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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044005
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】磁気メモリ
(51)【国際特許分類】
   H10B 61/00 20230101AFI20240326BHJP
   H10N 50/10 20230101ALI20240326BHJP
   H10N 50/80 20230101ALI20240326BHJP
【FI】
H01L27/105 447
H01L43/08 Z
H01L43/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149297
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】小池 正浩
(72)【発明者】
【氏名】カンサ ミカエル アルノー
(72)【発明者】
【氏名】梅津 信之
(72)【発明者】
【氏名】中西 務
(72)【発明者】
【氏名】アグン セテイアデイ
(72)【発明者】
【氏名】矢ヶ部 恵弥
(72)【発明者】
【氏名】平山 重之
(72)【発明者】
【氏名】門 昌輝
(72)【発明者】
【氏名】大寺 泰章
(72)【発明者】
【氏名】中村 志保
(72)【発明者】
【氏名】橋本 進
(72)【発明者】
【氏名】近藤 剛
【テーマコード(参考)】
4M119
5F092
【Fターム(参考)】
4M119AA06
4M119BB01
4M119CC01
4M119CC10
4M119DD05
4M119DD17
4M119DD34
4M119DD37
4M119DD43
4M119DD52
4M119EE05
4M119EE21
4M119EE26
4M119HH01
5F092AA15
5F092AB07
5F092AB08
5F092AC12
5F092AD23
5F092AD24
5F092AD26
5F092BB22
5F092BB23
5F092BB36
5F092BB42
5F092BB43
5F092BC03
5F092BC04
5F092BC13
5F092BC14
5F092BC43
5F092BD03
5F092BD04
5F092BD20
(57)【要約】
【課題】磁気メモリの信頼性を向上する。
【解決手段】実施形態の磁気メモリは、第1の方向において隣り合う第1及び第2の部分を含む磁性体を含み、第1の部分は、磁性体の第1の方向に対して垂直な第2の方向における寸法が第1の部分内で極大となる磁性体の第1の位置で第2の方向における第1の寸法を有し、第2の部分は、磁性体の第2の方向における寸法が第2の部分内で極小となる磁性体の第2の位置で第2の方向における第1の寸法より小さい第2の寸法を有し、第1の部分は、第1の位置と第2の位置との間の第3の位置を介して、第2の部分と連続し、第2の方向から見て磁性体の外周面に対応する曲線が、第1の位置と第3の位置との間を延在し、前記曲線は、前記第1の位置と前記第2の位置とを接続する直線より磁性体の中心側を通過する。
【選択図】 図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部分と、第1の方向において前記第1の部分と隣り合う第2の部分と、を含む管状の磁性体と、
前記磁性体と離間して設けられた書き込み配線と、
前記磁性体に接続された読み出し素子と、
を具備し、
前記第1の部分は、前記磁性体の前記第1の方向に対して垂直な第2の方向における寸法が前記第1の部分内で極大となる前記磁性体の第1の位置において、前記第2の方向における第1の寸法を有し、
前記第2の部分は、前記磁性体の前記第2の方向における寸法が前記第2の部分内で極小となる前記磁性体の第2の位置において、前記第2の方向における前記第1の寸法より小さい第2の寸法を有し、
前記第1の部分は、前記第1の位置と前記第2の位置との間の第3の位置を介して、前記第2の部分と連続し、
前記第2の方向から見て、前記磁性体の外周面に対応する曲線が、前記第1の位置と前記第3の位置との間を延在し、
前記曲線は、前記第1の位置と前記第2の位置とを接続する直線より前記磁性体の中心側を通過する、
磁気メモリ。
【請求項2】
前記磁性体は、磁壁を含み、
前記第1の位置と前記第3の位置との間の第4の位置における前記磁壁の体積変化率は、前記第3の位置における前記磁壁の体積変化率より大きい、
請求項1に記載の磁気メモリ。
【請求項3】
前記第2の方向から見て、前記第2の部分の外周面に対応する輪郭は、前記第2の位置と前記第3の位置との間において、直線を含む、
請求項1に記載の磁気メモリ。
【請求項4】
前記磁性体は、前記磁性体の中心軸側に窪んだ第3の部分を、前記第1の部分内に含む、
請求項1に記載の磁気メモリ。
【請求項5】
前記第3の位置における前記磁性体の前記第2の方向における第3の寸法は、前記第1の寸法より小さく、前記第2の寸法より大きく、
前記第1の方向における前記第1の位置と前記第3の位置との間の寸法は、前記第1の方向における前記第2の位置と前記第3の位置との間の寸法と等しい、
請求項1に記載の磁気メモリ。
【請求項6】
第1の部分と、第1の方向において前記第1の部分と隣り合う第2の部分と、を含む管状の磁性体と、
前記磁性体と離間して設けられた書き込み配線と、
前記磁性体に接続された読み出し素子と、
を具備し、
前記第1の部分は、前記磁性体の前記第1の方向に対して垂直な第2の方向における寸法が前記第1の部分内で極大となる前記磁性体の第1の位置において、前記第2の方向における第1の寸法を有し、
前記第2の部分は、前記磁性体の前記第2の方向における寸法が前記第2の部分内で極小となる前記磁性体の第2の位置において、前記第2の方向における前記第1の寸法より小さい第2の寸法を有し、
前記第1の部分は、前記第1の位置と前記第2の位置との間の第3の位置を介して、前記第2の部分と連続し、
前記第1の位置と前記第3の位置との間における前記磁性体の前記第1の方向に垂直な断面の断面積は、非線形に変化し、
前記第1の位置と前記第3の位置との間の第4の位置における前記磁性体の断面積の変化率は、前記第3の位置における前記磁性体の断面積の変化率より大きい、
磁気メモリ。
【請求項7】
前記第2の位置と前記第3の位置との間における前記磁性体の前記第1の方向に垂直な断面の断面積は、線形に変化する、
請求項6に記載の磁気メモリ。
【請求項8】
前記第1の方向から見た前記第2の部分の断面積は、前記第1の方向から見た前記第1の部分の断面積より小さい、
請求項6に記載の磁気メモリ。
【請求項9】
前記磁性体は、磁壁を含み、
前記第4の位置における前記磁壁の体積変化率は、前記第2の位置と前記第3の位置との間の第5の位置における前記磁壁の体積変化率より大きい、
請求項6に記載の磁気メモリ。
【請求項10】
第1の部分と、第1の方向において前記第1の部分と隣り合う第2の部分と、を含む管状の磁性体と、
前記磁性体と離間して設けられた書き込み配線と、
前記磁性体に接続された読み出し素子と、
を具備し、
前記第1の部分は、前記磁性体の前記第1の方向に対して垂直な第2の方向における寸法が前記第1の部分内で極大となる前記磁性体の第1の位置において、前記第2の方向における第1の寸法を有し、
前記第2の部分は、前記磁性体の前記第2の方向における寸法が前記第2の部分内で極小となる前記磁性体の第2の位置において、前記第2の方向における前記第1の寸法より小さい第2の寸法を有し、
前記第1の部分は、前記第1の位置と前記第2の位置との間の第3の位置を介して、前記第2の部分と連続し、
前記第1の位置と前記第3の位置との間の第4の位置における前記磁性体の前記第2の方向における寸法の変化率は、前記第3の位置における前記磁性体の前記第2の方向における寸法の変化率より大きい、
磁気メモリ。
【請求項11】
前記第2の位置と前記第3の位置との間における前記磁性体の前記第2の方向における寸法は、前記第1の位置と前記第3の位置の間における前記磁性体の前記第2の方向における寸法より小さい、
請求項10に記載の磁気メモリ。
【請求項12】
前記磁性体の前記第2の方向における前記寸法は、前記第1の位置から前記第2の位置に向かって徐々に小さくなる、
請求項10に記載の磁気メモリ。
【請求項13】
前記磁性体は、磁壁を含み、
前記第4の位置における前記磁壁の体積変化率は、前記第2の位置と前記第3の位置との間の第5の位置における前記磁壁の体積変化率より大きい、
請求項10に記載の磁気メモリ。
【請求項14】
前記第3の位置における前記磁性体の前記第2の方向における第3の寸法は、前記第1の寸法より小さく、前記第2の寸法より大きく、
前記第1の方向における前記第1の位置と前記第3の位置との間の寸法は、前記第1の方向における前記第2の位置と前記第3の位置との間の寸法と等しい、
請求項10に記載の磁気メモリ。
【請求項15】
前記磁性体は、前記第1の部分と前記第2の部分とを前記第1の方向に沿って繰り返し含む、
請求項1に記載の磁気メモリ。
【請求項16】
前記書き込み配線は、前記磁性体の一端に隣り合い、
前記読み出し素子は、前記磁性体の他端に接続される、
請求項1に記載の磁気メモリ。
【請求項17】
前記磁性体の磁化の方向は、前記第1の方向に対して交差する方向に沿う、
請求項1に記載の磁気メモリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気メモリに関する
【背景技術】
【0002】
磁性細線を用いた磁気メモリが、研究及び開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許9153340号明細書
【特許文献2】米国特許9184212号明細書
【特許文献3】米国特許9293696号明細書
【特許文献4】特開2021-125642号公報
【特許文献5】特開2022-45204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁気メモリの信頼性を向上する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の磁気メモリは、第1の部分と、第1の方向において前記第1の部分と隣り合う第2の部分と、を含む管状の磁性体と、前記磁性体と離間して設けられた書き込み配線と、前記磁性体に接続された読み出し素子と、を含み、前記第1の部分は、前記磁性体の前記第1の方向に対して垂直な第2の方向における寸法が前記第1の部分内で極大となる前記磁性体の第1の位置において、前記第2の方向における第1の寸法を有し、前記第2の部分は、前記磁性体の前記第2の方向における寸法が前記第2の部分内で極小となる前記磁性体の第2の位置において、前記第2の方向における前記第1の寸法より小さい第2の寸法を有し、前記第1の部分は、前記第1の位置と前記第2の位置との間の第3の位置を介して、前記第2の部分と連続し、前記第2の方向から見て、前記磁性体の外周面に対応する曲線が、前記第1の位置と前記第3の位置との間を延在し、前記曲線は、前記第1の位置と前記第2の位置とを接続する直線より前記磁性体の中心側を通過する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態の磁気メモリの全体構成を示すブロック図。
