(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044165
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/30 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
B60N2/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149546
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 光一
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087CA09
3B087CA16
(57)【要約】
【課題】格納時の操作が容易な車両用シートを得る。
【解決手段】車両用シート20は、車両の乗員が着座するシートクッション22と、乗員の背部を支持するシートバック24と、シートバック24の上部を車体に拘束するロック装置36と、シートクッション22の車両後方で車体に取り付けられ、シートバック24の下端部を車両前後方向に移動可能に支持するガイドレール32と、を備えている。シートバック24は、ロック装置36による上部の拘束が解除されることにより、前倒しされつつ下端部をガイドレール32に案内されて車両後方側へ移動され、シートクッション22の車両後方の格納位置に格納される。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員が着座するシートクッションと、
前記乗員の背部を支持するシートバックと、
前記シートバックの上部を車体に拘束するロック装置と、
前記シートクッションの車両後方で車体に取り付けられ、前記シートバックの下端部を車両前後方向に移動可能に支持するガイドレールと、
を備え、
前記シートバックは、前記ロック装置による前記上部の拘束が解除されることにより、前倒しされつつ前記下端部を前記ガイドレールに案内されて車両後方側へ移動され、前記シートクッションの車両後方の格納位置に格納される車両用シート。
【請求項2】
前記シートクッションは、車体に対して移動不能に固定される請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記シートバックの下端部には、前記ガイドレール内で転動するローラが設けられ、
前記ガイドレールの前端部に設けられた陥入部に前記ローラが陥入することで前記ロック装置による前記拘束が可能となり、
前記ローラが前記陥入部から抜け出すことで前記シートバックの前記移動が可能となる請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記シートバックが前倒しされて前記シートクッションと係合することで前記ローラが前記陥入部から抜け出すように構成されている請求項3に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記ガイドレールの前部は、上側レールと下側レールとに上下に分岐しており、
前記ロック装置は、
前記シートバックの下端部が前記上側レールに支持された状態で前記シートバックの上部を車体に拘束する上側ロック部と、
前記シートバックの下端部が前記下側レールに支持された状態で前記シートバックの上部を車体に拘束する下側ロック部と、
を有する請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記シートバックは、左側シートバックと右側シートバックとに分割されており、
前記左側シートバック用の前記ロック装置及び前記ガイドレールと、
前記右側シートバック用の前記ロック装置及び前記ガイドレールと、
を備える請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。
【請求項7】
前記格納位置は、荷室の床部を構成するフロアカバーの車両下方に設定されており、
前記シートバックの車両後方側への移動時に前記フロアカバーが前記シートバックによって一時的に車両上方側へ持ち上げられるように構成されている請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、格納可能な車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示された車両用シートの格納構造では、シートクッションは、リンクによって位置規制されながらガイドレールに沿って車両フロア下の格納凹部へ移動可能されており、シートバックは、格納状態のシートクッションの車両前方へ格納可能とされている。
【0003】
下記特許文献2に開示された車両用シートでは、シートバックがシートクッション上に前倒しされた状態で、シートクッション及びシートバックがリンクによって位置規制されながらガイドレールに沿ってラゲッジフロア下の凹部内へ格納される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-30813号公報
