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特開2024-44064ガントリー型穿孔装置を用いた穿孔システム、及びガントリー型穿孔装置を用いた穿孔方法
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  • 特開-ガントリー型穿孔装置を用いた穿孔システム、及びガントリー型穿孔装置を用いた穿孔方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044064
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ガントリー型穿孔装置を用いた穿孔システム、及びガントリー型穿孔装置を用いた穿孔方法
(51)【国際特許分類】
   B23B 39/14 20060101AFI20240326BHJP
   B23Q 3/06 20060101ALI20240326BHJP
   B23Q 17/20 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B23B39/14
B23Q3/06 302C
B23Q17/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149387
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000149505
【氏名又は名称】大同マシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002033
【氏名又は名称】弁理士法人東名国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古田 尚
(72)【発明者】
【氏名】加藤 賢二
【テーマコード(参考)】
3C016
3C029
3C036
【Fターム(参考)】
3C016CA03
3C016CB02
3C016CB13
3C016CC01
3C016CD01
3C016CE05
3C029BB06
3C036BB11
3C036GG07
(57)【要約】
【課題】穿孔装置を用いてワークを穿孔加工する場合において、穿孔加工作業の効率化、及び作業時間の短縮化等を図ることが可能な穿孔システムを提供することを課題とする。
【解決手段】ガントリー型穿孔装置を用いた穿孔システム1は、ドリル位置を調整するドリル位置調整手段S1と、ワークを固定するクランプ動作開始手段S2と、クランプ動作に連動し、ドリルユニットをZ軸下方に沿って移動制御し、穿孔を行う穿孔手段S4と、穿孔加工の完了を検出する穿孔加工完了検出手段と、穿孔ドリルを上昇させる穿孔ドリル上昇手段と、ドリル先端がワーク上面位置に到達したことを確認する穿孔ドリル到達確認手段と、ドリル先端の到達確認に連動し、ワーククランプのクランプ動作を解除するクランプ動作解除手段とを具備する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穿孔加工の対象となるワークを切削可能な穿孔ドリル、前記穿孔ドリルを装着し、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に沿って移動制御可能に形成され、前記穿孔ドリルのドリル先端のドリル位置を変位可能なドリルユニット、及び穿孔加工時の前記ワークを固定するワーククランプを有するガントリー型穿孔装置を用いた穿孔システムであって、
前記ドリルユニットをX軸方向及びY軸方向に沿って移動制御し、前記ワークに規定された穿孔位置の上方に、前記ドリル位置を一致させるドリル位置調整手段と、
前記ドリル位置の調整完了後、前記ワーククランプを作動させ、前記ワークを固定するクランプ動作を開始するクランプ動作開始手段と、
前記クランプ動作の開始に連動し、前記ドリルユニットをZ軸下方に沿って移動制御し、前記ドリルユニットとともに下降する前記穿孔ドリルを利用して前記ワークを切削し、穿孔を行う穿孔手段と、
前記穿孔ドリルによる前記ワークへの穿孔加工の完了を検出する穿孔加工完了検出手段と、
前記ワークへの穿孔加工の完了を検出した後、前記ドリルユニットをZ軸上方に沿って移動制御し、前記穿孔ドリルを上昇させ、前記ワークから離間させる穿孔ドリル上昇手段と、
前記ドリル先端が前記ワークのワーク上面位置に到達したことを確認する穿孔ドリル到達確認手段と、
前記ワーク上面位置への前記ドリル先端の到達確認に連動し、前記ワークを固定する前記ワーククランプのクランプ動作を解除するクランプ動作解除手段と
を具備するガントリー型穿孔装置を用いた穿孔システム。
【請求項2】
前記穿孔手段による前記穿孔ドリルの下降速度を段階的に変化させる下降速度変化手段を更に具備し、
前記下降速度変化手段は、
前記ドリル先端がドリル初期位置からドリル早送り待機位置に到達するまで第一下降速度で移動制御し、
前記ドリル早送り待機位置から前記ワーク上面位置に到達するまで前記第一下降速度よりも低速度の第二下降速度で移動制御する請求項1に記載のガントリー型穿孔装置を用いた穿孔システム。
【請求項3】
前記ワーククランプによる前記ワークのクランプ動作の完了を検出するクランプ動作完了検出手段と、
前記クランプ動作の完了検出に基づいて、前記ワークのワーク厚さを測定するワーク厚さ測定手段と、
測定された前記ワーク厚さに基づいて前記ワークの切削開始高さを算出する切削開始高さ算出手段と
を更に具備する請求項1または2に記載のガントリー型穿孔装置を用いた穿孔システム。
【請求項4】
前記穿孔加工完了検出手段は、
前記穿孔ドリルのドリル軸の回転に要するドリル軸電流量の変化を検出する請求項1または2に記載のガントリー型穿孔装置を用いた穿孔システム。
【請求項5】
穿孔加工の対象となるワークを切削可能な穿孔ドリル、前記穿孔ドリルを装着し、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に沿って移動制御可能に形成され、前記穿孔ドリルのドリル先端のドリル位置を変位可能なドリルユニット、及び穿孔加工時の前記ワークを固定するワーククランプを有するガントリー型穿孔装置を用いた穿孔方法であって、
