(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044036
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】MEMSデバイスおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B81B 3/00 20060101AFI20240326BHJP
B81C 1/00 20060101ALI20240326BHJP
H01L 29/84 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B81B3/00
B81C1/00
H01L29/84 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149346
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】ヘラー,マーティン ウィルフリード
(72)【発明者】
【氏名】紙西 大祐
【テーマコード(参考)】
3C081
4M112
【Fターム(参考)】
3C081AA01
3C081AA13
3C081BA04
3C081BA22
3C081BA32
3C081BA44
3C081BA48
3C081CA02
3C081CA14
3C081CA23
3C081CA29
3C081CA40
3C081CA45
3C081DA03
3C081DA28
3C081DA43
3C081EA02
3C081EA03
3C081EA12
3C081EA14
4M112AA02
4M112BA07
4M112CA21
4M112CA23
4M112CA24
4M112CA36
4M112DA02
4M112EA02
4M112EA06
4M112FA20
(57)【要約】
【課題】アイソレーションジョイントの絶縁性を保ちつつ、アイソレーションジョイントとキャビティの底部との接触を防止したMEMSデバイスを提供する。
【解決手段】可動部を備えたMEMSデバイスが、基板と、基板に設けられた凹部と、凹部内に中空で支持された可動部と、可動部の所定の位置に挿入されて、その両側で可動部を電気的に絶縁するアイソレーションジョイントとを含み、凹部の底部と可動部との最短距離(fg1)は、凹部の底部とアイソレーションジョイントとの距離(fg2)より小さい(fg1<fg2)。アイソレーションジョイントに隣接した可動部の深さ(s2)は、アイソレーションジョイントの深さ(t)より小さい。可動部は、アイソレーションジョイントの深さ(t)より大きな深さ(mh)を有する部分を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部を備えたMEMSデバイスであって、
基板と、
前記基板に設けられた凹部と、
前記凹部内に中空で支持された可動部と、
前記可動部の所定の位置に挿入されて、その両側で前記可動部を電気的に絶縁するアイソレーションジョイントと、を含み、
前記凹部の底部と前記可動部との最短距離は、前記凹部の底部と前記アイソレーションジョイントとの距離より小さいMEMSデバイス。
【請求項2】
前記アイソレーションジョイントに隣接した前記可動部の深さは、前記アイソレーションジョイントの深さより小さい請求項1に記載のMEMSデバイス。
【請求項3】
前記可動部は、前記アイソレーションジョイントの深さより大きな深さを有する部分を含む請求項2に記載のMEMSデバイス。
【請求項4】
前記凹部の底部と前記アイソレーションジョイントとの距離は、前記アイソレーションジョイントの下端と、前記凹部の底部に形成された凸部との距離である請求項1に記載のMEMSデバイス。
【請求項5】
アイソレーションジョイントを有する可動部を備えたMEMSデバイスの製造方法であって、
絶縁体で埋められたトレンチからなるアイソレーションジョイントを基板に形成する工程と、
前記アイソレーションジョイントの上部およびその周囲の前記基板を覆うマスクを用いて前記基板をエッチングし、第1トレンチを形成する第1構造エッチング工程と、
前記マスクを除去した後、前記アイソレーションジョイントをエッチングマスクに用いて前記基板をエッチングし、第2トレンチを形成する第2構造エッチング工程と、
前記第2トレンチの側壁を保護しながら前記第2トレンチ内の前記基板をエッチングして、凹部と、前記凹部内に中空で支持された、前記アイソレーションジョイントを有する可動部とを形成する工程と、を含み、
前記第2トレンチの側壁の深さは、前記アイソレーションジョイントの深さより小さい製造方法。
【請求項6】
