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  • 特開-歯ブラシ 図1
  • 特開-歯ブラシ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044058
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
   A61C 17/22 20060101AFI20240326BHJP
   A46B 3/04 20060101ALI20240326BHJP
   A46B 5/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
A61C17/22 E
A46B3/04
A46B5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149372
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】香嶋 郁美
(72)【発明者】
【氏名】和田 行紀
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA06
3B202AB23
3B202CA05
3B202DB01
3B202HA02
(57)【要約】
【課題】ハンドル体において、光透過性の被覆部下側にある芯材部の表面がきれいな状態に維持されている歯ブラシを提供する。
【解決手段】毛束4が植設されるヘッド部2と、該ヘッド部2に連設されたハンドル体6とを備える歯ブラシ1において、前記ハンドル体6の少なくとも一部は、一次樹脂により成形される軸状の芯材部9と、二次樹脂により前記芯材部9の上に成形される光透過性の被覆部10とから構成され、前記一次樹脂は、その融点が、前記二次樹脂の融点または融点がない前記二次樹脂のガラス転移点よりも高い樹脂で構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛束が植設されるヘッド部と、該ヘッド部に連設されたハンドル体とを備える歯ブラシであって、
前記ハンドル体の少なくとも一部は、一次樹脂により成形される軸状の芯材部と、二次樹脂により前記芯材部の上に成形される光透過性の被覆部とから構成され、
前記一次樹脂は、その融点が、前記二次樹脂の融点または融点がない前記二次樹脂のガラス転移点よりも高い樹脂であることを特徴とする歯ブラシ。
【請求項2】
前記一次樹脂の融点が225~265℃である、請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記光透過性の被覆部が、200~300℃の成形温度で溶融された前記二次樹脂の固化物で構成されている、請求項1又は2に記載の歯ブラシ。
【請求項4】
前記一次樹脂が、ポリエステル系樹脂又はポリアミド系樹脂である、請求項1又は2に記載の歯ブラシ。
【請求項5】
前記二次樹脂が、全光線透過率40%以上の樹脂である、請求項1又は2に記載の歯ブラシ。
【請求項6】
前記芯材部に前記一次樹脂のゲート跡が形成されるとともに、
前記被覆部の前記二次樹脂のゲート跡が、前記芯材部のゲート跡に重なる位置に形成されている、請求項1又は2に記載の歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛束が植設されたヘッド部と、該ヘッド部に連設されたハンドル体を備えた歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示されるように、ヘッド部及びネック部の欠損や折れを防止でき、かつ容易に製造できる歯ブラシを提供することを目的として、植毛面に複数の毛束が植毛されたヘッド部と、該ヘッド部に延設されたネック部と、該ネック部に延設されたハンドル部とを備えるハンドル体を備え、該ハンドル体には、硬質樹脂で構成された基台の表面に、前記ヘッド部の表面積と前記ネック部の表面積との合計の70%以上を覆う軟質樹脂からなる被覆層が形成された歯ブラシが知られている。
【0003】
前記軟質樹脂としては、ハンドル体の破損等を防止できる軟質樹脂であればよいとされ、例えば、ポリオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等のエラストマー樹脂が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の歯ブラシの成形方法に準じて、前記硬質樹脂を一次射出して形成した芯材部の上に、光透過性を有する樹脂を二次射出して光透過性の被覆部を成形した場合、二次射出時の圧力によって、光透過性を有する樹脂と硬質樹脂との界面において生じたせん断熱により、前記硬質樹脂の表面が溶融することで、芯材部の表面の形状が変化して不定形状の模様が付いたり、硬質樹脂と光透過性を有する樹脂が溶け合って白濁した状態になったりする現象が生じていた。
