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特開2024-44134端末装置の位置を推定するための設定情報を提供する基地局装置、制御方法、及びプログラム
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  • 特開-端末装置の位置を推定するための設定情報を提供する基地局装置、制御方法、及びプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044134
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】端末装置の位置を推定するための設定情報を提供する基地局装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/20 20230101AFI20240326BHJP
   H04W 72/0453 20230101ALI20240326BHJP
   H04W 24/10 20090101ALI20240326BHJP
   H04W 72/0446 20230101ALI20240326BHJP
   H04W 52/04 20090101ALI20240326BHJP
   H04W 64/00 20090101ALI20240326BHJP
   G01S 5/02 20100101ALI20240326BHJP
【FI】
H04W72/04 136
H04W72/04 132
H04W24/10
H04W72/04 131
H04W52/04
H04W64/00
G01S5/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149506
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅原 雅人
(72)【発明者】
【氏名】柴山 昌也
【テーマコード(参考)】
5J062
5K067
【Fターム(参考)】
5J062AA08
5J062BB05
5J062CC12
5J062CC14
5J062DD03
5J062DD23
5J062FF01
5K067DD25
5K067EE02
5K067EE10
5K067GG03
5K067GG08
(57)【要約】
【課題】端末装置が在圏しているセルと異なる周波数帯域において、端末装置が送信した無線信号に基づく位置推定を行うこと。
【解決手段】基地局装置は、第1の周波数帯域で端末装置と接続し、第1の周波数帯域と異なる第2の周波数帯域においてサウンディング参照信号(SRS)を端末装置に送信させるための設定情報を端末装置へ通知し、第2の周波数帯域で動作する他の基地局装置へSRSを測定するための設定情報を通知する。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局装置であって、
第1の周波数帯域で端末装置と接続する接続手段と、
前記第1の周波数帯域と異なる第2の周波数帯域においてサウンディング参照信号(SRS)を前記端末装置に送信させるための第1の設定情報を前記端末装置へ通知すると共に、前記第2の周波数帯域で動作する他の基地局装置へ前記SRSを測定するための第2の設定情報を通知する通知手段と、
を有することを特徴とする基地局装置。
【請求項2】
前記第1の設定情報は、前記SRSを送信する際のタイミングアドバンス値(TA値)を含み、
前記通知手段は、前記他の基地局装置が前記基地局装置と同じ位置に存在する場合であって、前記第1の周波数帯域における第1のTA値が所定値を超えない場合に、当該第1のTA値を、前記第2の周波数帯域で前記SRSを送信する際の第2のTA値として、前記端末装置へ通知する、
ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項3】
前記通知手段は、前記他の基地局装置が前記基地局装置と同じ位置に存在しない場合と、前記第1のTA値が所定値を超える場合との少なくともいずれかの場合に、前記第1のTA値に1未満のスケーリングファクタを乗じた値を、前記第2のTA値として前記端末装置へ通知する、ことを特徴とする請求項2に記載の基地局装置。
【請求項4】
前記スケーリングファクタは、前記基地局装置と前記第1の周波数帯域で動作する第2の他の基地局装置の間の距離により、前記基地局装置から前記第1のTA値によって特定される距離だけ離れた位置と前記第2の周波数帯域で動作する基地局装置との間の距離を除算した値である、ことを特徴とする請求項3に記載の基地局装置。
