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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044146
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】パンツ型の使い捨ておむつ
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/49 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
A61F13/49 410
A61F13/49 311Z
A61F13/49 312Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149519
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南岡 政宏
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA07
3B200BA12
3B200BB11
3B200CA03
3B200CA05
3B200CA06
3B200DA01
3B200DA21
(57)【要約】
【課題】着用者が汗をかいた場合に、着用者の肌への張り付きが抑制されたパンツ型の使い捨ておむつを提供すること。
【解決手段】パンツ型使い捨ておむつ1は、吸収性コア40を含む吸収性本体5と、該吸収性本体5の非肌対向面側に配された外装体3とを備えている。外装体3を構成するシートは、ウエスト開口部の周縁端WEに沿って肌対向面側に折り返されて形成された折り返しシート部51を有する。折り返しシート部51と端部固定シート34は、吸収性本体5の縦方向Xの端縁よりもウエスト開口部側に、非固定状態の自由部どうしが縦方向Xに向かい合って存在する第1の自由部対向部73を有する。端部固定シート34と固定用シート35は、吸収性本体5の縦方向Xの端縁よりも股下部C側に、非固定状態の自由部どうしが縦方向Xに向かい合って存在する第2の自由部対向部83を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の腹側に配される腹側部と、着用者の背側に配される背側部と、該腹側部及び該背側部の間に位置する股下部とを有し、吸収性コアを含む吸収体を有する吸収性本体と、該吸収性本体の非肌対向面側に配された外装体とを備え、該腹側部から該股下部を介して該背側部に延びる縦方向と該縦方向に直交する横方向とを有し、ウエスト開口部及び一対のレッグ開口部を有するパンツ型の使い捨ておむつであって、
前記外装体を構成するシートが、前記ウエスト開口部の周縁端に沿って肌対向面側に折り返されて形成された折り返しシート部と、前記吸収性本体の前記縦方向の端部を覆って、前記横方向に延びて配された端部固定シートと、前記吸収性本体の非肌対向面側に、該吸収性本体を横断して配された固定用シートとを有しており、
前記折り返しシート部と前記端部固定シートは、前記吸収性本体の前記縦方向の端縁よりも前記ウエスト開口部側に、非固定状態の自由部どうしが前記縦方向に向かい合って存在する第1の自由部対向部を有し、
前記端部固定シートと前記固定用シートは、前記吸収性本体の前記縦方向の端縁よりも股下部側に、非固定状態の自由部どうしが前記縦方向に向かい合って存在する第2の自由部対向部を有しており、
前記第1の自由部対向部及び前記第2の自由部対向部は、少なくとも、前記吸収性本体の前記縦方向に延びる両側縁それぞれの外方に位置する側部域に、前記横方向に沿って連続して形成されており、且つ前記自由部には弾性部材が配されていない、パンツ型の使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記外装体は伸縮性シートを含む、請求項1に記載のパンツ型の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記伸縮性シートは前記横方向に伸長した状態で前記外装体を構成する別のシートと間欠的に接合されており、
前記外装体が自然状態において襞構造を有している、請求項2に記載のパンツ型の使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記第1の自由部対向部及び前記第2の自由部対向部が同一の前記端部固定シートを含んでいる、請求項1又は2に記載のパンツ型の使い捨ておむつ。
【請求項5】