【0006】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、ハンドル体において、光透過性の被覆部下側にある芯材部の表面がきれいな状態に維持されている歯ブラシを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者はかかる現況に鑑み、鋭意検討した結果、前記ハンドル体の軸状の芯材部を形成する一次樹脂の融点と、前記芯材部の上に成形される光透過性の被覆部を構成する二次樹脂の融点(融点がない樹脂の場合にはガラス転移点)とに着目し、一次樹脂の融点を、二次樹脂の融点(融点がない樹脂の場合にはガラス転移点)よりも高くすることで、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、以下の発明を包含する。
(1)毛束が植設されるヘッド部と、該ヘッド部に連設されたハンドル体とを備える歯ブラシであって、
前記ハンドル体の少なくとも一部は、一次樹脂により成形される軸状の芯材部と、二次樹脂により前記芯材部の上に成形される光透過性の被覆部とから構成され、
前記一次樹脂は、その融点が、前記二次樹脂の融点または融点がない前記二次樹脂のガラス転移点よりも高い樹脂であることを特徴とする歯ブラシ。
【0009】
(2)前記一次樹脂の融点が225~265℃である、前記(1)に記載の歯ブラシ。
【0010】
(3)前記光透過性の被覆部が、200~300℃の成形温度で溶融された前記二次樹脂の固化物で構成されている、前記(1)又は(2)に記載の歯ブラシ。
【0011】
(4)前記一次樹脂が、ポリエステル系樹脂又はポリアミド系樹脂である、前記(1)~(3)のいずれかに記載の歯ブラシ。
【0012】
(5)前記二次樹脂が、全光線透過率40%以上の樹脂である、前記(1)~(4)のいずれかに記載の歯ブラシ。
【0013】
(6)前記芯材部に前記一次樹脂のゲート跡が形成されるとともに、
前記被覆部の前記二次樹脂のゲート跡が、前記芯材部のゲート跡に重なる位置に形成されている、前記(1)~(5)のいずれかに記載の歯ブラシ。
【発明の効果】
【0014】
以上にしてなる本発明によれば、ハンドル体を構成する光透過性の被覆部下側にある芯材部の表面がきれいな状態で維持された、デザイン性に優れた見栄えのよい歯ブラシを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の代表的実施形態に係る歯ブラシを示す平面図。
図2】同じく歯ブラシの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0017】
本発明に係る歯ブラシ1は、図1図2に示すようにヘッド部2に複数の植毛穴20を有する植毛台5を有し、各植毛穴20に毛束4を植設したものである。本例の歯ブラシ1は、先端側のヘッド部2と、基端側のハンドル体6とを備える手動の歯ブラシである。ハンドル体6は、ネック部7とハンドル部8とから構成されており、ネック部7は、ヘッド部2の後端側に連設される。
【0018】
ハンドル体6の少なくとも一部は、一次樹脂により成形される軸状の芯材部15と、二次樹脂により芯材部9の上に成形される光透過性の被覆部10とから構成される。
本発明に係る歯ブラシ1において、芯材部9と光透過性の被覆部10とは、二色成形により形成される。
【0019】
本発明において、「光透過性」とは、可視光の透過を認めることができることを意味する。また、可視光を透過しない物質(例えば、ラメ、顔料など)を少量混合した樹脂であっても、可視光を透過することができれば光透過性に該当する。
【0020】
芯材部9を構成する一次樹脂は、その融点が、光透過性の被覆部10を構成する二次樹脂の融点、又は融点がない二次樹脂の場合はガラス転移点、よりも高い樹脂である。
一次樹脂としては、例えば、本発明の効果が奏されやすい観点から、融点が225~265℃である樹脂が好ましく、さらにはポリエステル系樹脂又はポリアミド系樹脂がより好ましい。
ポリエステル系樹脂としては、ポリビニルテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。
ポリアミド系樹脂としては、6-ナイロン、6,6-ナイロン等が挙げられる。
【0021】
本発明に係る歯ブラシ1において、芯材部9の表面は、光透過性の被覆部10を通して目視できることから、色のついた芯材部9の表面に、例えば、凹凸を有する模様を設けることで、デザイン性に優れた歯ブラシとすることができる。
芯材部9の表面の模様については、特に限定はないが、例えば、幾何学模様、綾目模様、市松模様、千鳥模様等の模様が挙げられる。
芯材部9の色についても、特に限定はない。
【0022】
芯材部9は、ハンドル体6を構成するハンドル部8の一部又は全部、ネック部7の一部又は全部、ハンドル部8及びネック部7それぞれの一部又は全部に形成されていてもよい。
【0023】
芯材部9の表面を被覆する光透過性の被覆部10を構成する二次樹脂は、その融点又は融点を持たない場合にはそのガラス転移点が一次樹脂の融点よりも低く、かつ全光線透過率40%以上の樹脂であればよい。
全光線透過率は、JIS K 7375:2008に記載の方法により測定することができる。二次樹脂の全光線透過率は、60%以上が好ましい。
二次樹脂としては、例えば、ポリカーボネート(PC)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、アクリロニトリルスチレン共重合体(AS樹脂)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。
