(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044075
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】熱接着テープ、並びに布製品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20240326BHJP
D06M 17/00 20060101ALI20240326BHJP
C09J 7/25 20180101ALI20240326BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C09J7/38
D06M17/00 G
D06M17/00 B
C09J7/25
C09J133/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149399
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000115304
【氏名又は名称】ユニ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 俊晴
(72)【発明者】
【氏名】橋 雅夫
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
4L032
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC02
4J004CE03
4J004DB02
4J004EA05
4J040DF031
4J040JB09
4J040MA10
4J040MB02
4J040PA30
4L032AB01
4L032AC01
4L032BA09
4L032BB03
4L032BD01
4L032BD03
4L032DA01
4L032EA00
(57)【要約】
【課題】熱接着テープによる接着強度を維持しつつ、熱接着テープによって接着された布製品の風合いに関して改善された熱接着テープを提供する。
【解決手段】熱融着層1、及び熱融着層1の両方の面上に部分的に配置されている粘着層2を有する、熱接着テープ10であって、熱融着層1のそれぞれ面上における粘着層2の被覆割合が30面積%~90面積%であり、かつ熱融着層1の100%モジュラスが5Mpa以上である、熱接着テープ10とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱融着層、及び前記熱融着層の両方の面上に部分的に配置されている粘着層を有する、熱接着テープであって、
前記熱融着層のそれぞれ前記面上における前記粘着層の被覆割合が30面積%~90面積%であり、かつ
前記熱融着層の100%モジュラスが5Mpa以上である、
熱接着テープ。
【請求項2】
前記熱融着層がポリアミド系樹脂で構成されている、請求項1に記載の熱接着テープ。
【請求項3】
前記粘着層が、前記熱融着層の両方の面上に、ストライプ状、格子状、又はドット状で配置されている、請求項1に記載の熱接着テープ。
【請求項4】
前記粘着層がアクリル系粘着層である、請求項1に記載の熱接着テープ。
【請求項5】
少なくとも一方の前記粘着層に貼り付けられている剥離シートを更に有する、請求項1に記載の熱接着テープ。
【請求項6】
布を有する布製品であって、
請求項1に記載の熱接着テープが、前記布の一部と他の一部との間に挿入されており、かつ前記熱接着テープが、前記布の一部と他の一部とに熱融着しており、それによって前記布の一部と他の一部とが互いに接合されている、布製品。
【請求項7】
請求項1に記載の熱接着テープを、前記布製品の布の一部と他の一部との間に挿入し、前記布の一部と他の一部との間で前記熱接着テープを前記粘着層により仮止めし、そして加熱及びプレスにより、前記熱接着テープを、前記布の一部と他の一部とに融着させることによって、前記布の一部と他の一部とを互いに接合する、請求項6に記載の布製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱接着テープ、特に布製品を構成する布を熱融着により接合させるための布用熱接着テープに関する。また、本発明は、このような熱接着テープを用いて接合した布製品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、熱接着テープは裾上げテープ等に代表されるように熱融着層のみで構成され、布と布との間に挿入され、挿入後、加熱及びプレスさせることにより、布と布とを接合させるものである。このような熱接着テープを布と布の間に挿入させるときには、熱接着テープや布のズレが生じやすいという問題があった。