前記端部固定シート又は前記固定用シートは親水性シートである、請求項1又は2に記載のパンツ型の使い捨ておむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンツ型の使い捨ておむつに関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつを着用した状態で着用者が汗をかくと、おむつの肌対向面側に配されているシートが着用者の肌に張り付き、蒸れが生じて装着感を損なってしまうことがある。そのため、このような肌への張り付きが抑制された使い捨ておむつが求められている。
【0003】
例えば特許文献1には、吸収性本体と、外装体と、を備える吸収性物品であって、前記外装体の前側端部及び後側端部が内方向に向かって折り返され、外方向に配置された折り元部と内方向に配置された折り返し部とが積層されており、折り返し部の前後方向における内側端部は、折り元部と接着されてなく、吸収性本体の前後方向における外側端部は、外装体と接着されていない、吸収性物品が提案されている。同文献によれば、折り元部と接着されていない折り返し部の内側端部と、外装体と接着されていない吸収性本体の前後方向における外側端部と、が内方向に突出することによって着用者と外装体との間に空間を設けることができ、蒸れを抑制できると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-128512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の吸収性物品は、着用者と外装体との間に設けられる空間が不十分であり、蒸れの抑制効果に改善の余地を残していた。
したがって本発明の課題は、着用者が汗をかいた場合に、着用者の肌への張り付きが抑制されたパンツ型の使い捨ておむつを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、着用者の腹側に配される腹側部と、着用者の背側に配される背側部と、該腹側部及び該背側部の間に位置する股下部とを有し、吸収性コアを含む吸収体を有する吸収性本体と、該吸収性本体の非肌対向面側に配された外装体とを備え、該腹側部から該股下部を介して該背側部に延びる縦方向と該縦方向に直交する横方向とを有し、ウエスト開口部及び一対のレッグ開口部を有するパンツ型の使い捨ておむつに関する。
一実施形態において、前記外装体を構成するシートが、前記ウエスト開口部の周縁端に沿って肌対向面側に折り返されて形成された折り返しシート部と、前記吸収性本体の前記縦方向の端部を覆って、前記横方向に延びて配された端部固定シートと、前記吸収性本体の非肌対向面側に、該吸収性本体を横断して配された固定用シートとを有していることが好ましい。
一実施形態において、前記折り返しシート部と前記端部固定シートは、前記吸収性本体の前記縦方向の端縁よりも前記ウエスト開口部側に、非固定状態の自由部どうしが前記縦方向に向かい合って存在する第1の自由部対向部を有していることが好ましい。
一実施形態において、前記端部固定シートと前記固定用シートは、前記吸収性本体の前記縦方向の端縁よりも股下部側に、非固定状態の自由部どうしが前記縦方向に向かい合って存在する第2の自由部対向部を有していることが好ましい。
一実施形態において、前記第1の自由部対向部及び前記第2の自由部対向部は、少なくとも、前記吸収性本体の前記縦方向に延びる両側縁それぞれの外方に位置する側部域に、前記横方向に沿って連続して形成されており、且つ前記自由部には弾性部材が配されていないことが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、着用者が汗をかいた場合に、着用者の肌への張り付きが抑制されたパンツ型の使い捨ておむつが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明のパンツ型の使い捨ておむつの一実施形態を示す図であって、該おむつの展開且つ伸長状態における肌対向面側を模式的に示す展開平面図である。
図2図2は、図1に示す使い捨ておむつの分解斜視図である。
図3図3は、図1のII-II線断面図である。
図4図4は、図1のIII-III線断面斜視図である。
図5図5は、図1のIV-IV線断面斜視図である。
図6図6は、外層シートと内層シートとの接合状態を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1図6には、本発明のパンツ型の使い捨ておむつ1(以下、単に「おむつ1」ともいう。)の一実施形態が示されている。
おむつ1は、図1に示すように、着用状態において、着用者の腹側に配される腹側部Aと、着用者の背側に配される背側部Bと、該腹側部A及び該背側部Bの間に位置する股下部Cとを有している。股下部Cは、おむつ1の着用状態において着用者の股間部に配される部位である。腹側部Aは、おむつ1の着用状態において股下部Cよりも着用者の腹側、即ち前側に配される部位である。背側部Bは、おむつ1の着用状態において股下部Cよりも着用者の背側、即ち後側に配される部位である。
