(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044065
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】差動減速機
(51)【国際特許分類】
F16H 1/32 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
F16H1/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149388
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】591218307
【氏名又は名称】株式会社ニッセイ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 光明
【テーマコード(参考)】
3J027
【Fターム(参考)】
3J027FA36
3J027FA37
3J027GB03
3J027GC02
3J027GD04
3J027GD12
3J027GE05
3J027GE29
(57)【要約】
【課題】耐久性及び全体のコンパクト化を維持しつつ、転動体の位置規制を実現する。
【解決手段】差動減速機1は、内歯歯車3と、入力軸4と、外歯歯車5と、変換部材6と、中間部材8とを含み、変換部材6は、外歯歯車5の側面に設けられたブロック部27と、中間部材8の内周側に設けられた突部40とに、径方向に配置された複数の第1、第2ニードルピン33,42を介してそれぞれ回転方向で係合可能で、外歯歯車5の偏心回転運動に伴い、変換部材6が回転運動すると共に、ブロック部27及び突部40に沿った2つの径方向へ順番に移動することで、外歯歯車5の偏心回転運動を、回転出力部材となる内歯歯車3又は中間部材8の回転運動に変換する。そして、中間部材8の内周側に、突部40と変換部材6との間からの第2ニードルピン42の脱落を防止する突起部43を設けている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内歯歯車と、
前記内歯歯車内に配置されて前記内歯歯車を同軸で貫通し、自身の中心軸に対して偏心する偏心部を有する入力軸と、
前記偏心部に外装され、前記内歯歯車に内接して噛み合う外歯歯車と、
前記外歯歯車の軸方向で前記外歯歯車に隣接して配置される変換部材と、
前記変換部材の外側に配置されるリング状の中間部材と、を含み、
前記変換部材は、前記外歯歯車の側面に設けられた第1のガイド部と、前記中間部材の内周側に設けられ、前記第1のガイド部と周方向に90°異なる位相で配置された第2のガイド部とに、径方向に配置された複数の転動体を介してそれぞれ回転方向で係合可能で、前記外歯歯車の偏心回転運動に伴い、前記変換部材が回転運動すると共に、前記第1のガイド部及び前記第2のガイド部に沿った2つの径方向へ順番に移動することで、前記外歯歯車の偏心回転運動を、回転出力部材となる前記内歯歯車又は前記中間部材の回転運動に変換する差動減速機であって、
前記中間部材の内周側に、前記第2のガイド部と前記変換部材との間からの前記転動体の脱落を防止する位置規制部を設けたことを特徴とする差動減速機。
【請求項2】
前記第2のガイド部は、前記中間部材の内周から中心側へ突出する突部であり、前記変換部材の外周には、前記突部が進入する切欠部が設けられて、前記転動体は、前記突部と前記切欠部との間に配置されて、
前記位置規制部は、前記突部の根元に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の差動減速機。
【請求項3】
前記位置規制部は、前記中間部材に一体形成され、前記突部を除く前記中間部材の内周よりも径方向内側へ突出する突起部であることを特徴とする請求項2に記載の差動減速機。
【請求項4】
前記転動体は、軸線が前記入力軸の軸線と平行となるニードルピンであることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の差動減速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内歯歯車と、内歯歯車に内接して噛合する外歯歯車とを含む内接揺動式の差動減速機に関する。
【背景技術】
【0002】
差動減速機には、内歯歯車と、内歯歯車に内接して噛合する外歯歯車とを含む内接揺動式のものが知られている。外歯歯車は、入力軸に設けられた偏心部に外装されて、差動減速機では、入力軸の回転に伴う外歯歯車の偏心回転運動を回転運動に変換することで、自転成分のみを出力可能となっている。例えば特許文献1には、外歯歯車の軸方向に隣接して、変換部材と、その外周を囲むリング状の当てプレートとをそれぞれ配置し、変換部材の内周側に、外歯歯車の側面に設けた当てブロックが位置する切り欠きを、変換部材の外周側に、当てプレートの内周に設けた突部が位置する切り欠きを、互いに90°位相が異なるようにそれぞれ設けて、当てブロックと切り欠きとの互いに対向する摺動部間と、突部と切り欠きとの互いに対向する摺動部間とに、ニードルローラをそれぞれ配置した発明が開示されている。