前記第2トレンチは、側壁の下端から前記第2トレンチの底面に向かってテーパ部分を有し、前記底面に対する前記テーパ部分の仰角αは、60°以上で85°以下の角度である請求項5に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はMEMSデバイスおよびその製造方法に関し、特に可動部に設けたアイソレーションジョイント(以下「IJ」という。)の絶縁性を保ちつつ、可動部の変形にともなうIJの破損を防止したMEMSデバイスおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のMEMSデバイスは、シリコン基板をエッチングして設けたキャビティ上に、同じくシリコン基板をエッチングして形成した梁構造部が中空に設けられた構造を有する。梁構造部では、シリコンを酸化して作製した絶縁性のトレンチ分離ジョイントが設けられ、所定の位置で梁構造部を電気的に絶縁している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のMEMSデバイスでは、シリコン基板にまずトレンチ分離ジョイントを形成し、次にシリコン基板を所定の深さまでエッチングしてエッチング溝を形成し、エッチング溝の側壁を保護膜で覆いながらエッチング溝の下方のシリコン基板を等方性エッチングすることで、中空に保持され、トレンチ分離ジョイントを備えた梁構造部が形成される。梁構造部に設けられたトレンチ分離ジョイントは、絶縁性を確保するために、梁構造部より断面が大きくなるように形成される。このため、トレンチ分離ジョイントは、梁構造部より下方に突出した構造を有し、梁構造部の変形時にキャビティの底部のシリコン基板に接触して破損するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、JIの絶縁性を保ちつつ、IJとキャビティの底部との接触を防止したMEMSデバイスの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの形態は、
可動部を備えたMEMSデバイスであって、
基板と、
基板に設けられた凹部(キャビティ)と、
凹部内に中空で支持された可動部と、
可動部の所定の位置に挿入されて、その両側で可動部を電気的に絶縁するアイソレーションジョイントと、を含み、
凹部の底部と可動部との最短距離(fg1)は、凹部の底部とアイソレーションジョイントとの距離(fg2)より小さい(fg1<fg2)MEMSデバイスである。
【0007】
本発明の他の形態は、
アイソレーションジョイントを有する可動部を備えたMEMSデバイスの製造方法であって、
絶縁体で埋められたトレンチからなるアイソレーションジョイントを基板に形成する工程と、
アイソレーションジョイントの上部およびその周囲の基板を覆うマスクを用いて基板をエッチングし、第1トレンチを形成する第1構造エッチング工程と、
マスクを除去した後、アイソレーションジョイントをエッチングマスクに用いて基板をエッチングし、第2トレンチを形成する第2構造エッチング工程と、
第2トレンチの側壁を保護しながら第2トレンチ内の基板をエッチングして、凹部と、凹部内に中空で支持された、アイソレーションジョイントを有する可動部とを形成する工程と、を含み、
第2トレンチの側壁の深さは、アイソレーションジョイントの深さより小さい製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、アイソレーションジョイント(IJ)を備えた可動部を有するMEMSデバイスにおいて、IJにおいて十分な絶縁性を確保しつつ、可動部が変形した際のIJの破損を防止した信頼性の高いMEMSデバイスの提供が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態にかかるMEMSデバイスの平面図である。
【
図2】
図1のMEMSデバイスをII-II方向に見た場合の断面図である。
【
図3】
図1のMEMSデバイスをIII-III方向に見た場合の断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態にかかるMEMSデバイスの製造工程を示す平面図である。
【
図5】
図4のMEMSデバイスをV-V方向に見た場合の断面図である。
【
図6】本発明の実施の形態にかかるMEMSデバイスの製造工程を示す平面図である。
【
図7】
図6のMEMSデバイスをVII-VII方向に見た場合の断面図である。
【
図8】本発明の実施の形態にかかるMEMSデバイスの製造工程を示す平面図である。
【
図9】
図8のMEMSデバイスをIX-IX方向に見た場合の断面図である。
