(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004408
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】食品用連続式脱液装置
(51)【国際特許分類】
A47J 37/12 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
A47J37/12 381
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104060
(22)【出願日】2022-06-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 営業活動の開始 (1)営業活動の開始日 2021年12月16日 (2)営業所 石川県白山市旭丘1-9 サン・プラント工業株式会社 北陸工場 (3)公開者 サン・プラント工業株式会社 (4)営業活動の内容 サン・プラント工業株式会は、上記営業所を拠点として、その顧客に対して、本発明に係る添付図面及び添付写真に示す食品用連続式脱液装置について提案を行うなどの営業活動を開始した。
(71)【出願人】
【識別番号】391017447
【氏名又は名称】サン・プラント工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086346
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 武信
(72)【発明者】
【氏名】下川 克介
(72)【発明者】
【氏名】南 悠一
【テーマコード(参考)】
4B059
【Fターム(参考)】
4B059AA01
4B059AD14
4B059BE15
(57)【要約】
【課題】脱液中の食品の移動を従来とは異なる新たな発想に基づく連続的な移動手段よって実現した食品用連続式脱液装置の提供を図る。
【解決手段】回収室11と、回収室11内で回転する回転タンク21とを備える。回転タンク21の周壁の少なくとも一部は液体を透過させる透過壁16である。透過壁16は回転タンク21の回転軸に対して傾斜しており、回転タンク21の回転に伴う遠心力が、食品導入路31から導入された食品に対して作用し、食品は透過壁16に沿って上方へ移動すると共に移動中に脱液が行われる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回収室と、前記回収室内で回転する回転タンクとを備え、前記回転タンクの周壁の少なくとも一部は液体を透過させる透過壁であり、
前記回転タンク内に導入された食品からの脱液を前記回転タンクの前記周壁を利用して行うようにした連続式脱液装置において、
前記回転タンクの回転に伴い前記食品に加わる遠心力によって、前記食品を前記透過壁に沿って移動させながら、前記脱液を行うように、前記透過壁の周壁の少なくとも一部が、前記回転タンクの回転軸に対して傾斜していることを特徴とする食品用連続式脱液装置。
【請求項2】
回収室と、前記回収室内で回転する回転タンクとを備え、前記回転タンクの周壁の少なくとも一部は液体を透過させる透過壁であり、
前記回転タンク内に導入された食品と前記食品からの前記液体とを前記回転タンクの前記周壁を利用して分離するようにした連続式脱液装置において、
前記食品を受け入れて前記回転タンク内に導く食品導入路と、
前記回転タンクの上に配置された食品排出路とを備え、
前記食品導入路は、前記回転タンクの上部から下部に伸びており、
前記回転タンクが回転することにより、前記食品導入路から回転タンク内の下部に導入された前記食品が、前記回転タンクの前記周壁と前記食品導入路との間の空間を、下部から上部へ上昇して前記食品排出路から排出されるように構成されたことを特徴とする食品用連続式脱液装置。
【請求項3】
前記食品排出路は、前記回転タンクの上端に配置された別体の固定壁に設けられた開口部を備え、前記開口部と前記回転タンクとの境界部分に回転ローラーが配置されていることを特徴とする請求項2に記載の食品用連続式脱液装置。
【請求項4】
前記食品導入路は、前記回転タンク内に上下方向に配置された導入パイプと、前記導入パイプの上部に配置された投入ホッパーと、前記導入パイプの下部に配置された放出口とを備え、
前記食品排出路の前記開口部の開口面積は、前記導入パイプの断面積よりも大きいことを特徴とする請求項2又は3に記載の食品用連続式脱液装置。
【請求項5】
前記回転タンクの前記周壁は、パンチングメタルによって構成された前記透過壁を備えており、
