(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044010
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】発泡体、発泡性粒子及び発泡体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/06 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
C08J9/06 CEV
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149302
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 裕次郎
(72)【発明者】
【氏名】望月 弘章
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA36
4F074AA40
4F074AA48
4F074AA98
4F074BA03
4F074CA22
4F074DA02
4F074DA12
4F074DA32
(57)【要約】
【課題】高い発泡倍率と高い独立気泡率とを有する発泡体を提供する。
【解決手段】本発明に係る発泡体は、化学発泡剤により発泡された発泡体であり、塩素化塩化ビニル系樹脂と、アクリル系樹脂とを含み、独立気泡率が60%以上であり、見掛け密度が1.00g/cm3以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学発泡剤により発泡された発泡体であり、
塩素化塩化ビニル系樹脂と、アクリル系樹脂とを含み、
独立気泡率が60%以上であり、
見掛け密度が1.00g/cm3以下である、発泡体。
【請求項2】
前記塩素化塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、前記アクリル系樹脂の含有量が5重量部以上60重量部以下である、請求項1に記載の発泡体。
【請求項3】
前記化学発泡剤が、炭酸系発泡剤である、請求項1又は2に記載の発泡体。
【請求項4】
塩素化塩化ビニル系樹脂と、アクリル系樹脂と、化学発泡剤とを含む、発泡性粒子。
【請求項5】
前記塩素化塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、前記アクリル系樹脂の含有量が5重量部以上60重量部以下である、請求項4に記載の発泡性粒子。
【請求項6】
前記化学発泡剤が、炭酸系発泡剤である、請求項4又は5に記載の発泡性粒子。
【請求項7】
請求項4又は5に記載の発泡性粒子を溶融混錬し、前記化学発泡剤により発泡させて発泡体を得る工程を備え、
独立気泡率が60%以上であり、かつ、見掛け密度が1.00g/cm3以下である発泡体を得る、発泡体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡剤により発泡された発泡体に関する。また、本発明は、発泡剤を含む発泡性粒子に関する。また、本発明は、上記発泡性粒子を用いた発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂等を含む発泡体は、軽量性、断熱性及び緩衝性等に優れている。従来、塩化ビニル系樹脂等を含む発泡体は、様々な用途で使用されており、例えば住宅等の断熱材、及び配管等の保温材に使用されている。塩化ビニル系樹脂等を含む発泡体は、配管に多く使用されており、特に結露防止を目的とした多層管の任意の層に使用されている。
【0003】
塩化ビニル系樹脂を含む発泡体は、高い発泡倍率と高い独立気泡率とを有することが望ましい。しかしながら、押出過程で塩化ビニル系樹脂を含む発泡体を得る場合に、発泡倍率を一定値以上に高くすると、破泡が生じやすい。この場合に、得られる塩化ビニル系樹脂を含む発泡体において、破泡により気泡セル同士が繋がった連続気泡が生成され、外観が悪くなる。良好な外観を有する発泡体を得る場合には、発泡倍率を十分に高くすることが困難であるという問題がある。
【0004】
発泡倍率及び独立気泡率が高い発泡体を得るために、発泡性粒子を作製し、該発泡性粒子を溶融混錬しかつ発泡させて、発泡体を得る方法が検討されている。
【0005】
特許文献1には、塩素化塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂及び発泡剤を含む発泡性塩素化塩化ビニル系樹脂粒子が開示されている。特許文献1には、難燃性能に優れ、かつ高い発泡倍率及び高い独立気泡率が両立された塩素化塩化ビニル系樹脂発泡成形体が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、高い独立気泡率を有する発泡体を得ることができる。しかしながら、発泡倍率をかなり高くすると、得られる発泡体の独立気泡率を十分に高くすることが困難なことがある。例えば、独立気泡率を十分に高く維持しつつ、見掛け密度が1.00g/cm3以下でありかつ外観が良好な発泡体を得ることが困難なことがある。