この差動減速機では、入力軸が回転して外歯歯車が偏心回転運動すると、変換部材が各ニードルローラによって2つの径方向へ順番に相対移動しながら当てプレートへ動力を伝達する。よって、変換部材を介して外歯歯車の自転成分のみが当てプレートから取り出し可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の差動減速機において、変換部材の外周側に設けた切り欠き(切欠部)の摺動部と、当てプレートの内周側に設けた突部の摺動部との間では、ニードルローラが外周側へ脱落しないように転動範囲を規制する必要がある。よって、ここでは切り欠きの両端の角部を突部側へ突出させてニードルローラの位置規制を図っている。しかし、突出する角部の肉厚が薄いため、強度が低くなって衝撃で破損するおそれがある。かといって角部の肉厚を大きくすると、変換部材の径が大きくなって全体のサイズアップに繋がってしまう。
【0005】
そこで、本開示は、耐久性及び全体のコンパクト化を維持しつつ、ニードルローラ等の転動体の位置規制が効果的に実現可能となる差動減速機を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示は、内歯歯車と、
前記内歯歯車内に配置されて前記内歯歯車を同軸で貫通し、自身の中心軸に対して偏心する偏心部を有する入力軸と、
前記偏心部に外装され、前記内歯歯車に内接して噛み合う外歯歯車と、
前記外歯歯車の軸方向で前記外歯歯車に隣接して配置される変換部材と、
前記変換部材の外側に配置されるリング状の中間部材と、を含み、
前記変換部材は、前記外歯歯車の側面に設けられた第1のガイド部と、前記中間部材の内周側に設けられ、前記第1のガイド部と周方向に90°異なる位相で配置された第2のガイド部とに、径方向に配置された複数の転動体を介してそれぞれ回転方向で係合可能で、前記外歯歯車の偏心回転運動に伴い、前記変換部材が回転運動すると共に、前記第1のガイド部及び前記第2のガイド部に沿った2つの径方向へ順番に移動することで、前記外歯歯車の偏心回転運動を、回転出力部材となる前記内歯歯車又は前記中間部材の回転運動に変換する差動減速機であって、
前記中間部材の内周側に、前記第2のガイド部と前記変換部材との間からの前記転動体の脱落を防止する位置規制部を設けたことを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、前記第2のガイド部は、前記中間部材の内周から中心側へ突出する突部であり、前記変換部材の外周には、前記突部が進入する切欠部が設けられて、前記転動体は、前記突部と前記切欠部との間に配置されて、
前記位置規制部は、前記突部の根元に設けられていることを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、前記位置規制部は、前記中間部材に一体形成され、前記突部を除く前記中間部材の内周よりも径方向内側へ突出する突起部であることを特徴とする。
本開示の別の態様は、上記構成において、前記転動体は、軸線が前記入力軸の軸線と平行となるニードルピンであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、変換部材に設けた切欠部の両端の角部を転動体の位置規制に利用しないため、角部が衝撃で破損したり、変換部材が大径化して全体のサイズアップに繋がったりすることがなくなる。よって、耐久性及び全体のコンパクト化を維持しつつ、転動体の位置規制が効果的に実現可能となる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、転動体を、中間部材の内周に設けた突部と、変換部材の外周に設けた切欠部との間に配置して、突起部を突部の根元に設けているので、突部を利用して突起部の強度を確保でき、耐久性の一層の向上が期待できる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、位置規制部を、中間部材に一体形成され、突部を除く中間部材の内周よりも径方向内側へ突出する突起部としているので、中間部材に位置規制部を容易に形成可能となる。
本開示の別の態様によれば、上記効果に加えて、転動体を、軸線が入力軸の軸線と平行となるニードルピンとしているので、ガイド部及び突部に沿った変換部材の移動がスムーズに行える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図6】
