(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004417
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】消火装置及び消火用ホース収容部材
(51)【国際特許分類】
A62C 13/78 20060101AFI20240109BHJP
A62C 35/02 20060101ALI20240109BHJP
A62C 35/20 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
A62C13/78 A
A62C35/02 A
A62C35/20
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104093
(22)【出願日】2022-06-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】391008320
【氏名又は名称】株式会社初田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100125450
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 広明
(72)【発明者】
【氏名】小門 健一
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189EB01
2E189EB04
(57)【要約】
【課題】省スペース化を実現し、消火用ホースの設置の容易さと配置の自由度を高めたいわゆるパッケージ型の消火装置及び消火用ホース収容部材、並びに、消火装置の設置時又は点検時等において作業者の作業性を格段に向上させた、該消火装置及び消火用ホース収容部材を提供する。
【解決手段】
本発明の1つの消火装置100は、開閉可能な扉部を有する第1筐体内に、次の(1)、(2)及び(3)を備える、消火装置である。
(1)少なくとも1つの消火剤貯蔵容器
(2)該消火剤貯蔵容器に直接的又は間接的に接続可能であって、該消火剤貯蔵容器から消火剤を送給され、該消火剤を噴射するための消火用ホース
(3)該第1筐体内に対して着脱可能であって、該消火用ホースが巻き取られたときに該消火用ホースを収容可能な第2筐体
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能な扉部を有する第1筐体内に、次の(1)、(2)及び(3)を備える、消火装置。
(1)少なくとも1つの消火剤貯蔵容器
(2)前記消火剤貯蔵容器と直接的又は間接的に接続可能であって、前記消火剤貯蔵容器から消火剤を送給され、前記消火剤を噴射するための消火用ホース
(3)前記第1筐体に対して着脱可能であって、前記消火用ホースが巻き取られたときに前記消火用ホースを収容可能な第2筐体
【請求項2】
前記消火用ホースと直接的又は間接的に接続可能な前記消火剤貯蔵容器の接続部からの距離が0mm超500mm以下である前記第2筐体の一面が、第1貫通孔を備え、且つ
前記第1貫通孔を利用して、前記消火剤貯蔵容器の状態の点検作業、該消火剤貯蔵容器内の前記消火剤の点検作業、及び/又は、該消火用ホースと該消火剤貯蔵容器との直接的又は間接的な接続作業が可能な、
請求項1に記載の消火装置。
【請求項3】
前記第1貫通孔が、さらに、前記消火剤貯蔵容器から前記消火用ホースに向けて前記消火剤を送給する送給ラインを挿通可能な、
請求項2に記載の消火装置。
【請求項4】
前記消火用ホースと直接的又は間接的に接続可能な前記消火剤貯蔵容器の接続部からの距離が0mm超500mm以下である前記第2筐体の一面が、前記消火剤貯蔵容器から前記消火用ホースに向けて前記消火剤を送給する送給ラインを挿通可能な第2貫通孔を備える、
請求項1に記載の消火装置。
【請求項5】
前記第2筐体の外周を構成する互いに隣接する平面のなす角が、120°以上である、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の消火装置。
【請求項6】
消火剤貯蔵容器と、該消火剤貯蔵容器と直接的又は間接的に接続可能な消火用ホースとを収容するとともに開閉可能な扉部を有する第1筐体に対して着脱可能であって、
前記消火用ホースが巻き取られたときに前記消火用ホースを収容可能な、第2筐体を備える、
消火用ホース収容部材。
【請求項7】
