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  • 特開-車両 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044102
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/00 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
B60R21/00 310N
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149447
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】切明 正行
(72)【発明者】
【氏名】川田 雄太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 章浩
(72)【発明者】
【氏名】小野 一彦
(72)【発明者】
【氏名】平泉 遼太
(57)【要約】
【課題】車両の水没時に乗員の安全性を確保する。
【解決手段】車両は、車両の車室の底部に設けられ、前記車室の内部空間と前記車両の外部空間とを連通する第1連通孔と、前記車室の天井部に設けられ、前記車室の内部空間と前記車両の外部空間とを連通する第2連通孔と、前記車室の天井部から下方に延在し、下端に開口を有し、空気が溜まる空間である空気溜まりを保持する空気保持部材と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室の底部に設けられ、前記車室の内部空間と前記車両の外部空間とを連通する第1連通孔と、
前記車室の天井部に設けられ、前記車室の内部空間と前記車両の外部空間とを連通する第2連通孔と、
前記車室の天井部から下方に延在し、下端に開口を有し、空気が溜まる空間である空気溜まりを保持する空気保持部材と、
を備える、
車両。
【請求項2】
前記第1連通孔を開閉可能な第1開閉部をさらに備える、
請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記第2連通孔を開閉可能な第2開閉部をさらに備える、
請求項1に記載の車両。
【請求項4】
前記空気保持部材は、折り畳み可能である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
大雨の影響により道路が冠水した状況等において、車両が水没する場合がある。このような場合には、車両のドアに大きな水圧がかかり、乗員はドアを開けて自力で脱出することが困難となる。ゆえに、車両の水没時には、乗員を車両から脱出させて安全性を確保することが求められる。例えば、特許文献1には、車両の水没時に、車室の内部空間に水を流入させることによって車室の内部空間と車両の外部空間との圧力差を減らし、ドアを開けやすくする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-100694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1のように、車両の水没時に乗員の安全性を確保するためのいくつかの技術は提案されている。しかしながら、車両の水没時に乗員の安全性をより適切に確保するための新たな技術の提案が望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、車両の水没時に乗員の安全性を確保することが可能な車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一実施の形態に係る車両は、
車両の車室の底部に設けられ、前記車室の内部空間と前記車両の外部空間とを連通する第1連通孔と、
前記車室の天井部に設けられ、前記車室の内部空間と前記車両の外部空間とを連通する第2連通孔と、
前記車室の天井部から下方に延在し、下端に開口を有し、空気が溜まる空間である空気溜まりを保持する空気保持部材と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両の水没時に乗員の安全性を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に係る車両の概略構成を示す模式図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る車両が水没している状態を示す図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る車両の水没時に空気保持部材が引き下ろされた状態を示す図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る車両の水没時に第1連通孔および第2連通孔が開いた状態を示す図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る車両の水没時に車室の内部空間に水が流入している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料、数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0010】