【0008】
本発明の目的は、高い発泡倍率と高い独立気泡率とを有する発泡体を提供することである。また、本発明の目的は、高い発泡倍率と高い独立気泡率とを有する発泡体を得ることができる発泡性粒子及び発泡体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書において、以下の発泡体、発泡性粒子及び発泡体の製造方法を開示する。
【0010】
項1.化学発泡剤により発泡された発泡体であり、塩素化塩化ビニル系樹脂と、アクリル系樹脂とを含み、独立気泡率が60%以上であり、見掛け密度が1.00g/cm3以下である、発泡体。
【0011】
項2.前記塩素化塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、前記アクリル系樹脂の含有量が5重量部以上60重量部以下である、項1に記載の発泡体。
【0012】
項3.前記化学発泡剤が、炭酸系発泡剤である、項1又は2に記載の発泡体。
【0013】
項4.塩素化塩化ビニル系樹脂と、アクリル系樹脂と、化学発泡剤とを含む、発泡性粒子。
【0014】
項5.前記塩素化塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、前記アクリル系樹脂の含有量が5重量部以上60重量部以下である、項4に記載の発泡性粒子。
【0015】
項6.前記化学発泡剤が、炭酸系発泡剤である、項4又は5に記載の発泡性粒子。
【0016】
項7.項4~6のいずれか1項に記載の発泡性粒子を溶融混錬し、前記化学発泡剤により発泡させて発泡体を得る工程を備え、独立気泡率が60%以上であり、かつ、見掛け密度が1.00g/cm3以下である発泡体を得る、発泡体の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る発泡体は、化学発泡剤により発泡された発泡体であり、塩素化塩化ビニル系樹脂と、アクリル系樹脂とを含む。本発明に係る発泡体では、独立気泡率が60%以上であり、見掛け密度が1.00g/cm3以下である。本発明に係る発泡体は、上記の構成を備えているので、高い発泡倍率と高い独立気泡率とを有する。
【0018】
本発明に係る発泡性粒子は、塩素化塩化ビニル系樹脂と、アクリル系樹脂と、化学発泡剤とを含む。本発明に係る発泡性粒子では、上記の構成が備えられているので、高い発泡倍率と高い独立気泡率とを有する発泡体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
本発明に係る発泡体は、化学発泡剤により発泡された発泡体であり、塩素化塩化ビニル系樹脂と、アクリル系樹脂とを含む。本発明に係る発泡体では、独立気泡率が60%以上であり、見掛け密度が1.00g/cm3以下である。
【0021】
本発明に係る発泡体は、上記の構成を備えているので、高い発泡倍率と高い独立気泡率とを有する。本発明に係る発泡体では、発泡倍率が高いので、軽量性、断熱性及び緩衝性を効果的に高めることができる。本発明に係る発泡体では、独立気泡率が高いので、強度、断熱性及び誘電特性を効果的に高めることができる。本発明に係る発泡体では、上記の構成が備えられているので、成形性に優れており、外観が良好な発泡体を得ることができる。
【0022】
本発明に係る発泡性粒子は、塩素化塩化ビニル系樹脂と、アクリル系樹脂と、化学発泡剤とを含む。
【0023】
本発明に係る発泡性粒子では、上記の構成が備えられているので、高い発泡倍率と高い独立気泡率とを有する発泡体を得ることができる。本発明に係る発泡性粒子では、例えば独立気泡率が60%以上であり、見掛け密度が1.00g/cm3以下である発泡体を効果的に得ることができる。本発明に係る発泡性粒子では、発泡倍率が高い発泡体を得ることができるので、得られる発泡体の軽量性、断熱性及び緩衝性を効果的に高めることができる。本発明に係る発泡性粒子では、独立気泡率が高い発泡体を得ることができるので、得られる発泡体の強度、断熱性及び誘電特性を効果的に高めることができる。本発明に係る発泡性粒子では、上記の構成が備えられているので、成形性に優れており、外観が良好な発泡体を得ることができる。
【0024】
本発明者らは、塩素化塩化ビニル系樹脂とアクリル系樹脂と発泡剤とを用いただけでは、高い発泡倍率と高い独立気泡率とを有する発泡体を得ることが困難であることを見出した。さらに、本発明者らは、塩化ビニル系樹脂とアクリル系樹脂と化学発泡剤とを用いただけでは、高い発泡倍率と高い独立気泡率とを有する発泡体を得ることが困難であることを見出した。さらに、本発明者らは、塩素化塩化ビニル系樹脂と化学発泡剤とを用いただけでは、高い発泡倍率と高い独立気泡率とを有する発泡体を得ることが困難であることを見出した。本発明者らは、本発明の効果を発揮するためには、塩素化塩化ビニル系樹脂とアクリル系樹脂と化学発泡剤とを組み合わせて用いる必要があることを見出し、特に塩素化塩化ビニル系樹脂及びアクリル系樹脂に組み合わせる発泡剤として、化学発泡剤を選択して用いる必要があることを見出した。
