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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044098
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】自動糸巻機
(51)【国際特許分類】
   D05B 59/00 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
D05B59/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149434
(22)【出願日】2022-09-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-20
(71)【出願人】
【識別番号】522372119
【氏名又は名称】国見 悦朗
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】国見 悦朗
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150CD01
3B150CD06
3B150CE23
3B150FA00
3B150FC00
3B150FG00
3B150GD15
3B150JA03
3B150JA33
(57)【要約】
【課題】糸駒に対して、巻取り用の糸を均一に巻き付けることができる自動糸巻機を得る。
【解決手段】自動糸巻機10は、巻取り用の糸を供給する糸供給部20と、糸供給部から巻取り用の糸駒に向かう糸を糸駒の軸とほぼ直交する方向に案内支持する糸ガイド部40と、糸ガイド部40を糸駒の軸に沿って等速で往復運動させるスライド機構50と、糸駒の軸が装着されると共に駆動源の駆動力により軸周りに回転し、糸供給部20から供給された糸を糸駒に巻き付ける回転シャフト32と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取り用の糸を供給する糸供給部と、
前記糸供給部から巻取り用の糸駒に向かう糸を前記糸駒の軸とほぼ直交する方向に案内支持する糸ガイド部と、
前記糸ガイド部を前記糸駒の軸に沿って等速で往復運動させるスライド機構と、
前記糸駒の軸が装着されると共に駆動源の駆動力により軸周りに回転し、前記糸供給部から供給された糸を前記糸駒に巻き付ける回転シャフトと、
を有する自動糸巻機。
【請求項2】
前記スライド機構は、往復運動のストロークを変更可能に構成され、これにより、前記糸駒の軸に対する糸の巻取り幅が調整可能となっている、請求項1に記載の自動糸巻機。
【請求項3】
前記スライド機構は、
回転駆動力を付与するモータと、
前記モータの回転に同期されると共に前記糸ガイド部に連結されたタイミングベルトと、
前記往復運動の進路に沿って前記糸ガイド部の前後に配置される一対のマイクロスイッチと、を有し、
前記糸ガイド部は、前記モータの正逆回転により前記タイミングベルトを介して往復運動し、前記一対のマイクロスイッチへの接触により、前記モータの回転方向を切り替えるように構成されている、請求項1に記載の自動糸巻機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシン用の糸駒に糸を巻き付ける自動糸巻機に関する。
【背景技術】
【0002】
小規模のメーカーや個人でミシンを使用する場合、一つの糸駒に巻き付けられたミシン糸を小分けにして複数の糸駒に巻き取って使用する場合がある。この場合、巻き取られたミシン糸が糸駒の軸に均一に巻き付けられることが望ましい。
【0003】
特許文献1には、糸駒からボビンに向かう糸をボビンの軸心とほぼ直交する方向に向かうように案内し且つ所定の張力を付与する張力付与部と、張力付与部とボビン間の糸とほぼ平行に配設された糸案内棒を有する糸巻装置が開示されている。この糸巻装置では、糸案内棒の先端部にボビン軸の周面又は周面上の糸に当接して糸をボビン軸心と平行方向へ案内する糸案内部が設けられている。そして、ボビンの幅方向(軸方向)において、糸の巻き数が多い部分と少ない部分とが生じる場合に、巻き数が多い部分から少ない部分へ糸案内部の先端を円弧状に移動させ、巻き数を均一化させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-043081号公報
