(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044037
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】蓄電モジュール及び蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/627 20210101AFI20240326BHJP
H01M 50/636 20210101ALI20240326BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20240326BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240326BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20240326BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20240326BHJP
H01M 50/186 20210101ALI20240326BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20240326BHJP
H01M 50/505 20210101ALI20240326BHJP
H01M 50/548 20210101ALI20240326BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20240326BHJP
【FI】
H01M50/627
H01M50/636
H01M10/04 Z
H01M10/052
H01M10/0585
H01M50/184 A
H01M50/186
H01M50/103
H01M50/505
H01M50/548 101
H01M50/209
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149347
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】岡本 夕紀
(72)【発明者】
【氏名】石黒 文彦
(72)【発明者】
【氏名】弘瀬 貴之
【テーマコード(参考)】
5H011
5H023
5H028
5H029
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA03
5H011AA04
5H011AA05
5H011AA17
5H011CC02
5H011GG01
5H011HH02
5H023AA03
5H023AA09
5H023AS01
5H023CC01
5H023CC11
5H023CC27
5H028AA07
5H028BB01
5H028BB02
5H028CC05
5H028CC08
5H028CC19
5H028EE01
5H028EE06
5H029AJ00
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029BJ17
5H029CJ13
5H029DJ02
5H029DJ03
5H029DJ05
5H029EJ01
5H029EJ12
5H029HJ12
5H040AA01
5H040AA03
5H040AS06
5H040AS07
5H040AT02
5H040AY01
5H040DD02
5H040DD05
5H040DD13
5H040LL01
5H040NN03
5H043AA03
5H043AA05
5H043BA16
5H043BA19
5H043CA13
5H043DA08
5H043DA20
5H043FA10
5H043JA13D
5H043JA13F
5H043LA21D
5H043LA21F
(57)【要約】
【課題】電解液を注入する注液口の周囲に枠体が設けられる場合であっても、蓄電装置として組み立てられたときの積層方向サイズの大型化を抑制することができる、蓄電モジュール及び蓄電装置を提供する。
【解決手段】蓄電モジュールは、複数の連通路が設けられた本体部と、本体部の一側面に取り付けられ、連通路のそれぞれに連通する複数の注液口を有する注液部と、を有する。本体部に設けられる複数の注液枠体には、注液枠体の一部が少なくとも第一方向における一方側に本体部から突出する第一注液枠体と、注液枠体の一部が少なくとも第一方向における他方側に本体部から突出する第二注液枠体と、が存在する。注液枠体の一部が一方側に本体部から突出する突出量は、第二注液枠体よりも第一注液枠体が大きく、注液枠体の一部が他方側に本体部から突出する突出量は、第一注液枠体よりも第二注液枠体が大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層型蓄電装置に用いられる蓄電モジュールであって、
集電体の第一の面に正極が形成されると共に前記第一の面とは反対側の第二の面に負極が形成されたバイポーラ電極が、第一方向に沿って積層された電極積層体と、
前記第一方向に隣り合う前記集電体の間に内部空間を形成すると共に、前記内部空間を封止する封止部と、を備え、
前記封止部は、
前記第一方向から見て前記電極積層体を囲うよう矩形枠状に形成された筒体であって、前記筒体の一側面に複数の前記内部空間のそれぞれに連通する複数の連通路が設けられた本体部と、
前記本体部の前記一側面に取り付けられ、前記連通路のそれぞれに連通する複数の注液口を有する注液部と、を有し、
前記注液部は、
前記第一方向に沿って配列される複数の前記連通路の端部をそれぞれ独立して取り囲んで前記注液口を形成する注液枠体を複数有し、複数の前記注液枠体は、前記本体部の前記一側面上に前記第一方向と直交する第二方向に配列されており、
前記第二方向に配列される複数の前記注液枠体には、前記注液枠体の一部が少なくとも前記第一方向における一方側に前記本体部から突出する第一注液枠体と、前記注液枠体の一部が少なくとも前記第一方向における他方側に前記本体部から突出する第二注液枠体と、を有し、
前記注液枠体の一部が前記第一方向における一方側に前記本体部から突出する突出量は、前記第二注液枠体よりも第一注液枠体が大きく、
前記注液枠体の一部が前記第一方向における他方側に前記本体部から突出する突出量は、前記第一注液枠体よりも前記第二注液枠体が大きい、蓄電モジュール。
【請求項2】
前記第一注液枠体は、前記注液枠体の一部が前記第一方向における一方側にのみ前記本体部から突出し、
前記第二注液枠体は、前記注液枠体の一部が前記第一方向における他方側にのみ前記本体部から突出する、請求項1記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
前記第一注液枠体と前記第二注液枠体とは、それぞれ複数設けられており、
前記第一注液枠体が前記第二方向に連続して配列されると共に、前記第二注液枠体が前記第二方向に連続して配列されている、請求項1又は2記載の蓄電モジュール。
【請求項4】
前記第一注液枠体と前記第二注液枠体とは、それぞれ複数設けられており、
