(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044070
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】樽印刷方法及び樽印刷システム
(51)【国際特許分類】
B65B 61/02 20060101AFI20240326BHJP
B65D 25/20 20060101ALI20240326BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240326BHJP
B05D 7/14 20060101ALI20240326BHJP
B05D 3/02 20060101ALI20240326BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20240326BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240326BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B65B61/02
B65D25/20 Q
B41J2/01 109
B41J2/01 125
B41J2/01 401
B05D7/14 P
B05D3/02 B
B05D3/00 D
B05D7/24 301M
B41M5/00 100
B41M5/00 116
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149393
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】小山 宏和
(72)【発明者】
【氏名】王 蕾蕾
(72)【発明者】
【氏名】永岡 沙希子
(72)【発明者】
【氏名】米本 友華
(72)【発明者】
【氏名】中谷 正樹
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
3E056
3E062
4D075
【Fターム(参考)】
2C056EB30
2C056EC29
2C056FB04
2C056FB09
2C056FB10
2C056HA46
2C056KD10
2H186AB12
2H186DA18
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB25
2H186FB54
3E056AA20
3E056BA01
3E056CA20
3E056DA01
3E056EA10
3E056FA02
3E056FH05
3E056FH20
3E062AA08
3E062AB02
3E062AC03
3E062DA02
3E062DA09
4D075AC06
4D075AC09
4D075AC71
4D075AC88
4D075AC91
4D075BB23X
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4D075BB60Z
4D075BB93X
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4D075CA35
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4D075CA47
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4D075DA20
4D075DB01
4D075DC41
4D075EA06
4D075EA33
(57)【要約】
【課題】本開示は、既設の樽詰システムにて新たな設備を導入することなく、ラベルなどのプラスチックフィルムを用いずにリターナブルの金属製の樽の外表面に印刷を安全に施すことができる樽印刷方法及び樽印刷システムを提供することを目的とする。
【解決手段】本開示に係る樽印刷システム10は、リターナブルの金属製の樽に内容物を充填する樽詰システム1にて、樽の外表面に文字若しくは画像のいずれか一方又は両方を印刷する樽印刷システムであって、樽詰システム1は、樽の内面を洗浄し100℃以上の蒸気で殺菌する内洗装置3と、樽に内容物を充填する充填装置4と、を順に有し、この順に樽を搬送させる搬送装置5(5a,5b,5c,5d)を有しており、樽印刷システム10は、水性インクを樽の外表面に付着させる印刷装置11を備え、印刷装置11は、内洗装置3と充填装置4との間の搬送装置5cに沿って配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リターナブルの金属製の樽に内容物を充填する樽詰システムにて、前記樽の外表面に文字若しくは画像のいずれか一方又は両方を印刷する樽印刷方法であって、
前記樽詰システムは、前記樽の内面を洗浄し100℃以上の蒸気で殺菌する内洗装置と、前記樽に内容物を充填する充填装置と、を順に有し、この順に前記樽を搬送させる搬送装置を有しており、
前記樽印刷方法は、
前記内洗装置において前記樽内に前記蒸気を導入する蒸気導入工程と、
前記樽内に前記蒸気を導入することによって前記樽の外表面を加熱して前記樽の外表面を乾燥させる樽加熱乾燥工程と、
乾燥した前記樽の外表面に水性インクを付着させるインク付着工程と、
