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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044096
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】情報処理装置及び車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/08 20120101AFI20240326BHJP
【FI】
B60W40/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149430
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西山 佳克
(72)【発明者】
【氏名】上田 拓弥
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA70
3D241DD04Z
3D241DD08Z
(57)【要約】
【課題】移動体に乗る乗員以外の動物の乗り物酔いをより正確に判定する。
【解決手段】移動体で移動している人間以外の動物の状態を判定する情報処理装置は、動物の振動を示す第1の振動検出結果、及び動物の周辺環境の振動を示す第2の振動検出結果を取得する処理と、第1及び第2の振動検出結果と、データベースに蓄積された振動パターンとに基づいて動物の状態を判定する処理とを実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体で移動している人間以外の動物の状態を判定する情報処理装置であって、
一つ又は複数のプロセッサと、前記一つ又は複数のプロセッサと通信可能に接続された一つ又は複数のメモリと、を備え、
前記一つ又は複数のプロセッサは、
前記動物の振動を示す第1の振動検出結果、及び前記動物の周辺環境の振動を示す第2の振動検出結果を取得する処理と、
前記第1及び第2の振動検出結果と、データベースに蓄積された振動パターンとに基づいて前記動物の状態を判定する処理と
を実行する、情報処理装置。
【請求項2】
前記判定する処理では、前記第1の振動検出結果を前記振動パターンと比較し、前記第1の振動検出結果が前記振動パターンから逸脱している場合に前記動物の状態が改善を必要とする状態であると判定する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記一つ又は複数のプロセッサは、前記周辺環境の温度、照度もしくはCO濃度の検出結果又は時刻を取得する処理をさらに実行し、
前記振動パターンは、温度範囲、照度範囲、CO濃度範囲又は時間帯に関連付けられ、
前記判定する処理では、前記第1及び第2の振動検出結果と、前記温度に対応する前記温度範囲、前記照度に対応する前記照度範囲、前記CO濃度に対応する前記CO濃度範囲、又は時刻に対応する前記時間帯に関連付けられた振動パターンとに基づいて前記動物の状態を判定する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記一つ又は複数のプロセッサは、前記状態を改善するための情報を提示する処理をさらに実行する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
移動体で移動している人間以外の動物の振動を検出するための第1のセンサと、
前記動物の周辺環境の振動を検出するための第2のセンサと、
前記第1及び第2のセンサの検出結果と、データベースに蓄積された振動パターンとに基づいて判定された動物の状態に応じて、前記状態を改善するための情報を提示する情報提示装置と
を備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の乗り心地への注目が高まっているが、人だけでなくペットにとっても乗り心地のよい車両が求められると考えられる。ペットは言葉を発することができないために、ペットの体調を測る指標となるものが少ない。これに対して、特許文献1には、血圧、脈拍数、体温及び発汗等のバイタルサイン、化学的反射、物理的反射及び電気的反射等の反射、あるいは随意運動を少なくとも含む生体信号に基づいて乗員やペットの車酔いを判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-29210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術は、生体信号に基づいて乗員と同様にペットの車酔いを判定しようとするものであるが、乗員が座席に着座して姿勢を安定させているのに対して、動物についてはそのような状態であるとは限らず、乗員と同様の方法では必ずしも正確に車酔いを判定できないと考えられる。
【0005】