【請求項5】
前記通知手段は、前記他の基地局装置が前記基地局装置と同じ位置に存在しない場合と、前記第1のTA値が所定値を超える場合との少なくともいずれかの場合に、前記基地局装置から前記第1のTA値によって特定される距離だけ離れた位置と前記第2の周波数帯域で動作する基地局装置との間の距離を光の速さで除算した値に基づいて特定される値を前記第2のTA値として前記端末装置へ通知する、ことを特徴とする請求項2に記載の基地局装置。
【請求項6】
前記第1の設定情報は、前記第2の周波数帯域で前記SRSを送信する際の送信電力の情報を含み、
前記通知手段は、前記第1の周波数帯域における送信電力の値と同じ値を、前記第2の周波数帯域で前記SRSを送信する際の送信電力の値として、前記端末装置へ通知し、前記他の基地局装置が前記基地局装置と同じ位置に存在しない場合には、前記SRSを繰り返し送信するための情報を、前記端末装置へ通知する、
ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項7】
前記第1の設定情報および前記第2の設定情報は、前記第2の周波数帯域で前記SRSが送信されるべき周波数および時間リソースを示す情報を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項8】
基地局装置によって実行される制御方法であって、
第1の周波数帯域で端末装置と接続することと、
前記第1の周波数帯域と異なる第2の周波数帯域においてサウンディング参照信号(SRS)を前記端末装置に送信させるための設定情報を前記端末装置へ通知することと、
前記第2の周波数帯域で動作する他の基地局装置へ前記SRSを測定するための設定情報を通知することと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項9】
基地局装置に備えられたコンピュータに、
第1の周波数帯域で端末装置と接続させ、
前記第1の周波数帯域と異なる第2の周波数帯域においてサウンディング参照信号(SRS)を前記端末装置に送信させるための設定情報を前記端末装置へ通知させ、
前記第2の周波数帯域で動作する他の基地局装置へ前記SRSを測定するための設定情報を通知させる、
ためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末装置の位置推定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムでは、端末装置の位置を特定することにより、その位置に応じた通信サービスをその端末装置に提供することができる。端末装置は、例えば、全地球航法衛星システム(GNSS)を用いて、人工衛星から送出された電波を測定することにより自装置の位置を特定し、基地局装置を介してその情報をネットワークに通知しうる。一方で、端末装置がGNSSによる測位を使用できない場合や、GNSSによる測位機能を無効化している場合などが生じうる。このような場合、例えば、複数の基地局装置が端末装置から送出された無線信号を測定し、その電波が到達したタイミング(伝搬時間)の差や到来方向に基づいて端末装置の位置を推定する、無線アクセスネットワーク(RAN)ベースの位置推定手法を使用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
RANベースの位置推定手法では、周波数特性やアンテナの形状等により、その推定精度が異なりうる。一方で、端末装置の位置推定のための無線信号の送信設定は、端末装置が在圏しているセルの周波数帯域においてのみ行うことができる。このため、端末装置の位置に、より高精度な位置推定が可能な周波数帯域が存在しているとしても、その周波数帯域での位置推定を利用することができない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、端末装置が在圏しているセルと異なる周波数帯域において、端末装置が送信した無線信号に基づく位置推定を可能とする技術を提供する。
【0005】
