(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044071
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ベルトコンベアフレームの延命方法
(51)【国際特許分類】
B65G 45/10 20060101AFI20240326BHJP
E21D 9/12 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B65G45/10 Z
E21D9/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149395
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(72)【発明者】
【氏名】桑田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】都築 健志
(72)【発明者】
【氏名】木下 増夫
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054DA04
(57)【要約】
【課題】ベルトコンベアフレームを延命する。
【解決手段】トラス構造体であるベルトコンベアフレーム2は、少なくとも、上弦材21、上弦材21の下方に位置する下弦材22、上弦材21と下弦材22とを連結する縦材23および斜材24、ならびに、上弦材21どうしまたは下弦材22どうしを連結する横材および水平斜材を有する。縦材23の下方かつ延長線上に新規縦材27を取り付け、新規縦材27に新規下弦材28を下弦材22に対して平行に取り付け、新規下弦材28どうしを連結する新規横材を取り付ける。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラス構造体であるベルトコンベアフレームを延命する方法であって、
前記ベルトコンベアフレームは、少なくとも、上弦材、前記上弦材の下方に位置する下弦材、前記上弦材と前記下弦材とを連結する縦材および斜材、ならびに、前記上弦材どうしまたは前記下弦材どうしを連結する横材および水平斜材を有し、
前記縦材の下方かつ延長線上に、新規縦材を取り付け、
前記新規縦材に新規下弦材を、前記下弦材に対して平行に取り付け、
前記新規下弦材どうしを連結する新規横材を取り付ける、ベルトコンベアフレームの延命方法。
【請求項2】
前記新規下弦材の少なくとも1つとして、断面がL字状でL字溝を有するL字断面材を用い、
前記L字断面材を、前記L字溝の開口を前記ベルトコンベアフレームの下方に向けて、取り付ける、請求項1に記載のベルトコンベアフレームの延命方法。
【請求項3】
前記新規下弦材の少なくとも1つとして、断面が四角形状で中空の角パイプを用いる、請求項1に記載のベルトコンベアフレームの延命方法。
【請求項4】
前記新規下弦材の少なくとも1つとして、断面がU字状でU字溝を有するU字断面材を用い、
前記U字断面材に、前記U字溝を塞ぐ板材を取り付ける、請求項1に記載のベルトコンベアフレームの延命方法。
【請求項5】
前記新規下弦材の少なくとも1つとして、断面がU字状でU字溝を有するU字断面材を用い、
前記U字断面材を、前記U字溝の開口を前記ベルトコンベアフレームの外側に向けて、取り付ける、請求項1に記載のベルトコンベアフレームの延命方法。
【請求項6】
前記新規下弦材の少なくとも1つとして、断面がL字状でL字溝を有するL字断面材を用い、
前記L字断面材に、前記L字溝を塞ぐ板材を取り付ける、請求項1に記載のベルトコンベアフレームの延命方法。
【請求項7】
前記新規下弦材の少なくとも1つとして、断面が三角形状の三角断面材を用いる、請求項1に記載のベルトコンベアフレームの延命方法。
【請求項8】
前記新規下弦材の少なくとも1つの上に、上方に向けて突出した断面形状を有する傘材を取り付ける、請求項2~5のいずれか1項に記載のベルトコンベアフレームの延命方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトコンベアフレームの延命方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、製鉄所において、各種の原料を搬送するために、ベルトコンベアが使用される。ベルトコンベアのフレーム(ベルトコンベアフレーム)は、トラス構造体である。