図2】第1の実施形態の磁気メモリのメモリセルアレイの構成例を示す模式図。
図3】第1の実施形態の磁気メモリのメモリセルユニットの構成例を示す鳥瞰図。
図4】第1の実施形態の磁気メモリのメモリセルユニットの構成例を示す断面図。
図5】第1の実施形態の磁気メモリのメモリセルの構成例を示す断面図。
図6】第1の実施形態の磁気メモリの特性を示す図。
図7】第1の実施形態の磁気メモリの特性を示す図。
図8】第1の実施形態の磁気メモリの特性を示す図。
図9】第1の実施形態の磁気メモリの特性を示す図。
図10】第1の実施形態の磁気メモリの動作例を示す図。
図11】第2の実施形態の磁気メモリのメモリセルユニットの構成例を示す断面図。
図12】第2の実施形態の磁気メモリのメモリセルの構成例を示す断面図。
図13】第2の実施形態の磁気メモリの特性を示す図。
図14】第2の実施形態の磁気メモリの特性を示す図。
図15】第2の実施形態の磁気メモリの特性を示す図。
図16】第2の実施形態の磁気メモリの特性を示す図。
図17】第3の実施形態の磁気メモリのメモリセルユニットの構成例を示す断面図。
図18】第3の実施形態の磁気メモリのメモリセルの構成例を示す断面図。
図19】第3の実施形態の磁気メモリの特性を示す図。
図20】第3の実施形態の磁気メモリの特性を示す図。
図21】第3の実施形態の磁気メモリの特性を示す図。
図22】第3の実施形態の磁気メモリの特性を示す図。
図23】実施形態の磁気メモリの変形例を示す図。
図24】実施形態の磁気メモリの変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、本実施形態について詳細に説明する。以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については、同一符号を付す。
また、以下の各実施形態において、末尾に区別化のための数字/英字を伴った参照符号を付された構成要素(例えば、回路、配線、各種の電圧及び信号など)が、相互に区別されなくとも良い場合、末尾の数字/英字が省略された記載(参照符号)が用いられる。
【0008】
(実施形態)
図1乃至図24を参照して、実施形態の磁気メモリについて、説明する。
【0009】
(1)第1の実施形態
図1乃至図10を参照して、第1の実施形態の磁気メモリについて、説明する。
【0010】
(a)構成例
図1乃至図5を参照して、本実施形態の磁気メモリの構成例について、説明する。
【0011】
図1は、本実施形態の磁気メモリ1の構成例を示すブロック図である。
【0012】
例えば、本実施形態の磁気メモリ1は、磁壁移動メモリ(磁壁シフトメモリ、又は、レーストラックメモリともよばれる)である。本実施形態の磁気メモリ1は、磁区の磁化の向きとデータが関連付けられる。本実施形態の磁気メモリ1は、データを所定のアドレスに記憶するために、磁性体内における磁壁(磁区)の位置を移動させる。
【0013】
図1に示されるように、本実施形態の磁気メモリ1は、メモリセルアレイ(メモリエリアともよばれる)100、ロウ制御回路110、カラム制御回路120、書き込み回路140、読み出し回路150、シフト回路160、I/O回路170、電圧生成回路180、及び、シーケンサ190などを含む。
【0014】
メモリセルアレイ100は、複数のメモリセルMC及び複数の配線(例えば、ビット線、ソース線及びフィールド線)を含む。各メモリセルMCは、対応する1つ以上の配線に接続される。メモリセルMCは、磁性体5を用いて形成される。メモリセルMCは、データを記憶する。
【0015】
ロウ制御回路110は、メモリセルアレイ100の複数のロウを制御する。ロウ制御回路110は、アドレスのデコード結果(ロウアドレス)を受ける。ロウ制御回路110は、アドレスのデコード結果に基づいたロウ(例えば、各種の配線)を、選択状態に設定する。以下において、選択状態に設定されたロウは、選択ロウとよばれる。選択ロウ以外のロウは、非選択ロウとよばれる。例えば、ロウ制御回路110は、マルチプレクサ、スイッチ回路及びドライバ回路などを含む。
【0016】
カラム制御回路120は、メモリセルアレイ100の複数のカラムを制御する。カラム制御回路120は、アドレスのデコード結果(カラムアドレス)を受ける。カラム制御回路120は、アドレスのデコード結果に基づいたカラム(例えば、各種の配線)を、選択状態に設定する。以下において、選択状態に設定されたカラム(又はビット線)は、選択カラム(又は選択ビット線)とよばれる。選択カラム以外のカラムは、非選択カラム(又は非選択ビット線)とよばれる。例えば、カラム制御回路120は、マルチプレクサ、スイッチ回路及びドライバ回路などを含む。
【0017】
書き込み回路(書き込み制御回路、又は、書き込みドライバともよばれる)140は、書き込み動作(データの書き込み)のための各種の制御を行う。書き込み回路140は、書き込み動作時において、電流及び(又は)電圧によって形成される書き込みパルスを、メモリセルアレイ100に供給する。これによって、データが、メモリセルアレイ100内(選択されたメモリセルMC内)に書き込まれる。
【0018】
例えば、書き込み回路140は、ロウ制御回路110を介して、メモリセルアレイ100に接続される。書き込み回路140は、電圧源及び(又は)電流源、パルス生成回路、ラッチ回路などを有する。
【0019】
読み出し回路(読み出し制御回路、又は、読み出しドライバともよばれる)150は、読み出し動作(データの読み出し)のための各種の制御を行う。読み出し回路150は、読み出し動作時において、読み出しパルス(例えば、読み出し電流)をメモリセルアレイ100に供給する。読み出し回路150は、メモリセルMCから出力された信号をセンスする。このセンス結果に基づいて、データが、メモリセルアレイ100(選択されたメモリセルMC)から読み出される。
【0020】
例えば、読み出し回路150は、カラム制御回路120を介して、メモリセルアレイ100に接続される。読み出し回路150は、電圧源及び(又は)電流源、パルス生成回路、ラッチ回路、センスアンプ回路などを有する。
【0021】
シフト回路(シフト制御回路、又は、シフトドライバともよばれる)160は、シフト動作(データのシフト)のための各種の制御を行う。シフト回路160は、シフト動作時において、磁性体5内の磁壁(磁区)を移動させるための電流パルス(又は電圧パルス)を、メモリセルアレイ100に供給する。以下において、磁壁を移動させるために磁性体5に供給されるパルスは、シフトパルスとよばれる。
【0022】
例えば、シフト回路160は、ロウ制御回路110及び(又は)カラム制御回路120を介して、メモリセルアレイ100に接続される。シフト回路160は、電圧源及び(又は)電流源、パルス生成回路などを含む。
【0023】
尚、書き込み回路140、読み出し回路150及びシフト回路160は、互いに独立な回路に限定されない。例えば、書き込み回路140、読み出し回路150及びシフト回路160は、相互に利用可能な共通な構成要素を有し、1つの統合的な回路として、磁気メモリ1内に配置されてもよい。
【0024】
I/O回路(入出力回路)170は、各種の信号の転送のためのインターフェイス回路である。I/O回路170は、書き込み動作時において、外部デバイス(例えば、プロセッサ、コントローラ又はホストデバイス)2からのデータDTを、書き込みデータとして、書き込み回路140に転送する。I/O回路170は、読み出し動作時において、メモリセルアレイ100から読み出し回路150へ出力されたデータを、読み出しデータとして、外部デバイス2へ転送する。I/O回路170は、外部デバイス2からのアドレスADR及びコマンドCMDを、シーケンサ190に転送する。I/O回路170は、様々な制御信号CNTを、シーケンサ190と外部デバイス2との間で転送する。
【0025】
電圧生成回路180は、外部デバイス2(又は電源)から提供された電源電圧VDD及びグランド電圧VGNDを用いて、メモリセルアレイ100の各種の動作のための電圧を生成する。例えば、電圧生成回路180は、書き込み動作時において、書き込み動作のために生成された様々な電圧を、書き込み回路140に出力する。電圧生成回路180は、読み出し動作時において、読み出し動作のために生成された様々な電圧を、読み出し回路150に出力する。電圧生成回路180は、シフト動作時において、シフト動作のために生成された様々な電圧を、シフト回路160に出力する。
【0026】
シーケンサ(ステートマシーン、内部コントローラ又は制御回路ともよばれる)190は、制御信号CNT、アドレスADR及びコマンドCMDに基づいて、磁気メモリ1内の各回路の動作を制御する。シーケンサ190は、例えば、コマンドデコーダ、アドレスデコーダ、及びラッチ回路などを有する。
【0027】
例えば、コマンドCMDは、磁気メモリ1が実行すべき動作を示す信号である。例えば、アドレスADRは、メモリセルアレイ100内の動作対象の1つ以上のメモリセル(以下では、選択セルとよばれる)の座標を示す信号である。アドレスADRは、選択セルのロウアドレス及びカラムアドレスを含む。例えば、制御信号CNTは、磁気メモリ1と外部デバイス2との間の動作タイミング及び磁気メモリ1の内部の動作タイミングを制御するための信号である。
【0028】
<メモリセルアレイ>
図2乃至図4を参照して、本実施形態の磁気メモリ1のメモリセルアレイの構成例について、説明する。
【0029】
図2は、本実施形態の磁気メモリ1における、メモリセルアレイ100の構成例を示す模式図である。
【0030】
図2に示されるように、本実施形態の磁気メモリ1において、複数のメモリセルユニットUTが、メモリセルアレイ100内に設けられている。
【0031】
複数のメモリセルユニットUTは、基板(図示せず)上に2次元(X方向及びY方向)に配列されている。各メモリセルユニットUTは、磁性体5を含む。磁性体5は、基板の上面(X-Y平面)に対して垂直な方向(Z方向)に延在している。例えば、磁性体5は、磁性細線ともよばれる。
尚、X方向及びY方向は、基板の上面に平行な方向である。Y方向は、X方向と交差する。Z方向は、X方向及びY方向からなる平面に交差(例えば、直交)する。
【0032】
