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特開2024-44041データ生成装置、データ生成方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044041
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】データ生成装置、データ生成方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/70 20120101AFI20240326BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
G03F1/70
H01L21/30 541Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149354
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小寺 克昌
(72)【発明者】
【氏名】三本木 省次
(72)【発明者】
【氏名】馬越 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】小川 竜二
(72)【発明者】
【氏名】木村 泰己
【テーマコード(参考)】
2H195
5F056
【Fターム(参考)】
2H195BB02
2H195BC09
5F056AA04
5F056CC12
5F056CC13
(57)【要約】
【課題】VSB方式によるマスクパタンの形成においてショット数の削減が可能な描画データを生成する。
【解決手段】実施形態のデータ生成装置は、処理部と評価部と変換部とを備える。処理部は、フォトマスクを用いて基板に形成されるターゲットパタンに基づく光近接効果補正により、ターゲットパタンに対応し複数の矩形領域を含むマスクパタンを設計する。評価部は、マスクパタンに含まれる各矩形領域の第1方向の長さを示すジョグ長をパラメータとして含むコスト関数を用いてマスクパタンを評価する。変換部は、評価が所定条件を満たすマスクパタンを示すマスクパタンデータを可変成形ビーム方式による描画処理に対応する描画データに変換する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトマスクにマスクパタンを形成するための描画データを生成するための処理を実行するデータ生成装置であって、
前記フォトマスクを用いて基板に形成されるターゲットパタンに基づく光近接効果補正により、前記ターゲットパタンに対応し複数の矩形領域を含む前記マスクパタンを設計する処理部と、
前記マスクパタンに含まれる各前記矩形領域の第1方向の長さを示すジョグ長をパラメータとして含むコスト関数を用いて前記マスクパタンを評価する評価部と、
評価が所定条件を満たす前記マスクパタンを示すマスクパタンデータを可変成形ビーム方式による描画処理に対応する描画データに変換する変換部と、
を備える、データ生成装置。
【請求項2】
前記評価部は、前記ジョグ長が、前記描画処理における最大ショット領域の前記第1方向の長さを示す最大ショット長より大きい場合において、前記ジョグ長と前記最大ショット長との差分が小さいほど、前記評価が高くなるように構成される、
請求項1に記載のデータ生成装置。
【請求項3】
前記評価部は、前記ジョグ長が0に近いほど、前記評価が高くなるように構成される、
請求項2に記載のデータ生成装置。
【請求項4】
前記コスト関数は、第1矩形領域の前記第1方向に沿った辺の端部と、前記第1矩形領域に対して前記第1方向に沿って隣接する第2矩形領域の前記第1方向に沿った辺の前記第1矩形領域側の端部と、の前記第1方向上の位置ずれを示す端部ずれ量をパラメータとして含む、
請求項1に記載のデータ生成装置。
【請求項5】
前記評価部は、前記端部ずれ量が0に近いほど、前記評価が高くなるように構成される、
請求項4に記載のデータ生成装置。
【請求項6】
前記矩形領域の前記第1方向に交差する第2方向の長さを示すパタン幅が、前記描画処理における最大ショット領域の前記第2方向の長さを示す最大ショット幅より大きい場合、前記端部ずれ量は、前記評価に影響を与えない、
請求項5に記載のデータ生成装置。
【請求項7】
前記コスト関数は、前記ターゲットパタンの所定部分と前記マスクパタンの所定部分とのずれを示し、各前記矩形領域の辺上に設定された評価点に基づいて算出されるEPE値をパラメータとして含み、
前前記EPE値は、前記光近接効果補正において記ジョグ長を変化させて複数の前記マスクパタンを設計する際に、前記評価点の位置を変更せずに算出される、
請求項1に記載のデータ生成装置。
【請求項8】
フォトマスクにマスクパタンを形成するための描画データを生成するデータ生成方法であって、