【0003】
このような問題に対して、特許文献1では、熱融着層を有する熱接着テープであって、熱融着層の少なくとも片面上に粘着性の素材を部分的に配した熱接着テープを提案している。この特許文献1では、このような熱接着テープによれば、熱融着層の上に粘着性の素材が部分的に配されているため、接着強度を維持したまま、布の上に乗せたときのテープの滑りが防止され、熱接着作業時の作業性を向上させることが可能である、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の熱接着テープによれば、熱融着層の上の粘着性の素材によって、熱接着作業時の作業性を向上させることが可能である。しかしながら、このような熱接着テープで作業性が悪く、さらに接着された布製品では、接着強度又は接着箇所の風合い等に関して改善の余地があった。
【0006】
したがって、本発明では、熱接着テープによる接着強度を維持しつつ、熱接着テープによって接着された布製品の風合いに関して改善された熱接着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討したところ、以下の手段により上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記のとおりである:
【0008】
〈態様1〉
熱融着層、及び前記熱融着層の両方の面上に部分的に配置されている粘着層を有する、熱接着テープであって、
前記熱融着層のそれぞれ前記面上における前記粘着層の被覆割合が30面積%~90面積%であり、かつ
前記熱融着層の100%モジュラスが5Mpa以上である、
熱接着テープ。
〈態様2〉
前記熱融着層がポリアミド系樹脂で構成されている、態様1に記載の熱接着テープ。
〈態様3〉
前記粘着層が、前記熱融着層の両方の面上に、ストライプ状、格子状、又はドット状で配置されている、態様1又は2に記載の熱接着テープ。
〈態様4〉
前記粘着層がアクリル系粘着層である、態様1~3のいずれか一項に記載の熱接着テープ。
〈態様5〉
少なくとも一方の前記粘着層に貼り付けられている剥離シートを更に有する、態様1~4のいずれか一項に記載の熱接着テープ。
〈態様6〉
布を有する布製品であって、
態様1~4のいずれか一項に記載の熱接着テープが、前記布の一部と他の一部との間に挿入されており、かつ前記熱接着テープが、前記布の一部と他の一部とに熱融着しており、それによって前記布の一部と他の一部とが互いに接合されている、布製品。
〈態様7〉
態様1~4のいずれか一項に記載の熱接着テープを、前記布製品の布の一部と他の一部との間に挿入し、前記布の一部と他の一部との間で前記熱接着テープを前記粘着層により仮止めし、そして加熱及びプレスにより、前記熱接着テープを、前記布の一部と他の一部とに融着させることによって、前記布の一部と他の一部とを互いに接合する、態様6に記載の布製品の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱接着テープによれば、熱接着テープによる接着強度及び優れた作業性を維持しつつ、熱接着テープによって接着された布製品の接着強度、風合い、対洗濯性、耐ドライクリーニング性等を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の熱接着テープの一例についての、上面図(
図1(a))、及び
図1(a)の(b)-(b)で示す部分の断面図(
図1(b))である。
【
図2】本発明の熱接着テープの他の一例についての、上面図(
図2(a))、及び
図2(a)の(b)-(b)で示す部分の断面図(
図2(b))である。
【
図3】従来の熱接着テープの他の一例についての、上面図(
図3(a))、及び
図3(a)の(b)-(b)で示す部分の断面図(
図3(b))である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
《熱接着テープ》
本発明の熱接着テープは、熱融着層、及び熱融着層の両方の面上に部分的に配置されている粘着層を有する。本発明の熱接着テープでは、熱融着層のそれぞれ面上における粘着層の被覆割合が30面積%~90面積%である。また、本発明の熱接着テープでは、熱融着層の100%モジュラスが5Mpa以上であり、かつ好ましくは熱融着層がポリアミド系樹脂で構成されている。