本発明の一態様による基地局装置は、第1の周波数帯域で端末装置と接続する接続手段と、前記第1の周波数帯域と異なる第2の周波数帯域においてサウンディング参照信号(SRS)を前記端末装置に送信させるための第1の設定情報を前記端末装置へ通知すると共に、前記第2の周波数帯域で動作する他の基地局装置へ前記SRSを測定するための第2の設定情報を通知する通知手段と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、端末装置が在圏しているセルと異なる周波数帯域において、端末装置が送信した無線信号に基づく位置推定を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】無線通信システムの構成例を示す図である。
図2】タイミングアドバンス値のスケーリングファクタを決定する手順を説明する図である。
図3】装置のハードウェア構成例を示す図である。
図4】第1の周波数帯域の基地局装置の機能構成例を示す図である。
図5】第2の周波数帯域の基地局装置の機能構成例を示す図である。
図6】端末装置の機能構成例を示す図である。
図7】無線通信システムにおいて実行される処理の流れの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0009】
(システム構成)
図1に、本実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す。無線通信システムは、例えば、第1の周波数帯域において通信サービスを提供する基地局装置101~基地局装置102と、第2の周波数帯域において通信サービスを提供する基地局装置111~基地局装置116とを含んで構成される、セルラ通信システムでありうる。端末装置121は、第1の周波数帯域と第2の周波数帯域との両方を利用可能なセルラ通信システムの端末装置であり、基地局装置101~基地局装置102、又は、基地局装置111~基地局装置116のいずれかに接続することにより、無線通信サービスの提供を受けることができる。なお、セルラ通信システムは、例えば、ロングタームエボリューション(LTE)や第5世代(5G)などの既存の規格、又は、その後継規格に従って構成され、第1の周波数帯域及び第2の周波数帯域は、それぞれ規格で規定された周波数帯域でありうる。
【0010】
ここで、端末装置121は、基地局装置101が形成しているセルに在圏中であるものとする。基地局装置101は、通常、接続状態となった端末装置121に対して、自装置が通信サービスを提供している第1の周波数帯域での通信のための設定情報を提供する。端末装置121は、この設定情報に基づいて、第1の周波数帯域において、基地局装置101との通信を行う他、例えば、サウンディング参照信号(SRS)などの所定の信号を送信する。基地局装置101は、SRSを測定することにより、チャネルの状態を特定することができる。また、基地局装置101は、例えば、SRSの受信タイミングや到来方向を特定し、第1の周波数帯域を使用する他の基地局装置(基地局装置102など)において同様に特定されたSRSの受信タイミングや到来方向に基づいて、端末装置121の位置を推定することができる。例えば、基地局装置101は、他の基地局装置において特定された受信タイミングと自装置において特定された受信タイミングとの、電波の到来時間差に基づいて、位置推定を行いうる。また、基地局装置101は、他の基地局装置において特定された到来方向と自装置において特定した到来方向とに基づく位置推定を行ってもよい。
【0011】
一方で、第2の周波数帯域が、第1の周波数帯域と比べて高い周波数帯域である場合、第2の周波数帯域の電波の減衰量が第1の周波数帯域より大きく、また、電波の直進性などにより、第2の周波数帯域の電波の到達距離が第1の周波数帯域より短くなりうる。このため、基地局装置111~基地局装置116が配置される密度が、基地局装置101~基地局装置102が配置される密度より高くなりうる。このような場合、端末装置121が第2の周波数帯域でSRSを送信し、基地局装置111~基地局装置116においてそのSRSを測定することにより、より正確に端末装置121の位置を推定することができる。
【0012】
しかしながら、端末装置121は、第1の周波数帯域で動作する基地局装置101が形成したセルに在圏中であるため、基地局装置101から、第1の周波数帯域でのSRSの送信のための設定情報を受信する。そして、端末装置121は、第2の周波数帯域でのSRSの送信のためには、通常、基地局装置111~基地局装置116のいずれかに接続することが必要である。これに対して、本実施形態では、第1の周波数帯域で動作する基地局装置101が、第2の周波数帯域でのSRSの送信のための設定を実行するようにする。端末装置121は、この設定に基づいて、第2の周波数帯域の基地局装置に接続することなく、第2の周波数帯域においてSRSを送信することが可能となる。