おむつ1は、図1に示すように、着用者の前後方向に相当する縦方向Xとこれに直交する横方向Yとを有する。本明細書において、「着用者の前後方向」とは、着用者の腹側から股間部を介して背側に延びる方向を指す。おむつ1は、腹側部Aから股下部Cを介して背側部Bに延びる縦方向Xに延在している。
【0010】
おむつ1は、図1に示すように、縦方向の中央(縦中心線CLx)を境界として着用時に着用者の前側(腹側)に配される前身頃Fと着用者の背側(後側)に配される後身頃Rとに区分される。縦中心線CLxは、図1に示す如き展開且つ伸長状態のおむつ1を縦方向Xに二等分して横方向Yに延びる仮想直線である。おむつ1の「展開且つ伸長状態」とは、おむつ1を後述するサイドシール部で切り離して展開状態とし、その展開状態のおむつ1を各部の弾性部材を伸長させて設計寸法(弾性部材の影響を一切排除した状態で平面状に拡げたときの寸法と同じ)となるまで拡げた状態をいう。
本明細書において、おむつ1の各部位(例えば吸収性コア40)における縦方向X又は横方向Yの長さ(幅)等といった各寸法は、特に断りがない限り、各部の弾性部材を伸長させて各部材を引き伸ばした状態での寸法(設計寸法)のことである。
【0011】
おむつ1は、液保持性の吸収体4を有する吸収性本体5と、該吸収性本体5の非肌対向面側に配された外装体3とを備えている。外装体3は、腹側部A及び背側部Bそれぞれにおける縦方向Xに沿う両側縁部AS,BSどうしが、接着剤、ヒートシール、超音波シール等の公知の接合手段によって互いに接合されている。これにより、おむつ1は、両側縁部AS,BSどうしが接合された一対のサイドシール部(図示せず)を有し、更に着用者の胴が通されるウエスト開口部、及び着用者の下肢が通される一対のレッグ開口部を有する(図示せず)。
【0012】
本明細書において、「肌対向面」は、使い捨ておむつ又はその構成部材(例えば表面シート12)における、使い捨ておむつの着用時に着用者の肌側に向けられる面、即ち相対的に着用者の肌に近い側であり、「非肌対向面」は、使い捨ておむつ又はその構成部材における、使い捨ておむつの着用時に肌側とは反対側に向けられる面、即ち相対的に着用者の肌から遠い側である。本明細書にいう「着用時」は、通常の適正な着用位置、即ち当該吸収性物品の正しい着用位置が維持された状態を意味する。
【0013】
吸収性本体5は、平面視長方形形状をなし、縦方向Xに延在しており、その長手方向を展開且つ伸長状態におけるおむつ1の縦方向Xに一致させて、外装体3の横方向Yの中央部に配置されている。吸収性本体5は、接着剤等の公知の接合手段によって外装体3に接合されている。
吸収性本体5は、縦方向Xの両端部の肌対向面が端部固定シート34に被覆されており、且つ、外装体3に固定されている。端部固定シート34は、接着剤等の公知の接合手段によって、外装体3及び吸収性本体5に接合されている(図2参照)。端部固定シート34の接合態様の詳細については後述する。
【0014】
吸収性本体5は、肌対向面を形成する液透過性の表面シート12、非肌対向面を形成する液不透過性又は液難透過性又は撥水性の防漏シート13、及びこれら表面シート12及び防漏シート13間に配された液保持性の吸収体4を具備しており、これらが接着剤等の公知の接合手段により一体化されて構成されている。
吸収体4は、図3に示すように、吸収性コア40と、該吸収性コア40の表面を被覆する液透過性のコアラップシート49を含んで構成されている。吸収体4においては、吸収性コア40の肌対向面及び非肌対向面を含む表面の全域が、コアラップシート49で覆われている。これに代えて、吸収性コア40は、その肌対向面のみがコアラップシート49で覆われていてもよい。また、吸収体4は、コアラップシート49を具備していなくともよい。
吸収性コア40は、下層コア45と、該下層コア45よりも肌対向面側に配された上層コア41とを有している(図3参照)。即ち、吸収性コア40は上層コア41と下層コア45とが積層した積層構造を有している。これに代えて、吸収性コア40は上層コア41を具備せず、下層コア45のみの単層構造を有していてもよい。吸収性コア40は、下層コア45の肌対向面に配された上層コア41を有するので、該上層コア41が肌に突出した凸部となっており、着用状態において該上層コア41が着用者の股間部にフィットするとともに、吸収性能を担保している。
【0015】