前記回転タンクの前記周壁は下方に向うに従って断面積が小さくなるように傾斜角度を備えたテーパ状をなしていることで、回転することによって前記食品が前記回転タンクの下部から上部へ上昇するように構成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の食品用連続式脱液装置。
【請求項6】
前記回収室は、その底部にドレンを備え、
前記回転タンクの前記透過壁を通過した前記液体は、前記回収室の周壁に当たった後、滴り落ち、前記底部の前記ドレンから排出されるように構成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の食品用連続式脱液装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品用連続式脱液装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日揚げ物食品を連続的に生産する装置としては特許文献1や2に示すようなコンベアを備えたフライヤーが多用されている。ところが油槽から引き上げられた揚げ物食品には余剰の油が含まれており、食品の種類によっては余剰の油が多く、油切りに多くの時間やスペースを必要とする場合がある。
この油切りを連続的に行う食品用連続式脱液装置としては、特許文献3に示すものが提案されている。
【0003】
特許文献3に示された装置は、回収室と、前記回収室内で回転する回転タンクとを備え、前記回転タンクの周壁の少なくとも一部は液体を透過させる透過壁であり、前記回転タンク内に導入された食品と前記食品からの液体とを前記回転タンクの前記周壁を利用して分離するようにしたものである。
【0004】
ところが、特許文献3に係る装置にあっては、食品を回転タンクの上部から導入して、回転スクリューによって下部へ送る間に、前記回転タンクの前記周壁から液体のみを回転タンクの外部へ透過して、食品と分離するように構成されたものである。そのため、回転タンクと回転スクリューとを別系統の動力源で回転させる必要があるし、処理能力は回転スクリューの移送速度にすることになるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5710903号公報
【特許文献2】特許第6960169号公報
【特許文献3】実開昭59-139233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、脱液中の食品の移動を従来とは異なる新たな発想に基づく連続的な移動手段よって実現した食品用連続式脱液装置の提供を図ることにある。
また、本発明は、装置の簡素化や省エネルギーの点において有利な食品用連続式脱液装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、回収室と、前記回収室内で回転する回転タンクとを備え、前記回転タンクの周壁の少なくとも一部は液体を透過させる透過壁であり、前記回転タンク内に導入された食品からの脱液を前記回転タンクの前記周壁を利用して行うようにした連続式脱液装置において、前記回転タンクの回転に伴い前記食品に加わる遠心力によって、前記食品を前記透過壁に沿って移動させながら、前記脱液を行うように、前記透過壁の周壁の少なくとも一部が、前記回転タンクの回転軸に対して傾斜していることを特徴とする食品用連続式脱液装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、脱液中の食品の移動を従来とは異なる新たな発想に基づく連続的な移動手段よって実現した食品用連続式脱液装置を提供することができたものである。
また本発明は、装置の簡素化や省エネルギーの点において有利な食品用連続式脱液装置を提供することができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態にかかる連続式脱液装置の正面から見た構造説明図。
【
図2】同連続式脱液装置の上面から見た構造説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
(概要)
この実施の形態に係る連続式脱液装置は、下部架台41の上に回収室11が配置され、下部架台41内には電動機42が配置されている。回収室11内には回転タンク21が配置されており、電動機42の回転出力軸と回転タンク21とは動力伝達部43を介して接続されている。電動機42の回転出力軸の回転によって回転タンク21が回転し、これによって、食品導入路31から回転タンク21の内部へ導入された食品に対する処理が行われ、食品に付着した油などの余分な液体が除去されるものである。
