(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044126
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】半導体記憶装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10B 43/27 20230101AFI20240326BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H01L27/11582
H01L29/78 371
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149481
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 晃太郎
【テーマコード(参考)】
5F083
5F101
【Fターム(参考)】
5F083EP18
5F083EP22
5F083EP32
5F083EP76
5F083ER21
5F083GA10
5F083GA11
5F083JA04
5F083JA19
5F083JA39
5F083MA06
5F083MA16
5F083MA19
5F083PR03
5F083PR05
5F101BA46
5F101BB02
5F101BD16
5F101BD22
5F101BD30
5F101BD34
5F101BE07
5F101BH14
5F101BH15
(57)【要約】
【課題】電気的特性の向上を図ることができる半導体記憶装置および半導体装置の製造方法を提供することである。
【解決手段】実施形態の半導体記憶装置は、第1積層体および第1柱状部をもつ第1領域と、第2積層体および第2柱状部をもつ第2領域と、を持つ。第1積層体は、酸素を含む複数の第1絶縁膜と複数の第1導電膜とが第1方向に交互に積層される。第1柱状部は、第1積層体内において、半導体層を含み、第1方向に延びる。第2積層体は、複数の第1絶縁膜と、複数の第2絶縁膜と、複数の第3絶縁膜とを、第1絶縁膜、第2絶縁膜、第3絶縁膜の順に、第1方向に繰り返し積層される。第2絶縁膜は窒素を含む。第3絶縁膜は酸素および水素の少なくとも一つと窒素とを含む。第2柱状部は、第2積層体内において、半導体層を含み、第1方向に延びる。第1領域と前記第2領域は、第1方向とは交差した第2方向に沿って隣り合う。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素を含む複数の第1絶縁膜と複数の第1導電膜とが第1方向に交互に積層された第1積層体と、
前記第1積層体内において、半導体層を含み、前記第1方向に延びる第1柱状部と
を有する第1領域と、
酸素を含む前記複数の第1絶縁膜と、窒素を含む複数の第2絶縁膜と、酸素および水素の少なくとも一つと窒素とを含む複数の第3絶縁膜とを、前記第1絶縁膜、前記第2絶縁膜、前記第3絶縁膜の順に、第1方向に繰り返し積層された第2積層体と、
前記第2積層体内において、前記半導体層を含み、前記第1方向に延びる第2柱状部と、
を有する第2領域と
を備え、
前記第1領域と前記第2領域は、前記第1方向とは交差した第2方向に沿って隣り合う半導体記憶装置。
【請求項2】
前記第3絶縁膜の平均水素濃度が15原子%超である、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
前記第3絶縁膜の平均酸素濃度が5原子%超である、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
前記第3絶縁膜の膜厚は1nm以上である、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項5】
前記第1絶縁膜の膜厚が20nm以下、前記第2絶縁膜の膜厚が30nm以下である、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項6】
前記第1積層体を前記第1方向に貫通し、前記第1方向および前記第2方向と交差する第3方向に延びる第1絶縁体を備え、
前記第1領域と前記第2領域とは、前記第1絶縁体によって、前記第2方向に分断され、
前記第2領域の前記第1領域側の第1端部および前記第1領域側とは反対側の第2端部のうち、前記第1端部側のみに前記第1絶縁体が設けられている、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項7】
酸素を含む複数の第1絶縁膜と複数の第1導電膜とが第1方向に交互に積層された第1積層体と、
前記第1積層体内において、半導体層を含み、前記第1方向に延びる第1柱状部と
を有する第1領域と、
酸素を含む前記複数の第1絶縁膜と、酸素および水素の少なくとも一つと窒素とを含む第4絶縁膜とを、前記第1方向に交互に積層された第3積層体と、
前記第3積層体内において、前記半導体層を含み、前記第1方向に延びる第2柱状部と、
を有する第2領域と
を備え、
前記第1領域と前記第2領域は、前記第1方向とは交差した第2方向に沿って隣り合う半導体記憶装置。
【請求項8】
酸素を含む第1絶縁膜と、窒素を含む第2絶縁膜と、酸素および水素の少なくとも一つと窒素とを含む第3絶縁膜とを、前記第1絶縁膜、前記第2絶縁膜、前記第3絶縁膜の順に、第1方向に積層することを繰り返すことで第4積層体を形成する積層工程と、
炭素およびフッ素を含むガスを用いて前記第4積層体をドライエッチングすることで、前記第1方向に沿う穴を前記第4積層体に形成するエッチング工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記積層工程において、
前記第3絶縁膜の平均水素濃度を20原子%超に制御する、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記積層工程において、
前記第3絶縁膜の平均酸素濃度を5原子%超に制御する、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記第3絶縁膜の膜厚は1nm以上である、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第1絶縁膜の膜厚が20nm以下、前記第2絶縁膜の膜厚が30nm以下である、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
酸素を含む第1絶縁膜と、窒素と、酸素もしくは水素とを含む第4絶縁膜とを、交互に第1方向に積層することを繰り返すことで第5積層体を形成する積層工程と、
炭素およびフッ素を含むガスを用いて前記第5積層体をドライエッチングすることで、前記第1方向に沿う穴を前記第5積層体に形成するエッチング工程と、
を含む半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体記憶装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板と、基板の表面と交差する第1方向に積層された複数の配線層と、これら複数の配線層を貫通して第1方向に延びるメモリピラーと、を備える半導体記憶装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、電気的特性の向上を図ることができる半導体記憶装置および半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の半導体記憶装置は、第1積層体および第1柱状部をもつ第1領域と、第2積層体および第2柱状部をもつ第2領域と、を持つ。第1積層体は、酸素を含む複数の第1絶縁膜と複数の第1導電膜とが第1方向に交互に積層される。第1柱状部は、第1積層体内において、半導体層を含み、第1方向に延びる。第2積層体は、複数の第1絶縁膜と、複数の第2絶縁膜と、複数の第3絶縁膜とを、第1絶縁膜、第2絶縁膜、第3絶縁膜の順に、第1方向に繰り返し積層される。第2絶縁膜は窒素を含む。第3絶縁膜は酸素および水素の少なくとも一つと窒素とを含む。第2柱状部は、第2積層体内において、半導体層を含み、第1方向に延びる。第1領域と前記第2領域は、第1方向とは交差した第2方向に沿って隣り合う。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態の半導体記憶装置およびメモリコントローラを示すブロック図。
