(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044014
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】CANパッケージ型レーザ光源装置
(51)【国際特許分類】
H01S 5/0239 20210101AFI20240326BHJP
H01S 5/02212 20210101ALI20240326BHJP
【FI】
H01S5/0239
H01S5/02212
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149309
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥田 知広
(72)【発明者】
【氏名】紺谷 亘
(72)【発明者】
【氏名】井上 正樹
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173MB01
5F173MC01
5F173MD12
5F173MD64
5F173ME22
5F173MF03
5F173MF26
(57)【要約】
【課題】複数の波長のレーザ光を合成して出射することのできる、簡易的な構造で、装置規模の小型化が可能な、光源装置を提供する。
【解決手段】光源装置は、ステムと、ステムに固定された発光波長の異なる複数のレーザダイオードと、ステムの主面上に配置されたヒートシンクと、ステムの主面とは非平行な面であるヒートシンクの主面上に配置された光導波部材と、光導波部材の第一主面に平行な第一方向に関してステムの主面から離れる領域の外周を覆うキャップと、キャップの一部箇所に設けられた光取出し窓とを備える。光導波部材は、複数のレーザダイオードからの光が入射されて光の進行方向を第一方向に変換するグレーティングカプラと、グレーティングカプラを通じて入射された光を光導波部材の光取出し窓に近い側の第一端部まで導光する、グレーティングカプラと一体化された平面導波路とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステムと、
前記ステムに固定された、発光波長の異なる複数のレーザダイオードと、
前記ステムの主面上に配置されたヒートシンクと、
前記ステムの主面とは非平行な面である、前記ヒートシンクの主面上に配置された、光導波部材と、
前記光導波部材の第一主面に平行な第一方向に関して、前記ステムの主面から離れる領域の外周を覆うキャップと、
前記キャップの一部箇所に設けられた光取出し窓とを備え、
前記光導波部材は、
前記複数のレーザダイオードからの光が入射され、前記光の進行方向を前記第一方向に変換するグレーティングカプラと、
前記グレーティングカプラを通じて入射された光を、前記光導波部材の前記第一方向に係る端部のうちの前記光取出し窓に近い側の端部である第一端部まで導光する、前記グレーティングカプラと一体化された平面導波路と、を有することを特徴とする、CANパッケージ型レーザ光源装置。
【請求項2】
前記複数のレーザダイオードは、前記ステムの主面に対して傾斜して配置されていることを特徴とする、請求項1に記載のCANパッケージ型レーザ光源装置。
【請求項3】
前記ステムは、前記ステムの主面の一部箇所に形成された、前記ステムの主面に対して傾斜した内壁面を含む第一凹部を有し、
前記複数のレーザダイオードは、前記第一凹部の前記内壁面に沿って配置されていることを特徴とする、請求項2に記載のCANパッケージ型レーザ光源装置。
【請求項4】
前記光導波部材の前記第一方向に係る端部のうちの、前記第一端部とは反対側の第二端部は、前記ステムの主面から前記第一方向に関して離間していることを特徴とする、請求項3に記載のCANパッケージ型レーザ光源装置。
【請求項5】
前記ステムは、前記ステムの主面の一部箇所であって、前記第一凹部が形成されている箇所とは別の箇所に第二凹部を有し、
前記光導波部材の前記第一方向に係る端部のうちの、前記第一端部とは反対側の第二端部の少なくとも一部は、前記第二凹部の内底面から前記第一方向に関して離間していることを特徴とする、請求項3に記載のCANパッケージ型レーザ光源装置。
【請求項6】
前記光導波部材の主面であって前記第一主面とは反対側である第二主面上、又は前記第二主面を基準として前記光導波部材から離れる側に配置された、フォトダイオードを備えることを特徴とする、請求項2に記載のCANパッケージ型レーザ光源装置。
【請求項7】
前記第一方向に見て、前記光取出し窓の中央部、前記平面導波路の前記光取出し窓側の端部、及び前記ステムの主面の中央部が、重なり合うことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の、CANパッケージ型レーザ光源装置。