図4における上側の突部部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、差動減速機の一例を入力側から示す側面図である。
図2は、
図1のA-A線断面図、
図3は、
図1のB-B線断面図である。本開示の差動減速機は、例えば産業用ロボットの関節部分などに使用される。
差動減速機1は、ケース2と、内歯歯車3と、入力軸4と、外歯歯車5と、変換部材6とを備えている。
まず、ケース2は、円筒状の主ケース7と、主ケース7における入力側(
図1の右側)に配置され、外形が主ケース7と略同一であるリング状の中間部材8と、中間部材8の入力側に配置され、外形が主ケース7及び中間部材8と略同一のブラケット9とからなる。主ケース7、中間部材8、ブラケット9は、ブラケット9及び中間部材8を貫通して主ケース7にねじ込まれる複数のボルト10,10・・により一体に結合されている。主ケース7と中間部材8との間及び、中間部材8とブラケット9との間には、Oリング11,11がそれぞれ配置されている。主ケース7、中間部材8、ブラケット9において、各ボルト10と異なる位置には、複数の貫通孔12,12・・が形成されている。
【0010】
内歯歯車3は、主ケース7の径方向内側に配置されている。内歯歯車3は、主ケース7の内周面と内歯歯車3の外周面との間で周方向に配置された複数のクロスローラ14,14・・からなるクロスローラベアリング13を介して、主ケース7内で回転可能に支持されている。主ケース7と内歯歯車3との間でクロスローラベアリング13の出力側には、オイルシール15が配置されている。差動減速機1内に充填された潤滑剤(例えばグリス)は、オイルシール15及びOリング11,11によって封止される。
内歯歯車3において、出力側(
図1の左側)の端面には、複数のボルト穴16,16・・が形成されている。ここではケース2を貫通孔12を介して固定側とすると、内歯歯車3が出力側となり、ボルト穴16を介して内歯歯車3が相手側装置と連結される。一方、内歯歯車3をボルト穴16を介して固定側とすると、ケース2が出力側となり、貫通孔12を介してケース2が相手側装置と連結される。内歯歯車3の内周面において、ボルト穴16側の部分には内歯が形成されず、円盤状のベアリングハウジング17が圧入により固定されている。
【0011】
入力軸4は、内歯歯車3を同軸で貫通している。入力軸4は、配線や駆動軸等を通すために、中心軸C0を中心とする円形の中空部が設けられた円筒状となっている。
入力軸4の軸方向の両端には、一対の支持部20,20が形成されている。入力側の支持部20とブラケット9との間及び、出力側の支持部20とベアリングハウジング17との間には、ボールベアリング21,21が配置されている。入力軸4は、ボールベアリング21,21を介して回転可能に支持されている。入力軸4における支持部20,20の間には、中心軸C0から偏心量δ1だけオフセットした偏心軸C1を中心として、支持部20よりも外径が大きい円筒面を有する偏心部22が形成されている。
入力軸4の入力側の端面には、複数のボルト穴23,23・・が形成されている。ボルト穴23は、周方向に等間隔で4箇所形成されて、図示しない駆動軸の連結に使用される。
入力軸4には、複数の貫通孔24,24・・が形成されている。各貫通孔24は円形で、中心軸C0に対して偏心部22の偏心方向側の部分に、ボルト穴23を避ける位置に8箇所形成されている。貫通孔24は肉抜き部としての機能を果たし、差動減速機1の駆動時において、入力軸4及び外歯歯車5の偏心に起因する回転バランスの偏りを改善する。
【0012】
外歯歯車5は、偏心部22に外装されている。偏心部22の外周面と外歯歯車5の内周面との間には、周方向へ全周に亘って配置される複数のニードルローラ26,26・・からなるニードルベアリング25が設けられている。よって、外歯歯車5は、ニードルベアリング25を介して偏心部22へ回転可能に支持される。各ニードルローラ26の軸方向への移動は、ボールベアリング21,21の外輪の側面により規制されている。
外歯歯車5は、内歯歯車3の歯数よりも僅かに少ない歯数を有しており、内歯歯車3に偏心位置で内接している。
図4及び
図5に示すように、外歯歯車5における入力側の側面で、外歯歯車5の軸心を中心とした点対称位置には、一対のブロック部27,27が一体形成されている。各ブロック部27は側面視四角形状で、
図4で左右方向に延びるブロック部27の上下面には、互いに平行な第1内ガイド面28,28が形成されている。
【0013】