前記第一注液枠体と前記第二注液枠体とが前記第二方向に交互に配列されている、請求項1又は2記載の蓄電モジュール。
【請求項5】
前記注液部は、前記本体部に接続されると共に前記電極積層体の前記第一方向における両端面の一部を被覆するオーバーハング部を更に有する、請求項1又は2記載の蓄電モジュール。
【請求項6】
前記注液枠体には、前記注液口を覆うラミネートフィルムが貼付されている、請求項1又は2記載の蓄電モジュール。
【請求項7】
前記積層体において、前記第一方向において前記積層体の一方の端部を構成する前記正極を終端正極とし、前記第一方向において前記積層体の他方の端部を構成する前記負極を終端負極としたとき、
前記終端正極において前記正極が形成されていない前記集電体の一方の面と、前記終端負極において前記負極が形成されていない前記集電体の一方の面とには、外部に露出する露出面が形成されている、請求項1又は2記載の蓄電モジュール。
【請求項8】
複数の請求項7記載の蓄電モジュールと、
導電性の導電板と、を備え、
前記蓄電モジュールは、前記露出面に接触する前記導電板を介して前記第一方向に積層されている、蓄電装置。
【請求項9】
前記一方側が鉛直方向上方、前記他方側が鉛直方向下方となるように、かつ、前記第一注液枠体が前記鉛直方向に沿って配列されると共に前記第二注液枠体が前記鉛直方向に沿って配列されるように、前記蓄電モジュールを積層したとき、
前記鉛直方向に隣り合う前記蓄電モジュールを見たとき、一方の前記蓄電モジュールにおける前記第二注液枠体の下端が、他方の前記蓄電モジュールにおける前記第一注液枠体の上端よりも下方に位置している、請求項8記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電モジュール及び蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電極板と、電極板の一方面に設けられた正極と、電極板の他方面に設けられた負極とを含む電池セルが積層された積層体を有する蓄電モジュールが知られている(例えば特許文献1)。このような蓄電モジュールでは、積層体が樹脂製のシール材(封止部)によって周囲が囲まれている。樹脂製の封止部における積層体(蓄電モジュールの本体部)の積層方向に沿う側面には、電解液を蓄電モジュールの各電池セル内部に注入するための注液口(電池セル内部と外部とを連通する連通路)が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各電池セルへの電解液の注入は、蓄電モジュールの本体部の側面に設けられた注液口と電解液を注液するアタッチメントとの間がシール(気密性を維持)された状態で実施されることが望ましい。そこで、注液口と当該注液口に取付けられるアタッチメントとの間で気密性を確保できるように、シール面として機能する枠体を蓄電モジュールのそれぞれの注液口の周囲に形成することが考えられる。このとき、蓄電モジュールの最外セルにつながる注液口を囲うように形成される枠体は、蓄電モジュールの側面から見て、蓄電モジュールの本体部から積層方向に突出する。ゆえに、蓄電モジュールにおいて注液口周辺の積層方向サイズが、その他の部分の積層方向サイズよりも大きくなる。このような局所的に厚みが異なる蓄電モジュールを複数個積層して構成される蓄電装置では、積層方向に隣り合うモジュールが、互いに接触しないように、所定の間隔をあけた状態で配置されるので、蓄電装置の積層方向の体格が大きくなる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、電解液を注入する注液口の周囲に枠体が設けられる場合であっても、蓄電装置として組み立てられたときの積層方向サイズの大型化を抑制することができる、蓄電モジュール及び蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の蓄電モジュールは、積層型蓄電装置に用いられる蓄電モジュールであって、集電体の第一の面に正極が形成されると共に第一の面とは反対側の第二の面に負極が形成されたバイポーラ電極が、第一方向に沿って積層された電極積層体と、第一方向に隣り合う集電体の間に内部空間を形成すると共に、内部空間を封止する封止部と、を備え、封止部は、第一方向から見て電極積層体を囲うよう矩形枠状に形成された筒体であって、筒体の一側面に複数の内部空間のそれぞれに連通する複数の連通路が設けられた本体部と、本体部の一側面に取り付けられ、連通路のそれぞれに連通する複数の注液口を有する注液部と、を有し、注液部は、第一方向に沿って配列される複数の連通路の端部をそれぞれ独立して取り囲んで注液口を形成する注液枠体を複数有し、複数の注液枠体は、本体部の一側面上に第一方向と直交する第二方向に配列されており、第二方向に配列される複数の注液枠体には、注液枠体の一部が少なくとも第一方向における一方側に本体部から突出する第一注液枠体と、注液枠体の一部が少なくとも第一方向における他方側に記本体部から突出する第二注液枠体と、が存在し、注液枠体の一部が第一方向における一方側に本体部から突出する突出量は、第二注液枠体よりも第一注液枠体が大きく、注液枠体の一部が第一方向における他方側に本体部から突出する突出量は、第一注液枠体よりも第二注液枠体が大きい。
【0007】
蓄電装置は、複数の蓄電モジュールが積層されることによって構成される。本発明の蓄電モジュールでは、電解液を注入する注液部を形成する注液枠体を積層方向である第一方向に本体部から突出させてはいるが、注液枠体の一部が第一方向における一方側に本体部から突出する突出量は、第二注液枠体よりも第一注液枠体が大きく、注液枠体の一部が第一方向における他方側に本体部から突出する突出量は、第一注液枠体よりも第二注液枠体が大きい。これにより、本体部から大きく突出する部分同士が第一方向に互いに向き合うことを無くすことができ、蓄電装置として組み立てられたときの積層方向サイズの大型化を抑制することができる。
【0008】
本発明の蓄電モジュールでは、第一注液枠体は、注液枠体の一部が第一方向における一方側にのみ前記本体部から突出し、第二注液枠体は、注液枠体の一部が第一方向における他方側にのみ本体部から突出してもよい。この構成では、第一注液枠及び第二注液枠はそれぞれ積層方向において一方が本体部から突出していない構成を有する。このため、本体部から大きく突出する部分同士が第一方向に互いに向き合うことを無くすことができ、蓄電装置として組み立てられたときの積層方向サイズの大型化を抑制することができる。
【0009】
本発明の蓄電モジュールでは、第一注液枠体と第二注液枠体とは、それぞれ複数設けられており、第一注液枠体が第二方向に連続して配列されると共に、第二注液枠体が第二方向に連続して配列されてもよい。この構成では、注液部を容易に製造することができる。
【0010】
本発明の蓄電モジュールでは、第一注液枠体と第二注液枠体とは、それぞれ複数設けられており、第一注液枠体と第二注液枠体とが第二方向に交互に配列されてもよい。この構成では、この構成では、積層方向に隣り合う蓄電モジュール同士が互いに積層方向に直交する第二方向に移動しようとすることを規制できる。