【
図2】実施形態の半導体記憶装置のメモリセルアレイの一部の等価回路を示す図。
【
図3】実施形態の半導体記憶装置の一部を示す平面図。
【
図4】実施形態の半導体記憶装置の一部を示す断面図。
【
図5A】実施形態の半導体記憶装置の第1柱状体およびその近傍を示す断面図。
【
図5B】実施形態の半導体記憶装置の第2柱状体およびその近傍を示す断面図。
【
図6】実施形態の半導体記憶装置の第1柱状体およびその近傍を示す断面図。
【
図7】実施形態の半導体記憶装置の導電膜の近傍を拡大した断面図。
【
図8A】実施形態の半導体記憶装置の製造方法を説明するための断面図。
【
図8B】実施形態の半導体記憶装置の製造方法を説明するための断面図。
【
図9】実施形態の半導体記憶装置の製造方法を説明するための断面図。
【
図10】実施形態の半導体記憶装置の製造方法を説明するための断面図。
【
図11】実施形態の半導体記憶装置の製造方法を説明するための断面図。
【
図12】実施形態の変形例の半導体記憶装置の一部を示す断面図。
【
図13A】実施形態の変形例の半導体記憶装置の製造方法を説明するための断面図。
【
図13B】実施形態の変形例の半導体記憶装置の製造方法を説明するための断面図。
【
図14A】比較例の半導体記憶装置の製造方法におけるメモリホール形成時のメモリホール近傍を示す断面図。
【
図14B】実施形態の半導体記憶装置の製造方法におけるメモリホール形成時のメモリホール近傍を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の半導体記憶装置および半導体装置の製造方法を、図面を参照して説明する。以下の説明では、同一又は類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。図面は模式的又は概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率等は、必ずしも現実のものと同一とは限らない。本出願において「接続」とは、物理的に接続される場合に限定されず、電気的に接続される場合も含む。本出願において「平行」、「直交」、または「同一」とは、それぞれ「略平行」、「略直交」、または「略同一」である場合も含む。本出願において「A方向に延びている」とは、例えば、後述するX方向、Y方向、及びZ方向の各寸法のうち最小の寸法よりもA方向の寸法が大きいことを意味する。ここでいう「A方向」は任意の方向である。
【0008】
また先に、+X方向、-X方向、+Y方向、-Y方向、+Z方向、および-Z方向について定義する。+X方向、-X方向、+Y方向、および-Y方向は、後述する基板30の表面(
図4参照)に沿う方向である。+X方向は、後述する分離部81(
図3参照)の延びる方向のうちの一方向である。-X方向は、+X方向とは反対方向である。+X方向と-X方向とを区別しない場合は、単に「X方向」と称する。+Y方向および-Y方向は、X方向とは交差する(例えば直交する)方向である。+Y方向は、後述するビットラインBL(
図4参照)が延びた方向のうちの一方向である。-Y方向は、+Y方向とは反対方向である。+Y方向と-Y方向とを区別しない場合は、単に「Y方向」と称する。+Z方向および-Z方向は、X方向およびY方向とは交差する(例えば直交する)方向であり、基板30(
図4参照)の厚さ方向である。+Z方向は、基板30から後述するビットラインBLに向かう方向である。-Z方向は、+Z方向とは反対方向である。+Z方向と-Z方向とを区別しない場合は、単に「Z方向」と称する。Z方向は半導体記憶装置1の形成に使用される基板30の表面に対する鉛直方向に対応している。本明細書では、「+Z方向」を「上」、「-Z方向」を「下」と称する場合がある。ただしこれら表現は、便宜上のものであり、重力方向を規定するものではない。+Z方向は、「第1方向」の一例である。+Y方向は、「第2方向」の一例である。+X方向は、「第3方向」の一例である。
【0009】
以下で参照される図面のうち、平面図及び断面図のそれぞれでは、図を見易くするために、配線、コンタクト、層間絶縁膜等の一部の構成要素の図示が適宜省略されている。
【0010】
(実施形態)
<1.半導体記憶装置の構成>
図1は、半導体記憶装置1およびメモリコントローラ2を示すブロック図である。半導体記憶装置1は、不揮発性の半導体記憶装置であり、例えばNAND型フラッシュメモリである。半導体記憶装置1は、メモリコントローラ2によって、制御される。半導体記憶装置1とメモリコントローラ2との間の通信は、例えば、NANDインターフェイス規格をサポートしている。半導体記憶装置1は、例えば、メモリセルアレイ10、ロウデコーダ11、センスアンプ12、及びシーケンサ13を備える。
【0011】
メモリセルアレイ10は、複数のブロックBLK0~BLKn(nは1以上の整数)を含む。各ブロックBLKは、不揮発性のメモリセルトランジスタMT(
図2参照)の集合である。メモリセルアレイ10には、複数のビットライン及び複数のワードラインが設けられている。各メモリセルトランジスタMTは、1本のビットラインと1本のワードラインとに関連付けられている。メモリセルアレイ10の詳細な構成については後述する。
【0012】
ロウデコーダ11は、外部のメモリコントローラ2から受信したアドレス情報ADDに基づいて、1つのブロックBLKを選択する。ロウデコーダ11は、複数のワードラインのそれぞれに、所望の電圧を印可することで、メモリセルアレイ10に対するデータの書き込み動作及び読み出し動作を制御する。
【0013】
センスアンプ12は、メモリコントローラ2から受信した書き込みデータDATに応じて、各ビットラインに所望の電圧を印加する。センスアンプ12は、ビットラインの電圧に基づいてメモリセルトランジスタMTに記憶されたデータを判定し、判定した読み出しデータDATをメモリコントローラ2に送信する。
【0014】
シーケンサ13は、メモリコントローラ2から受信したコマンドCMDに基づいて、半導体記憶装置1全体の動作を制御する。
【0015】
以上で説明した半導体記憶装置1は、「半導体装置」の一例である。また、上記の半導体記憶装置1及びメモリコントローラ2は、これらの組み合わせにより1つのメモリシステムを構成してもよい。メモリシステムは、例えばメモリカードや、SSD(Solid State Drive)等が挙げられる。なお、「半導体装置」は、半導体記憶装置1に限らず、例えば記憶機能を有しない半導体装置でもよい。
【0016】
次に、メモリセルアレイ10の電気的な構成について説明する。
図2は、メモリセルアレイ10の一部の等価回路を示す図である。
図2は、メモリセルアレイ10に含まれた一つのブロックBLKを抽出して示している。ブロックBLKは、複数(例えば4つ)のストリングSTR0~STR3を含む。
【0017】
各ストリングSTR0~STR3は、複数のNANDストリングスNSの集合体である。各NANDストリングスNSの一端は、ビットラインBL0~BLm(mは1以上の整数)のいずれかに接続されている。NANDストリングスNSの他端は、ソースラインSLに接続されている。各NANDストリングスNSは、複数のメモリセルトランジスタMT0~MTn(nは1以上の整数)、第1選択トランジスタS1、及び第2選択トランジスタS2を含む。