【0013】
基地局装置101は、例えば、第2の周波数帯域におけるSRSの設定として、送信電力の情報を通知しうる。一例において、基地局装置101は、端末装置121が使用可能な最大送信電力でSRSを送信するように、第2の周波数帯域におけるSRSの設定情報を生成して、端末装置121へ通知しうる。また、基地局装置101は、例えば、第2の周波数帯域における基地局装置と同じ位置に存在する場合には、第1の周波数帯域におけるSRSの送信電力と同じ送信電力を第2の周波数帯域でのSRSの送信に使用すべきことを指定する設定情報を生成して、端末装置121へ通知しうる。また、基地局装置101は、例えば、第2の周波数帯域における基地局装置と異なる位置に存在する場合にも、第1の周波数帯域におけるSRSの送信電力と同じ送信電力を第2の周波数帯域でのSRSの送信に使用し、さらに、例えば、繰り返し送信(repetition)を行うべきことを指定する設定情報を生成して、端末装置121へ通知しうる。例えば、基地局装置101は、無線リソース制御(RRC)メッセージにおいて、第2の周波数帯域のためのSRS-Config情報要素を用意し、その情報要素に繰り返し送信回数(repetitionFactor)を含めて、端末装置121へ通知しうる。また、繰り返し送信回数は、例えば周波数帯域ごとに事前に定められた値が使用されてもよい。
【0014】
また、基地局装置101は、例えば、第2の周波数帯域におけるSRSの設定として、送信タイミング(タイミングアドバンス(TA))の情報を通知しうる。例えば、基地局装置101は、第2の周波数帯域における基地局装置と同じ位置に存在する場合には、自装置において設定した第1の周波数帯域におけるTA値、又は、そのTA値に所定のスケーリングファクタを乗じた値を、第2の周波数帯域のSRSを送信する際のTA値として端末装置121へ通知しうる。一例において、基地局装置101は、第1の周波数帯域におけるTA値が所定値より小さい場合に、そのTA値をそのまま、第2の周波数帯域のSRSを送信する際のTA値として、端末装置121へ通知しうる。一方で、基地局装置101は、第1の周波数帯域におけるTA値が所定値より大きい場合に、そのTA値に1未満のスケーリングファクタを乗じた値を、第2の周波数帯域のSRSを送信する際のTA値として、端末装置121へ通知しうる。第1の周波数帯域におけるTA値が所定値より大きい場合、端末装置121の位置が、基地局装置101から一定距離以上離れていることが想定される。ここで、第2の周波数帯域の基地局装置が、第1の周波数帯域の基地局装置より高密度に配置される場合、端末装置121から第2の周波数帯域の基地局装置までの距離が、端末装置121から基地局装置101までの距離と比べて短いことが想定される。そのような状態で、第1の周波数帯域でのTA値をそのまま使用すると、第2の周波数帯域の基地局装置におけるSRSの受信タイミングがフレームタイミングより大幅に早くなり、SRSを正確に検出することができなくなってしまいうる。このため、第1の周波数帯域でのTA値が所定値より大きい場合には、第1の周波数帯域でのTA値に1未満のスケーリングファクタを乗じることにより、TA値を小さくして、SRSの受信タイミングがフレームタイミングより大幅に早くなることを防ぐようにしうる。
【0015】
なお、基地局装置101は、例えば第2の周波数帯域の基地局装置によるカバレッジエリアの大きさによって定まる第2の周波数帯域のTA値の最大値を、上述の所定値としうる。第1の周波数帯域のTA値が、第2の周波数帯域のTA値の最大値に設定された所定値を超える場合、端末装置121が、基地局装置101と同じ位置に存在する第2の周波数帯域の基地局装置によって提供されるセルの外部に存在しており、第2の周波数帯域の他の基地局装置の近くに存在することが想定される。このため、基地局装置101は、このような場合に、その第2の周波数帯域の他の基地局装置がSRSを正確に受信することができるように、第1の周波数帯域におけるTA値にスケーリングファクタを乗じた値を、第2の周波数帯域におけるTA値として決定しうる。
【0016】
図2を用いて、スケーリングファクタの特定方法の例を説明する。なお、以下では、第1の周波数帯域のTA値が所定値より大きく、端末装置121が、基地局装置101や、基地局装置101と同じ位置に存在する第2の周波数帯域の基地局装置とは離れた位置に存在するものとする。このため、基地局装置101と同じ位置に存在する第2の周波数帯域の基地局装置については特に言及しない。
