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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044105
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20240326BHJP
   H05K 1/11 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H05K1/02 C
H05K1/11 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149450
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 好男
【テーマコード(参考)】
5E317
5E338
【Fターム(参考)】
5E317AA21
5E317AA24
5E317BB02
5E317BB12
5E317BB15
5E317CC32
5E317CC33
5E317CD32
5E317GG11
5E338AA02
5E338BB14
5E338BB16
5E338BB25
5E338BB75
5E338EE11
(57)【要約】
【課題】表裏の導体層間の電気抵抗のばらつき及び各導体層の厚さのむらの抑制。
【解決手段】実施形態の配線基板1は、貫通孔4aを備える絶縁層2と、絶縁層2の2つの表面にそれぞれ形成されている第1導体層31及び第2導体層32と、貫通孔4aにそれぞれ形成されていて第1導体層31と第2導体層32とを接続する複数の層間導体4と、を含んでいる。配線基板1は、それぞれに複数の層間導体4の一部が形成されている第1領域A1及び第2領域A2を有し、複数の層間導体4は、第1領域A1に形成されている第1層間導体41と、第1層間導体41の密度よりも高い密度で第2領域A2に形成されている第2層間導体42と、を含み、第1層間導体41の端部の厚さは、第2層間導体42の端部の厚さと略同じか大きく、第1層間導体41の中央部の厚さは、第2層間導体42の中央部の厚さよりも大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する2つの表面を有していて、前記2つの表面の間を貫く貫通孔を備える絶縁層と、
前記2つの表面の一方及び他方にそれぞれ形成されている第1導体層及び第2導体層と、
前記貫通孔を囲む壁面に沿ってそれぞれ膜状に形成されていて前記第1導体層と前記第2導体層とを接続する複数の層間導体と、
を含む配線基板であって、
前記配線基板は、それぞれに前記複数の層間導体の一部が形成されている第1領域及び第2領域を有し、
前記複数の層間導体は、前記第1領域に形成されている第1層間導体と、前記第1領域における前記第1層間導体の密度よりも高い密度で前記第2領域に形成されている第2層間導体と、を含み、
前記第1層間導体における前記絶縁層の厚さ方向の端部の厚さは、前記第2層間導体における前記厚さ方向の端部の厚さと略同じか大きく、
前記第1層間導体における前記厚さ方向の中央部の厚さは、前記第2層間導体における前記厚さ方向の中央部の厚さよりも大きい。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板であって、前記第1層間導体の前記中央部の厚さと前記第2層間導体の前記中央部の厚さとの差である第1差異が、前記第1層間導体の前記端部の厚さと前記第2層間導体の前記端部の厚さとの差である第2差異よりも大きい。
【請求項3】
請求項2記載の配線基板であって、前記第1差異は、前記第2差異の2倍以上、5倍以下である。
【請求項4】
請求項1記載の配線基板であって、前記第1層間導体の前記中央部の厚さは、前記第2層間導体の前記中央部の厚さの1.5倍以上、3倍以下である。
【請求項5】
請求項1記載の配線基板であって、前記第1層間導体の前記中央部の厚さは、前記第1層間導体の前記端部の厚さの1.5倍以上、3倍以下である。
【請求項6】
請求項1記載の配線基板であって、
前記第1層間導体及び前記第2層間導体は、それぞれ、前記壁面に接する下層膜と、前記下層膜上に形成されていて電解めっき膜からなる上層膜とを含んでおり、
前記第1層間導体に含まれる前記上層膜の前記中央部での厚さと前記第2層間導体に含まれる前記上層膜の前記中央部での厚さとの差が、前記第1層間導体に含まれる前記上層膜の前記端部での厚さと前記第2層間導体に含まれる前記上層膜の前記端部での厚さとの差の2倍以上、5倍以下である。
【請求項7】
請求項1記載の配線基板であって、
前記第1領域における前記第1層間導体の密度は、0.6個/mm2以上、1.2個/mm2以下であり、