【0012】
本発明の熱接着テープによれば、熱融着層が上記の条件を満たすことによって、布に熱融着させたときに、高い接着性を提供することができる。
【0013】
また、本発明の熱接着テープによれば、熱融着層のそれぞれ面上における粘着層の被覆割合が30面積%以上であること、すなわち粘着層による被覆割合が従来の熱接着テープよりも比較的大きい範囲であることによって、粘着層による仮止めを可能にするのと合わせて、熱融着層と布とが直接に熱融着する部分の割合を制限し、それによって熱接着テープによって接着された布の風合いを維持すること、すなわちテープ感のない縫製したようなしっかり感としなやかさを提供することができる。
【0014】
また、本発明の熱接着テープによれば、熱融着層のそれぞれ面上における粘着層の被覆割合が90面積%以下であること、すなわち粘着層による被覆割合が過度に大きくない範囲であることによって、粘着層による仮止めを可能にするのと合わせて、熱融着層と布とが直接に熱融着する部分が存在するようにし、それによって布に熱融着させたときに、高い接着性を提供することができる。
【0015】
すなわち、本発明の熱接着テープによれば、比較的高強度な樹脂で構成されている熱融着層のそれぞれ面上における粘着層の被覆割合が比較的大きいことによって、粘着層による仮止めを可能にするのと合わせて、布に熱融着させたときに、熱融着層と布とが直接に熱融着する強接着部分と、熱融着層と布とが粘着層を介して熱融着する弱接着部分とが適度な割合で存在するようにし、それによって高い接着性と布の良好な風合いとを両立することができる。
【0016】
具体的には例えば、
図1及び2に示すように、本発明の熱接着テープ10、20は、熱融着層1、及び熱融着層1の両方の面上に部分的に配置されている粘着層2を有しており、熱融着層のそれぞれ面上における粘着層の被覆割合が30面積%~90面積%である。ここで、
図1に示す態様では、粘着層が、熱融着層の両方の面上において、熱接着テープの長さ方向に延在するストライプ状に配置されている、また、
図2に示す態様では、粘着層が、熱融着層の両方の面上において、ドット状に配置されている。
【0017】
これに対して、
図3に示すように、従来の熱接着テープ30は、熱融着層1、及び熱融着層1の両方の面上に部分的に配置されている粘着層2を有している。ここで、従来の熱接着テープでは一般に、粘着層が熱融着層と布との接着を妨げるとの考えに基づいて、融着層のそれぞれ面上における粘着層の被覆割合はできるだけ少なくなるようにされており、例えば10面積%~20面積%程度である。
【0018】
本発明の熱接着テープは、布製品の布同士を互いに接着するために好適に用いることができる。したがって、本発明の熱接着テープは、布用熱接着テープであってよい。布製品としては、布を有する任意の製品を挙げることができ、例えばファッション用衣類、ユニフォーム用衣類、スポーツ用衣類、和装等の衣類、カーテン、フトンカバー、ピロケース等の建寝装用品であってよい。したがって、布としては、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維や、綿、羊毛等の天然繊維を、単独又は2種以上用いた布、例えば織物、不織布、編み物を挙げることができる。
【0019】
(熱融着層)
本発明の熱接着テープでは、熱融着層の100%モジュラスが5Mpa以上であり、かつ好ましくは熱融着層がポリアミド系樹脂で構成されている。
【0020】
ポリアミド系樹脂は、熱融着層のベース樹脂であってよく、具体的には、熱融着層の50質量%超、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上を構成していてよい。熱融着層は例えば、ポリアミド系樹脂のフィルムであってよい。
【0021】