【特許文献2】特開2011-143737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記各先行技術では、シートクッションとシートバックの両方を格納するため、格納時の操作が煩雑である。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、格納時の操作が容易な車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様の車両用シートは、車両の乗員が着座するシートクッションと、前記乗員の背部を支持するシートバックと、前記シートバックの上部を車体に拘束するロック装置と、前記シートクッションの車両後方で車体に取り付けられ、前記シートバックの下端部を車両前後方向に移動可能に支持するガイドレールと、を備え、前記シートバックは、前記ロック装置による前記上部の拘束が解除されることにより、前倒しされつつ前記下端部を前記ガイドレールに案内されて車両後方へ移動され、前記シートクッションの車両後方の格納位置に格納される。
【0008】
第1の態様の車両用シートでは、車両の乗員がシートクッションに着座し、シートバックによって乗員の背部が支持される。シートバックの上部は、ロック装置によって車体に拘束される。シートクッションの車両後方で車体に取り付けられたガイドレールは、シートバックの下端部を車両前後方向に移動可能に支持する。シートバックは、ロック装置による上部の拘束が解除されることにより、前倒しされつつ下端部をガイドレールに案内されて車両後方側へ移動され、シートクッションの車両後方の格納位置に格納される。この車両用シートでは、重たいシートクッションを格納する必要がないため、格納時の操作が容易である。
【0009】
第2の態様の車両用シートは、第1の態様において、前記シートクッションは、車体に対して移動不能に固定される。
【0010】
第2の態様の車両用シートでは、シートクッションが車体に対して移動不能に固定されるため、シートクッションの車体への取付構造が簡素である。
【0011】
第3の態様の車両用シートは、第1の態様又は第2の態様において、前記シートバックの下端部には、前記ガイドレール内で転動するローラが設けられ、前記ガイドレールの前端部に設けられた陥入部に前記ローラが陥入することで前記ロック装置による前記拘束が可能となり、前記ローラが前記陥入部から抜け出すことで前記シートバックの前記移動が可能となる。
【0012】
第3の態様の車両用シートでは、シートバックの下端部に設けられたローラがガイドレール内で転動する。このローラがガイドレールの前端部に設けられた陥入部に陥入することで、ロック装置によるシートバック上部の拘束が可能となる。この拘束状態では、上記の陥入により、シートバック下端部の不用意な変位を防止することができる。シートバックが格納される際には、上記のローラが陥入部から抜け出すことでシートバックの車両後方側への移動が可能となる。
【0013】
第4の態様の車両用シートは、第3の態様において、前記シートバックが前倒しされて前記シートクッションと係合することで前記ローラが前記陥入部から抜け出すように構成されている。
【0014】
第4の態様の車両用シートでは、シートバックは、ロック装置による上部の拘束が解除されて前倒しされると、シートクッションと係合する。これにより、シートバック下端部のローラがガイドレール前端部の陥入部から抜け出し、シートバックが車両後方側へ移動可能となる。このため、ローラを陥入部から抜け出させるための特別な操作が不要である。
【0015】
第5の態様の車両用シートは、第1の態様~第4の態様の何れか1つの態様において、前記ガイドレールの前部は、上側レールと下側レールとに上下に分岐しており、前記ロック装置は、前記シートバックの下端部が前記上側レールに支持された状態で前記シートバックの上部を車体に拘束する上側ロック部と、前記シートバックの下端部が前記下側レールに支持された状態で前記シートバックの上部を車体に拘束する下側ロック部と、を有する。
【0016】
第5の態様の車両用シートでは、ガイドレールの前部が上側レールと下側レールとに上下に分岐している。シートバックの下端部が上側レールに支持された状態では、ロック装置が有する上側ロック部によってシートバックの上部が車体に拘束される。シートバックの下端部が下側レールに支持された状態では、ロック装置が有する下側ロック部によってシートバックの上部が車体に拘束される。これにより、例えば乗員の体格に応じてシートバックの配置高さを変更することができる。
【0017】
第6の態様の車両用シートは、第1の態様~第5の態様の何れか1つの態様において、前記シートバックは、左側シートバックと右側シートバックとに分割されており、前記左側シートバック用の前記ロック装置及び前記ガイドレールと、前記右側シートバック用の前記ロック装置及び前記ガイドレールと、を備えている。
【0018】
第6の態様の車両用シートでは、左側シートバック用のロック装置による左側シートバック上部の拘束を解除すると、左側シートバックが前倒しされつつ左側シートバック用のガイドレールに下端部を案内されて車両後方側へ移動され、格納位置に格納される。右側シートバック用のロック装置による右側シートバック上部の拘束を解除すると、右側シートバックが前倒しされつつ右側シートバック用のガイドレールに下端部を案内されて車両後方側へ移動され、格納位置に格納される。これにより、左側シートバック及び右側シートバックを必要に応じて別々に格納することができる。
【0019】