情報処理装置が、
前記フォトマスクを用いて基板に形成されるターゲットパタンに基づく光近接効果補正により、前記ターゲットパタンに対応し複数の矩形領域を含む前記マスクパタンを設計し、
前記マスクパタンに含まれる各前記矩形領域の第1方向の長さを示すジョグ長をパラメータとして含むコスト関数を用いて前記マスクパタンを評価し、
評価が所定条件を満たす前記マスクパタンを示すマスクパタンデータを可変成形ビーム方式による描画処理に対応する描画データに変換する、
データ生成方法。
【請求項9】
可変成形ビーム方式によりフォトマスクにマスクパタンを形成するための描画データを生成するための処理を実行する情報処理装置に、
前記フォトマスクを用いて基板に形成されるターゲットパタンに基づく光近接効果補正により、前記ターゲットパタンに対応し複数の矩形領域を含む前記マスクパタンを設計する処理と、
前記マスクパタンに含まれる各前記矩形領域の第1方向の長さを示すジョグ長をパラメータとして含むコスト関数を用いて前記マスクパタンを評価する処理と、
評価が所定条件を満たす前記マスクパタンを示すマスクパタンデータを可変成形ビーム方式による描画処理に対応する描画データに変換する処理と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、データ生成装置、データ生成方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
フォトマスクにマスクパタンを形成する装置として、可変成形ビーム(VSB:Variable Shaped Beam)方式の電子ビーム描画装置が利用されている。このような電子ビーム描画装置においては、1回の電子ビームの照射(1ショット)で描画可能な領域である最大ショット領域が定められている。マスクパタンの完成に要するショット数は、マスクパタンの形状(大きさを含む)と最大ショット領域の形状との関係に応じて変動する。ショット数の増加は、描画時間の増加等を招き、フォトマスクの生産性を低下させる要因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-73978号公報
【特許文献2】特開2015-216321号公報
【特許文献3】特開2017-199856号公報
【特許文献4】特開2012-243968号公報
【特許文献5】特開2016-207780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一つの実施形態は、VSB方式によるマスクパタンの形成においてショット数の削減が可能な描画データを生成可能なデータ生成装置、データ生成方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの実施形態によれば、フォトマスクにマスクパタンを形成するための描画データを生成するための処理を実行するデータ生成装置が提供される。データ生成装置は、処理部と評価部と変換部とを備える。処理部は、フォトマスクを用いて基板に形成されるターゲットパタンに基づく光近接効果補正により、ターゲットパタンに対応し複数の矩形領域を含むマスクパタンを設計する。評価部は、マスクパタンに含まれる各矩形領域の第1方向の長さを示すジョグ長をパラメータとして含むコスト関数を用いてマスクパタンを評価する。変換部は、評価が所定条件を満たすマスクパタンを示すマスクパタンデータを可変成形ビーム方式による描画処理に対応する描画データに変換する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態のデータ生成装置のハードウェア構成の一例を示す図。
図2】第1実施形態のデータ生成装置の機能構成の一例を示す図。
図3】第1実施形態のターゲットパタン、マスクパタン及びVSB描画パタンの一例を示す図。
図4】第1実施形態のマスクパタンの第1例を示す図。
図5】第1実施形態のマスクパタンの第2例を示す図。
図6】第1実施形態の理想的なマスクパタンの形状の一例を示す図。
図7】第1実施形態のデータ生成装置における処理の一例を示すフローチャート。
図8】第2実施形態のマスクパタン31における端部ずれ量δの一例を示す図。
図9】第3実施形態のマスクパタンにおけるパタン幅及び最大ショット領域における最大ショット幅の一例を示す図。