【0018】
複数のメモリセルトランジスタMT0~MTnは、電気的に互いに直列に接続されている。メモリセルトランジスタMTは、制御ゲート及びメモリ積層膜を含み、データを不揮発に記憶する。メモリセルトランジスタMTは、制御ゲートに印加された電圧に応じて、メモリ積層膜の状態を変化させる。例えば、メモリ積層膜に含まれる電荷蓄積膜に電荷を蓄積する。メモリセルトランジスタMTの制御ゲートは、対応するワードラインWL0~WLnのいずれかに接続されている。メモリセルトランジスタMTは、ワードラインWLを介して、ロウデコーダ11と電気的に接続されている。
【0019】
各NANDストリングスNSにおける第1選択トランジスタS1は、複数のメモリセルトランジスタMT0~MTnと、いずれかのビットラインBL0~BLmとの間に接続されている。第1選択トランジスタS1のドレインは、いずれかのビットラインBL0~BLmに接続されている。第1選択トランジスタS1のソースは、メモリセルトランジスタMTnに接続されている。各NANDストリングスNSにおける第1選択トランジスタS1の制御ゲートは、いずれかの選択ゲートラインSGD0~SGD3に接続されている。
第1選択トランジスタS1は、選択ゲートラインSGDを介して、ロウデコーダ11と電気的に接続されている。第1選択トランジスタS1は、所定の電圧が選択ゲートラインSGD0~SGD3のうち当該第1選択トランジスタS1に対応する選択ゲートラインSGDに印可された場合に、NANDストリングスNSとビットラインBLとを接続する。
【0020】
各NANDストリングスNSにおける第2選択トランジスタS2は、複数のメモリセルトランジスタMT0~MTnと、ソースラインSLとの間に接続されている。第2選択トランジスタS2のドレインは、メモリセルトランジスタMT0に接続されている。第2選択トランジスタS2のソースは、ソースラインSLに接続されている。第2選択トランジスタS2の制御ゲートは、選択ゲートラインSGSに接続されている。第2選択トランジスタS2は、選択ゲートラインSGSを介して、ロウデコーダ11と電気的に接続されている。第2選択トランジスタS2は、所定の電圧が選択ゲートラインSGSに印可された場合に、NANDストリングスNSとソースラインSLとを接続する。
【0021】
なお、メモリセルアレイ10は、上記で説明した以外のその他の回路構成であってもよい。例えば、各ブロックBLKが含む各ストリングSTRの個数、各NANDストリングスNSが含むメモリセルトランジスタMT、ならびに選択トランジスタSTD及びSTSの個数は、変更されてもよい。また、NANDストリングスNSが1つ以上のダミートランジスタを含んでいてもよい。
【0022】
図3は、本実施形態の半導体記憶装置1の一部を示す平面図である。
図4は、
図3におけるA-A’面に沿った断面図である。
図5Aは、セルアレイ領域CAにおける第1柱状体CL1の近傍を拡大した断面図である。
図5Bは、端部領域EAにおける第2柱状体CL2の近傍を拡大した断面図である。
【0023】
図3、
図4に示すように、本実施形態の半導体記憶装置1は、メモリセルアレイ10と、例えば、メモリセルアレイ10のX方向の両端部に設けられた階段部分Sとを含む。各スリットSTは、一方の階段部分Sから、メモリセルアレイ10を経て、他方の階段部分Sまで設けられている。
【0024】
<1.1 メモリセルアレイ>
次に、半導体記憶装置1のメモリセルアレイ10の構造の一例について説明する。
メモリセルアレイ10は、セルアレイ領域を有する。セルアレイ領域には、NANDストリングスNSが集積される。
【0025】
半導体記憶装置1のメモリセルアレイ10は、
図3、
図4に示すように、基板30、回路層PE、セルアレイ領域CA、及び端部領域EAを有する。本実施形態において、セルアレイ領域CAは「第1領域」の一例であり、端部領域EAは「第2領域」の一例である。
【0026】
セルアレイ領域CAは、複数の絶縁膜24と複数の導電膜25とがZ方向に交互に積層された第1積層体20Aと、半導体ボディ61を含む第1柱状部CL1と、を有する。本実施形態において、絶縁膜24は「第1絶縁膜」の一例であり、導電膜25は「第1導電膜」の一例である。半導体ボディ61は「第1半導体層」の一例である。
【0027】
端部領域EAは、
図4、
図5Bに示すように、複数の絶縁膜24と、複数の積層絶縁膜26とがZ方向に交互に積層された第2積層体20Bと、半導体ボディ61を含む第2柱状部CL2と、を有する。積層絶縁膜26は、
図5Bに示すように、絶縁膜26aと絶縁膜26bとを有する。つまり、第2積層体20Bは、複数の絶縁膜24と、複数の絶縁膜26aと、複数の絶縁膜26bとを、絶縁膜24、絶縁膜26a、絶縁膜26bの順にZ方向に交互に積層されて構成される。本実施形態において、絶縁膜26aは「第2絶縁膜」の一例である。絶縁膜26bは「第3絶縁膜」の一例である。
【0028】
基板30は、例えば、シリコン基板である。基板30の表面領域には、複数の素子分離領域30Aがある。素子分離領域30Aは、例えば、シリコン酸化物を含む。Y方向に隣り合う素子分離領域30Aの間には、トランジスタTrのソース領域及びドレイン領域がある。
【0029】
回路層PEは、基板30上にある。回路層PEは、半導体記憶装置1のロウデコーダ11、センスアンプ12、及びシーケンサ13を含む。回路層PEは、例えば、複数のトランジスタTrと複数の配線層D0,D1と複数のビアC1,C2を含む。複数のトランジスタTr、複数の配線層D0,D1及び複数のビアC1,C2は、絶縁層E1内にある。絶縁層E1は、例えば、シリコン酸化物を含む。ビアC1は、トランジスタTrのソース領域又はドレイン領域と配線層D0とを接続する。ビアC2は、トランジスタTrのゲート領域と配線層D1とを接続する。ビアC1,C2及び配線層D0,D1は、例えば、タングステンを含む。
【0030】
(セルアレイ領域CA)
セルアレイ領域CAは、第1積層体20Aと、半導体ボディ61を含む複数の第1柱状部CL1と、を有する。
第1積層体20Aは、Z方向に、導電膜21、複数の導電膜25、絶縁膜22、および複数の絶縁膜24を有する。導電膜21および複数の導電膜25は、それぞれX方向及びY方向に広がる。絶縁膜22および複数の絶縁膜24は、それぞれX方向及びY方向に広がる。複数の絶縁膜24と複数の導電膜25は、Z方向に1層ずつ交互に積層されている。
【0031】
絶縁膜22は、導電膜21と導電膜25との間にある。絶縁膜24は、Z方向に隣り合う導電膜25の間にある。絶縁膜24は、Z方向で隣り合う2つの導電膜25の間を絶縁する。絶縁膜24の層数は、導電膜25の層数によって決まる。絶縁膜24の膜厚は、例えば、20nm以下である。絶縁膜22と複数の絶縁膜24は、例えば、シリコン酸化物を含む。
【0032】
複数の導電膜25は、それぞれX方向及びY方向に広がる。すなわち、それぞれの導電膜25は、X方向およびY方向に沿って広がった板状に形成される。導電膜25は、例えば、タングステン、または不純物がドープされたポリシリコンである。導電膜25の層数は、任意である。
【0033】
複数の導電膜25は、Z方向に積層された複数の第1導電膜25Aと、Z方向で基板30と複数の第1導電膜25Aとの間に位置した第2導電膜25Bと、Z方向で複数の第1導電膜25Aに対して基板30とは反対側に位置した第3導電膜25Cとを含む。複数の導電膜25は、例えば、機能的に3つに分けられる。複数の導電膜25は、ソース側の選択ゲートラインSGS、ワードラインWL、ドレイン側の選択ゲートラインSGDのいずれかとして機能する。
