(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044138
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ポリエステル樹脂、顔料捺染用バインダー、顔料捺染用インク及びポリエステル樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 63/183 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
C08G63/183
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149510
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000226161
【氏名又は名称】日華化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100226023
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 崇仁
(72)【発明者】
【氏名】矢部 奈生子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 武司
(72)【発明者】
【氏名】桑野 和彦
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA03
4J029AB01
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4J029JE162
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4J029KB22
(57)【要約】
【課題】
洗濯耐久性と柔軟性とに優れるポリエステル樹脂を提供すること。
【解決手段】
(a)ポリエチレンテレフタレートと(b)炭素数6~16の脂肪族ジオールとを含む原料の重縮合物であるポリエステル樹脂であって、原料における(a)成分の含有量が原料の総量に対して30~80モル%であり、原料における(b)成分の含有量が原料の総量に対して20~50モル%である、ポリエステル樹脂。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリエチレンテレフタレートと(b)炭素数6~16の脂肪族ジオールとを含む原料の重縮合物であるポリエステル樹脂であって、
前記原料における(a)成分の含有量が原料の総量に対して30~80モル%であり、
前記原料における(b)成分の含有量が原料の総量に対して20~50モル%である、ポリエステル樹脂。
【請求項2】
前記脂肪族ジオールが直鎖脂肪族ジオールである、請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項3】
前記原料が、3価以上の多価アルコール及び3価以上の多価カルボン酸成分からなる群より選ばれる少なくとも1種を更に含む、請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂。
【請求項4】
前記多価カルボン酸が、4~12個の炭素原子を含む、請求項3に記載のポリエステル樹脂。
【請求項5】
前記重縮合物に3価以上の多価カルボン酸成分を反応させた反応生成物である、請求項1に記載のポリエステル樹脂。
【請求項6】
5~20mgKOH/gの酸価を有する、請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂の水乳化分散物を含む、顔料捺染用バインダー。
【請求項8】
請求項7に記載の顔料捺染用バインダーを含む、顔料捺染用インク。
【請求項9】
原料を重縮合して重縮合物を得る工程を含み、
前記原料が(a)ポリエチレンテレフタレートと(b)炭素数6~16の脂肪族ジオールとを含み、
前記原料における(a)成分の含有量が原料の総量に対して30~80モル%であり、
前記原料における(b)成分の含有量が原料の総量に対して20~50モル%である、ポリエステル樹脂の製造方法。
【請求項10】
得られた重縮合物に3価以上の多価カルボン酸成分を反応させる工程を更に含む、請求項9に記載のポリエステル樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂、顔料捺染用バインダー、顔料捺染用インク及びポリエステル樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バインダー樹脂にはその用途に応じて摩擦堅牢度、耐熱性、発色性などをはじめとした様々な性能が求められるが、特に繊維製品への使用を目的とした捺染用途のバインダー樹脂は、高い洗濯耐久性や捺染部分の柔軟性、タックフリー性が求められる。
【0003】