【0005】
しかしながら、上記先行技術のように糸の巻き数が多い部分と少ない部分とが生じてから巻き数を均一化させる場合、例えば、必要とされる巻き数に対して糸駒の幅(軸方向の巻取り幅)が大きい場合などに、均一に巻き付けることが困難であることが想定される。よって、この点において改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、糸駒に対して、巻取り用の糸を均一に巻き付けることができる自動糸巻機を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る自動糸巻機は、巻取り用の糸を供給する糸供給部と、前記糸供給部から巻取り用の糸駒に向かう糸を前記糸駒の軸とほぼ直交する方向に案内支持する糸ガイド部と、前記糸ガイド部を前記糸駒の軸に沿って等速で往復運動させるスライド機構と、前記糸駒の軸が装着されると共に駆動源の駆動力により軸周りに回転し、前記糸供給部から供給された糸を前記糸駒に巻き付ける回転シャフトと、を有している。
【0008】
第1の態様によれば、巻取り用の糸は、糸供給部から糸ガイド部を経て、糸駒の軸とほぼ直交する方向に案内され、回転シャフトの回転により糸駒に巻き付けられる。ここで、本態様の自動糸巻機においては、糸ガイド部を糸駒の軸に沿って等速で往復運動させるスライド機構が設けられている。従って、糸駒の軸方向に沿って巻き数を均一化させることができる。これにより、例えば、必要とされる巻き数に対して糸駒の幅(軸方向の巻取り幅)が大きい場合であっても、糸駒に対して、巻取り用の糸を均一に巻き付けることができる。
【0009】
第2の態様に係る自動糸巻機は、第1の態様に記載の構成において、前記スライド機構は、往復運動のストロークを変更可能に構成され、これにより、前記糸駒の軸に対する糸の巻取り幅が調整可能となっている。
【0010】
第2の態様に係る自動糸巻機では、スライド機構は、往復運動のストロークを変更可能に構成されている。これにより、糸駒の軸に対する糸の巻取り幅が調整可能であるため、糸駒のサイズに合わせて巻取り幅を設定することができる。
【0011】
第3の態様に係る自動糸巻機は、第1の態様に記載の構成において、前記スライド機構は、回転駆動力を付与するモータと、前記モータの回転に同期されると共に前記糸ガイド部に連結されたタイミングベルトと、前記往復運動の進路に沿って前記糸ガイド部の前後に配置される一対のマイクロスイッチと、を有し、前記糸ガイド部は、前記モータの正逆回転により前記タイミングベルトを介して往復運動し、前記一対のマイクロスイッチへの接触により、前記モータの回転方向を切り替えるように構成されている。
【0012】
第3の態様に係る自動糸巻機では、モータを正逆回転させることにより、タイミングベルトに連結された糸ガイド部が糸駒の軸に沿って往復する。また、糸ガイド部の往復運動は、糸ガイド部の前後に配置された一対のマイクロスイッチに糸ガイド部が接触することにより、モータの正逆回転が切り替えられることにより実現される。
【0013】
ここで、糸ガイド部の往復運動は、一方向に回転するモータの回転駆動力を利用した場合でも、糸ガイド部の移動方向をカムやクランクを介して変更し、往復運動に変換することで実現することもできる。しかしながら、本態様のように一対のマイクロスイッチへの接触によりモータの正逆回転方向を切り替えて往復運動に変換することにより、進行方向の切り替えに伴う機械的抵抗による速度の低下を抑制することができ、糸の巻き付けを均一化させることが容易である。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明に係る自動糸巻機によれば、糸駒に対して、巻取り用の糸を均一に巻き付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る自動糸巻機の斜視図である。
図2】本実施形態に係る自動糸巻機の平面図である。
図3】本実施形態に係る自動糸巻機のスライド機構の構成を示す要部側面図である。
図4】本実施形態に係る自動糸巻機の駆動部を概略的に示すブロック図である。
図5】本実施形態に係る自動糸巻機によって糸駒に糸を巻き付ける動作について説明するための模式図である。
図6】(A)~(D)は、糸ガイド部の往復運動について説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1実施形態〕