【請求項8】
前記平面導波路は、前記複数のレーザダイオードからの光を合波した状態で前記第一端部まで導光することを特徴とする、請求項7に記載の、CANパッケージ型レーザ光源装置。
【請求項9】
前記平面導波路は、前記複数のレーザダイオードからの光を、前記グレーティングカプラへの入射時よりも相互の間隔を狭小化した状態で、個別に前記第一端部まで導光することを特徴とする、請求項7に記載の、CANパッケージ型レーザ光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ光源装置に関し、特に、CANパッケージと呼ばれるタイプのパッケージに半導体レーザ素子が収容されてなる、レーザ光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
異なる複数の波長の光を同一の光取出し窓から出射することのできる、レーザ光源装置が求められている。例えば、下記特許文献1には、複数のダイクロイックミラーを搭載して複数の波長のレーザ光を合波して出射する、CANパッケージ型レーザ光源装置が開示されている。
【0003】
一方で、下記特許文献2に記載されているように、複数の波長の光を平面導波路を用いて合波する方法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6624899号公報
【特許文献2】特許第5817022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された構造の場合、複数のダイクロイックミラーを搭載する必要があるため、装置構造が複雑化する。また、ダイクロイックミラーを用いて光の合成をする場合には、光を効率的に利用する観点から厳密な位置合わせが要求される。
【0006】
一方で、特許文献2に開示されているように平面導波路を用いて光を合波する場合には、ダイクロイックミラーを搭載して合波する場合と比べて、装置構成の簡素化が期待される。
【0007】
しかしながら、上記構成を採用しようとすると、パッケージの大型化を招くと共に、やはり精度よく光学的な位置合わせを行う必要がある。この点について、
図14~
図15を参照して説明する。
【0008】
図14~
図15は、波長が相互に異なる複数のレーザダイオードからの光を、平面導波路を用いて合波して外部に取り出すよう設計された、光源装置100を説明するための模式的な図面である。光源装置100は、X方向に光L106が取り出されることが予定されており、Y方向に複数のレーザダイオード103(103B、103G、103R)が配列されている。
図14~
図15では、X方向及びY方向の双方に直交する方向がZ方向とされている。
図14は、光源装置100をX-Z平面で切断したときの模式的な断面図である。
図15は、光源装置100の一部の要素をZ方向に見たときの模式的な図面である。
【0009】
光源装置100が備える複数のレーザダイオード103のうち、レーザダイオード103Bが青色光を、レーザダイオード103Gが緑色光を、レーザダイオード103Rが赤色光を、それぞれ発する。そして、平面導波路が形成された合波器110によって、各色の光が合波されて、光取出し窓106から合成光L106が、典型的には白色光として取り出される。
【0010】
図14に示すように、例えばセラミック製のパッケージ105内に、レーザダイオード103及び合波器110が搭載されている。より詳細には、パッケージ105上に、光源冷却用のヒートシンク101が設置され、ヒートシンク101上において、サブマウント102及びレーザダイオード103が設置される。より具体的には、各色のレーザダイオード103及びそれに対応するサブマウント102が、Y方向に離間して配列されている。
【0011】
レーザダイオード103から出射された光L103は、合波器110の所定の位置に入射される。より詳細には、
図15に示すように、レーザダイオード103Bは、合波器110上の第一導波路121が形成されている箇所に向けて、光を発する。同様に、レーザダイオード103Gは合波器110上の第二導波路122が形成されている箇所に向けて光を発し、レーザダイオード103Rは合波器110上の第三導波路123が形成されている箇所に向けて光を発する。
【0012】
第一導波路121を通じて導光されたレーザダイオード103Bからの青色光と、第二導波路122を通じて導光されたレーザダイオード103Gからの緑色光とは、第一合波部111の箇所で合波されて合成光となる。そして、この合成光と、第三導波路123を通じて導波されたレーザダイオード103Rからの赤色光とは、第二合波部112の箇所で合波される。更に、この例では、第一合波部111で得られた合成光と、第二合波部112で得られた合成光とが、第三合波部113において合波された後、光取出し窓106に導かれ、白色光である合成光L106として取り出される。