外装体3は、おむつ1の外形、即ち、腹側部A、股下部C及び背側部Bそれぞれの外形を成している。外装体3は、図1に示すように、展開且つ伸長状態の平面視において、腹側部A及び背側部Bでは、縦方向Xよりも横方向Yの長さが長い矩形状をなし、股下部Cでは、縦方向Xに沿う両側縁部、即ち一対のレッグ縁部LE,LEが横方向Yの内方に向けて括れた砂時計形状をなしている。外装体3は、展開且つ伸長状態の平面視において、股下部Cの縦方向Xに沿う両側縁よりも、腹側部A及び背側部Bの縦方向Xに沿う両側縁が横方向Y外方に張り出している。また外装体3は、腹側部Aの縦方向X外方縁6及び背側部Bの縦方向X外方縁6は、横方向Yに延びており、サイドシール部が形成されたおむつ1においてウエスト開口部を形成する。即ちこれら縦方向X外方縁6は、ウエスト開口部の周縁端WEとなる。
【0016】
外装体3は、複数枚のシートが積層されて構成されている。詳細には、外装体3は、図3に示すとおり、非肌対向面側から肌対向面側に向かって外層シート31、内層シート33、及び固定用シート35がこの順で積層されている。外層シート31は少なくとも腹側部A及び背側部Bにおいて、おむつ1の外面、即ち非肌対向面を形成しており、図2及び図3に示すように、前身頃Fに配置された前側外層シート31Aと後身頃Rに配された後側外層シート31Bとに分割されている。内層シート33は、外層シート31と固定用シート35との間に配置されており、前身頃F及び後身頃Rの両外層シート31A,31Bに架け渡されて固定されている。内層シート33は、縦方向Xにおいて腹側部Aのウエスト開口部の周縁端WEから背側部Bのウエスト開口部の周縁端WEまで連続している。即ち内層シート33は、おむつ1の全長に連続し、縦方向Xにおけるこれら前側外層シート31Aと後側外層シート31Bとの間でおむつ1の外面を形成している。固定用シート35は、内層シート33の肌対向面側であって、且つ、吸収性本体5の非肌対向面側に、該吸収性本体5を横断して配置されており、後述するレッグ弾性部材37を内層シート33との間で固定している。外装体3を構成するこれらのシート31,33,35は、接着剤等の公知の接合手段によって接合されている。
なお、本実施形態のパンツ型の使い捨ておむつは外層シート31を具備していなくてもよい。
【0017】
外装体3は、前側外層シート31A及び後側外層シート31Bが、ウエスト開口部の周縁端WEに沿って肌対向面側に折り返され、折り返しシート部51を形成している(図1及び図2参照)。即ち、前側外層シート31A及び後側外層シート31Bは、ウエスト開口部の周縁端WEを形成しており、該周縁端WEから縦方向Xの内方に向けて該シート31A,31Bの折り返しシート部51a,51bが延出している。
外装体3を構成する別の部材である内層シート33も、前述した外層シート31A,31Bと同様に、ウエスト開口部の周縁端WEに沿って肌対向面側に折り返され、縦方向Xの内方に向けて延出する折り返しシート部51を形成している。外装体3のウエスト開口部の周縁端WE近傍では、前側外層シート31A及び後側外層シート31Bの折り返しシート部51a,51bと、内層シート33の折り返しシート部51c,51dとが肌対向面側で重なっている(図3参照)。
おむつ1は4つの折り返しシート部51a,51b,51c,51dを有しているところ、これに代えて、該4つの折り返しシート部51a,51b, 51c,51dのうちの1つ以上3つ以下を有していてもよい。例えば、おむつ1は外層シート31の折り返しシート部51a,51bのみを有していてもよいし、内層シート33の折り返しシート部51c,51dのみを有していてもよい。
【0018】
外装体3は、内層シート33とその折り返しシート部51c,51dとの間に伸長状態で配された複数本の糸状又は帯状の弾性部材32を備えている。具体的には、腹側部A及び背側部Bそれぞれにおける、着用者の胴回りに配される領域に、複数本の弾性部材32(以下、「胴回り弾性部材32」という。)が横方向Yに伸長状態で、且つ縦方向Xに所定間隔を置いて間欠配置されている。胴周り弾性部材32は、腹側部A及び背側部Bそれぞれにおける縦方向Xに沿う両側縁部どうし間、即ち横方向Yにおけるサイドシール部間であって、吸収性本体5の縦方向Xの端縁から縦方向Xの外方に延出した領域に配されている。斯かる領域は、着用状態において着用者のウエスト回り及びその近傍に配される。胴回り弾性部材32は、外装体3において腹側部A及び背側部Bそれぞれの横方向Yの略全長に延在しており、弾性伸縮性が発現した状態で配されている。これにより、ウエスト開口部の全周に沿って実質的に連続した環状のウエストギャザーが形成される。
【0019】