該インク付着工程を経た前記樽が前記充填装置に到達する前に前記樽の外表面に付着した前記水性インクが乾燥するインク乾燥工程と、を含むことを特徴とする樽印刷方法。
【請求項2】
前記インク付着工程は、前記樽の外表面温度が60~150℃となっている状態を保持している間に行うことを特徴とする請求項1に記載の樽印刷方法。
【請求項3】
前記インク付着工程は、前記水性インクをインクジェットヘッドから吐出する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の樽印刷方法。
【請求項4】
前記インク付着工程は、
前記搬送装置によって搬送されてきた前記樽を前記搬送装置の搬送面から持ち上げる工程と、
持ち上げた前記樽を該樽の中心軸を中心に回転させつつ、前記インクジェットヘッドで前記樽の側面に印刷を行う工程と、
印刷された前記樽を前記搬送面上に戻す工程と、を含むことを特徴とする請求項3に記載の樽印刷方法。
【請求項5】
前記文字若しくは前記画像のいずれか一方又は両方は、意匠印刷を含むことを特徴とする請求項1に記載の樽印刷方法。
【請求項6】
リターナブルの金属製の樽に内容物を充填する樽詰システムにて、前記樽の外表面に文字若しくは画像のいずれか一方又は両方を印刷する樽印刷システムであって、
前記樽詰システムは、前記樽の内面を洗浄し100℃以上の蒸気で殺菌する内洗装置と、前記樽に内容物を充填する充填装置と、を順に有し、この順に前記樽を搬送させる搬送装置を有しており、
前記樽印刷システムは、水性インクを前記樽の外表面に付着させる印刷装置を備え、
前記印刷装置は、前記内洗装置と前記充填装置との間の前記搬送装置に沿って配置されることを特徴とする樽印刷システム。
【請求項7】
前記印刷装置は、インクジェットヘッドを有するインクジェットプリンタであり、
前記樽印刷システムは、前記搬送装置によって搬送されてきた前記樽を前記搬送装置の搬送面から持ち上げながら前記樽を該樽の中心軸を中心に回転させる昇降回転装置を更に備え、
前記インクジェットヘッドは、前記昇降回転装置によって持ち上げられた前記樽の側面に向いており、
前記昇降回転装置が、前記樽を持ち上げながら回転させつつ、前記インクジェットヘッドが前記樽の側面に印刷を行うことを特徴とする請求項6に記載の樽印刷システム。
【請求項8】
前記印刷装置は、ドロップオンデマンド方式のフルカラーインクジェットプリンタであることを特徴とする請求項7に記載の樽印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樽印刷方法及び樽印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ビールなどの飲料を収容する金属製の樽としては、市場に流通し内容物が消費されると回収されて繰り返し利用されるリターナブル樽が知られている。リターナブル樽の外表面には、ロット番号などの文字、数字又は記号からなる品質管理用の情報が印字されているが、回収後、樽の外表面を洗浄時にその印字は除去され、新たに充填される内容物に関する情報が印字される(例えば、特許文献1を参照。)。特許文献1では、洗浄後の乾燥が不十分であっても印字の欠けや滲みを防止できる樽印字装置が提案されており、印字の形態として文字、数字又は記号が記載されている。また、樽の表面にプラスチック製のラベルが貼り付けられることもある(例えば、特許文献2を参照。)。
【0003】
リターナブル容器の外表面に、文字、図案若しくは模様などの意匠性の高い文字、図案又は模様を施す技術が提案されている(例えば、特許文献3を参照。)。特許文献3では、インクジェット印刷機を用いて、リターナブル容器の外表面に、溶剤によって除去可能な第1インクを用いて模様などを描き、この模様などを硬化させた後、硬化した第1インクによる模様の上に第2インクを用いて文字などを重ねて描く技術が提案されている。
【0004】
円筒形などの回転3次元体の外表面に印刷する場合、一般に、回転3次元体を自転させながら印刷画像を形成する方法が採用される(例えば、特許文献4を参照。)。このとき、容器の外表面が金属などの印刷インクを吸収しない非吸収性の素材からなる場合、回転3次元体を自転時にインクが流動して滲んだ状態になる問題がある。この問題を解決するために、特別な組成を有するインクジェット印刷用インクを用いて、円筒形容器のインク非吸収性表面に鮮明な印刷画像を印刷する方法が提案されている(例えば、特許文献5を参照。)。特許文献5では、円筒形容器の非吸収性表面が25乃至100℃の温度となるように調整した後、特別な組成を有するインクジェット印刷用インクを用いてインクジェット印刷を施し、次いで仕上げニスを塗装する方法が開示されており、非吸収性表面の温度調節方法として、円筒形容器を支持固定するマンドレルを加温することによって円筒形容器を間接的に加温する方法、又は円筒形容器の非吸収性表面自体を温風、高周波加熱若しくは赤外線加熱によって直接的に加熱する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-131858号公報
【特許文献2】特開2022-51477号公報
【特許文献3】特開2021-107255号公報
【特許文献4】特開2014-136217号公報
