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特開2024-44039プレストレスト木材及びプレストレスト木材の複合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044039
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】プレストレスト木材及びプレストレスト木材の複合体
(51)【国際特許分類】
   B27M 3/00 20060101AFI20240326BHJP
   E04C 3/18 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B27M3/00 Z
E04C3/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149352
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】田中 徹
(72)【発明者】
【氏名】冨貴 丈宏
(72)【発明者】
【氏名】守屋 健一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 裕平
【テーマコード(参考)】
2B250
2E163
【Fターム(参考)】
2B250AA40
2B250BA04
2B250CA01
2B250FA41
2E163FA03
2E163FC01
2E163FC02
2E163FC31
2E163FC35
2E163FC38
(57)【要約】
【課題】木材資源の有効活用を図りつつ、強度特性を向上させるとともに、製作が容易なプレストレスト木材及びプレストレスト木材の複合体を提供する。
【解決手段】プレストレスト木材1は、芯部に部材長手方向に沿って貫通孔3が形成され、前記貫通孔3を連通させた状態で縦列的に連接された複数本の木材2と、前記貫通孔3に長手通しで挿通され、両端面で定着されることにより前記木材2にプレストレスを導入する緊張材4とで構成される。プレストレスト木材の複合体20は、2本の前記プレストレスト木材1を並列して配置し、これら2本のプレストレスト木材1が、軸方向に間隔をあけて複数配置されたバンド状の留め具21によって連結されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯部に部材長手方向に沿って貫通孔が形成され、前記貫通孔を連通させた状態で縦列的に連接された複数本の木材と、前記貫通孔に長手通しで挿通され、両端面で定着されることにより前記木材にプレストレスを導入する緊張材とからなることを特徴とするプレストレスト木材。
【請求項2】
前記貫通孔と前記緊張材との隙間にグラウト材が充填されている請求項1記載のプレストレスト木材。
【請求項3】
前記木材の端面同士の接続面に接着剤が塗布されている請求項1記載のプレストレスト木材。
【請求項4】
請求項1~3いずれかに記載のプレストレスト木材が2本並列して配置され、これら2本のプレストレスト木材が、軸方向に間隔をあけて複数配置されたバンド状の留め具によって連結されていることを特徴とするプレストレスト木材の複合体。
【請求項5】
前記各プレストレスト木材の側面に平坦面が形成され、これら平坦面同士を密着させた状態で2本のプレストレス木材が連結されている請求項4記載のプレストレスト木材の複合体。
【請求項6】
前記2本のプレストレスト木材に全て同じ大きさのプレストレスが導入されている請求項4記載のプレストレスト木材の複合体。
【請求項7】
設置時に引張応力が作用する前記プレストレスト木材に、相対的に大きなプレストレスが導入され、設置時に圧縮応力が作用する前記プレストレスト木材に、相対的に小さなプレストレスが導入されている請求項4記載のプレストレスト木材の複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通孔が形成された複数の木材が縦列的に連接され、貫通孔に挿通された緊張材にプレストレスが導入されたプレストレスト木材及びプレストレスト木材の複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止、土砂災害防止などの観点から、森林の保全を図るため、木材の利用が見直されている。土木分野における木材の利用用途としては、土留め工事の際の横材や、林道整備のため、急傾斜地における切土法面の崩落防止並びに勾配緩和による切土法面の安定化などを目的として切土法面に打ち込まれる木杭、地盤改良や軟弱地盤の液状化対策として、地中へ打設される丸太材などが挙げられる。また、木材の利用は、成長過程で二酸化炭素を吸収固定した木材を長期間使用し続けることによる長期間炭素貯蔵効果(カーボンストック効果)も有している。