前記ドリルユニットをX軸方向及びY軸方向に沿って移動制御し、前記ワークに規定された穿孔位置の上方に、前記ドリル位置を一致させるドリル位置調整工程と、
前記ドリル位置の調整された後、前記ワーククランプを作動させ、前記ワークを固定するクランプ動作を開始するクランプ動作開始工程と、
前記クランプ動作の開始に連動し、前記ドリルユニットをZ軸下方に沿って移動制御し、前記ドリルユニットとともに下降する前記穿孔ドリルを利用して前記ワークを切削し、穿孔を行う穿孔工程と、
前記穿孔ドリルによる前記ワークへの穿孔加工の完了を検出する穿孔加工完了検出工程と、
前記ワークへの穿孔加工の完了を検出した後、前記ドリルユニットをZ軸上方に沿って移動制御し、前記穿孔ドリルを上昇させ、前記ワークから離間させる穿孔ドリル上昇工程と、
前記ドリル先端が前記ワークのワーク上面位置に到達したことを確認する穿孔ドリル到達確認工程と、
前記ワーク上面位置への前記ドリル先端の到達確認に連動し、前記ワークを固定する前記ワーククランプのクランプ動作を解除するクランプ動作解除工程と
を具備するガントリー型穿孔装置を用いた穿孔方法。
【請求項6】
前記穿孔工程による前記穿孔ドリルの下降速度を段階的に変化させる下降速度変化工程を更に具備し、
前記下降速度変化工程は、
前記ドリル先端がドリル初期位置からドリル早送り待機位置に到達するまで第一下降速度で移動制御し、
前記ドリル早送り待機位置から前記ワーク上面位置に到達するまで前記第一下降速度よりも低速度の第二下降速度で移動制御する請求項5に記載のガントリー型穿孔装置を用いた穿孔方法。
【請求項7】
前記ワーククランプによる前記ワークのクランプ動作の完了を検出するクランプ動作完了検出工程と、
前記クランプ動作の完了検出に基づいて、前記ワークのワーク厚さを測定するワーク厚さ測定工程と、
測定された前記ワーク厚さに基づいて前記ワークの切削開始高さを算出する切削開始高さ算出工程と
を更に具備する請求項5または6に記載のガントリー型穿孔装置を用いた穿孔方法。
【請求項8】
前記穿孔加工完了検出工程は、
前記穿孔ドリルのドリル軸の回転に要するドリル軸電流量の変化を検出する請求項5または6に記載のガントリー型穿孔装置を用いた穿孔方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガントリー型穿孔装置を用いた穿孔システム(以下、単に「穿孔システム」と称す。)、及びガントリー型穿孔装置を用いた穿孔方法(以下、単に「穿孔方法」と称す。)に関する。更に詳しくは、ワークに複数の孔を設ける穿孔加工を行うためにガントリー型穿孔装置を制御する穿孔システム、及び穿孔方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄骨、橋梁等の大型本体プレートや小物部材等に孔をあける穿孔加工において、数値制御(NC制御)による高速切削を可能とするガントリー型穿孔装置(以下、単に「穿孔装置」と称す。)が使用されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
穿孔加工の対象となる大型本体プレート等のワークに対し、予め規定された複数の位置にそれぞれ規定サイズの孔を設ける穿孔加工が行われている。そして、孔の位置が一致するように互いのワークを重ね、当該孔にボルトを通し、ナットを螺設したり、溶接によって接合したりすることでワーク同士を強固に連結することができる。
【0004】
穿孔装置は、穿孔加工の対象となるワークを載置し、下方から支持する載置テーブルと、当該載置テーブルの長手方向(X軸方向に相当)に沿って配設された一対のガイドレールと、一対のガイドレールの上に支持され、当該ガイドレールに従ってX軸方向に沿って自在に移動可能なゲート状(門状)のガントリーユニットと、ガントリーユニットに取設され、X軸方向に直交するY軸方向に沿って自在に移動可能、かつ、Z軸方向(上下方向)に沿って自在に移動可能なドリルユニットとを具備して主に構成されている。これにより、ドリルユニットに装着された穿孔ドリルをX軸、Y軸、及びZ軸で位置制御し、ワークの所望の穿孔位置に対して穿孔加工を行うことができる。
【0005】
一般的に大型の建造用資材等を製造するためには、一つのワークに対して複数の穿孔位置が設定され、それぞれの穿孔位置に対して穿孔加工を行う必要がある。そのため、穿孔装置のドリルユニットを数値制御し、複数の穿孔位置に対して順次穿孔加工を自動的に行う作業が実施されている。このように、一つのワークに対して設定された全ての穿孔位置への穿孔加工を完了するためには多くの時間が必要となり、例えば、穿孔加工の作業開始から作業完了までに数時間から数十時間を要することがあり、夜間にかかる作業を無人運転により行うこともある。
【0006】
更に具体的に、従来の穿孔装置100によるワークWの穿孔加工の流れの一例を図9(a)~(e)に基づいて説明する。なお、図9において、穿孔装置100の各構成等については、説明を簡略化するために一部構成を省略し、また模式的に図示している。
【0007】
始めに、載置テーブル101に載置されたワークWの穿孔位置Pの上方にX軸方向(図9における紙面左右方向に相当)及びY軸方向(図9における紙面手前から奥行方向に相当)に沿ってガントリーユニット(図示しない)に取設されたドリルユニット102を移動制御する。
【0008】
ドリルユニット102には、穿孔ドリル103が装着されており、当該穿孔ドリル103のドリル先端103aがワークWに対して向けられている。ドリルユニット102(穿孔ドリル103)のX軸方向及びY軸方向に沿った移動制御により、ワークWの穿孔位置Pから所定の高さに穿孔ドリル103のドリル先端103aがワークWの穿孔位置Pに対して向けられ、X軸方向及びY軸方向の位置決め調整が完了する(図9(a)参照)。
【0009】
上記位置決め調整の作業が完了した後、ドリルユニット102に付設されたワーククランプ104を作動させ、ワークWを固定するクランプ動作を開始する。クランプ動作によってクランプ下面104aがワークWのワーク上面W1と接するようにワーククランプ104が下方に向かって伸長する。すなわち、ワーククランプ104をZ軸下方(図9における紙面下方向に相当)に向かって下降させる操作を行う(図9(b))。