【0034】
複数の導電膜25のうち、第1積層体20Aの下から少なくとも1層の第2導電膜25Bは、ソース側の選択ゲートライン(ソース側選択ゲートライン)SGSとして機能する。ソース側選択ゲートラインSGSとして機能する導電膜25は、単層でも複数層でもよい。すなわち、ソース側選択ゲートラインSGSは、1層の導電膜25によって構成されてもよいし、複数の導電膜25によって構成されてもよい。また、ソース側選択ゲートラインSGSが複数層で構成される場合、導電膜25のそれぞれが、互いに異なる導電体によって構成されてもよい。
【0035】
導電膜25のうち、第1積層体20Aの上から少なくとも1層の第3導電膜25Cは、ドレイン側の選択ゲートライン(ドレイン側選択ゲートライン)SGDとして機能する。ドレイン側選択ゲートラインSGDとして機能する第3導電膜25Cは、単層でも複数層でもよい。すなわち、ドレイン側選択ゲートラインSGDは、1層の第3導電膜25Cによって構成されてもよいし、複数の第3導電膜25Cによって構成されてもよい。また、ドレイン側選択ゲートラインSGDが複数層で構成される場合、第3導電膜25Cのそれぞれが、互いに異なる導電体によって構成されてもよい。
【0036】
複数の導電膜25のうち、ソース側選択ゲートラインSGSおよびドレイン側選択ゲートラインSGD以外の導電膜25は、ワードラインWLとして機能する。ワードラインWLとして機能する導電膜25は、例えば、柱状体CL1の外周を囲む。
【0037】
導電膜21は、回路層PEの上方に配置される。導電膜21は、半導体層21A,21B,21Cを含む。半導体層21Aは、回路層PE上にある。半導体層21Aは、例えばn型の半導体である。半導体層21Aは、例えば、不純物がドープされたポリシリコンである。半導体層21Bは、半導体層21A上にある。半導体層21Bは、第1柱状体CL1の半導体層61と接する。半導体層21Bは、例えば不純物がドープされたエピタキシャル膜である。半導体層21Bは、例えば、リンを含む。半導体層21Cは、半導体層21B上にある。半導体層21Cは、例えばn型又はノンドープの半導体である。
【0038】
カバー絶縁層50,51は、第1積層体20Aの最上層の導電膜25cの上方にある。カバー絶縁層50,51は、第1積層体20AとビットラインBLとの間を絶縁する。カバー絶縁層50,51は、例えば、シリコン酸化物を含む。
【0039】
ビットラインBLは、カバー絶縁層51の上方に、例えばY方向に延伸したライン状に形成され、柱状体CL1と電気的に接続される。複数のビットラインBLは、図示せぬ領域において、X方向に配列されている。
【0040】
複数の柱状体CL1は、積層体20A内に設けられている。複数の柱状体CL1は、それぞれZ方向に延びている。複数の柱状体CL1は、例えば、それぞれ積層体20AをZ方向に貫通する。柱状体CL1の下部は、半導体層21Aに接している。柱状体CL1の上部は、カバー絶縁層50に接している。柱状体CL1の具体的な構造の詳細は後述する。
【0041】
(端部領域EA)
端部領域EAは、Y方向においてセルアレイ領域CAと隣接した、メモリセルアレイ10の端部に位置する領域である。端部領域EAは、第2積層体20Bと、半導体ボディ61を含む複数の第2柱状部CL2と、を有する。
第2積層体20Bは、Z方向に、導電膜21、絶縁膜22、複数の絶縁膜24、複数の絶縁膜26a、および複数の絶縁膜26bを有する。絶縁膜24、絶縁膜26a、絶縁膜26bは、Z方向において、この順にて繰り返し積層されている。複数の絶縁膜26aと、複数の絶縁膜26bは、それぞれX方向及びY方向に広がる。端部領域EAにおける導電膜21および絶縁膜22の構成は、セルアレイ領域CAにおけるそれらと同様である。
【0042】
複数の絶縁膜24は、それぞれX方向及びY方向に広がる。複数の絶縁膜24は、例えば、シリコン酸化物を含む。絶縁膜24は、Z方向に隣り合う絶縁膜26aおよび絶縁膜26bの間にある。絶縁膜24の層数は、絶縁膜26aおよび絶縁膜26bの層数によって決まる。絶縁膜24の膜厚は、例えば、20nm以下である。
【0043】
複数の絶縁膜26aは、それぞれX方向及びY方向に広がる。すなわち、それぞれの絶縁膜26aは、X方向およびY方向に沿って広がった板状に形成される。絶縁膜26aは、例えば、シリコン窒化物を含む。絶縁膜26aの層数は、任意である。絶縁膜26aの膜厚は、例えば、30nm以下である。
【0044】
複数の絶縁膜26bは、それぞれX方向及びY方向に広がる。すなわち、それぞれの絶縁膜26bは、X方向およびY方向に沿って広がった板状に形成される。絶縁膜26bは、絶縁膜26a上に設けられ、かつ絶縁膜24の下方に位置する。絶縁膜26bは、例えば、シリコン窒化物を含み、さらに、酸素もしくは水素を含む。絶縁膜26bの層数は、絶縁膜26aの層数によって決まり、例えば、絶縁膜26aの層数と同一としてよい。
【0045】
複数の絶縁膜26bは、ドライエッチングによるメモリホールMH形成時、メモリホールMH内の側壁にフッ化カーボン(CF)が付着することを抑制する機能を有する。絶縁膜26aと絶縁膜24との間に絶縁膜26bを設けることによって得られる作用および効果については、後に詳述する。
【0046】
絶縁膜26bの平均水素濃度は15原子%超である。後に詳述するが、シリコン窒化物(SiN)を含む絶縁膜26bに水素を含有させることで、メモリホールMH形成時、メモリホールMH内の側壁にフッ化カーボン(CF)が付着することを抑制することができる。その結果、比較例のメモリセルアレイで生じていた、絶縁膜26aと絶縁膜24との界面におけるSiN欠けの量(つまり、欠けサイズ)を減少することが可能となる。SiN欠けの量が多くなると、駆動電圧のバラつきが大きくなり、電気的特性の不安定化を招くおそれがあるが、絶縁膜26bの平均水素濃度を15原子%以上とすることで、SiN欠けの量を低減でき、電気的特性の安定化を図ることができる。この効果をより享受するためには、絶縁膜26bの平均水素濃度は19原子%以上とすることが好ましい。なお、SiN欠けの寸法を3nm以下に低減し、電気的特性の安定化をより高めるためには、絶縁膜26bの平均水素濃度は19.8原子%以上とすることがより好ましい。
【0047】
ここで、「SiN欠け」について
図14A、14Bを用いて説明する。
図14A、14Bはともに、SiN欠けの発生メカニズムを説明する概略図である。
図14Aは、比較例のメモリホール形成時のメモリホール近傍を示す断面図である。
図14Bは、本実施形態のメモリホール形成時のメモリホール近傍を示す断面図である。
【0048】
「SiN欠け」とは、メモリホール形成時、つまりドライエッチング時に使用するガス(CxFy系ガス)由来のフッ化カーボン(CF)が、メモリホール内の側壁に付着および堆積することにより、導電膜と絶縁膜との間の界面に発生する“欠け”である。具体的には、
図14Aに示すように、シリコン酸化物を含む絶縁膜124とシリコン窒化物を含む絶縁膜126が交互に積層された積層体にメモリホールMHを形成するが、メモリホールMHの形成は、CxFy系ガスを用いたドライエッチングにより実施される。この時、
図14Aに示すように、CxFy系ガス由来のフッ化カーボン(CF)が、メモリホールMH内の側壁に付着し、フッ化カーボン膜(CF膜)CFFとして堆積していく。ただし、メモリホールMH内の側壁に露出している絶縁膜124および絶縁膜126のうち、シリコン窒化物を含む絶縁膜126の方にフッ化カーボン膜CFFが付着しやすい傾向があるため、絶縁膜126の側壁のフッ化カーボン膜CFFが大きくなる。つまり、メモリホールMH内の側壁に堆積するフッ化カーボン膜CFFの膜厚に差が生じる。そして、絶縁膜126の側壁のフッ化カーボン膜CFFが大きくなると、フッ化カーボン膜CFFのZ方向における上面にエッチングガスが衝突し(図中の矢印Q参照)、それに伴い、CF膜を構成するフッ素が絶縁膜124および絶縁膜126との界面に沿って熱拡散し(図中、矢印R参照)、結果、絶縁膜126の上側の表面(界面)で、SiN欠けPが発生してしまう。このようなSiN欠けPが生じた状態で、メモリホールMH内に各柱状部の構成要素(例えば、電荷蓄積膜、カバー絶縁膜など)が形成されると、当該構成要素がSiN欠けP内に入り込んでしまい、書き込み電圧のバラつきが生じるなど、電気的特性が劣化してしまうおそれがあった。