【特許文献5】特開2013-177571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、印字の形態として文字、数字又は記号(以降、文字、数字又は記号をまとめて文字等ということもある)が記載されているが、文字等だけではなく画像を含めた意匠性があるデザインを樽の外表面に表示することの要望がある。従来、このような意匠性があるデザインは、特許文献2のようなラベル又はストレッチラベルなどのようにプラスチックフィルムに印刷されて、該プラスチックフィルムを樽の外表面に貼り付けたり巻いたりすることで表示されていた。しかし、昨今プラスチック使用量の削減が推進されており、プラスチックフィルムを使用せずに、意匠性があるデザインを樽の外表面に印刷することが求められている。
【0007】
特許文献3には、リターナブル容器の外表面に、意匠性の高い文字、図案又は模様を印刷する方法が提案されているが、樽詰システムにおいてインラインで印刷する方法については検討されていない。特許文献4のような回転3次元体を自転させながら印刷画像を形成する方法であればインラインでの印刷に適用できるかもしれないが、前記の通り自転時のインクの流動の問題があり、特許文献5のような特別な組成を有するインクジェット印刷用インクを用いる必要がある。特許文献5のインクはワンウェイ容器であるシームレス缶を対象としているので、リターナブル樽のように回収後洗浄によって印刷を除去することは想定されておらず、リターナブル樽の印刷には適用できない。
【0008】
また、意匠性があるデザインを印刷する場合、特許文献1のような文字、数字又は記号を印字する場合と比べてインク使用量が多くなる傾向にある。インク使用量が多くなるほどインクを定着させるための乾燥に要する時間が長くなるため、樽詰システムを通過する限られた時間内にインクを乾燥させることが課題となる。有機溶剤を用いた溶剤インクは水性インクと比較して乾燥速度が速いが、溶剤インクによる印刷物は水性インクによる印刷物と比較して外洗機による洗浄で除去されにくい場合がある。さらに、印刷面積が大きくなると有機溶剤の使用量が多くなり、有機溶剤の許容消費量を超えるおそれがある。また、インクを高速乾燥させる技術として高温の熱風でインクを乾燥させる技術があるが、熱風によって色むらが発生し美観が損なわれる問題があった。さらには、高温の熱風を発生させるための新たな設備の導入が必要となり、工場レイアウトの変更を強いられたり製造コストが向上したりする問題があった。このような背景から、これまで、樽詰システムにおけるインラインで意匠性があるデザインを樽の外表面に印刷する技術は実現されていなかった。
【0009】
本開示は、既設の樽詰システムにて新たな設備を導入することなく、ラベルなどのプラスチックフィルムを用いずにリターナブルの金属製の樽の外表面に印刷を安全に施すことができる樽印刷方法及び樽印刷システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る樽印刷方法は、リターナブルの金属製の樽に内容物を充填する樽詰システムにて、前記樽の外表面に文字若しくは画像のいずれか一方又は両方を印刷する樽印刷方法であって、前記樽詰システムは、前記樽の内面を洗浄し100℃以上の蒸気で殺菌する内洗装置と、前記樽に内容物を充填する充填装置と、を順に有し、この順に前記樽を搬送させる搬送装置を有しており、前記樽印刷方法は、前記内洗装置において前記樽内に前記蒸気を導入する蒸気導入工程と、前記樽内に前記蒸気を導入することによって前記樽の外表面を加熱して前記樽の外表面を乾燥させる樽加熱乾燥工程と、乾燥した前記樽の外表面に水性インクを付着させるインク付着工程と、該インク付着工程を経た前記樽が前記充填装置に到達する前に前記樽の外表面に付着した前記水性インクが乾燥するインク乾燥工程と、を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る樽印刷方法では、前記インク付着工程は、前記樽の外表面温度が60~150℃となっている状態を保持している間に行うことが好ましい。視認性により優れた印刷面を形成することができる。
【0012】
本発明に係る樽印刷方法では、前記インク付着工程は、前記水性インクをインクジェットヘッドから吐出する工程を含むことが好ましい。バリアブル印刷を実現できる。また、製版コストが不要なので、コスト削減を実現できる。
【0013】
本発明に係る樽印刷方法では、前記インク付着工程は、前記搬送装置によって搬送されてきた前記樽を前記搬送装置の搬送面から持ち上げる工程と、持ち上げた前記樽を該樽の中心軸を中心に回転させつつ、前記インクジェットヘッドで前記樽の側面に印刷を行う工程と、印刷された前記樽を前記搬送面上に戻す工程と、を含むことが好ましい。搬送装置を止めることなく、効率的に印刷をすることができる。
【0014】
本発明に係る樽印刷方法では、前記文字若しくは前記画像のいずれか一方又は両方は、意匠印刷を含むことが好ましい。樽を店舗内の客から見える場所に置いたり、一般家庭向けに販売したりするなど、見栄えの良さが求められる様々な用途にも好適に適用できる。
【0015】