【0017】
まず、基地局装置101は、第1の周波数帯域のSRSのためのTA値から、基地局装置101と端末装置121との間の距離推定値201を取得する。そして、基地局装置101は、基地局装置101からその距離推定値201だけ離れた位置を示す円弧202を特定する。ここで、端末装置121は、その円弧202上に存在すると予想される。そして、基地局装置101は、その円弧から最も距離の短い位置に存在する第2の周波数帯域の基地局装置111を特定し、その基地局装置111と円弧202との距離を、第2の周波数帯域の基地局装置と端末装置との間の最短距離203として特定する。また、基地局装置101は、第1の周波数帯域の基地局装置のうち、隣接する基地局装置102との距離204を特定する。なお、基地局装置101は、例えば、最短距離203が特定された際に参照された第2の周波数帯域の基地局装置(この場合、基地局装置111)に最も近い、基地局装置101以外の第1の周波数帯域の基地局装置を特定し、その基地局装置との間の距離を、距離204として特定しうる。そして、基地局装置101は、例えば、スケーリングファクタ=(最短距離203/距離204)のように算出する。一例において、最短距離203が20メートルであり、第1の周波数帯域の基地局装置間の距離204が200メートルである場合、スケーリングファクタは1/10(=0.1)のように計算されうる。また、基地局装置101は、上述の最短距離203に代えて、第2の周波数帯域の2つの基地局装置間の距離や、第2の周波数帯域の基地局装置が形成するセルの大きさに対応する距離であってもよい。また、上述の最短距離203に代えて、例えば、第2の周波数帯域の複数の基地局装置と上述の円弧202との距離の平均値が用いられてもよい。
【0018】
また、基地局装置101は、例えば、第1の周波数帯域で端末装置121から送信されたSRSに基づいて、端末装置121の大まかな位置を特定しておき、その位置と第2の周波数帯域の基地局装置の位置とに基づいて、第2の周波数帯域のTA値を特定してもよい。この場合、例えば、端末装置121から最も近い位置に存在する第2の周波数帯域の基地局装置と、端末装置121との位置との間の距離に基づいて、上述のスケーリングファクタが計算されて、第2の周波数帯域のTA値が特定されうる。また、端末装置121から最も近い位置に存在する第2の周波数帯域の基地局装置と、端末装置121との位置との間の距離を光の速度で除算した値をTA値に換算してもよい。なお、基地局装置101と同じ位置に第2の周波数帯域における基地局装置が存在しない場合にも、上述のように、スケーリングファクタや光の速度を用いて算出されるTA値を用いるようにしうる。
【0019】
また、基地局装置101は、例えば、第2の周波数帯域におけるSRSの設定として、上述の送信電力やタイミングアドバンスの情報に加えて、SRSを送信すべき周波数の情報を、端末装置121へ通知しうる。SRSを送信すべき周波数の情報は、例えば、絶対無線周波数チャネル番号(SRS ARFCN)や、帯域幅(SRS bandwidth)を示す情報を含みうる。
【0020】
なお、基地局装置101において端末装置121に通知された第2の周波数帯域のSRSのための設定情報は、端末装置121からのSRSを検出しうる第2の周波数帯域の基地局装置へ通知されうる。なお、これらの情報を使用する周波数帯域の異なる複数のセル間で共有するため、SRSのリソースを特定する識別情報(SRSリソースID)と、対応するSRSの周波数および時間リソースとを関連付けた情報が定義されうる。そして、例えば、このような、SRSリソースIDと対応する周波数および時間リソースとの組み合わせを複数用意し、位置推定のためのSRSリソースIDグループが形成される。そして、そのSRSリソースIDグループに含まれるSRSリソースIDと周波数および時間リソースとの組み合わせの情報が、事前に周波数帯域の異なる基地局装置間で共有されうる。例えば、第1の周波数帯域で動作する基地局装置101及び基地局装置102と、第2の周波数帯域で動作する基地局装置111~基地局装置116との間で、SRSリソースIDグループに含まれるSRSリソースIDと対応する周波数および時間リソースとの組み合わせの情報が共有される。その後、例えば基地局装置101が、SRSリソースIDグループに含まれるSRSリソースIDのいずれかに対応する周波数および時間リソースを、端末装置121がSRSを送信すべき周波数および時間リソースとして決定し、その周波数および時間リソースを端末装置121へ通知する。