前記消火用ホースと直接的又は間接的に接続可能な前記消火剤貯蔵容器の接続部からの距離が0mm超500mm以下である前記第2筐体の一面が、前記接続部に対応する第1貫通孔を備え、且つ
前記第1貫通孔を利用して、前記消火剤貯蔵容器の状態の点検作業、該消火剤貯蔵容器内の前記消火剤の点検作業、及び/又は、該消火用ホースと該消火剤貯蔵容器との直接的又は間接的な接続作業が可能な、
請求項6に記載の消火用ホース収容部材。
【請求項8】
前記第1貫通孔が、さらに、前記消火剤貯蔵容器から前記消火用ホースに向けて前記消火剤を送給する送給ラインを挿通可能な、
請求項7に記載の消火用ホース収容部材。
【請求項9】
前記消火用ホースと直接的又は間接的に接続可能な前記消火剤貯蔵容器の接続部からの距離が0mm超500mm以下である前記第2筐体の一面が、前記消火剤貯蔵容器から前記消火用ホースに向けて消火剤を送給する送給ラインを挿通可能な第2貫通孔を備える、
請求項6に記載の消火用ホース収容部材。
【請求項10】
前記第2筐体の外周を構成する互いに隣接する平面のなす角が、120°以上である、
請求項6乃至請求項9のいずれか1項に記載の消火用ホース収容部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火装置及び消火用ホース収容部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、屋内消火栓の代替設備として、いわゆるパッケージ型の消火装置又は消火設備が採用されている。一般的な該消火装置又は該消火設備には、1つ又は複数の消火剤貯蔵容器と、加圧用ガス容器、起動部、ホース、及びノズル等が、格納箱内に収められている。そして、屋内において火災が起こった際には、消火作業を行う者が、その格納箱内からホースを取り出して、消火剤貯蔵容器内の消火剤を放出させることにより消火を行う。
【0003】
これまでに、上述のような消火装置又は消火設備に関する技術が多く開示されている。例えば、格納箱の上部にホースが巻き付けられた該消火装置又は該消火設備が開示されている(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06-319827号公報
【特許文献2】実開平07-003667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1又は2に示すように、従来のパッケージ型の消火装置又は消火設備(以下、本願においては総称して「消火装置」という。)においては、ホースを格納箱(筐体)の上部に配置する場合に、ホースのためのリールが採用されており、リール機構を別途設ける必要があるため、利便性の向上よりも製造コストの上昇及び/又は不具合の発生の問題が大きくなる。
【0006】
また、ホースを格納箱(筐体)の上部に配置することにより、上述の消火装置の接地部分の面積を小さくする利点があるが、長いホースを巻き付けるための十分な高さを要するため、該消火装置の高さを確保しておくことが求められる。その結果、例えば、天井の低い部屋の中に該消火装置を配置しようとする際に問題となり得る。
【0007】
一方、ホースを格納箱(筐体)の上部に配置することは、1つ又は複数の消火剤貯蔵容器の上部にホースが位置することになる。そのため、該消火剤貯蔵容器自身、又は該消火剤貯蔵容器と該ホースとの接続部を点検等する際に、該消火剤貯蔵容器と該ホースとの間の距離を、作業者によって点検等が可能な程度に十分に離しておく必要が生じることになる。その結果、この作業性の確保を実現するために、上述と同様、該消火装置の背丈が高くなるという問題が生じ得る。また、ホースは、一般的には強い弾性を有しており、巻き取られた状態では一定の場所に固定しづらいため、格納箱(筐体)内に安定して収めることは容易ではない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の各技術課題の少なくとも一部を解決することにより、省スペース化を実現し、消火用ホースの設置の容易さと配置の自由度を高めたいわゆるパッケージ型の消火装置及び消火用ホース収容部材の実現、並びに、消火装置の設置時又は点検時等において作業者の作業性を格段に向上させた、該消火装置及び消火用ホース収容部材の実現に大きく貢献し得る。
【0009】
本発明者は、消火用ホース(以下、単に「ホース」ともいう。)に加えて加圧用ガス容器を、1つ又は複数の消火剤貯蔵容器の上部に配置させることによって、該消火装置の接地部分の面積を小さくするとともに、背丈を比較的低く抑えることができる消火装置の実現に向けて鋭意検討を重ねた。