<車両の構成>
図1を参照して、本発明の実施形態に係る車両1の構成について説明する。
【0011】
図1は、車両1の概略構成を示す模式図である。図1に示されるように、車両1は、車室2を備える。車室2は、乗員が搭乗する空間である。大雨の影響により道路が冠水すること、車両1が海、湖または河川等に落下すること、または、車両1が津波に飲み込まれること等に起因して、車両1が姿勢を保った状態で水没する場合がある。車両1の水没時には、乗員を車室2内から車外に脱出させて安全性を確保する必要がある。
【0012】
そこで、車両1の水没時に乗員の安全性を確保するための工夫として、図1に示されるように、車両1は、第1連通孔11と、第1開閉部12と、第2連通孔21と、第2開閉部22と、空気保持部材31とを備える。なお、図1では、車両1が水没していない通常時における車両1の状態が示されている。
【0013】
第1連通孔11は、車室2の底部2aに設けられる。第1連通孔11は、車室2の内部空間と車両1の外部空間とを連通する。例えば、第1連通孔11は、車室2の底部2aを車両上下方向に貫通する。
【0014】
第1開閉部12は、第1連通孔11を開閉可能である。例えば、第1開閉部12は、車室2の内部空間に設けられており、第1連通孔11の車室2側の開口を開閉可能である。第1開閉部12により第1連通孔11が開かれた状態では、車室2の内部空間と車両1の外部空間とは、第1連通孔11を介して連通する。一方、第1開閉部12により第1連通孔11が閉じられた状態では、車室2の内部空間と車両1の外部空間とは、第1開閉部12により遮断される。図1では、第1開閉部12により第1連通孔11が閉じられている。
【0015】
以下では、第1開閉部12は、回動することによって、第1連通孔11を開閉可能である例を説明する。ただし、第1開閉部12は、回動以外の方法によって、第1連通孔11を開閉可能であってもよい。例えば、第1開閉部12は、スライドすることによって、第1連通孔11を開閉可能であってもよい。また、例えば、第1開閉部12は、栓部材であり、第1連通孔11に着脱されることによって、第1連通孔11を開閉可能であってもよい。
【0016】
第2連通孔21は、車室2の天井部2bに設けられる。第2連通孔21は、車室2の内部空間と車両1の外部空間とを連通する。例えば、第2連通孔21は、車室2の天井部2bを車両上下方向に貫通する。なお、第2連通孔21は、車室2の天井部2bのうち空気保持部材31よりも外側の部分に設けられる。
【0017】
第2開閉部22は、第2連通孔21を開閉可能である。例えば、第2開閉部22は、車室2の内部空間に設けられており、第2連通孔21の車室2側の開口を開閉可能である。第2開閉部22により第2連通孔21が開かれた状態では、車室2の内部空間と車両1の外部空間とは、第2連通孔21を介して連通する。一方、第2開閉部22により第2連通孔21が閉じられた状態では、車室2の内部空間と車両1の外部空間とは、第2開閉部22により遮断される。図1では、第2開閉部22により第2連通孔21が閉じられている。
【0018】
以下では、第2開閉部22は、回動することによって、第2連通孔21を開閉可能である例を説明する。ただし、第2開閉部22は、回動以外の方法によって、第2連通孔21を開閉可能であってもよい。例えば、第2開閉部22は、スライドすることによって、第2連通孔21を開閉可能であってもよい。また、例えば、第2開閉部22は、栓部材であり、第2連通孔21に着脱されることによって、第2連通孔21を開閉可能であってもよい。
【0019】
空気保持部材31は、車室2の天井部2bに設けられる。空気保持部材31は、空気が溜まる空間である空気溜まり(後述する図3図5の空気溜まり32を参照)を保持するために設けられる。空気保持部材31は、折り畳み可能である。図1では、空気保持部材31は、折り畳まれて天井部2bに収容されている。例えば、折り畳まれた空気保持部材31は、天井部2bの内装材に埋め込まれてもよいし、または、天井部2bの下面に取り付けられた状態で露出していてもよい。また、空気保持部材31には、引き下ろし用のハンドルが設置されていてもよい。
【0020】