外装体3は、内層シート33及び固定用シート35間に伸長状態で配された複数本の糸状又は帯状のレッグ弾性部材37を備えている。具体的には、前身頃Fにおける一対のレッグ開口部それぞれの周縁部を形成するレッグ縁部LEに、1本又は複数本のレッグギャザー形成用のレッグ弾性部材37が伸長状態で配されている(図1及び図2参照)。これによって、前身頃Fにおける一対のレッグ開口部それぞれの周縁部にはレッグギャザーが形成される。本実施形態のおむつ1は、前身頃Fのみにレッグ弾性部材37が配されている。即ち、後身頃Rにはレッグ弾性部材37は配されていない。
これに代えて、前身頃F及び後身頃Rそれぞれのレッグ縁部LEにレッグ弾性部材37が配されていてもよい。
【0020】
折り返しシート部51と端部固定シート34は、吸収性本体5の縦方向Xの端縁よりもウエスト開口部側に、非固定状態の自由部どうしが縦方向Xに向かい合って存在する第1の自由部対向部を有する。図4には、折り返しシート部51cの自由部71と、端部固定シート34Aの自由部72とからなる第1の自由部対向部73が示されている。折り返しシート部51cは、縦方向Xにおいて端部固定シート34に近い側に配され、非固定状態である自由部71と、縦方向Xにおいて端部固定シート34に遠い側に配され、外装体3を構成する内層シート33に固定された状態の固定部70と、を有する。同様に、端部固定シート34Aは、縦方向Xにおいて折り返しシート部51cに近い側に配され、非固定状態である自由部72と、縦方向Xにおいて折り返しシート部51cに遠い側に配され、外装体3を構成する内層シート33に固定された状態の固定部70と、を有する。折り返しシート部51の自由部71及び端部固定シート34の自由部72は、いずれの部材とも接合されていない部位である。自由部71,72は、それらの自由端縁が互いに向かい合うように存在し、第1の自由部対向部73を形成している。自由部71,72の自由端縁は、おむつ1の横方向Yに沿って延びている。
【0021】
自由部71,72はおむつ1の通気性を向上させ、着用者の汗をより早く蒸発させる効果を有する。これによって、着用者が汗をかいた場合に、おむつ1を構成する各シートの着用者の肌への張り付きを抑制することができる。また、2つの自由部71,72が向かい合って存在し、第1の自由部対向部73を形成していることによって、おむつ1の腹側部Aから背側部Bに向かう方向と、背側部Bから腹側部Aに向かう方向と、の両方向において通気性が向上するため、着用者の汗をより早く蒸発させることができる。この目的のために、自由部71,72は例えば不織布から構成されていることが好ましい。
【0022】
第1の自由部対向部73は、少なくとも、吸収性本体5の縦方向Xに延びる両側縁それぞれの外方に位置する側部域Dに、横方向Yに沿って連続的に形成されている。第1の自由部対向部73が横方向Yに沿って連続的に形成されていることによって、横方向Yの広域においておむつ1の通気性を向上する効果を得ることができる。
一方、吸収性本体5の縦方向Xに延びる両側縁それぞれの内方に位置する中央域E(図1参照)には第1の自由部対向部73は形成されていてもよいし、あるいは形成されていなくてもよい。上述の通気性向上効果をより高める観点からは、該中央域Eにも、第1の自由部対向部73が形成されていることが好ましい。
【0023】
図4に示す第1の自由部対向部73は折り返しシート部51c及び端部固定シート34Aからなるところ、第1の自由部対向部73を構成する部材はこれらに限られない。例えば、第1の自由部対向部73は折り返しシート部51d及び端部固定シート34Bからなってもよい。あるいは、折り返しシート部51cが存在しない実施形態においては、第1の自由部対向部73は折り返しシート部51a及び端部固定シート34Aからなってもよい。
おむつ1は1つ又は複数の第1の自由部対向部73を有することができる。本実施形態の第1の自由部対向部73は腹側部A及び背側部Bに1つずつ存在する。具体的には、第1の自由部対向部73は腹側部Aにおいては折り返しシート部51c及び端部固定シート34Aからなり、背側部Bにおいては折り返しシート部51d及び端部固定シート34Bからなる。
なお、第1の自由部対向部73は折り返しシート部51の自由部71が該第1の自由部対向部73を構成する点において、後述する第2の自由部対向部83と相違する。折り返しシート部51の自由部71は、他の自由部とは異なり追加のシート部材を用いることなく、外装体3を構成するシートを折り返すのみで形成可能であるため、製造コストを抑えることができる点で有利である。
【0024】
