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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044145
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20240326BHJP
   H10B 43/27 20230101ALI20240326BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H01L27/11582
H01L29/78 371
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149518
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100213654
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 晃樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊行
【テーマコード(参考)】
5F004
5F083
5F101
【Fターム(参考)】
5F004BB25
5F004CA04
5F004DA00
5F004DA01
5F004DA15
5F004DA24
5F004DA26
5F004EA03
5F004EA06
5F004EA07
5F083EP18
5F083EP23
5F083EP33
5F083EP34
5F083EP76
5F083GA10
5F083GA27
5F083JA04
5F083JA19
5F083KA01
5F083KA05
5F083KA11
5F083PR03
5F083PR07
5F101BA45
5F101BB05
5F101BD16
5F101BD22
5F101BD30
5F101BD34
(57)【要約】
【課題】膜に凹部を好適に形成することができる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】本実施形態による半導体装置の製造方法は、下層膜上方の被加工膜上に、第1金属を含むマスク材であって、被加工膜上に設けられ、第1金属の含有比率が第1所定比率よりも低い第1マスク層と、第1マスク層上に設けられ、第1金属の含有比率が第1所定比率以上である第2マスク層と、を有するマスク材を形成することを具備する。本製造方法は、マスク材をパターニングすることを具備する。本製造方法は、マスク材をマスクとして、被加工膜を加工することを具備する。被加工膜を加工することは、第1温度において第1ガスの雰囲気で、前記被加工膜を加工する第1処理を行うことを具備する。前記被加工膜を加工することは、第1温度よりも高い第2温度において第1ガスとは異なる第2ガスの雰囲気で、被加工膜を加工する第2処理を行うことを具備する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下層膜上方の被加工膜上に、第1金属を含むマスク材であって、前記被加工膜上に設けられ、前記第1金属の含有比率が第1所定比率よりも低い第1マスク層と、前記第1マスク層上に設けられ、前記第1金属の含有比率が前記第1所定比率以上である第2マスク層と、を有するマスク材を形成し、
前記マスク材をパターニングし、
前記マスク材をマスクとして、前記被加工膜を加工する、
ことを具備し、
前記被加工膜を加工することは、
第1温度において第1ガスの雰囲気で、前記被加工膜を加工する第1処理を行い、
前記第1温度よりも高い第2温度において前記第1ガスとは異なる第2ガスの雰囲気で、前記被加工膜を加工する第2処理を行う、
ことを具備する、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
凹部が前記被加工膜の上端から前記被加工膜の所定深さに達するまで前記第1処理を行い、
前記凹部が前記被加工膜の下端に達するまで前記第2処理を行う、
ことをさらに具備する、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第2マスク層をマスクとして、前記第1処理を行い、
前記第1マスク層をマスクとして、前記第2処理を行う、
ことをさらに具備する、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1所定比率は、10%である、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1マスク層の厚さは、1μm~1.5μmである、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第2マスク層は、
前記第1マスク層上に設けられ、前記第1金属の含有比率が第2所定比率以下である第3マスク層と、
前記第3マスク層上に設けられ、前記第1金属の含有比率が前記第2所定比率よりも高い第4マスク層と、
を有し、
前記第2所定比率は、前記第1所定比率よりも高い、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1所定比率は、10%であり、
前記第2所定比率は、50%である、請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第1温度は、0℃以下であり、