図10】変形例においてターゲットパタンからILTを用いてVSB描画パタンを設計する際の処理の流れの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、添付図面を参照して、実施形態のデータ生成装置、データ生成方法及びプログラムについて説明する。なお、下記の実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの又は実質的に同一のものが含まれる。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態のデータ生成装置1のハードウェア構成の一例を示す図である。データ生成装置1は、電子ビーム描画装置2で使用される描画データを生成するための処理を実行する情報処理装置である。電子ビーム描画装置2は、可変成形ビーム方式の描画処理によりフォトマスク(レチクル)にマスクパタンを形成する装置であり、データ生成装置1により生成された描画データに基づいてフォトマスクに所定のマスクパタンを形成する。
【0009】
本実施形態のデータ生成装置1は、CPU(Central Processing Unit)11、RAM(Random Access Memory)12、ROM(Read Only Memory)13、ストレージ14、通信I/F(Interface)15、ユーザI/F16等を含むコンピュータを利用して構成される。
【0010】
CPU11は、ROM13やストレージ14に記憶されたプログラムに従いRAM12を作業領域として使用して所定の演算処理を実行する。ストレージ14は、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)等の不揮発性メモリであり、プログラム、CPU11の処理に必要なデータ、CPU11の処理により生成されたデータ等の書き込み及び読み出しを可能にする。通信I/F15は、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の所定のネットワークを介して接続された外部デバイス(電子ビーム描画装置2等)とのデータの送受信を可能にするデバイスである。ユーザI/F16は、ユーザからの入力の受け付け、ユーザへの情報の出力等を可能にするデバイスであり、例えばキーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル機構、ディスプレイ、スピーカ、マイク等であり得る。CPU11、RAM12、ROM13、ストレージ14、通信I/F15及びユーザI/F16は、データバスを介して接続されている。
【0011】
なお、データ生成装置1のハードウェア構成は、上記に限定されるものではなく、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を利用して構成されてもよいし、複数のコンピュータが連携して動作する構成であってもよい。
【0012】
図2は、第1実施形態のデータ生成装置1の機能構成の一例を示す図である。本実施形態のデータ生成装置1は、取得部101、OPC処理部102、評価部103及びVSB変換部104を有する。これらの機能部101~104は、例えば図1に例示されるようなデータ生成装置1のハードウェア要素及びソフトウェア要素(プログラム等)の協働により実現され得る。また、これらの機能部101~104の一部又は全部が専用のハードウェア(回路等)により構成されてもよい。
【0013】
取得部101は、描画データの生成に必要な各種データを取得する。ここでいう「取得」には、入力、生成等の意味が含まれるものとする。取得部101は、ターゲットパタンデータ及びショット領域データを取得する。
【0014】
ターゲットパタンデータとは、マスクパタンが形成されたフォトマスクを用いて実行されるフォトリソグラフィにより所定の基板に形成されるターゲットパタン(例えばレジストパタン等)を示すデータである。ターゲットパタンデータには、ターゲットパタンの形状、大きさ等を示す情報が含まれる。
【0015】
ショット領域データとは、電子ビーム描画装置2の最大ショット領域に関するデータである。最大ショット領域とは、電子ビーム描画装置2がVSB方式の描画処理を行う際に1回の電子ビームの照射(1ショット)で描画可能な最大の領域である。ショット領域データには、最大ショット長、最大ショット幅等を示す情報が含まれる。最大ショット長とは、ショット領域の所定の第1方向の長さであり、最大ショット幅とは、ショット領域の第1方向に交差する第2方向の長さである。第1方向、第2方向、最大ショット長、最大ショット幅等については後述する。
【0016】
OPC処理部102は、取得部101により取得されたターゲットパタンデータが示すターゲットパタンに基づく光近接効果補正(OPC:Optical Proximity Correction)によりマスクパタンを設計する。本実施形態のOPCは、フォトマスクを用いたフォトリソグラフィにより基板にターゲットパタンを形成する際に生じる光近接効果を考慮してターゲットパタンからマスクパタンを設計する処理であり、例えばEdge Based OPC等の手法を利用して実行される。Edge Based OPCとは、まずマスクパタンを構成する各ポリゴンを1つ以上のEdge(辺)に分割しておくことを特徴とするOPC手法である。シミュレーションによりマスクパタンから予測した基板上に形成されるレジストパタンと、基板上に形成されるべき所望のレジストパタン(ターゲットパタン)との位置ずれ(EPE:Edge Placement Error)を評価して、EPEを小さくする方向に先述のEdgeを補正することによりマスクパタンを補正していく技術である。
