、周回軌道Pにおける直線部Pdの側から薬液スプレー部62bによって薬液C2をパネルフィルタ11に吹き付けてもよい。
【0097】
本構成では、洗浄水C1を吹き付け可能な洗浄水スプレー部62aとは別に薬液専用の薬液スプレー部62bを備えて、当該薬液スプレー部62bによって薬液C2をパネルフィルタ11に吹き付けることができる。そのため、設定した薬液の濃度を維持した状態でパネルフィルタ11の薬液洗浄をオンライン洗浄で行うことができる。
【0098】
〔別実施形態3〕
上述した実施形態では、薬液C2をパネルフィルタ11に吹き付ける場合について説明したが、これに限定されず、外部の汚泥処理装置(図外:膜分離活性汚泥法処理装置(MBR装置)など)からの洗浄排液を再利用して、当該洗浄排液をパネルフィルタ11に吹き付けるように構成してもよい(
図7)。
【0099】
即ち、本実施形態では、
図7に示したように、洗浄ユニット60は、薬液供給部64が外部の汚泥処理装置からの洗浄排液C3を供給可能に構成してあり、薬液スプレー部62bによってパネルフィルタ11に洗浄排液C3を洗浄溶媒Cとして吹き付け可能に構成してある。
【0100】
本実施形態では、薬液供給部64として、洗浄排液C3を貯留する洗浄排液貯留槽(洗浄排液供給部64b)を設置した態様とした以外は、
図6の構成と同様とした場合について説明する。
【0101】
本実施形態では、パネルフィルタ11の汚れが蓄積して薬液洗浄を行うタイミングになれば、ポンプ65bを駆動させて洗浄排液供給部64bから薬液管部63bを経由して洗浄排液C3を流下させる。洗浄排液C3は薬液管部63bを経由して薬液スプレー部62bに至り、薬液スプレー部62bによって洗浄排液C3をパネルフィルタ11に吹き付けることができる。
【0102】
このように、薬液洗浄時にパネルフィルタ11に吹き付けられる洗浄溶媒Cは洗浄排液C3のみとなる。一方、通常運転時は、洗浄水スプレー部62aから洗浄水C1をパネルフィルタ11に吹き付ける。そのため、本構成では、複数種類の洗浄溶媒C(洗浄水C1および洗浄排液C3)を択一的にパネルフィルタ11に吹き付けることができる。
【0103】
図7には、周回軌道Pにおける直線部Pbの側から薬液スプレー部62bによって洗浄排液C3をパネルフィルタ11に吹き付ける場合を示したが、これに限定されず、周回軌道Pにおける直線部Pdの側から薬液スプレー部62bによって洗浄排液C3をパネルフィルタ11に吹き付けてもよい。
【0104】
本構成では、外部の汚泥処理装置の洗浄排液C3を再利用することができる。即ち、当該洗浄排液C3には次亜塩素酸ナトリウム等の薬液が含まれており、本発明の薬液洗浄システムSの薬液洗浄においても使用することができる。そのため、当該洗浄排液C3を再利用すれば薬液使用量が減って薬液洗浄システムSのランニングコストの低減ができるとともに、排液量も低減することができ、環境負荷も低減することができる。
【0105】
また、本構成では、洗浄水C1を吹き付け可能な洗浄水スプレー部62aとは別に薬液専用の薬液スプレー部62bを備えて、当該薬液スプレー部62bによって洗浄排液C3をパネルフィルタ11に吹き付けることができる。そのため、洗浄排液C3によるパネルフィルタ11の薬液洗浄をオンライン洗浄で行うことができる。
【0106】
本実施形態の薬液洗浄方法は、汚れ検知工程A1と、薬液洗浄工程A2と、を有する上記の薬液洗浄システムSにおいて、薬液洗浄工程A2が、外部の汚泥処理装置からの洗浄排液C3を薬液としてある。
【0107】
本構成では、パネルフィルタ11の汚れを検知した後に、外部の汚泥処理装置の洗浄排液C3を洗浄溶媒Cとして再利用することで、汚れが蓄積したパネルフィルタ11の薬液洗浄を行うことができる。この薬液洗浄は、オンライン洗浄で行うことができる。
【0108】
〔別実施形態4〕
上述した実施形態では、薬液スプレー部62bによってパネルフィルタ11に洗浄排液C3を吹き付けた場合について説明したが、これに限定されず、洗浄水スプレー部62aによって洗浄排液C3をパネルフィルタ11に吹き付けるように構成してもよい(
図8)。
【0109】
即ち、本実施形態では、
図8に示したように、薬液供給部64として、洗浄排液C3を貯留する洗浄排液貯留槽(洗浄排液供給部64b)を設置して、薬液供給部64が外部の汚泥処理装置からの洗浄排液C3を供給可能に構成した態様とした以外は、
図5の構成と同様とした場合について説明する。
【0110】
本実施形態では、パネルフィルタ11の汚れが蓄積して薬液洗浄を行うタイミングになれば、ポンプ65bを駆動させて洗浄排液供給部64bから薬液管部63bを経由して洗浄排液C3を流下させる。このとき、薬液管部63bおよび洗浄管部63aが接続してあり、ポンプ65aも駆動させることで、洗浄排液C3は洗浄管部63aを経由して洗浄水スプレー部62aに至り、洗浄水スプレー部62aによって洗浄排液C3をパネルフィルタ11に吹き付けることができる。
【0111】
このように、薬液洗浄時にパネルフィルタ11に吹き付けられる洗浄溶媒Cは、洗浄水C1および洗浄排液C3の混合溶媒となるため、本構成では、複数種類の洗浄溶媒C(洗浄水C1および洗浄排液C3)を同時にパネルフィルタ11に吹き付けることができる。
【0112】
本構成では、通常の洗浄水C1による洗浄水スプレー部62aおよび洗浄管部63aをそのまま用いて、外部の汚泥処理装置の洗浄排液C3を再利用することができる。即ち、当該洗浄排液C3には次亜塩素酸ナトリウム等の薬液が含まれており、本発明の薬液洗浄システムSの薬液洗浄においても使用することができる。そのため、薬液洗浄システムSの配管部品点数が減り、配管系統が複雑化し難くなり、さらに、薬液使用量が減って薬液洗浄システムSのランニングコストの低減ができるとともに、排液量も低減することができ、環境負荷も低減することができる。
【0113】
〔別実施例5〕
上述した実施形態では、固液分離装置Xとして、無端帯状フィルタ11を備えたロータリフィルタ装置を適用した場合について説明した。しかし、固液分離装置Xはロータリフィルタ装置に限定されず、円筒ドラムを備えた帯状フィルタ式ドラム型濾過装置や、固液分離部11としてドラムスクリーンを備えた固液分離装置など、施設に流入する被処理水の水質と水量によって、1次側の水位変動に対して、駆動モータを速度制御する固液分離装置であれば、適用できる。