トラス構造体は、上弦材、下弦材、縦材、斜材、横材、水平斜材などの部材からなる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ベルトコンベアにおいて、原料は、ベルトコンベアフレーム(フレーム)の始端側から終端側に向けて、コンベアベルト(ベルト)によって搬送される。
ところで、原料の一部が、フレームの終端側でベルトから落ち切らずに付着し続け、フレームの始端側に戻る間に、下弦材などの部材に落下し、ダストとして堆積することがある。ダストが堆積すると、フレームの腐食の原因となる。
腐食が進行したフレームは更新(建て替え)する必要がある。しかし、製鉄所の敷地内には、そのようなフレームを有するベルトコンベアが多く存在するため、更新に要する費用を抑える観点から、可能な限り、フレームを延命することが求められる。
【0005】
本発明は、以上の点を鑑みてなされたものであり、ベルトコンベアフレームを延命することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した下記構成を採用することにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[8]を提供する。
[1]トラス構造体であるベルトコンベアフレームを延命する方法であって、上記ベルトコンベアフレームは、少なくとも、上弦材、上記上弦材の下方に位置する下弦材、上記上弦材と上記下弦材とを連結する縦材および斜材、ならびに、上記上弦材どうしまたは上記下弦材どうしを連結する横材および水平斜材を有し、上記縦材の下方かつ延長線上に、新規縦材を取り付け、上記新規縦材に新規下弦材を、上記下弦材に対して平行に取り付け、上記新規下弦材どうしを連結する新規横材を取り付ける、ベルトコンベアフレームの延命方法。
[2]上記新規下弦材の少なくとも1つとして、断面がL字状でL字溝を有するL字断面材を用い、上記L字断面材を、上記L字溝の開口を上記ベルトコンベアフレームの下方に向けて、取り付ける、上記[1]に記載のベルトコンベアフレームの延命方法。
[3]上記新規下弦材の少なくとも1つとして、断面が四角形状で中空の角パイプを用いる、上記[1]または[2]に記載のベルトコンベアフレームの延命方法。
[4]上記新規下弦材の少なくとも1つとして、断面がU字状でU字溝を有するU字断面材を用い、上記U字断面材に、上記U字溝を塞ぐ板材を取り付ける、上記[1]~[3]のいずれかに記載のベルトコンベアフレームの延命方法。
[5]上記新規下弦材の少なくとも1つとして、断面がU字状でU字溝を有するU字断面材を用い、上記U字断面材を、上記U字溝の開口を上記ベルトコンベアフレームの外側に向けて、取り付ける、上記[1]~[4]のいずれかに記載のベルトコンベアフレームの延命方法。
[6]上記新規下弦材の少なくとも1つとして、断面がL字状でL字溝を有するL字断面材を用い、上記L字断面材に、上記L字溝を塞ぐ板材を取り付ける、上記[1]~[5]のいずれかに記載のベルトコンベアフレームの延命方法。
[7]上記新規下弦材の少なくとも1つとして、断面が三角形状の三角断面材を用いる、上記[1]~[6]のいずれかに記載のベルトコンベアフレームの延命方法。
[8]上記新規下弦材の少なくとも1つの上に、上方に向けて突出した断面形状を有する傘材を取り付ける、上記[2]~[5]のいずれかに記載のベルトコンベアフレームの延命方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ベルトコンベアフレームを延命できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ベルトコンベアを模式的に示す側面図である。
【
図2】ベルトコンベアを模式的に示す底面図である。
【
図4】新規部材が取り付けられたベルトコンベアフレームの一部を拡大して示す断面図である。
【
図6】ベルトコンベアフレームに新規部材が取り付けられたベルトコンベアを模式的に示す側面図である。
【
図7】ベルトコンベアフレームに新規部材が取り付けられたベルトコンベアを模式的に示す底面図である。
【
図8】ベルトコンベアフレームの変形例を模式的に示す側面図である。
【
図9】新規部材が取り付けられたベルトコンベアフレーム(変形例A1)の一部を拡大して示す断面図である。
【
図10】新規部材が取り付けられたベルトコンベアフレーム(変形例A2)の一部を拡大して示す断面図である。
【
