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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044042
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】薬液供給器
(51)【国際特許分類】
   E03D 9/03 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
E03D9/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149355
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】390020019
【氏名又は名称】レック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【弁理士】
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】市川 和希
(72)【発明者】
【氏名】横田川 功
【テーマコード(参考)】
2D038
【Fターム(参考)】
2D038AA02
2D038BA12
(57)【要約】
【課題】毛細管現象を利用して微量な薬液を貯水タンク内に常時に滴下させる薬液供給器を提供する。
【解決手段】薬液供給器は、薬液Mが充填されたボトル部1と、このボトル部1の底側に取り付けて、ボトル部1と一体化する台座部2とから構成され、台座部2は、ボトル部1を保持する保持部3と、この保持部3の内側に固定される基台部4とから構成されている。保持部3の貫通孔3iの大部分は、内筒部4bの上端である凸部4jにより閉塞され、閉塞されない貫通孔3iの微細な通路である流路孔は、基台部4の内筒部4bの外側面4fと、保持部3の外筒部3eの内側面3lとの間の僅かな空隙部に連通する。流路孔を介して空隙部に流下する貫通孔3i上の薬液Mは、表面張力によって毛細管現象が生じて、空隙部内に吸引されて浸透してゆくことになり、適量の薬液Mが排出孔4kを介して貯水タンク内に滴下されることになる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液が充填され、底部に筒状の取付部を有するボトル部と、該ボトル部に取り付けて、前記ボトル部と一体化する台座部とから構成され、水洗トイレの貯水タンクの蓋部の水受部に載置する薬液供給器であって、
前記台座部は、前記ボトル部を保持する保持部と、中央に内筒部を備え、前記保持部の内側に固定する基台部とから成り、
前記保持部は、前記取付部と係合する係合部と、該係合部の内側に配置された外筒部と、該外筒部の上端から連続し、上方に突出する第1の突筒部とを備え、
前記第1の突筒部の基部が前記外筒部と連続する個所の近傍に貫通孔を設け、
前記保持部に前記基台部を固定した際に、前記貫通孔の大部分は前記内筒部の上端により閉塞され、閉塞されない微細な通路である流路孔を形成することを特徴とする薬液供給器。
【請求項2】
前記外筒部と前記第1の突筒部とは、前記外筒部の上端を閉塞する閉塞面を介して連続しており、
前記第1の突筒部の基部が連続する個所の近傍の前記外筒部の前記閉塞面に、前記貫通孔を設けたことを特徴とする請求項1に記載された薬液供給器。
【請求項3】
前記保持部に前記基台部を固定した際に、前記内筒部の外側面及び前記外筒部の内側面との間に僅かな空隙部を形成し、
前記流路孔は前記空隙部に連通していることを特徴とする請求項1又は2に記載された薬液供給器。
【請求項4】
前記流路孔上の薬液は、毛細管現象により前記空隙部に吸引されて、前記空隙部を通過後に前記貯水タンク内に滴下されることを特徴とする請求項3に記載された薬液供給器。
【請求項5】
前記内筒部の上端には、凸部が形成され、該凸部によって前記貫通孔の大部分が閉塞されることを特徴とする請求項1又は2に記載された薬液供給器。
【請求項6】
前記凸部の直下には、前記貯水タンク内に前記薬液を滴下させる排出孔が設けられていることを特徴とする請求項5に記載された薬液供給器。
【請求項7】
前記ボトル部に前記台座部を取り付けた際に、前記第1の突筒部の先端は前記ボトル部内の前記薬液の液面より上方に位置することを特徴とする請求項1又は2に記載された薬液供給器。
