(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024043988
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】農作業機用台車
(51)【国際特許分類】
A01B 51/04 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
A01B51/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149267
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 大輔
【テーマコード(参考)】
2B041
【Fターム(参考)】
2B041AA13
2B041AA20
2B041AB05
2B041AC03
2B041BA02
(57)【要約】
【課題】 車幅の増大を抑制して走行車体と共に移動できる農作業機用台車を提供することを目的とする。
【解決手段】 キャスタを備え作業機Rを非接地姿勢に支持すべく設けられ、被牽引部材によって走行車体に連結した状態で走行車体ともに走行し、作業機Rの使用時における幅方向を、走行車体の前後方向に対して略平行にした状態で走行車体に連結する農作業機用台車とした。また、キャスタ57を備えた下部フレーム56Uと下部フレーム56Uから上下方向に延びる縦フレーム56Vを備え、被牽引部材58を作業機Rに設けてなる。さらにキャスタ62を備えた下部フレーム61Uと下部フレーム61Uから上下方向に延びる縦フレーム61Vを備え、走行車体に対する被牽引部材64を縦フレーム61Vに設けてなる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャスタ(57,62,65,66)を備え作業機(R)を非接地姿勢に支持すべく設けられ、被牽引部材(58,64)によって走行車体に連結した状態で走行車体ともに走行し、作業機(R)の使用時における幅方向を、走行車体の前後方向に対して略平行にした状態で走行車体に連結したことを特徴とする農作業機用台車。
【請求項2】
キャスタ(57)を備えた下部フレーム(56U)と下部フレーム(56U)から上下方向に延びる縦フレーム(56V)を備え、被牽引部材(58)を作業機(R)に設けてなる請求項1に記載の農作業機用台車。
【請求項3】
キャスタ(62)を備えた下部フレーム(61U)と下部フレーム(61U)から上下方向に延びる縦フレーム(61V)を備え、走行車体に対する被牽引部材(64)を縦フレーム(61V)に設けてなる請求項1に記載の農作業機用台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業機用台車に関する。
【背景技術】
【0002】
トラクタに装着して使用する作業機をトラクタから取り外した状態で安定的に支持するスタンドが公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業機を装着した状態で公道を走行する場合、作業機を含めた作業車両全体の幅が所定の幅を超えると対向車線にはみ出すことがあり、通常よりも走行に注意を要する場合があった。
【0005】
本発明は、車幅の増大を抑制して走行車体と共に移動できる農作業機用台車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、キャスタ57,62,65,66を備え作業機Rを非接地姿勢に支持すべく設けられ、被牽引部材58,64によって走行車体に連結した状態で走行車体ともに走行し、作業機Rの使用時における幅方向を、走行車体の前後方向に対して略平行にした状態で走行車体に連結する農作業機用台車とした。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、キャスタ57を備えた下部フレーム56Uと下部フレーム56Uから上下方向に延びる縦フレーム56Vを備え、被牽引部材58を作業機Rに設けてなる。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
キャスタ62を備えた下部フレーム61Uと下部フレーム61Uから上下方向に延びる縦フレーム61Vを備え、走行車体に対する被牽引部材64を縦フレーム61Vに設けてなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、幅方向を走行車体の前後方向に向けた状態で走行車体に連結して走行することにより、公道走行において幅の増大を抑制して作業機を牽引できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明における実施の形態の農用トラクタの側面図である。
【
図2】本発明における実施の形態の農用トラクタの平面図である。
【
図3】本発明における実施の形態の農用トラクタのロータリ耕耘装置の側面図である。
【
図4】(A)本発明における実施の形態の農用トラクタの作業用スタンド一例を示す側面図、(B)その平面図である。