変換部材6は、中間部材8の内周に形成される開口部30内に配置されて入力軸4に貫通されている。変換部材6は円盤状であり、厚さは中間部材8とほぼ同一である。変換部材6の内周側で変換部材6の軸心を中心とした点対称位置には、一対の内切欠部31,31が形成されている。この内切欠部31内に、外歯歯車5のブロック部27,27がそれぞれ位置している。
図4で左右方向に延びる各内切欠部31の上下の内面には、互いに平行な第1外ガイド面32,32が形成されている。各ブロック部27の第1内ガイド面28,28と、各内切欠部31の第1外ガイド面32,32とは、互いに間隔をおいて平行に対向している。各第1内ガイド面28と各第1外ガイド面32との間には、軸線が入力軸4の軸線と平行で横断面が円形となる2つの第1ニードルピン33,33がそれぞれ配置されている。
【0014】
よって、変換部材6は、第1ニードルピン33を介して、外歯歯車5に対して、第1内ガイド面28及び第1外ガイド面32と平行な
図4の左右方向に移動可能となる。各内切欠部31において、第1外ガイド面32の径方向内側の端部は、変換部材6の中心側へ向かうに従ってブロック部27に近づくように湾曲して、ブロック部27側へ突出する突出角部34を形成している。この突出角部34により、変換部材6の内周面では、周方向で突出角部34の先端とブロック部27の端部との間を第1ニードルピン33の外径よりも小さくして、第1ニードルピン33の径方向内側への脱落を防止している。
変換部材6の外周側で変換部材6の軸心を中心とした点対称位置には、一対の外切欠部35,35が形成されている。外切欠部35,35は、内切欠部31,31に対し、変換部材6の周方向で90°異なる位相に配置されている。
図4で上下方向に延びる各外切欠部35の左右の内面には、互いに平行な第2外ガイド面36,36が形成されている。
【0015】
中間部材8の内周側で中間部材8の軸心を中心とした点対称位置には、一対の突部40,40が形成されている。この突部40,40は、
図4で中間部材8の上下に配置されて、変換部材6の外切欠部35,35内にそれぞれ位置している。
図4で上下方向に延びる各突部40の左右の側面には、互いに平行な第2内ガイド面41,41が形成されている。各外切欠部35の第2外ガイド面36,36と、各突部40の第2内ガイド面41,41とは、互いに間隔をおいて平行に対向している。各第2外ガイド面36と各第2内ガイド面41との間には、軸線が入力軸4の軸線と平行で横断面が円形となる2つの第2ニードルピン42,42がそれぞれ配置されている。よって、変換部材6は、第2ニードルピン42を介して、中間部材8に対して、第2外ガイド面36及び第2内ガイド面41と平行な上下方向に移動可能となる。
【0016】
各突部40の根元で左右両側には、
図6にも示すように、開口部30の内周よりも径方向内側に突出する突起部43,43が形成されている。この突起部43,43は、突部40の根元から周方向へ平面状に延びて、終端を、第2ニードルピン42の中心よりも外切欠部35の開口両側の角部37寄りにそれぞれ位置させている。この突起部43により、角部37の先端と突起部43の終端との間隔が、第2ニードルピン42の外径よりも小さくなっている。この間隔と第2ニードルピン42の外径との大小関係は、後述する作動時に変換部材6が上下移動しても変わらない。こうして突部40の根元に突起部43,43を設けたことで、外切欠部35の各角部37は、内切欠部31の突出角部34のように突部40側へ突出させる必要がなくなる。また、角部37が突出しないことで、封止された潤滑剤が第2ニードルピン42側へ流れやすくなる。
【0017】
変換部材6の入力側の端面には、抑えプレート45が設けられている。抑えプレート45は、内切欠部31及び外切欠部35を除いて変換部材6と外径及び内径が同形状となる円盤状で、変換部材6の端面に複数のボルト46,46・・で固定されることで、内切欠部31,31及び外切欠部35,35の入力側を閉塞し、各第1、第2ニードルピン33,42の入力側への移動を規制している。第1ニードルピン33の出力側への移動は、外歯歯車5の端面により規制され、第2ニードルピン42の出力側への移動は、内歯歯車3の端面により規制される。
【0018】
以上の如く構成された差動減速機1において、図示しない駆動源の動力によって入力軸4が回転すると、偏心部22が偏心運動し、外歯歯車5が内歯歯車3に内接した状態で偏心及び自転運動する。このため、ブロック部27,27も偏心及び自転運動するが、各ブロック部27は、変換部材6に対して第1内ガイド面28及び第1外ガイド面32と平行な方向へ相対移動可能で、且つ変換部材6は、中間部材8に対して第2外ガイド面36及び第2内ガイド面41と平行な方向へ相対移動可能である。よって、変換部材6が互いに交差する十字方向へ順番に相対移動しながら中間部材8へ動力を伝達する格好となるため、変換部材6を介して外歯歯車5の自転成分のみが取り出され、内歯歯車3がケース2に対して相対的に回転する。つまり変換部材6は、外歯歯車5の偏心回転運動を、中心軸C0を中心とした回転運動に変換する、いわゆる自在継手と同様の機能を果たしている。中間部材8は、外歯歯車5の偏心回転運動から内歯歯車3と相対的に回転する回転運動を取り出すキャリアの機能を果たしている。