複数のソース線SL及び複数のビット線BLが、メモリセルアレイ100内に設けられている。複数のビット線BLは、Z方向において複数のソース線SLの上方に設けられている。複数のビット線BLは、Z方向において複数のソース線SLの下方に設けられてもよい。複数のソース線SLは、X-Y平面内において、Y方向に配列される。ソース線SLのそれぞれは、X方向に延在する。複数のビット線BLは、X-Y平面内において、X方向及びY方向に対して斜め方向に配列される。ビット線BLは、X方向及びY方向に対して斜め方向に延在する。
【0033】
尚、複数のビット線BLは、X-Y平面内において、X方向に配列されてもよい。この場合、ビット線BLのそれぞれは、Y方向に延在してもよい。
【0034】
各メモリセルユニットUTは、1つのソース線SLと1つのビット線BLとの間に設けられている。メモリセルユニットUTの一端は、ビット線BLに接続される。メモリセルユニットUTの他端は、ソース線SLに接続される。
【0035】
X方向に並ぶ複数のメモリセルユニットUTは、同じソース線SLに接続される。X方向に並ぶ複数のメモリセルユニットUT(同じソース線SLに接続されたメモリセルユニットUT)は、互いに異なるビット線BLに接続されている。同じビット線BLに接続されたメモリセルユニットUTは、X方向及びY方向において斜め方向に配列されている。
【0036】
フィールド線FLが、Z方向において、基板の上方に設けられている。フィールド線FLは、例えば、X方向に延在する。1つのフィールド線FLは、X方向に並ぶ複数のメモリセルユニットUTとY方向において隣り合う。
【0037】
フィールド線FLは、磁気メモリ1の書き込み動作時における、磁場書き込み方式によるデータの書き込みのための配線(以下では、書き込み配線ともよばれる)である。磁場書き込み方式の書き込み動作時に、書き込みパルス(例えば、書き込み電流)が、フィールド線FLに供給される。書き込み電流によって、フィールド線FLの周りに、磁場が発生する。発生した磁場が、メモリセルユニットUTの磁性体5に印加される。発生した磁場の向きに応じて、磁性体5の磁場が印加された部分の磁化MMの向きが、設定される。これによって、データが、磁性体5内に書き込まれる。
磁場の向きは、フィールド線FL内における書き込み電流の流れる方向に応じて、変わる。それゆえ、書き込むべきデータに応じて、フィールド線FL内における書き込み電流の流れる向きが、設定される。
【0038】
各メモリセルユニットUTにおいて、複数のメモリセルMCが、各磁性体5内に設けられている。複数のメモリセルMCは、磁性体5内においてZ方向に配列される。これによって、複数のメモリセルMCは、メモリセルアレイ100内に3次元に配列される。
【0039】
各メモリセルMCのそれぞれは、セル領域(セル部又はデータ保持部ともよばれる)500を磁性体5内に含む。セル領域500は、メモリセルMCに対応するように磁性体5内に設けられた領域(部分)である。セル領域500は、磁化MMを有することが可能な磁性領域(磁性部、磁性層)である。
【0040】
メモリセルMCがデータを保持している場合、セル領域500は、磁化MMを有する。メモリセルMC内に格納されるデータは、セル領域500の磁化MMの向きと関連付けられている。
【0041】
磁性体5は、垂直磁気異方性又は面内磁気異方性を有する。セル領域500の磁化容易軸方向は、磁性体5の磁気異方性に応じる。
【0042】
メモリセルユニットUTは、複数のメモリセルMCに加えて、読み出し素子(図示せず)及びセレクタ(図示せず)を含む。読み出し素子及びセレクタの構成は、後述される。
【0043】
例えば、ソース線SL及びフィールド線FLは、ロウ制御回路110によって制御される。例えば、ビット線BLは、カラム制御回路120によって制御される。
書き込み回路140は、フィールド線FLに電流(又は電圧)を供給する。
読み出し回路150は、ビット線BLの電位又は電流を検知できる。
【0044】
図3及び図4を参照して、本実施形態の磁気メモリ1における、メモリセルユニットUTの構造について、説明する。
【0045】
図3は、本実施形態の磁気メモリ1のメモリセルユニットUTの構造例を示す鳥瞰図である。図4は、本実施形態の磁気メモリ1のメモリセルユニットUTの構造例を示す断面図である。
【0046】
図3及び図4に示されるように、メモリセルユニットUTにおいて、磁性体5aは、Z方向において、基板9の上方に設けられている。磁性体5aは、Z方向に延在する。
【0047】
磁性体5aのZ方向における一端(上端)は、導電層70に接続される。導電層70は、ビット線BLである。
【0048】
磁性体5aのZ方向における他端(下端)は、読み出し素子20及びセレクタ30を介して、導電層71に接続される。導電層71は、ソース線SLである。尚、磁性体5aのZ方向における一端は、読み出し素子20及びセレクタ30を介して、導電層70に接続されてもよい。この場合、フィールド線FLは、磁性体5aのZ方向における他端側に設けられてもよい。
【0049】
例えば、磁性体5aは、管状(筒状)の磁性層(以下では、磁壁移動層ともよばれる)である。管状の磁性体5aの中心軸CXは、Z方向に沿う。但し、磁性体5aの中心軸CXは、Z方向に対して傾いていてもよい。
【0050】
磁性体5aは、絶縁体(図示せず)に覆われている。但し、磁性体5aの筒の内部は、絶縁体によって埋め込まれること無しに、空隙であってもよい。
【0051】
例えば、磁性体5aの材料は、コバルト(Co)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)からなるグループから選択された少なくとも1つの元素と、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)からなるグループから選択された少なくとも1つの元素と、を含む材料である。より具体的な例としては、磁性体5aの材料は、CoPt、CoCrPt、FePt、CoPd、又はFePdなどである。尚、磁性体5aの材料は、上記の材料に限定されず、他の磁性材料が用いられてもよい。
【0052】
磁性体5aは、単層の磁性膜でもよい。磁性体5aは、基板9の表面に対して平行な方向に積層された複数の膜を含んでもよい。例えば、磁性体5aは、磁性膜と非磁性膜(例えば、酸化ハフニウム膜)とを含む構造を有し得る。
【0053】
例えば、磁性体5aが垂直磁気異方性を有する場合、磁化MMの向きは、基板9の上面に対して平行な方向に沿う。垂直磁気異方性の磁性体5aにおいて、磁性体5aの磁化MMは、磁性体5aの中心から磁性体5aの外周へ向かう方向、又は、磁性体5の外周から中心へ向かう方向を、向く。
【0054】
磁性体5aは、複数のメモリセルMC,MCA,MCBを含む。複数のメモリセルMC,MCA,MCBは、磁性体5a内において、Z方向に並んでいる。
各メモリセルMCに対応するセル領域500が、磁性体5a内に設けられている。1つのメモリセルMCが、1つのセル領域500内に設けられている。
【0055】
磁性体5a内の複数のメモリセルMC,MCA,MCBのうち最も上端側のメモリセルMCAは、基板9の表面に対して平行な方向において導電層75と隣り合う。導電層75は、フィールド線FLである。
【0056】
書き込み動作時において、フィールド線FLから発生した磁場が、メモリセルMCAに印加される。メモリセルMCAの磁化の向きが、印加された磁場によって制御される。
図3及び図4の例において、メモリセルMCAは、書き込み動作時に、書き込みセルとして機能する。書き込みセルMCAは、書き込み動作時に、書き込みデータが一時的に書き込まれるメモリセルである。
【0057】
磁性体5a内の複数のメモリセルMC,MCA,MCBのうち最も下端側のメモリセルMCBは、導電層41を介して読み出し素子20に接続される。
【0058】
メモリセルMCBの磁化(例えば、漏れ磁場)が、読み出し素子20に作用する。
図3及び図4の例において、メモリセルMCBは、読み出し動作時に、読み出しセルとして機能する。読み出しセルは、読み出し動作時に、読み出し対象のメモリセルからのデータを一時的に保持するメモリセルである。
【0059】
読み出し素子(再生素子ともよばれる)20は、磁性体5aとセレクタ30との間に設けられている。読み出し素子20は、磁性体5aとセレクタ30とに、電気的に接続される。例えば、読み出し素子20は、導電層41を介して、磁性体5aに接続されている。但し、導電層41が介在すること無しに、読み出し素子20が、磁性体5a(メモリセルMCB)に直接接触してもよい。
【0060】
読み出し素子20は、磁気メモリ1の読み出し動作時において、磁性体5a内の読み出しセルMCB内のデータを検知できる。
【0061】
読み出し素子20は、例えば、磁気抵抗効果素子20である。
【0062】
磁気抵抗効果素子20は、Z方向において磁性体5aと重なる位置に配置されている。但し、磁気抵抗効果素子20は、メモリセルMCBに磁気的に結合されていれば、Z方向において磁性体5aと重ならない位置に配置されてもよい。
【0063】
例えば、磁気抵抗効果素子20は、2つの磁性層21,23と非磁性層22とを含む。非磁性層22は、Z方向において2つの磁性層21,23の間に設けられている。2つの磁性層21,23及び非磁性層22は、磁気トンネル接合(MTJ)を形成する。以下において、磁気トンネル接合を含む磁気抵抗効果素子20は、MTJ素子とよばれる。MTJ素子20の非磁性層22は、トンネルバリア層とよばれる。
【0064】
磁性層23は、トンネルバリア層22を介して、Z方向において磁性層21の上方に設けられている。磁性層23は、トンネルバリア層22と導電層41との間に設けられている。磁性層21は、トンネルバリア層22と導電層42との間に設けられている。
【0065】
磁性層21,23は、例えば、コバルト、鉄、及びボロンなどを含む強磁性層である。磁性層21,23は、単層膜でもよいし、多層膜(例えば、人工格子膜)でもよい。トンネルバリア層22は、例えば、酸化マグネシウムを含む絶縁膜である。トンネルバリア層は、単層膜でもよいし、多層膜でもよい。
【0066】
各磁性層21,23は、面内磁気異方性又は垂直磁気異方性を有する。
例えば、磁性層21,23が垂直磁気異方性を有する場合、垂直磁気異方性を有する磁性層21,23の磁化容易軸方向は、磁性層の層面(膜面)に対して実質的に垂直である。この場合において、各磁性層21,23は、磁性層21,23の層面に対して実質的に垂直な磁化を有する。垂直磁気異方性を有する磁性層21,23の磁化の方向は、磁性層21,23の配列方向(Z方向)に対して平行である。
【0067】
例えば、磁性層21,23が面内磁気異方性を有する場合、面内磁気異方性を有する磁性層21,23の磁化容易軸方向は、磁性層の層面(膜面)に対して実質的に平行である。この場合において、各磁性層21,23は、磁性層21,23の層面に対して実質的に平行な磁化を有する。面内磁気異方性を有する磁性層21,23の磁化の方向は、磁性層21,23の配列方向(Z方向)に対して垂直である。