【0010】
本発明者が試行錯誤を重ねた結果、ホース及び加圧用ガス容器を、該消火装置内に収容可能であるとともに、該消火装置に対して着脱可能な収容部材内に該ホースを巻き取られた状態で収めることによって、該消火装置に対する設置の容易さを実現し得るとともに、該消火装置における配置の自由度が高まることを見出した。従って、該ホースと該消火剤貯蔵容器とが接続していない状態においては、該収容部材は、その設置のみならず交換も可能な、いわば独立した商取引の対象となり得るという利便性も発揮し得る。なお、該収容部材内にホースを収めることによって、該ホースが仮に強い弾性を有していたとしても、巻き取られた状態で該収容部材内に固定され易くなるという副次的な効果も奏され得る。
【0011】
さらに本発明者は、創意工夫を重ねる中で、該収容部材を構成する筐体が1つ又は複数の貫通孔を備える構造を創出した。その結果、仮に該消火剤貯蔵容器と該収容部材との距離を近づけたとしても、点検等の作業性を損なわないようにすることが可能となることを本発明者は知得した。本発明は、上述の各視点及び着想に基づいて創出された。
【0012】
本発明の1つの消火装置は、開閉可能な扉部を有する第1筐体内に、次の(1)、(2)及び(3)を備える、消火装置である。
(1)少なくとも1つの消火剤貯蔵容器
(2)該消火剤貯蔵容器と直接的又は間接的に接続可能であって、該消火剤貯蔵容器から消火剤を送給され、該消火剤を噴射するための消火用ホース
(3)該第1筐体内に対して着脱可能であって、該消火用ホースが巻き取られたときに該消火用ホースを収容可能な第2筐体
【0013】
この消火装置によれば、上述の第1筐体に対して着脱可能な第2筐体が、消火用ホースが巻き取られたときに該消火用ホースを収容可能であるため、該消火装置に対する該第2筐体の設置の容易さを実現し得るとともに、該消火装置における該第2筐体の配置の自由度を高めることが可能となる。
【0014】
なお、上述の消火装置において、上述の消火用ホースと直接的又は間接的に接続可能な上述の消火剤貯蔵容器の接続部からの距離が0mm超500mm以下である上述の第2筐体の一面が、第1貫通孔を備え、且つ該第1貫通孔を利用して、該消火剤貯蔵容器の状態の点検作業、該消火剤貯蔵容器内の該消火剤の点検作業、及び/又は、該消火用ホースと該消火剤貯蔵容器との直接的又は間接的な接続作業が可能であることは好適な一態様である。前述の構成をさらに備えることにより、仮に該消火剤貯蔵容器と該第2筐体との距離を近づけたとしても、該第1貫通孔を利用することにより、作業者による点検等の作業性を損なわないようにすることが可能となる。
【0015】
また、本発明の1つの消火用ホース収容部材は、消火剤貯蔵容器と該消火剤貯蔵容器と直接的又は間接的に接続可能な消火用ホースとを収容するとともに開閉可能な扉部を有する第1筐体内において着脱可能であって、前述の消火用ホースが巻き取られたときに該消火用ホースを収容可能な、第2筐体を備える。
【0016】
この消火用ホース収容部材によれば、上述の第1筐体に対して着脱可能な第2筐体が、消火用ホースが巻き取られたときに該消火用ホースを収容可能であるため、該第1筐体に対する該第2筐体の設置の容易さを実現し得るとともに、該第1筐体における該第2筐体の配置の自由度を高めることが可能となる。
【0017】
なお、上述の消火用ホース収容部材において、上述の消火用ホースと直接的又は間接的に接続可能な上述の消火剤貯蔵容器の接続部からの距離が0mm超500mm以下である上述の第2筐体の一面が、第1貫通孔を備え、且つ該第1貫通孔を利用して、該消火剤貯蔵容器の状態の点検作業、該消火剤貯蔵容器内の該消火剤の点検作業、及び/又は、該消火用ホースと該消火剤貯蔵容器との直接的又は間接的な接続作業が可能であることは好適な一態様である。前述の構成をさらに備えることにより、仮に該消火剤貯蔵容器と該第2筐体との距離を近づけたとしても、該第1貫通孔を利用することにより、作業者による点検等の作業性を損なわないようにすることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の1つの消火装置によれば、消火装置の第1筐体に対して着脱可能な第2筐体が、消火用ホースが巻き取られたときに該消火用ホースを収容可能であるため、該消火装置に対する該第2筐体の設置の容易さを実現し得るとともに、該消火装置における該第2筐体の配置の自由度を高めることが可能となる。
【0019】