【0010】
ここで、ワーククランプ104は、ドリルユニット102に内蔵された油圧シリンダ等の周知の駆動手段(図示しない)と連結されており、Z軸方向に沿ってドリルユニット102からZ軸方向に沿って伸長及び収縮することができる。すなわち、ワーククランプ104はZ軸方向に沿って上昇及び下降を繰り返すことができる。
【0011】
ワーククランプ104のクランプ動作により、ワーククランプ104のクランプ下面104aとワーク上面W1とが接することにより、ワークWが載置テーブル101側に押し付けられる。これにより、ワークWが固定された状態となる。その結果、穿孔加工において穿孔ドリル103によってワークWを貫通した際に生じる、所謂「スプリングバック」の発生や、切削時におけるワークWの振動や載置テーブル101からの浮き上がり等の不具合の発生を抑えることができ、穿孔位置Pがずれることがなく、正しい加工精度での穿孔加工を行うことができる。
【0012】
ここで、「スプリングバック」とは、穿孔加工時や曲げ加工時等において、ワークWに対する圧力が除かれた場合に、当該ワークが跳ね上がってくる現象であり、特に、上記穿孔装置100の場合、穿孔ドリル103によってワークWを押し下げながら穿孔を行い、孔が貫通した際に、当該孔の周囲のワークWが上方に向かって跳ね上がるものである。これにより、ワークWの一部(孔の孔壁)が穿孔ドリル103と接触する不具合を生じることもある。
【0013】
ワーククランプ104によるクランプ動作の完了した後、すなわち、ワークWの固定を確認した後、ドリルユニット102及び当該ドリルユニット102に装着された穿孔ドリル103をZ軸下方に沿って移動制御し、所定のドリル下降速度Vaでドリルユニット102を下降させる(図9(c)参照)。穿孔ドリル103はドリル軸に従って所定の回転速度で高速回転しており、穿孔ドリル103がワークWのワーク上面W1と接し、ワーク下面W2を超えて穿孔ドリル103の下降を継続することにより、ワーク厚さdのワークWを貫通した孔Hが形成される。
【0014】
穿孔加工により、孔Hが形成され、ドリル先端103aが予め規定された位置に到達した後、穿孔ドリル103の下降を停止し、予め規定されたドリル上昇速度VbでZ軸上方に沿って移動制御を行う。なお、穿孔ドリル103のドリル軸に従った回転は、Z軸上方に沿った移動制御においても継続している。
【0015】
その結果、ドリルユニット102及び穿孔ドリル103がZ軸上方に向かって上昇し、ドリル先端103aが穿孔加工の作業開始前の位置(高さ)に戻るまでかかる動作を継続する(図9(d)参照)。そして、ドリル先端103aが作業開始前の位置まで復帰したことを確認した後、ワーククランプ104によるワークWの固定を解除する(図9(e)参照)。図9(a)~(e)に模式的に示した一連の処理を行うことで、ワークWの一の穿孔位置Pに対する穿孔加工の作業が完了する。
【0016】
そして、ワーククランプ104が所定の位置まで戻った段階で、ワークWの新たな穿孔位置PまでX軸方向及びY軸方向に沿ってドリルユニット102を移動制御することにより(図9(a)参照)、新たな穿孔位置Pに対する穿孔加工を開始することができる。このようにして、1のワークWに対して複数の穿孔位置Pが設定された場合であっても、それぞれの穿孔位置Pに対して図9(a)~(e)の穿孔加工の作業を順次繰り返すことにより、穿孔装置100を用いてワークWに複数の孔Hを形成する穿孔加工を自動化して行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2019-084619号公報
【特許文献2】特開2019-084620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記に示したように、従来の穿孔装置の場合、ドリルユニット(穿孔ドリル)のZ軸下方への下降動作やZ軸上方への上昇動作の制御のタイミング、及び、ワーククランプによるワークを固定するクランプ動作やクランプ状態を解除するクランプ解除動作等に係るそれぞれの動作の制御タイミングは、個々の動作が完了したことを確認した後、次の動作のための制御処理が開始されていた。
【0019】
その結果、一つの動作に対する制御が完了した後でしか次の動作の制御が行われないため、穿孔位置に対する穿孔加工の作業が長くなることがあった。特に、前述したように、複数の穿孔位置が設定されたワークに対して順次穿孔加工を行う必要がある大型本体プレート等のワークの場合、ワークに対する全体の穿孔加工時間が長期化するおそれがあった。特に近年において、穿孔加工作業の効率化や省力化が求められ、作業時間自体の短縮化も期待されていた。
【0020】
更に、従来の穿孔装置の場合、上記ドリルユニットの動作量は、予め数値制御によって設定されていた。そのため、埋め立て地等の地盤沈下しやすい場所に上記穿孔装置が設置され、経年使用によって穿孔装置が傾斜した場合、予め設定された動作量しかドリルユニットの制御がなされず、ワークに対して十分な穿孔が行えない可能性があった。
【0021】
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、穿孔装置を用いてワークを穿孔加工する場合において、穿孔加工における各機能的構成及び各工程における作業時間の短縮化を図ることが可能であり、ワーククランプのクランプ動作に基づいて切削開始高さを算出可能な穿孔システム、及び穿孔方法の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明によれば、上記課題を解決した穿孔システム、及び穿孔方法が提供される。
【0023】