【0068】
磁性層21の磁化の向きは、不変(固定状態)である。磁性層23の磁化の向きは、可変である。
【0069】
以下において、磁化の向きが不変(固定状態)の磁性層21は、参照層とよばれる。以下において、磁化の向きが可変な磁性層23は、記憶層とよばれる。参照層21は、ピン層、ピンド層、磁化不変層、又は、磁化固定層とよばれる場合もある。記憶層23は、自由層、磁化自由層、又は、磁化可変層とよばれる場合もある。
【0070】
記憶層23の磁化の向きは、メモリセルMCBの磁化の向きと互いに連動して変化する。例えば、メモリセルMCBの磁化MMの漏れ磁場に応じて、記憶層23の磁化の向きは、変化する。これによって、記憶層23の磁化の向きは、メモリセルMCBの磁化の向きに応じる。
【0071】
本実施形態において、「参照層(磁性層)の磁化の向きが不変である」、又は、「参照層(磁性層)の磁化の向きが固定状態である」とは、記憶層の磁化の向きが変わる電流、電圧又は磁気的エネルギー(例えば、磁場)がMTJ素子20に供給された場合において、参照層の磁化の向きは電流、電圧又は磁気的エネルギーの供給の前後で変化しないことを、意味する。
【0072】
セレクタ(スイッチング素子ともよばれる)30は、MTJ素子20とソース線SLとの間に設けられている。セレクタ30は、導電層42を介して、MTJ素子20に電気的に接続されている。セレクタ30は、ソース線SLに直接接触している。導電体(図示せず)が、セレクタ30とソース線SLとの間に設けられてもよい。
【0073】
セレクタ30は、例えば、半導体層、化合物層(例えば、遷移金属酸化物層、又は、カルコゲナイド化合物層)、又は絶縁層などを含む。
【0074】
セレクタ30は、磁性体5a(メモリセルユニットUT)とソース線SLとの間の接続及び非接続の制御に用いられる。
【0075】
セレクタ30がオン状態(導通状態)に設定された場合、磁性体5aは、ソース線SLに電気的に接続される。セレクタ30がオフ状態(非導通状態)に設定された場合、磁性体5aは、ソース線SLから電気的に分離される。
例えば、セレクタ30のオン/オフは、ビット線BLとソース線SLとの間の電位差に応じて、制御される。
【0076】
オン状態のセレクタ30は、メモリセルユニットUTを、ソース線SLに電気的に接続する。オフ状態のセレクタ30は、メモリセルユニットUTを、ソース線SLから電気的に分離する。
【0077】
セレクタ30のオン/オフの制御によって、メモリセルアレイ100の複数のメモリセルユニットUTのうち動作対象の1つ以上のメモリセルユニットUTが、選択(活性化)される。メモリセルユニットUTが選択された場合、電流をメモリセルユニットUTに流すことができる。
【0078】
セレクタ30は、メモリセルユニットUTに双方向に電流を流すことが可能であることが好ましい。また、セレクタ30として、トランジスタを用いることが可能である。例えば、縦型トランジスタが、セレクタとしてのトランジスタに用いられてもよい。縦型トランジスタにおいて、チャネルがZ方向に延在する。ゲート電極が、このチャネルをX-Y平面内で取り囲む。このゲート電極に接続される配線は、ビット線BLが延在する方向と交差する方向に延在する。この場合、ソース線SLは、共通電極として各磁性体5aに共通に接続されてもよい。ソース線SLは、例えば、板状の電極とすることができる。
【0079】
例えば、図3及び図4のメモリセルユニットUTを有する磁気メモリは、FIFO(First-in First-out)方式の磁壁移動メモリ(例えば、シフトレジスタ)として機能する。
【0080】
図3及び図4に示されるように、本実施形態の磁気メモリ1において、管状の磁性体5aは、くびれ構造を有する。くびれ構造の磁性体5aにおいて、基板9の上面に対して平行な方向(X方向又はY方向)における磁性体5aの寸法(例えば、管状の磁性層の直径)は、Z方向において周期的に変化する。磁性体5aは、Z方向における所定の間隔(周期)で、くびれている。
【0081】
くびれ構造を有する磁性体5aは、基板9の上面に対して平行な方向における寸法がより大きくなる(例えば、最も大きくなる)極大点91と、基板9の上面に対して平行な方向における寸法がより小さくなる(例えば、最も小さくなる)極小点92とを、有する。極大点(極大部ともよばれる)91と極小点(極小部ともよばれる)92とが、磁性体5a内においてZ方向において交互に配列されている。
【0082】
後述する図5の(a)に示されるように、極大点91の位置において、磁性体5aは、基板9の上面に対して平行な方向(例えば、X方向及びY方向のうち少なくとも一方)における寸法D1を有する。例えば、寸法D1は、X方向(又はY方向)における磁性体5aの最大寸法(最大径)である。寸法D1は、極大点91の位置における磁性体5aの外径に相当する。
【0083】
極小点92の位置において、磁性体5aは、基板9の上面に対して平行な方向(例えば、X方向及びY方向のうち少なくとも一方)における寸法D2を有する。寸法D2は、寸法D1より小さい。例えば、寸法D2は、X方向(又はY方向)における磁性体5aの最小寸法(最小径)である。寸法D2は、極小点92の位置における磁性体5aの外径に相当する。
【0084】
磁性体5a内における極大点91の位置と極小点92との中間の位置は、中間点((又は、中間部又は境界部ともよばれる)95とよばれる。
【0085】
各メモリセルMCは、複数の凸部(山部ともよばれる)51及び複数の凹部(谷部又は裾部ともよばれる)52を、対応するセル領域500内に含む。凸部51及び凹部52は、磁性体5a内において、連続した1つの層である。磁性体5a内において、複数の凸部51及び複数の凹部52は、Z方向に交互に並ぶ。
【0086】
1つのメモリセルMCは、1つの凸部51及び2つの凹部52を含む。凸部51は、Z方向において、2つの凹部52間に設けられている。
【0087】
凸部51は、極大点91を経由した2つの中間点95間の部分(領域)に相当する。凸部51は、極大点91を含む。凸部51は、寸法D1を含む。
後述する図5の(b)に示されるように、Z方向から見た凸部51(磁性体5a)の断面積は、寸法D1の位置(極大点91の位置)で極大となる。
【0088】
凹部52は、中間点95と極小点92との間の部分(領域)に相当する。凹部52は、極小点92を含む。凹部52は、寸法D2を含む。
後述する図5の(c)に示されるように、Z方向から見た凹部52(磁性体5a)の断面積は、寸法D2の位置(極小点92の位置)で極小となる。
【0089】
例えば、中間点95における磁性体5aのZ方向から見た断面積は、極大点91の位置における磁性体5aのZ方向から見た断面積より小さく、極小点92の位置における磁性体5aのZ方向から見た断面積より大きい。
【0090】
尚、X方向(又はY方向)における円管状の磁性体5aの中心軸CXから磁性体5aの内側の端(内壁)までの寸法(内径)に関して、凹部52の内径は、凸部51の内径より小さい。
【0091】
例えば、X方向(又はY方向)における凸部51の頂部と凹部52の底部との間の寸法(間隔)が、凸部51と凹部52との間におけるくびれの深さとされる。尚、凸部51の頂部は、磁性体5aの最大寸法D1を有する部分である。凹部52の底部は磁性体5aの最小寸法D2を有する部分である。
【0092】
各凹部52の極小点92は、Z方向に隣り合う2つのメモリセルMCに共有される。極小点92は、隣り合うメモリセルMCの境界に配置されている。
【0093】
本実施形態において、隣り合うメモリセルMC,MCA,MCB(凸部51)の磁化の状態に応じて、磁壁DWが、凹部52内に保持される。凹部52は、磁壁保持部(又は、磁壁存在領域)52ともよばれる。
【0094】
Z方向に隣り合う2つのメモリセルMCが互いに異なる値(“0”又は“1”)のデータを記憶している場合、一方のメモリセルMCの磁化の向き(磁区)は、他方のメモリセルMCの磁化の向きと異なる。この場合において、磁壁DWが、一方のメモリセルMCの磁区と他方のメモリセルMCの磁区との間の境界に形成される。
【0095】
例えば、Z方向に隣り合う2つのメモリセルMCが同じ値のデータを記憶している場合、2つのメモリセルMCの磁化の向きは、同じである。この場合において、1つの磁区が、2つのメモリセルMCにまたがる。
【0096】
磁壁DWは、或る大きさの幅を有する。磁壁DWの幅は、例えば、数ナノメートルから十数ナノメートルである。
【0097】
磁壁DWは、小さい体積で安定化し得る。そのため、磁壁DWは、隣り合うメモリセルMCの境界の凹部52に存在し得る。この結果として、凹部52は、極小点92を共有する2つのメモリセルMCにおける磁壁保持部として用いられる。
【0098】
1つの凸部51を少なくとも含む構成が、周期的なくびれ構造を有する磁性体5aにおける、1周期分の領域となる。この1周期分の構成が、1つのメモリセルMCとして用いられる。
【0099】
本実施形態において、管状の磁性体5aにおける各部分51,52の寸法は、磁性体5aの外周(外壁)側の面を基準とする。但し、本実施形態における磁性体5aの各部分51,52の寸法の大小関係が満たされていれば、各部分51,52の寸法は、磁性体5aの内周(内壁)側の面を基準に規定されてもよい。
【0100】
図5を参照して、本実施形態の磁気メモリ1における、メモリセルMC及び磁性体5aの構造について、より具体的に説明する。
【0101】
図5は、本実施形態の磁気メモリ1のメモリセルMCの構造例を説明するための模式図である。図5の(a)は、本実施形態の磁気メモリ1における、メモリセルMCの断面構造を説明するための断面図である。図5の(b)は、図5の(a)のB-B線に対応する断面をZ方向から見た上面図を示している。図5の(c)は、図5の(a)のC-C線に対応する断面をZ方向から見た上面図を示している。
【0102】
図5の(a)に示されるように、磁性体5aにおいて、各メモリセルMCは、1つの凸部51と2つの凹部52とを含む。凹部52は、Z方向に関して凸部51の隣りの領域内に設けられている。凹部52は、メモリセルMC間の境界に存在する。
【0103】
本実施形態において、磁性体5aにおける凸部51と凹部52との境界は、寸法D1と寸法D2との間の中間の寸法D3を有する部分とする。例えば、寸法(外径)D3は、(D1+D2)/2と示される。中間点95は、寸法D3を有する部分に相当する。
例えば、中間点95は、Z方向における極大点91と極小点92との間の距離の半分の位置(1周期の4分の1の位置)上に設けられている。
【0104】
メモリセルMCは、Z方向における寸法H1を有する。寸法H1は、Z方向に隣り合う2つの凹部52間の間隔に相当する。例えば、中間点95は、Z方向において凹部52からH1/4の位置に設けられている。極大点91は、Z方向において凹部52からH1/2の位置に設けられている。