また、本発明の1つの消火用ホース収容部材によれば、開閉可能な扉部を有する第1筐体に対して着脱可能な第2筐体が、消火用ホースが巻き取られたときに該消火用ホースを収容可能であるため、該第1筐体に対する該第2筐体の設置の容易さを実現し得るとともに、該第1筐体における該第2筐体の配置の自由度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1の実施形態における消火装置100を示す正面図である。
【
図2】第1の実施形態における消火用ホース収容部材(第2筐体)10を示す斜視図である。
【
図3】第1の実施形態における消火装置100から消火用ホース収容部材(第2筐体)10が取り外された状態を示す斜視図である。
【
図4】第1の実施形態における消火装置100の斜視図である。
【
図5】第2の実施形態の消火用ホース収容部材(第2筐体)210の、(a)正面図、及び(b)背面図である。
【
図6】第2の実施形態の消火用ホース収容部材(第2筐体)210の、(a)右側面図、及び(b)左側面図である。
【
図7】第2の実施形態の消火用ホース収容部材(第2筐体)210の、(a)平面図、及び(b)底面図である。
【
図8】第2の実施形態の消火用ホース収容部材(第2筐体)210の斜視図である。
【
図9】第2の実施形態の消火用ホースを収容した状態の消火用ホース収容部材(第2筐体)210の、(a)正面図、及び(b)背面図である。
【
図10】第2の実施形態の消火用ホースを収容した状態の消火用ホース収容部材(第2筐体)210の、(a)右側面図、及び(b)左側面図である。
【
図11】第2の実施形態の消火用ホースを収容した状態の消火用ホース収容部材(第2筐体)210の、(a)平面図、及び(b)底面図である。
【
図12】その他の実施形態の第2筐体310の斜視図である。
【
図13】その他の実施形態の第2筐体410の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態を、添付する図面に基づいて詳細に述べる。尚、この説明に際し、全図にわたり、特に言及がない限り、共通する部分には共通する参照符号が付されている。また、図中、本実施形態の要素は必ずしもスケール通りに示されていない。また、各図面を見やすくするために、一部の符号及び形状が省略され得る。
【0022】
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態における消火装置100を示す正面図である。また、
図2は、本実施形態における消火用ホース収容部材(第2筐体)10を示す斜視図である。また、
図3は、本実施形態における消火装置100から消火用ホース収容部材(第2筐体)10が取り外された状態を示す斜視図である。また、
図4は、本実施形態における消火装置100の斜視図である。
【0023】
図1及び
図2に示すように、本実施形態の消火装置100は、取っ手92a,92bを利用して開閉可能な扉部90a,90bを有する第1筐体90内に、少なくとも次の(1)~(3)に示す構成を備えている。
(1)消火剤貯蔵容器80
(2)消火剤貯蔵容器80に接続可能であって、消火剤貯蔵容器80から消火剤を送給され、該消火剤を噴射するための消火用ホース50
(3)第1筐体90内に対して着脱可能であって、消火用ホース50が巻き取られたときに該消火用ホースを収容可能な第2筐体(消火用ホース収容部材)10
【0024】
消火剤貯蔵容器80の容器口金キャップ81は、加圧ガス用ライン(「加圧ガス用チューブ」とも呼ばれる)51a,51b,51cに接続する第2接続部81bと、送給ライン(「送給用チューブ」とも呼ばれる)52a,52b,52cに接続する第1接続部81aとを備えている。より詳細には、支持台12上に設けられ、加圧ガスが充填された加圧用ガス容器(「起動用ガス容器」とも呼ばれる)40から加圧ガスを送給するための、樹脂製の加圧ガス用ライン51a,51b,51cが、容器口金キャップ81の第2接続部81bに接続される。また、消火剤を消火剤貯蔵容器80から消火用ホース50に送給するための、樹脂製の送給ライン52a,52b,52cは、容器口金キャップ81の第1接続部81aに接続される。なお、消火用ホース50の材質は本実施形態の効果が奏され得る限り限定されないが、代表的な材質は、ゴム又は樹脂である。
【0025】