空気保持部材31が図1の状態から下方に引き下ろされると、後述するように、空気溜まりが空気保持部材31により保持される。空気保持部材31は、例えば、引き下ろされた状態において、車両上下方向に延在する筒形状を有する。そして、空気保持部材31は、その状態から上方に蛇腹状に折り畳み可能となっている。空気保持部材31を引き下ろして拡張する作業は、手動または電動のいずれでも実施可能である。ただし、車両1の水没時には、車両1の各部の電気系統が動作不能となるおそれがある。したがって、安全性を向上する観点からは、当該作業は手動で実施されることが好ましい。
【0021】
<車両の動作>
図2図5を参照して、本発明の実施形態に係る車両1の動作について説明する。
【0022】
図2は、車両1が水没している状態を示す図である。図2に示されるように、車両1の水没時には、車両1が水3に浸り、車両1の周囲が水3で覆われる。上述したように、車両1が水没していない通常時には、第1連通孔11および第2連通孔21は閉じられており、空気保持部材31は天井部2bに収容されている。ゆえに、図2に示されるように、車両1が水没した直後には、第1連通孔11および第2連通孔21は閉じられており、空気保持部材31は天井部2bに収容されている。
【0023】
この場合、車両1の外部空間の圧力が車室2の内部空間の圧力と比べて大きくなり、車両1のドアに大きな水圧がかかる。ゆえに、乗員がドアを開けて自力で脱出することは困難となる。本実施形態に係る車両1では、車両1の水没時において、乗員は、第1連通孔11、第2連通孔21および空気保持部材31を利用することによって、ドアを開けて自力で容易に脱出することができる。
【0024】
まず、乗員は、空気保持部材31を引き下ろす。図3は、車両1の水没時に空気保持部材31が引き下ろされた状態を示す図である。図3で実線矢印により示されるように、天井部2bに収容されている空気保持部材31が下方に引き下ろされると、空気溜まり32が空気保持部材31により保持される。なお、図3および後述する図4図5では、空気溜まり32は、一点鎖線により示されている。
【0025】
具体的には、空気保持部材31は、引き下ろされた状態において、天井部2bから下方に延在し、下端に開口31aを有する。例えば、空気保持部材31は、上端にも開口を有するが、当該開口は、天井部2bにより気密に塞がれている。それにより、空気保持部材31と、天井部2bとによって、空気溜まり32が区画される。空気保持部材31が引き下ろされて空気溜まり32が形成されると、乗員の頭部が空気溜まり32内に位置する状態となる。なお、空気保持部材31の上端に開口が形成されず、空気保持部材31のみによって空気溜まり32が区画されてもよい。
【0026】
次に、乗員は、第1開閉部12を操作して第1連通孔11を開くとともに、第2開閉部22を操作して第2連通孔21を開く。図4は、車両1の水没時に第1連通孔11および第2連通孔21が開いた状態を示す図である。図4で実線矢印により示されるように、第1連通孔11が開くと、車室2の内部空間と車両1の外部空間とは、第1連通孔11を介して連通する。また、図4で実線矢印により示されるように、第2連通孔21が開くと、車室2の内部空間と車両1の外部空間とは、第2連通孔21を介して連通する。
【0027】
車両1が図4の状態になった後に、車室2の内部空間に水3が流入する。図5は、車両1の水没時に車室2の内部空間に水3が流入している状態を示す図である。第1連通孔11および第2連通孔21が開いた状態では、図5で実線矢印により示されるように、車両1の外部空間から車室2の内部空間に第1連通孔11を介して水3が流入する。この際、図5で破線矢印により示されるように、車室2の内部空間から車両1の外部空間に第2連通孔21を介して空気が流出する。このように、第2連通孔21は、エア抜き用の孔として機能する。天井部2bに設けられた第2連通孔21を通じて、車室2内の空気を車両1の外部に逃がすことにより、底部2aに設けられた第1連通孔11を通じて、水3を車室2内に導入しやすくなる。車室2の内部空間に水3が流入することによって、車室2の内部空間と車両1の外部空間との圧力差が減るので、乗員はドアを開けやすくなる。
【0028】
ここで、図5に示されるように車室2の内部空間に水3が流入する際に、車室2の内部空間の上部には、空気保持部材31により保持された空気溜まり32が形成されている。そして、乗員の頭部は空気溜まり32内に位置している。空気溜まり32は、空気保持部材31の下端の開口31aを介して、車室2の内部空間と連通している。しかしながら、開口31a以外の箇所では、空気溜まり32は、車室2の内部空間と連通していない。つまり、空気溜まり32と、車室2の内部空間との間では、開口31aのみを介して流体が流通可能となっている。