【0013】
図14~
図15に示す光源装置100の場合、各レーザダイオード103は、その出射端から出射されるそれぞれのレーザ光を、合波器110に形成された、対応する導波路内に入射させる必要がある。このため、光取り出し効率を高める観点からは、各レーザダイオード103の出射端のZ方向の位置(高さ位置)と、合波器110に形成された対応する導波路のZ方向の位置(高さ位置)を、精度よく調整する必要が生じる。
【0014】
また、
図14~
図15に示す光源装置100の場合、各レーザダイオード103と合波器110とを、光取り出し方向(ここではX方向)に、直線的に配列させる必要が生じる。このため、パッケージ105はX方向に係る長さを十分確保する必要があり、光源装置100の小型化への支障になり得る。
【0015】
本発明は、上記の課題に鑑み、複数の波長のレーザ光を合成して出射することのできる、簡易的な構造で、装置規模の小型化が可能な、光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る光源装置は、CANパッケージ型のレーザ光源装置であって、
ステムと、
前記ステムに固定された、発光波長の異なる複数のレーザダイオードと、
前記ステムの主面上に配置されたヒートシンクと、
前記ステムの主面とは非平行な面である、前記ヒートシンクの主面上に配置された、光導波部材と、
前記光導波部材の第一主面に平行な第一方向に関して、前記ステムの主面から離れる領域の外周を覆うキャップと、
前記キャップの一部箇所に設けられた光取出し窓とを備え、
前記光導波部材は、
前記複数のレーザダイオードからの光が入射され、前記光の進行方向を前記第一方向に変換するグレーティングカプラと、
前記グレーティングカプラを通じて入射された光を、前記光導波部材の前記第一方向に係る端部のうちの前記光取出し窓に近い側の端部である第一端部まで導光する、前記グレーティングカプラと一体化された平面導波路と、を有することを特徴とする。
【0017】
上記の構造によれば、光導波部材が平面導波路とグレーティングカプラとを一体的に備えており、このグレーティングカプラによって、レーザダイオードからの出射光の進行方向が、光導波部材の主面(第一主面)に平行な方向(第一方向)に変換される。このため、レーザダイオードと平面導波路とを直線的に配置する必要がなく、装置規模の小型化が可能となる。
【0018】
更に、各レーザダイオードは、光導波部材に形成されたグレーティングカプラに対して光が入射できるように配置すればよい。このため、各レーザダイオードの出射端面と、平面導波路の入射端面との精密な位置合わせが不要となる。
【0019】
ところで、
図14~
図15を参照して上述した光源装置100の場合、各レーザダイオード103(103B,103G,103R)からの出射光を、効率的に平面導波路(121,122,123)に導く観点からは、両者の離間距離(より詳細にはX方向に係る離間距離)を短くして、両者をできるだけ近づけるのが好ましい。しかしながら、レーザダイオード103と、平面導波路(121,122,123)が形成されている合波器110とを近接させると、各レーザダイオード103からの熱が合波器110に伝搬されやすくなる。この結果、合波器110の温度が上昇しやすくなり、各波長の光の合成効率(結合効率)が低下するおそれがある。
【0020】
一方で、各レーザダイオード103と合波器110との離間距離を確保しつつ、各レーザダイオード103からの光を効率的に各平面導波路(121,122,123)に導くために、各レーザダイオード103と合波器110との間に、レンズ等の光学部材を配置する方法も考えられる。しかし、この方法を採用するには、光学部材の配置スペースを確保する必要がある上、各レーザダイオード103と光学部材との間の位置調整、及び光学部材と合波器110との位置調整が必要となる。
【0021】
これに対し、上記構造の光源装置の場合、前記のとおり、各レーザダイオードからの光は、グレーティングカプラの入射面に対して入射されればよい。グレーティングカプラは、面方向にある程度の拡がりを有した状態で形成できるため、光導波部材と各レーザダイオードとを光軸方向に著しく近接させる必要はない。このため、各レーザダイオードから発せられる熱が光導波部材に与える影響を小さくできる。
【0022】
更に、上記の構造によれば、光導波部材が搭載されているヒートシンクと、レーザダイオードとが、同一のステムに固定される。これにより、レーザダイオードと光導波部材の両者を共通のステムによって冷却できるため、冷却性能を確保しながらも、装置規模の小型化が実現できる。
【0023】
