(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044170
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】仮想発電システム、蓄電池の蓄電容量増量サービス制御装置
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20240326BHJP
H02J 3/14 20060101ALI20240326BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240326BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240326BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20240326BHJP
G06Q 50/06 20240101ALI20240326BHJP
【FI】
H02J13/00 311R
H02J3/14
H02J3/32
H02J3/38 110
H02J3/00 180
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149552
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 治良
(72)【発明者】
【氏名】木村 駿介
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 宏樹
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
5L049
【Fターム(参考)】
5G064AC05
5G064AC08
5G064CB21
5G066HB06
5G066HB09
5G066JB03
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】顧客が家庭用発電システムにおける蓄電池の蓄電容量の増加による不利益を被ることなく、かつ、蓄電池の蓄電容量の増加分をVPPに参加するときの1件あたりの調整力の増加に割り当てる。
【解決手段】調整主体14側(リソースアグリゲータ22及び、それよりも上流側)で家庭用発電システム16に設置されている蓄電池28の蓄電量の増量サービス制御を構築した。蓄電容量増量サービス制御では、蓄電池28の蓄電量の仮想発電システム10への活用を多くすることができ、かつ、調整主体14側は、調整力の増加で収益が多くなり、調整力規模を拡大することができる。リソース24側(顧客)は発電システム16の蓄電池28の蓄電容量の増加分を家庭で利用することができる。仮想発電システム10は、蓄電容量増量サービス制御を構築することで、調整主体14とリソース24側とで、双方に有益な関係とすることができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電装置及び前記発電装置で発電された電力を蓄電する蓄電池を備え個別に電力を消費する複数の電力拠出装置に対して、電力市場から、電力を拠出する時間帯及び要求される電力量が設定された調整力指令を受けて、契約電力量の拠出の要求を行う仮想発電システムであって、
前記契約電力量の増加を目的として、前記電力拠出装置側で、増量分の費用を負担することなく、かつ利用可能な前記蓄電池の蓄電容量の増量サービスを案内する案内部を有する、
仮想発電システム。
【請求項2】
前記電力拠出装置側で消費される電力使用量情報を取得する取得部と、
前記取得部で取得した前記電力使用量情報から前記蓄電池の使用状況を予測して、前記案内部で案内する前記増量サービスによる増量分を算出する算出部と、
をさらに有する請求項1記載の仮想発電システム。
【請求項3】
前記電力拠出装置側で消費される電力使用量情報を取得する取得部と、
前記取得部で取得した前記電力使用量情報から前記蓄電池の使用状況を予測して、前記案内部での案内の要否を判定する判定部と、
をさらに有する請求項1記載の仮想発電システム。
【請求項4】
電力市場から、電力を拠出する時間帯及び要求される電力量が設定された調整力指令を受けて、発電装置及び前記発電装置で発電された電力を蓄電する蓄電池を備え、個別に電力を消費する複数の電力拠出装置に対して、契約電力量の拠出の要求を制御する調整力指令側制御部と、
前記複数の電力拠出装置の各々に設けられ、前記調整力指令側制御部からの前記電力の拠出の要求に基づいて、電力の拠出を制御する電力拠出側制御部と、
が通信ネットワークを介して接続された仮想発電システムにおいて、前記蓄電池の蓄電容量の増量サービスを実行する蓄電池の蓄電容量増量サービス制御装置であって、