【0049】
そこで、本実施形態では、
図14Bに示すように、絶縁膜26a上に絶縁膜26bを設けることで、メモリホールMH内の側壁にフッ化カーボン膜CFFが付着することを抑制することができるため、絶縁膜26aおよび絶縁膜26bの側面に堆積するCF膜の薄膜化を図ることができる。これにより、フッ素の熱拡散量が低減され、結果、SiN欠けPのサイズを小さくすることができる。これは、絶縁膜26b中に含有される水素が有効に作用しているためと推察される。具体的には、窒素元素に比べ、水素元素は炭素元素と結合しやすく、かつ、メモリホールMH内の側壁からの炭素元素の脱離を促す作用を有するため、フッ化カーボン膜CFFの堆積量を低減できると考えられる。
【0050】
絶縁膜26b中に含有される元素としては、水素に代わって酸素であっても構わない。酸素を絶縁膜26bに含有させた場合でも、上記で述べたような水素含有による効果を発揮させることができる。上記効果を発揮させるためには、絶縁膜26b中の平均酸素濃度は5原子%超とする。好ましくは、10原子%以上である。なお、SiN欠けの寸法を3nm以下に低減し、電気的特性の安定化をより高めるためには、絶縁膜26bの平均酸素濃度は17原子%以上とすることがより好ましく、さらに好ましくは33.9原子%以上である。
【0051】
なお、絶縁膜26b中に、水素と酸素がともに含有されても構わない。その場合でも、上記効果を享受できる。絶縁膜26b中に水素および酸素をともに含有させる場合には、合計含有量は19原子%以上とすることが好ましい。
【0052】
複数の絶縁膜26bそれぞれの膜厚は、0.5nm以上であることが好ましい。絶縁膜26bの膜厚が0.5nm以上である場合、安定して、メモリホールMH形成時におけるメモリホールMH内側壁へのフッ化カーボンの付着を抑制することができる。そしてその結果、SiN欠けの量を低減でき、電気的特性の安定化を図ることができる。複数の絶縁膜26bそれぞれの膜厚は、より好ましくは、1nm以上である。
【0053】
端部領域EAにおけるカバー絶縁層50、ビットBLは、セルアレイ領域CAにおけるカバー絶縁層50、ビットBLと同様の構成である。
【0054】
複数の柱状体CL2は、積層体20B内に設けられている。複数の柱状体CL2は、それぞれZ方向に延びている。複数の柱状体CL2は、例えば、それぞれ積層体20BをZ方向に貫通する。柱状体CL2の下部は、半導体層21Aに接している。柱状体CL2の上部は、カバー絶縁層50に接している。柱状体CL2の具体的な構造は柱状体CL1と同様であるが、端部領域EAにおける柱状体CL2は、メモリの動作には寄与しない、いわゆるダミーピラーである。
【0055】
図5Aは、セルアレイ領域CAにおける第1柱状体CL1の近傍を拡大した断面図である。
図5Bは、端部領域EAにおける第2柱状体CL2の近傍を拡大した断面図である。
図6は、第1柱状体CL1の近傍を導電膜25に沿って切断した断面図である。
図5Aおよび
図5Bは、第1柱状体CL1及び第2柱状体CL2をYZ面で切断した断面であり、
図6は、柱状体CLをXY面で切断した断面である。複数の第1柱状体CL1および複数の第2柱状体CL2のそれぞれは、メモリホールMH内に形成され、内側から順に、絶縁コア60、半導体層61、及びメモリ積層膜62を有する。
【0056】
絶縁コア60は、Z方向に延び、柱状である。絶縁コア60は、例えば、シリコン酸化物を含む。絶縁コア60は、Z方向から見てメモリホールMHの中心軸を含む中央部に設けられる。
【0057】
半導体層61は、Z方向に延びる。半導体層61は、例えば環状に形成され、絶縁コア60の外側面(外周面)を被覆する。半導体層61は、例えばシリコンを含む。シリコンは、例えばアモルファスシリコンを結晶化させたポリシリコンである。半導体層61は、第1選択トランジスタS1、複数のメモリセルトランジスタMT及び第2選択トランジスタS2のそれぞれのチャネルとして機能する。ここでいう「チャネル」とは、ソース側とドレイン側との間におけるキャリアの流路である。
【0058】
メモリ積層膜62は、Z方向に延びる。メモリ積層膜62は、半導体層61の外側面(外周面)を被覆する。メモリ積層膜62は、メモリホールMHの内側面(内周面)と半導体層61の外側面(外周面)との間にある。メモリ積層膜62は、例えば、トンネル絶縁膜63、電荷蓄積膜64、及びカバー絶縁膜65を含む。これら複数の膜は、半導体層61側から、トンネル絶縁膜63、電荷蓄積膜64、カバー絶縁膜65の順で設けられる。
【0059】
トンネル絶縁膜63は、半導体層61の外側面を被覆する。すなわち、トンネル絶縁膜63は、電荷蓄積膜64と半導体層61との間に位置する。トンネル絶縁膜63は、例えばシリコン酸化物、又は、シリコン酸化物とシリコン窒化物とを含む。トンネル絶縁膜63は、半導体層61と電荷蓄積膜64との間の電位障壁である。
【0060】
電荷蓄積膜64は、トンネル絶縁膜63の外側面を被覆する。すなわち、電荷蓄積膜64は、それぞれの導電膜25とトンネル絶縁膜63との間に位置する。電荷蓄積膜64は、例えばシリコン窒化物を含む。電荷蓄積膜64と複数の導電膜25のそれぞれとが交差する部分は、それぞれメモリセルトランジスタMTとして機能する。電荷蓄積膜64が複数の導電膜25のそれぞれと交差する部分(電荷蓄積部)内の電荷の有無、又は、蓄積された電荷量によって、メモリセルトランジスタMTはデータを保持する。電荷蓄積膜64は、それぞれの導電膜25と半導体層61との間にあり、周りを絶縁材料で囲まれている。
【0061】
カバー絶縁膜65は、セルアレイ領域CAの場合、
図5Aに示すように、例えば、それぞれの絶縁層24と電荷蓄積膜64との間に位置する。カバー絶縁膜65は、例えばシリコン酸化物を含む。カバー絶縁膜65は、加工時に電荷蓄積膜64をエッチングから保護する。カバー絶縁膜65は、なくてもよいし、導電層25と電荷蓄積膜64との間に一部残して、ブロック絶縁膜として用いてもよい。なお、端部領域EAの場合は、絶縁膜26aおよび絶縁膜26bがリプレース処理による影響を受けていない(つまり、残存している)ため、カバー絶縁膜65は、
図5AのようにZ方向に分断されることなく、電荷蓄積膜64の外側面を被覆する。端部領域EAにおけるカバー絶縁膜65の外側面は、絶縁膜24、絶縁膜26a、および絶縁膜26bと接している。
【0062】
また、セルアレイ領域CAにおいては、それぞれの導電膜25と絶縁膜24との間、及び、それぞれの導電膜25とメモリ積層膜62との間には、ブロック絶縁膜25a、バリア膜25bを有してもよい。ブロック絶縁膜25aは、バックトンネリングを抑制する。バックトンネリングは、導電膜25からメモリ積層膜62への電荷が戻る現象である。バリア膜25bは、導電膜25とブロック絶縁膜25aとの間の密着性を向上させる。ブロック絶縁膜25aは、例えばシリコン酸化膜又は金属酸化物膜である。金属酸化物の一例は、アルミニウム酸化物である。バリア膜25bは、例えば導電膜25がタングステンの場合、一例として窒化チタンとチタンとの積層構造膜である。
【0063】
図7は、導電膜21の近傍を拡大した断面図である。