【0011】
本発明の蓄電モジュールでは、注液部は、本体部に接続されると共に電極積層体の第一方向における両端面の一部を被覆するオーバーハング部を更に有してもよい。この構成では、注液部を本体部に対してより安定的に設けることができる。
【0012】
本発明の蓄電モジュールでは、注液枠体には、注液口を覆うラミネートフィルムが貼付されていてもよい。この構成では、注液口ひいては連通路を封止して、内部空間と外部との連通を遮断することができる。
【0013】
本発明の蓄電モジュールでは、積層体において、第一方向において積層体の一方の端部を構成する正極を終端正極とし、第一方向において積層体の他方の端部を構成する負極を終端負極としたとき、終端正極において正極が形成されていない集電体の一方の面と、終端負極において負極が形成されていない集電体の一方の面とには、外部に露出する露出面が形成されてもよい。この構成では、露出面に導電板をさせた状態で蓄電モジュールを積層するだけで、複数の蓄電モジュールを電気的に直列に接続することができる。
【0014】
本発明の蓄電装置では、複数の上記の蓄電モジュールと、導電性の導電板と、を備え、蓄電モジュールは、露出面に接触する導電板を介して第一方向に積層されてもよい。この構成では、露出面に導電板をさせた状態で蓄電モジュールを積層するだけで、複数の蓄電モジュールを電気的に直列に接続することができる。
【0015】
本発明の蓄電装置では、一方側が鉛直方向上方、他方側が鉛直方向下方となるように、かつ、第一注液枠体が鉛直方向に沿って配列されると共に第二注液枠体が鉛直方向に沿って配列されるように、蓄電モジュールを積層したとき、鉛直方向に隣り合う蓄電モジュールを見たとき、一方の蓄電モジュールにおける第二注液枠体の下端が、他方の蓄電モジュールにおける第一注液枠体の上端よりも下方に位置していてもよい。この構成では、第一注液枠体と第二注液枠体との積層方向における段差が形成される。よって、複数のモジュールを積層する際に、この段差を利用してモジュールの位置決めをすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電解液を注入する注液口の周囲に枠体が設けられる場合であっても、蓄電装置として組み立てられたときの積層方向サイズの大型化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、一実施形態の蓄電モジュールをX軸方向から見た側面図である。
【
図2】
図2は、一実施形態の蓄電モジュールをZ軸方向上方から見た蓄電モジュールの上面図である。
【
図4】
図4は、
図1の蓄電モジュールが積層された蓄電装置をX軸方向から見た側面図である。
【
図5】
図5は、
図4の蓄電装置に示されるV-V線から見た断面概略構成図である。
【
図6】
図6は、変形例に係る蓄電モジュールをX軸方向から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明の一実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
図1~
図6には、互いに直交するXYZ直交座標系が示される。X軸方向、Y軸方向(第二方向)及びZ軸方向(第一方向)は互いに直交する。
【0019】
図1~
図3に示される蓄電モジュール1は、例えば、フォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリに用いられる蓄電装置100(
図5参照)に含まれる。蓄電モジュール1は、例えばニッケル水素二次電池又はリチウムイオン二次電池等の二次電池である。本実施形態では、蓄電モジュール1がリチウムイオン二次電池である場合を例示する。
【0020】
蓄電装置100は、複数の蓄電セル2がスタック(積層)された電極積層体3を備える。各蓄電セル2は、正極11と、負極12と、セパレータ13と、封止部14と、を備える。正極11及び負極12は、互いに対向して配置されている。正極11及び負極12の対向方向は、複数の蓄電セル2の積層方向(第一方向)D(Z軸方向)と一致している。正極11及び負極12は、積層方向Dから見て、例えば矩形状の電極である。蓄電セル2は、一辺が1mを超える大型の電池であってもよい。
【0021】
正極11は、集電体21と、正極活物質層23と、を備える。集電体21は、互いに反対を向く第一面21a及び第二面21bと、縁部21cと、を有している。第一面21aには、正極活物質層23が設けられている。第二面21bには、正極活物質層23が設けられていない。縁部21cには、第一面21a側及び第二面21b側のいずれにおいても、正極活物質層23が設けられていない。換言すると、第一面21aは、正極活物質層23が設けられていない領域を縁部21cに有している。縁部21cは、積層方向Dから見て、集電体21において正極活物質層23が設けられた領域の外側に位置している。正極11は、一辺が1mを超える大型な電極であってもよい。
【0022】
負極12は、集電体22と、負極活物質層24と、を備える。集電体22は、互いに反対を向く第一面22a及び第二面22bと、縁部22cとを有している。第一面22aには、負極活物質層24が設けられている。負極活物質層24は、正極活物質層23と積層方向Dにおいて対向する。第二面22bには、負極活物質層24が設けられていない。縁部22cには、第一面22a側及び第二面22b側のいずれにおいても、負極活物質層24が設けられていない。換言すると、第一面22aは、負極活物質層24が設けられていない領域を縁部22cに有している。縁部22cは、積層方向Dから見て、集電体22において負極活物質層24が設けられた領域の外側に位置している。負極12は、一辺が1mを超える大型な電極であってもよい。
【0023】
正極11及び負極12は、正極活物質層23及び負極活物質層24が積層方向Dにおいて互いに対向するように配置されている。本実施形態では、正極活物質層23及び負極活物質層24は、いずれも積層方向Dから見て矩形状に形成されている。負極活物質層24は、正極活物質層23よりも一回り大きく形成されている。積層方向Dから見て、正極活物質層23の全体が負極活物質層24の外縁よりも内側に位置している。
【0024】
電極積層体3は、ある一つの蓄電セル2の集電体21の第二面21bと、別の蓄電セル2の集電体22の第二面22bとが互いに接するように、複数の蓄電セル2がスタックされることによって、電極積層体3が構成される。これにより、複数の蓄電セル2が電気的に直列に接続される。積層方向Dにおいて互いに隣り合う蓄電セル2,2では、一方の蓄電セル2の集電体21と、他方の蓄電セル2の集電体22とが互いに接しており、互いに電気的に接続される。例えば、電極積層体3は30セルの蓄電セル2が積層されたものであってもよい。
【0025】
電極積層体3では、積層方向Dにおいて互いに隣り合う蓄電セル2,2により、互いに接する集電体21及び集電体22を1つの集電体とする疑似的なバイポーラ電極10が形成される。積層方向Dにおける電極積層体3の一端には、集電体21を含む終端正極が配置される。積層方向Dにおける電極積層体3の他端には、集電体22を含む終端負極が配置される。積層方向Dにおける電極積層体3の一端に設けられた終端負極は、集電体22を有していてもよく、積層方向Dにおける電極積層体3の他端に設けられた終端負極は、集電体21を有していてもよい。