本開示は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本開示の目的とするところは、移動体に乗る乗員以外の動物の乗り物酔いをより正確に判定することが可能な情報処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある観点によれば、移動体で移動している人間以外の動物の状態を判定する情報処理装置であって、一つ又は複数のプロセッサと、一つ又は複数のプロセッサと通信可能に接続された一つ又は複数のメモリと、を備え、一つ又は複数のプロセッサは、動物の振動を示す第1の振動検出結果、及び動物の周辺環境の振動を示す第2の振動検出結果を取得する処理と、第1及び第2の振動検出結果と、データベースに蓄積された振動パターンとに基づいて動物の状態を判定する処理とを実行する、情報処理装置が提供される。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本開示の別の観点によれば、移動体で移動している人間以外の動物の振動を検出するための第1のセンサと、動物の周辺環境の振動を検出するための第2のセンサと、第1及び第2のセンサの検出結果と、データベースに蓄積された振動パターンとに基づいて判定された動物の状態に応じて、状態を改善するための情報を提示する情報提示装置とを備える車両が提供される。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように本開示によれば、移動体に乗る乗員以外の動物の乗り物酔いをより正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る車両の構成を概略的に示す図である。
図2図1に示された例における情報処理装置の機能構成の例を示すブロック図である。
図3】振動検出結果と振動パターンとの比較について概念的に説明するための図である。
図4】振動検出結果と振動パターンとの比較について概念的に説明するための図である。
図5】振動検出結果と振動パターンとの比較について概念的に説明するための図である。
図6】振動検出結果と振動パターンとの比較について概念的に説明するための図である。
図7】振動検出結果と振動パターンとの比較について概念的に説明するための図である。
図8】振動検出結果と振動パターンとの比較について概念的に説明するための図である。
図9】振動検出結果と振動パターンとの比較について概念的に説明するための図である。
図10】本発明の一実施形態における処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
<1.情報処理装置を適用した車両の構成例>
本実施形態では、移動体の一態様としての車両に本開示の技術を適用した例を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る車両の構成を概略的に示す図である。図示された例において、車両1は、車体2と、座席3と、加速度センサ4,5と、温度計6と、情報処理装置7と、スピーカー8とを含む。
【0012】
なお、駆動系のシステムを含む上記以外の車両1の構成要素については、公知の技術を適宜利用することが可能であるため図示及び説明を省略する。また、車両1、車体2、及び座席3についても、本実施形態に関連して説明される以外の構成は公知の技術を適宜利用することが可能であるため、説明を省略する。
【0013】
加速度センサ4は、車両に乗っている人間以外の動物、具体的にはペットPの振動を検出するためのセンサの例である。加速度センサ4は、例えば犬などのペットPの首輪に取り付けられる。例えば加速度センサ4の測定値から適切な周波数帯域を抽出することによって、ペットPの随意運動などによって生じる加速度の変化を除いた、車両1の走行によってペットPの体に生じる振動を検出することができる。
【0014】
なお、ペットPの振動を検出するためのセンサは加速度センサには限られず、例えばカメラでペットPを撮像した画像を解析することによってペットPの振動を検出してもよい。
【0015】
加速度センサ5は、ペットPの周辺環境、具体的には車体2内(車室内)の振動を検出するためのセンサの例である。加速度センサ5は、例えば座席3の内部に取り付けられる。他の例において、加速度センサ5は車室内の座席3以外の位置に取り付けられてもよい。あるいは、加速度センサ5はペットPが載っているクッションなど、車両1の一部ではない物体に取り付けられてもよい。例えば加速度センサ5の測定値から適切な周波数帯域を抽出することによって、他の乗員の随意運動などによって生じる加速度の変化を除いた、車両1の走行によってペットPの周辺環境に生じる振動を検出することができる。
【0016】
温度計6は、ペットPの周辺環境、具体的には車室内の温度を検出するセンサの例である。温度計6は、例えばサーミスタを用いて近傍の温度を測定するものであってもよいし、放射温度計又は赤外線カメラのように所定の領域の温度分布を測定するものであってもよい。温度計6は、ペットPの近傍の温度を検出してもよいし、車室内の平均的な温度を検出してもよい。後述するように、温度計6に代えて、又は温度計6とともに、車室内の照度を検出する照度計や、車室内のCO濃度を検出するガスセンサが設置されてもよい。
【0017】