本発明に係る樽印刷システムは、リターナブルの金属製の樽に内容物を充填する樽詰システムにて、前記樽の外表面に文字若しくは画像のいずれか一方又は両方を印刷する樽印刷システムであって、前記樽詰システムは、前記樽の内面を洗浄し100℃以上の蒸気で殺菌する内洗装置と、前記樽に内容物を充填する充填装置と、を順に有し、この順に前記樽を搬送させる搬送装置を有しており、前記樽印刷システムは、水性インクを前記樽の外表面に付着させる印刷装置を備え、前記印刷装置は、前記内洗装置と前記充填装置との間の前記搬送装置に沿って配置されることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る樽印刷システムでは、前記印刷装置は、インクジェットヘッドを有するインクジェットプリンタであり、前記樽印刷システムは、前記搬送装置によって搬送されてきた前記樽を前記搬送装置の搬送面から持ち上げながら前記樽を該樽の中心軸を中心に回転させる昇降回転装置を更に備え、前記インクジェットヘッドは、前記昇降回転装置によって持ち上げられた前記樽の側面に向いており、前記昇降回転装置が、前記樽を持ち上げながら回転させつつ、前記インクジェットヘッドが前記樽の側面に印刷を行うことが好ましい。既設の樽詰システムに大掛かりなレイアウト変更を必要とせず、プリンタ及び昇降回転装置を組み込むという細部の小規模な変更で印刷を実現することができる。
【0017】
本発明に係る樽印刷システムでは、前記印刷装置は、ドロップオンデマンド方式のフルカラーインクジェットプリンタであることが好ましい。プラスチックラベルと同等以上の美粧性を保有することができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、既設の樽詰システムにて新たな設備を導入することなく、ラベルなどのプラスチックフィルムを用いずにリターナブルの金属製の樽の外表面に印刷を安全に施すことができる樽印刷方法及び樽印刷システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係る樽印刷システムの一例を示す概略構成図である。
【
図2】リターナブルの金属製の樽の一例を示す概略図である。
【
図3】昇降回転装置を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0021】
まず、本実施形態に係る樽印刷システムを説明する。
図1は、本実施形態に係る樽印刷システムの一例を示す概略構成図である。
図1では樽の搬送経路6を破線で示した。本実施形態に係る樽印刷システム10は、リターナブルの金属製の樽100(例えば
図2に図示)に内容物を充填する樽詰システム1にて、樽の外表面に文字若しくは画像のいずれか一方又は両方を印刷する樽印刷システムであって、樽詰システム1は、樽の内面を洗浄し100℃以上の蒸気で殺菌する内洗装置3と、樽に内容物を充填する充填装置4と、を順に有し、この順に樽を搬送させる搬送装置5(5a,5b,5c,5d)を有しており、樽印刷システム10は、水性インクを樽の外表面に付着させる印刷装置11を備え、印刷装置11は、内洗装置3と充填装置4との間の搬送装置5cに沿って配置される。
【0022】
図2は、リターナブルの金属製の樽の一例を示す画像である。リターナブルの金属製の樽100は、内容物が収容される胴部101と胴部101の上下に連接する上スカート部102及び下スカート部103とを有する。胴部101の上端には、口金部101aが設けられており、口金部101aを介して、内容物の充填及び注出が行われる。上下スカート部102,103は、胴部101の外周を上下に延長するようにしてそれぞれ設けられている。上スカート部102には、樽100の運搬の際に作業者が把持するための取手部104が設けられている。内容物は、特に限定されないが、例えば、ビール、発泡酒又はその他の発泡性酒類である。樽100の容量は、例えば、7~20Lが主流であるが、本発明では特に限定されない。
【0023】
印刷領域となる樽100の外表面は、例えば、胴部101の側面、上スカート部102の側面及び下スカート部103の側面を含む。印刷領域は、樽の側面の周方向の一部だけに設けられてもよいし、樽の側面の周方向の全域にわたって間欠的又は連続的に設けられてもよい。例えば、胴部101の側面の全周にわたって連続的又は断続的に印刷が施されていることが好ましい。印刷される内容は、文字だけであるか、画像だけであるか、又は文字及び画像の両方を含んでいてもよい。例えば、
図2では一例として、胴部101の側面に、商品名として「キリンラガービール」(キリンラガーは登録商標)の文字、品種として「ビール」の文字、内容量として「20L」の文字及び2次元コードが印字されている形態を示したが、本発明はこれに限定されない。印刷領域は胴部101の側面だけでもよいし、胴部101の側面に加えて上スカート部102の側面及び/又は下スカート部103の側面にわたっているか、又は上スカート部102の側面だけ、下スカート部103の側面だけであってもよい。
図2ではグレー階調に処理した画像を示したが、グレー階調に処理する前のカラー画像によって、より正確に表現される。例えば、文字を赤色文字、画像を黒色文字とするなどフルカラー印刷してもよい。
【0024】
樽詰システム1は、
図1に示すように、内洗装置3の前に、樽の外面を洗浄する外洗装置2を有することが好ましい。外洗装置2は、店舗などから回収された樽の外表面の汚れを落とすとともに外表面に印刷された文字・模様などを除去する装置であり、例えば樽を搬送装置5で搬送させながら洗浄剤、湯及び水などを噴射して洗浄する。
【0025】
内洗装置3は、樽の内面を洗浄殺菌する装置であり、例えば樽の内部に洗浄液を導入して内面洗浄をした後、樽の内部に蒸気を導入して内面殺菌をする。洗浄液及び蒸気の導入は、樽の口金部101a(