[1] 穿孔加工の対象となるワークを切削可能な穿孔ドリル、前記穿孔ドリルを装着し、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に沿って移動制御可能に形成され、前記穿孔ドリルのドリル先端のドリル位置を変位可能なドリルユニット、及び穿孔加工時の前記ワークを固定するワーククランプを有するガントリー型穿孔装置を用いた穿孔システムであって、前記ドリルユニットをX軸方向及びY軸方向に沿って移動制御し、前記ワークに規定された穿孔位置の上方に、前記ドリル位置を一致させるドリル位置調整手段と、前記ドリル位置の調整完了後、前記ワーククランプを作動させ、前記ワークを固定するクランプ動作を開始するクランプ動作開始手段と、前記クランプ動作の開始に連動し、前記ドリルユニットをZ軸下方に沿って移動制御し、前記ドリルユニットとともに下降する前記穿孔ドリルを利用して前記ワークを切削し、穿孔を行う穿孔手段と、前記穿孔ドリルによる前記ワークへの穿孔加工の完了を検出する穿孔加工完了検出手段と、前記ワークへの穿孔加工の完了を検出した後、前記ドリルユニットをZ軸上方に沿って移動制御し、前記穿孔ドリルを上昇させ、前記ワークから離間させる穿孔ドリル上昇手段と、前記ドリル先端が前記ワークのワーク上面位置に到達したことを確認する穿孔ドリル到達確認手段と、前記ワーク上面位置への前記ドリル先端の到達確認に連動し、前記ワークを固定する前記ワーククランプのクランプ動作を解除するクランプ動作解除手段とを具備するガントリー型穿孔装置を用いた穿孔システム。
【0024】
[2] 前記穿孔手段による前記穿孔ドリルの下降速度を段階的に変化させる下降速度変化手段を更に具備し、前記下降速度変化手段は、前記ドリル先端がドリル初期位置からドリル早送り待機位置に到達するまで第一下降速度で移動制御し、前記ドリル早送り待機位置から前記ワーク上面位置に到達するまで前記第一下降速度よりも低速度の第二下降速度で移動制御する前記[1]に記載のガントリー型穿孔装置を用いた穿孔システム。
【0025】
[3] 前記ワーククランプによる前記ワークのクランプ動作の完了を検出するクランプ動作完了検出手段と、前記クランプ動作の完了検出に基づいて、前記ワークのワーク厚さを測定するワーク厚さ測定手段と、測定された前記ワーク厚さに基づいて前記ワークの切削開始高さを算出する切削開始高さ算出手段とを更に具備する前記[1]または[2]に記載のガントリー型穿孔装置を用いた穿孔システム。
【0026】
[4] 前記穿孔加工完了検出手段は、前記穿孔ドリルのドリル軸の回転に要するドリル軸電流量の変化を検出する前記[1]または[2]に記載のガントリー型穿孔装置を用いた穿孔システム。
【0027】
[5] 穿孔加工の対象となるワークを切削可能な穿孔ドリル、前記穿孔ドリルを装着し、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向に沿って移動制御可能に形成され、前記穿孔ドリルのドリル先端のドリル位置を変位可能なドリルユニット、及び穿孔加工時の前記ワークを固定するワーククランプを有するガントリー型穿孔装置を用いた穿孔方法であって、前記ドリルユニットをX軸方向及びY軸方向に沿って移動制御し、前記ワークに規定された穿孔位置の上方に、前記ドリル位置を一致させるドリル位置調整工程と、前記ドリル位置の調整された後、前記ワーククランプを作動させ、前記ワークを固定するクランプ動作を開始するクランプ動作開始工程と、前記クランプ動作の開始に連動し、前記ドリルユニットをZ軸下方に沿って移動制御し、前記ドリルユニットとともに下降する前記穿孔ドリルを利用して前記ワークを切削し、穿孔を行う穿孔工程と、前記穿孔ドリルによる前記ワークへの穿孔加工の完了を検出する穿孔加工完了検出工程と、前記ワークへの穿孔加工の完了を検出した後、前記ドリルユニットをZ軸上方に沿って移動制御し、前記穿孔ドリルを上昇させ、前記ワークから離間させる穿孔ドリル上昇工程と、前記ドリル先端が前記ワークのワーク上面位置に到達したことを確認する穿孔ドリル到達確認工程と、前記ワーク上面位置への前記ドリル先端の到達確認に連動し、前記ワークを固定する前記ワーククランプのクランプ動作を解除するクランプ動作解除工程とを具備するガントリー型穿孔装置を用いた穿孔方法。
【0028】
[6] 前記穿孔工程による前記穿孔ドリルの下降速度を段階的に変化させる下降速度変化工程を更に具備し、前記下降速度変化工程は、前記ドリル先端がドリル初期位置からドリル早送り待機位置に到達するまで第一下降速度で移動制御し、前記ドリル早送り待機位置から前記ワーク上面位置に到達するまで前記第一下降速度よりも低速度の第二下降速度で移動制御する前記[5]に記載のガントリー型穿孔装置を用いた穿孔方法。
【0029】
[7] 前記ワーククランプによる前記ワークのクランプ動作の完了を検出するクランプ動作完了検出工程と、前記クランプ動作の完了検出に基づいて、前記ワークのワーク厚さを測定するワーク厚さ測定工程と、測定された前記ワーク厚さに基づいて前記ワークの切削開始高さを算出する切削開始高さ算出工程とを更に具備する前記[5]または[6]に記載のガントリー型穿孔装置を用いた穿孔方法。
【0030】
[8] 前記穿孔加工完了検出工程は、前記穿孔ドリルのドリル軸の回転に要するドリル軸電流量の変化を検出する前記[5]または[6]に記載のガントリー型穿孔装置を用いた穿孔方法。
【発明の効果】
【0031】
本発明の穿孔システム、及び穿孔方法によれば、ワークを穿孔加工する穿孔ドリルの移動制御とワーククランプによるクランプ動作及びクランプ解除動作を並行して実施することにより、穿孔加工作業の効率化、省力化、及び作業時間の短縮化等を図ることができる。特に、従来の穿孔装置を用いる場合と比較して、一つのワークに対して複数の穿孔位置にそれぞれ穿孔加工を行う場合の作業効率を向上させることができ、穿孔加工の作業時間の短縮化や使用する電気量の削減等の省力化も合わせて行うことができる。更に、穿孔装置が傾斜した場合の穿孔加工の不具合を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本実施形態の穿孔システムによる穿孔加工の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図2】穿孔システムによる穿孔加工の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図3】穿孔システムによる穿孔加工の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図4】穿孔システムによるドリル位置調整手段の一例を示す説明図である。
図5】穿孔システムによるクランプ動作開始手段の一例を示す説明図である。
図6】穿孔システムによる穿孔手段の一例を示す説明図である。