【0026】
集電体21,22は、リチウムイオン二次電池の放電又は充電の間、正極活物質層23及び負極活物質層24に電流を流し続けるための化学的に不活性な電気伝導体である。集電体21,22を構成する材料としては、例えば、金属材料、導電性樹脂材料、導電性無機材料等を用いることができる。導電性樹脂材料としては、例えば、導電性高分子材料や非導電性高分子材料に導電性フィラーが添加された樹脂等が挙げられる。集電体21,22は、前述した金属材料又は導電性樹脂材料を含む1以上の層を含む複数層を備えてもよい。集電体21,22の表面に、メッキ処理又はスプレーコート等の公知の方法により被覆層を形成してもよい。集電体21,22は、例えば、板状、箔状、シート状、フィルム状、メッシュ状等の形態に形成されていてもよい。集電体21,22を金属箔とする場合、例えば、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔、チタン箔又はステンレス鋼箔等が用いられる。集電体21,22は、上記金属の合金箔又はクラッド箔であってもよい。集電体21,22が箔状の場合、集電体21,22の厚さは1μm以上100μm以下の範囲内であってもよい。集電体21,22は、例えばアルミニウム箔の片面に銅メッキすることにより一体化されていてもよい。また、集電体21,22は、貼り合わせにより一体化されていてもよい。集電体21,22は、蒸着又はメッキ等の表面コート処理がされていてもよい。本実施形態では、集電体21はアルミニウム箔であり、集電体22は銅箔である。
【0027】
正極活物質層23は、リチウムイオン等の電荷担体を吸蔵及び放出し得る正極活物質を含む。正極活物質としては、例えば複合酸化物、金属リチウム及び硫黄等が挙げられる。複合酸化物の組成には、例えば鉄、マンガン、チタン、ニッケル、コバルト及びアルミニウムの少なくとも1つと、リチウムと、が含まれる。複合酸化物としては、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、LiCoO2、LiNiMnCoO2等が挙げられる。
【0028】
負極活物質層24は、リチウムイオン等の電荷担体を吸蔵及び放出し得る負極活物質を含む。負極活物質としては、例えば黒鉛、人造黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、金属化合物、リチウムと合金化可能な元素もしくはその化合物、ホウ素添加炭素等が挙げられる。リチウムと合金化可能な元素の例としては、シリコン(ケイ素)及びスズが挙げられる。
【0029】
正極活物質層23及び負極活物質層24には、活物質のほか、結着剤及び導電助剤が含まれ得る。結着剤は、活物質又は導電助剤を互いに繋ぎ止め、電極中の導電ネットワークを維持する役割を果たす。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸等のアクリル系樹脂、スチレン-ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸塩、水溶性セルロースエステル架橋体、デンプン-アクリル酸グラフト重合体を例示することができる。これらの結着剤は、単独で又は複数で用いられ得る。導電助剤は、例えばアセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト等の導電性材料であり、電気伝導性を高めることができる。粘度調整溶媒には、例えば、N-メチル-2-ピロリドン等が用いられる。
【0030】
正極活物質層23及び負極活物質層24を第一面21a,22aに形成するには、例えばロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法等の従来から公知の方法が用いられる。具体的には、活物質、溶剤、並びに必要に応じて結着剤及び導電助剤を混合してスラリー状の活物質層形成用組成物を製造し、当該活物質層形成用組成物を第一面21a,22aに塗布後、乾燥する。溶剤は、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、メタノール、メチルイソブチルケトン、水である。電極密度を高めるべく、乾燥後のものを圧縮してもよい。
【0031】
セパレータ13は、積層方向Dにおいて、正極11及び負極12の間に配置されている。セパレータ13は、正極11及び負極12の間に介在している。セパレータ13は、蓄電セル2をスタックした際に隣り合う正極11及び負極12を隔離することで、両極の接触による電気的短絡を防止しつつ、リチウムイオン等の電荷担体を通過させる部材である。セパレータ13は、互いに対向する正極活物質層23及び負極活物質層24の間に配置されている。
【0032】
セパレータ13は、積層方向Dから見て、正極活物質層23及び負極活物質層24よりも一回り大きく、かつ集電体21,22よりも一回り小さい矩形状に形成されている。セパレータ13の端部13cは、積層方向Dから見て、正極活物質層23及び負極活物質層24の外側に配置されている。セパレータ13の端部13cは、積層方向Dから見て、正極活物質層23及び負極活物質層24のいずれとも重ならない。
【0033】
セパレータ13は、例えばシート状に形成されている。セパレータ13は、例えば、電解質を吸収保持するポリマーを含む多孔性シート又は不織布である。セパレータ13を構成する材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオレフィン、ポリエステル等が挙げられる。セパレータ13は、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。多層構造の場合、セパレータ13は、例えば、基材層及び一対の接着層を含み、一対の接着層により正極活物質層23及び負極活物質層24に接着固定されてもよい。セパレータ13は、耐熱層となるセラミック層を含んでもよい。セパレータ13は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されていてもよい。
【0034】
セパレータ13に含浸される電解質としては、例えば、非水溶媒と非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む液体電解質(電解液5)が挙げられる。セパレータ13に電解質が含浸される場合、その電解質塩として、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(FSO2)2、LiN(CF3SO2)2等の公知のリチウム塩を使用できる。また、非水溶媒として、環状カーボネート類、環状エステル類、鎖状カーボネート類、鎖状エステル類、エーテル類等の公知の溶媒を使用できる。なお、これら公知の溶媒材料を二種以上組合せて用いてもよい。
【0035】