図11】新規部材が取り付けられたベルトコンベアフレーム(変形例A3)の一部を拡大して示す断面図である。
【
図12】新規部材が取り付けられたベルトコンベアフレーム(変形例A4)の一部を拡大して示す断面図である。
【
図13】新規部材が取り付けられたベルトコンベアフレーム(変形例B1)の一部を拡大して示す断面図である。
【
図14】新規部材が取り付けられたベルトコンベアフレーム(変形例B2)の一部を拡大して示す断面図である。
【
図15】新規部材が取り付けられたベルトコンベアフレーム(変形例B3)の一部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〈ベルトコンベアフレームの基本構成〉
まず、
図1~
図2に基づいて、トラス構造体であるベルトコンベアフレーム2の基本構成を説明する。
図1は、ベルトコンベア1を模式的に示す側面図である。
図2は、ベルトコンベア1を模式的に示す底面図である。
図1~
図2には、ベルトコンベア1を構成する主要な部材のみを示す。ベルトコンベア1は、ベルトコンベアフレーム2およびコンベアベルト3を主体に構成されており、例えば、製鉄所に設置されている。
【0011】
ベルトコンベアフレーム2(以下、単に「フレーム2」ともいう)は、上弦材21、下弦材22、縦材23、斜材24、横材25、水平斜材26などの直線状に延びた部材(一方向に長い部材)によって構成される。これらの部材としては、例えば、断面がL字の鋼材が挙げられる。
【0012】
上弦材21と、その下方に位置する下弦材22とは、互いに平行に配置されている。
隣接する上弦材21どうし(および、隣接する下弦材22どうし)も、互いに平行に配置されている。
【0013】
縦材23および斜材24は、上弦材21と、その下方に位置する下弦材22とを連結する。縦材23は、上弦材21および下弦材22に対して垂直に配置され、斜材24は、上弦材21および下弦材22に対して斜めに配置されている。
【0014】
横材25および水平斜材26は、隣接する上弦材21どうし、または、隣接する下弦材22どうしを連結する。
図2には、下弦材22どうしを連結する横材25および水平斜材26が示されている。
図2に示すように、横材25は、下弦材22(上弦材21)に対して垂直に配置され、水平斜材26は、下弦材22(上弦材21)に対して斜めに配置されている。
【0015】
コンベアベルト3は、いわゆるエンドレスベルトであって、フレーム2の両端側に配置された一対のプーリ4によって、回転自在に支持されている。
プーリ4が回転することにより、コンベアベルト3も回転し、搬送される。
図1中、プーリ4およびコンベアベルト3は、左回りに回転する。
【0016】
コンベアベルト3の一部(便宜的に「ベルト3a」と呼ぶ)に着目して、ベルトコンベア1を用いた原料5の搬送について、説明する。
まず、フレーム2の始端側(
図1中の右側)で、ベルト3aの一面であるA面(符号Aで示す)に、原料5が載せられる。
原料5をA面に載せたベルト3aは、A面とは反対側のB面(符号Bで示す)をキャリアローラ6に支持されながら搬送されて、フレーム2の終端側(
図1中の左側)で折り返される。この折り返しの際に、ベルト3aのA面から原料5が落下する。こうして、原料5の搬送が終了する。
フレーム2の終端側で折り返されたベルト3aは、今度は、A面をリターンローラ7に支持されながら、フレーム2によって形成される空間8の内部を搬送されて、フレーム2の始端側に戻る。
【0017】
〈ダスト〉
ところで、ベルト3aがフレーム2の終端で折り返されるときに、原料5の一部がA面から落ち切らずに付着し続け、ベルト3aが空間8の内部を搬送される間に、A面から、ダスト9(
図3参照)として落下する。
【0018】
図3は、
図1のX-X線断面図である。ただし、
図3において、斜材24、水平斜材26、リターンローラ7などの図示は省略している。
ダスト9の落下が繰り返されることにより、
図3に示すように、フレーム2を構成する下弦材22などの部材に、ダスト9が付着して堆積する。ダスト9の堆積は、これらの部材(ひいては、フレーム2)が腐食する原因となる。
【0019】
フレーム2の腐食が進行すると、操業上の種々の問題が生じる。このため、腐食が進行したフレーム2は更新(建て替え)する必要がある。
しかし、そのようなフレーム2を有するベルトコンベア1は多いので、更新に要する費用を抑える観点から、フレーム2を更新しないで、延命することが求められる。
【0020】
そこで、次に、