【0011】
食品としては、油で加熱調理した豆などの粒状の物を掲示することができるが、これに限らず様々な食品(例えば、天玉、スナック菓子、いか天などの珍味、フライドポテト)に適用することができる他、油以外の水や調味液が付着した食品などに適用することができる。
(回収室11について)
【0012】
回収室11は、回転タンク21などを収納するとともに、回転タンク21の回転により食品から分離された油などの液体の飛散を防いで効率的に回収するための容器として機能する。この実施の形態では、平面視矩形の底部14と、底部14から立設された側壁13と、側壁13の上端を閉じる天部12とから構成された四角柱状の密閉容器として実施されているが、他の角柱状や円筒体状の容器としたり、側壁13を傾斜させたりするなど、その形状は適宜変更して実施することができる。またメンテナンスのためなどに、その一部を開閉可能に構成しても構わない。
【0013】
底部14にはドレン15が設けられており、回転タンク21の回転により食品から分離された液体は、回転タンク21から径外方向へ飛散し、側壁13に当たって滴り落ちて底部14に貯まり、ドレン15から外部へ排出されて回収される。回収された液体は、再利用することも可能であり、揚物調理装置(図示せず)などへの循環経路を付加して実施しても構わない。
(食品導入路31について)
【0014】
食品導入路31は、回収室11の天部12を貫き回転タンク21内に上方から挿入された導入パイプ32を備えるものである。導入パイプ32の上部には投入ホッパー33が配置されている。投入ホッパー33は導入パイプ32よりも大径の開口上端を備えており、この開口上端から食品は導入パイプ32に投入される。導入パイプ32は回転タンク21の底部23近くまで伸びており、導入パイプ32の下端は、下方に向けて開口した放出口34となっている。なお、放出口34は、導入パイプ32からの食品を回転タンク21内部に放出することができればその位置や方向や数や大きさは適宜変更して実施することができるものであり、また、導入パイプ32の外側に食品の案内などのためのフィン(図示せず)を設けて実施しても構わない。導入パイプ32は、平面視において回転タンク21の中央に配置されているが、その位置や大きさや長さも回転タンク21内への食品の導入と回転タンク21の回転に伴う食品の動きを阻害しなければ変更して実施し得るものである。
(回転タンク21について)
【0015】
回転タンク21は、上部が開口した略すり鉢状の有底の筒体として実施され、底部23とその上部の透過壁22とを備える。底部23は、その底部23が動力伝達部43を介して電動機42に接続され、その回転駆動力によって回転タンク21全体が回転する。
【0016】
底部23は、食品導入路31の放出口34から回転タンク21に導入された食品を受け入れる部分であり、回転タンク21の回転に伴い食品が上方へ移動しやすいように、それ自身も略すり鉢状に形成されている。底部23は、金属などの剛体で構成されるが、放出口34直下を中心として放出口34からの食品が落下する部分の内面(上面)には、落下時に食品が破損することを抑制するために柔軟性や弾性のある部材などを配置して実施することも適当である。
【0017】
底部23の上端は筒状の透過壁22に接続されている。この透過壁22は、パンチングメタルや金属メッシュなど、食品は透過させないが食品から分離した液体のみを透過させる多数の開口を備える。
【0018】
回転タンク21の下部に導入された食品には、回転タンク21の回転によって遠心力が作用する。この遠心力によって食品が上方に移動するように、透過壁22は上方に向かうに従ってその半径が大きくなるように、回転タンク21の回動軸に対して傾斜している。
【0019】
透過壁22の水平面(回転タンク21の回動軸に対して直交する面)に対する傾斜角度a(
図3参照)は100~110度が適当であるが、この傾斜角度aは回転タンク21の回転速度や食品の形状大きさ重さや投入量などに応じて変更して実施しても構わない。
【0020】
回転タンク21の回転速度は、透過壁22の傾斜角度aや食品の形状大きさ重さや投入量などに応じて変更して実施される。回転タンク21の回転速度は固定であっても構わないが、この実施の形態では、150~1500r/minの範囲で調整設定できるように、可変式となっている。具体的には、電動機42に出力可変型のものを用いたり、動力伝達部43に伝達回転数変更手段を付したりして実施することができる。
【0021】