電極積層体3において最外層に配置される正極11、すなわち、積層方向Dにおいて電極積層体3の一方の端部を構成する正極11を終端正極とし、積層方向Dにおいて電極積層体3の他方の端部を構成する負極12を終端負極としたとき、終端正極において正極活物質層23形成されていない集電体21の第二面21bと、終端負極において負極活物質層24が形成されていない集電体22の第二面22bとには、外部に露出する露出面21e,22eが形成されている。露出面21e,22eは、蓄電モジュール1を積層する際に、導電板7が接触される面である。
【0036】
封止部14は、集電体21及び集電体22の間の内部空間Sを封止する部材である。封止部14は、積層方向Dから見て枠状であり、正極活物質層23及び負極活物質層24の周囲を取り囲む。封止部14は、集電体21と集電体22との間に電解液5を収容するための外部から画成された内部空間Sを形成する。蓄電セル2では、集電体21、集電体22及び封止部14により内部空間Sが画定されている。内部空間Sには、電解液5が収容される。封止部14は、例えば、酸変性ポリエチレン(酸変性PE)、酸変性ポリプロピレン(酸変性PP)、ポリエチレン、又は、ポリプロピレン等の耐電解質性を有する樹脂材料により形成される。封止部14は、電気絶縁性を有する。
【0037】
封止部14は、封止本体部(本体部)140と、注液部50と、を有している。封止本体部140は、第一樹脂部15、第二樹脂部16及び端面溶着部17を含んで形成される。封止本体部140は、X軸方向及びY軸方向に厚みを有する。第一樹脂部15、第二樹脂部16及び端面溶着部17は、積層方向Dから見てそれぞれ枠状である。第一樹脂部15は、バイポーラ電極10において、正極活物質層23及び負極活物質層24から離間するように、集電体21及び集電体22の縁部に設けられている。すなわち、第一樹脂部15の内周面と正極活物質層23の外周面との間にはスペースがあり、第一樹脂部15の内周面と負極活物質層24の外周面との間にはスペースがある。また、第一樹脂部15は、集電体21及び集電体22の縁部において、集電体21の第一面21a及び集電体22の第一面22aを覆うように設けられている。
【0038】
第一樹脂部15は、積層方向Dにおいて電極積層体3の一方の端部を構成する終端正極において、正極活物質層23から離間するように、集電体21の縁部に設けられている。すなわち、第一樹脂部15の内周面と正極活物質層23の外周面との間にはスペースがある。また、第一樹脂部15は、集電体21の縁部において、第一面21a及び第二面21bを覆うように設けられている。第一樹脂部15は、積層方向Dにおいて電極積層体3の他方の端部を構成する終端負極において、負極活物質層24から離間するように、集電体22の縁部に設けられている。すなわち、第一樹脂部15の内周面と負極活物質層24の外周面との間にはスペースがある。また、第一樹脂部15は、集電体22の縁部において、第一面22a及び第二面22bを覆うように設けられている。
【0039】
第二樹脂部16は、Z軸方向において、第一樹脂部15と第一樹脂部15との間に配置されている。第二樹脂部16は、第一樹脂部15,15同士を接合する接合部としての機能を有すると共に第一樹脂部15,15同士の間隔を保持する間隔保持部としての機能を有する。第二樹脂部16は、第一樹脂部15と同様に、正極活物質層23及び負極活物質層24から離間するように配置されている。すなわち、第二樹脂部16の内周面と正極活物質層23の外周面との間にはスペースがあり、第二樹脂部16の内周面と負極活物質層24の外周面との間にはスペースがある。第二樹脂部16は、第一樹脂部15に溶着されることによって接合されている。
【0040】
端面溶着部17は、第一樹脂部15の外側縁部と第二樹脂部16の外側縁部とを溶着することによって、第一樹脂部15と第二樹脂部16とを一体化している。端面溶着部17は、積層方向Dから見て、第一樹脂部15及び第二樹脂部16の外周面の少なくとも一面に形成されている。端面溶着部17は、積層方向Dから見て、集電体21及び集電体22の外縁よりも外側の領域において形成されている。本実施形態では、第一樹脂部15及び第二樹脂部16の外周面の外周面を形成する四面全てに端面溶着部17が形成されている。注液口51が形成されない面の端面溶着部17の厚み(第一方向に直交する方向の長さ)は、注液口51が形成される面の端面溶着部17の厚みよりも厚くなっていてもよい。
【0041】
封止本体部140は、電極積層体3の積層方向Dに配列された複数の第一樹脂部15及び第二樹脂部16が溶着により互いに一体化され、また、端面溶着部17によって第一樹脂部15の外側縁部と第二樹脂部16の外側縁部とが溶着されることによって矩形筒状に形成されている。封止部14の封止本体部140は、電極積層体3の積層方向Dの一端に配置された集電体21に設けられた第一樹脂部15から積層方向Dの他端に配置された集電体22に設けられた第二樹脂部16まで積層方向Dに延在する側面140aを形成する。言い換えれば、封止本体部140は、積層方向D(
図3に示されるZ軸方向)に直交する方向(
図3に示されるX軸方向及びY軸方向)に直交する四つの側面140aが形成される。封止本体部140の側面140aは、封止部14の側面でもあり、蓄電モジュール1としての側面でもある。
【0042】
封止本体部140は、上述したようにZ軸方向から見て電極積層体3を囲うよう矩形枠状に形成された筒体である。封止本体部140は、X軸方向及びY軸方向に厚みを有する。筒体である封止本体部140の一つの側面140aを形成する側部には、複数の内部空間Sのそれぞれに連通する複数の連通路140bが設けられている。封止本体部140の一つの側面140aには、連通路140bの開口(端部)が形成される。
【0043】
注液部50は、封止部14内の内部空間Sに電解液5を注入するために設けられている。注液部50は、上記四つの側面140aの一つに設けられている。注液部50は、封止本体部140の一つの側面140aに取り付けられ、連通路140bのそれぞれに連通する複数の注液口51を有している。注液部50は、注液本体部52と、注液枠体53と、オーバーハング部54と、を有している。注液本体部52は、側面140aを覆う部分である。本実施形態の注液本体部52は、上記四つの側面140aの中の一つの側面140aの一部を覆っている。
【0044】
注液枠体53は、注液本体部52から突出しており、蓄電モジュール1の内部空間Sに電解液5を注入する際に、電解液5の注入装置の接続部と連通路140bとの間を十分にシール(気密性を維持)した状態で接続するために設けられる。言い替えれば、注液枠体53は、注入装置の接続部が押し当てられる枠状のシール面を有する。枠状のシール面は、X軸方向に平坦に形成されており、例えば電解液5の注入装置等に設けられるゴムパッキン等を密着可能に構成されている。
【0045】