前記第2温度は、0℃よりも高い、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1ガスは、前記第2ガスの水素(H)の濃度よりも高い濃度の水素を含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記第1金属は、タングステン(W)またはモリブデン(Mo)である、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記マスク材は、炭素(C)をさらに含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第2処理における前記下層膜に対する前記被加工膜の選択比は、前記第1処理における前記下層膜に対する前記被加工膜の選択比よりも高い、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記下層膜は、シリコン(Si)を含む、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上の膜にホールやスリットなどの凹部をエッチングにより形成する際に、膜上に設けられたエッチングマスク層の材質またはエッチング条件等によっては、凹部を好適に形成できない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-40008号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2017/0186766号明細書
【特許文献3】特開2020-35869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
膜に凹部を好適に形成することができる半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態による半導体装置の製造方法は、下層膜上方の被加工膜上に、第1金属を含むマスク材であって、被加工膜上に設けられ、第1金属の含有比率が第1所定比率よりも低い第1マスク層と、第1マスク層上に設けられ、第1金属の含有比率が第1所定比率以上である第2マスク層と、を有するマスク材を形成することを具備する。本製造方法は、マスク材をパターニングすることを具備する。本製造方法は、マスク材をマスクとして、被加工膜を加工することを具備する。被加工膜を加工することは、第1温度において第1ガスの雰囲気で、前記被加工膜を加工する第1処理を行うことを具備する。前記被加工膜を加工することは、第1温度よりも高い第2温度において第1ガスとは異なる第2ガスの雰囲気で、被加工膜を加工する第2処理を行うことを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る半導体装置におけるメモリセルアレイの構成の一例を示す図。
図2】半導体層が、複数のワード線及び層間の絶縁層を貫通する部分の拡大断面図である。
図3】第1実施形態による半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図4図3に続く、半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図5図4に続く、半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図6図5に続く、半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図7図6に続く、半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図8図7に続く、半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図9図8に続く、半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図10】比較例による半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図11】第2実施形態による半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図12】第3実施形態による半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る半導体装置におけるメモリセルアレイの構成の一例を示す図である。なお、図1においては、図を見易くするために、メモリホール113内に形成された絶縁膜以外の絶縁部分については図示を省略している。また、以下の実施形態では半導体としてシリコンを例示するが、シリコン以外の半導体を用いてもよい。
【0009】
また、本明細書においては、説明の便宜上、XYZ直交座標系を導入する。この座標系においては、半導体基板10の主面に対して平行な方向であって相互に直交する2方向をX方向及びY方向とし、これらX方向及びY方向の双方に対して直交する方向をZ方向とする。複数のワード線WLはZ方向に積層されている。ワード線WLは、例えば導電材料により構成され、タングステン(W)またはモリブデン(Mo)を含む。
【0010】