図7】穿孔システムによる穿孔加工完了検出手段の一例を示す説明図である。
図8】穿孔システムにおける穿孔ドリル上昇手段、穿孔ドリル到達確認手段、及びクランプ動作解除手段の一例を示す説明図である。
図9】従来の穿孔装置を用いたワークに対する穿孔加工の処理の流れを模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しつつ本発明の穿孔システム、及び穿孔方法について詳述する。ここで、本発明の穿孔システム、及び穿孔方法は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、種々の設計の変更、修正及び改良等を加え得るものである。
【0034】
本発明の一実施形態の穿孔システム1(本発明におけるガントリー型穿孔装置を用いた穿孔システム)は、図4~7に模式的に示される“ガントリー型”の穿孔装置10(本発明におけるガントリー型穿孔装置に相当)を使用し、穿孔加工の対象となるワークW(例えば、鋼製の厚板等)を切削し、予め規定された穿孔位置Pに所定の孔径の孔Hを形成するためのものである。
【0035】
穿孔装置10は、ワークWを切削可能な穿孔加工用の穿孔ドリル11と、当該穿孔ドリル11を装着し、X軸方向(図4~7における紙面左右方向に相当)、Y軸方向(図4~7における紙面手前から奥行方向に相当)、及びZ軸方向(図4~7における紙面上下方向に相当)に沿って移動制御可能に形成され、穿孔ドリル11のドリル先端11aのドリル位置を自在に変位可能なドリルユニット12と、ワークWを載置し、下方から支持する載置テーブル13と、ドリルユニット12に付設されたワーククランプ14とを主に具備して構成されている。
【0036】
更に穿孔装置10は、その他従来から周知の構成として、例えば、一対のX軸ガイドレール、当該X軸ガイドレールに支持され、ドリルユニット12を取設可能なガントリーユニット、及び、ドリルユニット12やその他ガントリーユニット等を予め規定された変化量に基づいて移動制御するための移動制御部等をそれぞれ具備している。なお、X軸ガイドレール等の構成は周知のものであり、説明を簡略化するための図示を省略する。
【0037】
かかる構成の穿孔装置10を用いることで、載置テーブル13に支持されたワークWの予め規定された穿孔位置Pに対し、ドリル軸に従って回転する穿孔ドリル11を利用して穿孔加工を行い、予め設定された孔径の孔Hをあけることができる。穿孔ドリル11及びドリルユニット12は、予め記憶された穿孔加工データに基づいて移動制御部からの指示によりX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向への移動量、動作タイミング、及びドリル位置等をそれぞれ数値制御することができる。なお、本発明の穿孔方法(ガントリー型穿孔装置を用いた穿孔方法)は、これらの穿孔装置10を用い、上記穿孔システム1を採用することでワークWに穿孔加工を行い、孔Hをあけるための方法である。
【0038】
本実施形態の穿孔システム1及び穿孔方法により孔Hの穿孔加工を行うワークWは、例えば、最終製品として、高速道路の橋脚等に使用される鉄骨等を製造するためのものであり、鉄製の厚板によって構成されている。本実施形態の穿孔システム1においても所定のワーク厚さdを有する平板状の厚板をワークWとして以下に説明を行うものとする。なお、穿孔加工の対象となるワークWは、上記の鉄骨等を製造するためのものに限定されるものではなく、例えば、ボックス柱やH形鋼等の種々の製品を製造する際に実施される穿孔加工においても本発明の穿孔システム及び穿孔方法を採用することができる。
【0039】
以下、本実施形態の穿孔システム1及び穿孔方法の処理または工程の流れについて、図1~3のフローチャート、及び図4~7のワークWに対する穿孔装置10の各種動作を模式的に示した説明図に基づいて説明する。
【0040】
本実施形態の穿孔システム1は、主たる機能的構成として、ドリル位置調整手段S1と、クランプ動作開始手段S2と、穿孔手段S4と、穿孔加工完了検出手段に相当する孔貫通位置確認手段S12及びドリル軸電流量監視手段S14と、穿孔ドリル上昇手段S15と、穿孔ドリル到達確認手段S16と、クランプ動作解除手段S17とを主に具備して構成されている。
【0041】
更に、穿孔システム1は、その他の機能的構成として、下降速度変化手段に相当する第一下降速度変化手段S9及び第二下降速度変化手段S11、クランプ動作完了検出手段S5、ワーク厚さ測定手段S6、及び切削開始高さ算出手段S7をそれぞれ具備し、その他各機能的構成の間の処理を実施する複数の手段を具備している。
【0042】
以下、本実施形態の穿孔システム1におけるそれぞれの機能的構成、及び穿孔システム1を利用した穿孔方法について具体的に説明する。ここで、穿孔システム1における各機能的構成(・・・手段)が本発明の穿孔方法におけるそれぞれの工程、例えば、ドリル位置調整工程等に相当する。
【0043】
本実施形態の穿孔システム1におけるドリル位置調整手段S1は、図4に模式的に示すように、ガントリーユニット(図示しない)に取設されたドリルユニット12をX軸方向及びY軸方向に沿って移動制御し、載置テーブル13によって支持されたワークWの予め規定された穿孔位置Pの上方に、穿孔ドリル11のドリル先端11aの位置(ドリル位置)を一致させるものである(本発明におけるドリル位置調整工程に相当)。
【0044】
ここで、穿孔システム1のシステム開始当初は、穿孔ドリル11のドリル先端11aは、ワークWのワーク上面W1から所定の高さにあるドリル初期位置ZP0(図4参照)に位置している。すなわち、ドリル初期位置ZP0の高さを保った状態で、換言すれば、Z軸方向への移動制御をすることなく、X軸方向及びY軸方向への移動のみが許可された状態でドリル位置の調整が行われる。
【0045】
かかるドリル位置調整手段S1の処理が実施される間、ドリルユニット12に付設されたワーククランプ14は、ドリル先端11aから一定の高さだけクランプ下面14aが離間した位置(クランプ初期位置CP0)で待機している。
【0046】