そして、基地局装置101は、端末装置121へ通知した周波数および時間リソースに対応するSRSリソースIDを、端末装置121からのSRSを検出する第2の周波数帯域の基地局装置へ通知する。なお、基地局装置間で、端末装置がSRSを生成するのに使用する系列の情報など、SRSを検出する際に使用される情報を共有してもよい。なお、第2の周波数帯域の基地局装置は、位置推定のために使用されうるSRSの生成のための系列の全てを用いて検出処理を行ってもよく、この場合、系列の情報は共有されなくてもよい。基地局装置間での情報の共有は、XnインタフェースやNGインタフェース等の、基地局装置間のインタフェースを通じて行われうる。
【0021】
また、例えば、省電力化のために、例えば、第2の周波数帯域の基地局装置の一部がスリープ状態とされうる。この場合、端末装置121の位置を推定するための情報が共有された基地局装置については、少なくとも受信機能をオンとし、SRSの測定を実行することができるように設定されてもよい。
【0022】
(装置構成)
図3は、基地局装置(第1の周波数帯域で動作する基地局装置101及び基地局装置102と、第2の周波数帯域で動作する基地局装置111~基地局装置116)及び端末装置121のハードウェア構成例を示す図である。基地局装置及び端末装置は、一例において、プロセッサ301、ROM302、RAM303、記憶装置304、及び通信回路305を含んで構成される。プロセッサ301は、汎用のCPU(中央演算装置)や、ASIC(特定用途向け集積回路)等の、1つ以上の処理回路を含んで構成されるコンピュータであり、ROM302や記憶装置304に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、装置の全体の処理や、上述の各処理を実行する。ROM302は、基地局装置や端末装置がそれぞれ実行する処理に関するプログラムや各種パラメータ等の情報を記憶する読み出し専用メモリである。RAM303は、プロセッサ301がプログラムを実行する際のワークスペースとして機能し、また、一時的な情報を記憶するランダムアクセスメモリである。記憶装置304は、例えば着脱可能な外部記憶装置等によって構成される。通信回路305は、例えば、LTEや5G、又はそれ以降の世代のセルラ通信規格の無線通信用の回路によって構成される。なお、図3では、1つの通信回路305が図示されているが、基地局装置及び端末装置は、複数の通信回路を有しうる。例えば、基地局装置及び端末装置は、LTE用、5G用、その後継規格用などのそれぞれのための、複数の無線通信回路とアンテナを有しうる。
【0023】
図4は、第1の周波数帯域で動作する基地局装置(基地局装置101、基地局装置102)の機能構成例を示す図である。第1の周波数帯域の基地局装置は、例えば、SRS設定決定部401、及び、設定情報通知部402を有する。なお、これらの機能部は、例えば、プロセッサ301が、ROM302や記憶装置304に記憶されたプログラムを実行することによって実装されうる。ただし、これに限られず、例えばこれらの機能部の一部または全部が専用のハードウェアを用いて実装されてもよい。なお、第1の周波数帯域の基地局装置が実行すべき処理については上述したため、ここでは第1の周波数帯域の基地局装置の機能構成を大まかに概説するにとどめる。
【0024】
SRS設定決定部401は、第2の周波数帯域において端末装置に送信させるSRSの設定情報を決定する。SRS設定決定部401は、例えば、上述のように、SRSの送信電力、タイミングアドバンス値、使用されるべき周波数および時間リソース、SRSの生成に使用すべき系列などの設定情報を決定する。設定情報通知部402は、端末装置に対して、SRS設定決定部401によって決定された設定情報を通知する。また、設定情報通知部402は、例えば、SRSの送信に使用されるべき周波数および時間リソースなどの設定情報の一部を、第2の周波数帯域の基地局装置へ通知しうる。
【0025】
図5は、第2の周波数帯域で動作する基地局装置(基地局装置111~基地局装置116)の機能構成例を示す図である。第2の周波数帯域の基地局装置は、例えば、設定情報受信部501、SRS測定部502、及び、測定結果通知部503を有する。なお、これらの機能部は、例えば、プロセッサ301が、ROM302や記憶装置304に記憶されたプログラムを実行することによって実装されうる。ただし、これに限られず、例えばこれらの機能部の一部または全部が専用のハードウェアを用いて実装されてもよい。なお、第2の周波数帯域の基地局装置が実行すべき処理については上述したため、ここでは第2の周波数帯域の基地局装置の機能構成を大まかに概説するにとどめる。