前記第2領域における前記第2層間導体の密度は、6個/mm2以上、10個/mm2以下である。
【請求項8】
請求項1記載の配線基板であって、前記絶縁層の厚さは、1.0mm以上、2.0mm以下である。
【請求項9】
請求項1記載の配線基板であって、前記貫通孔の内径は150μm以上、200μm以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、3つのスルーホール群が互いに異なる配列密度でコア基板のそれぞれの領域に配列されている配線基板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-192432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の配線基板では、スルーホール群の配列密度の高い領域と低い領域との間で、互いに同じ大きさの導体パターンに接続されるスルーホールの数が異なっていると考えられる。そのため、スルーホール群の配列密度の高い領域と低い領域との間で、スルーホールによって接続されるコア基板の表裏の導体パターン間の電気抵抗が異なることがある。各導体層内の領域ごとに導体パターンの電気的特性に差異が生じ、配線基板を用いる機器において所望の性能が得られないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の配線基板は、対向する2つの表面を有していて、前記2つの表面の間を貫く貫通孔を備える絶縁層と、前記2つの表面の一方及び他方にそれぞれ形成されている第1導体層及び第2導体層と、前記貫通孔を囲む壁面に沿ってそれぞれ膜状に形成されていて前記第1導体層と前記第2導体層とを接続する複数の層間導体と、を含んでいる。そして、前記配線基板は、それぞれに前記複数の層間導体の一部が形成されている第1領域及び第2領域を有し、前記複数の層間導体は、前記第1領域に形成されている第1層間導体と、前記第1領域における前記第1層間導体の密度よりも高い密度で前記第2領域に形成されている第2層間導体と、を含み、前記第1層間導体における前記絶縁層の厚さ方向の端部の厚さは、前記第2層間導体における前記厚さ方向の端部の厚さと略同じか大きく、前記第1層間導体における前記厚さ方向の中央部の厚さは、前記第2層間導体における前記厚さ方向の中央部の厚さよりも大きい。
【0006】
本発明の実施形態によれば、配線基板の表裏の導体層同士を接続する層間導体の領域間での配置密度の差異による表裏の導体層間の電気抵抗の領域間でのばらつき及び各導体層の厚さのむらが小さいことがある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態の配線基板の一例を示す断面図。
図2図1の配線基板の平面図。
図3A図1のIIIA部の拡大図。
図3B図1のIIIB部の拡大図。
図4A】一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図4B】一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図4C】一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図4D】一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図4E】一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図4F】一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図4G】一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
図4H】一実施形態の配線基板の製造工程の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態の配線基板が図面を参照しながら説明される。図1には、本実施形態の配線基板の一例である配線基板1の断面図が示されている。図2には、図1の配線基板1の平面図が示されている。図1は、配線基板1の図2に示されるI-I線での断面図である。図3Aには、図1のIIIA部の拡大図が示されており、図3Bには、図1のIIIB部の拡大図が示されている。なお、配線基板1は実施形態の配線基板の一例に過ぎない。例えば、実施形態の配線基板に含まれる導体層及び絶縁層それぞれの数は、図1の配線基板1に含まれる導体層及び絶縁層それぞれの数に限定されない。すなわち、実施形態の配線基板は、配線基板1が有する絶縁層及び導体層に加えて、任意の数の絶縁層及び導体層を含み得る。なお、以下の説明で参照される各図面では、開示される実施形態が理解され易いように特定の部分が拡大して描かれていることがあり、大きさや長さに関して、各構成要素が互いの間の正確な比率で描かれていない場合がある。