【0003】
ところが、木材を上述のような横材や木杭、丸太材などに使用する際、木材は強度特性が低いという欠点がある。木材の強度特性を向上させるため、例えば下記特許文献1には、木材の芯をくりぬいて通孔を形成し、この通孔に金属製の補強材を挿入し木材と一体的に固着してなる金属との複合木材が開示され、下記特許文献2には、丸太材を横半分に切断し両面板に筋状の溝を切り、リング付鉄筋を内蔵させて、元の丸太材になるように一方面でふたをして、数箇所に穴を開設し、ボルトとナットで固定した構造の鉄筋内蔵の丸太材が開示され、下記特許文献3には、軸芯部に形成した貫通孔に鋼材製のパイプを適合状に挿入固定し、当該パイプ内にコンクリートや鉄筋を挿入したハイブリッド木柱が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-238017号公報
【特許文献2】特開2002-256562号公報
【特許文献3】実用新案登録第3113760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1~3記載の木材では、木材に設けた通孔や溝に金属製の補強材を挿入しているため、補強材を設けないときよりは強度が向上すると考えられるが、前記補強材を木材と一体的に固着しているだけなので、それほど大きな強度向上は望めない。また、上記特許文献1又は3記載の木材では、軸芯部に設けたパイプによって強度向上が図られているが、複数の木材を軸方向に接続した場合、接続部が構造上の弱点となって、本来の部材強度が発揮されないおそれがある。
【0006】
また、長尺の木材が必要な場合、長尺の木材に貫通孔を設けるのが難しいとともに、貫通孔の径とほぼ一致する径のパイプを挿入する際、摩擦抵抗などにより貫通孔にパイプを挿入するのに手間がかかるなど、製作上の課題がある。
【0007】
ところで、中山間地域で工事を行う際に伐採される木材や間伐材のうち、利用価値のない直径15cm未満の小径材や太い木の先端部分等は山林内に放置され、出水時に流出して水流を塞き止めたり他の木の生長を阻害したりするなどの問題を引き起こすおそれがある。また、長さ数mの比較的長尺の木材は、広範な利用価値を有するが、長さ1m以下の短尺の木材は、利用価値が少なく、利用用途の拡大が望まれていた。
【0008】
そこで本発明の主たる課題は、木材資源の有効活用を図りつつ、強度特性を向上させるとともに、製作が容易なプレストレスト木材及びプレストレスト木材の複合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、芯部に部材長手方向に沿って貫通孔が形成され、前記貫通孔を連通させた状態で縦列的に連接された複数本の木材と、前記貫通孔に長手通しで挿通され、両端面で定着されることにより前記木材にプレストレスを導入する緊張材とからなることを特徴とするプレストレスト木材が提供される。
【0010】
上記請求項1記載の発明では、芯部に部材長手方向に沿って貫通孔が形成された複数本の木材を、前記貫通孔を連通させた状態で縦列的に連接し、この貫通孔に長手通しで挿通し、両端面で定着された緊張材によって木材にプレストレスを導入している。このように、本発明に係るプレストレスト木材では、前記緊張材によってプレストレスが導入されているため、木材の曲げ強度などの強度特性が向上し、利用範囲の拡大や構造物の大規模化などが可能になり、木材資源の有効利用を図ることができる。
【0011】
また、前記プレストレスト木材は、貫通孔が形成された複数の木材を縦列的に連接して構成しているため、それぞれの木材の長さを前記貫通孔が容易に形成可能な1m程度とすることにより、製作が簡単にできるとともに、比較的短尺の木材の有効利用が可能となる。
【0012】
請求項2に係る本発明として、前記貫通孔と前記緊張材との隙間にグラウト材が充填されている請求項1記載のプレストレスト木材が提供される。
【0013】
上記請求項2記載の発明では、貫通孔に挿通した緊張材に引張力を付与することで前記木材にプレストレスを導入した後、この貫通孔と緊張材との隙間にグラウト材を充填して緊張材と木材を一体化している。
【0014】
請求項3に係る本発明として、前記木材の端面同士の接続面に接着剤が塗布されている請求項1記載のプレストレスト木材が提供される。
【0015】
上記請求項3記載の発明では、連接された複数の木材の端面同士の接続面に接着剤を塗布して接合することにより、接合部の補強を図っている。
【0016】
請求項4に係る本発明として、請求項1~3いずれかに記載のプレストレスト木材が2本並列して配置され、これら2本のプレストレスト木材が、軸方向に間隔をあけて複数配置されたバンド状の留め具によって連結されていることを特徴とするプレストレスト木材の複合体が提供される。