また端部固定シート34と固定用シート35は、吸収性本体5の縦方向Xの端縁よりも股下部側に、非固定状態の自由部どうしが縦方向Xに向かい合って存在する第2の自由部対向部を有する。図5には、端部固定シート34Aの自由部81と、固定用シート35の自由部82とからなる第2の自由部対向部83が示されている。吸収性本体5の縦方向Xに延びる両側縁それぞれの外方に位置する側部域Dにおいて、端部固定シート34Aは、非固定状態である自由部81と、外装体3を構成する内層シート33に固定された状態の固定部70とを有する。自由部81は固定部70よりも縦方向Xにおいて固定用シート35に近い側に配されている。同様に、側部域Dにおいて固定用シート35は、非固定状態である自由部82と、外装体3を構成する内層シート33に固定された状態の固定部70と、を有する。自由部82は固定部70よりも縦方向Xにおいて端部固定シート34Aに近い側に配されている。端部固定シート34Aの自由部81及び固定用シート35の自由部82は、いずれの部材とも接合されていない部位である。自由部81,82は、それらの自由端縁が互いに向かい合うように存在し、第2の自由部対向部83を形成している。自由部81,82の自由端縁は、おむつ1の横方向Yに沿って延びている。図1から明らかなように、第2の自由部対向部83は吸収性本体5の縦方向Xの端縁よりも股下部側に存在している。ただし、第2の自由部対向部83が股下部Cに存在している場合は、前記「股下部側に存在している」とは、「縦中心線CLx側に存在している」という意味である。
【0025】
第2の自由部対向部83及び該第2の自由部対向部83を構成する自由部81,82は、第1の自由部対向部73及び該第1の自由部対向部73を構成する自由部71,72と同様に、おむつ1の通気性を向上させる。おむつ1が第1の自由部対向部73に加えて第2の自由部対向部83を有していることによって、縦方向Xの広域においておむつ1の通気性が向上し、おむつ1を構成する各シートの着用者の肌への張り付きがより効果的に抑制される。この目的のために、自由部81,82は例えば不織布から構成されていることが好ましい。
【0026】
図5に示されているように、第2の自由部対向部83は吸収性本体5の縦方向Xに延びる両側縁それぞれの外方に位置する側部域Dに、横方向Yに沿って連続的に形成されている。第2の自由部対向部83が横方向Yに沿って連続的に形成されていることによって、おむつ1の通気性向上効果をより高めることができる。
一方、中央域Eにおいては、固定用シート35は吸収性本体5の下方に位置しているため、自由部は形成されていない。したがって、第2の自由部対向部83は中央域Eには存在していない。
本実施形態では、中央域Eにおいて端部固定シート34Aは吸収性本体5と固定されており、自由部は形成されていない。これに代えて、中央域Eにおいて端部固定シート34Aは非固定状態の自由部を有していてもよい。
【0027】
本実施形態では第2の自由部対向部83は前身頃Fに存在しているが、第2の自由部対向部83の位置はこれに限られない。例えば、レッグ弾性部材37及び固定用シート35が前身頃F及び後身頃Rそれぞれに配されている実施形態においては、第2の自由部対向部83は前身頃F及び後身頃Rそれぞれに存在してもよいし、どちらか一方のみに存在してもよい。
【0028】
おむつ1に存在する各自由部は、おむつ1の通気性を向上させ、着用者の汗をより早く蒸発させる効果を有する。これによって、着用者が汗をかいた場合に、おむつ1を構成する各シートの着用者の肌への張り付きを抑制することができる。特に、2つの自由部が向かい合って存在している第1の自由部対向部73及び第2の自由部対向部83においては、おむつ1の腹側部Aから背側部Bに向かう方向と、背側部Bから腹側部Aに向かう方向と、の両方向の通気性に優れるため、着用者の汗をより早く蒸発させることができる。
【0029】
各自由部71,72,81,82には弾性部材が配されていない。つまり、各自由部71,72,81,82はいずれも非弾性部位となっている。本明細書において「非弾性」とは、2倍の長さまで伸長させた後、伸長状態を解除したときに、伸長前の長さの1.5倍以上の長さにまで戻る性質のことである。弾性部材が配されていないことによって、弾性部材の存在に起因する、装着圧の上昇を避けることができる。よって、各自由部71,72,81,82の動きが阻害されにくくなり、各自由部71,72,81,82が有する通気性向上効果をより高めることができる。
【0030】
本実施形態の第1の自由部対向部73及び第2の自由部対向部83は、ともに同一の端部固定シート34Aを含んでいる。即ち、端部固定シート34Aは、縦方向Xに沿って配置され且つ横方向Yに沿って延びる2つの自由部72,81を有し、且つ該2つの自由部72,81の間に位置する固定部70を有する。換言すれば、一枚の端部固定シート34Aに、自由部72,81が存在している。このように、同一の端部固定シートが第1の自由部対向部73及び第2の自由部対向部83に含まれていることは、製造コストを抑える観点や、自由部72,81が配される位置を調整しやすくし、本発明のパンツ型の使い捨ておむつの通気性を最適化しやすくする観点から好ましい。