以下、図1図6を参照し、本発明の一実施形態としての自動糸巻機10について説明する。なお、説明の便宜上、各図中に適宜記す前後左右上下の方向を自動糸巻機10の前後左右上下の方向と定義して構成要素の位置や向き等を説明する。また、各図においては図面を見易くするため、一部の符号を省略している場合がある。
【0017】
図1図2に示すように、自動糸巻機10は、矩形状の糸巻き台12上に設けられた糸供給部20と、巻取り用の糸駒14を装着する糸駒装着部30と、糸供給部20から糸駒14に向かう糸17(図5参照)を案内支持する糸ガイド部40と、糸ガイド部40を往復運動させるスライド機構50と、糸供給部20及び糸駒装着部30に駆動力を付与するための駆動室70と、糸供給部20から糸駒14に向かう糸に所定の張力を付与する糸調子部90を含んで構成されている。
【0018】
(糸供給部20)
糸供給部20は、糸巻き台12上の前方側かつ右側に設けられ、略円錐台形ブロック状の台座22の中心部に糸立て棒24を立設させたものである。糸立て棒24は、略L字状に折り曲げられており、上下方向に延びる基端側が、台座22から挿抜可能に構成されている。この基端側には、巻取り用の糸を供給する巻糸16が装着される。また、水平方向に延びる先端側には、その先端部に、巻糸16から引き出された糸17を架け渡して案内するための糸掛け部24Aが形成されている。
【0019】
(糸駒装着部30)
糸駒装着部30は、糸巻き台12上の後方側に設けられ、後述する駆動室70から略水平方向(図1では左右方向)に延びる回転シャフト32に台座状の支持部34と糸駒止め36を装着したものである。回転シャフト32は、外周面の全域に雄ねじが形成された全ネジボルトで構成されており、駆動室70から付与される駆動力により軸周りに回転する。支持部34は、回転シャフト32の基端側に固定されており、回転シャフト32と一体に回転する。糸駒止め36は、回転シャフト32に螺合するナットで構成され、これにより、回転シャフト32に装着される糸駒14の大きさに合わせて、回転シャフト32の軸方向に沿って任意の位置に装着することができる。
【0020】
回転シャフト32には、巻取り用の糸駒14(図5参照)の軸が装着される。糸駒14が回転シャフト32から脱落することを防止するために、当該糸駒14を挟むようにして、支持部34と糸駒止め36が配置される。
【0021】
(糸ガイド部)
糸ガイド部40は、糸巻き台12上の中央部において糸供給部20と糸ガイド部40の間に配置される。この糸ガイド部40は、一対のスライド棒19に支持されたブロック状の可動片42と、可動片42の上面から立設する糸ガイド棒44とを含んで構成される。
【0022】
一対のスライド棒19は、糸巻き台12上の左端側に設けられた駆動室70と糸巻き台12の右端側から立設する支持壁18との間に架け渡されており、水平方向(図1では左右方向)に沿って略平行に配置されている。ブロック状の可動片42は、板厚方向(左右方向)に貫通形成された二つの貫通孔(符号省略)に一対のスライド棒19を挿通させ、回転シャフト32と横並びに配置されている。これにより、可動片42は、一対のスライド棒19によって摺動可能に支持されており、回転シャフト32の軸方向(左右方向)に沿って、左右方向に変位することができる。
【0023】
可動片42の中央には、可動片42の下端部を切り欠いて形成してなる凹溝42Aが形成されている。凹溝42Aは下方側に開口し、後述するスライド機構50のタイミングベルト52が内側に挿入される。また、可動片42は、凹溝42Aの内側でタイミングベルト52の一端に連結部材46を介して固定されており、タイミングベルト52に連動して変位する構成となっている。
【0024】
糸ガイド棒44は、可動片42の上面から立設され、先端部に糸掛け部44Aを有する構成となっている。糸掛け部44Aは、糸ガイド棒44の先端を折り曲げて谷状の湾曲部を形成してなり、糸供給部20から糸駒14へ向かう糸が架け渡されて案内される。
【0025】
(スライド機構50)
図3には、スライド機構50の要部構成が側面図にて概略的に示されている。この図に示されるように、スライド機構50は、回転駆動力を付与する第2モータ78(図4参照)と、第2モータ78の回転に同期されると共に糸ガイド部40に連結されたタイミングベルト52と、糸ガイド部40を挟んで両側に配置される一対のマイクロスイッチ54,56と、を含んで構成される。
【0026】