ドリル位置調整手段S1によるドリル位置の調整完了後、図5に示すように、ワーククランプ14によるクランプ動作を開始する処理を行う(クランプ動作開始手段S2、クランプ動作開始工程)。すなわち、上記したクランプ初期位置CP0の高さにあり、待機した状態のワーククランプ14の動作を開始させ、載置テーブル13の上に支持されたワークWに向かってワーククランプ14を下降させる。
【0047】
ドリルユニット12に付設されたワーククランプ14は、当該ドリルユニット12内に設けられたワーククランプ14の昇降用駆動源となる油圧シリンダ15とワーククランプ14の変化量を検出するためのロータリーエンコーダ16を介して連結されている。
【0048】
これにより、油圧シリンダ15によるシリンダ軸(図示しない)の伸長及び収縮動作に応じ、ワーククランプ14の下降及び上昇を行うことができる。クランプ動作開始手段S2によって、クランプ下面14aがワークWのワーク上面W1と接する位置までワーククランプ14が下降制御される。その結果、ワークWを載置テーブル13側(Z軸下方型)に押し付けることが可能となり、ワーククランプ14及び載置テーブル13の間でワークWを上下方向から挟みこんでワークWの移動等を規制することができる。すなわち、ワーククランプ14によるワークWの固定を行うことができる(図5参照)。
【0049】
更に、本実施形態の穿孔システム1は、ワーククランプ14と接続されたロータリーエンコーダ16によって、ワーククランプ14の移動量(単位時間当たりの変化量)を求めることができる。すなわち、穿孔ドリル11のドリル先端11aのZ軸方向の位置(高さ)からワーククランプ14のクランプ下面14aの位置を減ずることにより、ドリル先端11a及びクランプ下面の間の距離であるドリル・クランプ間距離LZC1(図4参照)を算出することができる。
【0050】
そして、ドリル・クランプ間距離LZC1の値と予め規定された設定値との対比(設定値対比手段S3)が行われる。ドリル・クランプ間距離LZC1が設定値以上の場合(設定値対比手段S3においてYES)、ドリルユニット12に装着された穿孔ドリル11の下降(ドリル早送り下降)を第一下降速度V1で開始する(穿孔手段S4、穿孔工程)。ここで、穿孔ドリル11は、本実施形態の穿孔システム1の開始と同時に、ドリル軸に従って高速で回転制御され、ワークWの切削が可能な状態となっている。
【0051】
一方、ドリル・クランプ間距離LZC1が設定値よりも小さい場合(設定値対比手段S3においてNO)、例えば、図4において、一点鎖線で示された高さにワーククランプ14が位置する場合、ワーククランプ14の下降を継続し、穿孔ドリル11の下降を開始しない制御を行う。これにより、穿孔システム1の開始前においてワーククランプ14がドリルユニット12の下面に近接する位置まで上昇し、ドリル先端11aより高い位置にある場合は、穿孔ドリル11の下降のタイミングをずらし、ワーククランプ14のクランプ動作と、穿孔ドリル11の下降動作に時間差を設け、調整することができる。
【0052】
このような穿孔ドリル11及びワーククランプ14の加工動作に時間差を設けた調整は、本実施形態の穿孔システム1の最初の穿孔位置Pに対する穿孔加工時のみであり、次の穿孔位置Pに対する穿孔加工時には、予め“LZC1≧設定値”の条件を満たす関係にドリル先端11aとクランプ下面14aが位置するようになっている。
【0053】
設定値対比手段S3によって規定された条件を満たすことにより、ワーククランプ14のクランプ動作の開始(クランプ動作開始手段S2)に連動し、ワークWを切削する穿孔動作(穿孔手段S4、穿孔工程)がほぼ同一のタイミングで実施される(図5参照)。
【0054】
更に換言すれば、従来の穿孔装置と異なり、ワーククランプ14によるクランプ動作の完了を待つことなく、穿孔ドリル11の下降動作が開始されることになる。なお、穿孔ドリル11は、予め設定されたドリル早送り待機位置ZP1に達するまでは第一下降速度V1で下降が継続される。
【0055】
更に、穿孔システム1は、穿孔ドリル11の下降動作に係る処理を継続しつつ、ワーククランプ14によるクランプ動作を開始し、その後当該クランプ動作の完了を検出する(クランプ動作完了検出手段S5、クランプ動作完了検出工程)。かかるクランプ動作の完了の検出は、前述したロータリーエンコーダ16による単位時間当たりの変化量に基づいて検出される。
【0056】
すなわち、ワーククランプ14のクランプ下面14aがワークWのワーク上面W1と当接し、それ以上の下降が規制されると、ロータリーエンコーダ16による単位時間当たりの変化量は“0”となる。そのため、クランプ動作が完了したと判断される(クランプ動作完了検出手段S5においてYES)。一方、ロータリーエンコーダの変化量が“0”でない場合(クランプ動作完了検出手段S5においてNO)、クランプ動作が完了していないものとして、クランプ動作完了検出手段S5の処理を繰り返し、クランプ動作の完了の検出を継続する。
【0057】
更に、穿孔システム1は、穿孔対象のワークWのワーク厚さd(ワーク上面W1及びワーク下面W2の間の距離)の算出を行う(ワーク厚さ測定手段S6、ワーク厚さ測定工程)。載置テーブル13のテーブル上面を基準とし、クランプ動作の完了したワーククランプ14のクランプ下面14aの高さをロータリーエンコーダ16によって求めることにより、ワーク厚さdを算出することができる。更に、算出されたワーク厚さdに基づいて切削開始高さZP2’(Z軸切削開始高さ)を算出する(切削開始高さ算出手段S7、切削開始高さ算出工程)。ここで、算出された切削開始高さZP2’がワークWのワーク上面W1の高さに相当するワーク上面位置ZP2と近似する(ZP2’≒ZP2)。
【0058】
更に穿孔システム1は、第一下降速度V1によるZ軸下方への穿孔ドリル11の下降を継続し、ドリル先端11aがドリル早送り待機位置ZP1に到達しているか否かを確認する(ドリル早送り待機位置確認手段S8)。ドリル早送り待機位置ZP1に到達している場合(ドリル早送り待機位置確認手段S8においてYES)、穿孔ドリル11の下降速度を第二下降速度V2に変化させる(第一下降速度変化手段S9(下降速度変化手段)、下降手段変化工程)。
【0059】