尤も、本発明のおむつは前記実施形態に限定されるものではない。例えば、第1の自由部対向部73は折り返しシート部51dと端部固定シート34Bからなり、第2の自由部対向部83は端部固定シート34Aと固定用シート35からなっていてもよい。このような実施形態においては、第1の自由部対向部73及び第2の自由部対向部83は同一の端部固定シート34を含んでいない。
【0031】
おむつ1を構成する外装体3は伸縮性シートを含むことが好ましい。外装体3においては、該外装体3を構成する外層シート31が伸縮性シートであることが好ましい。この場合、外層シート31は、少なくとも横方向Yに沿って伸縮性を有することが好ましい。伸縮性シートである外層シート31は、腹側部A及び背側部Bにおける伸縮性をおむつ1に付与する。これによって、おむつ1を着用者の身体にフィットさせることができる。
伸縮性の外層シート31に代えて、伸縮性を有する他の部材、例えば糸状又は帯状の弾性部材を非伸縮性のシート部材に配することによって、腹側部A及び背側部Bに伸縮性を付与させることもできる。しかし、伸縮性シートを配することによっておむつ1に伸縮性を付与する方が、腹側部A及び背側部Bにおける装着圧がより均一になりやすく、各自由部71,72,81,82の動きが阻害されにくくなる。よって、各自由部71,72,81,82による通気性向上効果をより高めることができる。
【0032】
本発明に用いられる伸縮性シートとしては、例えば(1)弾性繊維層の両面又は片面に伸長可能な繊維層が一体化されている伸縮性不織布、(2)ネット状の弾性シートの両面又は片面に伸長可能な繊維層が一体化されている伸縮性不織布、(3)弾性フィルムからなる弾性シートの両面又は片面に伸長可能な繊維層が一体化されている伸縮性不織布、(4)互いに交差せずに一方向に延びるように配列した多数の弾性フィラメントが、伸長可能な繊維層に一体化されてなる伸縮性不織布等を好ましく用いることができる。
本明細書にいう「伸長可能な繊維層」には、弾性を有する材料と一体化する前から伸長可能である繊維層の他に、弾性を有する材料との一体化後に機械加工等により伸長可能とされた繊維層が含まれる。
弾性繊維層と伸長可能な繊維層との一体化の方法としては、例えば、これらを積層して水流交絡又はエアスルー等により繊維を交絡させる方法、ヒートエンボス、接着剤、超音波等によって接合させる方法が挙げられる。弾性繊維としては、スチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー又はポリウレタン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー、ゴム等の弾性樹脂を原料とする繊維を用いることができる。また、非弾性繊維としては、熱可塑性樹脂を原料とした繊維を用いることができる。
【0033】
前記(4)の伸縮性不織布としては、例えば非弾性繊維を主体とする伸長可能な繊維層どうしの間に糸状の弾性フィラメントが挟まれ、一体化された構成を有するものが挙げられる。斯かる伸縮性不織布は、繊維層としての2枚の繊維シートと、これら両シート間に介在配置された弾性フィラメントとを含んで構成されている。この伸縮性不織布は、例えば、特開2009-61743号公報に記載の方法に従って製造することができる。
【0034】
前記(4)の伸縮性不織布において、2枚の繊維シートは、いずれも伸長可能なものである。この2枚の繊維シートは、弾性フィラメントの延びる方向と同方向に伸長可能になっている。伸長可能な形態とは、(イ)シートの構成繊維自体が伸長する形態と、(ロ)構成繊維自体は伸長しなくても、機械加工等により交点において結合していた繊維どうしが離れたり、繊維どうしの結合等により複数本の繊維で形成された立体構造が構造的に変化したり、構成繊維がちぎれたりして、シート全体として伸長する形態とを包含する。前記(ロ)における機械加工としては、熱処理、ロール間延伸、歯溝やギアによるかみ込み延伸、テンターによる引張延伸などが挙げられる。
【0035】
前記(4)の伸縮性不織布において、弾性フィラメントは、弾性樹脂が溶融又は軟化した状態で延伸されて形成し得る。複数の弾性フィラメントは、それぞれ、一方向に連続して配され、互いに交差せずに該一方向に延びるように配列している。弾性フィラメントは、実質的に非伸長状態で2枚の繊維シートに接合されている。この接合は、2枚の繊維シートの構成繊維(非弾性繊維)が弾性フィラメント中に埋没した状態で該弾性フィラメントに融着することによりなされたものであり、ホットメルト接着剤等の接着剤を用いてなされたものではない。したがって、2枚の繊維シート(非弾性繊維を主体とする伸長可能な繊維層)とこれに接合されている弾性フィラメントとの間には接着剤が存在しない。