【0105】
図5の(b)及び(c)に示されるように、凸部51及び凹部52のそれぞれは、Z方向から見て、円環状の形状を有している。但し、凸部51及び凹部52のそれぞれは、Z方向から見て楕円環状の形状を有していてもよい。
【0106】
上述のように、X方向(又はY方向)における凹部52の極小点92での寸法(外径)D2は、X方向における凸部51の極大点91での寸法D1より小さい。
【0107】
本実施形態の磁気メモリ1において、磁性体5aにおける凸部51の厚さ(膜厚)は、磁性体5aにおける凹部52の厚さと異なる。
【0108】
凸部51は、X-Y平面に対して平行な方向(例えば、X方向又はY方向)において、厚さt1を有する。例えば、厚さt1は、凸部51の極大点91における寸法である。
凹部52は、X-Y平面に対して平行な方向(例えば、X方向又はY方向)において、厚さt2を有する。厚さt2は、厚さt1より小さい(薄い)。例えば、厚さt2は、凹部52の極小点92における寸法である。
【0109】
凸部51の厚さは、極大点91から中間点95に向かって徐々に減少する。
凹部52の厚さは、中間点95から極小点92に向かって徐々に減少する。
【0110】
例えば、磁性体5aの内径において、凸部51は、極大点91にて、寸法D1aを含む。寸法D1aは、厚さt1に応じて、寸法D1より小さい。磁性体5aの内径において、凹部52は、極小点92にて、寸法D2aを含む。寸法D2aは、厚さt2に応じて、寸法D2より小さい。
【0111】
本実施形態において、X-Y平面における凹部52の断面積(Z方向から見た断面積)は、各部51,52の外径D1,D2の違いに加えて各部51,52の厚さt1,t2の違いに応じて、X-Y平面における凸部51の断面積(Z方向から見た断面積)より小さくなる。
【0112】
それゆえ、磁性体5aの極小点92における凹部52の体積(凹部52のX-Y方向の断面積を磁壁のZ方向の幅で積分したもの)は、各部51,52の厚さの差に応じて、磁性体5aの極大点91における凸部51の体積(凹部51のX-Y方向の断面積を磁壁のZ方向の幅で積分したものもの)よりさらに小さくなる。
【0113】
本実施形態の磁気メモリ1において、メモリセルユニットUT内のデータのシフトは、磁性体5a内の磁壁DWに対するシフト動作によって、実行される。
後述のように、本実施形態の磁気メモリ1において、或るメモリセルMCに保持された磁壁DWは、磁性体5aに供給されたシフトパルス(例えば、電流パルス)によって、他のメモリセルMCに移動(シフト)される。磁気メモリ1の動作シーケンスの一例において、磁壁DWは、1回のシフトパルスの供給によって、1周期分(1つのメモリセルMC)ずつシフトされる。メモリセルMC間における磁壁DWの移動に伴って、メモリセルMC内の磁区(磁化)が、移動する。
【0114】
例えば、磁壁DWが、或るメモリセルMCの一端側の凹部(或るメモリセルの磁壁保持部)52内に存在する。この磁壁DWは、シフトパルスによって、凸部51を経由して、そのメモリセルMCの他端側の凹部(隣りのメモリセルの磁壁保持部)52内に移動する。尚、磁壁DWは、シフト動作(データのシフト)時の一時的な状態において、凸部51内に配置される場合もある。
【0115】
外径D2及び厚さt2を有する凹部52の体積(例えば、極小点92における磁性体5aの体積)は、外径D1及び厚さt1を有する凸部51の体積(例えば、極大点91における磁性体5aの体積)より小さい。
【0116】
このため、磁壁DWは、凹部52において安定に存在し得る。
【0117】
これによって、本実施形態の磁気メモリ1は、メモリセル間における磁壁の過度な移動を、抑制できる。それゆえ、本実施形態の磁気メモリ1は、移動された磁壁DWの位置の目標とする位置に対するずれを、小さくできる。
【0118】
また、後述のように、本実施形態の磁気メモリ1は、極小点92から極大点91にわたる磁性体5aの厚さの変化によって、凸部51内における磁壁の体積変化率を大きくできる。
【0119】
この結果として、本実施形態の磁気メモリ1は、極大点91近傍における磁壁DWの移動を、円滑化できる。
【0120】
それゆえ、本実施形態の磁気メモリ1は、磁壁のシフトエラーを抑制できる。
【0121】
尚、凸部51は、磁壁DWの移動方向に関して極大点91を中心に対称な形状を有している。それゆえ、本実施形態において、供給された所定のシフトパルスに対して、磁壁DWが磁性体5aの一端側から磁性体5aの他端側へ移動する場合及び磁壁DWが磁性体5aの他端側から磁性体5aの一端側へ移動する場合において、凸部51(セル領域500)の形状の非対称性に起因した磁壁DWの移動量(移動距離)のばらつきは、抑制され得る。
【0122】
(b)特性
図6乃至図9を参照して、本実施形態の磁気メモリ1の特性について、説明する。
【0123】
図6は、本実施形態の磁気メモリ1における、磁性体の外径及び内径の変化を示すグラフである。図6のグラフにおいて、縦軸は基板の上面に対して平行方向における磁性体の寸法に対応し、横軸は磁性体の延在方向(磁壁の移動方向)における磁性体内の位置に対応している。
【0124】
図6において、実線で示される特性P1a,P1zは、本実施形態の磁気メモリ1の特性を示している。一方、破線で示される特性P2a,P2zは、磁性体の厚さが凸部(極大点)から凹部(極小点)にわたって一定である磁気メモリ(以下では、比較例の磁気メモリとよばれる)の特性を示している。特性P1a,P2aは、磁性体の外径に対応する。特性P1z,P2zは、磁性体の内径に対応する。
【0125】
図6に示されるように、磁性体5aの外径及び内径は、極大点91と極小点92との間において、線形に変化する。
【0126】
本実施形態において、磁性体5aの厚さは、極大点91から極小点92に向かって徐々に減少する。上述のように、磁性体5aの極大点91における厚さt1は、磁性体5aの極小点92における厚さt2より厚い。
【0127】
例えば、磁性体5aの内壁側の部分が、トリミングされる。この場合において、極大点91から極小点92までにおける磁性体5aの内径の変化量(傾き)は、極大点91から極小点92までにおける磁性体5aの外径の変化量(傾き)より小さい。
極大点91及び極小点92における内径の寸法比(D1a/D2a)は、極大点91及び極小点92における外径の寸法比(D1/D2)と異なる。この結果として、磁性体5aの内径の変化率は、磁性体5aの外径の変化率と異なる。
【0128】
また、例えば、凸部51側における磁性体5aの径の変化率は、凹部52側における磁性体5aの径の変化率より大きい。
【0129】
図7は、本実施形態の磁気メモリ1における、Z方向から見た磁性体(磁壁)の断面積の変化を示すグラフである。図7のグラフにおいて、縦軸は断面積に対応し、横軸は磁性体の延在方向(磁壁の移動方向)における磁壁の中心の位置に対応している。
図7において、実線で示される特性P1bは、本実施形態の磁気メモリ1の特性を示している。一方、破線で示される特性P2bは、比較例の磁気メモリの特性を示している。
【0130】
図7に示されるように、比較例の磁気メモリの特性P2bのように、磁性体の厚さが一定である場合、Z方向から見た磁性体の断面積は、極大点91から極小点92に向かって線形に減少する。
【0131】
これに対して、本実施形態において、特性P1bに示されるように、磁性体5aの厚さが、凸部51の頂部(極大点91)から凹部52の底部(極小点92)に向かうにしたがって徐々に減少する場合、Z方向から見た磁性体5a(磁壁)の断面積は、極大点91から極小点92に向かって非線形に減少する。
【0132】
ここで、磁性体5aの断面積の変化率に関して、凸部51側の断面積の変化率は、凹部52側の断面積の変化率より大きい。
【0133】
図8は、本実施形態の磁気メモリ1における、磁性体内における磁壁の体積の変化を示すグラフである。図8のグラフにおいて、縦軸は磁壁の体積に対応し、横軸は磁性体の延在方向(磁壁の移動方向)における磁壁の中心の位置に対応している。
図8において、実線で示される特性P1cは、本実施形態の磁気メモリ1の特性を示している。一方、破線で示される特性P2cは、比較例の磁気メモリの特性を示している。
【0134】
本実施形態の磁気メモリ1において、磁性体5aの厚さが凸部51から凹部52に向かって薄くなる場合、特性P1cに示されるように、磁壁DWの体積の変化が、特性P2cに比較して、大きくなる。
【0135】
例えば、凸部51の頂部(極大点91)の近傍において、磁壁DWの体積の変化は、磁壁DWが或る幅を有するため、緩やかになる。
【0136】
図9は、本実施形態の磁気メモリにおける、磁壁の体積の変化率の推移を示すグラフである。図9のグラフにおいて、縦軸は磁壁の体積の変化率に対応し、横軸は磁性体の延在方向(磁壁の移動方向)における磁壁の中心の位置に対応している。例えば、磁壁の体積の変化率は、磁壁の中心の位置(x)に関する磁壁の体積(Vdw)の微分によって示される。
図9において、実線で示される特性P1dは、本実施形態の磁気メモリ1の特性を示している。一方、破線で示される特性P2dは、比較例の磁気メモリの特性を示している。
【0137】
図9に示されるように、磁壁DWがメモリセルMCの一端側の凹部52の極小点92に位置している場合、磁壁DWの体積変化率は、ゼロである。
【0138】
特性P1dに示されるように、磁壁DWの体積の変化率は、磁性体5aの厚さ及び外径の変化に応じて、磁壁DWが凹部52から凸部51に向かって移動するにしたがって、増加する傾向を示す。
【0139】
磁壁DWが凸部51の頂部(極大点91)の近傍に至ると、磁壁DWの体積の変化率は、増加から減少に転じる。磁壁DWが凸部51の頂部に達すると、磁壁DWの体積の変化率は、ゼロになる。
【0140】
磁壁DWが凸部51からメモリセルMCの他端側の凹部52に向かって移動するにしたがって、磁壁DWの体積変化率の絶対値は、増加する。
【0141】
磁壁DWが凹部52の極小点92に達すると、磁壁DWの体積変化率は、ゼロになる。
【0142】
ゼロの体積変化率は、磁壁DWが移動しにくいことを意味する。体積変化率の絶対値がゼロより大きくなるにしたがって、磁壁DWは、移動しやすくなる。それゆえ、磁壁DWの体積の変化率の絶対値が大きい領域内において、磁壁DWは、磁性体5a内を比較的容易に移動できる。
【0143】
それゆえ、本実施形態のように、磁壁DWの体積変化率の絶対値が、凸部51の近傍において大きい場合、磁壁DWは、凸部51の近傍において動きやすくなる。
【0144】
この結果として、本実施形態の磁気メモリ1は、磁壁DWのシフトエラーを減少できる。
【0145】
(c)動作例
図10を参照して、本実施形態の磁気メモリ1の動作例について、説明する。
【0146】