【0017】
評価部103は、OPC処理部102により設計されたマスクパタンの形状に関する特徴量をパラメータとするコスト関数を用いてマスクパタンを評価する。コスト関数は、複数のパラメータのそれぞれに対応する特徴量を代入することによりマスクパタンの評価を示すコスト値を算出可能な関数である。コスト値と評価との関係は、適宜設定されるべきものであるが、例えば、コスト値が高いほど評価が低い(コスト値が低いほど評価が高い)ものと設定し得る。コスト関数の構成については後述する。
【0018】
評価部103による各マスクパタンに対する評価結果(コスト関数により算出されたコスト値)は、OPC処理部102に受け渡される。OPC処理部102は、受け取った評価結果に基づいて、評価が所定条件を満たすマスクパタンの形状等を示すマスクパタンデータを生成する。評価が所定条件を満たすか否かは、例えばコスト値が閾値未満であるか否か等に基づいて判定し得る。
【0019】
VSB変換部104は、OPC処理部102により生成されたマスクパタンデータ、すなわち評価が所定条件を満たすマスクパタンを示すマスクパタンデータを、可変成形ビーム(VSB)方式による描画処理に対応する描画データに変換する。マスクパタンデータを描画データに変換する手法は特に限定されるべきものではなく、公知のMDP(Mask Data Preparation)技術が適宜利用され得る。VSB変換部104により生成された描画データは、電子ビーム描画装置2に出力され、フォトレジストへのマスクパタンの描画処理に利用される。
【0020】
図3は、第1実施形態のターゲットパタン21、マスクパタン31及びVSB描画パタン41の一例を示す図である。ターゲットパタン21は、フォトマスクを用いたフォトリソグラフィにより処理される基板の表面(被処理面)に形成される所望のパタンであり、例えばレジストに形成されるレジストパタン等であり得る。
【0021】
マスクパタン31は、ターゲットパタン21に基づくOPCにより設計され、フォトマスクに形成されるパタンである。本実施形態のマスクパタン31は、複数の矩形領域Aを含み、ここで例示するマスクパタン31は、3つの矩形領域Aの組み合わせにより構成されている。
【0022】
VSB描画パタン41は、マスクパタン31に基づくMDPにより設計され、電子ビーム描画装置2がVSB方式の描画処理によりフォトマスク上にマスクパタン31を形成する際に利用されるパタンである。VSB描画パタン41は、複数の描画ブロックBを含み、ここで例示するVSB描画パタン41は、3つの描画ブロックBの組み合わせにより構成されている。なお、描画ブロックBの形状は、電子ビーム描画装置2の仕様に応じて決定されるものであり、矩形に限定されず、例えば三角形等を含んでもよい。
【0023】
図4は、第1実施形態のマスクパタン31の第1例を示す図である。図5は、第1実施形態のマスクパタン31の第2例を示す図である。図中、X方向は、紙面の左から右へ向かう方向であり、Y方向は、紙面の下から上へ向かう方向であり、Z方向は、紙面の裏側から表側へ向かう方向である。XY平面は、フォトマスクの上面又は下面に対応している。
【0024】
図4において、ジョグ長L、最大ショット領域S及び最大ショット長Lsが例示されている。ジョグ長Lは、矩形領域AのX方向(第1方向の一例)の長さである。複数の矩形領域Aのそれぞれは、固有のジョグ長Lを有する。最大ショット領域Sは、電子ビーム描画装置2がVSB方式による描画処理を実行する際に1回の電子ビームの照射(1ショット)で描画可能な最大の領域である。最大ショット長Lsは、最大ショット領域SのX方向の長さである。
【0025】
本実施形態のコスト関数は、ジョグ長Lをパラメータとして含む。下記式(1)は、本実施形態のコスト関数を例示している。
【0026】
【数1】
【0027】
式(1)中、右辺の第1項(ΣEPE )は、ターゲットパタン21の所定部分とマスクパタン31の所定部分とのずれの大きさを示す特徴量であるEPE(Edge Placement Error)値をパラメータとし、EPE値が大きいほど大きい値となる関数を含んでいる。すなわち、EPE値が大きいほど、左辺のコスト値(Cost)が大きくなり、対象となっているマスクパタン31の評価が低くなる。EPE値の算出方法は特に限定されるべきものではないが、例えば矩形領域Aの辺上の所定位置に設定された点である評価点と、ターゲットパタン21の所定位置に設定された点と、の比較結果等に基づいて算出し得る。なお、第1項の関数の具体的構成は特に限定されるべきものではなく、公知の演算手法を適宜用いて構成し得る。