【0017】
上記請求項4記載の発明では、前記プレストレスト木材を2本並設して連結することによりプレストレスト木材の複合体を形成している。プレストレスト木材の複合体とすることにより、強度特性の更なる向上が図れる。
【0018】
請求項5に係る本発明として、前記各プレストレスト木材の側面に平坦面が形成され、これら平坦面同士を密着させた状態で2本のプレストレス木材が連結されている請求項4記載のプレストレスト木材の複合体が提供される。
【0019】
上記請求項5記載の発明では、前記プレストレスト木材を2本並設して連結したプレストレスト木材の複合体において、これらプレストレスト木材同士の連結安定性を高めるため、各プレストレスト木材の側面に平坦面を形成し、これら平坦面同士を密着させた状態で2本のプレストレスト木材を連結している。
【0020】
請求項6に係る本発明として、前記2本のプレストレスト木材に全て同じ大きさのプレストレスが導入されている請求項4記載のプレストレスト木材の複合体が提供される。
【0021】
上記請求項6記載の発明では、プレストレスト木材の複合体を構成する全てのプレストレスト木材に同じ大きさのプレストレスを導入しているため、部材の共通化が図れ、製作が容易化する。
【0022】
請求項7に係る本発明として、設置時に引張応力が作用する前記プレストレスト木材に、相対的に大きなプレストレスが導入され、設置時に圧縮応力が作用する前記プレストレスト木材に、相対的に小さなプレストレスが導入されている請求項4記載のプレストレスト木材の複合体が提供される。
【0023】
上記請求項7記載の発明では、プレストレスト木材の複合体を、木杭などとして設置した際、土圧により、主として引張応力が作用するプレストレスト木材に、相対的に大きなプレストレスを導入している。これにより、プレストレスト木材の複合体としての強度特性が向上できる。
【発明の効果】
【0024】
以上詳説のとおり本発明によれば、前記プレストレスト木材及びプレストレスト木材の複合体は、強度特性が向上でき、かつ容易に製作できるため、木材の利用範囲が拡大でき、木材資源の有効活用が図れるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係るプレストレスト木材1の斜視図である。
図2】プレストレスト木材1の分解斜視図である。
図3】プレストレスト木材1の端部縦断面図である。
図4】端部にキャップ8を取り付けた形態の端部斜視図である。
図5】緊張材4の緊張要領図である。
図6】土留壁としての使用状態を示す斜視図である。
図7】遊歩道の階段部としての使用状態を示す斜視図である。
図8】第2形態例に係るプレストレスト木材の複合体20を示す斜視図である。
図9】圧縮側と引張側でプレストレスを同一とした場合の応力図である。
図10】圧縮側と引張側でプレストレスを変えた場合の応力図である。
図11】プレストレスト木材の複合体20を土留めの親杭に使用した場合の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0027】
〔第1形態例〕
本発明に係るプレストレスト木材1は、図1及び図2に示されるように、芯部に部材長手方向に沿って貫通孔3が形成され、前記貫通孔3を連通させた状態で縦列的に連接された複数本の木材2と、複数の木材2の前記貫通孔3に長手通しで挿通され、両端面で定着されることにより前記木材2にプレストレスを導入する緊張材4とで構成されている。また、前記緊張材4の両端にはそれぞれ、引張力が導入された緊張材4の支圧部材となる定着板5及び固定部材6が設けられている。
【0028】
前記木材2は、図2に示されるように、所定の長さを有する軸方向に長い部材であり、断面略円形の丸太材や断面四角形の角材、断面多角形の多角形材などからなり、その軸芯部に全長に亘る貫通孔3が形成されている。前記貫通孔3の直径は、前記緊張材4が挿通できる大きさであればよく、あまり大きすぎると木材2の強度低下の原因となるため、木材2の外径Dに対してD/3以下とするのが好ましい。
【0029】
前記木材2は、プレストレスト木材1の全長と同じ長さを有する連続する1本の部材で形成することにより、継ぎ目部分における強度低下が生じないものが得られるが、あまり長すぎると貫通孔3を加工するのに高度な技術を要し、製造が困難となるため、プレストレスト木材1を軸方向に複数分割した長さで形成し、これを軸方向に複数連接してプレストレスト木材1を構成するのがよい。具体的には、一般的な製材所でも芯抜き加工が容易にできる長さ1m以下とするのが好ましい。1m以下の木材2を使用することにより、短尺木材の有効利用も図れる。この木材2を軸方向に複数接続してプレストレスト木材1が製作される。図1に示される例では、約1mの木材2を軸方向に3本接続して、全体として約3mのプレストレスト木材1を構成している。木材2、2同士の接続部は、緊張材4の軸力が作用しているため、接続部の強度低下が抑制されている。これら木材2、2の端面同士の接続面には、エポキシ樹脂接着剤などの接着剤を塗布することにより、強固に固定するのが望ましい。