ここで、連通路140bは、封止本体部140のZ軸方向(第一方向)に複数設けられると共に、Z軸方向(第一方向)に複数設けられた連通路群がY軸方向に複数設けられている。本実施形態では、Z軸方向に三個の連通路140bが配列され、Z軸方向に三個の連通路140bからなる連通路群は、Y軸方向に沿って10個配列されている。連通路140bは、封止本体部140のZ軸方向に沿う側面140aに開口すると共に、注液枠体53によって囲まれる注液本体部52に開口し、モジュール外部から内部空間Sに連通する。
【0046】
注液枠体53は、注液本体部52に形成され、Z軸方向に沿って配列される複数の連通路140bの開口をそれぞれ独立して取り囲んで上記注液口51を形成する。本実施形態の注液枠体53は、連通路140bを外部に開口(連通)させると共に、注液口51を形成する枠体である。更に詳細には、注液枠体53は、一つの連通路140bの端部を取り囲むように注液本体部52から突出している。注液口51は、一つの連通路140bの端部を取り囲むように注液本体部52から突出する注液枠体53の内周面(内壁)から形成されている。
【0047】
注液口51は、複数の内部空間Sのそれぞれに対して一つずつ設けられる連通路140bに対応して設けられる。更に詳細には、蓄電モジュール1の封止部14は、三つの注液口51を有する注液枠体53がY軸方向に10個配列されている。すなわち、蓄電モジュール1の封止部14には、30個の注液口51が設けられている。注液口51の延在方向(X軸方向)から見た注液口51の形状は、例えば一方向(Y軸方向)に長い矩形(長方形)に形成されている。なお、注液口51の形状は限定されるものではなく、例えば円形等に形成されてもよい。注液口51は、電解液の注入後にシール部によって封止される。
【0048】
封止部14の側面140aには、上述したように、Y軸方向に10個の注液枠体53が形成されている。複数の注液枠体53には、積層方向D(Z軸方向)における一方側にのみ封止本体部140から注液枠体53の一部が突出する第一注液枠体50Aと、積層方向D(Z軸方向)における他方側にのみ封止本体部140から注液枠体53の一部が突出する第二注液枠体50Bと、が含まれる。言い替えると、複数の注液枠体53には、少なくとも2つのタイプの注液枠体が存在する。なお、注液枠体53の一部が封止本体部140から突出するとは、X軸方向から見たときに注液枠体53の外形53aの一部が封止本体部140から積層方向D(Z軸方向)に突出することをいう。
【0049】
図3に示されるように、第一注液枠体50Aでは、注液枠体53を構成する上部が封止本体部140から積層方向Dに突出していればよく、注液枠体53を構成する下部は、封止本体部140から積層方向Dに突出する量が、注液枠体53を構成する上部と比べて少なければよい。注液枠体53を構成する下部は、封止本体部140から積層方向Dに突出していなくてもよい。第二注液枠体50Bでは、注液枠体53を構成する下部が封止本体部140から積層方向Dに突出していればよく、注液枠体53を構成する上部は、封止本体部140から積層方向Dに突出する量が、注液枠体53を構成する下部と比べて少なければよい。注液枠体53を構成する上部は、封止本体部140から積層方向Dに突出していなくてもよい。
【0050】
本実施形態では、蓄電モジュール1に備わる複数の注液枠体53のうち一部は、積層方向Dにおける一方側にのみ封止本体部140から注液枠体53の一部が突出する第一注液枠体50Aであり、複数の注液枠体53の残りは、積層方向Dにおける他方側にのみ封止本体部140から注液枠体53の一部が突出する第二注液枠体50Bである。言い換えれば、蓄電モジュール1には、第一注液枠体50A及び第二注液枠体50B以外の注液枠体53は存在しない。更に本実施形態の蓄電モジュール1では、同数の数の第一注液枠体50Aと第二注液枠体50Bとが設けられている。具体的には、5個の第一注液枠体50Aと5個の第二注液枠体50Bとが設けられている。
【0051】
上述したように蓄電モジュール1には四つの側面140aが形成されており、複数の注液枠体53は、一の側面140aに形成されると共に積層方向D(Z軸方向)と直交するY軸方向に沿って配列されている。本実施形態では、Y軸方向に、第一注液枠体50Aが5個連続して配列されると共に、第二注液枠体50Bが5個連続して配列されている。なお、互いに隣り合う注液枠体53,53の間には接続部55が形成されている。接続部55は、X軸方向において注液枠体53のシール面と面一に形成される面を有している。
【0052】
注液枠体53には、注液口51を覆うラミネートフィルム59(
図3参照)が貼付されている。ラミネートフィルム59は、例えば、金属箔と樹脂層とが接着された、公知の複合ラミネートフィルムを採用することができる。複合ラミネートフィルムの金属箔には、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス、ニッケル合金等の金属を用いることができる。複合ラミネートフィルムの樹脂層には、例えば、ポリエチレン、エチレンビニルアセテート、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂を用いることができる。なお、
図1及び
図2では、ラミネートフィルム59の図示を省略している。
【0053】
このような注液枠体53は、例えば射出成形によって封止部14と共に一体的に形成することができる。注液部50は、積層方向Dから見て、封止本体部140と重なるオーバーハング部(肉盛部)54を有する。オーバーハング部54は、封止本体部140に接続されると共に電極積層体3の積層方向Dにおける両端面の一部を被覆する。注液枠体53とオーバーハング部54とは、溶着により封止本体部140に接続されていればよい。注液枠体53とオーバーハング部54は射出形成によって封止本体部140上に同時に作られていてもよい。
【0054】
封止部14において積層方向Dに直交する面であって、電極積層体3の両端に形成される枠状の第一面14b及び第二面14cには、金属層を有するシート部材18が貼付されている。更に、封止部14の側面140aに形成される注液部50を形成する注液枠体53の外表面にも、シート部材18が貼付されている。この構成では、シート部材18に含まれる金属層は樹脂よりも水素又は水分の透過係数が低い材料である。このため、シート部材18は、水分に対して高いバリア性を有するので、封止部14を樹脂材料のみで構成する場合と比較して、封止部14を介した蓄電モジュール内部への水分の侵入が抑制される。
【0055】
ここで、シート部材18は、ラミネートフィルムであってもいい。ラミネートフィルムとしては、例えば、金属箔と樹脂層とが接着された、公知の複合ラミネートフィルムを用いることができる。複合ラミネートフィルムの金属箔には、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス、ニッケル合金等の金属を用いることができる。複合ラミネートフィルムの樹脂層には、例えば、ポリエチレン、エチレンビニルアセテート、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂を用いることができる。
【0056】
図4及び