このベース樹脂としてのポリアミド系樹脂以外の成分としては、タッキファイヤー、ワックス、可塑剤、フィラー、安定剤を挙げることができる。タッキファイヤーは、布に対する濡れ性付与と低溶融粘度化のためのものであり、具体的には、ロジン、石油樹脂、テルペン樹脂を挙げることができる。ワックスは、低溶融粘度化と、硬さ、オープンタイム、ブロッキング性の抑制等のためのものであり、具体的には、パラフィンファックス、低分子量ポリエチレン等を挙げることができる。可塑剤は、低溶融粘度化、柔軟性、耐寒性向上等のためのものであり、具体的には、プロセスオイル、液状ポリブテン等を挙げることができる。フィラーは、コスト低減、熱膨率低減、ブロッキング性の制御等のためのものであり、具体的には、炭酸カルシウム、酸化チタン、タルク等を挙げることができる。安定剤は、加熱劣化(酸化)防止、耐久性付与等のためのものであり、具体的には、ヒンダードフェノール、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)等を挙げることができる。
【0022】
熱融着層は比較的大きい100%モジュラス(100%弾性率)を有することができ、例えば熱融着層の100%モジュラスは、5MPa以上、6MPa以上、7MPa以上、8MPa以上、9MPa以上、10MPa以上、11MPa以上、12MPa以上、13MPa以上、14MPa以上、15MPa以上、16MPa以上、17MPa以上、又は18MPa以上であってよく、また30MPa以下、25MPa以下、20MPa以下、19MPa以下、又は18MPa以下であってよい。
【0023】
ここで、「100%モジュラス」(「100%弾性率」とも言う)は、試験片に100%の伸びを与えたときの応力であり、JIS K 6251(2017)に準拠して測定できる。具体的には例えば、「100%モジュラス」は、ダンベル状3号形の試験片を作製し、作製した試験片を用いて、引張速度を500mm/min、試験温度を23℃として測定することができる。また、熱融着層が異方性を有する場合には、100%モジュラスが最大になる方向の100%モジュラスと、それに対して垂直な方向の100%モジュラスとの平均値を、熱融着層の100%モジュラスとすることができる。
【0024】
熱融着層は意図する用途に応じて任意の融点を有することができ、熱融着層の融点は、例えば70℃以上、75℃以上、80℃以上、85℃以上、90℃以上、95℃以上、100℃以上、又は105℃以上であってよく、また200℃以下、190℃以下、180℃以下、170℃以下、160℃以下、150℃以下、145℃以下、140℃以下、135℃以下、130℃以下、125℃以下、120℃以下、115℃以下、110℃以下、105℃以下、100℃以下、95℃以下、又は90℃以下であってよい。
【0025】
ここで、融点は、示差走査熱量計を用いて、JIS K7121:2012に準拠して測定することができる。具体的には、融点の測定ためには、約10mgの試料をアルミニウム製のセルに入れ、窒素雰囲気下において、10℃/minの加熱速度で20℃から融点より十分に高い温度(例えば、200℃)まで昇温し、その到達温度で10分間保持した後、10℃/minの冷却速度で20℃まで冷却する。その後、この昇温、保持及び冷却をもう一度繰り返し、2回目の昇温の際に観測される最大吸熱ピークの融解ピーク温度を求め、これを融点とすることができる。
【0026】
熱融着層は意図する用途に合わせて任意の引張強度を有することができ、例えば熱融着層の引張強度は、10MPa以上、12MPa以上、14MPa以上、16MPa以上、18MPa以上、20MPa以上、22MPa以上、24MPa以上、26MPa以上、又は28MPa以上であってよく、また50MPa以下、45MPa以下、40MPa以下、35MPa以下、30MPa以下、25MPa以下、又は20MPa以下であってよい。
【0027】
ここで、「引張強度」は、引張試験を行ったときに試験片に加えることができる最大引張応力であり、JIS K7127に準拠して測定することができる。具体的には、短冊状の試験片(長さ150mm×幅10mm)の端部を、精密万能試験機に、チャック間距離が50mmとなるように取り付け、チャック間の移動速度200mm/分にて移動を行い、その際に破断に要するまでの最大荷重を測定し、それを引張強度(MPa)とすることができる。また、熱融着層が異方性を有する場合には、引張強度が最大になる方向の引張強度と、それに対して垂直な方向の引張強度との平均値を、熱融着層の引張強度とすることができる。
【0028】
熱融着層は意図する用途に合わせて任意の引張伸度を有することができ、例えば熱融着層の引張伸度は、200%以上、220%以上、240%以上、260%以上、280%以上、300%以上、又は320%以上であってよく、また500%以下、480%以下、460%以下、440%以下、420%以下、400%以下、380%以下、360%以下、又は340%以下であってよい。