第7の態様の車両用シートは、第1の態様又は第2の態様において、前記格納位置は、荷室の床部を構成するフロアカバーの車両下方に設定されており、前記シートバックの車両後方側への移動時に前記フロアカバーが前記シートバックによって一時的に車両上方側へ持ち上げられるように構成されている。
【0020】
第7の態様の車両用シートによれば、シートバックの車両後方側への移動時には、フロアカバーがシートバックによって一時的に車両上方側へ持ち上げられる。これにより、フロアカバーの車両下方に設定された格納位置へのシートバックの移動が許容される。この際には、フロアカバーがシートバックによって持ち上げられるので、フロアカバーを持ち上げるための特別な操作が不要である。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明に係る車両用シートでは、格納時の操作が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態に係る車両用シートとその周辺の構成を示す側面図である。
【
図2】第1実施形態に係る車両用シートとその周辺の構成を示す背面図である。
【
図3】第1実施形態に係る車両用シートのシートバックの下端部に設けられたローラとその周辺の構成を示す断面図である。
【
図4】ローラを
図3の矢印F4方向から見た状態で示す側面図である。
【
図5】第1実施形態に係る車両用シートにおけるシートバックの格納途中の状態を示す第1の側面図である。
【
図6】第1実施形態に係る車両用シートにおけるシートバックの格納途中の状態を示す第2の側面図である。
【
図7】第1実施形態に係る車両用シートにおけるシートバックの格納途中の状態を示す第3の側面図である。
【
図8】第1実施形態に係る車両用シートにおけるシートバックの格納状態を示す側面図である。
【
図9】第1実施形態に係る車両用シートにおけるシートバックの格納状態を示す背面図である。
【
図10】第1実施形態に係る車両用シートが備えるガイドレールの上側レールにローラが位置する状態を示す側面図である。
【
図11】第1実施形態に係る車両用シートが備えるガイドレールの下側レールにローラが位置する状態を示す側面図である。
【
図12】上側レールの陥入部からローラが抜け出す際の状況を説明するための
図10に対応した側面図である。
【
図13】第1実施形態に係る車両用シートにおいてシートバックが下側起立位置に位置する状態を示す側面図である。
【
図14】第1実施形態に係る車両用シートにおいてシートバックが下側起立位置に位置する状態を示す背面図である。
【
図15】第2実施形態に係る車両用シートとその周辺の構成を示す側面図である。
【
図16】第2実施形態に係る車両用シートとその周辺の構成を示す背面図である。
【
図17】第2実施形態に係る車両用シートにおけるシートバックの格納状態を示す側面図である。
【
図18】第2実施形態に係る車両用シートにおけるシートバックの格納状態を示す背面図である。
【
図19】第2実施形態に係る車両用シートにおいて左側シートバックが下側起立位置に位置し、右側シートバックが上側起立位置に位置する状態を示す側面図である。
【
図20】第2実施形態に係る車両用シートにおいて左側シートバックが下側起立位置に位置し、右側シートバックが上側起立位置に位置する状態を示す背面図である。
【
図21】第2実施形態に係る車両用シートにおいて左側シートバックが格納位置に位置し、右側シートバックが上側起立位置に位置する状態を示す側面図である。
【
図22】第2実施形態に係る車両用シートにおいて左側シートバックが格納位置に位置し、右側シートバックが上側起立位置に位置する状態を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第1の実施形態
以下、
図1~
図14を参照して本発明の第1実施形態に係る車両用シート20について説明する。なお、各図中においては、図面を見易くする関係から一部の符号を省略している場合がある。また、各図中に適宜記載された矢印FR、LH及びUPは、車両用シート20が搭載された車両10の前方、左方及び上方をそれぞれ示している。車両用シート20の前後左右上下の方向は、車両10の前後左右上下の方向と一致している。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合、車両10に対する方向を示すものとする。
(構成)
【0024】
図1及び
図2に示されるように、第1実施形態に係る車両用シート20は、車両の乗員が着座するシートクッション22と、乗員の背部を支持するシートバック24と、乗員の頭部を支持する3つのヘッドレスト26とを備えている。この車両用シート20は、例えばミニバンタイプの車両の3列目のシートであり、3人掛けのベンチシートである。
【0025】
車両用シート20の後方は、車両10の荷室12とされている。荷室12の床部は、フロアカバー16によって構成されている。フロアカバー16は、例えば樹脂材料によって板状に形成されており、車両10のフロアパネル14の上方に離間して水平に配置されている。フロアパネル14の左右両端部は、車体の左右の側部18に設けられた図示しない支持部によって支持されている。フロアカバー16の前部には、上下方向に回動可能な回動部16Bが設けられている。この回動部16Bは、フロアカバー16の本体部16Aに対して左右方向に延びるインテグラルヒンジ(符号省略)を介して連結されている。フロアカバー16とフロアパネル14との間でシートクッション22の後方の空間は、シートバック24の格納位置(格納スペース)とされている。