半導体基板10の表面領域には、メモリセルアレイMCAを制御する制御回路101が設けられている。制御回路101は、例えば、CMOS回路で構成されている。CMOS回路は、半導体基板10の表面領域に設けられたP型ウェルまたはN型ウェルに設けられていてもよい。制御回路101の上方には、複数のメモリセルを含むメモリセルアレイMCAが設けられている。
【0011】
制御回路101の上方にあるポリシリコン層102上には、複数のNANDストリングNSが形成されている。具体的には、ポリシリコン層102上には、セレクトゲート線SGSとして機能する複数の配線層110と、ワード線WLとして機能する複数の配線層111(ワード線WL0~WL7)と、セレクトゲート線SGDとして機能する複数の配線層112とが形成されている。
【0012】
配線層110は、例えば4層で形成され、複数のNANDストリングNSで共通のセレクトゲート線SGSに電気的に接続され、2つの選択トランジスタST2のゲート電極として機能する。
【0013】
配線層111は、例えば8層で形成され、層ごとに共通のワード線WLに電気的に接続されている。
【0014】
配線層112は、例えば4層で形成され、NANDストリングNSごとに対応するセレクトゲート線SGDに接続され、各々が1つの選択トランジスタST1のゲート電極として機能する。
【0015】
メモリホール113は、配線層110、111、112を貫通し、ポリシリコン層102に達するように形成されている。メモリホール113の側面には、ブロック絶縁層114、電荷蓄積膜115、及びトンネル絶縁膜116が順に形成されている。メモリホール113内には、半導体層117が埋め込まれている。半導体層117は、例えばポリシリコン層である。半導体層117は、NANDストリングNSの電流経路として機能する。半導体層117の上端には、ビット線BLとして機能する配線層118が形成されている。なお、半導体層117の中心には、図示しない絶縁材料のコアが埋め込まれている。
【0016】
以上のように、ポリシリコン層102上には、選択トランジスタST2、複数のメモリセルトランジスタMT0~MT7、及び選択トランジスタST1が順に積層されており、1つのメモリホール113が、1つのNANDストリングNSに対応している。メモリセルトランジスタMT0~MT7は、半導体層117とワード線WL0~WL7との交差部分に対応して設けられている。
【0017】
以上の構成は、図1を記載した紙面の奥行き方向に複数配列されている。これにより、三次元的に配列されたメモリセルトランジスタを有するメモリセルアレイMCAが構成される。
【0018】
図2は、半導体層117が、複数のワード線WL及び層間の絶縁層25を貫通する部分の拡大断面図である。絶縁層25は、例えば、シリコン酸化膜を含む。図2では、図1では省略した導電層WL間の絶縁層を絶縁層25として表している。
【0019】
各導電層WLと半導体層117との間には、導電層WL側から順にブロック絶縁層114、電荷蓄積膜115及びトンネル絶縁膜116が設けられている。ブロック絶縁層114は導電層WLに接し、トンネル絶縁膜116は半導体層117に接し、ブロック絶縁層114とトンネル絶縁膜116との間に電荷蓄積膜115が設けられている。
【0020】
半導体層117はチャネルとして機能し、導電層WLはコントロールゲートとして機能し、電荷蓄積膜115は半導体層117から注入される電荷を蓄積するデータ記憶層として機能する。すなわち、半導体層117と各導電層WLとの交差部分に、チャネルの周囲をコントロールゲートが囲んだ構造のメモリセルが形成されている。
【0021】
本実施形態に係る半導体装置は、データの消去・書き込みを電気的に自由に行うことができ、電源を切っても記憶内容を保持することができる不揮発性半導体記憶装置である。例えば、メモリセルはチャージトラップ構造のメモリセルである。電荷蓄積膜115は、電荷(電子)を閉じこめるトラップを多数有し、例えばシリコン窒化膜である。トンネル絶縁膜116は、例えばシリコン酸化膜であり、電荷蓄積膜115に半導体層117から電荷が注入される際、または電荷蓄積膜115に蓄積された電荷が半導体層117へ拡散する際に電位障壁となる。ブロック絶縁層114は、例えばシリコン酸化膜であり、電荷蓄積膜115に蓄積された電荷が、導電層WLへ拡散するのを防止する。半導体装置は、例えば、三次元NAND型フラッシュメモリでよい。
【0022】
以下、メモリホール113の形成方法について説明する。
【0023】
図3図9は、第1実施形態による半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。尚、図3図9では、図1に示す制御回路101およびポリシリコン層102等は省略されている。
【0024】
図3に示すように、まず、半導体基板10上方に積層体20を形成する。半導体基板10は、例えば、シリコン(Si)基板である。具体的には、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法またはALD(Atomic Layer Deposition)法を用いて絶縁層としての第1膜21と犠牲層としての第2膜22とをZ方向に交互に成膜する。第1膜21は、例えばシリコン酸化膜を含み、第2膜22は、例えばシリコン窒化膜を含む。積層体20は、被加工膜の一例である。
【0025】