【0009】
図1に示されるように、配線基板1は、絶縁層2と、絶縁層2の表面にそれぞれ形成されている導体層31(第1導体層)及び導体層32(第2導体層)と、導体層31と導体層32とを接続する複数の層間導体4と、を含んでいる。絶縁層2は、配線基板1の厚さ方向と略直交すると共に互いに対向する2つの表面として第1面2a及び第2面2bを有している。導体層31は第1面2a上に形成されており、導体層32は第2面2b上に形成されている。絶縁層2は、さらに、第1面2aと第2面2bとの間を貫く複数の貫通孔4aを備えている。複数の層間導体4は、それぞれ、複数の貫通孔4aそれぞれを囲む内壁に沿って膜状に形成されている。すなわち、各層間導体4は、部分的に膜状の形体を有していて全体的には中空部を有する筒状の形体を有している。筒状の各層間導体4の中空部は、例えばエポキシ樹脂のような任意の樹脂からなる充填体5で充填されている。図1の例の配線基板1には、部品Eが実装される。
【0010】
絶縁層2を貫通して2つの導体層(図1の例において導体層31と導体層32)同士を接続する層間導体4は、所謂スルーホール導体であり得る。層間導体4はビア導体と称されることもある。しかし、層間導体4は、絶縁層2によって覆われる導体層と他のいずれかの導体層とを接続しているのではなく、厚さ方向と交差する絶縁層2の2つの表面それぞれの上に直接形成されている導体層同士を接続する導電体である。
【0011】
図1の配線基板1は、絶縁層2と、導体層31及び導体層32と、層間導体4だけを含んでいるが、前述したように、実施形態の配線基板は、絶縁層2の第1面2a側及び第2面2b側それぞれに、さらに1組以上の絶縁層及び導体層を備えていてもよい。その場合、絶縁層2及び導体層31、32は、実施形態の配線基板のコア基板として形成されてコア基板として機能してもよい。その場合、層間導体4は、コア基板の絶縁層を貫通してその両面の導体層同士を接続するスルーホール導体であり得る。
【0012】
配線基板1は、図1及び図2に示されるように、それぞれに複数の層間導体4の一部が形成されている第1領域A1及び第2領域A2を有している。第1領域A1と第2領域A2とは別個の領域である。第1領域A1と第2領域A2は、平面視における各領域内での層間導体4の配置密度が互いに異なっている領域である。なお「平面視」は、実施形態の配線基板の厚さ方向に沿った視線で対象物を見ることを意味している。
【0013】
図2に示されるように、図1及び図2の例において第2領域A2は平面視で配線基板1の中央部を占めている。そして第1領域A1は、平面視で第2領域A2の外側の領域を占めていて第2領域A2を囲んでいる。図2に示されるように、第2領域A2は、図1に示される部品Eが配置される領域である部品領域ERと、平面視で全体的に重なっている。一方、第1領域A1は、平面視で部分的に部品領域ERと重なっている。しかし、第1領域A1及び第2領域A2それぞれが平面視において配線基板1内で占める位置、大きさ、及び形状は、図1及び図2の例に限定されない。第1領域A1及び第2領域A2は、それぞれ、平面視における配線基板1内の任意の位置において任意の大きさ及び形状を占めることができる。なお、部品Eは、例えばマイコンやメモリなどの任意の半導体集積回路装置の他、個別半導体素子や、抵抗アレイなどの受動素子などであり得る。
【0014】
このように第1領域A1及び第2領域A2を有する配線基板1では、複数の層間導体4は、第1領域A1に形成されている第1層間導体41と、第2領域A2に形成されている第2層間導体42と、を含んでいる。第2層間導体42は、第1領域A1における第1層間導体41の密度よりも高い密度で第2領域A2に形成されている。すなわち、第2領域A2における複数の層間導体4の配置密度は、第1領域A1における複数の層間導体4の配置密度よりも高い。例えば、第1領域A1における第1層間導体41の密度は、0.6個/mm2以上、1.2個/mm2以下であり得る。一方、第2領域A2における第2層間導体42の密度は、6個/mm2以上、10個/mm2以下であり得る。
【0015】
第1層間導体41及び第2層間導体42それぞれを通って任意の電気信号が伝播し得る。また、第1層間導体41及び第2層間導体42には、それぞれ任意の電位が印加され得る。例えば、第1層間導体41を通って、経時的に信号レベルが遷移する電気信号が伝播し、第2層間導体42にグランド電位又は特定の電源電位が印加されてもよい。
【0016】