【請求項8】
前記内筒部の上端を閉塞する閉塞面の中央には、第2の突筒部が形成されており、前記第1の突筒部内に前記第2の突筒部が挿入可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載された薬液供給器。
【請求項9】
前記ボトル部の取付部に台座部を取り付けた際に、前記第1の突筒部の先端、又は第2の突筒部の先端は、前記ボトル部内の前記薬液の液面より上方に位置することを特徴とする請求項8に記載された薬液供給器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗トイレの貯水タンクの蓋部の水受部に載置する薬液供給器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液吐出孔が弁体を備え、水洗トイレの貯水タンク内の水位の変化により貯水タンク内で昇降する浮きに紐状部材で繋がれ、浮きの昇降に伴って弁体が開閉する薬液吐出容器が開示されている。
【0003】
特許文献1の薬液吐出容器は、水洗トイレの貯水タンク内の水をフラッシュし、貯水タンク内の水の水位が低下すると、浮きが水面から離れて吊るされた状態となり、浮きの重さによりばね材が縮小され、薬液吐出孔とシール材との間が開口し、薬液タンクから薬液が吐出される構造とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-183308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の薬液吐出容器では、例えば一時的な断水状態時に水をフラッシュしてしまうと、貯水タンクの水の水位が低下した状態が維持され、浮きが吊るされた状態が継続することになり、薬液の全てが吐出してしまうという問題がある。また、浮きやバネ構造を採用する必要があり、製造コストが掛かる。
【0006】
本発明の目的は、上述の課題を解決し、毛細管現象を利用して微量な薬液を貯水タンク内に常時に滴下させる薬液供給器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するための本発明に係る薬液供給器は、薬液が充填され、底部に筒状の取付部を有するボトル部と、該ボトル部に取り付けて、前記ボトル部と一体化する台座部とから構成され、水洗トイレの貯水タンクの蓋部の水受部に載置する薬液供給器であって、前記台座部は、前記ボトル部を保持する保持部と、中央に内筒部を備え、前記保持部の内側に固定する基台部とから成り、前記保持部は、前記取付部と係合する係合部と、該係合部の内側に配置され、上端を閉塞する閉塞面を有する外筒部と、該閉塞面中央から上方に突出する第1の突筒部とを備え、前記第1の突筒部の基部が連続する個所の近傍の前記外筒部の前記閉塞面に、貫通孔を設け、前記保持部に前記基台部を固定した際に、前記貫通孔の大部分は前記内筒部の上端により閉塞され、閉塞されない微細な通路である流路孔を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る薬液供給器によれば、毛細管現象を利用して貯水タンク内に、常時に微量な薬液を滴下させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】薬液供給器の分解斜視図である。
図2】裏面から見た台座部の分解斜視図である
図3】組み立てた状態の薬液供給器の斜視図である
図4】水受部に設置した状態の薬液供給器の断面図である。
図5】貫通孔を含む台座部の一部の平面図である。
図6】貫通孔を含む台座部の一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は薬液供給器の分解斜視図であり、図2は裏面から見た台座部の分解斜視図であり、図3は組み立てた状態の斜視図である。薬液供給器は直径5cm、高さ5cm程度の大きさであり、水洗トイレの貯水タンクの蓋部の水受部Tに載置して使用される。
【0011】
薬液供給器は、薬液Mが充填され底部に筒状の取付部を有するボトル部1と、このボトル部1の底側に取り付けて、ボトル部1と一体化する台座部2とから構成されている。
【0012】
ボトル部1は、薬液Mの残量が外から確認できるように合成樹脂等の透明又は半透明な材料から成る本体部1aと、本体部1aの底面1bの中央から下方向に突出する円筒状の取付部1cとから構成されている。