前記複数のレーザダイオードは、前記ステムの主面に対して傾斜して配置されているものとしても構わない。より詳細には、ステムの主面から見て光取出し窓が存在する方向を「上方」と規定すると、複数のレーザダイオードからの光が、グレーティングカプラに対して、斜め下方から入射されるものとしてもよい。典型的な例としては、グレーティングカプラの光入射面、言い換えれば光導波部材の第一主面と、複数のレーザダイオードの光出射端面とのなす角度は、45°以上90°未満とすることができる。
【0024】
前記ステムは、前記ステムの主面の一部箇所に形成された、前記主面に対して傾斜した内壁面を含む第一凹部を有し、
前記複数のレーザダイオードは、前記第一凹部の前記内壁面に沿って配置されているものとしても構わない。
【0025】
上記構造によれば、レーザダイオードを前記第一凹部の前記内壁面上に配置するだけで、光導波部材に形成されたグレーティングカプラに対して、斜め下方から光を入射することができる。
【0026】
レーザダイオードを前記内壁面上に固定するに際しては、接着剤を用いる方法を採用することができる。このとき、仮に、固化する前の接着剤がレーザダイオードの底面から周囲に広がってグレーティングカプラの形成箇所に付着すると、光導波部材側に取り込まれる光量が低下する可能性がある。このため、接着剤が周囲に流れ出た場合であっても、グレーティングカプラを含む光導波部材に付着しないような、構造上の工夫が施されていても構わない。
【0027】
具体的な一例としては、前記光導波部材の前記第一方向に係る端部のうちの、前記第一端部とは反対側の第二端部が、前記ステムの主面から前記第一方向に関して離間しているものとしても構わない。
【0028】
この場合、ステムの主面に接着剤が広がったとしても、ステムの主面と光導波部材のステム側の端部(第二端部)とが第一方向に離間しているため、接着剤が光導波部材に付着しにくくなる。
【0029】
具体的な別の一例として、前記ステムは、前記主面の一部箇所であって、前記第一凹部が形成されている箇所とは別の箇所に第二凹部を有し、
前記光導波部材の前記第一方向に係る端部のうちの、前記第一端部とは反対側の第二端部の少なくとも一部は、前記第二凹部の内底面から前記第一方向に関して離間しているものとしても構わない。
【0030】
この場合、ステムの主面に接着剤が広がったとしても、接着剤が第二凹部内に収容されやすくなる。ステムの第二凹部の内底面と光導波部材のステム側の端部(第二端部)とは第一方向に離間しているため、接着剤が光導波部材に付着しにくくなる。
【0031】
前記レーザ光源装置は、前記光導波部材の主面であって前記第一主面とは反対側である第二主面上、又は前記第二主面を基準として前記光導波部材から離れる側に配置された、フォトダイオードを備えるものとしても構わない。
【0032】
上記のとおり、レーザダイオードからの光は、前記光導波部材に形成されたグレーティングカプラの入射面に対して、斜め方向から入射される。このとき、グレーティングカプラは、入射された光の多くを光導波部材の主面(第一主面)に平行な方向(第一方向)に変換するが、一部のわずかな光は進行方向が変換されることなくグレーティングカプラを透過してそのまま直進する。上記の構成によれば、この強度の低い直進光をフォトダイオードで受光できるため、この受光量の値を種々の制御に利用することが可能となる。例えば、フォトダイオードにおける受光量に基づいて、レーザダイオードの光出力をフィードバック制御することができる。
【0033】
前記第一方向に見て、前記光取出し窓の中央部、前記平面導波路の前記光取出し窓側の端部、及び前記ステムの主面の中央部が、重なり合うものとしても構わない。これにより、光取出し窓のほぼ中央付近から、波長の異なる複数のレーザダイオードからの光が同時に取り出されることとなる。よって、光取出し窓から取り出された光を利用するための光学系の配置や取り扱いが容易化される。
【0034】
ここで、「前記光取出し窓の中央部」とは、光取出し窓の中心位置を基準として、光取出し窓の内径の10%の半径で形成された仮想円内の領域を指す。同様に、「前記ステムの主面の中央部」とは、ステムの主面の中心位置を基準として、ステムの主面の外径の10%の半径で形成された仮想円内の領域を指す。
【0035】
前記平面導波路は、前記複数のレーザダイオードからの光を合波した状態で前記第一端部まで導光するものとしても構わない。別の例として、前記平面導波路は、前記複数のレーザダイオードからの光を、前記グレーティングカプラへの入射時よりも相互の間隔を狭小化した状態で、個別に前記第一端部まで導光するものとしても構わない。いずれの構成においても、光取出し窓から、波長の異なる複数のレーザダイオードからの光が同時に取り出される。例えば、複数のレーザダイオードが、青色光を発するレーザダイオード、緑色光を発するレーザダイオード、及び赤色光を発するレーザダイオードを含むことで、光取出し窓から白色光を取り出すことができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、簡易的な構造によって、複数の波長のレーザ光を合成して出射することのできる、CANパッケージ型のレーザ光源装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明に係るCANパッケージ型のレーザ光源装置1の構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図1からレーザダイオード10の近傍を拡大した模式図である。