<書き込み動作>
本実施形態の磁気メモリの書き込み動作について、説明する。
【0147】
書き込み動作時において、本実施形態の磁気メモリ1は、書き込みコマンド、書き込みアドレス、及びメモリセルに書き込まれるべきデータ(書き込みデータ)を、外部デバイス2から受ける。
【0148】
シーケンサ190は、書き込みコマンドに応じて、磁気メモリ1内の各回路の動作を制御する。
【0149】
ロウ制御回路110及びカラム制御回路120は、書き込みアドレスに応じて、メモリセルアレイ100内のメモリセルユニットUTを選択する。
【0150】
データの書き込み動作時において、書き込み回路140は、書き込み電流を、フィールド線FLに流す。書き込み電流の流れる方向は、書き込みデータに応じて、設定される。例えば、1つメモリセルユニットUTは、Y方向において2つのフィールド線FLに挟まれている。この場合において、書き込み回路140は、メモリセルユニットUT(メモリセルMCA)を挟む2つのフィールド線FLに、互いに逆向きの書き込み電流を流す。
【0151】
書き込み電流の供給によって、磁場が、フィールド線FLから生じる。磁場の向きは、書き込み電流の流れる方向に応じる。
【0152】
発生した磁場が、磁性体5a内のメモリセルMCAに印加される。メモリセルMCA内の磁化の向きは、印加された磁場の向きに応じて、設定される。
【0153】
これによって、書き込みデータが、メモリセルMCA内に書き込まれる。例えば、メモリセルMCA内のデータが、メモリセルユニットUT内においてメモリセルMCAに隣り合うメモリセルMC内のデータと異なる場合、磁壁DWが、メモリセルMCAとメモリセルMCとの境界となる凹部52に生じる。
【0154】
後述のシフト動作によって、メモリセルMCA内に書き込まれたデータは、メモリセルユニットUT内の所定のメモリセルMCに転送される。
【0155】
以上の動作によって、本実施形態の磁気メモリ1の書き込み動作が、終了する。
【0156】
<読み出し動作>
本実施形態の磁気メモリの読み出し動作について、説明する。
【0157】
読み出し動作時において、本実施形態の磁気メモリ1は、読み出しコマンド、及び読み出しアドレスを、外部デバイス2から受ける。
【0158】
シーケンサ190は、読み出しコマンドに応じて、磁気メモリ1内の各回路の動作を制御する。
【0159】
ロウ制御回路110及びカラム制御回路120は、読み出しアドレスに応じて、メモリセルアレイ100内のメモリセルユニットUTを選択する。選択されたメモリセルユニットUTにおいて、セレクタ30が、オン状態に設定される。
【0160】
後述のシフト動作によって、読み出しアドレスに対応するメモリセルMCのデータは、メモリセルMCBに転送される。
【0161】
メモリセルMCB内の磁化の向きは、メモリセルMCBに転送されたデータに応じる。メモリセルMCBの磁化に起因する磁場(漏れ磁場)に応じて、MTJ素子20の記憶層23の磁化の向きが、設定される。
【0162】
この結果として、記憶層23の磁化の向きは、読み出し対象のデータに対応する。
【0163】
データの読み出し動作時において、読み出し回路150は、読み出し電流を、磁性体5aとMTJ素子20との間において流す。読み出し電流の電流値は、磁壁DWの移動が生じない大きさを有する。
【0164】
読み出し回路150は、MTJ素子20から出力された電流(又は電圧)に応じた信号をセンスする。
【0165】
参照層21と記憶層23との間の磁化配列に応じて、MTJ素子20から出力される電流の大きさは、変化する。
【0166】
例えば、参照層21と記憶層23との間の磁化配列が平行(P)状態である場合の電流の電流値は、参照層21と記憶層23との間の磁化配列が反平行(AP)状態である場合の電流の電流値より大きい。
【0167】
読み出し回路150は、電流のセンス結果に基づいて、読み出しアドレスに対応するメモリセルMCからメモリセルMCBに転送されたデータを、判別する。
【0168】
読み出し回路150は、センス結果から得られたデータを、I/O回路170へ送る。I/O回路170は、読み出し回路150からのデータを、読み出しデータDTとして、外部デバイス2に送る。
【0169】
以上の動作によって、本実施形態の磁気メモリ1の読み出し動作が、終了する。
【0170】
<シフト動作>
図10は、本実施形態の磁気メモリのシフト動作を説明するための模式図である。
【0171】
外部デバイス2からの命令又はシーケンサ190による内部処理によって、シフト動作が実行される。
【0172】
例えば、上述の書き込み動作においてメモリセルMCAに書き込まれたデータが書き込みアドレスに対応するメモリセルMCに転送される場合、又は、上述の読み出し動作において読み出しアドレスに対応するメモリセルMCのデータがメモリセルMCBに転送される場合、シフト動作が、実行される。
【0173】
図10の(a)に示されるように、例えば、シフト動作の開始前において、メモリセルMC<i-1>は、第1のデータ(例えば“0”データ)を記憶し、メモリセルMC<i>及びメモリセルMC<i+1>は、第1のデータと異なる第2のデータ(例えば“1”データ)を記憶している。
【0174】
メモリセルMC<i-1>の磁化の向きは、メモリセルMC<i>の磁化の向きと異なる。メモリセルMC<i-1>の磁区は、メモリセルMC<i>の磁区と異なる。それゆえ、磁壁DWが、メモリセルMC<i-1>とメモリセルMC<i>との間に、形成される。磁壁DWは、凹部52p内に存在する。
【0175】
シフト動作時において、シフト回路160は、シフトパルスとしての電流(以下では、シフト電流とよばれる)Isftを、メモリセルユニットUTの磁性体5a内に供給する。シフト電流Isftは、例えば、磁壁DWが1つのメモリセルMCのサイズ(1周期分のメモリセル)に対応する距離を移動することが可能な電流値及び(又は)パルス幅を、有する。
【0176】
例えば、シフト電流Isftは、メモリセルMC<i+1>側(ソース線側)からメモリセルMC<i-1>側(ビット線BL側)へ向かって流れる。
【0177】
シフト電流Isftの供給によって、メモリセルユニットUT内の全てのメモリセルMCのデータが、例えば、メモリセルMC<i-1>側からメモリセルMC<i+1>側へ(ビット線BL側からソース線SL側へ)移動する。これによって、或るメモリセルMCのデータは、隣りのメモリセルにシフトする。
【0178】
図10の(b)に示されるように、磁壁DWが、凹部52pから凸部51に向かって移動する。
【0179】
図6乃至図9を用いて説明したように、磁壁DWのシフト動作時において、磁壁DWが、メモリセルMCの一端側の凹部52pから凸部51へ移動すると、磁壁DWの体積が、磁性体5aの直径(外径)D1,D2の増加及び厚さt1,t2の増加に伴って、増加する。
【0180】
磁壁DWの体積の変化率(絶対値)は、磁性体5aにおける凹部52pから凸部51に向かった厚さの増加によって、凸部51への接近に応じて、増加する。
【0181】
磁壁DW(の中心)が凸部51に到達すると、磁壁DWの体積変化率はゼロになる。
【0182】
磁壁DWは、凸部51の頂部(極大点91)を通過し、凸部51からメモリセルMC<i>の他端側の凹部52qに向かってさらに移動する。凸部51から凹部52qへの移動時において、磁壁DWの体積変化率の絶対値は、ゼロより大きくなる。
【0183】
本実施形態のように、磁性体5aの厚さが凸部51から凹部52qに向かうにしたがって減少する場合、凸部51と凹部52qとの間における体積変化率の絶対値は、磁性体5aの厚さが一定である場合に比較して、大きくなる。
【0184】
このように、本実施形態において、磁壁DWのシフト動作は、磁性体5a内の凸部51と凹部52qとの間の領域において磁壁DWが比較的動きやすい状態で、実行される。
【0185】
磁壁DWは、メモリセルMCの他端側の凹部52qに到達する。
【0186】
シフト電流Isftのパルス幅に応じて、シフト電流Isftの供給が、停止される。
【0187】
図10の(c)に示されるように、磁壁DWは、メモリセルMC<i>の他端側の凹部52q内に保持される。
磁壁DWの移動の結果として、メモリセルMC<i-1>,MC<i>,MC<i+1>のデータが、1周期分シフトされる。
【0188】
以上のように、本実施形態の磁気メモリ1のシフト動作が、終了する。
【0189】
メモリセルMC内のデータが2周期以上の距離を移動される場合、シフト電流Isftの供給が、繰り返し実行される。
【0190】
尚、図10において、シフト電流Isftが磁性体5a内を流れる方向に対して磁壁DWが反対の方向へ移動する例が示されている。シフト電流Isftの流れる方向と磁壁DWの移動方向との関係は、磁性体5aに用いられる材料、磁性体5aに接触する材料、及び磁性体5aの形成条件などに応じて制御される。それゆえ、磁性体5aの材料などに応じて、シフト電流Isftが磁性体5a内を流れる方向と磁壁DWが同じ方向に移動する場合もある。
【0191】
(d)まとめ
本実施形態の磁気メモリ1において、磁壁DWは、管状の磁性体5a内を、移動する。管状の磁性体5aは、くびれ構造を有する。磁性体5aは、第1の径D1を有する凸部51と、第2の径D2を有する凹部52と、を含む。磁性体5aの極大点91は、凸部51内に設けられている。磁性体5aの極小点92は、凹部52内に設けられている。第2の径(例えば、外径)D2は、第1の径(例えば、外径)D1より小さい。
【0192】
磁壁は、磁壁の体積が小さくなることによって、磁気エネルギーに関して安定に存在し得る。
【0193】
磁壁がくびれ構造の磁性体内を移動する場合、磁壁は磁壁の体積が小さくなる磁性体内の位置で緩和する。それゆえ、磁壁は、磁壁の体積を小さくしようとするために、凸部(極大点)から凹部(極小点)へ移動する。
【0194】
しかし、磁壁は、幅を有する。そのため、磁性体の極大点及び磁性体の極小点において、磁壁の体積の変化は、鈍化する傾向がある。これによって、磁壁は、磁性体の極大点及び極小点の近傍において、動きにくくなる。この結果として、一般的な磁気メモリにおいて、磁壁のシフトエラーが生じる可能性がある。
【0195】
本実施形態の磁気メモリ1において、凹部52における磁性体5aの厚さt2は、凸部51における磁性体5aの厚さt1より薄い。本実施形態において、磁性体5aの厚さは、極大点91から極小点92に向かって、徐々に減少する。
【0196】
これによって、本実施形態の磁気メモリ1において、凸部51と凹部52との間における磁壁DWの体積の変化は、比較的大きくなる。
【0197】
したがって、本実施形態において、磁性体5a内における磁壁DWの体積変化率は、凸部51の極大点91の近傍において大きくなる。
【0198】
この結果として、本実施形態の磁気メモリ1において、磁壁DWは、極大点91から極小点92に向かって厚さが減少する磁性体5a内を、容易に移動できる。