図5に示されるように、蓄電装置100は、上述した蓄電モジュール1がZ軸方向に積層されると共に、複数の蓄電モジュール1が電気的に直列に接続されることにより構成されている。より詳細には、蓄電装置100は、蓄電モジュール1の両端に形成されている露出面22eに導電板7が接触配置されていると共に、当該導電板7を介して蓄電モジュール1が積層されることによって構成されている。蓄電装置100では、複数の蓄電モジュール1のそれぞれの側面140aに形成される複数の注液部50は、Z軸方向に揃うように配列されている。言い換えれば、蓄電装置100を構成する蓄電モジュール1の注液部50は、Z軸方向に一直線上に並ぶように配列されており、X軸方向から見たときに格子状に配列されている。なお、
図5では、連通路140b及び注液口51の図示は省略する。
【0057】
より詳細には、蓄電装置100は、第一注液枠体50Aが封止本体部140から突出する方向(第一方向における一方側)が鉛直方向上方、第二注液枠体50Bが封止本体部140から突出する方向(第一方向における他方側)が鉛直方向下方となるように、かつ、第一注液枠体50Aが鉛直方向に沿って配列されると共に第二注液枠体50Bが鉛直方向に沿って配列されるように、複数の蓄電モジュール1が積層されている。
【0058】
また、鉛直方向に隣り合う蓄電モジュール1,1を見たとき、積層方向Dに配列される第一注液枠体50Aは、一方の蓄電モジュール1における第一注液枠体50Aの下端と、他方の蓄電モジュール1における第一注液枠体50Aの上端との間には、隙間が設けられている。また、鉛直方向に隣り合う蓄電モジュール1を見たとき、積層方向Dに配列される第二注液枠体50Bは、一方の蓄電モジュール1における第二注液枠体50Bの下端と、他方の蓄電モジュール1における第二注液枠体50Bの上端との間に隙間が設けられている。このような二つの隙間は、積層方向Dに隣り合う蓄電モジュール1,1間に配置される導電板7の厚みを調整することによって設けられる。これにより、積層方向Dに隣り合うモジュールの注液枠体53,53同士が接触することによるモジュールと導電板との電気的接触不良の発生を抑制することができる。
【0059】
また、このような蓄電装置100では、積層方向に隣り合う蓄電モジュール1をX軸方向から見たとき、一方の蓄電モジュール1における第二注液枠体50Bの下端が、他方の蓄電モジュール1における第一注液枠体50Aの上端よりも下方に位置している。これにより、第一注液枠体50Aと第二注液枠体50Bとの積層方向Dにおける段差によって、積層方向D(Z軸方向)に隣り合う蓄電モジュール1,1の一方が横方向(Y軸方向)に移動すると、蓄電モジュール1の一方の突出部が他方の蓄電モジュール1の突出部に接触するようになる。これにより、蓄電モジュール1,1同士が互いに積層方向Dに直交するY軸方向に移動しようとすることを規制できる。すなわち、蓄電モジュール1を積層する際の位置決めに利用できる。
【0060】
上記実施形態の蓄電モジュール1及び蓄電装置100の作用効果について説明する。上記実施形態の蓄電装置100は、複数の蓄電モジュール1が積層されることによって構成される。本実施形態の蓄電モジュール1では、電解液5を注入する注液部50に設けられる注液枠体53を積層方向DであるZ軸方向に封止本体部140から突出させてはいるが、注液枠体53の一部がZ軸方向における上方側に封止本体部140から突出する突出量は、第二注液枠体50Bよりも第一注液枠体50Aが大きく、注液枠体53の一部がZ軸方向における下方側に封止本体部140から突出する突出量は、第一注液枠体50Aよりも第二注液枠体50Bが大きい。これにより、封止本体部140から大きく突出する部分同士が積層方向Dに互いに向き合うことを無くすことができ、蓄電装置100として組み立てられたときの積層方向Dのサイズの大型化を抑制することができる。
【0061】
上記実施形態の蓄電モジュール1では、複数の注液枠体53は、その一部がZ軸方向における上方側にのみ封止本体部140から突出する第一注液枠体50Aと、その一部がZ軸方向における下方側にのみ封止本体部140から突出する第二注液枠体50Bと、によって構成されている。言い替えれば、上記実施形態の第一注液枠体50A及び第二注液枠体50Bのそれぞれは、その一部がZ軸方向における一方(上方側又は下方側)が封止本体部140から突出していない。このため、封止本体部140から大きく突出する部分同士が積層方向Dに互いに向き合うことを無くすことができ、蓄電装置100として組み立てられたときの積層方向サイズの大型化を抑制することができる。
【0062】
上記実施形態の蓄電モジュール1では、注液枠体53として、第一注液枠体50A及び第二注液枠体50Bのみを備えている。これにより、注液枠体53の構成を、第一注液枠体50Aの構成と第二注液枠体50Bの構成とに絞ることができるので、蓄電モジュール1の生産性を向上させることができる。また、上記実施形態の蓄電モジュール1では、同数の数の第一注液枠体50Aと第二注液枠体50Bとが設けられるので、対称性が確保されるので蓄電モジュール1を積層した時のバランス性に優れる。
【0063】
上記実施形態の蓄電モジュール1では、枠状の封止部14に、四つの側面140aが形成されており、複数の注液枠体53は、
図2及び
図3に示されるように、一の側面140aに形成されると共に積層方向Dに直交するY軸方向に沿って配列されている。これにより、複数の側面140aに分散して注液枠体53が形成される構成の蓄電モジュール1と比べて、電解液5の注液作業を容易にすることができる。
【0064】
上記実施形態の蓄電モジュール1では、
図2及び
図4に示されるように、第一注液枠体50AがY軸方向に連続して配列されると共に、第二注液枠体50BがY軸方向に連続して配列されている。この構成では、第一注液枠体50Aと第二注液枠体50Bとの段差によって積層方向Dに隣り合う蓄電モジュール1,1同士が互いにY軸方向に移動しようとすることを規制できる。
【0065】
上記実施形態の蓄電モジュール1では、封止部14において積層方向Dに直交する面であって、電極積層体3の両端に配置される枠状の第一面14b及び第二面14cには、金属製のシート部材18が貼付されている。金属製のシート部材18は水分に対して樹脂よりも低い透過係数を有するので、封止部14のみから構成される場合と比較して封止部14内部への水分侵入が抑制される。
【0066】
上記実施形態の蓄電モジュール1では、電極積層体3の両端に配置される正極11を構成する集電体21の第二面21b及び負極12を構成する集電体22の第二面22bに、外部に露出する露出面22e,22eが形成されている。このような構成の蓄電モジュール1では、露出面22eに導電板7をさせた状態で蓄電モジュール1を積層する簡易な作業だけで、複数の蓄電モジュール1を電気的に直列に接続することができる。
【0067】
以上、一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られない。発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0068】
上記実施形態では、