【
図10】本発明の実施の形態にかかるMEMSデバイスの製造工程を示す、
図8のVII-VII方向に見た場合の断面図である。
【
図11】本発明の実施の形態にかかるMEMSデバイスの製造工程を示す平面図である。
【
図12】
図11のMEMSデバイスをXII-XII方向に見た場合の断面図である。
【
図13】
図11のMEMSデバイスをXIII-XIII方向に見た場合の断面図である。
【
図14】本発明の実施の形態にかかるMEMSデバイスのプロセスシミュレーションのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<デバイス構造>
図1は、全体が100で表される、本発明の実施の形態にかかるMEMSデバイスの平面図である。また、
図2は、
図1のMEMSデバイス100をII-II方向に見た場合の断面図であり、
図3は、
図1のMEMSデバイス100をIII-III方向に見た場合の断面図である。
【0011】
MEMSデバイス100は、シリコン基板1中に設けられたキャビティ(凹部)2を有する。キャビティ2の上には、シリコン基板1から形成された可動部(梁構造部)3が中空に保持されている。可動部3の所定の位置にはアイソレーションジョイント(IJ)4が設けられ、可動部3を電気的に絶縁している。
図1では、可動部3の3箇所にIJ4が設けられているが、このような配置に限られるものではない。また、必要に応じて電極や配線等が設けられても構わない。
【0012】
図2に破線で示すように、可動部3とIJ4との接合部において、可動部3の断面(破線で表示)は可動部3の断面より小さく内方に配置されることにより、絶縁性が担保されている。このため、IJ4の下端は、隣接する可動部3の下端より、下方に突出した構造となる。
【0013】
一方、
図3に示すように、IJ4の近傍以外(
図1においてX軸方向に延びる可動部)では、可動部3の下端が、IJ4の下端より下方に位置する。
図3において、可動部3の最も膜厚の大きな部分(例えば、
図1の最上部の可動部3)の厚さをmh、その部分におえる可動部3とキャビティ2の底部との距離(最短距離)をfg1、IJ4の厚さをt、IJ4とキャビティ2の底部との距離(後述のように、IJ4の真下に凸部ができている場合は、凸部との距離)をfg2とする。ここで距離は、Z軸方向の距離をいう。
【0014】
本実施の形態にかかるMEMSデバイス100では、
(1)mh>t、かつ、
(2)fg1<fg2
となっている。
【0015】
このため、MEMSデバイス100の作動時に可動部3がZ軸方向に移動しても、IJ4とキャビティ2の底部が接触するより前に、可動部3がキャビティ2の底部に接触する。これにより、突起状のIJ4の端部とキャビティ2の底部との接触を防止し、IJ4の破損、それに伴う絶縁性の低下を防止できる。
【0016】
このように、本実施の形態にかかるMEMSデバイス100では、IJ4の下方には十分な空間が形成され、IJ4の破損を防止して、信頼性の高いMEMSデバイス100の提供が可能となる。
【0017】
<製造方法>
続いて、
図4~13を用いて、本発明の実施の形態にかかるMEMSデバイス100の製造方法について説明する。製造方法は、以下の工程1~6を含む。
図4~13中、
図1~3と同一符号は、同一または相当箇所を示す。
【0018】
工程1:
図4は、工程1におけるMEMSデバイス100の平面図、
図5は、
図4のMEMSデバイス100をV-V方向に見た場合の断面図である。工程1では、まず単結晶シリコンからなり、表面と裏面を有するシリコン基板1を準備する。
【0019】
次に、シリコン基板1を表面からエッチングしてトレンチを形成し、トレンチの内面を熱酸化することでトレンチを酸化シリコンで埋め込み、アイソレーションジョイント(IJ)4を形成する。さらにCVD法を用いて、シリコン基板1の表面に酸化シリコンからなる酸化膜5を形成する。
【0020】
工程2:
図6は、工程2におけるMEMSデバイス100の平面図、
図7は、
図6のMEMSデバイス100をVII-VII方向に見た場合の断面図である。酸化膜5の上にフォトレジスト膜(図示せず)を形成して酸化膜5をパターニングし、矩形の開口部6を形成する。開口部6の中には、シリコン基板1の表面が露出している。
【0021】
図6に示すように、X軸方向に延びたIJ4の両端が露出するように、IJ4を挟んで2つの開口部6が対称に配置される。2つの開口部6に挟まれ、IJ4の中央を通ってY軸方向に延びる領域が、後の工程でIJ4に接続された可動部3となる。
【0022】