例えば、特許文献1では、顔料と、カチオン性を有する分散剤とを含有するインクジェット用インクと、ポリエステル樹脂粒子を含む処理液(すなわち樹脂エマルション)とを備えるインクセットにおいて、前記樹脂エマルションは、アニオン界面活性剤を更に含有する強制乳化型樹脂エマルションであるか、又は前記ポリエステル樹脂がアニオン性を有する自己乳化型樹脂エマルションであることにより、摩擦堅ろう度に優れる捺染物を形成できるとしている。
【0004】
また、特許文献2では、分散染料とポリエステル樹脂とを含む着色粒子と、水とを含むインクを用いることで、簡便な熱処理によってインク中のポリエステル樹脂がポリエステル繊維と一体化し、分子状態で分散されたインク内の分散染料がポリエステル繊維の表面に拡散するため均一な仕上がりになるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-176935号公報
【特許文献2】特開2019-182941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のポリエステル樹脂は、洗濯耐久性が乏しいという問題がある。また、特許文献2のポリエステル樹脂は、風合いが硬く柔軟性が乏しくなるという問題がある。
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、洗濯耐久性と柔軟性とに優れるポリエステル樹脂、及びポリエステル樹脂の製造方法、並びにそのようなポリエステル樹脂を含む顔料捺染用バインダー、及び顔料捺染用インクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は以下の実施態様[1]~[10]を含む。
[1]
(a)ポリエチレンテレフタレートと(b)炭素数6~16の脂肪族ジオールとを含む原料の重縮合物であるポリエステル樹脂であって、
前記原料における(a)成分の含有量が原料の総量に対して30~80モル%であり、
前記原料における(b)成分の含有量が原料の総量に対して20~50モル%である、ポリエステル樹脂。
[2]
前記脂肪族ジオールが直鎖脂肪族ジオールである、[1]のポリエステル樹脂。
[3]
前記原料が、3価以上の多価アルコール及び3価以上の多価カルボン酸成分からなる群より選ばれる少なくとも1種を更に含む、[1]又は[2]のポリエステル樹脂。
[4]
前記多価カルボン酸が、4~12個の炭素原子を含む、[3]に記載のポリエステル樹脂。
[5]
前記重縮合物に3価以上の多価カルボン酸成分を反応させた反応生成物である、[1]~[4]の少なくとも一つのポリエステル樹脂。
[6]
5~20mgKOH/gの酸価を有する、[1]~[5]の少なくとも一つのポリエステル樹脂。
[7]
[1]~[6]の少なくとも一つのポリエステル樹脂の水乳化分散物を含む、顔料捺染用バインダー。
[8]
[8]の顔料捺染用バインダーを含む、顔料捺染用インク。
[9]
原料を重縮合して重縮合物を得る工程を含み、
前記原料が(a)ポリエチレンテレフタレートと(b)炭素数6~16の脂肪族ジオールとを含み、
前記原料における(a)成分の含有量が原料の総量に対して30~80モル%であり、
前記原料における(b)成分の含有量が原料の総量に対して20~50モル%である、ポリエステル樹脂の製造方法。
[10]
得られた重縮合物に3価以上の多価カルボン酸成分を反応させる工程を更に含む、[10]のポリエステル樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、洗濯耐久性と柔軟性とに優れるポリエステル樹脂、及びポリエステル樹脂の製造方法、並びにそのようなポリエステル樹脂を含む顔料捺染用バインダー、及び顔料捺染用インクを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態のポリエステル樹脂は、(a)ポリエチレンテレフタレートと(b)炭素数6~16の脂肪族ジオールとを含む原料の重縮合物であるポリエステル樹脂であって、原料における(a)成分の含有量が原料の総量に対して30~80モル%であり、原料における(b)成分の含有量が原料の総量に対して20~50モル%である。このようなポリエステル樹脂は、洗濯耐久性と柔軟性とに優れる。また、本実施形態のポリエステル樹脂はさらにタックフリー性にも優れる傾向にある。
【0011】
本実施形態のポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレートブロックを有する。ポリエチレンテレフタレートブロックは、2個以上の以下の構造単位(1)が繰り返し結合した構造を有するブロックである。なお、本明細書において、原料におけるポリエチレンテレフタレート又はポリエステル樹脂におけるポリエチレンテレフタレートブロックの含有量は、以下の構造単位(1)の含有量(モル等)により表す。
【化1】
【0012】