絶縁層2は、例えば絶縁性樹脂を用いて形成されている。絶縁層2を構成する絶縁性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)、又はフェノール樹脂のような熱硬化性樹脂が例示される。しかし、絶縁層2の材料は、これら例示の熱硬化性樹脂に限定されず、例えば熱可塑性樹脂など、適切な絶縁性と剛性とを有し得る任意の材料を用いて形成され得る。図1の例において絶縁層2は、例えばガラス繊維やアラミド繊維などで構成される補強材(芯材)21を含んでいる。絶縁層2は、さらに、シリカやアルミナなどからなる無機フィラー(図示せず)を含んでいてもよい。絶縁層2は、例えば1.0mm以上、2.0mm以下の厚さを有し得る。
【0017】
図1及び図2の例において導体層31及び導体層32は、それぞれ、層間導体4に接続されている導体パッド301だけを含んでいる。導体パッド301は、層間導体4が前述したようにスルーホール導体である場合、所謂スルーホールパッドであり得る。しかし、本実施形態の配線基板1において導体層31、32は、それぞれ、任意の導体パターンを含み得る。
【0018】
導体層31及び導体層32、並びに層間導体4は、例えば銅又はニッケルなどの任意の金属を用いて形成されている。導体層31及び導体層32、並びに層間導体4は、それぞれ、無電解めっき、電解めっき、又はスパッタリングなどによって形成される金属膜で構成されている。導体層31、32は、さらに、銅箔やニッケル箔などの金属箔も構成要素として含み得る。すなわち、導体層31及び導体層32、並びに層間導体4は、図3A及び図3Bに明確に示されるように、2つ以上の金属膜を含む多層構造を有し得る。
【0019】
図3A図1のIIIA部の拡大図、すなわち、第1層間導体41及び第1層間導体41に接続されている導体パッド301の拡大図であり、図3B図1のIIIB部の拡大図、すなわち、第2層間導体42及び第2層間導体42に接続されている導体パッド301の拡大図である。図3A及び図3Bに示されるように、図1の例の配線基板1において導体パッド301、すなわち、導体層31及び導体層32それぞれは5層構造を有している。具体的には、導体層31及び導体層32それぞれは、絶縁層2の第1面2a又は第2面2b上に順に積層されている第1層30a、第2層30b、第3層30c、第4層30d、及び第5層30eによって構成されている。
【0020】
第1層30aは、例えば銅箔やニッケル箔などからなる金属箔層であり得、第2層30b及び第4層30dは、例えば無電解めっき膜又はスパッタ膜からなる金属膜層であり得、第3層30c及び第5層30eは電解めっき膜からなる金属膜層であり得る。なお、導体層31及び導体層32は、図3A及び図3Bに示される5層構造を必ずしも有さない。例えば、導体層31及び導体層32は、金属箔層であり得る第1層30aを含んでいなくてもよい。さらに、導体層31及び導体層32は、第4層30d及び第5層30eを含んでいなくてもよい。
【0021】
一方、第1層間導体41及び第2層間導体42は、それぞれ、貫通孔4aを囲む絶縁層2の壁面に接する下層膜40aと、下層膜40a上に形成されている上層膜40bとを含んでいてこれら2つの膜体によって構成されている。下層膜40aは、例えば無電解めっき膜又はスパッタ膜からなる金属膜であり得、上層膜40bは、電解めっき膜からなる金属膜であり得る。下層膜40aは、導体層31、32それぞれの第2層30bと一体的に形成されていて第2層30bと連続している。上層膜40bは、導体層31、32それぞれの第3層30cと一体的に形成されていて第3層30cと連続している。すなわち、下層膜40aを構成する金属膜は、貫通孔4aの内部だけでなく、導体層31、32それぞれの第1層30aの上にも形成されている。同様に、上層膜40bを構成する金属膜は、貫通孔4aの内部だけでなく、導体層31、32それぞれの第2層30b上にも形成されている。
【0022】
貫通孔4aは、絶縁層2をその厚さ方向において貫いている。貫通孔4aは、図3A及び図3Bの例では、さらに、導体層31、32それぞれの第1層30aも貫いていて、第1層30aの上面3aa(絶縁層2側と反対側の表面)に開口している。第1及び第2の層間導体41、42それぞれの下層膜40aは、絶縁層2の第1面2a側及び第2面2b側それぞれにおける貫通孔4aの開口部を介して、導体層31、32それぞれの第2層30bと連続的に形成されている。同様に、第1及び第2の層間導体41、42それぞれの上層膜40bは、貫通孔4aの各開口部を介して、導体層31、32それぞれの第3層30cと連続的に形成されている。
【0023】