従って、本実施形態においては、加圧ガス用ライン51a,51b,51cを介して、加圧用ガス容器40と消火剤貯蔵容器80とが間接的に接続されている。同様に、送給ライン52a,52b,52cを介して、消火用ホース50と消火剤貯蔵容器80とが間接的に接続されている。なお、送給ライン52a,52b,52cを介さずに、消火用ホース50と消火剤貯蔵容器80とが直接的に接続されることも採用され得る。
【0026】
本実施形態においては、消火作業が行われる際には、まず、作業者が加圧用ガス容器40のバルブ47を開くことにより、加圧用ガス容器40から耐圧性の高い継手42及び加圧ガス用ライン51a,51b,51cを介して加圧ガスが消火剤貯蔵容器80に送給される。そうすると、その加圧ガスによって消火剤貯蔵容器80の開状態の容器口金キャップ81及び送給ライン52a,52b,52cを介して消火剤が消火用ホース50に送給され、消火対象に向けて消火剤が放出される。消火作業者は、消火用ホース50をホース架11から取り外して、消火用ホース50の先端を消火対象に向けて消火剤を放出させる。なお、消火用ホース50該先端においてノズル及び、該ノズルを開閉するためのノズル弁が設けられることも採用し得る一態様である。
【0027】
なお、例えば、消火装置100を使用していないときに消火剤を消火用ホース50側に到達させないように、第1筐体10内の温度変化によって生じ得る、加圧用ガス容器40側の、加圧用ガスの流路内の圧力調整を行うための第1調整弁43と、消火用ホース50側の、消火剤の流路内の圧力調整を行うための第2調整弁55と、を備え得る。なお、点検用バルブ44及び圧力計46を用いて、加圧用ガス容器40における圧力状態の確認及び点検作業を行うことができる。
【0028】
ここで、本実施形態においては、
図3及び
図4に示すように、消火用ホース50を巻き取った状態で収容し得る第2筐体(消火用ホース収容部材)10は、消火装置100における第1筐体90に対して着脱可能である。また、本実施形態の第2筐体10は、支持台12を利用することにより加圧用ガス容器40を収容することもできる。
【0029】
本実施形態の第2筐体10を採用することにより、消火装置100に対して着脱可能であることから、第2筐体10内に収容する予定の構成(例えば、ホース及び加圧用ガス容器40の設置又は圧力調整など)の準備を整えた後に、消火装置100の第1筐体90内に配置することができるため、消火装置100に対する設置の容易さを実現し得るとともに、消火装置100内における配置又は設置場所の自由度が格段に高まることになる。従って、該ホースと該消火剤貯蔵容器とが接続していない状態においては、該収容部材は、その設置のみならず交換も可能な、いわば独立した商取引の対象となり得るという利便性も発揮し得る。なお、第2筐体10内に消火用ホース50を収めることによって、消火用ホース50が仮に強い弾性を有していたとしても、巻き取られた状態で第2筐体10内に固定され易くなるという副次的な効果も奏され得る。
【0030】
また、本実施形態においては、第2筐体10は、その筐体の少なくとも一面において第1貫通孔14を備えている。
図1及び
図2に示す例においては、第2筐体10のうち、消火剤貯蔵容器80に近接した面が第1貫通孔14を備えるとともに、第2筐体10におけるそれ以外の面も、第1貫通孔14を備えている。消火剤貯蔵容器80に近接した面が備える第1貫通孔14は、例えば、消火装置100及び/又は加圧用ガス容器40の点検時に重要な役割を果たし得る。また、第1貫通孔14の数は限定されない。第1貫通孔14の数は、消火剤貯蔵容器80の数、加圧ガス用ライン51a,51b,51cの数及び/又は送給ライン52a,52b,52cの数によって適宜変更され得る。なお、本実施形態の第2筐体10は、第1貫通孔14に加えて、電気配線用貫通孔17を備えているが、電気配線用貫通孔17の役割を第1貫通孔14が担うことも採用され得る他の一態様である。
【0031】
具体的には、第1貫通孔14が、消火剤貯蔵容器80の状態の点検作業、あるいは消火剤貯蔵容器80内の消火剤の点検作業が可能であること、及び/又は、消火用ホース50と消火剤貯蔵容器80との直接的又は間接的な接続作業が可能な程度の大きさであることにより、第2筐体10と消火剤貯蔵容器80との距離を近づけることが可能となる。具体的には、該距離を0mm超500mm以下(より狭義には、下限値については10mm以上、より狭義には50mm以上、上限値については、400mm以下、より狭義には300mm以下)にまで接近させることが可能となる。見方を変えれば、仮に消火剤貯蔵容器80と第2筐体10との距離を近づけたとしても、作業者にとって、点検等の作業性を損なわないようにすることが可能となる。従って、前述の構成を採用することは、第1筐体10の背丈を低くすることを実現する観点、換言すれば省スペース化の観点から好適な一態様である。