【0030】
前記緊張材4は、PC鋼線、PC鋼より線、PC鋼棒など一般的なプレストレス導入の際に用いられる緊張材として公知のものを制限なく使用できる。前記緊張材4は、複数の木材2を貫通孔3を連通させながら連接した状態で、これら複数の木材2の貫通孔3に長手通しで挿通されている。その両端の木材2から突出した端部にはそれぞれ、図3に示されるように、定着板5及び固定部材6が取り付けられる。前記定着板5は、木材2の端面とほぼ同じか若干小さな外形を有し、その中心部に緊張材4が挿通可能な通孔が備えられている。前記固定部材6は、緊張材4がPC鋼棒などの場合はナットが用いられ、前記緊張材4がPC鋼線やPC鋼より線の場合はくさびやアンカーヘッドなどが用いられる。
【0031】
また、図3に示されるように、前記貫通孔3と緊張材4との隙間には、グラウト材7が充填されている。グラウト材7を充填することにより、木材2と緊張材4の一体化を図ることができる。前記グラウト材7としては、モルタル、コンクリート、エポキシ樹脂接着剤などを使用することができる。前記グラウト材7は、定着板5の外面から貫通孔3に連通して形成された注入孔5aを通じて注入される。前記注入孔は木材2の外面から貫通孔3に連通するように形成してもよい。
【0032】
図4に示されるように、プレストレスト木材1の両端には、緊張材4の端部や定着板5及び固定部材6が突出しているため、これらを覆うキャップ8を設けるのが好ましい。このキャップ8は、緊張材4などの保護や装飾を目的とするものであり、材質としては、木材や樹脂などを用いることができる。
【0033】
次に、前記プレストレスト木材1にプレストレスを導入する方法について説明する。図5に示されるように、貫通孔3を連通させながら複数本の木材2を軸方向に縦列的に連接した状態で、連通する貫通孔3に長手通しで緊張材4を挿通するとともに、その両端に定着板5及び固定部材6を取り付ける。次いで、油圧式の緊張ジャッキ9などにより緊張材4を所定の引張力で引っ張る。緊張材4が引っ張られることにより、緊張材4が伸びて固定部材6が定着板5から浮いた状態となるので、この浮いた分だけ固定部材6を更にねじ込む。その後、前記緊張ジャッキ9の引張力を解除して、緊張材4の圧縮応力を木材2に導入する。このようにしてプレストレスを導入した後、前記注入孔5aを通じて、貫通孔3と緊張材4との隙間にグラウト材7を注入する。
【0034】
前記緊張材4に導入する引張力(軸力)の大きさは、木材2の許容圧縮応力の10~50%程度に、前記定着板5の支圧面積を掛けた大きさとするのがよい。
【0035】
以上説明したように、本発明に係るプレストレスト木材1は、芯部に部材長手方向に沿って貫通孔3が形成された複数本の木材2を、前記貫通孔3を連通させた状態で縦列的に連接し、この貫通孔3に長手通しで挿通した緊張材4によって木材2にプレストレスを導入しているため、木材2の曲げ強度などの強度特性が向上し、木材の利用範囲の拡大や構造物の大規模化などが可能になり、木材資源の有効利用を図ることができる。
【0036】
また、前記プレストレスト木材1は、貫通孔3が形成された複数本の木材2を縦列的に連接して構成しているため、各木材2として軸芯部に前記貫通孔3が容易に形成可能な長さ1m程度の木材を用いることにより、製作が簡単になるとともに、比較的短尺の木材の有効利用が可能となる。
【0037】
次に、前記プレストレスト木材1の利用用途の一例について説明する。前記プレストレスト木材1は、図6に示されるように、土留壁の横材10として利用することができる。前記横材10は、下部が地中に打ち込まれ、適宜の間隔をあけて配置された複数の親杭11間に架設され、上下方向に複数段で配置されるものである。前記横材10としてプレストレスト木材1を用いることにより、木材だけで構成した場合と比較して強度特性が向上しているため、土留壁の高さを高く設定することができ、木材の利用範囲が拡大できるとともに、親杭の配置間隔を広くとることができ、親杭の設置本数の低減による設置作業の軽減及びコスト削減を図ることができる。なお、前記親杭11として、本発明に係るプレストレスト木材1を用いてもよい。
【0038】
また、他の例として、図7に示されるように、遊歩道の階段部などに用いることもできる。具体的には、階段部のステップの土留めとして、両側の木杭12間に架設された横材13に、前記プレストレスト木材1を用いることができる。なお、前記木杭12として、本発明に係るプレストレスト木材1を用いてもよい。