【
図3】
図2からレーザダイオード10及びサブマウント12の図示を省略した図面である。
【
図4】光導波部材30をX方向に見たときの模式的な平面図であり、一部の図示が省略されている。
【
図5】光導波部材30をX方向に見たときの模式的な平面図であり、光取出し窓43と共に図示されている。
【
図6】光導波部材30をX-Z平面で切断したときの模式的な断面図である。
【
図7】レーザダイオード10から出射された光が、光取出し窓43から取り出されるまでの進行の過程を模式的に示す図面である。
【
図8】ステム3、平面導波路33、及び光取出し窓43の、X-Y平面上における位置関係を説明するための図面である。
【
図9】レーザ光源装置1の別実施形態の一部分の構成を模式的に示す図面である。
【
図10】レーザ光源装置1の別実施形態の一部分の構成を模式的に示す別の図面である。
【
図11】レーザ光源装置1の別実施形態の構成を模式的に示す断面図である。
【
図12】レーザ光源装置1の別実施形態の構成を模式的に示す別の断面図である。
【
図13】レーザ光源装置1の別実施形態が備える光導波部材30をX方向に見たときの模式的な平面図であり、光取出し窓43と共に図示されている。
【
図14】レーザダイオードと合波器とが直線上に配列されてなる光源装置の構成を模式的に示す断面図である。
【
図15】レーザダイオードと合波器とが直線上に配列されてなる光源装置の構成を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明に係るCANパッケージ型レーザ光源装置の各実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の図面はいずれも模式的に示されたものであり、図面上の寸法比は実際の寸法比と一致しておらず、各図面間においても寸法比は必ずしも一致していない。
【0039】
図1は、CANパッケージ型レーザ光源装置1(以下、単に「光源装置1」と略記される。)の構成を模式的に示す断面図である。光源装置1は、ステム3と、ステム3に固定された複数のレーザダイオード10,10,…を備える。なお、複数のレーザダイオード10,10,…は、
図1内のY方向に沿って配列されているが、図示の都合上、
図1には単一のレーザダイオード10のみが表示されている。また、本実施形態では、後述する
図4に示すように、複数のレーザダイオード10,10,…は、青色光を発するレーザダイオード10B、緑色光を発するレーザダイオード10G、及び赤色光を発するレーザダイオード10Rを含んで構成されている。
【0040】
光源装置1は、更に、ステム3の主面3a上に配置されたヒートシンク5と、ヒートシンク5の主面5a上に配置された光導波部材30とを備える。
図1に示すように、ヒートシンク5の主面5aと、ステム3の主面3aとは非平行である。
【0041】
光源装置1は、更にキャップ41と、キャップ41の一部箇所に設けられた光取出し窓43とを備える。キャップ41は、ステム3の主面3aの+Z側の領域を覆うように、より具体的には、ヒートシンク5、光導波部材30、及びレーザダイオード10,10,…を覆うように配置されている。つまり、キャップ41で覆われた空間内に、ヒートシンク5、光導波部材30、及びレーザダイオード10,10,…が配置されている。
【0042】
キャップ41の底部は、ステム3の主面3aに接合される。この接合に際し、典型的には抵抗溶接が利用されるため、ステム3は、抵抗溶接が可能で、且つ比較的熱伝導性の高い材料、具体的には、鉄、鉄合金等が用いられる。ただし、ステム3の材料は限定されず、鉄や鉄合金よりも熱伝導性の高い材料で形成されていても構わない。キャップ41がステム3の主面3aに接合されることでキャップ41の内側空間が気密封止され、レーザダイオード10,10,…やボンディングワイヤ16等が保護されている。
【0043】
ステム3の一部箇所には、絶縁部材によって相互に電気的に接続された一対の給電ピン14,14が挿通されている。
図1には一本の給電ピン14のみが図示されているが、一対の給電ピン14,14は例えばY方向に並べられているものとして構わない。給電ピン14には給電用のボンディングワイヤ16が接続されている。ボンディングワイヤ16の、給電ピン14とは反対側の端部は、レーザダイオード10の給電領域に接続される。