図2に図示)を介して行われる。内洗装置3は、
図1に示すように、円形状の搬送経路6に沿って樽を移動させながら洗浄及び殺菌を行うロータリー式の内洗装置であるか、又は直線状の搬送経路を備えるレーン式の内洗装置(不図示)であってもよい。蒸気は、例えば、飽和水蒸気又は過熱水蒸気である。蒸気の温度は、100℃以上であり、115℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましい。蒸気の温度の上限は、特に限定されないが、例えば、200℃以下であることが好ましく、150℃以下であることが好ましい。
【0026】
充填装置4は、樽に内容物を充填する装置である。内容物の充填は、樽の口金部101a(
図2に図示)を介して行われる。充填装置4は、
図1に示すように、円形状の搬送経路6に沿って樽を移動させながら連続的に充填を行うロータリー式の充填装置であるか、又は直線状の搬送経路を備え間欠的に充填を行うレーン式の充填装置(不図示)であってもよい。
【0027】
搬送装置5(5a,5b,5c,5d)は、樽を搬送経路6に沿って移動させる装置であり、例えばベルトコンベアである。搬送装置5(5a,5b,5c,5d)は、外洗装置2の搬送経路6の上流側の搬送装置5aと、外洗装置2と内洗装置3との間の搬送装置5bと、内洗装置3と充填装置4との間の搬送装置5cと、充填装置4の搬送経路6の下流側の搬送装置5dとを包含する。
【0028】
樽詰システム1は、内洗装置3と充填装置4との間に搬送装置5cが介在していればよく、樽詰システム1が
図1に示すようにロータリー式の内洗装置3とロータリー式の充填装置4とを備える形態の他、例えば、レーン式の内洗装置3と該レーン式の内洗装置3とは別個の充填装置4とを備える形態であってもよい。
【0029】
樽詰システム1では、樽は、搬送装置5aで搬送されて外洗装置2に送られ、外洗装置2で外面が洗浄されて外表面の文字・模様などが除去された後、搬送装置5bで搬送されて内洗装置3へ送られる。次いで、内洗装置3で内面が洗浄殺菌された樽は、搬送装置5cで搬送されて充填装置4へ送られる。このとき、樽は、内洗装置3で蒸気が導入された状態で内洗装置3から排出されるので、搬送装置5cで搬送される充填装置4に到達するまでの間、蒸気殺菌が継続される。充填装置4に到達した樽は、内容物が充填された後、搬送装置5dで搬送されて検査後パレットなどに積載される。樽詰システム1では、複数個の樽が、搬送装置5(5a,5b,5c,5d)によって所定の間隔で連続的に順次搬送されて、外洗及び内洗を経て内容物が充填される。
【0030】
本実施形態に係る樽印刷システム10では、印刷装置11は、水性インクを印刷する水性インクプリンタである。水性インクは、溶媒の主成分として水を含むインクであり、色材を含んでいてもよい。色材は、顔料であるか、又は染料であってもよい。本実施形態では、水性インクは色材として顔料を含む水性インクであることが好ましい。色材として顔料を含む水性インクは色材として染料を含む水性インクと比較して、耐水性、耐光性及び耐ガス性などの耐候性に優れている。また、印刷内容が文字等だけではなく画像を含む場合のように印刷面積が大きくなる場合、溶媒の主成分として有機溶剤を含む溶剤インクでは有機溶剤の使用量が多くなり、有機溶剤の許容消費量を超えるおそれがあるところ、水性インクは、溶剤インクと比較して環境に対する影響が少なく、引火しにくいため安全性が高い。さらに、水性インクは、溶剤インクと比較して外洗装置2による洗浄で除去しやすいので、高い洗浄性を実現できる。一方、水性インクは紙媒体などの定着層を持つ基材へ印刷し、該定着層にインクが浸透されることで、短時間で乾燥して密着性が実現される。このため、従来、インク定着層を持たない金属表面ではインクの密着性の確保が課題とされてきた。そこで、本発明者等は、内洗装置3から排出された樽の残熱を利用して水性インクの水分を短期間で蒸発させることでインク乾燥のための専用の装置を増設しなくてもインクの密着性を確保できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本実施形態に係る樽印刷システム10では、印刷装置11が、内洗装置3と充填装置4との間の搬送装置5cに沿って配置されることで本発明の課題を解決することができる。本実施形態に係る樽印刷システム10は、樽の外表面に直接的に印刷する形態を包含する。ここで、直接的に印刷するとは、インクをシュリンクラベルなどのラベルではなく樽の外表面に付着させて乾燥・定着させることをいう。インクを樽の外表面に付着させる方法は、特に限定されないが、例えば、インクジェットプリンタのインクジェットヘッドからインクを樽の外表面に吹き付ける方法、転写シートに付着させたインクを樽の外表面に押し当てて転写する方法を包含する。
【0031】
印刷装置11は、搬送装置5cのうち外表面が乾燥状態の樽が搬送される搬送装置5cに沿って配置されることが好ましい。樽の外表面が乾燥状態にあるとは、樽の外表面の少なくとも印刷領域に水滴が付着していない状態をいい、例えば、内洗装置3を出てきた直後において樽の外表面の少なくとも印刷領域に水滴が付着していない場合、印刷装置11を配置する好適な箇所は、内洗装置3と充填装置4との間の搬送装置5c沿いの全区間が該当する。樽が、内洗装置3から排出後充填装置4へ到達するまでの間に印刷装置11で樽の外表面に印刷が行われることで、内洗装置3から排出された樽の残熱を利用して水性インクの水分を短期間で蒸発させることができる。その結果、樽の金属表面においてインクの密着性を確保することができる。