本実施形態のポリエステル樹脂が洗濯耐久性と柔軟性とに優れる理由は必ずしも明らかではないが、原料としてのPETに重縮合反応を行っているため、得られたポリエステル樹脂には、ポリエチレンテレフタレートブロックが導入される。ポリエチレンテレフタレートブロックにより樹脂の強度が向上し、洗濯耐久性に優れると考えられる。また、本実施形態のポリエステル樹脂は、炭素数6~16の脂肪族ジオールに由来する単位を含むため、従来の捺染用のポリエステル樹脂よりも柔軟性に優れると考えられる。
【0013】
典型的には、本実施形態のポリエステル樹脂の原料は、ポリエチレンテレフタレートブロックをポリエステル樹脂に導入するため、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含み、更に多価アルコール成分として炭素数6~16の脂肪族ジオールを含む。原料は、任意に多価カルボン酸成分や(b)成分以外の多価アルコールを含んでいてもよい。PETは、原料に含まれる多価アルコール成分又は多価カルボン酸成分と重縮合することによりポリエステル樹脂のポリマー鎖中に取り込まれる。なお、重縮合反応では、原料に全部を混合して反応させてもよいし、2段又はそれ以上に分けて多段階で反応させてもよい。原料であるPETは、重縮合反応をする前に予め解重合してもよく、重縮合反応中に解重合されてもよい。
【0014】
用いられるPETの分子量分布、組成、製造方法、使用する際の形態等に制限はない。また、PETは、石化由来の原料で製造されたPET、バイオマス由来の原料で製造されたバイオPET、廃棄物より回収されたリサイクルPETであってもよい。リサイクルPETは、通常、フレーク状又はペレット状に加工されており、重量平均分子量が30,000~90,000程度のものであってよい。
【0015】
PETの室温(25℃)における固有粘度(IV)は、0.6~0.9であってよい。
IVは、JIS K7390(2003)の方法に従い測定することができる。
【0016】
原料におけるPETの含有量は原料の総量に対して30~80モル%であり、洗濯耐久性又は柔軟性をより向上させる観点から、好ましくは35モル%~70モル%、さらに好ましくは40モル%~65モル%である。30モル%未満の場合、堅牢なポリエチレンテレフタレートブロック構造が減ることで洗濯の際に摩擦に弱くなり、捺染部分が基材からはがれやすくなる。80mol%を超える場合、堅牢なPET構造が多過ぎてしまい捺染部分が硬くなり、基材の伸びや曲げなどに対しての追従ができなくなる。
上記原料におけるPET解重合物の総含有量は、[テレフタル酸:エチレングリコール]の単位(上記一般式(1)の構造単位)のモル数として、PETの仕込み質量から算出することができる。
なお、原料におけるPET及び炭素数6~16脂肪族ジオール以外の成分(単量体成分)は、原料の総量に対して50モル%以下、45モル%以下又は40モル%以下とすることができる。
【0017】
<多価アルコール成分>
(ジオール)
本実施形態のポリエステル樹脂は、多価アルコール成分に由来する単位として炭素数6~16脂肪族ジオールに由来する単位を含む。そのため、ポリエステル樹脂の原料は、炭素数6~16脂肪族ジオールを含む。なお、本明細書において、多価アルコール成分に由来する単位とは、当該多価アルコールを重縮合して得られる化学構造を有する構造単位をいう。
【0018】
炭素数6~16脂肪族ジオールは、直鎖又は分岐鎖のジオールであってよく、直鎖のジオールであってよい。直鎖の炭素数6~16の脂肪族ジオールとしては、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8‐オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール等が挙げられる。炭素数6~16脂肪族ジオールは、1種又は2種以上を使用することができる。分岐鎖の炭素数6~16の脂肪族ジオールとしては、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、1,2-デカンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-ヘキサデカンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1-tert-ブチル-1,2-エタンジオール、3-エトキシプロパン-1,2-ジオール、1,4-オクタンジオール、1,5-ヘプタンジオール、2,7-オクタンジオール等が挙げられる。
原料における炭素数6~16脂肪族ジオールの含有量は、原料の総量に対して25~47モル%が好ましく、30~45モル%がより好ましい。
【0019】
多価アルコール成分は、炭素数6~16脂肪族ジオール以外のジオールを含んでいてよい。そのようなジオールとしては、炭素数5以下又は炭素数17以上の脂肪族ジオール、芳香族ジオール、脂環式ジオール等を挙げることができる。炭素数5以下又は炭素数17以上の脂肪族ジオールは、直鎖及び分岐鎖のいずれのジオールであってもよい。