【0029】
ゆえに、図5の例のように、車室2の内部空間において、水位が上昇し、水3が空気保持部材31に到達した場合であっても、空気溜まり32の内部には水3が侵入しない。よって、乗員は、空気溜まり32に溜まった空気を利用して呼吸し続けることができる。そして、車室2の内部空間において水位が十分に上昇して、車室2の内部空間と車両1の外部空間との圧力差が十分に減った時点で、乗員はドアを開けて車両1から脱出することができる。つまり、車室2の内部空間に水3が流入している間において乗員が呼吸できる期間を稼ぐことができるので、乗員の安全を確保した上で、乗員はドアを開けることができるようになるまで待つことができる。上記のように、本実施形態によれば、車両1の水没時に乗員の安全性を確保することができる。
【0030】
なお、図1図5に示される例では、車両1に1つの空気保持部材31が設けられており、1つの空気保持部材31によって1つの空気溜まり32が保持される。この場合、車両1の全ての乗員の頭部が1つの空気溜まり32に収容可能となっている。ただし、空気保持部材31は、乗員ごとに別々に設けられていてもよい。その場合、各空気保持部材31により保持された空気溜まり32に、各乗員の頭部が別々に収容可能となる。
【0031】
<車両の効果>
本発明の実施形態に係る車両1の効果について説明する。
【0032】
本実施形態に係る車両1は、車室2の底部2aに設けられ、車室2の内部空間と車両1の外部空間とを連通する第1連通孔11と、車室2の天井部2bに設けられ、車室2の内部空間と車両1の外部空間とを連通する第2連通孔21と、車室2の天井部2bから下方に延在し、下端に開口31aを有し、空気が溜まる空間である空気溜まり32を保持する空気保持部材31と、を備える。それにより、車両1の水没時に、第1連通孔11および第2連通孔21を利用することによって、車室2の内部空間に水3を流入させて、車室2の内部空間と車両1の外部空間との圧力差を減らし、ドアを開けやすくすることができる。さらに、車室2の内部空間に水3を流入させる際に、空気保持部材31を利用して空気溜まり32を形成することによって、乗員が呼吸できる期間を稼ぐことができる。ゆえに、乗員の安全を確保した上で、乗員はドアを開けることができるようになるまで待つことができる。よって、車両1の水没時に乗員の安全性を確保することができる。
【0033】
また、本実施形態に係る車両1は、第1連通孔11を開閉可能な第1開閉部12をさらに備えることが好ましい。それにより、車両1が水没していない通常時には、第1連通孔11を閉じておくことができる。ゆえに、通常時に、車両1の外部空間から車室2の内部空間に第1連通孔11を介して異物が侵入することを抑制できる。また、車両1の水没状態の程度が小さく、車室2内に水3を流入させたくない場合、第1開閉部12で第1連通孔11を閉じておけば、車室2内への水3の流入を防止できる。ただし、車両1に第1開閉部12が設けられなくてもよい。この場合、車室2の内部空間と車両1の外部空間とは、第1連通孔11を介して常時連通した状態となる。
【0034】
また、本実施形態に係る車両1は、第2連通孔21を開閉可能な第2開閉部22をさらに備えることが好ましい。それにより、車両1が水没していない通常時には、第2連通孔21を閉じておくことができる。ゆえに、通常時に、車両1の外部空間から車室2の内部空間に第2連通孔21を介して異物又は雨水等が侵入することを抑制できる。ただし、車両1に第2開閉部22が設けられなくてもよい。この場合、車室2の内部空間と車両1の外部空間とは、第2連通孔21を介して常時連通した状態となる。
【0035】
また、本実施形態に係る車両1では、空気保持部材31は、折り畳み可能であることが好ましい。それにより、車両1が水没していない通常時には、空気保持部材31を折り畳んで天井部2bに容易に収容することができる。ゆえに、通常時に、空気保持部材31が乗員にとって邪魔になることを抑制できる。例えば、空気保持部材31が運転者による運転の邪魔をすることを抑制できる。ただし、空気保持部材31は、折り畳み可能でなくてもよい。例えば、空気保持部材31は、天井部2bに対して脱着できるようになっていてもよい。
【0036】
以上、添付図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例または修正例についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
【符号の説明】
【0037】
1 車両
2 車室
2a 底部
2b 天井部
3 水
11 第1連通孔
12 第1開閉部
21 第2連通孔
22 第2開閉部
31 空気保持部材
31a 開口
32 空気溜まり
図1
図2
図3
図4
図5