【0036】
前記(4)の伸縮性不織布を構成する2枚の繊維シートは、それぞれ、エアスルー不織布、ヒートロール不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布等の各種の不織布とすることができる。2枚の繊維シートは、互いに同種でもよく、異種でもよい。本明細書にいう「同種のシート」とは、シートの製造プロセス、シートの構成繊維の種類、構成繊維の繊維径や長さ、シートの厚みや坪量等がすべて同じであるシートどうしを意味する。これらのうちの少なくとも1つが異なる場合には、「異種のシート」である。また、弾性フィラメントは、例えば熱可塑性エラストマーやゴム等を原料とするものである。特に熱可塑性エラストマーを原料として用いると、通常の熱可塑性樹脂と同様に押出機を用いた溶融紡糸が可能であり、またそのようにして得られた弾性フィラメントは熱融着させやすいので、伸縮性不織布に好適である。
着用者の身体へのフィット性をより向上させる観点から、外層シート31は、前記(4)の伸縮性不織布からなることが好ましい。この場合、外層シート31の弾性フィラメントの延在方向は横方向Yと一致する。
【0037】
外装体3が伸縮性シートを含む場合、該伸縮性シートは、横方向Yに伸長した状態で、外装体3を構成する別のシートと間欠的に接合されていることが好ましい。例えば、伸縮性シートである外層シート31を、横方向Yに伸長させた状態で、接着剤等の公知の接合手段によって内層シート33と間欠的に接合することができる。これによって、外装体3は自然状態(弛緩状態)において図6に示す如き襞構造を有している。本実施形態の外装体3には、外層シート31と内層シート33との接合部91が横方向Yに間欠的に、且つ、縦方向Xに沿って連続的に形成されている。
外装体3が図6に示す如き襞構造を有していることによって、内層シート33と着用者の肌との接触面積が低減され、内層シート33の、着用者の肌への張り付きをより一層抑制できる。
おむつ1の装着圧を適切に制御する観点から、外層シート31は、横方向Yに好ましくは140%以上260%以下、より好ましくは160%以上240%以下、更に好ましくは180%以上220%以下伸長した状態で内層シート33と間欠的に接合される。
【0038】
着用者の蒸れ感を低減する観点から、端部固定シート34A,34B及び前記固定用シート35の少なくとも1つは親水性シートであることが好ましい。また、着用者の蒸れ感の低減効果をより一層高める観点から、端部固定シート34A,34B及び前記固定用シート35のすべてが親水性シートであることがより好ましい。
同様の観点から、折り返しシート部51c,51dは親水性を有することが好ましい。
親水性シートとしては、紙、不織布、布、合成樹脂を発泡して形成された合成スポンジ等が挙げられ、それらの中でも、薄くても引っ張り強度が比較的高く、薄くて柔軟性が付与できる観点から、不織布が好ましく用いられる。不織布としては、親水性の繊維を構成繊維として含む親水性不織布、合成繊維に親水性を付与した繊維を構成繊維として含む親水性不織布等が好ましく用いられる。該不織布の坪量は、13g/m以上22g/m以下であることが好ましく、15g/m以上20g/m以下であることが更に好ましい。
【0039】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に何ら制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上述した実施形態のおむつ1は、前身頃Fのみにレッグ弾性部材37を有していたが、前身頃F及び後身頃Rの双方にレッグ弾性部材37を有していてもよい。
また、上述した実施形態のおむつ1は、下層コア45が砂時計形状を有していたが、該下層コア45の両側縁は横方向Y内方に括れていなくてもよく、該両側縁が縦方向Xに平行であってもよい。
また、吸収性コア40は二層構造であることに限られず、例えば単層構造であってもよい。
【0040】
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下のパンツ型の使い捨ておむつを開示する。
【符号の説明】
【0041】
1 パンツ型の使い捨ておむつ(おむつ)
3 外装体
4 吸収体
5 吸収性本体
31 外層シート
33 内層シート
34 端部固定シート
35 固定用シート
40 吸収性コア
70 固定部
71,72,81,82 自由部
73 第1の自由部対向部
83 第2の自由部対向部
91 接合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6