【0032】
本実施形態に係る樽印刷システム10では、印刷装置11は、インクジェットヘッド11aを有するインクジェットプリンタであることが好ましい。印刷装置11としてインクジェットプリンタを用いることで、少量多品種製造、バリアブル印刷の実現など柔軟性の高い対応ができる。また、インクジェットプリンタを既設の樽詰システム1の搬送経路6沿いに設置するだけで樽詰システム1に樽印刷システム10を容易に組み込むことができる。
【0033】
本実施形態に係る樽印刷システム10では、印刷装置11は、ドロップオンデマンド方式のフルカラーインクジェットプリンタであることが好ましい。印刷装置11としてドロップオンデマンド式のフルカラーインクジェットプリンタを用いることで、プラスチックラベルと同等の美粧性を保有することができる。
【0034】
図3は、昇降回転装置を説明するための概略図である。
図3では樽100(B1,B2,B3)及び昇降回転装置12を円筒状に、インクドット群Pを斜線のハッチングに、それぞれ簡略化して図示している。本実施形態に係る樽印刷システム10では、印刷装置11は、インクジェットヘッドを有するインクジェットプリンタであり、樽印刷システム10は、搬送装置5によって搬送されてきた樽100を搬送装置5の搬送面から持ち上げながら樽100を樽100の中心軸Oを中心に回転させる昇降回転装置12を更に備え、インクジェットヘッド11aは、昇降回転装置12によって持ち上げられた樽100の側面に向いており、昇降回転装置12が、樽100を持ち上げながら回転させつつ、インクジェットヘッド11aが樽100の側面に印刷を行うことが好ましい。既設の樽詰システム1に大掛かりなレイアウト変更を必要とせず、印刷装置11及び昇降回転装置12を組み込むという細部の小規模な変更だけで印刷を実現することができる。
【0035】
昇降回転装置12は、樽100を把持する把持部と樽100を上下させる昇降部と回転部とを有することが好ましい。把持部は、樽100の所定の箇所を着脱自在に固定する機構である。樽100の所定の箇所は、特に限定されず、例えば、上スカート部102又は下スカート部103である。把持部による樽100の固定方法は、特に限定されず、例えば、係合、挟持又は吸着である。昇降部は、把持部を上下移動させる機構である。回転部は、把持部によって把持された樽100を樽100の中心軸Oを中心に回転させる機構である。樽100の中心軸Oは、樽100の上下方向に延びる軸であり、例えばスピアバルブの軸である。
【0036】
インクジェットヘッド11aは、昇降回転装置12によって持ち上げられた樽100の側面のうち印刷領域となる部分に向くように固定されている。そして、昇降回転装置12が樽100を持ち上げながら回転させている間にインクジェットヘッド11aが樽100の側面に向けてインクを吐出すると樽100の側面にインクドット群Pが付着して文字若しくは画像のいずれか一方又は両方が形成される。
【0037】
本実施形態に係る樽印刷システム10では、インクジェットヘッド11aの数は、1個であるか又は2個以上であってもよい。インクジェットヘッド11aが1個である場合、インクジェットヘッド11aを搬送装置5の搬送方向Xの左右のいずれか一方側に配置する。昇降回転装置12で樽100を回転させながら印刷を行うので、インクジェットヘッド11aが1個だけであっても効率的に印刷を施すことができる。また、省スペース化が可能となる。インクジェットヘッド11aが2個以上である場合、搬送装置5の搬送方向Xの左右のいずれか一方側に2個以上のインクジェットヘッド11aを並列させてもよいし、搬送装置5の搬送方向Xの左右の両側にそれぞれインクジェットヘッド11aを対向させて配置してもよい。搬送装置5の搬送方向Xの左右の両側にそれぞれインクジェットヘッド11aを対向させることで、樽100の両側面から同時に印刷することができるので、印刷時間を短縮することができる。
【0038】
次に、本実施形態に係る樽印刷方法を説明する。本実施形態に係る樽印刷方法は、リターナブルの金属製の樽に内容物を充填する樽詰システム1にて、樽の外表面に文字若しくは画像のいずれか一方又は両方を印刷する樽印刷方法であって、樽詰システム1は、樽の内面を洗浄し100℃以上の蒸気で殺菌する内洗装置3と、樽に内容物を充填する充填装置4と、を順に有し、この順に樽を搬送させる搬送装置5(5a,5b,5c,5d)を有しており、樽印刷方法は、内洗装置3において樽内に蒸気を導入する蒸気導入工程と、樽内に蒸気を導入することによって樽の外表面を加熱して樽の外表面を乾燥させる樽加熱乾燥工程と、乾燥した樽の外表面に水性インクを付着させるインク付着工程と、インク付着工程を経た樽が充填装置4に到達する前に樽の外表面に付着した水性インクが乾燥するインク乾燥工程と、を含む。
【0039】
蒸気導入工程では、内洗装置3によって樽内に殺菌のための蒸気が導入される。
【0040】
樽加熱乾燥工程では、蒸気導入工程で蒸気が導入されることで、樽の外表面に蒸気の熱が伝達して樽の外表面が加熱されることによって、樽の外表面に付着していた水滴が自然に蒸発除去される。樽加熱乾燥工程は、樽詰システム1における内洗装置3での殺菌工程と同時進行で行われてもよい。