図7は、導電膜21および第1柱状体CL1をY方向およびZ方向に平行な面(YZ面)で切断した断面である。導電膜21は、上述のように例えば、半導体層21A、半導体層21B、半導体層21Cを含む。導電層21は、複数の第1柱状体CL1それぞれに接続されている。導電膜21は、例えばX方向およびY方向に沿って広がった板状に形成され、ソースラインSLとして機能する。なお、端部領域EAにおける導電膜21も、
図7と同様の構造であってもよい。
【0064】
ここで本実施形態の半導体記憶装置1は、
図3に示すように、Z方向からの平面視で、複数のスリットSTおよびスリットSHEを有する。複数のスリットSTは、第1積層体20AをY方向に区分する、もしくは第1積層体20Aと第2積層体20BをY方向に区分する溝である。すなわち、スリットSTにより、セルアレイ領域CAと端部領域EAとがY方向に分断されている。複数のスリットSTはいずれも、X方向に延びる。
【0065】
複数のスリットSTはいずれも深いスリットであり、第1積層体20Aおよび第2積層体20Bを貫通し、カバー絶縁層50の上面から導電膜21まで至る。スリットST内は、第1分離部81が配置されている。第1分離部81は、例えば、シリコン酸化物を含む絶縁体である。Y方向に隣り合うスリットST間にある第1積層体20Aは、ブロック(
図1の「BLKn」参照)と呼ばれ、例えば、データ消去の最小単位を構成する。なお、第1分離部81内には、導電体(例えば、タングステン、Poly-Siなど)が配置されていてもよい。第1分離部81は、「第1絶縁体」の一例である。
【0066】
複数のスリットSHEは浅いスリットであり、カバー絶縁層50の上面から第1積層体20Aの途中、および第2積層体20Bの途中まで設けられている。スリットSHE内は、第2分離部82が配置されている。第2分離部82は、例えば、シリコン酸化物を含む絶縁体である。Y方向に隣り合う隣接する2つのスリットSHEで区切られる領域が、いわゆるストリング(STR)である。
【0067】
尚、半導体記憶装置1のメモリセルアレイの平面レイアウトは、
図3に示すレイアウトに限らず、その他のレイアウトであってもよい。例えば、隣り合う1つのストリング内における第1柱状体CL1の個数及び配置は、適宜変更されうる。
【0068】
<1.2 作用>
上述したように、端部領域EAとセルアレイ領域CAは、スリットSTによって分断されている。端部領域EAは上記の通り、メモリセルアレイ10のY方向の端部に位置する。当該端部は、後述する製造方法で説明するように、リプレース時にスリットSTから投入されるエッチング液が到達しない(影響しない)領域である。つまり、端部領域EAに位置する積層体のうち、スリットSTからY方向に一定の距離離れた領域は、犠牲膜である絶縁膜26bが除去されることなく残存する。ただし、この端部領域EAはメモリとして機能しない領域なので、絶縁膜26bが残存する(つまり、導電膜25に置換されない)ことによる悪影響はなく、半導体記憶装置1の機能としては何ら問題ない。
【0069】
本実施形態では、端部領域EAにおいて、絶縁膜24と絶縁膜26aとの間に、リプレース時にメモリホールMH内の側壁へのCF膜の付着を抑制するための層として、絶縁膜26bを設けている。これは、メモリホールMH形成時のSiN欠けを防ぐためである。
SiN欠けが生じると、上記の通り、メモリホールMH内に設けられる各柱状部の構成要素(例えば、電荷蓄積膜64、カバー絶縁膜65)の一部がSiN欠け内に入り込んでしまい、書き込み電圧のバラつきが生じるなど、電気的特性が劣化してしまうことがある。
【0070】
そこで、本実施形態では、絶縁膜24aの上(つまり+Z方向)に、水素および/または酸素を含むシリコン窒化物を含む絶縁膜26bを設けた上で、ドライエッチングによってメモリホールMHを形成することで、SiN欠けの量(つまりサイズ)を小さくすることができる(
図14B参照)。なお、本実施形態の半導体記憶装置1の場合、絶縁膜26aは端部領域EAに存在するが、製法の途中段階では、セルアレイ領域CAの形成領域にも絶縁膜26aは存在する。ただし、セルアレイ領域CAの形成領域に存在していた絶縁膜26aは、リプレース処理によって導電膜25に置き換わってしまうため、最終形態である半導体記憶装置1のセルアレイ領域CAには絶縁膜26aは残存しない。しかし、製法の途中段階では、端部領域EA、セルアレイ領域CAの各形成領域に絶縁膜26aは存在しているため、セルアレイ領域CAのSiN欠けも、比較例よりも小さくできる。ここでいう「SiN欠けの寸法」とは、絶縁膜26bと絶縁膜24との間の界面における欠けのY方向の最大長さを指す。
【0071】
なお、上記でも説明したが、メモリセルアレイ10の大部分(ただし端部領域EA除く)では、リプレースによって絶縁膜26a及び絶縁膜26bは導電膜25に置き換わる。そのため、少なくともセルアレイ領域CAでは、絶縁膜26a及び絶縁膜26bは除去されてしまい残存しない。しかし、端部領域EAはリプレースの影響がないため、リプレースが絶縁膜26bを用いて実施されたかどうかは、端部領域EAにおける積層体20Bの構成、つまり端部領域EAにて絶縁膜26bが残存しているかどうかで判別できる。
【0072】
以上説明したように、本実施形態の半導体記憶装置1では、端部領域EAにおいて、絶縁膜24と絶縁膜26aとの間に、リプレース時にメモリホールMH内の側壁へのCF膜の付着を抑制するための層として、絶縁膜26bが設けられているため、SiN欠け量を小さくすることができる。その結果、半導体記憶装置1の電気的特性を向上させることができる。
【0073】
<2.半導体装置の製造方法>
次に、本実施形態の半導体装置の製造方法について説明する。以下では、半導体装置の一例として、本実施形態の半導体記憶装置1を例に挙げ、その製造方法について説明する。
図8A~
図11は、本実施形態の半導体記憶装置1の製造方法を説明するための断面図である。なお、
図8Bは、
図8A中の領域Xの拡大図である。
【0074】
まず、
図8Aに示すように、基板30内に素子分離領域30Aを形成し、トランジスタTrを回路層PE内に形成する。トランジスタTrは、公知の方法で作製できる。また回路層PE内において、トランジスタTrと電気的に接続される複数の配線層D0,D1及び複数のビアC1,C2を絶縁層E1内に形成する。複数の配線層D0,D1及び複数のビアC1,C2は、公知の方法で作製できる。
【0075】
次いで、回路層PEの上に、半導体層21A、中間膜21Ba、第1犠牲膜21Bb、中間膜21Bc、半導体層21C、絶縁膜22を順に積層する。中間膜21Ba及び中間膜21Bcは、例えば、シリコン酸化物を含む。第1犠牲膜21Bbは、例えば、シリコン窒化物である。半導体層21A、半導体層21C、絶縁膜22は、上述のものと同様である。
【0076】
次いで、
図8Aに示すように、絶縁膜22上に、絶縁膜24、積層絶縁膜26を、交互に積層していく(積層工程)。積層絶縁膜26は、具体的には、
図8Bに示すように、絶縁膜26aと絶縁膜26bを、絶縁膜24上に、Z方向に交互に積層することで形成する。絶縁層24は、上述のものであり、例えばシリコン酸化物を含む。絶縁膜26aは、例えばシリコン窒化物を含む。絶縁膜26bは、例えばシリコン窒化物を含み、さらに水素または/および酸素を含む。
【0077】
絶縁膜26bの平均水素濃度は20原子%超としてよい。絶縁膜26bに含まれる水素は、メモリホールMH形成時、メモリホールMH内の側壁にCF膜が付着することを抑制する作用を有する。当該作用を発揮させるためには、絶縁膜26bの平均水素濃度は20原子%超とする。好ましくは24.9原子%以上、より好ましくは31.8原子%以上である。なお、絶縁膜26bの水素濃度は、積層工程後に実施されるアニール処理によって、減少する。そのため、アニール後の絶縁膜26b中の平均水素濃度は、積層工程時の平均水素濃度から、例えば、5原子%前後減少する場合がある。すなわち、本実施形態の製造方法における平均水素濃度は、アニール処理前の平均水素濃度である。