炭素数5以下の脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等が挙げられ、1,4-ブタンジオールが好ましい。原料における炭素数5以下又は炭素数17以上の脂肪族ジオールの含有量は、原料の総量に対して15モル%以下であってよく、1~12モル%であってよく、3~10モル%であってよい。
炭素数17以上の脂肪族ジオールとしては、ドトリアコンタンジオール、テトラトリアコンタンジオール、ダイマージオール(Croda製Pripol2033)等が挙げられる。
脂環式ジオールとしてはイソソルバイド、トリシクロデカンジメタノール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられ、芳香族ジオールとしてはビスフェノールAのアルキレン(炭素数2~3)オキサイド付加物等が挙げられる。
【0020】
(3価以上の多価アルコール)
本実施形態のポリエステル樹脂は、洗濯耐久性及び柔軟性の観点から、3価以上の多価アルコールを含んでもよい。
3価以上の多価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、2-メチル-1,2,3-プロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼン、1,2,3,6-ヘキサテトラロール、1,4-ソルビタン、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、トリペンタエリスリトール、又はこれらのアルキレン(炭素数2~3)オキサイド付加物等が挙げられる。これらの中では、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが好ましい。
原料に3価以上の多価アルコール成分を含める場合、3価以上の多価アルコール成分の含有量は、原料の総量に対して10モル%以下であってよく、0.1~10モル%であってよく、0.3~6モル%であってよい。
【0021】
原料における炭素数6~16脂肪族ジオール以外の多価アルコール成分の含有量は、原料の総量に対して、30モル%以下であってよく、0.1~25モル%以下であってよく、1~20モル%以下であってよい。炭素数6~16脂肪族ジオール以外の多価アルコール成分は、1種又は2種以上を使用することができる。
【0022】
(多価カルボン酸成分)
多価カルボン酸成分としては、脂肪族多価カルボン酸、脂環式多価カルボン酸、芳香族多価カルボン酸等が挙げられる。なお、本明細書において、多価カルボン酸について使用する「成分」との用語は、多価カルボン酸、その酸無水物及び低級アルキル(例えば炭素数1~3個)エステルの1種以上を意味する。多価カルボン酸成分は、ジカルボン酸及び3価以上の多価カルボン酸のいずれであってもよい。多価カルボン酸成分は、1種又は2種以上を使用することができる。多価カルボン酸が有する炭素原子の数は、4~12個であることが好ましく、6~10個であると更に好ましい。多価カルボン酸成分の含有量は、原料の総量に対して、40モル%以下であってよく、0.1~40モル%であってよく、0.3~38モル%であってよく、0.5~35モル%であってよい。多価カルボン酸成分は、1種又は2種以上を使用することができる。
【0023】
(ジカルボン酸)
ジカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、炭素数2~16のもの、例えば、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ドデセニルコハク酸、又はこれらのエステルもしくは酸無水物等が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸が有する炭素数は、6~12であってよく、7~10であってよい。脂肪族ジカルボン酸は、直鎖又は分岐鎖ジカルボン酸であってよく、直鎖ジカルボン酸であってよい。
脂環式ジカルボン酸としては、不飽和結合を有するカルボン酸を二量化したダイマー二酸(Croda製プリポール1009、プリポール1006、プリポール1004)、等が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸が挙げられる。原料はTgの調整のため、イソフタル酸成分を含んでいてもよい。原料におけるイソフタル酸成分の含有量は、原料の総量に対して40モル%未満であってよく、35モル%未満であってよく、10モル%以上且つ30モル%未満であってよい。
【0024】
(3価以上の多価カルボン酸)
本実施形態のポリエステル樹脂は、洗濯耐久性及び柔軟性の観点から、3価以上の多価カルボン酸を含んでもよく、トリカルボン酸を含んでいてもよい。