【0019】
変換部材6の十字方向の相対移動に伴い、第1内ガイド面28と第1外ガイド面32との間で第1ニードルピン33が転動し、第2外ガイド面36と第2内ガイド面41との間で第2ニードルピン42が転動する。第1ニードルピン33の径方向内側への移動は、内切欠部31の突出角部34によって規制される。また、第2ニードルピン42の径方向外側への移動は、中間部材8の突起部43によって規制される。突起部43は、突部40の根元に形成されているため、外部から衝撃が加わっても、突起部43が損傷するおそれは非常に小さくなっている。
【0020】
このように、上記形態の差動減速機1は、内歯歯車3と、内歯歯車3内に配置されて内歯歯車3を同軸で貫通し、自身の中心軸C0に対して偏心する偏心部22を有する入力軸4と、偏心部22に外装され、内歯歯車3に内接して噛み合う外歯歯車5と、外歯歯車5の軸方向で外歯歯車5に隣接して配置される変換部材6と、変換部材6の外側に配置されるリング状の中間部材8と、を含む。
変換部材6は、外歯歯車5の側面に設けられたブロック部27(第1のガイド部の一例)と、中間部材8の内周側に設けられ、ブロック部27と周方向に90°異なる位相で配置された突部40(第2のガイド部の一例)とに、径方向に配置された複数の第1、第2ニードルピン33,42(転動体の一例)を介してそれぞれ回転方向で係合可能で、外歯歯車5の偏心回転運動に伴い、変換部材6が回転運動すると共に、ブロック部27及び突部40に沿った2つの径方向へ順番に移動することで、外歯歯車5の偏心回転運動を、回転出力部材となる内歯歯車3又は中間部材8の回転運動に変換する。
そして、中間部材8の内周側に、突部40と変換部材6との間からの第2ニードルピン42の脱落を防止する突起部43(位置規制部の一例)を設けている。
【0021】
この構成によれば、外切欠部35の両端の角部37を第2ニードルピン42の位置規制に利用しないため、角部37が衝撃で破損したり、変換部材6が大径化して全体のサイズアップに繋がったりすることがなくなる。よって、耐久性及び全体のコンパクト化を維持しつつ、第2ニードルピン42の位置規制が効果的に実現可能となる。
【0022】
特に、第2のガイド部を、中間部材8の内周から中心側へ突出する突部40とし、変換部材6の外周に、突部40が進入する外切欠部35(切欠部の一例)を設けて、第2ニードルピン42を、突部40と外切欠部35との間に配置して、突起部43を、突部40の根元に設けている。
よって、突部40を利用して突起部43の強度を確保でき、耐久性の一層の向上が期待できる。
位置規制部を、中間部材8に一体形成され、突部40を除く中間部材8の内周よりも径方向内側へ突出する突起部43としている。
よって、中間部材8に位置規制部を容易に形成可能となる。
転動体を、軸線が入力軸4の軸線と平行となる第1、第2ニードルピン33,42としている。
よって、ブロック部27及び突部40に沿った変換部材6の移動がスムーズに行える。
【0023】
以下、変更例について説明する。
ニードルピンの位置規制部の形状は、上記形態の突起部に限らない。例えば、突起部は、終端が上記形態よりも外切欠部の角部寄りとなるように周方向に長く延ばしてもよい。
突起部は、平面状に限らず、傾斜状に形成したり、円形状に形成したりしてもよい。突起部は、突部の根元から離れて中間部材の内周面からニードルピン側へ突出する形状であってもよい。突起部は複数あってもよい。
位置規制部は、中間部材と一体の突起部に限らず、中間部材の内周面に固定した別体の部材で形成してもよい。
ニードルピンは、上記形態では径方向に2つずつ並設されているが、3つ以上であってもよい。転動体は、ニードルピンに限らず、ボール等であってもよい。
その他、差動減速機の構造も適宜変更可能である。例えば、クロスローラベアリングに代えて他の軸受を採用したり、抑えプレートを省略したり、中間部材を主ケース又はブラケットへ一体に設けたりしてもよい。
【符号の説明】
【0024】
1・・差動減速機、2・・ケース、3・・内歯歯車、4・・入力軸、5・・外歯歯車、6・・変換部材、7・・主ケース、8・・中間部材、22・・偏心部、27・・ブロック部、28・・第1内ガイド面、30・・開口部、31・・内切欠部、32・・第1外ガイド面、33・・第1ニードルピン、34・・突出角部、35・・外切欠部、36・・第2外ガイド面、37・・角部、40・・突部、41・・第2内ガイド面、42・・第2ニードルピン、43・・突起部。