図4~
図7に基づいて、本実施形態のフレーム2の延命方法(「本延命方法」ともいう)について説明する。本延命方法は、概略的には、フレーム2に新規部材(後述する新規下弦材28など)を取り付ける方法である。
【0021】
〈ベルトコンベアフレームの延命方法〉
図4は、新規部材が取り付けられたベルトコンベアフレーム2の一部を拡大して示す断面図である。
図5は、
図4のY-Y線断面図である。
【0022】
本延命方法では、まず、縦材23を下方に延長する。具体的には、既設の縦材23の下方かつ延長線上に、新規縦材27を取り付ける。次いで、新規縦材27に、新規下弦材28を、既設の下弦材22に対して平行に取り付ける。
【0023】
更に、本延命方法では、隣接する新規下弦材28どうしを連結する新規横材29を取り付ける。新規横材29は、例えば、既設の横材25に対して平行に取り付けられる。
【0024】
加えて、本延命方法では、隣接する新規下弦材28どうしを連結する新規水平斜材30を取り付けてもよい。新規水平斜材30は、例えば、既設の水平斜材26に対して平行に取り付けられる。
【0025】
なお、「延長線上」とは、本発明が属する技術分野において、実質的に、延長線上とみなしても差し支えない範囲(誤差範囲)を含む概念である。
同様に、「平行」とは、本発明が属する技術分野において、実質的に、平行とみなしても差し支えない範囲(誤差範囲)を含む概念である。
【0026】
新規部材(新規縦材27、新規下弦材28、新規横材29および新規水平斜材30)としては、下弦材22、縦材23などの既設部材と同様に、直線状に延びた一方向に長い部材(例えば、断面がL字の鋼材)を用いることが好ましい。
新規部材は、例えば溶接によって、既設部材(または、別の新規部材)に取り付けられる。溶接方法としては、特に限定されず、従来公知の溶接方法を適宜採用できる。
なお、既設部材および新規部材ともに、いわゆる定尺品で使用することが好ましい。これにより、溶接個所を最小限に抑えることができる。
【0027】
図4に示すように、本延命方法においては、板状の補強材31を用いて、既設部材(例えば縦材23)と新規部材(例えば新規縦材27)との接続を強化してもよい。補強材31の素材は、既設部材および新規部材と同じ素材が好ましい。
【0028】
図6は、ベルトコンベアフレーム2に新規部材が取り付けられたベルトコンベア1を模式的に示す側面図である。
図7は、ベルトコンベアフレーム2に新規部材が取り付けられたベルトコンベア1を模式的に示す底面図である。
新規縦材27および新規下弦材28には、既設の斜材24と同様に、新規斜材(図示せず)を取り付けてもよい。このとき、フレーム2に曲げモーメントが発生しないように、目板(図示せず)を介して取り付けることが好ましい。
【0029】
図8は、ベルトコンベアフレーム2の変形例を模式的に示す側面図である。
フレーム2の端部は、
図8に示すように、支柱10によって下方から支持されている場合がある。この場合、フレーム2の端部においては、縦材23を下方に延長することは難しい。つまり、既存の縦材23の下方に、新規縦材27を取り付けることは難しい。
そこで、この場合は、例えば、
図8に示すように、新規下弦材28を、フレーム2の中央部から端部に向かい次第に立ち上がる形状にする。そして、このような形状の新規下弦材28に、新規横材29および新規水平斜材30を取り付ける。これにより、フレーム2の端部においても、支柱10を避けつつ、新規部材を取り付けることができる。
【0030】
以上説明したように、本延命方法によれば、フレーム2に、新規部材(新規縦材27、新規下弦材28、新規横材29および新規水平斜材30)が取り付けられ、フレーム2が補強される。
例えば、フレーム2の既設部材である下弦材22が腐食している場合であっても、新規部材によって補強されることにより、下弦材22の強度が回復し、ひいては、フレーム2の全体的な強度が回復し、フレーム2が延命される。
【0031】
フレーム2に新規部材を取り付ける段階では、既設の下弦材22は、腐食が進行しており、十分な強度を持たない場合も考えられる。
そこで、本延命方法においては、新規下弦材28に加えて、新規横材29および新規水平斜材30を取り付ける。これにより、例えば風荷重および地震荷重などにも耐えうる強度が確保される。
【0032】
本延命方法において、上述した手順でフレーム2に新規部材を取り付ける場合、例えば、フレーム2の下方に足場を組み、この足場に作業者が乗り、溶接作業を実施する。