次に、図4に示すように、積層体20の最上面にマスク材30を形成する。マスク材30は、第1金属および炭素(C)を含む。以下では、第1金属がタングステン(W)である場合を説明する。尚、マスク材30は、例えば、炭素の10%~20%程度の量の水素(H)、および、第1金属の10%~20%程度の量の酸素(O)を含んでいてもよい。より詳細には、マスク材30は、例えば、第1金属およびハロゲンを含む材料ガス、および、材料ガスを還元する還元ガスを用いて形成される。材料ガスは、タングステンおよびフッ素を含む。還元ガスは、例えば水素を含む。材料ガスには、例えば、六フッ化タングステン(WF)を含んだガスを用いることができる。尚、材料ガスには、タングステンを含むガスとフッ素を含むガスとの混同ガスを用いられてよい。還元ガスには、例えば、プロピレン(C)を含んだガスを用いることができる。
【0026】
マスク材30は、例えば、上述した材料ガスを用いたプラズマCVD法により形成することができる。具体的には、プラズマを発生させたチャンバ(不図示)内に、材料ガスおよび還元ガスを導入する。
【0027】
マスク材30は、マスク層31、32を有する。また、マスク層32は、マスク層321、322、323を有する。マスク層31、321、322、323は、タングステンの含有比率(例えば、atomic%)の違いによって区別されている。タングステンの含有比率は、例えば、蛍光X線分析(XRF、X-ray Fluorescence)の結果から得ることができる。マスク層31は、第1マスク層の一例である。マスク層32は、第2マスク層の一例である。マスク層321は、第3マスク層の一例である。マスク層322は、第4マスク層の一例である。
【0028】
尚、マスク層31、321、322、323および積層体20のZ方向における厚さは、図4に示す例に限られない。
【0029】
マスク層31は、積層体20上に設けられる。マスク層31におけるタングステンの含有比率は、第1所定比率よりも低い。第1所定比率は、例えば、10%である。マスク層31の厚さは、例えば、1μm~1.5μmである。
【0030】
マスク層32は、マスク層31上に設けられる。マスク層32におけるタングステンの含有比率は、第1所定比率以上である。
【0031】
マスク層32のマスク層321は、マスク層31上に設けられる。マスク層321におけるタングステンの含有比率は、第2所定比率以下である。第2所定比率は、第1所定比率よりも高い。第2所定比率は、例えば、50%である。マスク層321におけるタングステンの含有比率は、例えば、30%~50%である。マスク層321の厚さは、例えば、0.5μm~3μmである。
【0032】
マスク層32のマスク層322は、マスク層321上に設けられる。マスク層322におけるタングステンの含有比率は、第2所定比率よりも高い。マスク層322におけるタングステンの含有比率は、例えば、50%よりも高い。すなわち、マスク層322におけるタングステンの含有比率は、マスク層321におけるタングステンの含有比率よりも高い。マスク層322の厚さは、例えば、約1μmである。
【0033】
マスク層32のマスク層323は、マスク層322上に設けられる。マスク層323におけるタングステンの含有比率は、例えば、第3所定比率以下である。第3所定比率は、例えば、50%である。マスク層323におけるタングステンの含有比率は、例えば、30%~50%である。すなわち、マスク層323におけるタングステンの含有比率は、マスク層322におけるタングステンの含有比率よりも低い。マスク層323の厚さは、例えば、約0.5μmよりも小さい。
【0034】
マスク層31、321、322、323は、マスク材30の形成中にガスの流量比を変化させることにより形成される。タングステンの含有比率がそれぞれ30%、40%、50%、および、70%である場合、六フッ化タングステン(WF)とプロピレン(C)との流量比は、例えば、0.4:1、2.0:1、3.5:1、および、7.0:1である。プロピレン(C)の流量を250sccmに固定する場合、上記のそれぞれの流量比に対する六フッ化タングステン(WF)の流量は、例えば、80sccm~100sccm、450sccm~500sccm、875sccm~1000sccm、および、1800sccm~2000sccmである。
【0035】
次に、図5に示すように、マスク材30を貫通する凹部40を形成する。その結果、マスク材30に凹部40のパターンが形成される。凹部40は、平面視において、例えば、ホール形状のパターンを有する。凹部40は、例えば、図示しないシリコン酸窒化膜(SiON膜)等をマスクとして用いたRIE(Reactive Ion Etching)によって、形成することができる。凹部40の形成は、例えば、酸素(O)、COS、および、NF等を含むガスの雰囲気下で行われる。
【0036】
次に、図6に示すように、マスク材30をマスクとして、積層体20を加工する(第1エッチング)。より詳細には、マスク材30の凹部40のパターンに基づいて積層体20に凹部41のパターンを形成する。これにより、XY方向における凹部40の位置に凹部41が形成される。第1エッチングは、凹部41が積層体20の上端から積層体20の所定深さに達するまで行われる。従って、凹部41は、例えば、積層体20を貫通するが、半導体基板10には到達せずに積層体20の内部で終端してよい。第1エッチングは、例えば、RIEである。
【0037】
次に、図7に示すように、条件を変えて積層体20の加工を継続する(第2エッチング)。これにより、凹部41がさらに深くまで形成される。第2エッチングは、凹部41が積層体20の下端に達するまで行われる。第2エッチングは、例えば、RIEである。