【0029】
ここで、「引張伸度」は、引張試験を行ったときに試験片が切れるまでの伸び率であり、JIS K7127に準拠して測定することができる。具体的には、短冊状の試験片(長さ150mm×幅10mm)の端部を、精密万能試験機に、チャック間距離が50mmとなるように取り付け、チャック間の移動速度200mm/分にて移動を行い、その際に破断に要するまでの最大伸度を測定し、それを引張伸度(%)とすることができる。また、熱融着層が異方性を有する場合には、引張伸度が最大になる方向の引張伸度と、それに対して垂直な方向の引張伸度との平均値を、熱融着層の引張伸度とすることができる。
【0030】
熱融着層は意図する用途に応じて任意の厚さを有することができ、熱融着層の厚さは、例えば10μm以上、30μm以上、50μm以上、70μm以上、100μm以上、150μm以上、200μm以上、300μm以上、400μm以上、又は500μm以上であってよく、また1,000μm以下、900μm以下、800μm以下、700μm以下、600μm以下、500μm以下、400μm以下、300μm以下、250μm以下、200μm以下、150μm以下、100μm以下、又は50μm以下であってよい。なお、熱融着層が厚さムラを有する場合、熱融着層の厚さとしては、平均厚さを採用することができる。
【0031】
(粘着層)
粘着層は任意の粘着剤で構成されていてよく、例えばアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、又はシリコン系粘着剤で構成されていてよく、特に耐候性、経済性、加工性の面から、アクリル系粘着剤で構成されていることが好ましい。
【0032】
熱融着層のそれぞれ面上における粘着層の被覆割合は、30面積%以上、35面積%以上、40面積%以上、45面積%以上、50面積%以上、55面積%以上、60面積%以上、65面積%以上、又は70面積%以上であってよく、また90面積%以下、85面積%以下、80面積%以下、75面積%以下、70面積%以下、65面積%以下、60面積%以下、55面積%以下、50面積%以下、又は45面積%以下であってよい。
【0033】
粘着層は、熱融着層のそれぞれ面上において、任意の形状で配置されていてよく、例えばストライプ状、格子状、又はドット状で、熱融着層上に分散した状態で配置されていてよく、特に熱接着テープの長さ方向に延在するストライプ状で、又はドット状で、配置されていてよい。また、粘着層がストライプ状で配置されている場合、ストライプは連続的なストライプであっても、断続的なストライプであってもよい。
【0034】
粘着層がストライプ状で配置されている場合、ストライプの幅は、0.2mm以上、0.4mm以上、0.6mm以上、0.8mm以上、1.0mm以上、1.2mm以上、又は1.4mm以上であってよく、また3.0mm以下、2.8mm以下、2.6mm以下、2.4mm以下、2.2mm以下、2.0mm以下、1.8mm以下、又は1.6mm以下であってよい。
【0035】
粘着層がドットで配置されている場合、ドットの直径(又は面積円相当直径)は、0.2mm以上、0.4mm以上、0.6mm以上、又は0.8mm以上であってよく、また3.0mm以下、2.8mm以下、2.6mm以下、2.4mm以下、2.2mm以下、2.0mm以下、1.8mm以下、1.6mm以下、1.4mm以下、1.2mm以下、又は1.0mm以下であってよい。
【0036】
粘着層は意図する用途に応じて任意の厚さを有することができ、粘着層の厚さは、例えば5μm以上、10μm以上、15μm以上、20μm以上、又は25μm以上であってよく、また100μm以下、90μm以下、80μm以下、70μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下、又は25μm以下であってよい。なお、粘着層が厚さムラを有する場合、粘着層の厚さとしては、粘着層が存在する部分の粘着層の平均厚さを採用することができる。
【0037】
粘着層を熱接着層上に配置する方法としては、粘着層を熱接着層上に直接にコーティングする方法がある。コーティング方法としては、コンマコーター、リバースロールコーターが均一性の面から優れているが、ストライプ状、格子状、ドット状等に分散した状態でコーティングできればよく、特に限定されるものではない。また、粘着層を熱接着層上に配置する他の方法としては、剥離シート上にコーティングなどで形成した粘着層を熱融着層上に転写する方法を挙げることもできる。