図3A及び図3Bの例において貫通孔4aは、第1面2aから第2面2bまでの全長に渡って略一定の内径を有している。そのため第1及び第2の層間導体41、42は、それぞれ、第1面2aから第2面2bまでの全長に渡って略一定の外径を有している。貫通孔4aの内径、並びに第1及び第2の層間導体41、42の外径は、例えば、それぞれ、150μm以上、200μm以下である。なお、便宜上、「内径」及び「外径」という用語が用いられるが、貫通孔4a、並びに第1及び第2の層間導体41、42の断面(絶縁層2の厚さ方向と直交する断面)の形状は、円形や楕円形に限定されない。貫通孔4aの「内径」、並びに第1及び第2の層間導体41、42の「外径」は、貫通孔4a又は各層間導体における軸方向(絶縁層2の厚さ方向)と直交する断面の外周上の任意の2点間の最長距離である。なお、実施形態の配線基板において貫通孔4aの内径及び各層間導体の外径は、図3A及び図3Bの例と異なり、第1面2aから第2面2bまでの間で変化していてもよい。
【0024】
そして本実施形態の配線基板1では、第1層間導体41における絶縁層2の厚さ方向の中央部41bの厚さT1b(第1中央部厚さ)は、第2層間導体42における絶縁層2の厚さ方向の中央部42bの厚さT2b(第2中央部厚さ)よりも大きい。一方、第1層間導体41における絶縁層2の厚さ方向の端部41aの厚さT1a(第1端部厚さ)は、第2層間導体42における絶縁層2の厚さ方向の端部42aの厚さT2a(第2端部厚さ)と略同じか厚さT2aよりも大きい。
【0025】
すなわち、第2層間導体42よりも低い密度で形成されている第1層間導体41の中央部41bの厚さT1bが、第2層間導体42の中央部42bの厚さT2bよりも大きいうえに、第1層間導体41の端部41aの厚さT1aは第2層間導体42の端部42aの厚さT2aよりも小さくない。従って、個々の第1層間導体41の電気抵抗(なお、第1層間導体41及び第2層間導体42それぞれの「電気抵抗」は、各層間導体の軸方向における両端間の電気抵抗である)は、個々の第2層間導体42の電気抵抗よりも小さいと考えられる。
【0026】
導体層31の導体パターンと導体層32の導体パターン(以下、「表裏の導体パターン」とも称される)とが1以上の層間導体4(図1参照)で接続されている場合、その表裏の導体パターン間の電気抵抗は、原理的には、その表裏の導体パターン同士を接続する層間導体4、すなわち第1層間導体41又は第2層間導体42の数に反比例する。第2領域A2には、第1領域A1の第1層間導体41よりも高い密度で第2層間導体42が配置されている。そのため、これら各層間導体間の本数の差異に応じて、第2領域A2内の表裏の導体パターン間の電気抵抗と、第1領域A1内の表裏の導体パターン間の電気抵抗との間に差異が生じることがある。すなわち、平面視における配線基板1の各領域間で、表裏の導体パターン間の電気抵抗がばらつくことがある。
【0027】
しかし、本実施形態では、前述したように、第1層間導体41の中央部41bの厚さT1bが、第2層間導体42の中央部42bの厚さT2bよりも大きく、しかも、第1層間導体41の端部41aの厚さT1aは、少なくとも、第2層間導体42の端部42aの厚さT2a以上である。その結果、個々の第1層間導体41は、個々の第2層間導体42よりも小さい電気抵抗を有し得る。従って、第1層間導体41と第2層間導体42との間の配置密度の違いによる第1領域A1内の表裏の導体パターン間の電気抵抗と第2領域A2内の表裏の導体パターン間の電気抵抗との差異が軽減されると考えられる。そのため、配線基板1では、所望の電気的特性が得られ易いことがある。
【0028】
なお、第1層間導体41及び第2層間導体42それぞれの厚さは、これら各層間導体及び貫通孔4aの中心軸AXからの放射方向(径方向)における、各層間導体の外壁と内壁との間の距離である。各層間導体の厚さが中心軸AXに対する周方向において一定でない場合は、その最大の厚さと最小の厚さとの中間の厚さが各層間導体の厚さである。
【0029】
また、第1層間導体41の「端部41aの厚さT1a」及び第2層間導体42の「端部42aの厚さT2a」は、貫通孔4aの軸方向の先端での各層間導体の厚さである。すなわち、図3A及び図3Bの例では、導体層31、32それぞれの第1層30aの上面3aaの位置での各層間導体の厚さが、各層間導体の端部41aの厚さT1a又は端部42aの厚さT2aである。前述したように第1層30aは必ずしも備えられないので、第1層30aが備えられていない場合は、絶縁層2の第1面2a又は第2面2bの位置での各層間導体の厚さが、各層間導体の端部41aの厚さT1a又は端部42aの厚さT2aである。
【0030】
なお、第1層間導体41の端部41aの厚さT1aと第2層間導体42の端部42aの厚さT2aとの比較では、例えば、絶縁層2の第1面2a側の厚さT1aと厚さT2a同士が比較される。或いは、絶縁層2の第2面2b側の厚さT1aと厚さT2a同士が比較されてもよく、それら両側それぞれにおける各層間導体の端部の厚さ同士が比較されてもよい。