【0013】
本体部1aは、頂面1dと、この頂面1dと連結する側面1eと、この側面1e及び取付部1cに連続する底面1bとを備えている。なお、本体部1aは円柱体状をしているが、直方体、楕円柱、多角形柱等の適宜の形状を採用することができる。
【0014】
また、台座部2と一体化させる前の取付部1cの先端は、図示しない蓋部によって封止されており、ボトル部1の薬液Mの密封状態が維持されている。このボトル部1に充填される薬液Mは、60ml程度であり、芳香剤、洗浄剤、殺菌剤等が含まれ、一般的に採用される適宜な成分比のものが用いられる。
【0015】
台座部2は、ボトル部1を保持する保持部3と、この保持部3の内側に固定される基台部4とから構成されている。保持部3は、底部3aを有する筒形状をしており、外側に円筒状に立設される外壁部3bと、この外壁部3bの内側に配置され、ボトル部1の取付部1cと係合する係合筒部3cと、更にこの係合筒部3cの内側に配置され、上端を閉塞する閉塞面3dを有する外筒部3eと、この閉塞面3dの中央から上方に突出する第1の突筒部3fとを備えている。
【0016】
これらの外筒部3e及び第1の突筒部3fは、閉塞面3dによって段差状をしており、外壁部3bの先端は、ボトル部1の底面1b近傍に配置されている。なお、外壁部3bの先端を、ボトル部1を支持するように底面1bに接触するようにしてもよい。
【0017】
ボトル部1の取付部1c及び保持部3の係合筒部3cは、取付部1cの外周側面に刻設された外ねじ部1fと、係合筒部3cの内周側面に刻設された内ねじ部3gとを螺合することで係合される。或いは、取付部1cの外周面に凸環部又は凹環部を設け、係合筒部3cの内周面に凹環部又は凸環部を設けて、凹環部内に凸環部が嵌合するようにしてもよい。
【0018】
第1の突筒部3fの基部が連続する個所の近傍の閉塞面3dには、外筒部3e内の空隙に連通する貫通孔3iが設けられている。この微小の貫通孔3iは、横0.5mm、縦1mm程度の矩形状をしている。
【0019】
なお、必ずしも外筒部3eと第1の突筒部3fとを、閉塞面3dを介して連続する必要はなく、外筒部3eと、この外筒部3eの上端から連続し、上方に突出する第1の突筒部3fとを配置し、第1の突筒部3fの基部が外筒部3eと連続する個所の近傍に、外筒部3e内の空隙に連通する貫通孔3iを設けるようにしてもよい。
【0020】
また、円筒状である第1の突筒部3fは、先端に向かって窄まるテーパ形状をしており、先端に開口部3hを有している。図2に示すように、底部3aには外縁に沿って配置された脚部3jと、後述する基台部4の突片が挿入される一対の取付孔3kが設けられている。また、外筒部3eの内側面3lには、後述する基台部4の摺動壁を挟持して、摺動する摺動溝3mが上下方向に沿って設けられている。
【0021】
基台部4は、円盤状の本体部4aと、本体部4aの中央に設けられた内筒部4bと、この内筒部4bの先端から段差状に中央から突出する第2の突筒部4cと、本体部4aの外側水平に突出する一対の取付片4dと、本体部4aの外縁から下方に突出する複数の挿入突部4eとから構成されている。内筒部4bの外側面4fには上下方向に沿って摺動壁4gが設けられており、取付片4dには上方に突出する円柱状の取付片4hが設けられている。
【0022】
内筒部4bの上端であって、内筒部4b及び第2の突筒部4cに段差を形成する閉塞面4iには、凸部4jが設けられており、内筒部4bの上端である凸部4jの直下の本体部4aには、排出孔4kが設けられている。なお、凸部4jは、必須の構造ではなく、後述する内筒部4bの外側面4fと、保持部3の外筒部3eの内側面との間の空隙部2aに連通する流路孔2bを形成するのであれば、内筒部4bの閉塞面4iの形状は凹部、又は平垣であっても支障はない。
【0023】
また、基台部4の取付片4h及び保持部3の取付孔3kが設けられていれば、位置合わせが可能であるため、基台部4の摺動壁4g及び保持部3の摺動溝3mは必ずしも設ける必要はない。
【0024】
薬液供給器を使用する際は、先ず保持部3の内側に基台部4を挿入して固定して台座部2を組み立てる。この際に、保持部3の摺動溝3m内に基台部4の摺動壁4gを挿入し、外筒部3eの内型に内筒部4bが摺動させながら、内筒部4bの上端を外筒部3eの閉塞面3dの裏面に当接するまで押し込む。
【0025】