【0028】
式(1)中、右辺の第2項(∈Σf(L))は、ジョグ長Lが最大ショット長Lsより大きい場合において、ジョグ長Lと最大ショット長Lsとの差分(ジョグ長Lから最大ショット長Lsを減算した値)が小さいほど小さい値となる関数f(L)を含んでいる。∈は、係数であり、OPCの補正結果や収束に必要なステップ数から最適な数値が設定される。すなわち、図4に例示されるように、ジョグ長Lが最大ショット長Lsより大きい場合には、ジョグ長Lと最大ショット領域Sとの差分が小さいほどコスト値が小さくなるため、ジョグ長Lは最大ショット領域S以下に収束しやすくなる。もしジョグ長Lが最大ショット領域Sより大きい場合には当該差分に対応する狭小領域Cを描画するためにVSB描画パタン41において描画ブロックB(図3)を別途形成することが必要となり、ショット数が増加するためである。なお、第2項の関数の具体的構成は特に限定されるべきものではないが、例えば、シグモイド関数、tanh(hyperbolic tangent)関数等を利用して構成し得る。
【0029】
式(1)中、右辺の第3項(∈Σg(L))は、ジョグ長Lが0に近いほど小さい値となる関数g(L)を含んでいる。∈は、係数であり、OPCの補正結果や収束に必要なステップ数から最適な数値が設定される。すなわち、図5に例示されるように、ジョグ長Lが最大ショット長Ls(図4)より小さい場合には、ジョグ長Lが小さいほどコスト値が小さくなり、ジョグ長Lは0に収束しやすくなる。0に近いジョグ長Lに対応する狭小領域Cを描画するためにVSB描画パタン41において描画ブロックB(図3)を別途形成することが必要となり、ショット数が増加するため、ジョグ長Lを0に収束させる。なお、第3項の関数の具体的構成は特に限定されるべきものではないが、例えば、シグモイド関数、tanh関数等を利用して構成し得る。
【0030】
上記のようなコスト関数を用いてマスクパタン31を評価し、評価が基準に達していない(コスト値が閾値以上である)場合には、ジョグ長L等を変更してマスクパタン31が再設計される。これにより、マスクパタン31の形状をショット数の削減が可能な形状に収束させることができる。
【0031】
図6は、第1実施形態の理想的なマスクパタン31の形状の一例を示す図である。上記のようにジョグ長Lをパラメータとして含むコスト関数を用いてマスクパタン31を設計することにより、各矩形領域Aのジョグ長Lを所定範囲内(例えば、所定の最小値以上最大ショット長Ls以下)に収束しやすくなる。これにより、図4及び図5に例示されるような狭小領域Cの発生を抑制でき、電子ビーム描画装置2による描画処理におけるショット数を削減できる。
【0032】
図7は、第1実施形態のデータ生成装置1における処理の一例を示すフローチャートである。取得部101がターゲットパタンデータ及びショット領域データを取得すると(S101)、OPC処理部102はターゲットパタン21に基づくOPCによりマスクパタン31を設計する(S102)。評価部103は設計されたマスクパタン31の特徴量(本実施形態ではジョグ長L等)を取得し(S103)、特徴量をパラメータとして含むコスト関数を用いてコスト値を算出する(S104)。
【0033】
OPC処理部102は評価部103からコスト値を取得し、現在のマスクパタン31のコスト値が閾値未満か否かを判定する(S105)。コスト値が閾値未満でない場合(S105:No)、すなわち現在のマスクパタン31の評価が所定の基準に達していない場合、OPC処理部102は現在のマスクパタン31に含まれる矩形領域Aのジョグ長L等を変更してマスクパタン31を再設計する(S106)。なお、ジョグ長L以外の特徴量が変更されてもよい。
【0034】
このとき、マスクパタン31の再設計によりEPE値が変化することとなるが、EPE値を算出するための評価点の位置は変更されないことが好ましい。すなわち、再設計後のマスクパタン31のEPE値は、再設計前のマスクパタン31のEPE値と同一の評価点を基準として算出されることが好ましい。これにより、EPE値を算出する際の演算負荷が軽減され、処理速度の向上を図ることができる。
【0035】
その後、ステップS103以降の処理が再度実行される。すなわち、再設計されたマスクパタン31の特徴量に基づいて当該マスクパタン31のコスト値が算出され、当該コスト値が閾値未満か否かが判定される。
【0036】
コスト値が閾値未満である場合(S105:Yes)、すなわち現在のマスクパタン31の評価が所定の基準に達している場合、OPC処理部102は現在のマスクパタン31の形状等を示すマスクパタンデータを生成する(S107)。その後、VSB変換部104は生成されたマスクパタンデータが示すマスクパタン31に基づいてVSB描画パタン41を設計し、当該VSB描画パタン41を示す描画データを生成する(S108)。描画データは電子ビーム描画装置2に出力され、VSB方式の描画処理によりフォトマスクにマスクパタン31が形成される。