【0033】
もっとも、新規部材を取り付ける作業手順は、上述した手順に限定されない。
例えば、あらかじめ、新規部材どうしを低所で溶接して組み上げてもよい。この場合、組み上げた新規部材をフレーム2まで吊り上げ、作業者が高所作業車に乗り、更に必要な溶接作業(組み上げた新規部材をフレーム2に溶接する作業)を実施する。
これにより、足場を組む費用および工期を省略できる。
【0034】
いずれの作業手順であっても、本延命方法において、フレーム2に新規部材を取り付ける作業は、フレーム2の外部での作業になるため、ベルトコンベア1の長期間の操業停止を必要とせず、減産を伴わずに、フレーム2を延命できる。
【0035】
ところで、フレーム2を延命する方法としては、フレーム2を構成する各部材を新たな部材に交換する方法が挙げられる(例えば、特許文献1を参照)。
しかしながら、この方法を採用する場合、フレーム2のトラス構造体としての断面係数が下がる等の理由から、ベルトコンベア1の操業を停止して作業する必要がある。場合によっては、ベルトコンベア1の長期間の操業停止が必要となり、減産を伴う。
これに対して、上述したように、本延命方法によれば、ベルトコンベア1の長期間の操業停止を必要とせず、減産を伴わずに、フレーム2を延命できる。
【0036】
〈新規下弦材の変形例〉
次に、新規下弦材28に対するダスト9の堆積を抑制する方法を説明する。
概略的には、
図9~
図15に示すように、新規部材である新規下弦材28の少なくとも1つについて、その形状および/または取り付け方を工夫する。
【0037】
《変形例A1》
図9は、新規部材が取り付けられたベルトコンベアフレーム2(変形例A1)の一部を拡大して示す断面図である。
変形例A1では、
図4~
図5に示したフレーム2と同様に、下弦材22および新規下弦材28として、断面がL字状のL字断面材が用いられている。このため、下弦材22はL字溝41を有し、同様に、新規下弦材28もL字溝42を有する。
下弦材22のL字溝41の開口は、フレーム2の上方に向いている。このため、下弦材22のL字溝41には、ダスト9が堆積しやすい。
これに対して、新規下弦材28のL字溝42の開口は、フレーム2の下方に向いている。このため、新規下弦材28は、ダスト9と接触する面積が下弦材22よりも減少している。
【0038】
なお、以下に説明する変形例では、いずれも、変形例A1と同様に、下弦材22としては、L字断面材が用いられ、L字溝41の開口は、フレーム2の上方に向いている。
【0039】
《変形例A2》
図10は、新規部材が取り付けられたベルトコンベアフレーム2(変形例A2)の一部を拡大して示す断面図である。
変形例A2では、新規下弦材28として、断面が四角形状で中空の角パイプが用いられている。この場合も、新規下弦材28は、ダスト9と接触する面積が下弦材22よりも減少している。
【0040】
《変形例A3》
図11は、新規部材が取り付けられたベルトコンベアフレーム2(変形例A3)の一部を拡大して示す断面図である。
変形例A3では、新規下弦材28として、断面がU字状のU字断面材が用いられている。このため、新規下弦材28はU字溝43を有する。
U字断面材である新規下弦材28は、U字溝43の開口をフレーム2の内側(
図11中の右側)に向けて配置されている。このままでは、U字溝43の内部に、ダスト9が入りやすい可能性がある。
しかし、変形例A3では、新規下弦材28には、U字溝43を塞ぐ板材32を取り付ける。これにより、U字溝43の内部にダスト9が入ることが防止されている。
板材32の素材としては、特に限定されず、樹脂などであってもよい。板材32を新規下弦材28に取り付ける方法も、特に限定されず、従来公知の方法を適宜採用できる。
変形例A3においても、新規下弦材28は、ダスト9と接触する面積が下弦材22よりも減少している。
【0041】
《変形例A4》
図12は、新規部材が取り付けられたベルトコンベアフレーム2(変形例A4)の一部を拡大して示す断面図である。
変形例A4では、変形例A3(
図11)と同様に、新規下弦材28として、U字溝43を有するU字断面材が用いられている。
もっとも、変形例A4においては、U字断面材である新規下弦材28は、U字溝43の開口をフレーム2の外側(
図12中の左側)に向けて配置されている。このため、U字溝43の内部には、ダスト9が入りにくい。
変形例A4においても、新規下弦材28は、ダスト9と接触する面積が下弦材22よりも減少している。