情報処理装置7は、加速度センサ4,5及び温度計6の測定値に基づいてペットPの状態を判定し、判定結果に応じてスピーカー8を介してドライバー又は他の乗員に情報を提示する。情報処理装置7は、一つ又は複数のCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサと、一つ又は複数のメモリとを備える。プロセッサは、コンピュータプログラムに従って動作することによって、以下で説明するような処理を実行する。コンピュータプログラムは、情報処理装置に備えられた記憶部(メモリ)として機能する記録媒体に記録されていてもよく、情報処理装置に内蔵された記録媒体又は情報処理装置に外付け可能な任意の記録媒体に記録されていてもよい。
【0018】
コンピュータプログラムを記録する記録媒体としては、ハードディスク、フロッピーディスク及び磁気テープなどの磁気媒体、CD-ROM、DVD、及びBlu-ray(登録商標)などの光記録媒体、フロプティカルディスクなどの磁気光媒体、RAM及びROMなどの記憶素子、並びにUSBメモリ及びSSDなどのフラッシュメモリ、その他のプログラムを格納可能な媒体であってよい。
【0019】
なお、情報処理装置7は、車両に搭載された電子制御装置に限られるものではなく、スマートフォンやウェアラブル機器などの端末装置であってもよい。また、上記の実施形態では、情報処理装置7の機能のすべてが車両に搭載されていたが、本開示の技術はかかる例に限定されない。情報処理装置7の機能の一部又は全部が、車両と通信可能に接続された外部サーバによって構成されていてもよい。
【0020】
加速度センサ4,5及び温度計6の測定値は、上記のような情報処理装置7の実装に応じた通信手段で情報処理装置7に送信される。例えば、情報処理装置7が車両に搭載された電子制御装置である場合、測定値は有線の通信インターフェースを介して情報処理装置7に送信されてもよい。また、例えば、情報処理装置7がスマートフォンやウェアラブル機器などの端末装置である場合、測定値はBluetooth(登録商標)のような無線の通信インターフェースを介して情報処理装置7に送信されてもよい。情報処理装置7の機能の一部又は全部が外部サーバによって構成される場合、測定値は例えばネットワーク通信によって情報処理装置7に送信されてもよい。
【0021】
<2.情報処理装置の構成例>
図2は、図1に示された例における情報処理装置の機能構成の例を示すブロック図である。以下で説明するそれぞれの機能部分は、上述のように情報処理装置7のプロセッサがコンピュータプログラムに従って動作することによって実現される。図示された例において、情報処理装置7は、ペット振動検出機能71と、周辺環境振動検出機能72と、温度取得機能73と、状態判定機能74と、情報提示機能76とを含む。以下、各機能についてさらに説明する。
【0022】
なお、ペット振動検出機能71及び周辺環境振動検出機能72は、加速度センサの測定値に基づく振動の検出を自ら実行して結果を取得する機能として説明されているが、他の実施形態では加速度センサ4,5又はそれ以外の外部装置で測定値から振動を検出する処理が実行され、情報処理装置7ではそれらの装置から出力された振動検出結果を取得する処理だけが実行されてもよい。
【0023】
ペット振動検出機能71は、ペットPに取り付けられた加速度センサ4の測定値から、ペットPの振動を検出する。例えば、ペット振動検出機能71は、周波数フィルタリングやFFT(高速フーリエ変換)などを用いて加速度センサ4の測定値を解析し、ペットPの振動の振幅、減衰比、周波数、継続時間、又は時間間隔の少なくともいずれかを示す振動検出結果(以下、第1の振動検出結果ともいう)を取得する。
【0024】
周辺環境振動検出機能72は、車室内に配置された加速度センサ5の測定値から、ペットPの周辺環境の振動を検出する。例えば、周辺環境振動検出機能72は、周波数フィルタリングやFFTなどを用いて加速度センサ5の測定値を解析し、ペットPの振動の振幅、減衰比、周波数、継続時間、又は時間間隔の少なくともいずれかを示す振動検出結果(以下、第2の振動検出結果ともいう)を取得する。
【0025】
温度取得機能73は、車室内に配置された温度計6の測定値から、ペットPの周辺環境の温度を取得する。温度取得機能73は、取得された温度計6の測定値をそのまま状態判定機能74に提供してもよいし、例えば温度計6が温度分布を検出した場合に平均値を算出したり、温度計6の測定値を時系列で平滑化したりしてもよい。上記のように、温度計6に代えて、又は温度計6とともに、車室内の照度を検出する照度計や、車室内のCO濃度を検出するガスセンサが設置される場合は、これらのセンサに対応した測定値を取得する機能が情報処理装置7において実装される。
【0026】
状態判定機能74は、ペット振動検出機能71及び周辺環境振動検出機能72によって取得された振動検出結果と、データベース75に蓄積された振動パターンとに基づいてペットPの状態を判定する。本実施形態において、状態判定機能74は、以下で説明するように周辺環境振動検出機能72によって取得された第2の振動検出結果も参照しながら、ペット振動検出機能71によって取得された第1の振動検出結果を振動パターンと比較し、第1の振動検出結果が振動パターンから逸脱している場合にペットPの状態が改善を必要とする状態、具体的には乗り物酔いをしている状態であると判定する。例えば、状態判定機能74は、ペットPが乗り物酔いしているか否か、また乗り物酔いしている場合はその程度を判定する。
【0027】