【0026】
シートクッション22は、フロアカバー16の前方に配置されており、ボルト締結等の手段で車両10のフロアパネル14に固定されている。このシートクッション22は、車体に対して移動不能とされている。
【0027】
シートクッション22の後方において、フロアカバー16の下側には、左右一対のガイドレール32が設けられている。なお
図2では、左右のガイドレール32を概略的に記載している。左右のガイドレール32は、例えば金属材料によって前後方向を長手とする長尺状に形成されており、溶接等の手段で車体の左右の側部18に固定されている。左右のガイドレール32は、前後方向から見て左右方向の内側が開放された略C字状をなしている。左右のガイドレール32は、シートバック24の下端部を前後方向に移動可能に支持している。左右のガイドレール32の前部は、上側レール32Aと下側レール32Bとに上下に分岐している。
【0028】
シートバック24の下端部には、左右のガイドレール32内で転動する左右一対のローラ30(
図3及び
図4参照)が設けられている。なお、
図1及び
図2では、左右のローラ30を概略的に図示している。左右のローラ30は、シートバック24のフレームの一部を構成するロアパイプ28に取り付けられている。ロアパイプ28は、シートバック24の下端部において左右方向に延在しており、左右両端部がシートバック24の左右両側に露出している。左右のローラ30は、例えば樹脂ベアリングであり、左右方向を軸方向とする支軸部30Aがロアパイプ28の左右両端部にそれぞれ固定されている。各支軸部30Aにはそれぞれ、リング状の外輪部30Bが同軸的かつ回転可能に支持されている。各外輪部30Bは、各ガイドレール32内で転動可能とされている。
【0029】
シートバック24の上部の左右両端部には、ロック装置36を構成する左右一対のロック機構38が設けられている。左右のロック機構38は、左右のガイドレール32の前部の上方で車体の左右の側部18に固定された左右一対のロックピン40と共にロック装置36を構成している。このロック装置36では、
図1及び
図2に示されるようにシートバック24が起立した状態において、左右のロック機構38に設けられた図示しないラッチが左右のロックピン40と係合する。これにより、シートバック24の上部が車体に拘束される。この状態では、フロアカバー16の回動部16Bの上端がシートバック24の背面に当接し、回動部16Bが起立した姿勢となる。
【0030】
左右のロック機構38は、上側ロック部38Aと下側ロック部38Bとを有している。上側ロック部38Aは、シートバック24の下端部に設けられた左右のローラ30が、左右のガイドレール32の上側レール32Aに支持された状態において、左右のロックピン40と係合し、シートバック24の上部を車体に拘束する。この状態では、シートバック24が上側起立位置に配置される。下側ロック部38Bは、シートバック24の下端部に設けられたローラ30が、左右のガイドレール32の下側レール32Bに支持された状態において、左右のロックピン40と係合し、シートバック24の上部を車体に拘束する。シートバック24が下側起立位置に配置される。
【0031】
上側ロック部38A又は下側ロック部38Bによるシートバック24の上部の拘束は、例えばシートバック24の上端部に設けられた図示しない解除レバーが操作されることで解除される。上側ロック部38A又は下側ロック部38Bによる上記の拘束が解除されることで、シートバック24が格納可能となる。
図5~
図8に示されるように、シートバック24の格納時には、シートバック24が前倒しされつつ下端部を左右のガイドレール32に案内されて後方側へ移動され、シートクッション22の後方の格納位置に格納される。この格納の際には、
図7に示されるように、後方側へ移動するシートバック24によって、フロアカバー16が一時的に車両上方側へ持ち上げられるように構成されている。シートバック24の格納状態では、
図8に示されるように、フロアカバー16の本体部16A及び回動部16Bが水平になり、シートバック24がフロアカバー16によって上方から覆われる。
【0032】
また、本実施形態では、左右のガイドレール32が有する上側レール32A及び下側レール32Bの前端部にはそれぞれ、左右のローラ30が陥入可能な陥入部34(
図10~
図12以外では符号省略)が設けられている。
図10に示されるように、左右のローラ30が左右の上側レール32Aの陥入部34に陥入した状態では、左右のローラ30が前後方向に転動不能となり、上側ロック部38Aが左右のロックピン40と係合可能となる。
図11に示されるように、左右のローラ30が左右の下側レール32Bの陥入部34に陥入した状態では、左右のローラ30が前後方向に転動不能となり、下側ロック部38Bが左右のロックピン40と係合可能となる。
【0033】