【0031】
また、第1層間導体41の「中央部41bの厚さT1b」は、中央部41b内での第1層間導体41の最大の厚さであり、第2層間導体42の「中央部42bの厚さT2b」は、中央部42b内での第2層間導体42の最大の厚さである。「中央部41b」及び「中央部42b」は、各層間導体と軸方向の中点Mを共有する、絶縁層2の厚さの10%の長さLを有する部分である。
【0032】
前述したように、本実施形態では、第1層間導体41の端部41aの厚さT1aは、第2層間導体42の端部42aの厚さT2aと略同じか厚さT2aよりも大きい。すなわち、第2層間導体42よりも低い密度で形成されている第1層間導体41の端部41aの厚さT1aは第2層間導体42の端部42aの厚さT2aと略同じであり得る。このような実施形態の配線基板に対して、従来では、第1層間導体41のように絶縁層を貫く所謂スルーホール導体の配置密度の低い領域では、電解めっきによるスルーホール導体の形成の際に、配置密度の高い領域と比べて、相対的に厚いめっき膜が絶縁層上に形成され易い。一方、スルーホール導体の配置密度の高い領域には、相対的に薄いめっき膜が形成され易い。そのため、絶縁層上に形成される導体層の表面に起伏が生じ、例えば配線基板上に部品が適切に実装され得ないことがある。
【0033】
しかし本実施形態では、上述の通り、互いに異なる配置密度で形成されている第1層間導体41及び第2層間導体42それぞれの端部41aの厚さT1aと端部42aの厚さT2aとが略同じであり得る。厚さT1aと厚さT2aとが異なっていても、その差は大きくないと推定される。そのため、第1層間導体41の周囲の第1面2a上の第2層30b及び第3層30cの厚さと第2層間導体42の周囲の第1面2a上の第2層30b及び第3層30cの厚さも略同じであり得、それらの厚さが異なっていてもその差は大きくないと考えられる。同様のことが、第2面2b側にも当てはまる。従って、本実施形態によれば、導体層31及び導体層32それぞれにおいて、第1領域A1と第2領域A2との間で厚さの差が生じ難く、各導体層の表面の起伏も生じ難いと考えられる。従って本実施形態の配線基板1には部品が適切に実装され、高い実装品質が得られることがある。
【0034】
このような実施形態の配線基板1では、第1層間導体41の中央部41bの厚さT1bと第2層間導体42の中央部42bの厚さT2bとの差(第1差異)が、第1層間導体41の端部41aの厚さT1aと第2層間導体42の端部42aの厚さT2aとの差(第2差異)よりも大きくてもよい。前述したように、導体層31及び導体層32において表面の起伏が生じ難く、しかも、第1領域A1内の電気抵抗と第2領域A2内の電気抵抗との差異が軽減されることがある。好ましくは、第1差異(厚さT1bと厚さT2bとの差)は、第2差異(厚さT1aと厚さT2aとの差)の2倍以上、5倍以下である。前述した導体層31、32の表面における起伏発生の抑制効果や、第1及び第2領域A1、A2間での電気抵抗の差異の軽減効果が得られると共に、第1及び第2の層間導体41、42の形成に過大な時間を要しないことがある。
【0035】
なお、第1層間導体41の端部41aの厚さT1aが絶縁層2の第1面2a側と第2面2b側とで異なっている場合は、第1面2a側の厚さ及び第2面2b側の厚さの中間の厚さが、第2層間導体42の端部42aの厚さT2aと比較される。同様に、第2層間導体42の端部42aの厚さT2aが絶縁層2の第1面2a側と第2面2b側とで異なっている場合は、第1面2a側の厚さ及び第2面2b側の厚さの中間の厚さが、第1層間導体41の端部41aの厚さT1aと比較される。
【0036】
また、実施形態の配線基板1では、第1層間導体41の中央部41bの厚さT1bは、第2層間導体42の中央部42bの厚さT2bの1.5倍以上、3倍以下であり得る。前述した第1及び第2の領域A1、A2間での電気抵抗の差異の軽減効果が得られると共に、第1及び第2の層間導体41、42の形成に過大な時間を要しないことがある。また、第1層間導体41の中央部41bの厚さT1bは、第1層間導体41の端部41aの厚さT1aの1.5倍以上、3倍以下であり得る。端部41aにおいて第2層間導体42の端部42aとの間の厚さの差異の増大を抑制しながら、中央部41bにおいて第2層間導体42の中央部42bとの間で、上述したような有意な厚さの差異を実現し得ることがある。
【0037】