また、本発明では、前記のように、二次樹脂としては、PC、ABS等の融点をもたない樹脂を使用することができる。
【0024】
また、本発明に係る歯ブラシ1では、前記光透過性の被覆部10は、200~300℃の成形温度で溶融された二次樹脂の固化物で構成されていることが好ましい。
前記温度範囲で溶融された二次樹脂を用いることで、二色成形時に、一次樹脂の溶融を効率よく抑えることができ、透明性に優れた光透過性の被覆部10を形成し易い利点がある。
【0025】
また、本発明に係る歯ブラシ1は、二色成形で形成されるため、芯材部9及び光透過性の被覆部10の表面には、ゲート跡11、12がそれぞれ形成されるが、前記一次樹脂のゲート跡11に、二次樹脂のゲート跡12が重なる位置に調整した場合、ゲート跡11は一次樹脂が押し込まれて硬いため、二次樹脂の射出圧に耐えることができる。前記のようにゲート跡11とゲート跡12とが重なる位置に形成されている歯ブラシ1は、ゲート跡の面積が小さくなるため、デザイン性がより優れた見栄えのよい歯ブラシとなる。
前記ゲート跡11、12の位置については、歯ブラシ1を構成するハンドル体6の後端部、中央部、側面等のいずれの部分に形成してもよい。
【0026】
ヘッド部2は、ハンドル体6を構成する芯材部9と同一の樹脂で一体成形されていればよい。
【0027】
ヘッド部2の厚さ(台厚)T1については、歯ブラシの用途に応じて調整すればよいく、特に限定はない。例えば、薄型のヘッド部2の場合、T1が4.0mm以下、好ましくは3.0mm以下、より好ましくは2.5mm以下の薄型の植毛台5からなるヘッドが挙げられる。
【0028】
植毛台5の毛束4が突設される腹側の植毛面21には、断面視略円形の有底の植毛穴20が複数形成されている。植毛穴20の開口径、深さ、個数、配列形態などは本例に何ら限定されず、毛束一つあたりのフィラメントの本数や材質など、種々の条件に応じて適切
な範囲から選択される。
【0029】
植毛穴20の深さは、植毛台5の厚さT1に応じて適宜決められる。植毛穴20は、基本的に断面円形のストレート状の穴であればよい。
【0030】
各植毛穴20には、それぞれ複数本のフィラメントを束ねて二つ折りにした毛束4が植設される。
【0031】
また、本発明に係る歯ブラシ1の長さ、ハンドル体6を構成するネック部7及びハンドル部8の長さ等については、歯ブラシの用途に応じて適宜決定すればよく、特に限定はない。
【0032】
上述の構成を有する歯ブラシの製造方法について以下に説明する。
まず、歯ブラシのヘッド部2及びネック部7と、ハンドル部8の芯材部9と、が一体に連設された一次側成形品を成形するための一次金型を型締めした状態で、この一次金型内に一次樹脂を注入して前記一次側成形品を成形する。次いで、一次金型を型開きした後、光透過性の被覆部10を備えた二次側成形品を成形するための二次金型を型締めした状態で、この二次金型内に二次樹脂を注入して被覆材5からなる二次側成形品を成形する。
【0033】
このようにして、所定の色に着色された一次樹脂により形成された芯材部9が、透明な二次樹脂からなる被覆部10により被覆されてなるハンドル体6を有する歯ブラシ1を成形することができる。
なお、図1、2では、ハンドル体6を構成するハンドル部8に芯材部9及び光透過性の被覆部10が設けられているが、例えば、ネック部7の基端側の一部又は全体を芯材部9及び光透過性の被覆部10で形成してもよいし、前記ネック部7の一部又は全体のみを芯材部9及び光透過性の被覆部10で形成してもよい。
【0034】
前記ヘッド部2に設けた植毛台5の植毛穴20には公知の方法で、毛束4を植毛すればよい。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、こうした例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【実施例0036】
(実施例)
以下に、図1図2に示す形状の薄型ヘッドを有する歯ブラシ1を作製するにあたって、ヘッド部2、ハンドル体6のネック部7及びハンドル体6のハンドル部8に設けた芯材部9を構成する一次樹脂と、光透過性の被覆部10を構成する二次樹脂との好適例(歯ブラシa、b、c、d)の各条件を示す。
【0037】
歯ブラシa:一次樹脂:PBT(融点225℃)、二次樹脂:PC(ガラス転移点123℃、二次樹脂の全光線透過率92%)
成形温度:220~260℃
歯ブラシb:一次樹脂:PET(融点260℃)、二次樹脂:ABS(ガラス転移点75℃、二次樹脂の全光線透過率86%)
成形温度:210~240℃
歯ブラシc:一次樹脂:6-ナイロン(融点225℃)、二次樹脂:PP(融点120℃、二次樹脂の全光線透過率60%)
成形温度:200~300℃
歯ブラシd:一次樹脂:6,6-ナイロン(融点265℃)、二次樹脂:PC(ガラス転移点123℃、二次樹脂の全光線透過率92%)
成形温度:220~260℃
【0038】
歯ブラシa~dは、いずれもハンドル体6において、光透過性の被覆部10の下側にある芯材部9の表面が変形したり白濁したりしておらず、きれいな状態に維持されていることが目視で確認できた。
【符号の説明】
【0039】
1 歯ブラシ
2 ヘッド部
4 毛束
5 植毛台
6 ハンドル体
7 ネック部
8 ハンドル部
9 芯材部
10 光透過性の被覆部
11 一次樹脂のゲート跡
12 二次樹脂のゲート跡
20 植毛穴
図1
図2