図4に示されるように、第一注液枠体50Aが積層方向Dに直交するY軸方向に連続して配列されると共に、第二注液枠体50BがY軸方向に連続して配列されている例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、変形例に係る蓄電モジュール1Aでは、
図6に示されるように、Y軸方向に第一注液枠体50Aと第二注液枠体50Bとが交互に配列されていてもよい。この変形例の蓄電モジュール1が積層される蓄電装置100Aの構成では、第一注液枠体50Aと第二注液枠体50Bとの段差によって、第二注液枠体50Bが一対の第一注液枠体50A,50Aの段差に嵌合され、第一注液枠体50Aが一対の第二注液枠体50B,50Bの段差に嵌合される。これにより、積層方向Dに隣り合う蓄電モジュール1,1同士が互いにY軸方向に移動しようとすることを規制できる。
【0069】
なお、
図6では、金属製のシート部材18が配置されない例を挙げて説明したが、電極積層体3の両端に形成される枠状の第一面14b及び第二面14cには、金属製のシート部材18が貼付されてもよい。
【0070】
上記実施形態及び上記変形例では、封止部14の側面140aに第一注液枠体50A及び第二注液枠体50Bのみが設けられる例を挙げて説明したが、これらの注液枠体53に加えて、例えば、積層方向Dにおける一方側及び他方側の両方に封止本体部140から注液枠体53の一部が突出しない注液枠体53を有する注液部50や、積層方向Dにおける一方側及び他方側の両方に封止本体部140から注液枠体53の一部が突出する注液枠体53を有する注液部50が含まれていてもよい。
【0071】
上記実施形態及び上記変形例で示した注液枠体53の数、一つの注液枠体53に形成される注液口51の数、第一注液枠体50A及び第二注液枠体50Bの数及び配置は、蓄電モジュール1に形成される内部空間Sの数等に合わせて適宜に変更が可能である。例えば、積層方向Dが鉛直方向に沿うように配置された蓄電モジュール1において、最も上方に配置される内部空間Sに連通する連通路140bに対応する注液口51を形成する一つの注液枠体53のみを第一注液枠体50Aとし、最も下方に配置される内部空間Sに連通する連通路140bに対応する注液口51を形成する一つの注液枠体53のみを第二注液枠体50Bとし、残りの注液枠体53については、封止本体部140から積層方向Dにその一部が突出しない第三注液枠体として構成してもよい。
【0072】
上記実施形態及び上記変形例では、封止部14における複数の側面140aのうち、一の側面140aに全ての注液枠体53が配置されている例を挙げて説明したが、これに限定されず、例えば、複数の側面140aに複数の注液枠体53が分散されて配置されてもよい。
【0073】
本発明の一側面の技術主題は以下のとおりに記載され得る。
[1]
積層型蓄電装置に用いられる蓄電モジュールであって、
集電体の第一の面に正極が形成されると共に前記第一の面とは反対側の第二の面に負極が形成されたバイポーラ電極が、第一方向に沿って積層された電極積層体と、
前記第一方向に隣り合う前記集電体の間に内部空間を形成すると共に、前記内部空間を封止する封止部と、を備え、
前記封止部は、
前記第一方向から見て前記電極積層体を囲うよう矩形枠状に形成された筒体であって、前記筒体の一側面に複数の前記内部空間のそれぞれに連通する複数の連通路が設けられた本体部と、
前記本体部の前記一側面に取り付けられ、前記連通路のそれぞれに連通する複数の注液口を有する注液部と、を有し、
前記注液部は、
前記第一方向に沿って配列される複数の前記連通路の端部をそれぞれ独立して取り囲んで前記注液口を形成する注液枠体を複数有し、複数の前記注液枠体は、前記本体部の前記一側面上に前記第一方向と直交する第二方向に配列されており、
前記第二方向に配列される複数の前記注液枠体には、前記注液枠体の一部が少なくとも前記第一方向における一方側に前記本体部から突出する第一注液枠体と、前記注液枠体の一部が少なくとも前記第一方向における他方側に前記本体部から突出する第二注液枠体と、が存在し、
前記注液枠体の一部が前記第一方向における一方側に前記本体部から突出する突出量は、前記第二注液枠体よりも第一注液枠体が大きく、
前記注液枠体の一部が前記第一方向における他方側に前記本体部から突出する突出量は、前記第一注液枠体よりも前記第二注液枠体が大きい、蓄電モジュール。
[2]
前記第一注液枠体は、前記注液枠体の一部が前記第一方向における一方側にのみ前記本体部から突出し、
前記第二注液枠体は、前記注液枠体の一部が前記第一方向における他方側にのみ前記本体部から突出する、[1]に記載の蓄電モジュール。
[3]
前記第一注液枠体と前記第二注液枠体とは、それぞれ複数設けられており、
前記第一注液枠体が前記第二方向に連続して配列されると共に、前記第二注液枠体が前記第二方向に連続して配列されている、[1]又は[2]に記載の蓄電モジュール。
[4]
前記第一注液枠体と前記第二注液枠体とは、それぞれ複数設けられており、
前記第一注液枠体と前記第二注液枠体とが前記第二方向に交互に配列されている、[1]~[3]の何れかに記載の蓄電モジュール。
[5]
前記注液部は、前記本体部に接続されると共に前記電極積層体の前記第一方向における両端面の一部を被覆するオーバーハング部を更に有する、[1]~[4]の何れかに記載の蓄電モジュール。
[6]
前記注液枠体には、前記注液口を覆うラミネートフィルムが貼付されている、[1]~[5]の何れかに記載の蓄電モジュール。
[7]
前記積層体において、前記第一方向において前記積層体の一方の端部を構成する前記正極を終端正極とし、前記第一方向において前記積層体の他方の端部を構成する前記負極を終端負極としたとき、
前記終端正極において前記正極が形成されていない前記集電体の一方の面と、前記終端負極において前記負極が形成されていない前記集電体の一方の面とには、外部に露出する露出面が形成されている、[1]~[6]の何れかに記載の蓄電モジュール。
[8]
複数の上記[7]に記載の蓄電モジュールと、
導電性の導電板と、を備え、
前記蓄電モジュールは、前記露出面に接触する前記導電板を介して前記第一方向に積層されている、蓄電装置。
[9]
前記一方側が鉛直方向上方、前記他方側が鉛直方向下方となるように、かつ、前記第一注液枠体が前記鉛直方向に沿って配列されると共に前記第二注液枠体が前記鉛直方向に沿って配列されるように、前記蓄電モジュールを積層したとき、
前記鉛直方向に隣り合う前記蓄電モジュールを見たとき、一方の前記蓄電モジュールにおける前記第二注液枠体の下端が、他方の前記蓄電モジュールにおける前記第一注液枠体の上端よりも下方に位置している、[8]に記載の蓄電装置。
【符号の説明】
【0074】
1,1A…蓄電モジュール、2…蓄電セル、3…電極積層体、5…電解液、7…導電板、11…正極、12…負極、14…封止部、18…シート部材、21…集電体、21e…露出面、22…集電体、22e…露出面、50…注液部、50A…第一注液枠体、50B…第二注液枠体、51…注液口、53…注液枠体、100,100A…蓄電装置、140…封止本体部(本体部)、140a…側面、140b…連通路、D…積層方向(第一方向)、S…内部空間。