ペットが乗り物酔いするのは、車両の走行によってペットに普段とは異なる振動が加わるためと考えられる。本実施形態では、ペットが乗り物酔いをしていないときの振動を検出してその特徴を振動パターンとしてデータベース75に蓄積しておき、新たに検出されたペットの振動が振動パターンから逸脱している場合にペットが乗り物酔いをしていると判定する。一方、ペットが乗り物酔いをするか否かは車両の走行によって車室内に生じている振動にも影響されるため、上記のような判定をする場合に車室内の振動も考慮することによって判定の精度が向上する。
【0028】
そこで、本実施形態では、以下で説明するように、ペット振動検出機能71によって取得された第1の振動検出結果及びデータベース75に蓄積された振動パターンに加えて、周辺環境振動検出機能72によって取得された第2の振動検出結果にも基づいてペットの状態を判定する。例えば、図1に示されたのと同様の車両の構成で、ペットが乗り物酔いしていないことが既知であるときに実施された振動検出の結果をパターン化することによって、データベース75に上記のような判定で利用可能な振動パターンを蓄積することができる。
【0029】
第1の例として、状態判定機能74は、ペット振動検出機能71によって取得された第1の振動検出結果を、周辺環境振動検出機能72によって取得された第2の振動検出結果に基づいて補正した上で、データベース75に蓄積された振動パターンと比較してもよい。より具体的には、状態判定機能74は、第1の振動検出結果と第2の振動検出結果とを時系列で同期させた上で、第1の振動検出結果から第2の振動検出結果を差し引くことによって周辺環境の振動の影響を除いたペットPの振動を抽出してもよい。この場合、データベース75に蓄積されているのは、ペットが乗り物酔いしていないときのペットの振動検出結果から周辺環境の振動検出結果を差し引いた振動の特徴を示す振動パターンである。状態判定機能74は、補正後の第1の振動検出結果が振動パターンから逸脱している場合に、ペットが乗り物酔いしていると判定する。
【0030】
第2の例として、状態判定機能74は、周辺環境振動検出機能72によって取得された第2の振動検出結果を用いてデータベース75に蓄積された複数の振動パターンから特定の振動パターンを選択し、選択された振動パターンとペット振動検出機能71によって取得された第1の振動検出結果とを比較してもよい。この場合、データベース75に蓄積された振動パターンは、ペットが乗り物酔いしていないときのペットの振動の特徴を示す(つまり、上記の第1の振動検出結果に対応する)第1の振動パターンと、同時に検出された周辺環境の振動の特徴を示し(つまり、上記の第2の振動検出結果に対応し)、第1の振動パターンに関連付けられた第2の振動パターンとを含む。
【0031】
状態判定機能74は、まず蓄積された第2の振動パターンの中から、周辺環境振動検出機能72によって取得された第2の振動検出結果に類似する振動パターンを特定する。さらに、状態判定機能74は、特定された第2の振動パターンに関連付けられた第1の振動パターンを、ペット振動検出機能71によって取得された第1の振動検出結果と比較し、第1の振動検出結果が振動パターンから逸脱している場合に、ペットが乗り物酔いしていると判定する。
【0032】
加えて、本実施形態では情報処理装置7に温度計6の測定値が入力され、状態判定機能74はペットPの周辺環境の温度にさらに基づいてペットPの状態を判定する。より具体的には、データベース75には温度範囲に関連付けられた複数の振動パターンが蓄積され、状態判定機能74は温度取得機能73によって取得された温度に対応する温度範囲に関連付けられた振動パターンを第1の振動検出結果と比較する。車室内の照度やCO濃度の検出結果が取得される場合も同様であり、状態判定機能74は取得された検出結果に対応する照度範囲やCO濃度範囲に関連付けられた振動パターンを第1の振動検出結果と比較する。
【0033】
さらに別の例として、状態判定機能74はペットPの振動が検出された時刻、又は処理が実行される時点での時刻を取得し、当該時刻に対応する時間帯に対応付けられた振動パターンを第1の振動検出結果と比較してもよい。なお、振動検出結果以外の検出結果に基づいてペットPの状態を判定する構成は必須ではなく、振動検出結果のみに基づいてペットPの状態が判定されてもよい。
【0034】
図3図9は、振動検出結果と振動パターンとの比較について概念的に説明するための図である。各図には、振動パターン又は振動検出結果が、時系列の振動波形のグラフとして示されている。図3は、比較の対象になる振動パターンであり、通常時、つまりペットが乗り物酔いしていないときの振動の特徴を示す。図示された例において振動パターンは所定の時間長の振動波形として記録され、例えば同じ長さの振動検出結果の振動波形と比較される。他の例では、振動パターンが以下で説明するような振動の振幅、減衰比、周波数、継続時間、及び時間間隔のパラメータとして記録され、例えば所定の時間長の振動検出結果の波形を解析して特定された振幅、減衰比、周波数、継続時間、及び時間間隔を振動パターンのパラメータと比較してもよい。
【0035】