【0032】
また、本実施形態においては、作業者が立った状態で簡便に消火用ホース50の収容及び取り出しを行うようにすることができるとともに、第2筐体10自身を第1筐体90に対して着脱する作業を容易にするために、第2筐体10が消火剤貯蔵容器80よりも上方に配置されている。
【0033】
なお、
図1に示す例においては、第2筐体10と消火剤貯蔵容器80との距離(より正確には、第1接続部81aの先端の第2筐体10との距離)は、略0mmである状態、換言すれば、消火剤貯蔵容器80の上端が第2筐体10の底面に接しかけている状態である。なお、上述のとおり、各種の作業性を確保する観点から言えば、10mm以上の距離が離れていることが好ましい。
【0034】
一方、消火剤貯蔵容器80に近接した面とは異なる面が備える第1貫通孔14は、第2筐体10が消火装置100から取り外されている際の作業性(例えば、消火用ホース50の位置の調整など)の向上に役立つとともに、第2筐体10が例えばSUS又は鋼鉄等の金属製であった場合に、その重量を軽量化する観点からも大変有益である。
【0035】
また、第1貫通孔14が、さらに、消火剤貯蔵容器80から消火用ホース50に向けて消火剤を送給する送給ラインを挿通可能な程度に開口していることは、採用し得る好適な一態様である。
【0036】
なお、本実施形態においては、消火装置100内に3つの消火剤貯蔵容器80が収容されているが、本実施形態の消火装置100が備える消火剤貯蔵容器80の数は限定されない。例えば、設置面積の狭い場所、又は消火すべき対象が限られている等の事情に応じて、消火剤貯蔵容器80の数は適宜選定され得る。また、消火剤の種類は特に限定されない。公知の各種の消火剤が消火剤貯蔵容器80内に収容され得る。さらに、上述の各構成の材質は、本実施形態の効果を損なわない限り限定されない。
【0037】
また、本実施形態においては、
図1に示すように、第2筐体(消火用ホース収容部材)10は、その正面側が開口し、その背面側は背面板20を備えた筐体(第2筐体)であるが、背面板20を有しない消火用ホース収容部材10を導入することも採用し得る変形例の1つである。この変形例においては、例えば、加圧用ガス容器40の支持台12が、消火用ホース収容部材10の底面に溶接又は螺合等によって一体化されるとともに、消火用ホース収容部材10の持ち手19及びホース架11が溶接又は螺合等によって背面版20の代わりに天面(上面)から吊り下げられた状態で一体化される態様も採用され得る。
【0038】
また、本実施形態の第2筐体(消火用ホース収容部材)10は、
図1及び
図2に示すように正面視において長方形ではなく、例えば、天面(上面)と右側面、又は底面と左側面等の交線を削り取ったような形状を形成する、いわゆる面取りが施されていることによって傾斜面10aを備えている。より具体的には、本実施形態の第2筐体10の外周を構成する互いに隣接する平面のなす角が、120°以上となるように構成されている。例えば、正面視において、天面(上面)の傾斜面10aとの成す角が120°以上となる。
【0039】
ここで、
図1に示すような扉部90a,90bの開閉のための蝶番等を用いて形成される回転軸が第1筐体90の内側になるように構成されている場合、上述の傾斜面10aを形成することにより、第2筐体10を第1筐体90内に収める際に、その蝶番等が邪魔をして第1筐体90内に収容し難くならないようすることができる。
【0040】
従って、扉部90a,90bの前述の回転軸(蝶番等)の位置を変えることによって、第2筐体10を第1筐体90内に収める際にその蝶番等が邪魔にならない場合は、正面視において長方形(矩形)の第2筐体(消火用ホース収容部材)10を採用し得る。
【0041】
なお、傾斜面10aの一部に平面が形成されている限り、仮に傾斜面10aと天面(上面)等との交差部分が曲面を有していたとしても、天面(上面)の延長線上と傾斜面10aの延長線上との成す角が120°以上となっても、本実施形態の前述の効果が奏され得る。また、必ずしも
図1に示すような傾斜面10aが形成されるような面取りが施されることを要しない。例えば、平面を有する傾斜面10aの代わりに、一様な曲面が形成されるような、換言すれば、正面視において一様な又は不規則な曲率半径を有する弧状が形成される、いわゆる丸面取りが施されることも採用し得る他の一態様である。