【0025】
発泡体の強度、断熱性及び誘電特性をより一層効果的に高める観点からは、上記発泡体の上記独立気泡率は、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは75%以上、特に好ましくは80%以上、最も好ましくは85%以上である。上記発泡体の上記独立気泡率は、100%であってもよく、100%以下であってもよく、100%未満であってもよく、99%以下であってもよく、98%以下であってもよく、95%以下であってもよい。
【0026】
上記発泡体の上記独立気泡率は、以下のようにして測定することができる。
【0027】
発泡体を切り出して、任意のサイズの発泡体(以下発泡体Aと記載する)を用意する。発泡体Aの厚みを測定し、発泡体Aの見掛け体積V1を算出する。さらに、発泡体Aの重量W1を測定する。次に、発泡体Aにおける気泡の占める体積V2を下記式に基づいて算出する。なお、発泡体Aの密度をρとする。
【0028】
V2=V1-W1/ρ
V1:発泡体Aの見掛け体積(cm3)
V2:発泡体Aにおける気泡の占める体積(cm3)
W1:発泡体Aの重量(g)
ρ:発泡体Aの密度(g/cm3)
【0029】
次に、発泡体Aを23℃の水中に水面から100mmの深さに沈めて、発泡体Aに所定の圧力を所定時間加える。その後、発泡体Aを水中から取り出し、発泡体Aの表面に付着した水分を除去して、発泡体Aの重量W2を測定する。
【0030】
下記式により、上記発泡体Aの独立気泡率F1を算出する。
【0031】
F1=100-100×(W2-W1)/V2
【0032】
F1:発泡体Aの独立気泡率(%)
W1:水に沈める前の発泡体Aの重量(g)
W2:水に沈めた後の発泡体Aの重量(g)
V2:発泡体Aにおける気泡の占める体積(cm3)
【0033】
発泡体A(切り出された発泡体)の厚みは、切り出される前の発泡体の厚みであってもよい。上記独立気泡率の測定に用いる発泡体のサイズは、縦5cm、横5cm及び厚み5mmであってもよい。
【0034】
発泡体の軽量性、断熱性及び緩衝性をより一層効果的に高める観点からは、上記発泡体の見掛け密度は、好ましくは0.90g/cm3以下、より好ましくは0.80g/cm3以下、より一層好ましくは0.70g/cm3以下、更に好ましくは0.60g/cm3以下、更に一層好ましくは0.50g/cm3以下、特に好ましくは0.40g/cm3以下、最も好ましくは0.30g/cm3以下である。上記発泡体の見掛け密度は、0.01g/cm3以上であってもよく、0.10g/cm3以上であってもよく、0.20g/cm3以上であってもよい。
【0035】
上記発泡体の見掛け密度は、JIS K7222に準拠して測定される。
【0036】
以下、上記発泡体及び上記発泡性粒子に用いられる各材料を説明する。
【0037】
(塩素化塩化ビニル系樹脂)
上記塩素化塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル系樹脂が塩素化された樹脂である。具体的には、上記塩素化塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルの単独重合体が塩素化された樹脂、又は、塩化ビニル80重量%以上と、塩化ビニルと共重合可能な他の単量体との共重合体が塩素化された樹脂が挙げられる。上記塩化ビニルと共重合可能な他の単量体としては、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、及び(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。上記塩素化塩化ビニル系樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記塩化ビニルと共重合可能な他の単量体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0038】
上記塩素化塩化ビニル系樹脂における塩素含有率は、好ましくは58重量%以上、より好ましくは60重量%以上、更に好ましくは62重量%以上、特に好ましくは64重量%以上であり、好ましくは72重量%以下、より好ましくは70重量%以下、更に好ましくは68重量%以下である。上記塩素含有率が上記下限以上であると、発泡体及び発泡性粒子の強度及び耐熱性がより一層良好になる。上記塩素含有率が上記上限以下であると、発泡体及び発泡性粒子の耐衝撃性がより一層良好になる。
【0039】