【0039】
〔第2形態例〕
第2形態例では、図8に示されるように、2本のプレストレスト木材1A、1Bを並列して配置し、これら2本のプレストレスト木材1A、1Bが、軸方向に間隔をあけて複数配置されたバンド状の留め具21によって連結されたプレストレスト木材の複合体20を形成している。このプレストレスト木材の複合体20を構成する2本のプレストレスト木材1A、1Bは、上記第1形態例に係るプレストレスト木材1である。
【0040】
2本のプレストレスト木材1A、1Bを連結するには、図8に示されるように、2本のプレストレスト木材1A、1Bの外周を周方向に一体的に巻回するステンレスや樹脂などからなるバンド状の留め具21を、軸方向に適宜の間隔で複数配置することにより成すことができる。
【0041】
図8(B)に示されるように、前記木材2が円形断面から成る場合の連結には、次の処理が必要となる。各プレストレスト木材1A、1Bの側面に平坦面22が形成され、これら平坦面22同士を密着させた状態で2本のプレストレスト木材1A、1Bが連結されている。前記平坦面22は、各プレストレスト木材1A、1Bの外周面の一部が軸方向の全長に亘って切除されることにより形成されている。これにより、プレストレスト木材1A、1Bは、平坦面22同士が接するため、連結した際の安定性が高まり、プレストレスト木材の複合体20としての強度特性が向上する。
【0042】
前記プレストレスト木材1A、1B同士は前記留め具21で固定されているため、接着剤を塗布せずに対面させただけでも摩擦によりある程度の接合強度を有するが、これらの接続面に接着剤を塗布し、これら平坦面22同士の間ですべりが生じないように強固に固着してもよい。
【0043】
前記プレストレスト木材の複合体20の一実施形態例として、2本のプレストレスト木材1A、1Bに導入するプレストレスの大きさを、ほぼ同じ大きさとすることができる。全てのプレストレスト木材1A、1Bに同じ大きさのプレストレスを導入した場合、図9に示されるように、両端支持ばりの中央に荷重Pが作用し、この荷重Pによる引張側と圧縮側にそれぞれ、プレストレスト木材1A、1Bを配置したときの応力状態は、荷重Pによる応力図とプレストレスによる応力図とを合成した合成応力図に示されるように、荷重Pによる圧縮側応力がプレストレスによって加算され、圧縮側のプレストレスト木材1Bにかかる応力が大きくなる傾向にある。
【0044】
前記プレストレスト木材の複合体20の他の実施形態例として、2本のプレストレスト木材1A、1Bに導入するプレストレスの大きさを、設置時に主として引張応力が作用するプレストレスト木材1Aに、相対的に大きなプレストレスを導入し、設置時に主として圧縮応力が作用するプレストレスト木材1Bに、相対的に小さなプレストレスを導入することができる。つまり、図8に示されるように、2本のプレストレスト木材1A、1Bのうち、一方の引張側となるプレストレスト木材1Aに相対的に大きなプレストレスが導入され、他方の圧縮側となるプレストレスト木材1Bには相対的に小さなプレストレスが導入されている。
【0045】
このように圧縮側と引張側でプレストレスの大きさを変えた場合、図10に示されるように、両端支持ばりの中央に荷重Pが作用し、この荷重Pによる圧縮側と引張側にそれぞれ、プレストレスト木材が配置された場合の応力状態は、合成応力図に示されるように、圧縮側部材のプレストレスによる応力が小さいため圧縮側部材にかかる応力がそれほど大きくならないとともに、引張側部材にかかる応力もPによる応力とプレストレスによる応力とが相殺され所定の範囲内におさまり、全体として作用する応力が許容応力を大幅に下回り、強度特性が向上できる。
【0046】
第2形態例に係るプレストレスト木材の複合体20は、図11に示されるように、土留壁の親杭として好適に利用することができる。前記プレストレスト木材の複合体20は、相対的に大きなプレストレスが導入されたプレストレスト木材1Aを地山側に配置し、相対的に小さなプレストレスが導入されたプレストレスト木材1Bをこれと反対側に配置して設置する。これにより、地山側からの土圧に対抗して、引張側となるプレストレスト木材1Aに相対的に大きなプレストレスが導入されているため、親杭の強度特性が向上できる。
【符号の説明】
【0047】
1・1A・1B…プレストレスト木材、2…木材、3…貫通孔、4…緊張材、5…定着板、6…固定部材、7…グラウト材、8…キャップ、9…緊張ジャッキ、20…プレストレスト木材の複合体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11