3価以上の多価カルボン酸としては、トリメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ヘキサントリカルボン酸又はこれらのエステル若しくは酸無水物等、ピロメリット酸、オクタンテトラカルボン酸、又はこれらのエステル若しくは酸無水物等が挙げられる。工業的に入手が容易な点でトリメリット酸又はその酸無水物が好ましい。
原料に3価以上の多価カルボン酸成分を含める場合、3価以上の多価カルボン酸成分の含有量は、原料の総量に対して10モル%以下であってよく、0.1~10モル%であってよく、0.3~8モル%であってよく、0.5~6モル%であってよい。
【0025】
3価以上の多価カルボン酸成分は、酸価調整の観点から、原料の重縮合物とエステル化反応させてもよい。この場合、ポリエステル樹脂は、重縮合反応で得られた重縮合物と3価以上の多価カルボン酸成分との反応生成物である。ここで使用する「3価以上の多価カルボン酸成分」の具体例としては前述の原料に含まれる成分として例示したものが挙げられる。エステル化反応における3価以上の多価カルボン酸成分の使用量は、最終的に得られるポリエステル樹脂の酸価に応じて調整すればよく、重縮合に用いる原料全量を100モル部として、3価以上のポリカルボン酸成分が5モル部以下、3モル部以下、0.01~2モル部、又は0.1~1モル部とすることができる。
【0026】
原料が3価以上の多価アルコール又は3価以上の多価カルボン酸成分を更に含む場合、得られるポリエステル樹脂の水分散性が向上する傾向にある。3価以上の多価アルコール及び3価以上の多価カルボン酸の原料における含有量の合計は、分子量制御の観点から、好ましくは10モル%以下であり、より好ましくは8モル%以下であり、更に好ましくは6モル%以下である。原料における3価以上の多価アルコール及び3価以上の多価カルボン酸成分の含有量の当該好ましい範囲は、原料が3価以上の多価アルコール及び3価以上の多価カルボン酸成分のいずれか一方しか含まない場合は、含まれている成分の含有量の範囲となる。
【0027】
原料組成において、原料に含まれる全成分のCOOH/OH比の範囲は、反応をより円滑に進める観点から、0.55~1.10であることが好ましい。なお、原料であるPETについては、上記構造単位(1)1モルで、COOH1モル、OH1モルとみなす。
【0028】
本実施形態のポリエステル樹脂を顔料捺染用バインダーとして使用する場合、ポリエステル樹脂は水系分散物又は乳化物として配合されることが望ましい。それに伴い、ポリエステル樹脂の酸価は、樹脂を分散又は乳化させる際の粒径制御の観点から、5~20mgKOH/gであることが好ましく、5.5~15mgKOH/gであるとより好ましく、6~13mgKOH/gであると更に好ましい。酸価が5mgKOH/g以上であると、乳化不良を抑制できる傾向にある。また、20mgKOH/g以下であると、加水分解性が抑制され、洗濯耐久性がより向上する傾向にある。重縮合したポリエステル樹脂の酸価は、3価以上の多価カルボン酸成分を適宜反応させて上記範囲内に調整することもできる。その際の3価以上の多価カルボン酸成分としては、上記3価以上の多価カルボン酸成分が挙げられる。酸価調整を行う際の温度は、反応性の観点から、反応温度を180℃~230℃とすることができ、好ましくは190℃~220℃の温度条件にて、常圧下、若しくは加圧下で、0.1時間~1時間、行われる。
【0029】
本実施形態のポリエステル樹脂のガラス転移温度は、柔軟性の観点から、50℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましい。
【0030】
本実施形態のポリエステル樹脂の重量平均分子量は、洗濯耐久性又はタックフリー性の観点から、10,000以上であることが好ましく、15,000以上であることがより好ましい。また捺染インク定着の観点から、200,000以下であることが好ましく、150,000以下であることがより好ましく、100,000以下であることが特に好ましい。
【0031】
本実施形態のポリエステル樹脂は、結晶性のポリエステル樹脂及び非結晶性のポリエステル樹脂、並びにその混合物のいずれであってもよく、非結晶性のポリエステル樹脂であってよい。なお、本明細書において「非結晶性」のポリエステル樹脂とは、明確な結晶融解吸熱ピークを示さず、DSC(示差走査熱量測定)曲線における融解吸熱ピーク面積から求められた融解エンタルピーが5mJ/mg以下であるポリエステル樹脂を指す。これに対し、「結晶性」のポリエステル樹脂とは、明確な結晶融解吸熱ピークを示し、その融解エンタルピーが5mJ/mgより大きいポリエステル樹脂を指す。なお、上記融解エンタルピーの値は、インジウム及びスズを標準物質として求められた値である。
【0032】
<ポリエステル樹脂の製造方法>