【0042】
上述したように、変形例A1~A4(
図9~
図12)においては、新規下弦材28は、ダスト9と接触する面積が下弦材22よりも減少している。
このため、新規下弦材28は、下弦材22よりもダスト9の堆積による腐食(肉減)の速度を抑制でき、老朽化を遅延できる。
【0043】
《変形例B1》
図13は、新規部材が取り付けられたベルトコンベアフレーム2(変形例B1)の一部を拡大して示す断面図である。
変形例B1では、
図4~
図5に示したフレーム2と同様に、下弦材22および新規下弦材28としてL字断面材が用いられ、向きも
図4~
図5と同じである。すなわち、新規下弦材28のL字溝42の開口は、フレーム2の上方を向いている。このままでは、L字溝42の内部に、ダスト9が入りやすい可能性がある。
しかし、変形例B1では、新規下弦材28には、L字溝42を塞ぐ板材33を取り付ける。これにより、L字溝42の内部にダスト9が入ることが防止されている。
板材33の素材としては、特に限定されず、樹脂などであってもよい。板材33を新規下弦材28に取り付ける方法も、特に限定されず、従来公知の方法を適宜採用できる。
変形例B1においては、板材33が傾斜して配置されており、これにより、新規下弦材28に対するダスト9の堆積が防止される。
【0044】
《変形例B2》
図14は、新規部材が取り付けられたベルトコンベアフレーム2(変形例B2)の一部を拡大して示す断面図である。
変形例B2では、新規下弦材28として、断面が三角形状の三角断面材を用いる。
すなわち、変形例B2においては、新規下弦材28そのものが傾斜面を有しており、これにより、変形例B1と同様に、新規下弦材28に対するダスト9の堆積が防止される。
【0045】
《変形例B3~B6》
図15は、新規部材が取り付けられたベルトコンベアフレーム2(変形例B3)の一部を拡大して示す断面図である。
変形例B3~B6では、それぞれ、上述した変形例A1~A4(
図9~
図12)の新規下弦材28の上面に、上方に向けて突出した断面形状を有する傘材34を取り付ける。
図15には、代表的に、変形例A1(
図9)の新規下弦材28に傘材34を取り付けた状態を示している。
傘材34の素材としては、特に限定されず、樹脂などであってもよい。傘材34を新規下弦材28に取り付ける方法も、特に限定されず、従来公知の方法を適宜採用できる。
変形例B3~B6においては、新規下弦材28の上面に配置された傘材34が傾斜面を有しており、これにより、新規下弦材28に対するダスト9の堆積が防止される。
【0046】
上述したように、変形例B1~B6(
図13~
図15)においては、新規下弦材28に対するダスト9の堆積が防止される。
このため、変形例B1~B6における新規下弦材28は、ダスト9と接触する面積が非常に小さく、上述した変形例A1~A4(
図9~
図12)と比べて、ダスト9の堆積による腐食(肉減)の速度をより抑制でき、老朽化をより遅延できる。
【実施例0047】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施例に限定されない。
【0048】
〈比較例1~2および発明例1〉
図1~
図2に基づいて説明したものと同様のベルトコンベアについて、腐食が進行したベルトコンベアフレーム(フレーム)を、次のように、更新または延命した。
【0049】
比較例1では、フレームを一式更新した。すなわち、比較例1では、新たなフレームを新規に作製し、腐食が進行したフレームと交換した。このとき、腐食が進行したベルトコンベアの操業を停止してから、新たに作製したフレームと交換した。
【0050】
比較例2では、フレームを部分更新した。すなわち、比較例2では、腐食が進行したフレームの下弦材のみを、新たな下弦材に交換した場合を比較例2とした。比較例2でも、下弦材を交換する際に、ベルトコンベアの操業を停止した。
【0051】
発明例1では、フレームを更新しないで延命した。すなわち、発明例1では、腐食が進行したフレームに、上述した本延命方法に基づいて、新規部材を取り付けた。発明例1では、新規部材を取り付ける際に、ベルトコンベアの操業を、ほとんど停止しなかった。
【0052】
比較例1~2および発明例1の評価結果を、下記表1に示す。下記表1中の「×」、「△」、「○」および「◎」の記号は、前から後に行くに従い、好ましい評価結果であることを示す。
【0053】
【0054】