タイミングベルト52は、自動糸巻機10の装置中央に配置され、左右一対のプーリ57A,57Bに架け渡されている。自動糸巻機10を平面視すると、タイミングベルトを挟んで前後両側に一対のスライド棒19が配置されている(図2参照)。このタイミングベルト52において、一対のプーリ57A,57Bの上側に架け渡された部位には、一対のスライド棒19に支持された糸ガイド部40の可動片42が連結されている。
【0027】
右側の第1プーリ57Aは、糸巻き台12の右端側から立設する支持壁18に軸支されている。左側の第2プーリ57Bは、第2モータ78の駆動力を伝達する出力軸58に連結されている。
【0028】
かかる構成では、第2モータ78の駆動力によって回転する第2プーリ57Bが駆動プーリを構成し、第1プーリ57Aが従動プーリとなって第2モータ78の回転駆動力をタイミングベルトに伝達する。第2プーリ57Bの回転がタイミングベルト52に伝達されると、タイミングベルト52の移動に追従するようにして、糸ガイド部40の可動片42が左右方向に移動する。この糸ガイド部40の進路方向は、巻取り用の糸駒14の軸方向と一致している。
【0029】
ここで、第2モータ78の回転方向は、一対のマイクロスイッチ54,56に対する入力が検知されることにより、切り替えられる構成となっている。一対のマイクロスイッチ54,56は、タイミングベルトの進路に沿って、糸ガイド部40の前後(図3では左右)に配置されている。糸ガイド部40は、タイミングベルト52に追従して移動することにより、所定の操作位置で各マイクロスイッチ54,56に接触し、第2モータ78の回転方向の切り替えを行う構成となっている。
【0030】
具体的に、一対のマイクロスイッチ54,56は、糸ガイド部40の下方側において、糸巻き台12上面に立設されたスイッチ台60に取り付けられている。このスイッチ台60は、前後方向を板厚方向とする矩形板状の部材であり、左右方向に延在して駆動室70の側面と支持壁18とを連結している。
【0031】
糸ガイド部40の右側に配置される第1マイクロスイッチ54は、スイッチ台60の前方側の側面に取り付けられたスライドレール62に摺動可能に支持されている。この第1マイクロスイッチ54は、スライドレール62上の可動域を左右に移動させることにより位置を変更することができる。
【0032】
一方、糸ガイド部40の左側に配置される第2マイクロスイッチ56は、スイッチ台60の前方側の側面に固定されている。
【0033】
なお、上記第1及び第2マイクロスイッチ54,56は、公知のマイクロスイッチで構成される。具体的には、スナップアクション機構を構成するアクチュエータ(レバー)64を備え、アクチュエータ64に対して所定の操作位置で行われた入力操作を検知する構成となっている。第1及び第2マイクロスイッチ54,56は、後述するリレー部80と電気的に接続されている。このリレー部80は、第1及び第2マイクロスイッチ54,56に対する入力信号を受け取ることにより、リレー部80に接続された第2モータ78の回転方向を切り替える構成となっている。
【0034】
本実施形態では、右側の第1マイクロスイッチ54に糸ガイド部40が接触すると、第2モータ78が正方向(図3では時計回り)に回転し、糸ガイド部40を左方向に移動させる。一方、左側の第2マイクロスイッチ56に糸ガイド部40が接触すると、第2モータ78の回転方向が逆転し(図3では反時計回り)、糸ガイド部40を右方向に移動させる。このようにして、糸ガイド部40は、第1及マイクロスイッチ54と第2マイクロスイッチ56に対する入力操作を交互に行い、第2モータ78を正逆回転させる。これにより、糸ガイド部40は、第2モータ78の駆動力により、糸駒14の軸方向(左右方向)に沿って等速で往復運動する構成となっている。
【0035】
また、第1マイクロスイッチ54の位置を変更することにより、第1マイクロスイッチ54と第2マイクロスイッチ56との間の距離を任意の値に設定し、糸ガイド部40の往復運動のストロークL1を変更することができる。このストロークL1は、糸駒14の軸に対する糸17の巻取り幅に相当する(図5参照)。
【0036】
(駆動室70)
図2に戻り、駆動室70の構成について説明する。図2に示されるように、駆動室70には、第1駆動部71と第2駆動部72が設けられている。
【0037】