前記調整力指令側制御部が、
前記電力拠出装置の各々で消費される電力使用量情報を取得し、
取得した電力使用量情報から前記蓄電池の使用状況を予測し、
前記蓄電池の使用状況の予測結果に基づいて、前記契約電力量の増加を目的として、前記電力拠出装置側で、増量分の費用を負担することなく利用可能な前記蓄電池の蓄電容量の増量サービスを案内し、
前記電力拠出側制御部が、
前記契約電力量の拠出の要求がないときの、前記蓄電容量の増量サービスによる増量分の利用価値を導出し、
導出した前記利用価値に基づいて、前記蓄電容量の増量サービスを承認するか否かを判定する、
蓄電池の蓄電容量増量サービス制御装置。
【請求項5】
前記調整力指令側制御部が、
前記電力拠出側制御部から取得した前記電力使用量情報から前記蓄電池の使用状況を予測し、
予測結果に基づいて、案内する前記増量サービスによる増量分を算出する、
請求項4記載の蓄電池の蓄電容量増量サービス制御装置。
【請求項6】
前記調整力指令側制御部が、
前記電力拠出側制御部から取得した前記電力使用量情報から前記蓄電池の使用状況を予測し、
予測結果に基づいて、前記蓄電池の蓄電容量の増量サービスの案内の要否を判定する、
請求項4記載の蓄電池の蓄電容量増量サービス制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調整力指令を受けて、発電装置及び蓄電池からの電力の拠出を制御する仮想発電システム、及び、仮想発電システムで実行される蓄電池の蓄電容量増量サービス制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅で使用される電気等のエネルギーを制御するものとして住宅用機器制御装置又は住宅用機器制御システム(HEMS「Home Energy Management System」)が従来技術として知られている。また、近年、住宅やビル等に設置される小規模発電設備の普及に伴い、これら複数の小規模発電設備を制御してあたかも一つの発電所のように扱う仮想発電所(VPP「Virtual Power Plant」)の技術が知られている。
【0003】
小規模発電設備、例えば、家庭用発電システムは、太陽光発電部と、発電した電力を蓄積する蓄電池と、を備えている。
【0004】
VPPの調整主体(例えば、リソースアグリゲータ)は、家庭用発電システムに対して、調整力を指令することで、複数の家庭用発電システムからの電力を集約して、1つの発電所であるかのようにまとめて機能させることができる。
【0005】
ところで、VPPから調整力指令があった時に、発電装置は停止している可能性があり、応答性に課題がある。一方、蓄電池は蓄電容量に制限はあるが、VPPの調整力指令時の応答性に瞬発力があり、有用である。
【0006】
VPP側から蓄電池の蓄電量を制御する技術として、特許文献1には、HEMSおよびVPPを導入している場合に、蓄電池の制御をどちらにとっても意図通りに実現することを目的として、HEMSコントローラは、VPPゲートウェイからVPP制御開始指示を既に受信している場合において、気象警報の発令を取得したときに、VPPゲートウェイに対し状態通知を送信することでVPP制御を停止させ、気象警報の発令に基づいて蓄電池を充電することが記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、電力供給システムの需給管理システムにおいて、バーチャル蓄電池運用システムは、仮想充放電算出部と、料金算出部と、を備え、仮想充放電算出部は、電力使用実績情報と、仮想的な蓄電池の容量情報と、当該仮想的な蓄電池のSOC情報と、単位時間毎の電力のスポット価格情報と、に基づいて、複数の需要家の各々の、仮想的な蓄電池における、仮想的な充放電計画を算出し、料金算出部は、複数の需要家の各々において、仮想充放電算出部で算出された仮想的な充放電計画に従って蓄電池の充放電制御が行われ且つ電力を売買した場合における、電力の使用料金を算出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2021-023083号公報
【特許文献2】特開2021-128711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、例えば、家庭用発電システムを導入するに際し、異なる蓄電容量の蓄電池が選択可能な場合、蓄電池の蓄電容量は、家庭における需要に依存して選択されることになる。言い換えれば、家庭に設置される蓄電池の蓄電容量は、家庭での需要において必要な蓄電容量であり、VPPに参加することを前提とした蓄電池の蓄電容量の選択ではない。