本実施形態のポリエステル樹脂の製造方法は、原料を重縮合して重縮合物を得る工程を含み、原料が(a)ポリエチレンテレフタレートと(b)炭素数6~16の脂肪族ジオールとを含み、原料における(a)成分の含有量が原料の総量に対して30~80モル%であり、原料における(b)成分の含有量が原料の総量に対して20~50モル%であってよい。原料は、任意に、上述の炭素数6~16の脂肪族ジオール以外の多価アルコール成分及び多価カルボン酸成分の少なくとも一種を含んでいてもよい。本実施形態のポリエステル樹脂の製造方法は、得られた重縮合物に3価以上の多価カルボン酸成分を反応させる工程を更に含んでいてもよい。
【0033】
本実施形態において、重縮合反応を行う際の温度は、反応時間の短縮、及び樹脂の分解抑制の観点から、200℃~300℃とすることができ、好ましくは210℃~270℃であり、より好ましくは220℃~250℃の温度条件にて、常圧下、減圧下、若しくは加圧下で、好ましくは減圧下、3~20時間、行われる。
【0034】
重縮合反応は、必要に応じて、三酸化アンチモン、ジブチル錫オキサイド等の有機スズ系重合触媒、ゲルマニウム系触媒、無機チタン系触媒、n-テトラブトキシチタンやテトライソプロポキシチタン等の有機チタン系触媒、有機アルミニウム系触媒、有機コバルト系触媒、有機ジルコニウム系触媒、酢酸亜鉛や酢酸マンガン等のエステル交換触媒等の、従来公知の触媒を使用することができる。これらのうち、ゲルマニウム系触媒、無機チタン系触媒、有機チタン系触媒、有機ジルコニウム系触媒、有機アルミニウム系触媒などが好ましい。
【0035】
本実施形態のポリエステル樹脂には、その製造過程の任意の段階で、又は製造の後に、着色や熱分解を防ぐ目的で酸化防止剤を加えてもよい。このような酸化防止剤としては、特に限定されないが、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、含イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。
【0036】
<ポリエステル樹脂水乳化分散物>
本実施形態のポリエステル樹脂は水乳化分散物として顔料捺染用バインダーに配合されることが望ましい。本実施形態のポリエステル樹脂は、水系媒体と、当該水系媒体に分散されたポリエステル樹脂を含む粒子とを具備する水性分散体に含まれていてよい。水系媒体としては、水、及び、水と混和性のある溶媒(例えば、炭素数1~4の低級アルコール若しくはグリコール、メチルエチルケトン及びアセトン等のケトン、テトラヒドロフランなど)と水との混合溶媒等が挙げられる。分散又は乳化の方法としては、例えば、メディア型分散機(ビーズミル)又は高圧型分散機(ホモジナイザー、アルティマイザー)を用いる方法や、有機溶剤中に溶解させた溶液中に水を添加して、油相から水相へ転相させる転相乳化法等が挙げられる。また、必要に応じて乳化剤として非イオン系界面活性剤やアニオン系界面活性剤を使用することができる。
【0037】
<顔料捺染用バインダー>
本実施形態の顔料捺染用バインダーは、ポリエステル樹脂水乳化分散物以外の成分を含有することができる。その成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、顔料等の着色剤、無機微粒子、有機微粒子、帯電制御剤、離型剤及び、増粘剤等の従来公知の成分が挙げられる。
【0038】
<顔料捺染用インク>
顔料捺染用インクは、顔料捺染用バインダーを含む。インクは、顔料捺染用バインダー以外の成分として、下地遮蔽用白色顔料、着色顔料、体質顔料、光輝性顔料等の顔料、紫外線吸収剤、抗酸化剤、有機溶媒、造膜助剤、レオロジーコントロール剤などの更なる成分を含むことができる。更なる成分は、複数種の組合せであってもよい。
【0039】
下地遮蔽用白色顔料としては、二酸化チタン、酸化亜鉛等の遮蔽性の高い白色顔料を挙げることができ、高い遮光性が得られる点から、二酸化チタンが好ましい。
【0040】
着色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料等が挙げられ、酸化チタン及び/又はカーボンブラックが好ましい。着色顔料は、複数種の組合せであってもよい。
【0041】
体質顔料としては、例えば、クレー、カオリン、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、アルミナホワイトが挙げられ、硫酸バリウム及び/又はタルクが好ましく、硫酸バリウムがより好ましい。体質顔料は、複数種の組合せであってもよい。
【0042】
光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム、黄銅、青銅、ニッケル、ステンレス、亜鉛等の金属顔料;酸化チタン、黄色酸化鉄等を被覆した雲母;アルミノケイ酸塩、塩基性炭酸塩、硫酸バリウム、酸化チタン、オキシ塩化ビスマス等の薄片状結晶又は板状結晶;薄片状ガラス粉、金属蒸着された薄片状ガラス粉;などが挙げられる。中でも、鏡面反射強度の観点で金属顔料が望ましく、鏡面反射強度がより高い観点で、扁平な形状の金属顔料がより望ましい。金属顔料の中でも、扁平状の粉末を得やすい観点から、アルミニウム顔料が望ましい。金属顔料の表面は、シリカ、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等で被覆されていてもよい。