【0038】
尚、第1エッチングおよび第2エッチングの詳細については、後で説明する。
【0039】
次に、図8に示すように、条件を変えてオーバーエッチングを行う。これにより、凹部41が半導体基板10に延伸して、半導体基板10の上端の一部が削れられる。尚、オーバーエッチングの後に残るマスク材30の厚さは、例えば、約500nm~約700nmである。
【0040】
次に、図9に示すように、マスク材30を除去する。マスク材30は、薬液を用いて除去することができる。例えば、過酸化水素(H)溶液を薬液として用いると、積層体20に損傷を与えにくくマスク材30を除去することができる。
【0041】
マスク材30の除去後、メモリホール113である凹部41内には、例えば、図2に示すメモリ膜を形成することができる。図9に示す第1膜21は、図2に示す絶縁層25に対応する。また、図9に示す第2膜22は、メモリ膜形成後に、図2に示す導電層WLに置換される。
【0042】
次に、第1エッチングおよび第2エッチングの詳細について説明する。
【0043】
図6に示すように、第1温度において第1ガスの雰囲気で、マスク材30をマスクとして、積層体20を加工する第1エッチング(第1処理)を行う。次に、図7に示すように、第2温度において第2ガスの雰囲気で、マスク材30をマスクとして、積層体20を加工する第2エッチング(第2処理)を行う。
【0044】
第2温度は、第1温度よりも高い温度である。第1温度は、例えば、0℃以下の温度である。第1温度は、例えば-40~-10℃である。第2温度は、例えば、0℃よりも高い温度である。
【0045】
第2ガスは、第1ガスとは異なるガスである。第1ガスは、第2ガスの水素(H)の濃度よりも高い濃度の水素を含む。第1ガスは、例えば、CFおよび水素(H)を含む。第2ガスは、例えば、CH、C、および、酸素(O)を含む。
【0046】
ここで、積層体20の高積層化に伴って、高選択比のマスク材30が必要になってきている。タングステンを含むマスク材30は、エッチングレートが低いため、被加工膜に対して高い選択比を有する。しかし、凹部41を形成するためのエッチングを行うと、マスク材30にあったタングステンが凹部41内に入り、凹部41の側壁に付着する場合がある。タングステンはエッチング耐性が高いため、凹部41の側壁に付着したタングステンはマイクロマスクとして機能し、エッチングが進みづらくなる。また、エッチングにCF(フルオロカーボン)系ガスが用いられる場合、CF系の膜が凹部41の側壁に堆積される場合がある。従って、凹部41の側壁に、タングステンの付着による比較的エッチングされづらい領域、および、堆積膜による比較的エッチングされやすい領域の両方が存在する。
【0047】
上記の2つの領域がエッチング中に存在することより、凹部41の真円度が低下し、また、凹部41側壁にストライエーション(striation)と呼ばれる縦筋状の荒れが発生しやすくなってしまう可能性がある。すなわち、凹部41に形状異常が発生する可能性がある。尚、真円度低下およびストライエーションは、マスク材30のタングステン濃度が高いほど、すなわち、選択比が高くなるほど、生じやすくなる。
【0048】
第1エッチングの条件では、第2エッチングに対する温度およびガスの種類等の違いにより、堆積膜が発生しづらい。従って、第1エッチングでは、第2エッチングと比較して、凹部41の形状異常が発生しづらい。そこで、高濃度のタングステンを含むマスク材30を用いて第1エッチングを行うことにより、凹部41の形状異常を抑制しつつ、高選択比のマスク材30で積層体20を加工することができる。この結果、凹部41の形状異常を抑制しつつ、高アスペクト比の凹部41を形成することができる。
【0049】
しかし、第1エッチングの条件では、半導体基板10のシリコンに対する選択比が低い。この場合、積層体20を完全に貫通した凹部41が半導体基板10に深く形成されやすくなってしまう。
【0050】
そこで、凹部41が半導体基板10に達する前に、エッチングの条件を、半導体基板10のシリコンに対する積層体20の選択比が高い条件に切り替える必要がある。すなわち、第2エッチングにおける半導体基板10に対する積層体20の選択比は、第1エッチングにおける半導体基板10に対する積層体20の選択比よりも高い。また、上記のように、第2エッチングの条件では、第1エッチングの条件と比較して、堆積膜が発生しやすい。凹部41の形状異常を抑制するために、第2エッチングを行う際のマスク材30は、タングステン濃度が低い状態である必要がある。これにより、積層体20に凹部41を好適に形成することができる。
【0051】
図6に示すように、第1エッチングは、比較的高い含有比率のタングステンを有するマスク層32をマスクとして用いて行われる。図7に示すように、第2エッチングは、比較的低い含有比率のタングステンを有するマスク層31をマスクとして用いて行われる。しかし、第1エッチングから第2エッチングへの切り替えのタイミングは、必ずしもマスク層31とマスク層32との境界に限られない。第1エッチングから第2エッチングへの切り替えのタイミングは、例えば、凹部41の下端が半導体基板10の上端から所定距離(例えば、500nm)に達するタイミングで設定される。
【0052】