図4は、駆動室70の概略構成を示すブロック図である。この図に示されるように、第1駆動部71は、糸駒装着部30の回転シャフト32に接続された駆動源としての第1モータ74を含んでいる。この第1モータ74は、複数のギヤを介して出力軸の回転駆動力を回転シャフト32に伝達している。この第1モータ74の回転は、電源68との間に接続されたメインスイッチ76がユーザの操作によってONにされることで開始され、OFFにされることで停止する。
【0038】
第2駆動部72は、第2プーリ57Bに回転駆動力を付与する駆動源としての第2モータ78と、第2モータ78の回転方向を切り替えるリレー部80と、を含んでいる。第2モータ78は、複数のギヤを介して出力軸58(図3参照)の回転駆動力を第2プーリ57Bに伝達している。リレー部80は、公知のリレー回路で構成されており、上述の第1及び第2マイクロスイッチ54,56から伝達される入力信号を制御し、第2モータ78の回転方向を切り替える構成となっている。第2モータ78の正逆回転は、第2プーリ57Bを介してタイミングベルト52に伝達され、タイミングベルト52に連結された糸ガイド部40を等速で往復運動させる。
【0039】
第1及び第2マイクロスイッチ54,56は、メインスイッチ76に電気的に接続されている。このメインスイッチ76がONにされると、第1モータ74の駆動と共に、第2モータ78の駆動が開始される。メインスイッチ76がOFFにされると、第1モータ74の停止と共に、第2モータ78の駆動が停止される。
【0040】
(糸調子部90)
糸調子部90は、糸巻き台12の前方側に設けられ、駆動室70から略水平方向(図1では左右方向)に延びる糸調子棒92で構成される。糸調子棒92の先端には、二枚の糸調子皿94が対向して設けられており、糸供給部20から供給される糸17を二枚の糸調子皿94の間に挟むように案内することで、糸ガイド部40に供給される糸17に所定の張力が付与される。
【0041】
(自動糸巻機10の動作説明)
以下、図5及び図6を参照して、自動糸巻機10を用いて糸駒14に糸17を巻き取る手順について説明する。図5には、自動糸巻機10に巻取り用の糸17を供給する巻糸16と糸駒14を装着した状態が平面図にて示されている。
【0042】
図5に示されるように、先ず、糸巻きのための準備として、巻糸16を糸供給部20に立設した糸立て棒24にセットする。また、糸駒装着部30の回転シャフト32に巻取り用の糸駒14の軸を装着させる。この際、糸駒14が回転シャフト32に対して変位しないように、回転シャフト32に螺合した糸駒止め36を糸駒14のサイズに合わせて締め合わせる。
【0043】
次に、巻糸16からの糸17を糸掛け部24Aに架け渡し、糸調子棒92の先端に設けられた二枚の糸調子皿94を通し、糸ガイド部40へ案内する。そして、案内された糸17を、糸ガイド棒44の先端に設けられた糸掛け部44Aに架け渡した後、糸駒14に数回巻いておく。
【0044】
このように糸掛け作業が完了してから、メインスイッチ76をONにして、自動糸巻機10を作動させる。メインスイッチ76はONにされると、第1モータ74と第2モータ78が駆動する。これにより、糸駒14が装着された回転シャフト32を回転駆動させると共に、スライド機構50の第2プーリ57Bに駆動力が付与されて、タイミングベルト52と糸ガイド部40が往復運動を開始する。
【0045】
ここで、図6を参照して、糸ガイド部40の往復運動について説明する。
【0046】
図6(A)に示されるように、糸ガイド部40は、糸駒14へ案内された糸17は、糸駒14に対して、糸駒14の軸方向とほぼ直交する方向に案内されている。糸ガイド部40は、スライド機構50の第2プーリ57Bが反時計回りに回転することにより、タイミングベルト52に連動して、右方向に等速で移動する。その間、回転シャフト32が等速で回転して糸駒14によって糸17が巻き取られるため、糸駒14の軸方向には均一な巻き数にて糸17が巻き付けられていく。
【0047】
その後、図6(B)に示されるように、右方向に移動した糸ガイド部40の可動片42が、第1マイクロスイッチ54に接触する。これにより、第2モータ78の回転方向が正方向の回転に切り替わり、第2プーリ57Bが時計回りに回転する。これにより、糸ガイド部40は、タイミングベルト52に連動して、左方向に等速で移動する(図6(C))。
【0048】
次に、図6(D)に示されるように、左方向に移動した糸ガイド部40の可動片42が、第2マイクロスイッチ56に接触する。これにより、糸ガイド部40の動作は図6(A)の動作に戻り、上記動作が繰り返されることにより、糸ガイド部40が等速で往復運動する。そして、往復運動のストローク(L1)を糸駒14の軸方向に対する糸の巻取り幅として糸駒14に糸17が巻き付けられていく。