そして、保持部3の取付孔3kに、基台部4の取付片4hを挿入することで、保持部3に基台部4が固定され、台座部2が完成する。続いて、ボトル部1を逆さにして、取付部1cから薬液Mを密封する蓋を取り外す。そして、台座部2を逆さにして第1の突筒部3fを先端として、この先端からボトル部1内の薬液M内に浸液するように取付部1cに挿入する。最後に取付部1cと保持部3の係合筒部3cとを係合させることで、ボトル部1と台座部2とを一体化させる。
【0026】
最終的に組み立てた薬液供給器を再度、逆さにして、水受部下の中央に設けられた水受孔T1に基台部4の挿入突部4eを挿入させることで、水受部Tへの薬液供給器の設置は完了する。
【0027】
図4は水受部Tに設置した状態の薬液供給器の断面図であり、第1の突筒部3fの先端は薬液Mの液面M1より突出することになる。このように突出することで、第2の突筒部4c及び第1の突筒部3f内から空気がボトル部1内に流入するため、ボトル部1内の空気が負圧になることがなく、薬液Mの流出を阻害するようなことはない。
【0028】
また、図4に示すように、第1の突筒部3f内に第2の突筒部4cを挿入しているが、第1の突筒部3f及び第2の突筒部4cは、何れか一方のみ設けるようにしてもよく、又は第2の突筒部4cを第1の突筒部3fよりも長くして、第2の突筒部4cの先端が薬液Mの液面M1より突出するようにしてもよい。
【0029】
薬液供給器を組み立てた状態では、図5の貫通孔3iを含む台座部2の一部の平面図及び図6の貫通孔3iを含む台座部2の一部の断面図に示すように、保持部3の貫通孔3iの大部分は、内筒部4bの上端である凸部4jにより閉塞される。
【0030】
そして、閉塞されない貫通孔3iの微細な通路である流路孔2bは、基台部4の内筒部4bの外側面4fと、保持部3の外筒部3eの内側面3lとの間の僅かな空隙部2aに連通することになる。
【0031】
この流路孔2bの径を0.1mm程度とし、外側面4fと内側面3lとの間隔を0.1mm程度にし、外側面4fと内側面3lとの間の薬液Mの接触角が90度以下とすることで、流路孔2bを介して空隙部2aに流下する貫通孔3i上の薬液Mは、表面張力によって毛細管現象が生じて、空隙部2a内に吸引されて浸透してゆくことになる。空隙部2aを通過した薬液Mは、排出孔4kを介して貯水タンク内に滴下されることなる。
【0032】
また、貫通孔3i内の薬液Mは、凸部4jの側面4lを伝って空隙部2a内に毛細管現象によって吸引されることになるが、側面4lが外側面4fに比べて狭いためボトルネックとして作用し、必要以上の薬液Mが空隙部2a内に吸引されることはない。
【0033】
なお、毛細管現象が生じることのない隙間を設けた場合では、薬液Mが十分であれば薬液Mの水圧によって適量の薬液Mが貯水タンク内に滴下されるが、薬液Mが少なくなった際に薬液Mの水圧が足りずに流路孔2bが目詰まりしたり、適量の薬液Mが滴下されなくなるという問題が生ずる。
【0034】
また、薬液Mは粘度に応じて接触角が変化するため、流路孔2bの大きさ、外側面4fと内側面3lとの間隔は、薬液Mに応じた毛細管現象が発生する値に適宜に調整される。また、外筒部3eの内側面3lに、内筒部4bの外側面4fと平行する壁部を設けて、この外筒部3eの内側面となる壁部の内側面と、外側面4fとによって空隙部2aを形成するようにしてもよい。更に、この壁部の横幅を調整することで、薬液Mの滴下量を調整することも可能である。
【0035】
1、2カ月程度でボトル部1の薬液Mがなくなる程度の滴下量になるように流路孔2b及び空隙部2aを適宜に調整し、薬液Mがなくなったボトル部1を取り外し、新しいボトル部1を前述と同様に取り付けて交換することで、繰り返して薬液供給器を使用することができる。
【0036】
このように、本発明に係る薬液供給器によれば、毛細管現象を利用して貯水タンク内に、常時に微量な薬液を滴下させることが可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 ボトル部
2 台座部
2a 空隙部
2b 流路孔
3 保持部
3c 係合筒部
3d、4i 閉塞面
3e 外筒部
3f 第1の突筒部
3h 開口部
3i 貫通孔
3l 内側面
4 基台部
4a 本体部
4b 内筒部
4c 第2の突筒部
4f 外側面
4j 凸部
4k 排出孔
M 薬液
M1 液面
T 水受部
図1
図2
図3
図4
図5
図6