図3Aに示されるように、第1層間導体41の内壁は、端部41aよりも中央部41bにおいて貫通孔4aの内側に向かって凸となるように湾曲している。具体的には、第1層間導体41を構成する上層膜40bの内壁が、端部41aよりも中央部41bにおいて貫通孔4aの内側に向かって凸となるように湾曲している。これに対して、下層膜40aの内壁は、図3Aに示される断面において、絶縁層2の第1面2aと第2面2bとの間で略平坦であり、下層膜40aの厚さは、貫通孔4aの軸方向において略一定である。すなわち、上層膜40bの厚さは、絶縁層2の第1面2a側及び第2面2b側それぞれにおける端部41aよりも中央部41bで大きい。その結果、第1層間導体41の中央部41bの厚さT1bが、端部41aの厚さT1aよりも大きくなっている。
【0038】
一方、図3Bに示されるように、第2層間導体42を構成する下層膜40a及び上層膜40bそれぞれの厚さは、絶縁層2の第1面2aと第2面2bとの間で略一定である。そのため、第1層間導体41を構成する上層膜40bの中央部41bでの厚さは、第2層間導体42を構成する上層膜40bの中央部42bでの厚さよりも大きい。対して、第1層間導体41を構成する上層膜40bの端部41aでの厚さは、第2層間導体42を構成する上層膜40bの端部42aでの厚さと略同じか僅かに大きい。第1層間導体41に含まれる上層膜40bの中央部41bでの厚さと第2層間導体42に含まれる上層膜40bの中央部42bでの厚さとの差は、第1層間導体41に含まれる上層膜40bの端部41aでの厚さと第2層間導体42に含まれる上層膜40bの端部42aでの厚さとの差の2倍以上、5倍以下であり得る。前述した、第1層間導体41と第2層間導体42との間の厚さに関する第1差異と第2差異との好ましい比率が得られることがある。
【0039】
つぎに、図1の配線基板1が製造される場合を例に、一実施形態の配線基板を製造する方法の一例が、図4A図4Hを参照して説明される。
【0040】
図4Aに示されるように、配線基板1の絶縁層2となる絶縁層と、この絶縁層の両表面にそれぞれ積層された銅箔3aを含む両面銅張積層板10が用意され、複数の貫通孔4aが形成される。両面銅張積層板10の絶縁層は、例えばエポキシ樹脂などの絶縁性樹脂を用いて形成されており、ガラス繊維などによって構成される補強材21を含んでいる。複数の貫通孔4aは、貫通孔4aの密度が互いに異なる2つの領域(第1領域A1及び第2領域A2)を生じさせる位置であって、複数の層間導体4(図1参照)が形成されるべき所定の位置に形成される。図4Aの例において、貫通孔4aについて第1領域A1の密度よりも高い密度を有する第2領域A2が生じている。貫通孔4aは、例えば、ドリル加工によって形成される。
【0041】
図4Bに示されるように、貫通孔4aを囲む絶縁層2の内壁上、及び銅箔3aの表面上の全面に、例えば銅などからなる金属膜3bが形成される。金属膜3bは、例えば、スパッタリングや無電解めっきによって形成される。金属膜3bの一部が、第1及び第2の層間導体41、42それぞれの下層膜40a(図3A及び図3B参照)、並びに、導体層31、32の第2層30b(図3A及び図3B参照)を構成する。
【0042】
そして、図4Cに示されるように、金属膜3bの全面に、例えば銅などからなる金属膜3cが形成される。すなわち、金属膜3cは、貫通孔4a内の金属膜3bの表面、及び銅箔3a上の金属膜3bの表面の全面に形成される。貫通孔4a内に金属膜3bの一部及び金属膜3cの一部からなり、中空部を有する筒状の形体の複数の層間導体4が形成される。第1領域A1内の貫通孔4a内には、複数の層間導体4のうちの第1層間導体41が形成されており、第2領域A2内の貫通孔4a内には第2層間導体42が形成されている。金属膜3cの一部は、層間導体4の上層膜40b(図3A及び図3B参照)を構成する。金属膜3cの他の一部は、導体層31、32の第3層30c(図3A及び図3B参照)を構成する。金属膜3cは、金属膜3bを給電層として用いる電解めっきによって形成される。
【0043】
図4D及び図4Eには、それぞれ、図4CのIVD部及びIVE部の拡大図が示されている。すなわち、図4Dには、第1層間導体41及びその周辺の拡大図が示され、図4Eには、第2層間導体42及びその周辺の拡大図が示されている。図4D及び図4Eに示されるように、金属膜3cは、端部41aでの第1層間導体41の厚さT1aが端部42aでの第2層間導体42の厚さT2aと略同じか厚さT2aよりも大きく、中央部41bでの第1層間導体41の厚さT1bが中央部42bでの第2層間導体42の厚さT2bよりも大きくなるように形成される。
【0044】