【0049】
(作用・効果)
以上説明したように、本実施形態に係る自動糸巻機10は、巻取り用の糸17は、糸供給部20から糸ガイド部40を経て、糸駒14の軸とほぼ直交する方向に案内され、回転シャフト32の回転により糸駒14に巻き付けられる。ここで、本態様の自動糸巻機10においては、糸ガイド部40を糸駒14の軸に沿って等速で往復運動させるスライド機構50が設けられている。従って、糸駒14の軸方向に沿って巻き数を均一化させることができる。これにより、例えば、必要とされる巻き数に対して巻取り用の糸駒14の幅(軸方向の巻取り幅)が大きい場合であっても、糸駒14に対して、巻取り用の糸を均一に巻き付けることができる。
【0050】
また、スライド機構50は、往復運動のストロークを変更可能に構成されているため、糸駒14の軸に対する糸の巻取り幅が調整可能である。このため、糸駒14のサイズに合わせて巻取り幅(L1)を設定することができる。
【0051】
また、本実施形態では、第2モータ78を正逆回転させることにより、タイミングベルト52に連結された糸ガイド部40が糸駒14の軸に沿って往復する。また、糸ガイド部40の往復運動は、糸ガイド部40の前後に配置された一対の第1及び第2マイクロスイッチ54,56に糸ガイド部40が接触することにより、第2モータ78の正逆回転が切り替えられることにより実現される。
【0052】
ここで、糸ガイド部40の往復運動は、一方向に回転するモータの回転駆動力を利用した場合でも、糸ガイド部の移動方向をカムやクランクを介して変更し、往復運動に変換することで実現することもできる。しかしながら、本態様のように一対のマイクロスイッチへの接触によりモータの正逆回転方向を切り替えて往復運動に変換することにより、進行方向の切り替えに伴う機械的抵抗による速度の低下を抑制することができ、糸の巻き付けを均一化させることが容易である。
【0053】
[補足説明]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、モータの正逆回転により糸ガイド部を往復運動させる構成としたが、上述のように、一方向に回転するモータの回転駆動力を利用して糸ガイド部の移動方向を公知のカムやクランクを介して変更し、往復運動に変換する構成としてよい。
【0054】
また、上記実施形態では、マイクロスイッチへの入力検知によってモータの回転方向を切り替える構成としたが、これに限らず、例えば、光センサ式スイッチで糸ガイド部の位置を検知してモータの回転方向を切り替える構成としてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 自動糸巻機
14 糸駒
17 糸
20 糸供給部
32 回転シャフト
40 糸ガイド部
50 スライド機構
52 タイミングベルト
54 第1マイクロスイッチ
56 第2マイクロスイッチ
74 第1モータ(駆動源)
78 第2モータ(モータ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-12-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取り用の糸を供給する糸供給部と、
前記糸供給部から巻取り用の糸駒に向かう糸を前記糸駒の軸とほぼ直交する方向に案内支持する糸ガイド部と、
前記糸ガイド部を前記糸駒の軸に沿って等速で往復運動させるスライド機構と、
前記糸駒の軸が装着されると共に駆動源の駆動力により軸周りに回転し、前記糸供給部から供給された糸を前記糸駒に巻き付ける回転シャフトと、を有し、
前記スライド機構は、往復運動のストロークを前記糸駒の軸の長さと異なる任意の長さに変更可能に構成されることで、前記糸駒の軸に対する糸の巻取り幅が調整可能となっている、自動糸巻機。
【請求項2】
前記スライド機構は、
回転駆動力を付与するモータと、
前記モータの回転に同期されると共に前記糸ガイド部に連結されたタイミングベルトと、
前記往復運動の進路に沿って前記糸ガイド部の前後に配置される一対のマイクロスイッチと、を有し、
前記糸ガイド部は、前記モータの正逆回転により前記タイミングベルトを介して往復運動し、前記一対のマイクロスイッチへの接触により、前記モータの回転方向を切り替えるように構成されている、請求項1に記載の自動糸巻機。