【0044】
ヒートシンク5は、典型的にはステム3よりも熱伝導性の高い材料で形成されており、例えば銅や、銅合金等が用いられる。光導波部材30が、ヒートシンク5の主面5a上に載置されることで、光導波部材30内を光が伝搬することで生じる熱が、ヒートシンク5を介してステム3側へと排熱される。
【0045】
本実施形態において、レーザダイオード10は、ステム3の主面3aに対して傾斜した面上に設置されている。この点について、
図2及び
図3を参照して説明する。
図2は、
図1からレーザダイオード10の近傍を拡大した模式図に対応し、
図3は、
図2からレーザダイオード10及びサブマウント12の図示を省略した図面に対応する。
【0046】
図3に示すように、ステム3は、一部箇所において主面3aから-Z側に彫り込まれた第一凹部4を有する。第一凹部4は、ステム3の主面3aに対して傾斜した内壁面4aを含む。
図2に示すように、サブマウント12及びレーザダイオード10は、この傾斜した内壁面4a上に載置されている。つまり、レーザダイオード10の主面10aは、ステム3の主面3aに対して傾斜している。
【0047】
図1に戻り説明を続ける。給電ピン14及びボンディングワイヤ16を介してレーザダイオード10に電圧が印加されると、レーザダイオード10が発光する。レーザダイオード10からの光は、光導波部材30上の所定の領域に入射される。
図2及び
図3を参照して説明したように、レーザダイオード10は傾斜した内壁面4aの上面に設置されているため、+Z方向を「上方」と定義すると、レーザダイオード10からの光L10は、斜め上方に向かって進行して光導波部材30に入射する。
【0048】
光導波部材30は、光の進行方向を変換するグレーティングカプラ31と、光を伝搬する平面導波路33とが形成された部材である(
図4,
図5参照)。
図4及び
図5は、光導波部材30をX方向に見たときの模式的な平面図である。なお、図示の都合上、
図4と
図5とでは、相互に図示の方向が異なっている。また、
図6は、光導波部材30をX-Z平面で切断したときの模式的な断面図である。
【0049】
図6に示すように、光導波部材30は、例えばSiからなる基板35と、この基板35上に形成された、埋込層36、コア層37、及びクラッド層38とを備える。埋込層36は、例えばSiO
2(屈折率1.44)からなる。コア層37は、埋込層36よりも屈折率の高い材料で形成されており、例えばSiON(屈折率1.48)からなる。クラッド層38は、コア層37よりも屈折率が低い材料からなり、例えば埋込層36と同じくSiO
2で形成されている。
【0050】
光導波部材30は、レーザダイオード10が配置されている側、すなわち-Z側の領域に、グレーティングカプラ31を有する。具体的には、この領域にはコア層37に回折格子39が形成されている。回折格子39は、コア層37に対して、Z方向に関し周期的な凹凸加工を施すことで得られる。凹凸の深さ、周期、凸部の幅を適宜調整することにより、入射光の進行方向を所望の方向に変換することが可能となる。
【0051】
図4及び
図5に示すように、本実施形態において、光導波部材30は、各レーザダイオード10(10B,10G,10R)に対応してY方向に配列された、複数のグレーティングカプラ31(31B,31G,31R)を有する。レーザダイオード10Bからの出射光L10Bはグレーティングカプラ31Bに入射され、レーザダイオード10Gからの出射光L10Gはグレーティングカプラ31Gに入射され、レーザダイオード10Rからの出射光L10Rはグレーティングカプラ31Rに入射される。
【0052】
各グレーティングカプラ31(31B,31G,31R)は、それぞれ平面導波路33に連絡されている。平面導波路33は、コア層37とクラッド層38との間で全反射を繰り返しながら+Z方向に光を伝搬するように形成されている。
図4及び
図5に示すように、光導波部材30は、各グレーティングカプラ31(31B,31G,31R)に対応してY方向に配列された、複数の平面導波路33(33B,33G,33R)を有する。
【0053】
すなわち、レーザダイオード10Bからの出射光L10Bは、グレーティングカプラ31Bによって進行方向が変換された後、平面導波路33B内を導光する。同様に、レーザダイオード10Gからの出射光L10Gは、グレーティングカプラ31Gによって進行方向が変換された後、平面導波路33G内を導光し、レーザダイオード10Rからの出射光L10Rは、グレーティングカプラ31Rによって進行方向が変換された後、平面導波路33R内をZ方向に導光される。なお、ここでいうZ方向が「第一方向」に対応する。
【0054】