上記塩素化塩化ビニル系樹脂の重合度は特に限定されず、発泡性粒子及び発泡体の加工方法や発泡体の用途に応じて選択することができる。上記塩素化塩化ビニル系樹脂の重合度は500以上であってもよく、1000以下であってもよい。
【0040】
上記塩素化塩化ビニル系樹脂として、市販品を用いてもよい。上記塩素化塩化ビニル系樹脂の市販品としては、カネカCPVCの製品であるH829、H716S、H727、H527、H516A、H547、H536、及びH305(以上、カネカ社製);セキスイPVCの製品であるHA-15E、HA-05E、HA-15F、HA-24F、HA-22H、HA-36F、HA-05K、HA-24K、HA-24L、HA-31K、及びHA-54K(以上、積水化学工業社製)等が挙げられる。
【0041】
上記発泡体100重量%中、上記塩素化塩化ビニル系樹脂の含有量は、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上であり、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下である。上記塩素化塩化ビニル系樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0042】
上記発泡体を得るための組成物100重量%中及び上記発泡性粒子100重量%中、上記塩素化塩化ビニル系樹脂の含有量は、好ましくは55重量%以上、より好ましくは65重量%以上であり、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下である。上記塩素化塩化ビニル系樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。
【0043】
(アクリル系樹脂)
上記アクリル系樹脂としては特に限定されず、(メタ)アクリル酸アルキルの重合体等が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸アルキルの重合体は、共重合体であってもよい。上記アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸メチルの重合体であってもよい。上記(メタ)アクリル酸メチルの重合体は、重合性成分として(メタ)アクリル酸メチルが少なくとも用いられた重合体である。上記(メタ)アクリル酸メチルの重合体は、(メタ)アクリル酸メチルと、該(メタ)アクリル酸メチルと共重合可能な単量体との共重合体であってもよい。上記アクリル系樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0044】
上記(メタ)アクリル酸メチルと共重合可能な単量体としては、アルキル基の炭素数が2~8の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ブチレン、置換スチレン及び(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸メチルと共重合可能な単量体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0045】
上記アクリル系樹脂として、市販品を用いてもよい。上記アクリル系樹脂の市販品としては、カネエースPA-40(カネカ社製)等が挙げられる。
【0046】
発泡倍率及び独立気泡率を効果的に高くする観点からは、上記アクリル系樹脂の重量平均分子量は、好ましくは250万以上、より好ましくは300万以上であり、好ましくは500万以下、より好ましくは450万以下である。
【0047】
発泡倍率及び独立気泡率を効果的に高くする観点からは、上記アクリル系樹脂の重量平均分子量は、上記塩素化塩化ビニル系樹脂の重量平均分子量よりも大きいことが好ましい。
【0048】
発泡倍率及び独立気泡率を効果的に高くする観点からは、上記アクリル系樹脂の重量平均分子量の、上記塩素化塩化ビニル系樹脂の重量平均分子量に対する比(上記アクリル系樹脂の重量平均分子量/上記塩素化塩化ビニル系樹脂の重量平均分子量)は、好ましくは1.0を超え、より好ましくは1.1以上である。上記比(上記アクリル系樹脂の重量平均分子量/上記塩素化塩化ビニル系樹脂の重量平均分子量)は、5000以下であってもよく、3000以下であってもよい。
【0049】
上記アクリル系樹脂及び上記塩素化塩化ビニル系樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
【0050】