【0078】
絶縁膜26b中に含有する元素として、水素に変わって酸素であっても構わない。酸素を絶縁膜26bに含有させた場合でも、CFの付着抑制効果を発揮させることができる。絶縁膜26b中に酸素を含有させる場合、平均酸素濃度は5原子%超とする。好ましくは、10原子%以上である。なお、SiN欠けの寸法を3nm以下に低減し、電気的特性の安定化をより高めるためには、絶縁膜26bの平均酸素濃度は17原子%以上とすることがより好ましく、さらに好ましくは33.9原子%以上である。なお、絶縁膜26b中に、水素と酸素がともに含有されても構わない。
【0079】
ここで、絶縁膜26bの成膜方法について説明する。
絶縁膜26bは、シリコン窒化物を含む絶縁膜(以下、SiN膜ともいう)26a同様に、シリコン窒化物を主成分とする膜であり、当該シリコン窒化物に水素または/および酸素が添加された組成を有する。つまり、SiN膜26aと絶縁膜26bは、ともにSiNを主成分とする点で共通する。よって、SiN膜26aと絶縁膜26bは、それぞれを個別に成膜してもよいが、プラズマCDV(Chemical Vapor Deposition)によって連続して成膜することも可能である。例えば、SiN膜26aの成膜途中で成膜条件を適宜変更することで絶縁膜26bを成膜できる。具体的には、水素を含有させる場合、例えば、絶縁膜26aの成膜途中で、圧力、高周波電源の電力(HFパワー(W))、SiH4ガスの流量、およびNHガスの流量のいずれか1つ以上の条件を変更することで、絶縁膜26b中の水素濃度を上記範囲内に調整できる。例えば、SiN中の水素濃度を高めたい場合は、SiH4ガスの流量を大きくすればよい。また、絶縁膜26b中に酸素を含有させる場合は、N2Oガスの流量を変更することで、絶縁膜26b中の酸素濃度を上記範囲内に調整できる。絶縁膜26b中に、水素および酸素をともに含有させる場合には、上記条件を適宜組み合わせることで、各元素の濃度調整を実現できる。
【0080】
次いで、最上部に位置する絶縁膜26b上に、カバー絶縁層50を成膜して積層体20を形成する。
【0081】
次いで、
図9に示すように、
図8Aに示す積層体20にメモリホールMHを形成する。メモリホールMHは、積層体20の上面から半導体層21Aの途中まで至る。メモリホールMHは、エッチングにより作製する。例えば、積層体20の上面から半導体層21Aまで異方性エッチングする。
【0082】
異方性エッチングは、例えば炭素元素とフッ素元素とを含むガスGを用いて行われる。ガスGは、例えばCxHyFzガスを含んでいる。ただし、Cは炭素、Hは水素、Fはフッ素を表し、xは1以上の整数、yは0以上の整数、zは1以上の整数を表す(x≧1、y≧0、z≧1)。y=0の場合、CxHyFzはフルオロカーボンであり、y≠0の場合、CxHyFzはハイドロフルオロカーボンである。CxHyFzガスは、例えばC4F6ガス、C4F8ガス、CH2F2ガスなどである。
【0083】
上記エッチング処理では、CxHyFzガスから生じたCxHyFzプラズマによりエッチングが行われると共に、メモリホールMHに露出した絶縁膜24、絶縁膜26aの表面などに側壁膜が形成される。側壁膜は例えば、炭素元素とフッ素元素とを含むフルオロカーボン膜(CF膜)である。しかし、本実施形態の製造方法では、絶縁膜26a上に、水素および/または酸素を含む絶縁膜26bを設けるため、上記エッチング処理時、メモリホールMHに露出した絶縁膜26aの表面にCF膜が付着されにくい。その結果、積層体20全体において、SiN欠けの量(サイズ)を減少させることができる。
【0084】
次いで、メモリホールMH内にメモリ積層膜62、半導体層61、絶縁コア60を順に形成する。メモリホールMHは、メモリ積層膜62、半導体層61及び絶縁コア60で埋められる。これにより、メモリホールMH内に第1柱状体CL1および第2柱状体CL2が形成される。第1柱状体CL1および第2柱状体CL2に対し、適宜、アニール処理が施されてもよい。
【0085】
次いで、第1柱状体CL1および第2柱状体CL2が形成された積層体20上にカバー絶縁層51を成膜する。その後、積層体20に複数のスリットSTを形成する。スリットSTは、深いスリットであり、積層体20の上面から犠牲膜21Bbの途中まで延びる。スリットSTは、異方性エッチングにより形成する。スリットSTの内壁には、ストッパ膜を形成する。ストッパ膜は、例えばシリコン酸化物である。
【0086】
次いで、スリットSTを介して犠牲膜21Bbを等方性エッチングする。犠牲膜21Bbは、等方性エッチングにより除去される。等方性エッチングは、シリコン酸化物と比較して、シリコン窒化物をより早くエッチングできるエッチャントを用いて行う。またさらなるエッチングによりメモリ積層膜62の一部も除去される。メモリ積層膜62のうち、犠牲膜21Bbが除去されて露出した部分が除去される。メモリ積層膜62の一部が除去されることで、半導体層61の一部が露出する。メモリ積層膜62のエッチングは、シリコン窒化物と比較して、シリコン酸化物をより早くエッチングできるエッチャントを用いて行う。メモリ積層膜62のエッチングにおいては、メモリ積層膜62と同時に、中間膜21Ba、21Bcおよびストッパ膜も除去される。半導体層21Aと半導体層21Cとの間には、空間が形成される。
【0087】
次いで、
図9に示すように、スリットSTを介して、当該空間内を半導体材料で埋め込み、半導体層21Bを形成する。これにより、露出した半導体層61と半導体層21Bとが接触する。半導体層21Bの材料は、上述のものである。半導体層21Bは、例えば、リンを含む。
【0088】
次いで、
図10に示すように、絶縁膜26aおよび絶縁膜26bを導電膜25(25A、25B、25C)に置換する。まずスリットSTを介して、絶縁膜26aおよび絶縁膜26bを除去する。絶縁膜26aおよび絶縁膜26bは、等方性エッチングにより除去される。等方性エッチングは、シリコン酸化物及びポリシリコンと比較してシリコン窒化物をより早くエッチングできるエッチャントを用いる。ただしこの時、端部領域EAの一部は、エッチャントが到達しない(影響しない)ため、犠牲膜である絶縁膜26aおよび絶縁膜26bが除去されることなく残存する。つまり、絶縁膜26aおよび絶縁膜26bは導電膜25に置換されない。
【0089】
その後、絶縁膜26aおよび絶縁膜26bが除去された部分を導電材料で埋め込み、導電層25(25A、25B、25C)を形成する。これにより第1積層体20Aおよび第2積層体2Bが形成される。
【0090】
次いで、スリットST内を絶縁体で埋め込むことで第1分離部81を形成する。これにより、セルアレイ領域CAと端部領域EAがY方向に分断される。
【0091】
次に、
図11に示すように、複数のスリットSHEを形成する。複数のスリットSHEはいずれも、少なくとも第1積層体20Aおよび第2積層体20Bの上面から、第3導電層25C(ドレイン側選択ゲートラインSGD)に対応する深さまで至る。複数のスリットSHEは、エッチングにより作製する。例えば、第1積層体20Aおよび第2積層体20Bの上面から第3導電層25C(ドレイン側選択ゲートラインSGD)に対応する深さまで異方性エッチングする。異方性エッチングは、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)である。次いで、複数のスリットSHE内を絶縁体で埋め込むことで第2分離部82を形成する。
【0092】
次いで、第1積層体20Aおよび第2積層体20Bの上方にビットラインBLを設ける。