上記表1に示すように、フレームを一式更新した比較例1では、更新後のフレームの寿命は、比較例2および発明例1よりも良好であった(寿命:◎)。
しかし、比較例1では、新たなフレームを新規に作製したことから、比較例2および発明例1より多くの費用がかかった(費用:×)。
また、更新に際してベルトコンベアの操業を停止したことから、更新には多くの時間を要した(時間:△)。具体的には、144時間を要した。
【0055】
また、上記表1に示すように、フレームを部分更新した比較例2では、比較例1よりも、更新に必要な費用を、抑制できた(費用:○)。
しかし、比較例1と同様に、更新に際してベルトコンベアの操業を停止したことから、更新には多くの時間を要した(時間:△)。具体的には、比較例1と同様に、144時間を要した。
【0056】
これに対して、上記表1に示すように、発明例1では、フレームに新規部材を取り付ける際に、ベルトコンベアの操業停止は最小限であり、フレームを延命するのに要した時間は、40時間と非常に短かった(時間:○)。加えて、新たなフレームを新規に作製した比較例1と比べて、費用を抑制できた(費用:○)。
以上のことから、発明例1の総合評価は、比較例1~2よりも良好な「◎」とした。
【0057】
〈比較例3および発明例2〉
図1~
図2に基づいて説明したものと同様のベルトコンベアフレーム(フレーム)について、新規部材を取り付ける前のフレームを比較例3とし、上述した本延命方法に基づいて新規部材を取り付けたフレームを発明例2とした。
なお、フレームは、上方の横材(上弦材どうしを連結する横材)から下方の横材(下弦材どうしを連結する横材)までの距離が1000mmであり、発明例2では、新規下弦材を、既設の下弦材の350mm下方に取り付けた。
比較例3および発明例2のフレームについて、それぞれ、断面係数(単位:cm
3)を求めた。結果を下記表2に示す。
【0058】
【0059】
上記表2に示すように、比較例3のフレームの断面係数を1とした場合に、発明例2では、フレームの断面係数を1.38倍に上昇できた。
すなわち、発明例2では、新規部材を既設部材に取り付けることにより、トラス構造体としてのフレームの強度を向上できた。
【0060】
〈発明例3~5〉
図1~
図2に基づいて説明したものと同様のベルトコンベアフレーム(フレーム)について、上述した本延命方法に基づいて新規部材を取り付けた。
このとき、新規下弦材としてL字断面材を用い、そのL字溝をフレームの上方に向けて取り付けた場合(
図4~
図5参照)を、発明例3とした。
新規下弦材としてL字断面材を用い、そのL字溝をフレームの下方に向けて取り付けた場合、つまり、変形例A1(
図9参照)を発明例4とした。
新規下弦材としてL字断面材を用い、そのL字溝をフレームの下方に向けて取り付け、更に、傘材も取り付けた場合、つまり、変形例B3(
図15参照)を発明例5とした。
【0061】
まず、発明例3~4について、ダストの堆積により、新規下弦材を2mm肉減させた。
この場合において、発明例3(
図4~
図5参照)では、新規下弦材の断面係数は、当初の値から31%減少した。
これに対して、発明例4(変形例A1、
図9参照)では、新規下弦材の断面係数は、8%の減少に留まった。発明例4では、発明例3よりも、新規下弦材がダストと接触する面積が減少したことに伴い、肉減の速度を抑制でき、断面係数の減少を抑制できたと考えられる。変形例A2~A4(
図10~
図12)においても、同様の効果が期待できる。
【0062】
次に、発明例3および5について、新規下弦材の上面にダストを堆積させた。
このとき、発明例3(
図4~
図5参照)では、新規下弦材の全長に渡ってダストが堆積した。
これに対して、発明例5(変形例B3、
図15参照)では、新規下弦材の上面に傘材が配置されていることによって、新規下弦材の上面にはダストが堆積しなかった(ダストは、新規横材の上面のみに堆積した)。このため、新規下弦材の老朽化の抑制が期待できる。同じく傘材を用いる変形例B4~B6においても、同様の効果が期待できる。
1:ベルトコンベア、2:ベルトコンベアフレーム(フレーム)、3、3a:コンベアベルト(ベルト)、4:プーリ、5:原料、6:キャリアローラ、7:リターンローラ、8:空間、9:ダスト、10:支柱、21:上弦材、22:下弦材、23:縦材、24:斜材、25:横材、26:水平斜材、27:新規縦材、28:新規下弦材、29:新規横材、30:新規水平斜材、31:補強材、32:板材、33:板材、34:傘材、41:L字溝、42:L字溝、43:U字溝