顔料捺染インクにおける顔料の含有量としては、本実施形態のポリエステル樹脂100質量部に対して、1質量部~70質量部が好ましく、5質量部~50質量部がより好ましい。
【0043】
<繊維基材>
顔料捺染用インクを適用する基材としては特に限定されない。例えば、基材は繊維基材である場合には、不織布、織物、編物等の形態であってよい。繊維基材の材質としては、綿(セルロース繊維)、麻、羊毛、絹等の天然繊維、アクリル、ナイロン、ポリウレタン、ビニロン、等の合成繊維、アセテート、トリアセテート等の半合成繊維、キュプラ、リヨセル、レーヨン等の再生繊維、及び、これらの繊維を混紡、交織、交編などした複合繊維を挙げることができる。樹脂基材の場合には、フィルムや成形物の形態であってよく、その素材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、アクリル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ナイロン、ポリイミド、PTFE(フッ素)等を挙げることができる。
【0044】
<捺染方法>
本実施形態の顔料捺染用インクを繊維基材に付与する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、シルクスクリーン、ローラー、インクジェット、バーコーターなどが挙げられ、繊維基材や転写紙、転写シート等の一部、若しくは全面に塗工することができる。塗工した後、50℃~180℃の温度で5分~1時間乾燥する。転写紙や転写シートに塗工した場合は、繊維基材、転写紙又は転写シートのインク塗工面を合わせ、100℃~200℃で加熱プレスを行ったのち、繊維基材から転写紙又は転写シートをはがすことで繊維基材とインクが一体となった捺染物を得ることができる。
【実施例0045】
<ポリエステル樹脂の製造>
(合成例1~2)
予め十分乾燥させた反応容器に、表3に示す組成の原料を仕込み、窒素通気中で攪拌しながら180℃になるまで加熱した。ここで、触媒として、n-テトラブトキシチタンを仕込み、230℃まで昇温し、最終的に反応容器内の圧力が3kPaになるまで減圧、重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂(A-1、及びA-2)を得た。
なお、触媒の仕込み量は、アルコール成分、カルボン酸成分及びその他の成分の合計モル数を100としたときに0.1mol添加される量である。
【0046】
(合成例3~20)
予め十分乾燥させた反応容器に、表3又は表4に示す組成の原料を仕込み、窒素通気中で攪拌しながら180℃になるまで加熱した。ここで、触媒として、n-テトラブトキシチタン(TBT)を仕込み、230℃まで昇温し、最終的に反応容器内の圧力が3kPaになるまで減圧、重縮合反応を行った。その後、常圧に戻し、窒素通気中で攪拌しながら200℃まで冷却し、重縮合したポリエステル樹脂に無水トリメリット酸を加え、更に重縮合反応を進め、ポリエステル樹脂A-3~A-17及びB-1~B-2を得た。なお、合成例19では、重縮合反応の途中で反応混合物が固化してしまいポリエステル樹脂の合成ができなかった(表3~8において、当該合成例をB-3とする。)。なお、表3及び表4において、無水トリメリット酸(1)は、PETとの重縮合時に原料に含まれていた無水トリメリット酸を指し、無水トリメリット酸(2)は、重縮合後に添加した無水トリメリット酸を指す。また、表3及び4において、原料合計は、重縮合反応に用いた単量体成分(PET、多価アルコール成分及び多価カルボン酸成分(酸価調整用の無水トリメリット酸を除く))の合計量であり、触媒及び無水トリメリット酸(2)の量は、原料の合計モル数を100モル部としたとき添加量(モル部)である。
【0047】
表5及び表6では、合成1~20で使用した原料の使用量を質量で表す。
【0048】
<重量平均分子量(Mw)>
ポリエステル樹脂2mgをテトラヒドロフラン5mLに加えて溶解させ、重量平均分子量を、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ-(GPC)-HLC-8220GPC(東ソー株式会社製)により、ポリスチレン換算にて求めた。GPCの測定条件は以下のものであった。結果を表7及び8に示す。
<測定条件>
検出装置:RI検出器
移動相: テトラヒドロフラン
カラム:Tsk-gel Super HZ 2000を2本とTsk-gel Super HZ 4000 を1本とを直列に接続した。
サンプルインジェクターとカラムの温度:40℃
RI検出器の温度:40℃
サンプル注入量:5μL
流速:0.35mL/分
測定時間:20分
【0049】
<ガラス転移温度(Tg)>