【0038】
(剥離シート)
本発明の熱接着テープは、少なくとも一方の粘着層に貼り付けられている剥離シートを更に有することができる。このような剥離シートを有する本発明の熱接着テープは、粘着層同士の粘着を防ぐために好ましく、特に一方の粘着層に貼り付けられている剥離シートを有する熱接着テープをロール状に丸めることが、本発明の熱接着テープの流通性、保管性、又は使用性に関して好ましいことがある。剥離シートは、一般に両面テープ等に用いられるものであってよく、紙の両面にポリエチレンやクレーコートで目止めし、そしてシリコーンを塗布したもの、グラシン紙の両面にシリコーンを塗布したもの等でよい。
【0039】
《布製品》
布を有する本発明の布製品では、本発明の熱接着テープが、布の一部と他の一部との間に挿入されており、かつ熱接着テープが、布の一部と他の一部とに熱融着しており、それによって布の一部と他の一部とが互いに接合されている。
【0040】
ここで、本発明の布製品の布、熱接着テープの詳細については、上記の記載を参照することができる。
【0041】
また、この布製品の製造方法では、本発明の熱接着テープを、布製品の布の一部と他の一部との間に挿入し、布の一部と他の一部との間で熱接着テープを粘着層により仮止めし、そして加熱及びプレスにより、熱接着テープを、布の一部と他の一部とに融着させることによって、布の一部と他の一部とを互いに接合する。
【0042】
ここで、この融着のための加熱は、布製品が許容でき、かつ熱接着テープを、布の一部と他の一部とに融着させることが可能な任意の温度で行うことができ、例えば熱融着層の融点が約110℃である場合には、中温(約160℃)のアイロンでプレスして行うことができる。
【実施例0043】
〈比較例1〉
比較例1の熱接着テープとして、市販のポリアミド系の熱可塑性ホットメルトフィルム(エルファン(商標)NT-120(日本マタイ株式会社))をそのまま用いた。
【0044】
〈比較例2〉
比較例1の熱接着テープを熱融着層として用い、その両方の面上に粘着層を部分的に提供して、比較例2の熱接着テープを得た。ここで、この粘着層は、粘着性アクリル樹脂によって、熱接着テープの長さ方向に延在する破断ストライプ状(ストライプ幅:1.5mm、ストライプ長さ:1mm、ストライプ長さ方向間隔:5mm、ストライプ幅方向間隔:0.5mm、厚さ:25μm)で、熱融着層の両面上に形成した。熱融着層のそれぞれ面上における粘着層の被覆割合は12.5面積%であった。
【0045】
〈実施例1〉
比較例1の熱接着テープを熱融着層として用い、その両方の面上に粘着層を部分的に提供して、実施例1の熱接着テープを得た。ここで、この粘着層は、粘着性アクリル樹脂によって、ドット状(ドット直径0.8mm、ドットピッチ:1.1mm、厚さ:25μm)で熱融着層の両面上に形成した。熱融着層のそれぞれ面上における粘着層の被覆割合は75面積%であった。
【0046】
〈実施例2〉
比較例1の熱接着テープを熱融着層として用い、その両方の面上に粘着層を部分的に提供した。ここで、この粘着層は、粘着性アクリル樹脂によって、熱接着テープの長さ方向に延在する連続ストライプ状(ストライプ幅:1.5mm、ストライプ幅方向間隔:0.5mm、厚さ:25μm)で熱融着層の両面上に形成した。熱融着層のそれぞれ面上における粘着層の被覆割合は75面積%であった。
【0047】
〈比較例3〉
比較例1の熱接着テープを熱融着層として用い、その両方の面上の全面に粘着層に提供した。ここで、この粘着層(厚さ:25μm)は、粘着性アクリル樹脂によって熱融着層の両面の全面に形成した。熱融着層のそれぞれ面上における粘着層の被覆割合は100面積%であった。
【0048】
〈比較例4〉
比較例1の熱接着テープ(ポリアミド系、エルファン(商標)NT-120(日本マタイ株式会社))の代わりに、市販のウレタン系の熱可塑性ホットメルトフィルム(エルファン(商標)UH-203(日本マタイ株式会社))を熱融着層として用いたことを除いて実施例2と同様に、粘着性アクリル樹脂によって連続ストライプ状の粘着層を熱融着層の両面上に形成した。熱融着層のそれぞれ面上における粘着層の被覆割合は75面積%であった。
【0049】
〈実施例3〉
比較例1の熱接着テープ(ポリアミド系、エルファン(商標)NT-120(日本マタイ株式会社))の代わりに、他の市販のポリアミド系の熱可塑性ホットメルトフィルム(ポリアミド系、エルファン(商標)NT-100(日本マタイ株式会社))を熱融着層として用いたことを除いて実施例2と同様に、粘着性アクリル樹脂によって連続ストライプ状の粘着層を熱融着層の両面上に形成した。熱融着層のそれぞれ面上における粘着層の被覆割合は75面積%であった。