【0037】
以上のように、本実施形態によれば、ジョグ長Lをパラメータとして含むコスト関数を用いてマスクパタン31が設計される。これにより、ジョグ長Lと最大ショット長Lsとの関係、ジョグ長L自体の値等に基づいて各矩形領域Aのジョグ長Lを高精度に最適化できる。これにより、VSB方式の描画処理におけるショット数を削減でき、フォトマスクの生産性を向上させることができる。
【0038】
以下に他の実施形態について図面を参照して説明するが、第1実施形態と同一又は同様の箇所については同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0039】
(第2実施形態)
第2実施形態のデータ生成装置1は、コスト関数のパラメータとして、上記ジョグ長Lに加え、後述する端部ずれ量が含まれる点で第1実施形態と相違する。
【0040】
図8は、第2実施形態のマスクパタン31における端部ずれ量δの一例を示す図である。図8において、X方向に沿って隣接する第1矩形領域A1及び第2矩形領域A2が例示されている。端部ずれ量δは、第1矩形領域A1のX方向に沿った辺51Aの端部52Aと、第2矩形領域A2のX方向に沿った辺51Bの第1矩形領域A1側の端部52Bと、のX方向上の位置ずれを示す特徴量である。
【0041】
下記式(2)は、本実施形態のコスト関数を例示している。
【0042】
【数2】
【0043】
本実施形態のコスト関数は、上述した第1項(ΣEPE )、第2項(∈Σf(L))及び第3項(∈Σg(L))に加え、第4項(∈Σh(δ))を含んでいる。第4項は、端部ずれ量δが0に近いほど小さい値となる関数h(δ)を含んでいる。∈は、係数であり、OPCの補正結果や収束に必要なステップ数から最適な数値が設定される。すなわち、図8に例示されるように、第1矩形領域A1と第2矩形領域A2との間に存在する端部ずれ量δが小さいほどコスト値が小さくなる(マスクパタン31の評価が高くなる)ことから、端部ずれ量δは0に収束しやすくできる。マスクパタン31内に僅かな端部ずれ量δに対応する狭小領域Cが存在することにより、ショット数が増加する可能性があるため、端部ずれ量δを0に収束させることでショット数を削減できる。
【0044】
以上のように、本実施形態によれば、ジョグ長Lに加え、端部ずれ量δをパラメータとして含むコスト関数を用いてマスクパタン31が設計される。これにより、僅かな端部ずれ量δが生じないように各矩形領域Aの形状を最適化できる。これにより、VSB方式の描画処理におけるショット数を削減でき、フォトマスクの生産性を向上させることができる。
【0045】
(第3実施形態)
第3実施形態のデータ生成装置1は、コスト関数のパラメータとして、後述するパタン幅が更に含まれる点で第2実施形態と相違する。
【0046】
図9は、第3実施形態のマスクパタン31におけるパタン幅W及び最大ショット領域Sにおける最大ショット幅Wsの一例を示す図である。図9に示されるように、パタン幅Wは、各矩形領域A(A1,A2)のY方向(第2方向の一例)の長さを示す特徴量である。最大ショット幅Wsは、最大ショット領域SのY方向の長さを示す特徴量である。
【0047】
図9には、X方向に沿って並ぶ第1矩形領域A1及び第2矩形領域A2のそれぞれのパタン幅Wが最大ショット幅Wsより大きい場合が例示されている。本実施形態のコスト関数は、このようにパタン幅Wが最大ショット幅Wsより大きい場合には、コスト値が端部ずれ量δの影響を受けない、すなわち端部ずれ量δが小さくなってもコスト値が小さくならないように構成されている。
【0048】
下記式(3)は、本実施形態のコスト関数を例示している。
【0049】
【数3】
【0050】
本実施形態のコスト関数は、上述した第1項(ΣEPE )、第2項(∈Σf(L))及び第3項(∈Σg(L))に加え、第4項(∈Σh(δ,W))を含んでいる。∈は、係数であり、OPCの補正結果や収束に必要なステップ数から最適な数値が設定される。本実施形態の第4項は、パタン幅Wが最大ショット幅Ws以下である場合に限り、端部ずれ量δが0に近いほど小さい値になる関数h(δ,W)を含んでいる。すなわち、図9に例示されるように、第1矩形領域A1及び第2矩形領域A2のそれぞれのパタン幅Wが最大ショット幅Wsより大きい場合には、第1矩形領域A1と第2矩形領域A2との端部ずれ量δがコスト値に影響を及ぼすことはない。このような場合、第1矩形領域A1及び第2矩形領域A2は、VSB描画パタン41を設計する際にY方向に沿って分割されるため、端部ずれ量δに対応する狭小領域Cがショット数の増加の要因にならないためである。
【0051】