ポリエステル樹脂のガラス転移温度を、DSCにより測定した。測定装置として示差走査熱量計DSC-7020(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を使用した。Tgの測定条件は以下のものであった。結果を表7及び8に示す。
<測定条件>
昇温及び降温速度:10℃/分
昇温プログラム:アルミパンを-50℃~100℃まで昇温した後、-50℃まで降温した。次に、100℃まで昇温した際のチャートのベースラインとガラス転移温度近傍にある吸熱カーブの接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)とした。
雰囲気:窒素気流中(30mL/分)
セル:密閉アルミニウム
試料量:5.0mg±1.0mg
標準物質:インジウム、スズ
【0050】
<酸価(AV)>
ポリエステル樹脂の酸価を、JIS K 0070(1992)3.2 電位差滴定法の下記条件のみ変更し、測定した。結果を表7及び8に示す。
滴定溶媒:0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液
測定溶媒:テトラヒドロフラン:水=10:1(体積比)の混合溶媒
溶媒量:100mL
試料量:5.0g±0.5g
【0051】
<ポリエステル樹脂水乳化分散物の調製>
(調製例LA-1)
ポリエステル樹脂(A-1)100質量部、テトラヒドロフラン150質量部を入れ、樹脂を溶解させた。40℃~50℃を維持させながら、5質量%アンモニア水溶液を5質量部加え、さらに、イオン交換水400質量部を徐々に加えて、転相乳化を行った後、減圧条件下にてテトラヒドロフランを留去した。その後、イオン交換水を加えて固形分濃度を20質量%に調整し、ポリエステル樹脂乳化物(LA-1)を得た。
表7及び表8に示すとおり、同様にポリエステル樹脂水乳化分散物(LA-2~LA-17、LB-1~LB-2)を得た。
【0052】
<捺染用インクの調製>
各ポリエステル樹脂水乳化分散物100質量部と白色顔料として酸化チタン20質量部を攪拌容器に入れ、ホモジナイザーで攪拌し、十分均一に混合したことを確認した後、増粘剤としてネオステッカーV(日華化学株式会社製)を4質量部加えて作製した。
【0053】
<捺染物の作製>
PET転写シートに対し塗工機を用いて捺染を行い、100℃の乾燥機でシートを乾燥させた。取り出したシートを室温まで冷却した後に、ポリエステル基材(黒色)に捺染面が触れるように転写シートを重ね、プレス機で130℃、30秒熱圧着させた。基材と転写シートを室温まで冷却させた後に、転写シートを基材からはがした。
なお、評価に使用したポリエステル基材は、下記方法にて作製し、捺染物の作製に使用した。
ポリエステル100%ニット(目付120g/m2)を、浴比1:12になるように、下記表1に示される組成の染色浴に投入し、この染色浴を昇温速度2℃/分で60℃から130℃に昇温(昇温時間:35分)し、130℃で30分間保持した。その後、70℃に降温して、染色浴から該ニットを取り出した。次いで、取り出したニットを、下記表2に示される組成の還元洗浄浴を用いて還元洗浄(80℃、15分、浴比1:12)した後、水洗、脱水、乾燥して、ポリエステル染色物を作製し、ポリエステル基材とした。
【0054】
【0055】
【0056】
<洗濯耐久性>
画像形成物の洗濯耐久性(洗濯堅牢性)は、JIS L1930:2014 C4M法に準拠し、洗剤としてアタック高活性バイオEX(花王株式会社製)を使用し洗濯を行ったあとの画像形成物と、洗濯していない画像形成物とを対比して、捺染部分の変化を評価した。そして、以下の評価基準に基づいて評価した。
A:捺染部分に変化なし
B:捺染部分の薄くなっている
C:捺染部分がひび割れている
D:捺染部分が完全に剥がれている
【0057】
<柔軟性>
捺染を施した布を用い、2cmの捺染面部分が3cmになるまで3秒かけて引っ張り、捺染部分が生地の変形に対してどの程度伸びるかを評価した。 結果は目視にて下記の等級で評価した。
A:捺染部分が生地に追従して伸びた
B:捺染部分が生地に追従して伸びるが、わずかにひび割れが入った
C:捺染部分が生地に追従して伸びるが、大きなひび割れが入った
D:捺染部分が生地に追従せず、大きなひび割れと一部が剥がれた
【0058】
<タックフリー性>
捺染転写シートで捺染後、シートをはがした際のタック性の有無を評価した。結果は官能試験で下記の等級で評価した。官能試験の方法は、捺染部分に人差し指を3秒間押し付け、その後、指を真上に離した際、捺染部分が指に付く度合いを評価した。
A:転写シートを剥がした際、捺染部分は、指に付かない
B:転写シートを剥がした際、捺染部分は、指に付くが、直ぐに離れる
C:転写シートを剥がした際、捺染部分は、少し持ち上がった後、離れる
D:転写シートを剥がした際、捺染部分は、持ち上がって、離れない
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】