このような光導波部材30は、所望の形状を有するグレーティングカプラ31及び平面導波路33が実現できるように設計されたフォトマスクを用いて、リソグラフィ及びエッチングの技術を利用して製造できる。
【0055】
図5に示す例では、平面導波路33Bを伝搬する青色光、平面導波路33Gを伝搬する緑色光、及び平面導波路33Rを伝搬する赤色光が合波されて、光取出し窓43が配置されている+Z側の第一端部30aまで導光される。そして、光取出し窓43から、合成光として光L1が取り出される。
【0056】
図7は、レーザダイオード10から出射された光L10が、光取出し窓43から取り出されるまでの進行の過程を模式的に示す図面である。上述したように、レーザダイオード10の主面10aは、ステム3の主面3aに対して傾斜しているため、レーザダイオード10からの光L10は、グレーティングカプラ31の光入射面に対して、斜め方向から角度を有して入射される。この入射角度は、例えば0°より大きく45°以下である。すなわち、レーザダイオード10の主面10aと、光導波部材30の第一主面30bとのなす角度は、45°以上90°未満である。
【0057】
グレーティングカプラ31に入射された光L10は、進行方向を+Z方向に変換された後、平面導波路33に導かれる。そして、光L10は、平面導波路33内を+Z方向に伝搬した後、光L1として光取出し窓43より外側に取り出される。
【0058】
ここで、Z方向に見たときに、平面導波路33の+Z側の端部33aは、光取出し窓43の中心位置の近傍になるように設計されるのが好ましい。
図8は、ステム3、平面導波路33、及び光取出し窓43の、X-Y平面上における位置関係を説明するための図面である。Z方向から見て、ステム3の中央部、平面導波路33の+Z側の端部33a、及び光取出し窓43の中央部が相互に重なり合うように配置されるのが好適である。これにより、光取出し窓43の中央部から合成光としての光L1が+Z方向に取り出されるため、この光L1を利用する側の光学部材の位置調整が容易化される。
【0059】
図1を参照して上述したように、グレーティングカプラ31及び平面導波路33が形成された光導波部材30は、ヒートシンク5の主面5a上に配置されており、このヒートシンク5はステム3の主面3a上に配置されている(
図7も参照)。これにより、光導波部材30内を光が伝搬することにより生じる熱を、ヒートシンク5を介してステム3側に効率的に排熱できる。また、光源装置1は、レーザダイオード10から出射される光L10を、グレーティングカプラ31に入射させる構成である。グレーティングカプラ31は
図4及び
図5に模式的に示すように、面(Y-Z平面)方向に拡がりを有している。このため、レーザダイオード10からの光L10は、ある程度の面積を有する領域内に入射できればよいため、レーザダイオード10の出射端と光導波部材30とを極めて接近させる必要がない。これにより、レーザダイオード10から生じる熱が光導波部材30に伝搬して光導波部材30が高温化するという現象の発現を抑制できる。
【0060】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0061】
〈1〉レーザダイオード10を、ステム3に設けられた第一凹部4の内壁面4a上に安定的に位置させる際に、接着剤を利用することができる。ここで、仮に固化する前の接着剤が、光導波部材30の第一主面30bに、典型的にはグレーティングカプラ31が形成されている領域の面に付着すると、グレーティングカプラ31における光の進行方向の変換効率が低下することが予想される。かかる観点から、光源装置1には、予め接着剤の退避領域が確保されていても構わない(
図9、
図10参照)。
【0062】
図9及び
図10は、光源装置1の別実施形態の一部分の構成を模式的に示す図面である。
図9に示す光源装置1は、光導波部材30のステム3側の端部である第二端部30cと、ステム3の主面3aとの間に、離間領域61が形成されている。言い換えれば、ステム3の第二端部30cは、ステム3の主面3aには接触せずに、ステム3の主面3aから+Z側に退避している。これにより、仮に固化する前の接着剤が傾斜した内壁面4aからステム3の主面3a側に流れ出たとしても、この流れ出た接着剤を離間領域61内に留めることができる。
【0063】
図10に示す光源装置1は、ステム3の主面3aの一部箇所に、第一凹部4(
図2参照)とは別の第二凹部62を有する。光導波部材30のステム3側の端部である第二端部30cの一部、より詳細には、グレーティングカプラ31が形成されている側の第二端部30cは、第二凹部62の内底面62aに対してZ方向に離間している。これにより、仮に、固化する前の接着剤が内壁面4aからステム3の主面3a側に流れ出たとしても、この流れ出た接着剤を第二凹部62内に留めることができる。
【0064】