【0199】
それゆえ、本実施形態の磁気メモリ1は、磁壁DWのシフトエラーを減少できる。
【0200】
以上のように、第1の実施形態の磁気メモリは、メモリの信頼性を向上できる。
【0201】
(2)第2の実施形態
図11乃至図16を参照して、第2の実施形態の磁気メモリについて、説明する。
【0202】
図11は、本実施形態の磁気メモリ1のメモリセルユニットの構成例を示す断面図である。
【0203】
図11に示されるように、本実施形態の磁気メモリ1のメモリセルユニットUTにおいて、各メモリセルMCは、磁性体5bの極大点91と中間点95との間の領域内に、磁性体の中心軸側に陥没した部分61を含む。以下において、部分61は、陥没部61とよばれる。
【0204】
例えば、陥没部61は、凸部51x内に設けられている。陥没部61は、管状の磁性体5bの中心軸側に向かって、窪んでいる。陥没部61において、リセスが、磁性体5bの外壁に形成される。陥没部61は、或る曲率を有する窪んだ面を有する。
【0205】
図12は、本実施形態の磁気メモリのメモリセルの構造例を説明するための模式図である。図12の(a)は、本実施形態の磁気メモリにおける、メモリセルの断面構造を説明するための断面図である。図12の(b)は、図12の(a)のB-B線に対応する断面をZ方向から見た上面図を示している。図12の(c)は、図12の(a)のC-C線に対応する断面をZ方向から見た上面図を示している。
【0206】
図12の(a)に示されるように、磁性体5bにおいて、凸部51xは、陥没部61を含む。陥没部61は、極大点91と中間点95との間に設けられている。陥没部61は、極大点91に接触する。
【0207】
各メモリセルMCは、2つの陥没部61を含む。
【0208】
極大点91は、Z方向において、2つの陥没部61に挟まれている。2つの陥没部61は、極大点91を対象軸に左右対称(上下対称)のレイアウトを有している。
【0209】
凹部52aは、中間点95と極小点92との間において、傾斜した平坦な部分(以下では、傾斜部又は平坦部とよばれる)68を含む。
【0210】
凸部51xは、X方向(又はY方向)から見て、湾曲構造を有する。凹部52aは、X方向(又はY方向)から見て、平板構造を有する。
【0211】
例えば、陥没部61の外径の最小寸法D4は、凸部51xの外径D1より小さく、凹部52の外径D2より大きい。
【0212】
陥没部61の配置によって、凸部51xは、磁性体5bの外壁側に向かって尖った形状を有する。陥没部61によって、凸部51xの極大点91近傍の尖った形状の角度は、陥没部61が無い場合に比較して、小さくなる。このように、本実施形態において、凸部51xは、極大点91の近傍において、より尖形化する。
【0213】
図12の(a)に示すように磁性体5bの凸部51xは、極大点91と中間点95との間におけるY-Z平面に平行な方向と交差する面において、曲面を有している。この曲面は、極大点91と極小点92とを接続する直線より内側(磁性体5bの中心軸側)に面を有する。曲面を形成する曲線は、極大点91と極小点92とを接続する直線より内側(磁性体5bの中心軸側)を通過する。
【0214】
磁性体5b(凹部52a)は、中間点95と極小点92との間におけるY-Z平面に平行な方向と交差する面において、平面を有している。この平面は、極大点91と極小点92とを接続する直線と平行な線から形成される。
【0215】
このように、本実施形態において、管状の磁性体5bの極大点91と極小点92との間において、極大点91側の曲面を有する部分(61)が、極小点92側の平面を有する部分(52a)に接続されている。
【0216】
例えば、陥没部61は、基板9の上面に対して平行な方向(X方向又はY方向)における寸法に関して、陥没部61が含む曲面の曲率(陥没の大きさ)に応じて、寸法D3より大きい寸法D4を有する場合がある。但し、寸法D4は、陥没部61の形状に応じて、寸法D3よりも小さい場合もある。
【0217】
図12の(b)及び(c)に示されるように、凸部51x及び凹部52aのそれぞれは、Z方向から見て、円環状の形状を有している。
【0218】
例えば、X-Y平面に対して平行な方向(例えば、X方向又はY方向)における磁性体5bの厚さは、極大点91と極小点92との間において、一定である。
この場合において、X-Y平面に対して平行な方向における凹部52aの厚さt3は、X-Y平面に対して平行な方向における凸部51x(及び陥没部61)の厚さt1と同じである。凸部51x及び凹部52aのそれぞれは、一定の厚さt1,t3を有する。
【0219】
図13乃至図16を参照して、本実施形態の磁気メモリの特性について、説明する。
【0220】
図13は、本実施形態の磁気メモリ1における、磁性体の外径及び内径の変化を示すグラフである。図13のグラフにおいて、縦軸は基板の上面に対して平行方向における磁性体の寸法に対応し、横軸は磁性体の延在方向(磁壁の移動方向)における磁性体内の位置に対応している。
【0221】
図13において、実線で示される特性P1e,P1yは、本実施形態の磁気メモリ1の特性を示している。特性P1eは、磁性体の外径に対応する。特性P1yは、磁性体の内径に対応する。
【0222】
図13において、特性P1e,P1yに示されるように、磁性体5bの外径(及び内径)は、陥没部61の曲率に応じて、極大点91と中間点95との間において、非線形に変化する。
【0223】
この結果として、磁性体5bの径の変化率は、極大点91から極小点92に向かって非線形に減少する。凸部51側における磁性体5bの径の変化率は、凹部52側における磁性体5bの径の変化率より大きい。
【0224】
図14は、本実施形態の磁気メモリ1における、Z方向から見た磁性体(磁壁)の断面積の変化を示すグラフである。図14のグラフにおいて、縦軸は断面積に対応し、横軸は磁性体の延在方向(磁壁の移動方向)における磁壁の中心の位置に対応している。
実線で示される特性P1fは、本実施形態の磁気メモリ1の特性を示している。
【0225】
図14において、特性P1fに示されるように、メモリセルMCの領域における磁性体5bの断面積は、極大点91から極小点92に向かって磁性体5bにおける陥没部61の位置に応じて、非線形に減少する。
【0226】
陥没部61を有する磁性体5bの断面積は、極大点91の近傍において、陥没部が無い磁性体に比較して、減少する。
【0227】
ここで、磁性体5bの断面積の変化率に関して、凸部51側の断面積の変化率は、凹部52側の断面積の変化率より大きい。
【0228】
図15は、本実施形態の磁気メモリ1における、磁性体内における磁壁の体積の変化を示すグラフである。図15のグラフにおいて、縦軸は磁壁の体積(磁壁のX-Y方向の断面積を磁壁のZ方向の幅で積分したもの)に対応し、横軸は磁性体の延在方向(磁壁の移動方向)における磁壁の中心の位置に対応している。
実線で示される特性P1gは、本実施形態の磁気メモリ1の特性を示している。
【0229】
図15において、特性P1gに示されるように、磁壁DWの体積の変化が、凸部51x内において、大きくなる。磁壁DWの体積の変化は、陥没部61に応じて、歪む。
【0230】
図16は、本実施形態の磁気メモリにおける、磁壁の体積の変化率の推移を示すグラフである。図16のグラフにおいて、縦軸は磁壁の体積の変化率に対応し、横軸は磁性体の延在方向(磁壁の移動方向)における磁壁の中心の位置に対応している。例えば、磁壁の体積の変化率は、磁壁の中心の位置(x)に関する磁壁の体積(Vdw)の微分によって示される。
実線で示される特性P1hは、本実施形態の磁気メモリ1の特性を示している。
【0231】
図16において、特性P1hに示されるように、磁壁DWの体積変化率は、凸部51x内に設けられた陥没部61に応じて、変動する。陥没部61による磁性体5bの外径の縮小に起因して、磁壁の体積変化率は、一度小さくなる。
【0232】
陥没部61において磁性体5bの外径が増加すると、磁壁DWの体積変化率は、凸部51xの尖った形状に応じて、極大点91に向かって急峻に増加する。
【0233】
それゆえ、磁壁DWは、極大点91の近傍における磁壁DWの体積変化率の急峻な変動に追従して、極大点91の近傍で動きやすくなる。
この結果として、凸部51xと凹部52aとの間における磁壁DWの移動が、円滑になる。
【0234】
上述のように、陥没部61において、磁壁DWの体積変化率(絶対値)は、一度小さくなる。それゆえ、陥没部61の磁気エネルギーが磁壁のピニングが生じるエネルギーより小さくなるように、陥没部61の形状(例えば、曲率)が、設定されることが望ましい。
【0235】
本実施形態の磁気メモリ1の書き込み動作、読み出し動作及びシフト動作は、第1の実施形態の磁気メモリ1で説明された各動作と実質的に同じであるため、ここでの説明は省略される。
【0236】
以上のように、本実施形態の磁気メモリ1は、シフトエラーを減少できる。
【0237】
したがって、第2の実施形態の磁気メモリは、第1の実施形態の磁気メモリと実質的に同じ効果を得ることができる。
【0238】
(3)第3の実施形態
図17乃至図22を参照して、第3の実施形態の磁気メモリについて、説明する。
【0239】
図17は、本実施形態の磁気メモリ1のメモリセルユニットUTの構成例を示す断面図である。
【0240】
図17に示されるように、本実施形態の磁気メモリ1のメモリセルユニットUTにおいて、各メモリセルMCは、磁性体5cの極小点92と中間点95との間の領域内に、磁性体5cの外周側に隆起した部分62を含む。以下において、部分62は、隆起部62とよばれる。
【0241】
例えば、隆起部62は、凹部52x内に設けられている。
隆起部62は、管状の磁性体5cの外周側に向かって、盛り上がっている。隆起部62において、リセスが、磁性体5cの内壁に形成される。
隆起部62は、或る曲率を有して盛り上がった面を有する。
【0242】
図18は、本実施形態の磁気メモリのメモリセルの構造例を説明するための模式図である。図18の(a)は、本実施形態の磁気メモリ1における、メモリセルMCの断面構造を説明するための断面図である。図18の(b)は、図18の(a)のB-B線に対応する断面をZ方向から見た上面図を示している。図18の(c)は、図18の(a)のC-C線に対応する断面をZ方向から見た上面図を示している。
【0243】
図18の(a)に示されるように、磁性体5cにおいて、凹部52xは、隆起部62を含む。隆起部62は、極小点92と中間点95との間に設けられている。隆起部62は、極小点92に接触する。
【0244】
極小点92は、Z方向において、2つの隆起部62に挟まれている。2つの隆起部62は、極小点92を対象軸に左右対称(上下対称)のレイアウトを有している。
【0245】
各メモリセルMCは、2つの隆起部62を含む。