【0041】
インク付着工程では、印刷装置11によって樽の外表面に水性インクが付着して所定の文字若しくは画像のいずれか一方又は両方が形成される。
【0042】
本実施形態に係る樽印刷方法では、インク付着工程は、樽の外表面温度が60~150℃となっている状態を保持している間に行うことが好ましい。視認性により優れた印刷面を形成することができる。樽の外表面温度が60℃未満では、充填装置4に到達するまでにインクが乾燥せずインクの密着性が劣る場合がある。樽の外表面温度が150℃を超えると、インクが濡れ拡がる前にインク中の水分が蒸発してしまい、視認性が低下する場合がある。インク付着工程における樽の外表面温度は、90~120℃であることがより好ましい。樽の外表面の温度は、例えば、温度センサで測定される。温度センサで測定した樽の外表面の温度を管理することで、インクの密着性を間接的に確認することができる。
【0043】
本実施形態に係る樽印刷方法では、インク付着工程は、
図3に示すように、水性インクをインクジェットヘッド11aから吐出する工程を含むことが好ましい。バリアブル印刷を実現できる。また、製版コストが不要なので、コスト削減を実現できる。
【0044】
本実施形態に係る樽印刷方法では、インク付着工程は、
図3に示すように、搬送装置5cによって搬送されてきた樽100(B1,B2,B3)を搬送装置5cの搬送面から持ち上げる工程と、持ち上げた樽100(B1,B2,B3)を樽100の中心軸Oを中心に回転させつつ、インクジェットヘッド11aで樽100(B1,B2,B3)の側面に印刷を行う工程と、印刷された樽100(B1,B2,B3)を搬送面上に戻す工程と、を含むことが好ましい。インク付着工程中、搬送装置5は稼働させたままとすることが好ましい。これによって、樽B2を昇降回転装置12で上昇回転させながらインクジェットヘッド11aからインクを吐出して樽の側面に所定形状のインクドット群Pを付着させた後、インクドット群Pが付着した樽B2を昇降回転装置12で下降させて搬送面上に戻す。そうすると、樽B2が搬送装置5によって樽B1の位置に移動すると同時に、樽B3が搬送装置5によって昇降回転装置12の直下に移動してくる。次いで、樽B3を昇降回転装置12で上昇回転させながらインクジェットヘッド11aからインクを吐出して樽の側面に所定形状のインクドット群Pを付着させた後、インクドット群Pが付着した樽B2を昇降回転装置12で下降させて搬送面上に戻す。この動作を繰り返すことで、樽詰システム1における樽100(B1,B2,B3)の流れを止めることなく、効率的に印刷をすることができる。インク付着工程に要する時間は、搬送装置5上の樽100(B1,B2,B3)の移動速度に応じて設定されることが好ましく、搬送装置5を流れてくる樽100(B1,B2,B3)のピッチが保持されるようなタイミングで樽100(B1,B2,B3)の昇降を行うことが好ましい。搬送装置5を流れてくる樽100(B1,B2,B3)のピッチは、具体的には内洗装置3から排出される樽100(B1,B2,B3)のピッチに同期している。
【0045】
インク付着工程では、樽の側面の全周にわたって印刷する場合、1個のインクジェットヘッド11aを用いて、昇降回転装置12で樽100を360°以上回転させることで樽の側面の全周にわたって印刷してもよいし、2個のインクジェットヘッド11aを搬送装置5の左右の両側に対向配置して、昇降回転装置12で樽100を180°回転させることで樽の側面の全周にわたって印刷してもよい。
【0046】
インク乾燥工程では、蒸気導入工程で樽内に導入された蒸気の熱によって加熱された樽の外表面に水性インクが付着することで水性インク中の水分が蒸発除去される。インク乾燥工程の初期段階又は全段階は、インク付着工程と同時進行で行われてもよい。水性インクは樽の外表面に付着すると樽の外表面上に濡れ拡がりながら水分が蒸発する。このため、水性インクを短時間で乾燥することができ、高いインク密着性が確保できる。また、インク乾燥のための工程を別途設ける必要がないので、より効率的に樽に印刷を行うことができる。
【0047】
本実施形態に係る樽印刷方法では、文字若しくは画像のいずれか一方又は両方は、意匠印刷を含むことが好ましい。樽を店舗内の客から見える場所に置いたり、一般家庭向けに販売したりするなど、見栄えの良さが求められる様々な用途にも好適に適用できる。本明細書において、意匠印刷とは、印刷内容が、例えば、商品名若しくは会社名などを示すロゴ、2次元コード、又は色彩、絵画、写真、イラスト若しくは模様などの意匠性を高めるためのデザインを含むことをいう。意匠印刷を樽の外表面にダイレクト印刷することで、プラスチックラベルレスとすることができる。コスト削減、環境調和性の向上、作業負荷の軽減が可能となる。また、本実施形態に係る樽印刷方法では、文字若しくは画像のいずれか一方又は両方は、意匠印刷に加えて、製造日、工場番号、ロット番号などのように単に文字、数字又は記号などを羅列した品質管理用印刷を更に含んでいてもよい。
【実施例0048】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」、「%」は、特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を示す。なお、添加部数は、固形分換算の値である。