好ましくは、金属膜3cは、中央部41bでの第1層間導体41の厚さT1bと中央部42bでの第2層間導体42の厚さT2bとの差が、端部41aでの第1層間導体41の厚さT1aと端部42aでの第2層間導体42の厚さT2aとの差よりも大きくなるように形成される。例えば、金属膜3cは、厚さT1bと厚さT2bとの差が、厚さT1aと厚さT2aとの差の2倍以上になるように形成される。さらに、金属膜3cは、中央部41bでの第1層間導体41の厚さT1bが、端部41aでの第1層間導体41の厚さT1aの1.5倍以上になるように形成されてもよい。その結果、中央部41bにおいて貫通孔4aの内側に向かって凸となるように湾曲する内壁を有する第1層間導体41が形成されてもよい。
【0045】
図4D及び図4Eに例示の形体を有する第1層間導体41及び第2層間導体42は、例えば金属膜3cを形成する電解めっきをパルスめっきで行うことによって形成され得る。パルスめっきでは、金属膜3bを陰極として用いる通電の合間に、短時間の逆方向の通電が周期的に行われる。この逆方向の通電中に、流動するめっき液に晒され続ける絶縁層2の表面部では、一旦付着した金属イオンが離脱するため、めっき膜の成長速度が制限される。一方、貫通孔4a内の部分は、新鮮なめっき液に触れにくく、そのため逆方向の通電中も金属イオンの離脱が起こり難いので、絶縁層2の表面部と比べてめっき膜の成長速度が制限され難い。さらに、第1領域A1では、貫通孔4aの密度が第2領域A2よりも低いため、通電時の電流密度が高く、そのため、上述した絶縁層2の表面部と貫通孔4a内の部分とのめっき膜の成長速度の違いをもたらすパルスめっきの作用が顕著に生じ易い。結果として、図4D及び図4Eに示されるような互いに異なる形体を有する第1層間導体41及び第2層間導体42が形成され得る。さらに、電解めっき液の組成や液温、及びパルス通電の条件を適切に調整することによって、第1領域A1及び第2領域A2それぞれにおいて、所望の形体に近い第1及び第2の層間導体41、42、とりわけ、中央部41bにおいて厚い第1層間導体41を形成し得ると考えられる。
【0046】
図4Fに示されるように、複数の層間導体4それぞれの中空部が充填体5で充填される。例えば、エポキシ樹脂などの樹脂が、絶縁層2の第1面2a側及び第2面2b側のいずれか又は両方から各層間導体4の中空部に注入される。層間導体4の中空部に注入された樹脂は、必要に応じて加熱などによって固化される。任意に、充填体5における第1面2a側及び第2面2b側それぞれの端面が、化学機械研磨などの任意の方法で研磨される。
【0047】
図4Gに示されるように、金属膜3cのうちの絶縁層2の第1面2a及び第2面2bそれぞれの上の部分及び充填体5の両端面の上に、例えば銅などからなる金属膜3dが形成される。金属膜3dは、例えば、無電解めっきやスパッタリングによって形成される。さらに金属膜3d上に、例えば銅などからなる金属膜3eが、金属膜3dを給電層として用いる電解めっきによって形成される。金属膜3d及び金属膜3eによって、層間導体4に対する、所謂蓋めっきが形成される。金属膜3d、3eの形成の結果、それぞれ5層構造の導体層31及び導体層32が形成される。導体層31は、絶縁層2の第1面2a上に形成され、導体層32は、第2面2b上に形成される。金属膜3dの一部は導体層31、32それぞれの第4層30d(図3A及び図3B参照)を構成し、金属膜3eの一部は導体層31、32それぞれの第4層30e(図3A及び図3B参照)を構成する。
【0048】
図4Hに示されるように、導体層31、32が、それそれ、所望の導体パターンを含むようにパターニングされる。例えば、適切な開口を有するエッチングマスクが導体層31、32上に設けられ、導体31、32の不要部分がウェットエッチングやドライエッチングによって除去される。その結果、図1に示される配線基板1が完成する。
【0049】
実施形態の配線基板は、各図面に例示される構造、並びに、本明細書において例示される構造、形状、及び材料を備えるものに限定されない。前述したように、実施形態の配線基板は、図1の例の絶縁層2及び導体層31、32以外に、任意の数の導体層及び絶縁層を含み得る。層間導体4の中空部は必ずしも充填体5で充填されず、空洞のままであってもよい。第2層間導体42の内壁が、中央部42bにおいて貫通孔4aの内側に向かって湾曲していてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 配線基板
2 絶縁層
2a 第1面
2b 第2面
31 導体層
32 導体層
4 層間導体(スルーホール導体)
4a 貫通孔
40a 下層膜
40b 上層膜
41 第1層間導体
41a 端部
41b 中央部
42 第2層間導体
42a 端部
42b 中央部
A1 第1領域
A2 第2領域
T1a 第1層間導体の端部の厚さ
T1b 第1層間導体の中央部の厚さ
T2a 第2層間導体の端部の厚さ
T2b 第2層間導体の中央部の厚さ
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H