各メモリセルMC内において、1つの凸部51a及び極大点91は、Z方向において2つの隆起部62間に挟まれている。
【0246】
上述のように、極小点92における凹部52xの外径D2は、極大点91における凸部51aの外径D1より小さい。
例えば、隆起部62の外径の最大寸法D5は、凸部51aの外径D1より小さく、凹部52xの外径D2より大きい。
【0247】
隆起部62の配置によって、凹部52xは、磁性体5cの中心軸側に向かって深くくびれた形状を有する。これによって、凹部52xにおける極小点92近傍の谷の深さが、深くなる。
【0248】
凸部51aは、極大点91と中間点95との間において、傾斜した平坦な部分(傾斜部、平坦部)69を含む。
【0249】
凸部51aは、X方向(又はY方向)から見て、平板構造を有する。凹部52xは、X方向(又はY方向)から見て、湾曲構造を有する。
【0250】
磁性体5cの凹部52xは、極小点92と中間点95との間におけるY-Z平面に平行な方向と交差する面において、曲面を有している。この曲面は、極大点91と極小点92とを接続する直線より外側(管状の磁性体5cの外周側)に面を有する。
曲面を形成する曲線は、極大点91と極小点92とを接続する直線より外側(磁性体5cの外周側)を通過する。
【0251】
磁性体5c(凹部52x)は、中間点95と極大点91との間におけるY-Z平面に平行な方向と交差する面において、平面を有している。この平面は、極大点91と極小点92とを接続する直線と平行な線から形成される。
【0252】
このように、本実施形態において、管状の磁性体5cの極大点91と極小点92との間において、極小点92側の曲面を有する部分(62)が、極大点91側の平面を有する部分(51a)に接続されている。
【0253】
例えば、隆起部62は、基板9の上面に対して平行な方向(X方向又はY方向)における寸法に関して、曲面の曲率(隆起の大きさ)に応じて、寸法D3より大きい寸法D5を有する場合がある。但し、寸法D5は、隆起部62の形状に応じて、寸法D3より小さい場合もある。
【0254】
図18の(b)及び(c)に示されるように、凸部51a及び凹部52xのそれぞれは、Z方向から見て、円環状の形状を有している。
【0255】
例えば、X-Y平面に対して平行な方向(例えば、X方向又はY方向)における磁性体5cの厚さは、極大点91と極小点92との間において、一定である。
この場合において、X-Y平面に対して平行な方向における凹部52x(及び隆起部62)の厚さt3は、X-Y平面に対して平行な方向における凸部51aの厚さt1と同じである。凸部51a及び凹部52xのそれぞれは、一定の厚さt1,t3を有する。
【0256】
図19乃至図22を参照して、本実施形態の磁気メモリ1の特性について、説明する。
【0257】
図19は、本実施形態の磁気メモリ1における、磁性体の外径及び内径の変化を示すグラフである。図19のグラフにおいて、縦軸は基板の上面に対して平行方向における磁性体の寸法に対応し、横軸は磁性体の延在方向(磁壁の移動方向)における磁壁の中心の位置に対応している。
【0258】
図19において、実線で示される特性P1i,P1xは、本実施形態の磁気メモリ1の特性を示している。特性P1iは、磁性体の外径に対応する。特性P1xは、磁性体の内径に対応する。
【0259】
図19において、特性P1i,P1xに示されるように、磁性体5cの外径(及び内径)は、隆起部62の曲率に応じて、極小点92と中間点95との間において、非線形に変化する。
【0260】
この結果として、磁性体5cの径の変化率は、極大点91から極小点92に向かって非線形に減少する。例えば、凸部51側における磁性体5cの径の変化率は、凹部52側における磁性体5cの径の変化率より小さい。
【0261】
図20は、本実施形態の磁気メモリ1における、Z方向から見た磁性体(磁壁)の断面積の変化を示すグラフである。図20のグラフにおいて、縦軸は断面積に対応し、横軸は磁性体の延在方向(磁壁の移動方向)における磁壁の中心の位置に対応している。
実線で示される特性P1jは、本実施形態の磁気メモリ1の特性を示している。
【0262】
図20において、特性P1jに示されるように、メモリセルMCの領域における磁性体5cの断面積は、磁性体5cにおける隆起部62の位置に応じて、非線形に減少する。
【0263】
隆起部62を含む磁性体5cの断面積は、隆起部を含まない磁性体の断面積よりも増加する。
【0264】
ここで、磁性体5cの断面積の変化率に関して、凹部52側の断面積の変化率は、凸部51側の断面積の変化率より大きい。
【0265】
図21は、本実施形態の磁気メモリ1における、磁性体内における磁壁の体積の変化を示すグラフである。図21のグラフにおいて、縦軸は磁壁の体積(磁壁のX-Y方向の断面積を磁壁のZ方向の幅で積分したもの)に対応し、横軸は磁性体の延在方向(磁壁の移動方向)における磁壁の中心の位置に対応している。実線で示される特性P1kは、本実施形態の磁気メモリ1の特性を示している。
【0266】
図21において、特性P1kに示されるように、磁壁DWの体積の変化が、凹部52x内において、大きくなる。
【0267】
隆起部62の配置によって、極小点92の近傍の凹部52xの体積は、隆起部62を含まない凹部に比較して、増加する。
【0268】
図22は、本実施形態の磁気メモリにおける、磁壁の体積の変化率の推移を示すグラフである。図16のグラフにおいて、縦軸は磁壁の体積の変化率に対応し、横軸は磁性体の延在方向(磁壁の移動方向)における磁壁の中心の位置に対応している。例えば、磁壁の体積の変化率は、磁壁の中心の位置(x)に関する磁壁の体積(Vdw)の微分によって示される。実線で示される特性P1lは、本実施形態の磁気メモリ1の特性を示している。
【0269】
図22において、特性P1lに示されるように、磁壁DWの体積変化率は、凹部52x内に設けられた隆起部62に応じて、変動する。隆起部62による磁性体5cの外径の増大に起因して、磁壁の体積変化率は、極小点92の近傍で大きくなる。
【0270】
それゆえ、磁壁DWは、極小点92の近傍における磁壁DWの体積変化率の増大によって、凹部52x内の極小点92の近傍において動きやすくなる。
磁壁DWの移動先の凹部52xの近傍において、隆起部62に起因して、磁壁DWの体積変化率(絶対値)は、大きくなる。
【0271】
したがって、磁壁DWの移動先の凹部52x内において、磁壁DWは、極小点92に向かって比較的容易に移動する。
【0272】
この結果として、凸部51aと凹部52xとの間における磁壁DWの移動が、円滑になる。
【0273】
尚、上述のように、隆起部62内における磁壁DWのピニングが生じないように、隆起部62の形状(例えば、曲率)が設定されることが望ましい。
【0274】
本実施形態の磁気メモリ1の書き込み動作、読み出し動作及びシフト動作は、第1の実施形態の磁気メモリ1で説明された各動作と実質的に同じであるため、ここでの説明は省略される。
【0275】
以上のように、本実施形態の磁気メモリ1は、シフトエラーを減少できる。
【0276】
したがって、第3の実施形態の磁気メモリは、第1及び第2の実施形態の磁気メモリと実質的に同じ効果を得ることができる。
【0277】
(4)変形例
図23及び図24を参照して、実施形態の磁気メモリの変形例について、説明する。
【0278】
実施形態の磁気メモリ1において、メモリセルユニットUTの構成は、図3の例に限定されない。
【0279】
図23は、実施形態の磁気メモリ1の変形例における、メモリセルユニットUTの構成例を示す断面図である。
【0280】
図23に示されるように、本変形例において、読み出し素子(MTJ素子)20及びセレクタ(スイッチング素子)30が、メモリセルユニットUTの上端側に設けられている。
【0281】
MTJ素子20及びスイッチング素子30は、Z方向においてフィールド線FLよりも上方の領域内に設けられている。
【0282】
導電層41は、MTJ素子20と磁性体5aとの間に設けられている。
【0283】
MTJ素子20は、磁性体5aの上方において、磁性体5aとスイッチング素子30との間に設けられている。
【0284】
記憶層23は、導電層41とトンネルバリア層22との間に設けられている。参照層21は、トンネルバリア層22を介して、Z方向において記憶層23の上方に設けられている。
【0285】
スイッチング素子30は、Z方向において、MTJ素子20の上方に設けられている。スイッチング素子30は、MTJ素子20とビット線BLとの間に設けられている。
【0286】
導電層42は、MTJ素子20とスイッチング素子30との間に設けられている。
【0287】
本変形例において、MTJ素子20に接続されたメモリセルMCZは、フィールド線FLに隣り合う。それゆえ、MTJ素子20に接続されたメモリセルMCZは、読み出しセルとして機能するとともに、書き込みセルとしても機能する。
【0288】
図23のメモリセルユニットUTを含む磁気メモリ1は、LIFO(Last-in first-out)方式のシフトレジスタとして機能する。
【0289】
図23のメモリセルユニットUTにおいて、メモリセルMCは、第1の実施形態で説明された構造を有する。尚、図23に示されたメモリセルユニットUTにおいて、メモリセルMCの構造は、第2の実施形態のメモリセルの構造(図11及び図12参照)又は第3の実施形態のメモリセルMCの構造(図17及び図18参照)を、有していてもよい。
【0290】
図24は、実施形態の磁気メモリ1の変形例の一例を示している。
【0291】
図24に示されるように、陥没部61及び隆起部62の両方が、磁性体5z内に設けられてもよい。例えば、中間点95の近傍において、磁性体5zは、曲面を有さない。
【0292】
これによって、極大点91の近傍及び極小点92の近傍の両方において、磁壁DWが、比較的容易に移動し得る。尚、磁性体5zにおいて、極小点92側の部分(例えば、凹部52x)の厚さが、極大点91側の部分(例えば、凸部51x)の厚さより薄くともよい。
【0293】
図23及び図24の変形例の磁気メモリ1は、第1乃至第3の実施形態で説明された効果と実質的に同じ効果を得ることができる。
【0294】
したがって、本変形例の磁気メモリは、信頼性を向上できる。
【0295】
(5) その他
上述の例において、磁性体5(5a,5b,5c,5z)が、管状の構造を有している。但し、磁性体5は、2次元の平板状でもよい。
【0296】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0297】
1:磁気メモリ、UT:メモリセルユニット、MC:メモリセル、5:磁性体、51,51a,51x:凸部、52,52a,52x:凹部、91:極大点、92:極小点、95:中間点、61:陥没部、62:隆起部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24