図12に示されるように、上側起立位置に位置するシートバック24が格納される際には、シートバック24が前倒しされてシートクッション22と係合(当接)することで、左右のローラ30が左右の上側レール32Aの陥入部34から抜け出す。これにより、左右のローラ30が後方側へ転動可能となり、シートバック24の後方移動が可能となる。同様に、図示は省略するが、下側起立位置に位置するシートバック24が格納される際には、シートバック24が前倒しされてシートクッション22と係合(当接)することで、左右のローラ30が左右の下側レール32Bの陥入部34から抜け出す。これにより、左右のローラ30が後方側へ転動可能となり、シートバック24の後方移動が可能となる。
【0034】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0035】
上記構成の車両用シート20では、車両10の乗員がシートクッション22に着座し、シートバック24によって乗員の背部が支持される。シートバック24の上部は、ロック装置36によって車体に拘束される。シートクッション22の後方で車体に取り付けられた左右のガイドレール32は、シートバック24の下端部を前後方向に移動可能に支持する。シートバック24は、ロック装置36による上部の拘束が解除されることにより、前倒しされつつ下端部を左右のガイドレール32に案内されて後方側へ移動され、シートクッション22の後方の格納位置に格納される。この車両用シート20では、重たいシートクッション22を格納する必要がないため、格納時の操作が容易である。また、シートバック24のみが格納されるため、格納スペースを小さく設定することができる。
【0036】
また、本実施形態では、シートクッション22が車体に対して移動不能に固定されるため、シートクッション22の車体への取付構造が簡素である。
【0037】
さらに、本実施形態では、シートバック24の下端部に設けられた左右のローラ30が左右のガイドレール32内で転動する。これらのローラ30が左右のガイドレール32の前端部に設けられた陥入部34に陥入することで、ロック装置36によるシートバック24上部の拘束が可能となる。この拘束状態では、上記の陥入により、シートバック24下端部の不用意な変位を防止することができる。シートバック24が格納される際には、上記のローラ30が陥入部34から抜け出すことでシートバック24の車両後方側への移動が可能となる。
【0038】
具体的には、本実施形態では、シートバック24は、ロック装置36による上部の拘束が解除されて前倒しされると、シートクッション22と係合する。これにより、シートバック24下端部に設けられた左右のローラ30が左右のガイドレール32の陥入部34から抜け出し、シートバック24が後方側へ移動可能となる。このため、ローラ30を陥入部34から抜け出させるための特別な操作が不要である。
【0039】
また、本実施形態では、左右のガイドレール32の前部が上側レール32Aと下側レール32Bとに上下に分岐している。シートバック24の下端部に設けられた左右のローラ30が上側レール32Aに支持された状態では、ロック装置36が有する上側ロック部38Aによってシートバック24の上部が車体に拘束される。シートバック24の下端部に設けられた左右のローラ30が下側レール32Bに支持された状態では、ロック装置36が有する下側ロック部38Bによってシートバック24の上部が車体に拘束される。このように構成されているため、シートバック24を
図1及び
図2に示される上側起立位置だけでなく、
図13及び
図14に示される下側起立位置にも配置させることができる。これにより、例えば車両用シート20に着座する乗員の体格に応じてシートバック24の配置高さを変更することができる。
【0040】
また、本実施形態では、シートバック24の格納時(すなわち後方側への移動時)には、フロアカバー16がシートバック24によって一時的に車両上方側へ持ち上げられる。これにより、フロアカバー16の下方に設定された格納位置へのシートバック24の移動が許容される。この際には、フロアカバー16がシートバック24によって持ち上げられるので、フロアカバー16を持ち上げるための特別な操作が不要である。
【0041】
<第2の実施形態>
次に、
図15~
図22を参照して本発明の第2の実施形態に係る車両用シート50ついて説明する。なお、第1実施形態と基本的に同様の構成及び作用については、第1実施形態と同符号を付与しその説明を省略する。また、
図16、
図20及び
図22では、フロアカバー16の図示を省略している。
【0042】
図15及び
図16に示されるように、本発明の第2実施形態に係る車両用シート50では、シートバック24が左側シートバック24Lと右側シートバック24Rとに分割されている。左側シートバック24Lは、1人掛け用であり、右側シートバック24Rは、2人掛け用である。この車両用シート50は、左側シートバック24L用のロック装置36Lと、左側シートバック24L用の左右一対のガイドレール32Lと、右側シートバック用のロック装置36Rと、右側シートバック24R用の左右一対のガイドレール32Rと、を備えている。
【0043】
左側シートバック24L用のロック装置36Lは、左右のロック機構38のうちの左側のロック機構38と、左右のロックピン40のうちの左側のロックピン40とによって構成されている。右側シートバック24R用のロック装置36Rは、左右のロック機構38のうちの右側のロック機構38と、左右のロックピン40のうちの右側のロックピン40とによって構成されている。
【0044】