図4図9は、振動検出結果が振動パターンから逸脱している例を示す。図4の例では、振動検出結果における振幅が振動パターンの振幅とは異なる。図5の例では、振動検出結果における振動の減衰比が振動パターンの減衰比とは異なる。図6の例では、振動検出結果における振動の周波数が振動パターンの周波数とは異なる。図7の例では、振動検出結果における振動の継続時間が振動パターンの継続時間とは異なる。図8の例では、振動検出結果における振動の時間間隔が振動パターンの時間間隔とは異なる。図9の例では、振動検出結果が、振幅や減衰比、周波数、継続時間、時間間隔において複合的に振動パターンとは異なる。状態判定機能74は、例えば振動検出結果においてこのような波形が現れた場合に、振動検出結果が振動パターンから逸脱しており、従ってペットが乗り物酔いしていると判定する。
【0036】
再び図2を参照して、情報提示機能76は、状態判定機能74によってペットPが乗り物酔いしていると判定された場合に、ペットPの状態を改善するための情報を提示する。より具体的には、情報提示機能76は、揺れを少なくするための運転方法や、車室内の温度の調節、換気などを促す情報を、スピーカー8を介してドライバー又は乗員に提示する。スピーカー8は、ペットPの状態を改善するための情報を提示する情報提示装置の例である。他の例では、スピーカー8とともに、又はスピーカー8に代えて、ヘッドアップディスプレイなどを用いた画像表示によって情報が提示されてもよい。
【0037】
また、情報提示機能76は、温度取得機能73が取得した温度に基づいて情報を提示してもよい。具体的には、情報提示機能76は、ペットが乗り物酔いしていると判定され、かつ車室内の温度が適切な温度範囲内にない場合に、温度の調節を促す情報を提示してもよい。同様に、情報提示機能76は、車室内の照度やCO濃度の検出結果に基づいて情報を提示してもよい。車室内の温度や照度、CO濃度は、例えば状態判定機能74による判定には用いられない場合であっても、情報提示機能76による情報の提示のために検出されてもよい。
【0038】
<3.処理フローの例>
図10は、本開示の一実施形態における処理の例を示すフローチャートである。本実施形態では、車両1の走行中に、加速度センサ4,5による振動の検出、及び温度計6による車室内の温度のセンシングが継続的に実行される(ステップS101)。図示された例において、情報処理装置7の状態判定機能74は、車両1の走行開始から所定時間が経過するまでは処理を実行しない(ステップS102)。これは、走行開始からしばらくの間は酔いやすい環境下でもペットが酔うに至らない可能性があるためである。他の例では、ステップS102の判定は必ずしも実施されなくてもよい。
【0039】
車両1の走行開始から所定時間が経過した場合、情報処理装置7では、状態判定機能74が、ペット振動検出機能71及び周辺環境振動検出機能72によって検出された振動(第1及び第2の振動検出結果)を、データベース75に蓄積された振動パターンと比較する(ステップS103)。より具体的には、上述のように、状態判定機能74は、第2の振動検出結果も用いながら、第1の振動検出結果を振動パターンと比較する。
【0040】
状態判定機能74によってペットが乗り物酔いしていると判定された場合(ステップS104のYES)、情報提示機能76がドライバー又は乗員に向けてペットPの状態を改善するための情報を提示する(ステップS105)。以上のようなステップを、例えば車両1の走行が終了したことによって処理が終了するまで繰り返す(ステップS106)。
【0041】
以上で説明したような本発明の一実施形態によれば、ペットが乗り物酔いしていないときの振動パターンをデータベースに予め蓄積しておき、新たに検出されたペットの振動を蓄積された振動パターンと比較することによって、人間以外の動物であるペットの乗り物酔いをより正確に判定することができる。ペットの周辺環境、具体的には車室内の振動をあわせて考慮することによって、より正確な判定が可能になる。さらに、車室内の温度、照度もしくはCO濃度の検出結果又は時刻に基づいて比較する振動パターンを選択することによって、さらに判定の精度を向上させることも可能である。
【0042】
なお、本発明の他の実施形態において、車両内にいる人間以外の動物はペットには限られず、例えば運搬されている家畜などであってもよい。このような場合において、動物の周辺環境は車室内の座席には限られず、例えば車室外の荷台などであってもよい。荷台に家畜を積載しているような場合であっても、家畜が乗り物酔いしている場合には提示される情報に従って揺れを少なくするような運転方法にしたり、車両を停めて休憩させたりすることによって、家畜の乗り物酔いを防ぎながら運搬することができる。
【0043】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示はかかる例に限定されない。本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0044】
1:車両、2:車体、3:座席、4・5:加速度センサ、6:温度計、7:情報処理装置、71:ペット振動検出機能、72:周辺環境振動検出機能、73:温度取得機能、74:状態判定機能、75:データベース、76:情報提示機能、8:スピーカー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10