上記発泡体及び上記発泡性粒子のそれぞれにおいて、上記塩素化塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、上記アクリル系樹脂の含有量は、好ましくは5重量部以上、より好ましくは8重量部以上、更に好ましくは10重量部以上であり、好ましくは70重量部以下、より好ましくは65重量部以下、更に好ましくは60重量部以下、特に好ましくは55重量部以下、最も好ましくは50重量部以下である。上記アクリル系樹脂の含有量が上記下限以上であると、気泡保持力が高くなり、発泡倍率を効果的に高めることができる。上記アクリル系樹脂の含有量が上記上限以下であると、成形性がより一層高くなり、外観がより一層良好な発泡体が得られる。
【0051】
(化学発泡剤)
上記化学発泡剤としては、無機系発泡剤及び有機系発泡剤が挙げられる。上記化学発泡剤は、無機系発泡剤であってもよく、有機系発泡剤であってもよい。上記化学発泡剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0052】
上記無機系発泡剤としては、重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム)、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、アジド化合物、及びホウ水素化ナトリウム等が挙げられる。上記無機系発泡剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0053】
上記有機系発泡剤としては、アゾ系発泡剤及びアミン系発泡剤等が挙げられる。上記有機系発泡剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0054】
上記アゾ系発泡剤としては、アゾジカルボンアミド及びアゾジカルボン酸バリウム等が挙げられる。
【0055】
上記アミン系発泡剤としては、ジニトロソペンタメチレンテトラミン等が挙げられる。
【0056】
本発明の効果を効果的に発揮する観点からは、上記化学発泡剤は、無機系発泡剤であることが好ましい。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記化学発泡剤は、炭酸系発泡剤であることが好ましい。特に、上記化学発泡剤が炭酸系発泡剤であると、見掛け密度をかなり高くしても、高い独立気泡率を有し、かつ、成形性に優れかつ外観が良好である発泡体を得ることができる。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記炭酸系発泡剤は、重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウム)、炭酸ナトリウム、又は重炭酸アンモニウムであることが好ましい。上記炭酸系発泡剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0057】
上記化学発泡剤として、化学発泡剤が内包成分として熱可塑性樹脂内に内包された熱膨張性カプセルを用いてもよい。
【0058】
上記発泡体を得るための組成物100重量%中及び上記発泡性粒子100重量%中、上記化学発泡剤の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下である。
【0059】
(他の成分)
本発明の目的を損なわない範囲で、上記発泡体及び上記発泡性粒子は、添加剤を含んでいてもよい。上記添加剤としては、充填材、熱安定剤、安定化助剤、滑剤、難燃剤、造核剤、及び顔料等が挙げられる。上記添加剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0060】
上記熱安定剤としては特に限定されず、例えば、ジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル錫ラウレート及びジブチル錫ラウレートポリマー等の有機錫安定剤;ステアリン酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛及び三塩基性硫酸鉛等の鉛系安定剤;カルシウム-亜鉛系安定剤;バリウム-亜鉛系安定剤;バリウム-カドミウム系安定剤等が挙げられる。上記熱安定剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0061】
上記安定化助剤としては特に限定されず、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化テトラヒドロフタレート、エポキシ化ポリブタジエン、リン酸エステル、ポリオール、ハイドロタルサイト、及びゼオライト等が挙げられる。上記安定化助剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0062】
上記滑剤としては、内部滑剤及び外部滑剤が挙げられる。上記滑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0063】