【0042】
<第2の実施形態>
本実施形態においては、第1の実施形態の第2筐体10、すなわち消火用ホース収容部材10が、主として、第1貫通孔14に加えて第2貫通孔16を備える点、第1の実施形態のホース架11に代えてホース架15が設けられている点、及びその他の貫通孔を疎なる点を除いて、第1の実施形態の消火装置100及び消火用ホース収容部材10と同じである。従って、第1の実施形態と重複する説明は省略され得る。
【0043】
図5は、本実施形態の消火用ホース収容部材(第2筐体)210の、(a)正面図、及び(b)背面図である。また、
図6は、本実施形態の消火用ホース収容部材(第2筐体)210の、(a)右側面図、及び(b)左側面図である。また、
図7は、第2の実施形態の消火用ホース収容部材(第2筐体)210の、(a)平面図、及び(b)底面図である。また、
図8は、本実施形態の消火用ホース収容部材(第2筐体)210の斜視図である。また、
図9は、本実施形態の消火用ホース50を収容した状態の消火用ホース収容部材(第2筐体)210の、(a)正面図、及び(b)背面図である。また、
図10は、本実施形態の消火用ホース50を収容した状態の消火用ホース収容部材(第2筐体)210の、(a)右側面図、及び(b)左側面図である。また、
図11は、本実施形態の消火用ホース50を収容した状態の消火用ホース収容部材(第2筐体)210の、(a)平面図、及び(b)底面図である。なお、
図9乃至
図11に対応する斜視図は、
図2と同一である。
【0044】
本実施形態においては、第1貫通孔14が消火装置100(代表的には、消火剤貯蔵容器80)及び/又は加圧用ガス容器40の点検作業等に利用される役割を担い、第2貫通孔16が、加圧ガス用ライン51a,51b,51c及び/又は送給ライン52a,52b,52cを挿通させる役割を担っている。従って、第1貫通孔14と第2貫通孔16にそれぞれ異なる役割を担わせることにより、特に、点検作業等を行う際に、加圧ガス用ライン51a,51b,51c及び/又は送給ライン52a,52b,52cが点検作業等を確度高く邪魔しなくなるという効果が奏され得る。
【0045】
なお、第1貫通孔14及び第2貫通孔16の数は限定されない。加えて、第1貫通孔14及び第2貫通孔16の数を一致させる必要もない。第1貫通孔14及び第2貫通孔16の数は、消火剤貯蔵容器80の数、加圧ガス用ライン51a,51b,51cの数及び/又は送給ライン52a,52b,52cの数によって適宜変更され得る。また、
図5及び
図9に示すように、本実施形態の消火用ホース収容部材(第2筐体)210は、第1筐体90内に設置する際に利用する、第2筐体固定用貫通孔18を備えている。
【0046】
上述のとおり、本実施形態の第2筐体10、すなわち消火用ホース収容部材10によれば、特に、消火用ホース50と接続可能な消火剤貯蔵容器80の接続部と、第2筐体10のうち最も消火剤貯蔵容器80に近接する一面との距離が0mm超500mm以下(より狭義には、下限値については10mm以上、より狭義には50mm以上、上限値については、400mm以下、より狭義には300mm以下)という、作業者にとって作業しづらい状態である場合は、第2貫通孔16を設けることが点検作業等の容易化に貢献し得る。
【0047】
<その他の実施形態1>
上述の各実施形態においては、第2筐体(消火用ホース収容部材)10,210が、筐体の各面において第1貫通孔14を備えているが、第2筐体(消火用ホース収容部材)10,210が備える第1貫通孔14の位置は上述の各実施形態に限定されない。
【0048】
図12は、本実施形態の第2筐体310の斜視図である。
図12に示すように、本実施形態の第2筐体310は、第1貫通孔14を第2筐体10の一面のみに備えている。
【0049】
本実施形態の第2筐体310を採用した場合であっても、上述の第1の実施形態又は第2の実施形態の効果の少なくとも一部が奏され得る。但し、設置作業の容易化、及び/又は軽量化の観点から言えば、第2筐体310の複数の面が第1貫通孔14を備えることはより好適な一態様である。
【0050】
<その他の実施形態2>
また、上述の各実施形態においては、第1貫通孔14が円状の貫通孔であったが、第1貫通孔14の形状は円形に限定されない。
図13は、本実施形態の第2筐体410の斜視図である。
図13に示すように、第1貫通孔414の形状が矩形(例えば、正方形)であっても、上述の各実施形態の効果が奏され得る。