全ての開口部6の形状は同一であることが好ましく、例えば開口部6のX軸方向の幅はw、Y軸方向の幅はh、IJ4を挟まない開口部6のX軸方向の間隔はgである。また、IJ4の深さはtである。
【0023】
工程3:
図8は、工程3におけるMEMSデバイス100の平面図、
図9は、
図8のMEMSデバイス100をIX-IX方向に見た場合の断面図である。酸化膜5の上にフォトレジスト層を形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングする。これにより、可動部3を形成する領域および開口部6を覆う領域に、レジストマスク7が形成される。
【0024】
開口部6を覆うように形成するレジストマスク7の周囲は、開口部6より少し内側(1μm以下、例えば約500nm)であることが好ましい。後述の酸化膜5のエッチング工程(工程4)で酸化膜5の残渣が残らないようにするためである。
【0025】
工程4:
図10は、工程4におけるMEMSデバイス100の断面図であり、
図8のIX-IX方向と同一の方向に見た場合の断面図である。工程4では、まず、レジストマスク7をエッチングマスクに用いて、例えばフッ化水素酸溶液で酸化膜5を除去する。
【0026】
次に、同じくレジストマスク7をエッチングマスクに用いて、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)法でシリコン基板1をエッチングして(「第1構造エッチング」という)、トレンチ8を形成する。トレンチの深さs1は、IJ4の深さtと同程度かまたはtより浅くすることが好ましい。
【0027】
DRIE法には、例えばBoschプロセスが用いられる。一例では、エッチングステップ(SF6ガス、5Pa、7秒)と、保護ステップ(C4F8ガス、2.5Pa、5秒)とを繰り返し行うことで、トレンチ8の側壁を保護膜で保護しながらシリコン基板1をエッチングする。2つのステップの繰り返し回数により、エッチング深さを制御することができる。
【0028】
工程5:
図11は、工程5おけるMEMSデバイス100の平面図、
図12は、
図11のMEMSデバイス100をXII-XII方向に見た場合の断面図、
図13は、XIII-XIII方向に見た場合の断面図である。
【0029】
図12に示すように、まずレジストマスク7を例えば有機溶剤を用いて除去する。次に、酸化シリコンからなるIJ4およびその上にある酸化膜5をマスクとして(ハードマスク)、DRIE法でシリコン基板1をエッチングして(「第2構造エッチング」という)、トレンチ9を形成する。開口部6の寸法(w、h、g)およびエッチング条件を選択することにより、トレンチ9、IJ4に隣接する領域の深さはs2、2つのIJ4の中間での深さはs3となる。s2はIJ4の深さtより浅くする。
【0030】
工程4の第1構造エッチング(
図10参照)では、レジストマスク7があるため、DRIE後にIJ4を囲むようにシリコン基板1がエッチングされずに残る。続く工程5の第2構造エッチング(
図12参照)では、レジストマスク7を除去してDRIEを行うため、IJ4に隣接する領域のエッチング深さがs2になった時点で、2つのIJ4の中間におけるトレンチ9のエッチング深さはs3(おおよそs1+s2)となり、両者の間はテーパ形状となる。ここでテーパ部のX軸方向の長さをfとする。
【0031】
工程6:シリコン基板1に形成したトレンチ9の内壁に酸化膜を形成した後、底部およびテーパ部の上の酸化膜を除去し、側壁(Z軸方向の内壁)の上に酸化膜を残す。続いて等方性エッチングを用いてキャビティ2を形成し(エクステンション)、シリコン基板1から可動部3が浮いた状態にする(リリース)。
【0032】
ここで、水平方向に対するテーパ部分の傾斜角(仰角)をαとすると(
図12参照)、
tanα=(s3-s2)/f
となり、この場合のαは60°~85°であることが好ましい。即ち、テーパ部分の傾斜角αが60°~85°とすることで、工程6において、良好なエクステンションおよびリリースが得られる。
【0033】
最後にフッ化水素酸の蒸気を用いて可動部3の上に残った酸化膜5を除去することで、
図1~3に示すような本発明の実施の形態にかかるMEMSデバイス100が完成する。
【0034】
<プロセスシミュレーション>
図14は、MEMSデバイス100の製造パラメータを決めるプロセスシミュレーションの一例である。S0でシミュレーションを開始した後、まずS1で
図6に示す開口部6のX軸方向の幅w、Y軸方向の幅h、および間隔gを仮定する。
【0035】
次に、S2でDRIEシミュレーション(第1構造エッチングおよび第2構造エッチング)を行い、
図12に示すs1、s2、s3を求める。
【0036】