上記内部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂の流動粘度を下げ、摩擦発熱を防止する目的で使用される。上記内部滑剤としては特に限定されず、ブチルステアレート、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、エポキシ大豆油、グリセリンモノステアレート、ステアリン酸、及びビスアミド等が挙げられる。上記内部滑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0064】
上記外部滑剤は、成形加工時の溶融樹脂と金属面との滑り効果を上げる目的で使用される。上記外部滑剤としては特に限定されず、パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、エステルワックス、及びモンタン酸ワックス等が挙げられる。上記外部滑剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0065】
上記難燃剤としては特に限定されず、臭素系難燃剤;リン系難燃剤;ポリリン酸アンモニウム及びメラミンシアヌレート等のイントメッセント系難燃剤;水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウム等の水酸化化合物;酸化アンチモン;酸化亜鉛等が挙げられる。上記難燃剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0066】
上記造核剤としては特に限定されず、シリカ、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、ゼオライト及びタルク等の無機化合物が挙げられる。
【0067】
(発泡性粒子の他の詳細及び発泡性粒子の製造方法)
上記発泡性粒子は、発泡可能な粒子であり、具体的には化学発泡剤により発泡可能である。上記発泡性粒子は、溶融混錬し、化学発泡剤により発泡させて発泡体を得るために好適に用いられる。
【0068】
上記発泡性粒子は、塩素化塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂及び化学発泡剤を含む組成物を粒子状にすることによって得ることができる。
【0069】
上記発泡性粒子はペレットであってもよい。
【0070】
上記発泡性粒子の粒子径は、好ましくは1mm以上、より好ましくは1.5mm以上であり、好ましくは5mm以下、より好ましくは4.5mm以下である。
【0071】
上記粒子径は、発泡性粒子が真球状である場合には直径を意味し、発泡性粒子が真球状以外の形状である場合には、その体積相当の真球と仮定した際の直径を意味する。上記粒子径は、平均粒子径であることが好ましく、数平均粒子径であることが好ましい。
【0072】
(発泡体の他の詳細、及び発泡体の製造方法)
上記発泡体は、以下のようにして得ることができる。上記塩素化塩化ビニル系樹脂と、上記アクリル系樹脂と、上記化学発泡剤とを含む発泡性組成物(発泡体を得るための組成物)を用意する。上記塩素化塩化ビニル系樹脂と、上記アクリル系樹脂と、上記化学発泡剤とを含む発泡性粒子を用意してもよい。上記発泡性組成物及び上記発泡性粒子は、必要に応じて上述した添加剤を含んでいてもよい。
【0073】
上記発泡体は、上記発泡性組成物又は上記発泡性粒子を発泡させて得ることができる。具体的には、上記発泡体は、上記発泡性組成物又は上記発泡性粒子を溶融混錬し、発泡させて得ることができる。
【0074】
本発明に係る発泡体の製造方法は、上記発泡性粒子を発泡させて発泡体を得る工程を備える。本発明に係る発泡体の製造方法では、独立気泡率が60%以上であり、かつ、見掛け密度が1.00g/cm3以下である発泡体を得る。
【0075】
発泡性粒子を作製し、該発泡性粒子を溶融混錬しかつ発泡させて、発泡体を得ることにより、発泡性粒子を経ずに発泡体を得る場合と比べて、見掛け密度をかなり高くしても、高い独立気泡率を有し、かつ、成形性に優れかつ外観が良好である発泡体を効果的に得ることができる。上記発泡体の製造方法は、塩素化塩化ビニル系樹脂と、アクリル系樹脂と、化学発泡剤とを含む組成物を粒子状にして、発泡性粒子を得る工程を備えていてもよい。
【0076】
上記発泡体を押出成形により得る場合に、上記発泡性組成物又は上記発泡性粒子を押出機にて溶融混練し、任意の金型を通して、冷却し、所定の長さで切断することにより、発泡体を得ることができる。
【0077】
上記発泡体の形状は特に限定されない。上記発泡体は用途に応じて、適宜の形状にすることができる。上記発泡体は、シート状であってもよい。
【0078】
上記発泡体は、断熱材又は保温材として好適に用いることができ、上記発泡体は、特に住宅の断熱材としてより好適に用いることができ、配管等の保温材としてより好適に用いることができる。
【0079】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。本発明は以下の実施例のみに限定されない。