【0051】
以上述べたとおり、上述の各実施形態の開示は、それらの実施形態の説明のために記載したものであって、本発明を限定するために記載したものではない。加えて、各実施形態の他の組合せを含む本発明の範囲内に存在する変形例もまた、特許請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、消火装置又は消火用ホース収容部材として広く利用され得る。
【符号の説明】
【0053】
10,210,310,410 第2筐体(消火用ホース収容部材)
10a 傾斜面
11,15 ホース架
12 支持台
14,414 第1貫通孔
16 第2貫通孔
17 電気配線用貫通孔
18 第2筐体固定用貫通孔
19 第2筐体設置用持ち手
20 背面板
40 加圧用ガス容器
42 継手
43 第1調整弁
44 点検用バルブ
46 圧力計
47 バルブ
50 消火用ホース
51a,51b,51c 加圧ガス用ライン
52a,52b,52c 送給ライン
55 第2調整弁
80 消火剤貯蔵容器
81 容器口金キャップ
81a 第1接続部
81b 第2接続部
90 第1筐体
90a,90b 扉部
92a,92b 取っ手
100 消火装置
【手続補正書】
【提出日】2022-08-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能な扉部を有する第1筐体内に、次の(1)、(2)及び(3)を備え、
(1)少なくとも1つの消火剤貯蔵容器
(2)前記消火剤貯蔵容器と直接的又は間接的に接続可能であって、前記消火剤貯蔵容器から消火剤を送給され、前記消火剤を噴射するための消火用ホース
(3)前記第1筐体に対して着脱可能であって、前記消火用ホースが巻き取られたときに前記消火用ホースを収容可能な第2筐体
前記消火用ホースと直接的又は間接的に接続可能な前記消火剤貯蔵容器の接続部からの距離が0mm超500mm以下である前記第2筐体の一面が、第1貫通孔を備え、且つ
前記第1貫通孔を利用して、前記消火剤貯蔵容器の状態の点検作業、該消火剤貯蔵容器内の前記消火剤の点検作業、及び/又は、該消火用ホースと該消火剤貯蔵容器との直接的又は間接的な接続作業が可能な、
消火装置。
【請求項2】
前記第1貫通孔が、さらに、前記消火剤貯蔵容器から前記消火用ホースに向けて前記消火剤を送給する送給ラインを挿通可能な、
請求項1に記載の消火装置。
【請求項3】
前記消火用ホースと直接的又は間接的に接続可能な前記消火剤貯蔵容器の接続部からの距離が0mm超500mm以下である前記第2筐体の一面が、前記消火剤貯蔵容器から前記消火用ホースに向けて前記消火剤を送給する送給ラインを挿通可能な第2貫通孔を備える、
請求項1に記載の消火装置。
【請求項4】
前記第2筐体の外周を構成する互いに隣接する平面のなす角が、120°以上である、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の消火装置。
【請求項5】
消火剤貯蔵容器と、該消火剤貯蔵容器と直接的又は間接的に接続可能な消火用ホースとを収容するとともに開閉可能な扉部を有する第1筐体に対して着脱可能であって、
前記消火用ホースが巻き取られたときに前記消火用ホースを収容可能な、第2筐体を備え、
前記消火用ホースと直接的又は間接的に接続可能な前記消火剤貯蔵容器の接続部からの距離が0mm超500mm以下である前記第2筐体の一面が、前記接続部に対応する第1貫通孔を備え、且つ
前記第1貫通孔を利用して、前記消火剤貯蔵容器の状態の点検作業、該消火剤貯蔵容器内の前記消火剤の点検作業、及び/又は、該消火用ホースと該消火剤貯蔵容器との直接的又は間接的な接続作業が可能な、
消火用ホース収容部材。
【請求項6】
前記第1貫通孔が、さらに、前記消火剤貯蔵容器から前記消火用ホースに向けて前記消火剤を送給する送給ラインを挿通可能な、
請求項5に記載の消火用ホース収容部材。
【請求項7】
前記消火用ホースと直接的又は間接的に接続可能な前記消火剤貯蔵容器の接続部からの距離が0mm超500mm以下である前記第2筐体の一面が、前記消火剤貯蔵容器から前記消火用ホースに向けて消火剤を送給する送給ラインを挿通可能な第2貫通孔を備える、
請求項5に記載の消火用ホース収容部材。
【請求項8】
前記第2筐体の外周を構成する互いに隣接する平面のなす角が、120°以上である、
請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載の消火用ホース収容部材。