【
図5】(A)本発明における実施の形態の農用トラクタの作業用スタンド一例を示す側面図、(B)その平面図である。
【
図6】本発明における実施の形態の農用トラクタの牽引走行状態を示す平面図である。
【
図7】(A)本発明における実施の形態の農用トラクタのキャスタ一例を示す一部断面の正面図、(B)その側面図である。
【
図8】本発明における実施の形態の農用トラクタの作業用スタンドの別例を示す側面図である。
【
図9】本発明における実施の形態の農用トラクタの作業用スタンドの別例を示す側面図である。
【
図10】(A)本発明における実施の形態の農用トラクタの作業用スタンドの更に別例を示す側面図、(B)その平面図である。
【
図11】(A)本発明における実施の形態の農用トラクタのフロントゲージ輪状態の側面図、(B)本発明における実施の形態の農用トラクタのリヤゲージ輪状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1および2は、トラクタを示すものであり、この走行車体1前部のボンネット2内部にディーゼルエンジンEを搭載し、このエンジンEの回転動力をミッションケース3内の変速装置に伝え、この変速装置で減速された回転動力を前輪4及び後輪5に伝えるようにしている。エンジンEの後方に前輪4を操舵するステアリングハンドル6が装備され、更に、その後方には運転席7が設置されている。ミッションケース3の後上部には油圧シリンダケース8を備え、このシリンダケース8の左右両側には、油圧昇降機構の一部を構成するリフトアーム9が回動自在に取り付けられている。リフトアーム9は昇降用油圧シリンダ10の伸縮作動により上下動する。車体後部には、トップリンク11と左右のロアーリンク12からなる3点リンク機構を設け、同リンク機構にロータリ作業機(ロータリ耕耘装置または耕耘ロータリ装置とも呼ばれる)Rを装着し、リフトロッド13を介してロアーリンク12をリフトアーム9に連結することにより、作業機Rを昇降可能に構成している。
【0013】
前記ハンドル6や運転席7等は、キャビン16によって覆われている。キャビン16は、例えば防振ゴム等の弾性部材を介して車体に固定されてあり、車体の振動がキャビン16に伝達されにくくしている。
【0014】
尚キャビン16は、フロア17と、フロア17左右前部に立設した前部支柱18と、運転席7の後部左右に立設した後部支柱19と、前後中間部に立設する中間支柱20と、これら支柱上端同士を接続する上フレーム21とによって一体化した枠組み構成とし、ルーフ22で覆われている。そして、前記運転席7を支持するボックス状のシートフレーム23、運転席7後面を囲う後部プレート24、後輪5の上部を覆う左右フェンダ25等を剛体化して強度を確保し、さらに、前後側面にはガラス窓部を構成し、左右開閉ドア26部から昇降できる。
【0015】
図3に基づいて後部装着の作業機Rとしてのロータリ耕耘装置について説明する。左右のロアーリンク12,12の後端部間には門形のヒッチフレーム28を架設し、このヒッチフレーム28の上部中央位置に上部フック29を固設するとともにトップリンク11の後端部を連結し、更に、ヒッチフレーム28の左右下端部に下部フック30,30を装着してクイックヒッチ装置31が構成されている。
【0016】
尚、下部フック30にはレバー32の前後動によって回動するロックプレート33が枢着されており、ロータリ耕耘装置R側の下部ピン34が下部フック30へ嵌入されたときに、該ロックプレート33によって下部ピン34をロックできるようにしてある。
【0017】
一方、ロータリ耕耘装置Rの上部中央にはマスト36が設けられており、このマスト36の前端部に上部ピン37を設ける。また、ロータリ耕耘装置Rのフレーム38には前記下部フック30,30に対峙して下部ピン34,34を左右へ突設する。
【0018】
而して、ロータリ耕耘装置Rの耕耘爪39の上方はメインカバー40により被蔽され、メインカバー40の後部にリヤカバー41を回動自在に枢着する。これらメインカバー40とリヤカバー41は図外電動モータの駆動により一体となって耕耘軸43の軸回りに回動可能に形成され、耕深を浅く設定するとメインカバー40とリヤカバー41が後方へ回動し、耕深を深く設定するとメインカバー40とリヤカバー41が前方へ回動する。
【0019】
尚、メインカバー40に突設されたハンガプレート45に水平軸芯を有した支持軸45aを回動可能に設け、下端側をリヤカバー41に取り付けたプレッシャロッド46の途中を上記支持軸45aに形成した貫通孔に通して上下動自在に装着し、このプレッシャロッド46に巻装した下部バネ46aにてリヤカバー41の所定角度以上の上昇を許容するがそれ以上の上昇を抑制すべく下方へ押圧し、リヤカバー41の跳ね上がりを抑止する一方、プレッシャロッド46の上端側にはリヤカバー41の過剰な下方揺動を規制する上部バネ46bを巻装している。
【0020】
なお、トラクタ後部のPTO軸47からの駆動力は自在継手48を経由してロータリフレーム49中央の伝動ボックス50内伝動機構に入力され、さらにロータリフレーム49内の伝動軸、及び耕耘伝動ケース51内チェン等を経て耕耘軸52を回転駆動する。耕耘軸52の駆動によって前記耕耘爪39で土壌耕耘できる。