以上の工程により、本実施形態の半導体記憶装置1が作製される。なおここで示した製造工程は一例であり、各工程の間にその他の工程を挿入してもよい。
【0093】
<3.実施形態の変形例>
次に、実施形態の変形例について説明する。
図12は、本変形例の半導体記憶装置1Aの端部領域EAの一部を示す断面図である。
本変形例は、端部領域EAに第3積層体20Cを有する。端部領域EAの第3積層体20Cにおいて、絶縁膜24と、窒素と、酸素もしくは水素とを含む絶縁膜26cとが、交互に積層されている点で本実施形態と異なる。すなわち、本実施形態では、シリコン窒化物を含む絶縁膜26b(例えば、シリコン窒化膜)の上に、酸素もしくは水素を含む絶縁膜26b(例えば、酸素もしくは水素含有シリコン窒化膜)が設けられていたが、本変形例では、隣り合う絶縁膜24の間のすべてにおいて酸素もしくは水素を含む絶縁膜26cが設けられている。なお、「絶縁膜26c」は第4絶縁膜の一例であり、膜組成は、絶縁膜26bと同様である。
本変形例の、以下に説明する以外の構成は、本実施形態の構成と同様である。
【0094】
本変形例における第3積層体20Cは、Z方向に、複数の絶縁膜24と、複数の絶縁膜26cとを有する。絶縁膜24、絶縁膜26cは、順にZ方向に交互に積層されている。複数の絶縁膜26cは、X方向及びY方向に広がる。
【0095】
複数の絶縁膜26cは、それぞれX方向及びY方向に広がる。すなわち、それぞれの絶縁膜26cは、X方向およびY方向に沿って広がった板状に形成される。絶縁膜26cは、Z方向に隣り合う絶縁膜24の間に設けられる。すなわち、端部領域EAの第3積層体20Cは、絶縁膜24と絶縁膜26cが、Z方向に交互に積層されて構成されている。絶縁膜26cは、例えば、シリコン窒化物を含み、さらに、酸素もしくは水素を含む。絶縁膜26cの層数は、絶縁膜24の層数によって決まり、例えば、絶縁膜24の層数と同一としてよい。
【0096】
複数の絶縁膜26cは、本実施形態の絶縁膜26bと同様に、メモリホールMH形成時、エッチングガス由来によるフッ化カーボンがメモリホールMH内の側壁に付着し、CF膜として堆積することを抑制する機能を有する。
【0097】
絶縁膜26cの平均水素濃度は15原子%超である。シリコン窒化物(SiN)を含む絶縁膜26cに水素を含有させることで、メモリホールMH形成時、メモリホールMH内の側壁にフッ化カーボン(CF)が付着することを抑制することができる。その結果、比較例のメモリセルアレイで生じていた、SiN欠けの量(つまり、欠けサイズ)を減少させることが可能となる。SiN欠けの量が一定以上となると、駆動電圧のバラつきが大きくなり、電気的特性の不安定化を招くおそれがあるが、絶縁膜26cの平均水素濃度を15原子%以上とすることで、SiN欠けの量を低減でき、電気的特性の安定化を図ることができる。この効果をより享受するためには、絶縁膜26cの平均水素濃度は19原子%以上とすることが好ましい。
【0098】
また、絶縁膜26c中に含有される元素として、水素に変わって酸素であっても構わない。水素に変わって酸素を絶縁膜26cに含有させた場合でも、上記で述べたような水素含有による効果を発揮させることができる。上記効果を発揮させるためには、絶縁膜26c中の平均酸素濃度は17原子%超とする。好ましくは、17.7原子%以上である。
【0099】
なお、絶縁膜26c中に、水素と酸素がともに含有されても構わない。その場合でも、上記効果を十分に享受できる。絶縁膜26c中に水素および酸素をともに含有させる場合には、合計含有量は19原子%以上とすることが好ましい。
【0100】
複数の絶縁膜26cそれぞれの膜厚は、10nm以上であることが好ましい。絶縁膜26cの膜厚が10nm以上である場合、安定して、メモリホールMH形成時におけるメモリホールMH内側壁へのフッ化カーボン(CF)の付着を抑制することができる。そしてその結果、SiN欠けの量を低減でき、電気的特性の安定化を図ることができる。複数の絶縁膜26cそれぞれの膜厚は、より好ましくは、0.5nm以上である。電気的特性観点から、絶縁膜26cの膜厚の上限は特に限定されないが、例えば、絶縁膜26cの膜厚は40nm以下としてよい。
【0101】
本変形例の半導体記憶装置1Aによれば、本実施形態と同様に、SiN欠け量を小さくすることができ、その結果、半導体記憶装置1Aの電気的特性を向上させることができる。また、本変形例の半導体記憶装置1Aでは、絶縁膜24上に設けられる絶縁膜26cの内部に、酸素および/または水素を含む。そのため、SiN欠け量の低減効果をより高めることができる。
【0102】
次に、本実施形態の変形例である半導体記憶装置1Aの製造方法について説明する。
図13A~
図13Bは、本実施形態の半導体記憶装置1の製造方法を説明するための断面図である。なお、
図13Bは、
図13A中の領域Yの拡大図である。
【0103】
本変形例の半導体記憶装置1Aの製造方法と、本実施形態の半導体記憶装置1の製造方法との違いは、
図13Aおよび
図13Bに示すように、絶縁膜24と絶縁膜26cを、Z方向に交互に積層する点である。
【0104】
絶縁膜26cの成膜方法は、絶縁膜26bの成膜方法と同様に、プラズマCDV(Chemical Vapor Deposition)によって成膜することができる。具体的には、絶縁膜26cに水素を含有させる場合は、例えば、SiH4ガスの流量、およびNHガスの流量のいずれか1つ以上の条件を調製することで、絶縁膜26c中の水素濃度を上記範囲内に調整できる。例えば、水素濃度を高めたい場合は、SiH4ガスの流量を大きくすればよい。また、絶縁膜26c中に酸素を含有させる場合は、N2Oガスを追加し、その流量を調製することで、絶縁膜26c中の酸素濃度を上記範囲内に調整できる。絶縁膜26c中に、水素および酸素をともに含有させる場合には、上記条件を適宜組み合わせることで、各元素の濃度調整を実現できる。
【0105】
絶縁膜24と絶縁膜26cを交互に積層した後の各工程については、上記の実施形態の半導体記憶装置1の製造方法と同様である。
【0106】
本変形例の半導体記憶装置1Aの製造方法によれば、絶縁膜24上に、酸素および/または水素を含んだシリコン窒化物である絶縁膜26cが配置される。酸素および/または水素を含んだシリコン窒化物のウェットエッチングレートは、シリコン窒化物に比べて高いため、絶縁膜26cを導電層に置換する際の処理効率を向上できる。
【0107】
以上、いくつかの実施形態について説明したが、実施形態は上記例に限定されない。例えば、メモリ膜は、分極の方向によりデータを記憶するFeFET(Ferroelectric FET)メモリに含まれる強誘電体膜であってもよい。強誘電体膜は、例えば、ハフニウム酸化物で形成される。
【0108】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0109】
1,1A…半導体記憶装置、2…メモリコントローラ、10…メモリセルアレイ、11…ロウデコーダ、12…センスアンプ、13…シーケンサ、20A…第1積層体、20B…第2積層体、21…導電膜、21A,21B,21C…半導体層、22…絶縁膜、25A…第1導電膜(WL)、25B…第2導電膜(SGS)、25C…第3導電膜(SGD)、26a,26b…絶縁膜、30…基板、50,51…カバー絶縁層、60…絶縁コア、61…半導体層、62…メモリ積層膜、63…トンネル絶縁膜、64…電荷蓄積膜、65…カバー絶縁膜、81…第1分離部、82…第2分離部、BL…ビットライン、BLK…ブロック、CL1…第1柱状体、CL2…第2柱状体、MH…メモリホール、WL…ワードライン、MT…メモリセルトランジスタ、PE…回路層、SGS…選択ゲートライン(ソース側)、SGD…選択ゲートライン(ドレイン側)、SL…ソースライン、SL…スリット、SHE…スリット、Tr…トランジスタ。