尚、上記のように、図3図9では、図1に示す制御回路101およびポリシリコン層102等は省略されている。しかし、積層体20の下層には、半導体基板10に代えて、シリコンを含む層が設けられていればよく、例えば、ポリシリコン層102が設けられていてもよい。この場合、第2エッチングは、凹部41がポリシリコン層102に達するまで行われる。
【0053】
以上のように、第1実施形態によれば、マスク材30は、積層体20上に設けられ、タングステンの含有比率が第1所定比率よりも低いマスク層31と、マスク層31上に設けられ、タングステンの含有比率が第1所定比率以上であるマスク層32と、を有する。積層体20を加工することは、第1温度において第1ガスの雰囲気で、積層体20を加工する第1エッチングを行うことを具備する。積層体20を加工することは、第1エッチングの後、第2温度において第2ガスの雰囲気で、積層体20を加工する第2エッチングを行うことを具備する。これにより、積層体20に凹部41を好適に形成することができる。
【0054】
尚、第1金属は、タングステンに限られない。第1金属は、例えば、タングステンと化学的に似た性質を有するモリブデン(Mo)等であってもよい。第1金属がMoである場合、材料ガスは、例えば、MoF等を含むガスであってもよい。
【0055】
また、第2ガスは、第1ガスと比較して、CF系の膜が堆積しやすいガスであればよい。
【0056】
次に、マスク材30の凹部40における、ボーイング(bowing)と呼ばれる穴径拡大について説明する。
【0057】
図5において、凹部40の形成時に、例えば、RIEにおけるイオンの反跳、または、ネックにイオンが衝突する等により、凹部40にボーイング部が形成される場合がある(図10を参照)。尚、ネックは、凹部40等のホールの内径が局所的に縮小した箇所である。
【0058】
そこで、例えば、ボーイング部が発生しやすい位置に、タングステンの含有比率が比較的高いマスク層322を形成する。凹部40におけるボーイング部を抑制することにより、積層体20に凹部41を好適に形成することができる。また、マスク層322よりもタングステンの含有比率の低いマスク層321、323は、ボーイング部が発生しない位置に設けられている。これにより、ボーイング部を抑制しつつ、マスク層32を加工しやすくすることができる。
【0059】
(比較例)
図10は、比較例による半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【0060】
マスク材30aは、マスク層33を有する。マスク層33は、例えば、CVDにより形成される。マスク層33は、炭素を含む。マスク層33には、タングステンはほぼ含まれていない。従って、比較例によるマスク材30aのエッチングレートは、第1実施形態において説明した、タングステンを含むマスク材30のエッチングレートよりも高い。すなわち、比較例によるマスク材30aの選択比は、第1実施形態によるマスク材30の選択比よりも低い。
【0061】
図10に示すように、比較例では、凹部40にボーイング部Bが発生しやすい。
【0062】
これに対して、第1実施形態では、マスク材30は、タングステンを含む。これにより、凹部40におけるボーイング部を抑制することができる。また、マスク層32は、ボーイング部が発生しやすい位置に、タングステン比率の高いマスク層322を有する。これにより、ボーイング部をさらに抑制しやすくすることができる。
【0063】
(第2実施形態)
図11は、第2実施形態による導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。第2実施形態では、第1実施形態と比較して、マスク層32の構成が異なっている。
【0064】
マスク層32は、マスク層321、322有する。従って、マスク材30は、3つのマスク層31、321、322を有する。尚、第1実施形態におけるマスク層323は設けられていない。
【0065】
マスク層321の厚さは、例えば、0.5μm~3μmである。マスク層322の厚さは、例えば、約1μmである。
【0066】
図11に示すように、ボーイング部が発生しやすい位置に応じて、マスク層322の位置が変更される。
【0067】
第2実施形態のように、マスク層32の構成が変更されてもよい。第2実施形態による半導体装置の製造方法は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0068】
(第3実施形態)
図11は、第3実施形態による導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。第3実施形態では、第1実施形態と比較して、マスク層32の構成が異なっている。
【0069】
マスク層32は、マスク層321有する。従って、マスク材30は、2つのマスク層31、321を有する。尚、第1実施形態におけるマスク層322、323は設けられていない。
【0070】
マスク層321の厚さは、例えば、0.5μm~4μmである。
【0071】
第3実施形態のように、マスク層32の構成が変更されてもよい。第2実施形態による半導体装置の製造方法は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0073】
10 半導体基板、20 積層体、30 マスク材、31 マスク層、32 マスク層、321~323 マスク層、40 凹部、41 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12