回転速度を小さくすることにより、遠心力が小さくなるため、食品の上方への移動も遅くなり、食品が回転タンク21内に滞留する時間を長くすることができ、逆に回転速度を大きくすることにより、食品の滞留時間を短くすることができる。
【0022】
このように、回転タンク21の回転に伴い、余剰の液体を含む食品が、回転タンク21内で回転しながら、回転タンク21の透過壁22と導入パイプ32との間の空間を上昇していく。この移動中に、余剰の液体が遠心力によって透過壁22の多数の開口から外方向に飛ばされて、回収室11の内部からドレン15介して回収される。
(食品排出路17について)
【0023】
回収室11の天部12の内面側(下面側)には略円筒形の固定壁16が設けられている。この固定壁16は、回転タンク21の上に配置されたもので、回転タンク21の透過壁22の上端まで上昇した食品が、固定壁16に沿って移動して、固定壁16に設けられた食品排出路17から外部へ排出される。
図2の例では、食品排出路17は固定壁16から接線方向に伸びるように配置されているが、固定壁16が伸びる方向は適宜変更して実施することができる。固定壁16の長手方向に交わる断面開口の面積は、食品導入路31の導入パイプ32の開口断面積よりも、1.2倍程度大きなものとされている。これにより、固定壁16に開けられた食品排出路17の開口部20の開口面積は、導入パイプ32の開口断面積よりも十分に大きなものとして実施され、処理済みの食品を円滑に排出して、導入パイプ32から投入された食品が装置内部で詰まることを抑制し、連続的に円滑に食品を処理して回収室11の外部へ排出することが出来る。
【0024】
固定壁16は、上端が回収室11の天部12の内面(下面)に固定されているが、下端は回転タンク21の上端(この例では透過壁22の上端)付近に配置されている。天部12の下端と回転タンク21の上端とは、適当なクリアランス(回転タンク21の回転ブレへの配慮と食品が溢れないための配慮を施したクリアランス)をもって配置されている。固定壁16の下端の径は回転タンク21の上端の径とほぼ等しいかわずかに大きく設定することが適当である。また、固定壁16の下端の位置は回転タンク21の上端の位置と等しいかそれよりも上に設定することができるし、固定壁16の下端の径が回転タンク21の上端より大きい場合には、固定壁16の下端の位置を回転タンク21の上端の位置よりも低くして、両者がオーバーラップするようにしても構わない。
(回転ローラー18について)
【0025】
固定壁16における食品排出路17の開口部20付近には、回転ローラー18を付加して実施しても構わない。回転ローラー18は
図2に示すように、食品排出路17の開口部20における回転タンク21の回転方向(図の矢印方向)の前方側に配備されている。この回転ローラー18はその上部に設けられたローラー電動機19によって回転するものであり、その回転方向は回転タンク21の回転方向と同じである。回転ローラー18は、食品排出路17の開口部20に接近したが開口部20には入らずに通過しようとした食品に対して、開口部20内に進むように力を与えるもので、これにより食品が食品排出路17内へスムーズに入っていくようにしたものである。
図2の例では回転ローラー18は、回転タンク21の外側に配置されているが、回転タンク21の内側に突出させて配置しても構わない。
(まとめ)
【0026】
以上のように、この実施の形態に係る連続式脱液装置は、食品導入路31の投入ホッパー33から連続的に導入された余剰の液が付着した食品を、回転タンク21の回転のみで、遠心力により透過壁22に沿って上昇させつつ余剰の液を透過壁22の多数の開口から外側へ透過させてこれを回収室11で回収し、脱液済みの食品を連続的に食品排出路17から回転タンク21及び回収室11の外部へ連続的に排出するようにしたものであり、食品の脱液作業を円滑に自動化することができたものである。
本発明はこの実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施することができるものである。例えば上述の実施の形態では、液体として調理油などの油を含む食品に適用したが、水に濡れた食品から、余分な水分を取り除く作業にも適用することができる。
【符号の説明】
【0027】
11 回収室
12 天部
13 側壁
14 底部
15 ドレン
16 固定壁
17 食品排出路
18 回転ローラー
19 ローラー電動機
20 食品排出路の開口部
21 回転タンク
22 透過壁
23 底部
31 食品導入路
32 導入パイプ
33 投入ホッパー
34 放出口
41 下部架台
42 電動機
43 動力伝達部