次に、S3でfが十分に小さいか否かを判断する。具体的には、tanα=(s3-s2)/fとした場合にαが60°~85°の範囲内になるか否かを判断する。
【0037】
YESの場合、S4でエクステンション-リリースのシミュレーションを行う。一方、NOの場合はS5に進み、幅w、h、および間隔gの値を更新して、再度S2のDRIEシミュレーションを行う。
【0038】
S4のエクステンション-リリースシミュレーションの結果について、S6で可動部3が十分にリリースされ、キャビティ2の底面から可動部3まで高さが十分な最終高さとなっているか否かを確認する。具体的には、mh>tかつfg1<fg2(
図2参照)であるか否かを判断する。
【0039】
S6の結果、YESであればS7でプロセスシミュレーションは終了し、幅w、h、および間隔gの値が決定される。一方、NOの場合は、再度S5で幅w、h、および間隔gの値を更新してシミュレーションを繰り返す。
【0040】
このように、工程2(
図6)で形成する開口部6に関するパラメータ(w、h、g)を最適化することにより、mh>tかつfg1<fg2を満たす、良好な構造のMEMSデバイス100を得ることができる。
【0041】
<付記>
本開示は、
可動部を備えたMEMSデバイスであって、
基板と、
基板に設けられた凹部と、
凹部内に中空で支持された可動部と、
可動部の所定の位置に挿入されて、その両側で可動部を電気的に絶縁するアイソレーションジョイントと、を含み、
凹部の底部と可動部との最短距離(fg1)は、凹部の底部とアイソレーションジョイントとの距離(fg2)より小さい(fg1<fg2)MEMSデバイスである。
突起状のアイソレーションジョイントとキャビティの底部との接触を防止し、アイソレーションジョイントの破損、それに伴う絶縁性の低下が防止でき、信頼性の高いMEMSセンサの提供が可能となる。
【0042】
本開示では、アイソレーションジョイントに隣接した可動部の深さ(s2)は、アイソレーションジョイントの深さ(t)より小さい。
かかる構成とすることで、アイソレーションジョイントの絶縁性が担保される。
【0043】
本開示では、可動部は、アイソレーションジョイントの深さ(t)より大きな深さ(mh)を有する部分を含む。
かかる構成とすることで、可動部が移動しても、アイソレーションジョイントとキャビティの底部が接触するより前に、可動部がキャビティの底部に接触するため、アイソレーションジョイントの破損を防止できる。
【0044】
本開示では、凹部の底部とアイソレーションジョイントとの距離(fg2)は、アイソレーションジョイントの下端と、凹部の底部に形成された凸部との距離である。
かかる構成とすることで、凹部の底部に凸部が形成された場合でも、アイソレーションジョイントの下端と凹部との接触を防止できる。
【0045】
本開示は、
アイソレーションジョイントを有する可動部を備えたMEMSデバイスの製造方法であって、
絶縁体で埋められたトレンチからなるアイソレーションジョイントを基板に形成する工程と、
アイソレーションジョイントの上部およびその周囲の基板を覆うマスクを用いて基板をエッチングし、第1トレンチを形成する第1構造エッチング工程と、
マスクを除去した後、アイソレーションジョイントをエッチングマスクに用いて基板をエッチングし、第2トレンチを形成する第2構造エッチング工程と、
第2トレンチの側壁を保護しながら第2トレンチ内の基板をエッチングして、凹部と、凹部内に中空で支持された、アイソレーションジョイントを有する可動部とを形成する工程と、を含み、
第2トレンチの側壁の深さは、アイソレーションジョイントの深さより小さい製造方法である。
第1構造エッチング工程および第2構造エッチング工程を含む製造方法を用いることで、アイソレーションジョイントの絶縁性を担保しつつ、アイソレーションジョイントの破損を防止したMEMSセンサの作製が可能となる。
【0046】
本開示では、第2トレンチは、側壁の下端から第2トレンチの底面に向かってテーパ部分を有し、底面に対するテーパ部分の傾斜角(仰角)αは、60°以上で85°以下の角度である。
テーパ部分の傾斜角をこのように制御することで、所望のMEMSセンサの作製が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、加速度センサや圧力センサ等のMEMSセンサ、プリンタヘッド、デジタルミラーデバイス等のMEMSデバイスに適用できる。
【符号の説明】
【0048】
1 シリコン基板
2 キャビティ
3 可動部
4 アイソレーションジョイント(IJ)
5 酸化膜
6 開口部
7 レジストマスク
8 トレンチ
9 トレンチ
100 MEMSデバイス