左側シートバック24L用の左右のガイドレール32Lは、第1実施形態における左右のガイドレール32と基本的に同様の構成とされており、左側シートバック24Lの左右両側に分かれて配置されている。左右のガイドレール32Lのうち左側のガイドレール32Lは、車体の左側の側部18に固定されており、左右のガイドレール32Lのうち右側のガイドレール32Lは、シートクッション22の後方でフロアパネル14の上面に設けられたレール固定部52に固定されている。このレール固定部52は、フロアカバー16とフロアパネル14との間の空間に配置されている。このレール固定部52に固定された右側のガイドレール32Lは、左側のガイドレール32Lよりも下方側に位置している。
【0045】
左側のシートバック24Lの下端部における左端部には、左側のガイドレール32L内で転動するローラ30が取り付けられている。左側のシートバック24Lの下端部における右端部には、下方側へ延びるブラケット54Lが固定されている。このブラケット54Lの下端部には、右側のガイドレール32L内で転動するローラ30が取り付けられている。
【0046】
右側シートバック24R用の左右のガイドレール32Rは、第1実施形態における左右のガイドレール32と基本的に同様の構成とされており、右側シートバック24Rの左右両側に分かれて配置されている。左右のガイドレール32Rのうち右側のガイドレール32Rは、車体の右側の側部18に固定されており、左右のガイドレール32Rのうち左側のガイドレール32Rは、前述したレール固定部52に固定されている。このレール固定部52に固定された左側のガイドレール32Rは、右側のガイドレール32Rよりも下方側に位置している。
【0047】
右側のシートバック24Rの下端部における右端部には、右側のガイドレール32R内で転動するローラ30が取り付けられている。右側のシートバック24Rの下端部における左端部には、下方側へ延びるブラケット54Rが固定されている。このブラケット54Rの下端部には、左側のガイドレール32R内で転動するローラ30が取り付けられている。この実施形態では、上記以外の構成は第1実施形態と同様とされている。
【0048】
この実施形態では、左右のシートバック24L、24Rは、ロック装置36L、36Rによる上部の拘束が解除されることにより、前倒しされつつ下端部を左右のガイドレール32L、32Rに案内されて後方側へ移動され、シートクッション22の後方の格納位置に格納される(
図17及び
図18参照)。この車両用シート50においても、重たいシートクッション22を格納する必要がないため、格納時の操作が容易である。また、左右のシートバック24L、24Rのみが格納されるため、格納スペースを小さく設定することができる。
【0049】
しかも、この実施形態では、
図19及び
図20に示されるように、左側のシートバック24Lを下側起立位置に配置させる一方、右側のシートバック24Rを上側起立位置に配置させることができる。また図示は省略するが、左側のシートバック24Lを上側起立位置に配置させる一方、右側のシートバック24Rを下側起立位置に配置させることもできる。
【0050】
さらに、この実施形態では、
図21及び
図20に示されるように、左右のシートバック24L、24Rのうち左側のシートバック24Lのみを格納することができる。また図示は省略するが、左右のシートバック24L、24Rのうち右側のシートバック24Rのみを格納することもできる。以上のことから、この実施形態では、第1実施形態よりも多様なシートアレンジが可能である。
【0051】
なお、上記実施形態では、シートバック24の後方移動時にフロアカバー16がシートバック24によって一時的に上方側へ持ち上げられる構成にしたが、これに限らず、フロアカバー16が持ち上げられた状態でシートバック24が後方移動される構成にしてもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、ガイドレール32の前部が上側レール32Aと下側レール32Bとに上下に分岐した構成にしたが、これに限らず、ガイドレール32の前部が分岐していない構成にしてもよい。その場合、上側ロック部38Aと及び下側ロック部38Bのうちの一方が不要になる。
【0053】
ガイドレール32の前端部に陥入部34が設けられた構成にしたが、これに限らず、陥入部34が省略された構成にしてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、シートクッション22が車体に対して移動不能に固定された構成にしたが、これに限らず、シートクッション22が車体に対して移動可能とされた構成にしてもよい。
【0055】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記各実施形態に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0056】
10 車両
12 荷室
16 フロアカバー
20 車両用シート
22 シートクッション
24 シートバック
24L 左側シートバック
24R 右側シートバック
30 ローラ
32 ガイドレール
32A 上側レール
32B 下側レール
32L 左側シートバック用のガイドレール
32R 右側シートバック用のガイドレール
34 陥入部
36 ロック装置
36L 左側シートバック用のロック装置
36R 右側シートバック用のロック装置
38A 上側ロック部
38B 下側ロック部
50 車両用シート