【0049】
(実験例1)
図1に示す樽詰システム1において印刷装置11の好適な設置場所を確認するための実験を行った。実施例1では、樽詰システム1において、
図1に示すように内洗装置3と充填装置4との間の搬送装置5c沿いに印刷装置11と設置して搬送装置5cを通過する樽の外表面にインクジェットプリンタで文字及び画像を印刷し、印刷直後に樽を搬送装置5cから取り上げて試験を行った。比較例1では、樽詰システム1において、外洗装置2と内洗装置3との間の搬送装置5b沿いに印刷装置11を移動させて搬送装置5bを通過する樽の外表面に実施例1と同様にして文字及び画像を印刷し、印刷直後内洗装置3に入る前に樽を搬送装置5bから取り上げて試験を行った。実施例1及び比較例1の印刷後の樽について文字の視認性、耐水性及び洗浄性の評価を行った。評価結果は
図4に示す。印刷した文字及び画像は、視認性評価及び洗浄性評価では、文字として「キリンラガービール」(キリンラガーは登録商標)、「7L」及び「ビール」の文字を赤色で、画像として2次元コードを黒色でそれぞれ印刷した。耐水性評価では、実施例1は、文字として「キリン」(キリンは登録商標)及び「ビール」の文字を赤色で、比較例1は、文字として「ラガービール」、ロット番号を赤色でそれぞれ印刷した。
【0050】
(実験例2)
樽の外表面の温度と印刷された文字・画像の視認性、耐水性及び洗浄性を確認するための実験を行った。樽の外表面の温度が60℃、90℃、120℃となるように加熱し、樽の外表面にインクジェットプリンタで文字及び画像を印刷した。樽の外表面は、温度設定可能な恒温機の槽内に樽を放置することによって加熱した。また、樽の外表面の温度の測定は、接触型の温度センサによって測定した。評価結果は
図5に示す。印刷した文字及び画像は、視認性評価及び洗浄性評価では、文字として「キリンラガービール」(キリンラガーは登録商標)、「7L」及び「ビール」の文字を赤色で、画像として2次元コードを黒色でそれぞれ印刷した。耐水性評価では、60℃は、文字としてロット番号を想定した文字列を赤色で、画像として2次元コードを黒色でそれぞれ印刷し、90℃及び120℃は、文字として「キリン」(キリンは登録商標)及び「ビール」の文字を赤色でそれぞれ印刷した。
【0051】
(視認性試験)
視認性は、印刷直後の印刷された文字を目視で確認し、滲みがなく文字が確認できる場合を実用レベル(○)、滲んでいて文字が確認できない場合を実用不適レベル(×)と評価した。評価結果を
図4又は
図5に示す。
図4及び
図5には評価結果及び印刷部分の状態を示す画像を示した。
【0052】
(耐水性試験)
耐水性は、印刷直後の樽から印刷部分を含む部分を切り出して試験片とした。該試験片の印刷部分について、JIS L 0849:2013「摩擦に対する染色堅ろう度試験方法」に準じて、染色物摩擦堅牢度試験機(型式:RT-200、社名:日本TMC株式会社)を用いて染色堅ろう度試験を行い、印刷された文字の色落ちの有無及び摩擦用白綿布(以降、白布と称する。)への色移りの有無を確認した。色落ち・色移りがない場合を実用レベル(○)、色落ち・色移りが微少である場合を実用下限レベル(△)、色落ち・色移りが多い場合を実用不適レベル(×)と評価した。評価結果を
図4又は
図5に示す。
図4及び
図5には評価結果、染色堅ろう度試験後の印刷部分の状態を示す画像(右側の画像)及び染色堅ろう度試験後の白布の画像(左側の画像)を示した。
【0053】
(洗浄性試験)
洗浄性は、印刷後1ヶ月経過後の樽を外洗装置で洗浄して印刷された文字及び画像の状態を目視で確認した。印刷された文字及び画像が除去されていた場合を実用レベル(○)、印刷された文字及び画像が除去されていなかった場合を実用不適レベル(×)と評価した。評価結果を
図4又は
図5に示す。
図4及び
図5には評価結果及び印刷部分の状態を示す画像を示した。
【0054】
図4に示すように、実施例1は、視認性、耐水性及び洗浄性がいずれも実用レベルであった。実施例1について、
図4の視認性の画像を見ると、文字及び画像に滲みがなく鮮明であった。実施例1について、
図4の耐水性の右側の画像を見ると、印刷部分に色落ちはなく、耐水性の左側の画像を見ると、摩擦後の白布にはインクの色移りは見られなかった。実施例1について、
図4の洗浄性の画像を見ると、印刷された文字及び画像は洗浄後に除去されていることが確認された。これに対して、比較例1は、視認性評価において、外洗装置2での洗浄によって樽の外表面に水滴が付着していたので文字が滲んでいて実用不適レベルであった。比較例1について、
図4の視認性の画像を見ると、黒丸で囲った部分で文字の滲みが確認された。比較例1は、耐水性試験において色落ち・色移りがあり実用不適レベルであった。比較例1について、
図4の耐水性の右側の画像を見ると、印刷部分の「ラガービール」の文字が白布による摩擦によって色落ちしていることが確認され、耐水性の左側の画像を見ると、摩擦後の白布には印刷文字から色移りした赤色のインクの付着が確認された。比較例1は、洗浄性は実用レベルであった。また、
図5に示すように、樽の外表面の温度が60℃、90℃及び120℃のいずれにおいても視認性、耐水性及び洗浄性が実用レベルであった。
図4及び
図5では、グレー階調に処理した画像を示したが、グレー階調に処理する前のカラー画像によって、より正確に表現される。