これにより、穿孔ドリル11は下降速度が第二下降速度V2に段階的に変化した状態でワークWに向かって下降を継続する。なお、本実施形態の穿孔システム1では、第一下降速度V1が10000mm/minであるのに対し、第二下降速度V2を5000mm/minに設定している。すなわち、ワークWにより近接した位置では穿孔ドリル11の下降速度を若干遅くした低速度に切り換える制御を行っている。
【0060】
その後、第二下降速度V2で下降を継続する穿孔ドリル11のドリル先端11aがワークWのワーク上面位置ZP2(≒切削開始高さZP2’)に到達したか否かを検出する(ワーク上面位置確認手段S10)。
【0061】
すなわち、図6に示すように、ドリル先端11aがワーク上面位置ZP2に到達した場合(ワーク上面位置確認手段S10においてYES)、更に換言すれば、ワーククランプ14のクランプ動作に基づいて算出された切削開始高さZP2’とドリル先端11aのZ軸方向の位置(高さ)が同じ高さになった場合、穿孔ドリル11の下降速度を切削速度V3に更に段階的に変化させ(第二下降速度変化手段S11(下降速度変化手段)、下降速度変化工程)、Z軸下方への穿孔ドリル11の下降を継続する。これにより、ワークWと接した穿孔ドリル11によってワークWの一部が削り取られ、孔Hが形成される(図6参照)。
【0062】
一方、ドリル先端11aがワーク上面位置ZP2に到達していない場合(ワーク上面位置確認手段S10においてNO)、ワーク上面位置確認手段S10の処理を継続し、穿孔ドリル11のドリル先端11aがワーク上面位置ZP2に到達するまで第二下降速度V2による下降を継続する。
【0063】
第二下降速度変化手段S11によって下降速度を変化させ、切削速度V3による穿孔ドリル11の下降を開始すると、穿孔システム1に内蔵されたタイマー(図示しない)を作動させる制御を行う(タイマー作動手段S13)。そして、かかるタイマー作動に合わせて穿孔ドリル11のドリル軸(図示しない)の回転に要するドリル軸電流量の監視を開始する(ドリル軸電流量監視手段S14(穿孔加工完了検出手段)、穿孔加工完了検出工程)。ここで、切削速度V3によってワークWを切削している状態では、穿孔ドリル11のドリル軸の回転に一定の負荷が生じている。一方、ワークWを切削していない場合は、無負荷の状態であり、双方においてドリル軸回転に要する電流量が著しく相違する。
【0064】
そこで、本実施形態の穿孔システム1は、ドリル軸の回転に要するドリル軸電流量を監視し、検出することでワークWへの切削の完了の有無、すなわち、孔Hが貫通したか否かの判定(=穿孔加工の完了の検出)を行う(穿孔加工完了検出手段、穿孔加工検出工程)。
【0065】
ドリル軸電流監視による孔貫通の完了が検出される場合(ドリル軸電流量監視手段S14においてYES)、すなわち、ドリル軸の回転に要する電流量が切削開始時(タイマー作動開始時)よりも小さくなるように変化した場合、ワークWのワーク上面位置ZP2及びワーク下面位置ZP3の間を貫通する孔Hが形成されたと判断し、次の処理に移行する。ドリル軸電流監視による孔貫通の完了が検出されない場合(ドリル軸電流量監視手段S14においてNO)、ドリル軸電流監視の処理を継続する。
【0066】
ここで、本実施形態の穿孔システムは、上述したドリル軸電流量監視手段S14による孔Hの貫通完了の検出、すなわち、穿孔加工の完了検出処理と並行し、穿孔ドリル11のドリル先端11aが予め設定された孔貫通位置ZP4に到達したか否かの検出処理を行っている(孔貫通位置確認手段S12(穿孔加工完了検出手段)、穿孔加工完了検出工程)。すなわち、本実施形態の穿孔システム1には、ドリル軸電流量監視手段S14及び孔貫通位置確認手段S12の二つの穿孔加工完了検出手段(穿孔加工完了検出工程)を具備している。
【0067】
既に説明したように、穿孔ドリル11のドリル先端11aがワークWのワーク上面位置ZP2に到達し、下降速度が切削速度V3に変化した状態で穿孔ドリル11の下降が継続されることにより、ワーク上面W1からワーク下面W2までの切削を行い、ワーク下面W2に相当するワーク下面位置ZP3を通過した後、更に下降が継続され、予め設定された孔貫通位置ZP4まで下降が継続される(図7)。孔貫通位置ZP4にドリル先端11aが到達することにより、ワークWを貫通した孔Hが形成されたことになる。
【0068】
そして、孔貫通位置ZP4への到達を検出すると(孔貫通位置確認手段S12においてYES)、穿孔ドリル11の下降を停止し、当該穿孔ドリル11をZ軸上方に上昇させる(穿孔ドリル上昇手段S15、穿孔ドリル上昇工程)。ここで、本実施形態では、穿孔ドリル11の上昇速度V4での上昇(Z軸早送り上昇)が行われる。なお、上昇速度V4は、第一下降速度V1と同じ10000mm/minに設定されている。なお、穿孔ドリル上昇手段S15は、上述したドリル軸電流量監視手段S14及び孔貫通位置確認手段S12のいずれかの穿孔加工完了検出手段の条件を満たした場合に実行される。
【0069】
その後、穿孔ドリル上昇手段S15によってZ軸上方に移動制御される穿孔ドリル11のドリル先端11aがワーク上面位置ZP2まで到達したかの確認が行われる(穿孔ドリル到達確認手段S16、穿孔ドリル到達確認工程)。すなわち、既に説明した切削開始高さ算出手段S7によって算出された切削開始高さZP2’までドリル先端11aが上昇したかが確認される。
【0070】
なお、穿孔ドリル到達確認手段S16の処理の間でも、Z軸上方への上昇処理が上昇速度V4によって継続されている(穿孔ドリル上昇手段S18、穿孔ドリル上昇工程)、その後、穿孔ドリル11がドリル早送り待機位置ZP1まで上昇したことを検出する(ドリル早送り待機位置確認手段S19)。
【0071】
一方、穿孔ドリル11がドリル早送り待機位置ZP1に到達していない場合(ドリル早送り待機位置確認手段S19においてNO)、穿孔ドリル11の上昇を継続し(穿孔ドリル上昇手段S18)及び当該ドリル早送り待機位置ZP1に到達するまでの検出処理を行う(ドリル早送り待機位置確認手段S19)。
【0072】
なお、ドリル早送り待機位置確認手段S19は、既に説明したドリル早送り待機位置確認手段S8と基本的な機能は同一であり、穿孔ドリル11のドリル先端11aがZ軸上方から下方に向かう若しくは、Z軸下方からZ軸上方に向かう移動方向の違いによるものである。
【0073】