以上のように、本実施形態によれば、パタン幅Wをパラメータとして含み、パタン幅Wと最大ショット幅Wsとの関係に応じて端部ずれ量δのコスト値への影響を変化させるコスト関数を用いてマスクパタン31が設計される。これにより、端部ずれ量δを考慮する必要がない場合にまで端部ずれ量δが考慮されてコスト値の増加することを回避できる。これにより、不要なマスクパタン31の再設計が回避され、マスクパタン31の設計にかかる演算負荷や処理時間を軽減できる。
【0052】
(第4実施形態)
上述した第1~第3実施形態においては、ジョグ長Lをパラメータとして含むコスト関数を用いる構成を示したが、例えば下記式(4)のように、ジョグ長Lを含まず、端部ずれ量δをパラメータとして含むコスト関数が用いられてもよい。なお、∈は、係数であり、OPCの補正結果や収束に必要なステップ数から最適な数値が設定される。
【0053】
【数4】
【0054】
このようなコスト関数を用いる場合であっても、端部ずれ量δに基づいてマスクパタン31を最適化でき、ショット数を削減できる。
【0055】
(変形例)
上述した実施形態においては、ターゲットパタン21に基づくOPCによりマスクパタン31を設計し、当該マスクパタン31に基づくMDPによりVSB描画パタン41を設計する場合について説明した(図3参照)。しかし、本実施形態のデータ生成装置1は、ターゲットパタン21に基づくILT(Inverse Lithography Technology)によりILTパタンを設計し、ILTパタンに基づくManhattanize処理により上記マスクパタンを設計する場合にも使用可能なものである。ここでManhattanize処理とは、マスクパタンを製造ルールに違反しないマンハッタン型(直線的な多角形など)に変換する処理である。
【0056】
図10は、変形例においてターゲットパタン61からILTを用いてVSB描画パタン91を設計する際の処理の流れの一例を示す図である。図10に示されるように、3D形状を示すターゲットパタン61に基づいてレベルセット関数を用いてILT処理を行うことにより、ターゲットパタン61の一平面の形状を示すILTパタン71が設計される。その後、ILTパタン71に基づいてManhattanize処理を行うことにより、上記マスクパタン31と同様の構成を有するマスクパタン81が設計される。そして、当該マスクパタン81に基づくMDPにより、上記VSB描画パタン41と同様の構成を有するVSB描画パタン91が設計される。
【0057】
Manhattanize処理において、上述したようなコスト関数を利用することにより、上記実施形態と同様にマスクパタン81を最適化でき、ショット数の削減が可能な描画データを生成できる。
【0058】
上述したようなデータ生成装置1の機能を実現するために、データ生成装置1を構成するコンピュータ(情報処理装置)に所定の処理を実行させるプログラムは、コンピュータにインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供されてもよい。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供又は配布するように構成してもよい。
【0059】
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0060】
(付記)
以下では、上述した実施形態の内容を付記する。
(付記1)
フォトマスクにマスクパタンを形成するための描画データを生成するための処理を実行するデータ生成装置であって、
フォトマスクを用いて基板に形成されるターゲットパタンに基づく光近接効果補正により、ターゲットパタンに対応し複数の矩形領域を含むマスクパタンを設計し、
第1矩形領域の第1方向に沿った辺の端部と、第1矩形領域に対して第1方向に沿って隣接する第2矩形領域の第1方向に沿った辺の第1矩形領域側の端部と、の第1方向上の位置ずれを示す端部ずれ量をパラメータとして含むコスト関数を用いてマスクパタンを評価し、
評価が所定条件を満たすマスクパタンを示すマスクパタンデータを可変成形ビーム方式による描画処理に対応する描画データに変換する、
データ生成装置。
【符号の説明】
【0061】
1…データ生成装置、2…電子ビーム描画装置、11…CPU、12…RAM、13…ROM、14…ストレージ、15…通信I/F、16…ユーザI/F、21,61…ターゲットパタン、31,81…マスクパタン、41,91…VSB描画パタン、51A,51B…辺、52A,52B…端部、A,A1,A2…矩形領域、B…描画ブロック、C…狭小領域、L…ジョグ長、Ls…最大ショット長、S…最大ショット領域、W…パタン幅、Ws…最大ショット幅、δ…端部ずれ量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10