〈2〉上述したように、上記実施形態の光源装置1では、レーザダイオード10からの光L10が、光導波部材30に対して、より詳細にはグレーティングカプラ31に対して、角度を有して入射される。ここで、グレーティングカプラ31に入射された光L10の全てが進行方向が変換されるわけではなく、わずかな直進光が存在する。よって、
図11又は
図12に示すように、光源装置1が、この直進光を受光するフォトダイオード63を備えるものとしても構わない。
図11及び
図12は、いずれも光源装置1の別実施形態の構成を、
図1にならって模式的に示す断面図である。
【0065】
フォトダイオード63が、レーザダイオード10からの光L10の一部を受光可能な位置に配置されることで、受光量に応じた種々の制御に利用することができる。一例として、フォトダイオード63で受光した光量に基づいてレーザダイオード10の光出力を制御するものとしても構わない。
【0066】
図11に示す態様では、ヒートシンク5の光導波部材30が形成されている側の主面5aとは反対側の主面5bに、フォトダイオード63が形成されている。ヒートシンク5の一部には、X方向に貫通する導光経路65が形成されている。光導波部材30(より詳細にはグレーティングカプラ31)を透過して直進する光を、導光経路65を介してフォトダイオード63によって受光できる。
【0067】
図12に示す態様では、光導波部材30の第一主面30bとは反対側の第二主面30dに、フォトダイオード63が形成されている。光導波部材30(より詳細にはグレーティングカプラ31)を透過して直進する光を、フォトダイオード63によって受光できる。
【0068】
〈3〉上記実施形態では、
図5を参照して上述したように、平面導波路33Bを伝搬する青色光、平面導波路33Gを伝搬する緑色光、及び平面導波路33Rを伝搬する赤色光が合波され、光取出し窓43から合成光として光L1が取り出されるものとした。これに対し、平面導波路33Bを伝搬する青色光、平面導波路33Gを伝搬する緑色光、及び平面導波路33Rを伝搬する赤色光は、それぞれ合波されることなく、同一の光取出し窓43から合成光として光L1が取り出されるものとしても構わない(
図13参照)。
図13は、この別実施形態の光源装置1が備える光導波部材30を、
図5にならって示す図面である。
【0069】
図13に示す光導波部材30が備える各平面導波路33(33B,33G,33R)は、各レーザダイオード10からの光L10(L10B,L10G,L10R)を、グレーティングカプラ31(31B,31G,31R)への入射時よりも相互の間隔を狭小化した状態で、光導波部材30の第一端部30aまで導光する。そして、第一端部30aから出射された合成光L1が、光取出し窓43から取り出される。
【0070】
〈4〉上記各実施形態では、光源装置1が備える複数のレーザダイオード10,10,…として、青色光を発するレーザダイオード10B、緑色光を発するレーザダイオード10G、及び赤色光を発するレーザダイオード10Rを含むものとして説明した。しかし、本発明において、複数のレーザダイオード10,10,…の発光波長には限定されない。すなわち、本発明は、一般的に発光波長の異なる複数のレーザダイオード10,10,…を備える光源装置1に対して適用可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 :CANパッケージ型レーザ光源装置
3 :ステム
3a :ステムの主面
4 :第一凹部
4a :内壁面
5 :ヒートシンク
5a :ヒートシンクの主面
5b :ヒートシンクの主面
10,10B,10G,10R :レーザダイオード
10a :レーザダイオードの主面
12 :サブマウント
14 :給電ピン
16 :ボンディングワイヤ
30 :光導波部材
30a :光導波部材の第一端部
30b :光導波部材の第一主面
30c :光導波部材の第二端部
30d :光導波部材の第二主面
31,31B,31G,31R :グレーティングカプラ
33,33B,33G,33R :平面導波路
33a :平面導波路の端部
35 :基板
36 :埋込層
37 :コア層
38 :クラッド層
39 :回折格子
41 :キャップ
43 :光取出し窓
61 :離間領域
62 :第二凹部
62a :内底面
63 :フォトダイオード
65 :導光経路
100 :光源装置
101 :ヒートシンク
102 :サブマウント
103 :レーザダイオード
103B :レーザダイオード
103G :レーザダイオード
103R :レーザダイオード
105 :パッケージ
106 :光取出し窓
110 :合波器
111 :第一合波部
112 :第二合波部
113 :第三合波部
121 :第一導波路
122 :第二導波路
123 :第三導波路
L1 :光取出し窓からの放射光
L10 :レーザダイオードからの出射光