【0026】
設定情報受信部501は、第1の周波数帯域の基地局装置から、端末装置によって送信される位置推定用のSRSに関する設定情報を受信する。設定情報は、例えば、SRSが送信される周波数および時間リソースや、SRSの生成に用いられる系列の情報などを含みうる。SRS測定部502は、設定情報受信部501によって通知された設定情報に基づいて、端末装置から送信されたSRSを測定する。なお、SRS測定部502は、測定により、例えば、SRSの受信タイミングやSRSの到来方向を取得しうる。測定結果通知部503は、SRS測定部502による測定の結果を、位置推定のための処理を実行する装置へ通知する。なお、基地局装置は、測定結果通知部503に代えて、例えば他の基地局装置からの測定の結果を収集して、端末装置の位置を推定する機能を有してもよい。なお位置の推定は、例えば到来時間差や到来方向に基づく従来の手法によって行われうる。
【0027】
図6は、位置を推定される対象となる端末装置(端末装置121)の機能構成例を示す図である。端末装置は、例えば、設定情報受信部601、及び、SRS送信部602を有する。なお、これらの機能部は、例えば、プロセッサ301が、ROM302や記憶装置304に記憶されたプログラムを実行することによって実装されうる。ただし、これに限られず、例えばこれらの機能部の一部または全部が専用のハードウェアを用いて実装されてもよい。なお、第2の周波数帯域の基地局装置が実行すべき処理については上述したため、ここでは第2の周波数帯域の基地局装置の機能構成を大まかに概説するにとどめる。
【0028】
設定情報受信部601は、第1の周波数帯域の基地局装置から、SRSの送信のための設定情報を受信する。この設定情報は、例えば、上述のような、送信電力、タイミングアドバンス値、周波数および時間リソース、系列などの情報を含みうる。SRS送信部602は、設定情報受信部601によって受信された設定情報に基づいて、SRSの生成及び送信を行う。
【0029】
(処理の流れ)
続いて、図7を用いて、無線通信システムにおいて実行される処理の流れの例について説明する。なお、第2の周波数帯域で動作する複数(例えば3つ以上)の基地局装置が当然に存在するが、図7では、説明を簡単にするため、第2の周波数帯域の基地局装置として、基地局装置111のみを示している。
【0030】
本処理では、基地局装置101が、第1の周波数帯域において、端末装置121と接続している(S701)。この状態において、例えばネットワークからの指示や所定の時間間隔で位置推定を行うような設定が行われている場合にその推定が行われるべき時刻に達したことに応じて、基地局装置101は、端末装置121の位置を推定することを決定したものとする。基地局装置101は、端末装置121の位置を推定することを決定した場合に、端末装置121に第2の周波数帯域で送信させるSRSの設定を決定する(S702)。例えば、基地局装置101は、端末装置121がSRSを送信する周波数および時間リソース、送信電力、タイミングアドバンス値、SRSの生成のために使用すべき系列などを決定する。そして、基地局装置101は、第1の周波数帯域での無線通信により、決定した設定を示す設定情報を端末装置121へ通知する(S703)。なお、基地局装置101は、例えばXnインタフェースやNGインタフェースにより、第2の周波数帯域の基地局装置111へ、その設定情報の少なくとも一部を通知する(S704)。例えば、基地局装置101は、SRSが送信される周波数および時間リソースや、SRSの生成のために使用される系列の情報などを示す情報を、基地局装置111へ送信する。
【0031】
その後、端末装置121は、S703において受信した設定情報に基づいて、第2の周波数帯域でSRSを送信する(S705)。そして、第2の周波数帯域の基地局装置111は、そのSRSを測定し(S706)、位置推定を実行する装置へ、その測定結果を通知する(S707)。
【0032】
以上のようにして、端末装置が在圏しているセルと異なる周波数帯域において、端末装置にサウンディング参照信号(SRS)を送信させて、その参照信号に基づく位置推定を行うことが可能となる。よって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0033】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7