【0021】
図4から
図7により、農作業機用台車(農作業機用スタンドまたはスタンドとも呼ばれる)55について説明する。一対のL型フレーム56a,56bを耕耘ロータリ装置Rの左右幅を確保できる間隔にて連結フレーム56cで一体化することにより、下部フレーム56Uと縦フレーム56Vに形成し、下部フレーム56Uにはキャスタ57を設けている。縦フレーム56Vの上端に、ロータリ耕耘装置Rのロータリフレーム49の左右端部側に設けた水平ロッド部49aを係合できる被牽引部材(係止フック部とも呼ばれる)58を構成している。
【0022】
スタンド55への載せ替えは次の手順で行う。トラクタ後部に装着状態の耕耘ロータリ装置Rを上昇させてスタンド55を所定下方位置にのぞませる。徐々に耕耘ロータリ装置Rを下降し、上記水平ロッド部49aを係止フック部58に係合させる。ヒッチフレーム28の上部フック29の係合を外す。ロータリ耕耘装置Rを乗せたスタンド55をトラクタ後方に移動する。
【0023】
なお、スタンド55に移されたロータリ耕耘装置Rの重心は前後左右に配置するキャスタ57の間隔内にあって転倒を招く恐れが無い。
【0024】
ロータリ耕耘装置Rの前記耕耘伝動ケース51の外側に、被牽引部材59を構成している。この被牽引部材59は、伝動ケース51に固定されるブラケット59aと、このブラケット59aに挿通自在に固定される挿通部59bと、挿通部と一体の連結杆59cからなり、ブラケット59aに対して挿通部59bを通常挿通固定状態と90度回転する状態とに変更できる構成とされていて、連結杆59cが横向きに突出する牽引状態(
図4)と、連結杆59cが下向く収納状態(
図5)に変更できる。
【0025】
前記被牽引部材59の連結杆59cは連結ピン孔59dを備え、トラクタ後部に構成される牽引ヒッチにピン連結できる。この連結状態は
図6のように、ロータリ耕耘装置Rの使用時における幅方向をトラクタ車体の前後方向に対して略平行にした状態、つまりロータリ耕耘装置Rの長手方向がトラクタ車体の進行方向に沿う状態で牽引できる。よって公道走行においても幅の増大を抑制してロータリ耕耘装置Rを牽引できる。
【0026】
キャスタ57について補足説明する。トラクタによる被牽引走行と、スタンド55をトラクタ後部から離れる移動する走行とに対応するため、平面視で0度と90度に切替え可能に構成している。すなわち、キャスタ57のブラケット60aに垂直の支点ピン60bを設け、下部フレーム56Uの下方には支点ピン60bを挿通可能な筒状ブラケット60cを設ける。支点ピン60bと筒状ブラケット60cには固定ピン挿通孔を形成し、標準状態と90度切換えた状態で固定できるよう構成している。
【0027】
図8,
図9は、作業機用スタンドの別例を示す。別例のスタンド61は、スタンド55同様に下部フレーム61U、縦フレーム61V及びキャスタ62を有する。そして縦フレーム61Vの左右中央上部に、前記トラクタ後部に構成するクイックヒッチ装置31と同構成のクイック装置63を設けている。したがってトラクタ後部に装着されたロータリ耕耘装置Rは、トラクタから取り外されてクイック装置63のフック63aに係合して保持される。したがって、左右長の異なる作業機にも対応できる。
【0028】
前記縦フレーム61Vに被牽引部材64を構成する。縦フレーム61Vの上下中間部にブラケット64aを固定し横向きに連結杆64bを設けてなる。このように構成すると、前記実施例と同様に、ロータリ耕耘装置Rの使用時における幅方向をトラクタ車体の前後方向に対して略平行にした状態、つまりロータリ耕耘装置Rの長手方向がトラクタ車体の進行方向に沿う状態で牽引できる。よって公道走行においても幅の増大を抑制してロータリ耕耘装置Rを牽引できる。
【0029】
次いで
図10,
図11に基づき、作業用スタンドの更に別例を示す。ロータリ耕耘装置Rのフレーム部前後左右にキャスタ65,66を設けるものである。フレーム部前方に向けてブラケット67を設け、各前端部に筒状のホルダ68を設けて、前後左右キャスタのうち、前キャスタ65を装着するものである。一方ロータリ耕耘装置Rのフレーム部から後方の突出する連結フレーム69後端左右のヒッチ70部には後キャスタ66を装着している。各キャスタ65,66はそれぞれ独立して上下調整が可能に設けられ、ロータリ耕耘装置Rを上昇させて耕耘爪39が非接地の状態とすることができる。したがって、適宜に被牽引部材を構成することによってトラクタで公道走行を行うことができる。また、キャスタの支持高さを調整できる構成とすることにより、前キャスタ65はフロントゲージ輪(
図11(A))に、後キャスタ66はリヤゲージ輪に代用できる(同図(B))。
【0030】
なお上記実施例において、図示は省略したが、被牽引部材は第一の実施例同様に耕耘伝動ケース51に設けるとよい。
【符号の説明】
【0031】
56U下部フレーム
56V縦フレーム
57キャスタ
58被牽引部材
61U下部フレーム
61V縦フレーム
62キャスタ
64被牽引部材
65キャスタ
66キャスタ