【0050】
〈評価〉
実施例及び比較例の熱接着テープについて、下記の点で評価を行った。
【0051】
(作業性)
熱融着前に、綿布に対して熱接着テープを仮止め可能か否かを評価した。評価基準は下記のとおりであった。
〇:布を折って両面テープを貼っても、布の反発で剥がれが生じず、仮止めが可能であった。
×:布を折って両面テープを貼ったが、布の反発で剥がれが生じ、仮止めが不可能であった。
【0052】
(接着強度)
綿布/熱接着テープ/綿布の順で積層し、中温(約160℃)のアイロンで20秒間に渡ってプレスして、熱接着テープで綿布と綿布とを互いに接合させた。その後、定荷重剥離試験(T型剥離、長さ25mm×幅10mm、荷重1kg)を行って、アイロン接着をしたときの接着性(剥がれにくさ)を評価した。評価基準は下記のとおりであった。
◎:1000分での剥離長さが5mm以下
〇:1000分での剥離長さが5mm超25mm以下
×:1000分以下で落下
【0053】
(風合い(自然さ))
綿布/熱接着テープ/綿布の順で積層し、中温(約160℃)のアイロンで20秒間に渡ってプレスして、熱接着テープで綿布と綿布とを互いに接合させた。その後、接合部の自然さ、すなわち接合部におけるテープ感のなさについて評価した。評価基準は下記のとおりであった。
〇:接合部は縫製したようなしっかり感としなやかさのある風合いであった。
△:接合部にややテープ感があり、やや不自然な風合いであった。
×:接合部にテープ感があったり、柔らかすぎてしっかり感がなかったりして、不自然な風合いであった。
【0054】
(耐洗濯性)
綿布/熱接着テープ/綿布の順で積層し、中温(約160℃)のアイロンで20秒間に渡ってプレスして、熱接着テープで綿布と綿布とを互いに接合させた。その後、 JIS L 0844 A-2号(洗濯液:0.5%せっけん液、洗濯温度:50℃、洗濯時間:30分)に従った洗濯を行い、洗濯後の剥離について評価した。評価基準は下記のとおりであった。
〇:剥離が生じなかった。
×:剥離が生じた。
【0055】
(耐ドライクリーニング性)
綿布/熱接着テープ/綿布の順で積層し、中温(約160℃)のアイロンで20秒間に渡ってプレスして、熱接着テープで綿布と綿布とを互いに接合させた。その後、JIS L 1096 J2法(石油系溶剤(クリーニングソルベント):4リットル、陰イオン活性剤2g、非イオン活性剤:2g、水:8ml、試験液温度:35℃、ウォッシュシリンダ形洗濯試験機、35分間運転)に従った洗濯を行い、洗濯後の剥離について評価した。評価基準は下記のとおりであった。
〇:剥離が生じなかった。
×:剥離が生じた。
【0056】
実施例及び比較例の熱接着テープの熱融着層及び粘着層の詳細、並びに評価結果を、下記の表1にまとめている。
【0057】
【0058】
上記の表1から明らかなように、熱融着層が適切な強度を有しており、かつ粘着層の被覆割合が適切であった実施例1~3の熱接着テープでは、作業性、接着強度、風合い(よれ抑制)、風合い(自然さ)、耐洗濯性、及び耐ドライクリーニング性がいずれも良好であった。
【0059】
これに対して、熱融着層が適切な強度を有しているが、粘着層がない比較例1の熱接着テープでは、粘着層がないことによって作業性が不良であり、また比較的硬質な熱融着層と綿布とが全面にわたって接合されたことによって、接合部の風合い(自然さ)が不良であった。
【0060】
また、熱融着層が適切な強度を有しているが、粘着層の被覆割合が比較的小さい比較例2の熱接着テープでは、比較的硬質な熱融着層と綿布とがほぼ全面にわたって接合されたことによって、接合部の風合い(自然さ)が不良であった。
【0061】
また、熱融着層が適切な強度を有しているが、粘着層の被覆割合が100面積%である比較例3の熱接着テープでは、熱融着層と布とが直接に接していなかったことによって、接着強度が不十分であり、また熱融着層と布との接着が全面にわたって均一であったことによって、ややテープ感があった。
【0062】
また、粘着層の被覆割合が実施例と同様であるが、熱融着層がウレタン系樹脂で構成されている比較例4の熱接着テープでは、熱融着層が適切な強度を有していないことによって、接着強度が不十分であり、また接着部が柔らかすぎて風合いが不良であった。