一方、穿孔ドリル11のドリル先端11aのワーク上面位置ZP2への到達を確認すると(穿孔ドリル到達確認手段S16においてYES、図8参照)、ワークWを上方から押さえていたワーククランプ14のクランプ動作を解除する(クランプ動作解除手段S17、クランプ動作解除工程)。これにより、油圧シリンダ15によってワーククランプ14の上昇が開始される。
【0074】
既に説明した通り、上記のワーククランプ14の上昇動作と並行し、穿孔ドリル到達確認手段S16及び穿孔ドリル上昇手段S18における穿孔ドリル11の上昇動作は継続して実施されている。
【0075】
一方、ワーク上面位置ZP2への到達が確認されない場合(穿孔ドリル到達確認手段S16においてNO)、すなわち、ドリル先端11aがワーク下面位置ZP3より下方、若しくはワーク上面位置ZP2及びワーク下面位置ZP3の間に位置している場合、穿孔ドリル11のドリル先端11aがワーク上面位置ZP2まで到達したことを確認する処理を継続する。
【0076】
ワーククランプ14のクランプ動作解除手段S17により、当該ワーククランプ14が穿孔開始前の当初のクランプ初期位置CP0に到達した否かを検出する(クランプ初期位置確認手段S20)。ワーククランプ14がクランプ初期位置CP0に未到達の場合(クランプ初期位置確認手段S20においてNO)、クランプ動作解除手段S17の処理に戻り、クランプ解除動作の処理を継続する。
【0077】
一方、ワーククランプ14がクランプ初期位置CP0に到達し(クランプ初期位置確認手段S20においてYES)、及び、前述した穿孔ドリル11がドリル早送り待機位置ZP1まで上昇している(ドリル早送り待機位置確認手段S19においてYES)の二つの条件を満たす場合、穿孔システム1は次に穿孔加工を行うワークWへの穿孔位置Pの有無を検出する(次穿孔位置有無確認手段S21)。
【0078】
ここで、一つの穿孔位置Pに対する穿孔加工が完了し、同じワークWに対して新たに穿孔加工を行う必要がある穿孔位置Pがある場合(次穿孔位置有無確認手段においてYES)、ドリル位置調整手段S1の処理に戻り、次の穿孔位置Pの上方へのドリルユニット12及び穿孔ドリル11へのX軸方向及びY軸方向への移動制御を行うドリル位置の調整を行う。これにより、新たな穿孔位置Pに対する穿孔加工の処理を継続する。その結果、一つのワークWに対して複数の穿孔位置Pに順次穿孔加工を行うことができる。
【0079】
一方、穿孔加工の対象となる次の穿孔位置Pがない場合(次穿孔位置有無確認手段S21においてNO)、換言すれば、ワークWに対する全ての穿孔位置Pに対して穿孔加工が完了している場合、本穿孔システム1を終了する処理を行う(システム終了手段S22)。
【0080】
以上説明したように、本実施形態の穿孔システム1及び当該穿孔システム1によるワークWに対する穿孔方法によれば、穿孔ドリル11のZ軸方向に沿った下降及び上昇にかかる移動制御のタイミングと、ワーククランプ14によるクランプ動作及びクランプ解除動作のタイミングとを並行して実施することができる。その結果、一つの穿孔位置Pに対する穿孔加工に要する時間を短縮することが可能となり、特に一つのワークWに対して複数の穿孔位置Pに穿孔加工を繰り返す場合において、穿孔加工作業に要する時間を大幅に短縮することができる。これにより、穿孔加工作業の効率性を向上させ、かつ作業コストの低減等を図ることができる。
【0081】
更に、ワーククランプのクランプ動作に基づいて切削開始高さを算出することが可能となるため、地盤沈下によって穿孔装置自体が一方に傾斜した状態であってもワークWのワーク厚さdを穿孔加工毎に算出することができ、加工不良等の不具合を生じる可能性が低くなる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の穿孔システム及び穿孔方法によれば、高速道路等で使用される鉄骨等やその他ボックス柱、或いはH形鋼等を製造する製造工程で使用されるガントリー型穿孔装置の作業効率を向上させ、作業時間を短縮して有用に用いることができ、特に、複数の穿孔位置が規定されたワークに対する穿孔加工に有用な産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0083】
1:穿孔システム(ガントリー型穿孔装置を用いた穿孔システム)、10,100:穿孔装置(ガントリー型穿孔装置)、11,103:穿孔ドリル、11a,103a:ドリル先端、12,102:ドリルユニット、13,101:載置テーブル、14,104:ワーククランプ、14a,104a:クランプ下面、15:油圧シリンダ、16:ロータリーエンコーダ、CP0:クランプ初期位置、H:孔、LZC1:ドリル・クランプ間距離、P:穿孔位置、S1:ドリル位置調整手段(ドリル位置調整工程)、S2:クランプ動作開始手段(クランプ動作開始工程)、S3:設定値対比手段、S4:穿孔手段(穿孔工程)、S5:クランプ動作完了検出手段(クランプ動作完了検出工程)、S6:ワーク厚さ測定手段(ワーク厚さ測定工程)、S7:切削開始高さ算出手段(切削開始高さ算出工程)、S8,S19:ドリル早送り待機位置確認手段、S9:第一下降速度変化手段(下降速度変化手段)、S10:ワーク上面位置確認手段、S11:第二下降速度変化手段(下降速度変化手段、下降速度変化工程)、S12:孔貫通位置確認手段(穿孔加工完了検出手段、穿孔加工完了検出工程)、S13:タイマー作動手段、S14:ドリル軸電流量監視手段(穿孔加工完了検出手段、穿孔加工完了検出工程)、S15,S18:穿孔ドリル上昇手段(穿孔ドリル上昇工程)、S16:穿孔ドリル到達確認手段(穿孔ドリル到達確認工程)、S17:クランプ動作解除手段(クランプ動作解除工程)、S20:クランプ初期位置確認手段、S21:次穿孔位置有無確認手段、S22:システム終了手段、V1:第一下降速度、V2:第二下降速度、V3:切削速度、V4:上昇速度、Va:ドリル下降速度、Vb:ドリル上昇速度、W:ワーク、W1:ワーク上面、W2:ワーク下面、ZP0:ドリル初期位置、ZP1:ドリル早送り待機位置、ZP2:ワーク上面位置、ZP2’:切削開始高さ、ZP3:ワーク下面位置、ZP4:孔貫通位置、d:ワーク厚さ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9