【0080】
実施例及び比較例では、以下の材料を用いた。
【0081】
(塩素化塩化ビニル系樹脂)
(A)塩素化塩化ビニル系樹脂(徳山積水工業社製「HA-05K」)
【0082】
(塩素化塩化ビニル系樹脂以外の樹脂)
(A’)塩化ビニル系樹脂(徳山積水工業社製「TS-640M」)
【0083】
(アクリル系樹脂)
(B)アクリル系樹脂(カネカ社製「PA-40」)
【0084】
(化学発泡剤)
(C)化学発泡剤(炭酸系発泡剤、永和化成工業社製「セルボンSC-855」)
【0085】
(化学発泡剤以外の発泡剤)
(C’)物理発泡剤(富士フイルム和光純薬社製「165-00607」)
【0086】
(実施例1~8)
(A)塩素化塩化ビニル系樹脂(徳山積水工業社製「HA-05K」)に、(B)アクリル系樹脂(カネカ社製「PA-40」)と、(C)化学発泡剤(炭酸系発泡剤、永和化成工業社製「セルボンSC-855」)とを、表1に示す含有量となるように配合し、内容積200リットルのヘンシェルミキサー(カワタ社製)で撹拌混合して、樹脂組成物を得た。
【0087】
得られた樹脂組成物を用いて、造粒工程としてストランド押出品をホットカットすることにより、発泡性粒子(ペレット)(粒子径3mm)を得た。
【0088】
得られた発泡性粒子を一般的に用いられる押出成形機によってシート状に押出成形して、発泡体を得た。使用した金型の押出出口は、幅を150mm、厚みを5mmとした。押出直後に、押出物を水槽にて冷却した。
【0089】
(比較例1)
(A)塩素化塩化ビニル系樹脂(徳山積水工業社製「HA-05K」)に、(C)化学発泡剤(炭酸系発泡剤、永和化成工業社製「セルボンSC-855」)を、表1に示す含有量となるように配合し、内容積200リットルのヘンシェルミキサー(カワタ社製)で撹拌混合して、樹脂組成物を得た。
【0090】
得られた樹脂組成物を用いたこと以外は実施例1~8と同様にして、発泡性粒子及び発泡体を得た。
【0091】
(比較例2)
(A)塩素化塩化ビニル系樹脂(徳山積水工業社製「HA-05K」)に、(B)アクリル系樹脂(カネカ社製「PA-40」)と、(C’)物理発泡剤(富士フイルム和光純薬社製「165-00607」)とを、表1に示す含有量となるように配合し、内容積200リットルのヘンシェルミキサー(カワタ社製)で撹拌混合して、樹脂組成物を得た。
【0092】
得られた樹脂組成物を用いたこと以外は実施例1~8と同様にして、発泡性粒子及び発泡体を得た。
【0093】
(比較例3)
(A’)塩化ビニル系樹脂(徳山積水工業社製「TS-640M」)に、(B)アクリル系樹脂(カネカ社製「PA-40」)と、(C)化学発泡剤(炭酸系発泡剤、永和化成工業社製「セルボンSC-855」)とを、表1に示す含有量となるように配合し、内容積200リットルのヘンシェルミキサー(カワタ社製)で撹拌混合して、樹脂組成物を得た。
【0094】
得られた樹脂組成物を用いたこと以外は実施例1~8と同様にして、発泡性粒子及び発泡体を得た。
【0095】
(評価)
(1)発泡体の見掛け密度
得られた発泡体の見掛け密度を、JIS K7222に準拠して測定した。見掛け密度を下記の基準で判定した。
【0096】
[見掛け密度の判定基準]
○○(かなり優秀):見掛け密度が、0.20g/cm3以下
○(優秀):見掛け密度が、0.20g/cm3より大きく、0.60g/cm3以下
△(優秀ではないが合格):見掛け密度が、0.60g/cm3より大きく、1.00g/cm3以下
×(不合格):見掛け密度が、1.00g/cm3より大きい
【0097】
(2)発泡体の独立気泡率
得られた発泡体を切り出して、縦5cm×横5cm×厚み5mmの発泡体Aを得た。発泡体Aの見掛け体積V1を算出した。さらに、発泡体Aの重量W1を測定した。次に、発泡体Aにおける気泡の占める体積V2を上述した式に基づいて算出した。
【0098】
次に、発泡体Aを23℃の蒸留水中に水面から100mmの深さに沈めて、発泡体Aに圧力を3分間加えた。その後、発泡体Aを蒸留水中から取り出し、発泡体Aの表面に付着した水分を除去して、発泡体Aの重量W2を測定した。上述した式により、独立気泡率F1を算出した。発泡体の独立気泡率を下記の基準で判定した。
【0099】
[発泡体の独立気泡率の判定基準]
〇:発泡体の独立気泡率が60%以上
×:発泡体の独立気泡率が60%未満
【0100】
(3)成形性
得られたた発泡体の表面を目視にて確認した。表面状態を下記の基準で判定した。
【0101】
[成形性の判定基準]
〇:発泡体の表面に荒れ及びボイドが存在せず、外観がかなり良好である
△:発泡体の表面に荒れ及びボイドの少なくとも一方がわずかに存在するが、外観が良好である
×:発泡体の表面に荒れ及びボイドの少なくとも一方が多く存在し、外観が良好ではない
【0102】
組成及び結果を下記の表1に示す。
【0103】