【0010】
このため、家庭用発電システムにおける蓄電池の蓄電容量(1件あたりの調整力「ΔkW」)は、産業用機器や電源に比べて顕著に小さくなり、VPPへの参加に対する対価(還元額)が限定的になり易い。
【0011】
顧客側が、VPPへの参加を念頭に置いて、必要以上の蓄電池の蓄電容量とすることが好ましいが、蓄電池の蓄電容量の増加のための投資のわりには、顧客への見返りの対価が少なく、顧客に蓄電池の蓄電容量の増加を期待するのは難しい。
【0012】
特許文献1では、蓄電池の充電を、VPP側で制御可能であることが記載されているが、蓄電池の蓄電容量については言及されていない。
【0013】
また、特許文献2では、仮想充放電算出部で算出された仮想的な充放電計画に従って蓄電池の充放電制御が行われ且つ電力を売買した場合における、電力の使用料金を算出するものであるが、蓄電池の蓄電容量については言及されていない。
【0014】
本発明は、顧客が家庭用発電システムにおける蓄電池の蓄電容量の増加による不利益を被ることなく、かつ、蓄電池の蓄電容量の増加分をVPPに参加するときの1件あたりの調整力の増加に割り当てることができる仮想発電システム、蓄電池の蓄電容量増量サービス制御装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の発明に係る仮想発電システムは、発電装置及び前記発電装置で発電された電力を蓄電する蓄電池を備え個別に電力を消費する複数の電力拠出装置に対して、電力市場から、電力を拠出する時間帯及び要求される電力量が設定された調整力指令を受けて、契約電力量の拠出の要求を行う仮想発電システムであって、前記契約電力量の増加を目的として、前記電力拠出装置側で、増量分の費用を負担することなく、かつ利用可能な前記蓄電池の蓄電容量の増量サービスを案内する案内部を有している。
【0016】
第1の発明によれば、案内部では、契約電力量の増加を目的として、電力拠出装置側で、増量分の費用を負担することなく、かつ利用可能な前記蓄電池の蓄電容量の増量サービスを案内する。
【0017】
この案内を受諾し、電力拠出装置側が蓄電容量の増量サービスが実施されると、顧客が家庭用発電システムにおける蓄電池の蓄電容量の増加による不利益を被ることなく、かつ、蓄電池の蓄電容量の増加分をVPPに参加するときの1件あたりの調整力の増加に割り当てることができる。
【0018】
第1の発明に係る仮想発電システムにおいて、前記電力拠出装置側で消費される電力使用量情報を取得する取得部と、前記取得部で取得した前記電力使用量情報から前記蓄電池の使用状況を予測して、前記案内部で案内する前記増量サービスによる増量分を算出する算出部と、をさらに有することを特徴としている。
【0019】
第1の発明に係る仮想発電システムにおいて、前記電力拠出装置側で消費される電力使用量情報を取得する取得部と、前記取得部で取得した前記電力使用量情報から前記蓄電池の使用状況を予測して、前記案内部での案内の要否を判定する判定部と、をさらに有することを特徴としている。
【0020】
第2の発明に係る蓄電池の蓄電容量増量サービス制御装置は、電力市場から、電力を拠出する時間帯及び要求される電力量が設定された調整力指令を受けて、発電装置及び前記発電装置で発電された電力を蓄電する蓄電池を備え、個別に電力を消費する複数の電力拠出装置に対して、契約電力量の拠出の要求を制御する調整力指令側制御部と、前記複数の電力拠出装置の各々に設けられ、前記調整力指令側制御部からの前記電力の拠出の要求に基づいて、電力の拠出を制御する電力拠出側制御部と、が通信ネットワークを介して接続された仮想発電システムにおいて、前記蓄電池の蓄電容量の増量サービスを実行する蓄電池の蓄電容量増量サービス制御装置であって、前記調整力指令側制御部が、前記電力拠出装置の各々で消費される電力使用量情報を取得し、取得した電力使用量情報から前記蓄電池の使用状況を予測し、前記蓄電池の使用状況の予測結果に基づいて、前記契約電力量の増加を目的として、前記電力拠出装置側で、増量分の費用を負担することなく利用可能な前記蓄電池の蓄電容量の増量サービスを案内し、前記電力拠出側制御部が、前記契約電力量の拠出の要求がないときの、前記蓄電容量の増量サービスによる増量分の利用価値を導出し、導出した前記利用価値に基づいて、前記蓄電容量の増量サービスを承認するか否かを判定する、ことを特徴としている。
【0021】
第2の発明によれば、調整力指令側制御部では、電力拠出装置の各々で消費される電力使用量情報を取得し、取得した電力使用量情報から蓄電池の使用状況を予測し、蓄電池の使用状況の予測結果に基づいて、契約電力量の増加を目的として、電力拠出装置側で、増量分の費用を負担することなく利用可能な前記蓄電池の蓄電容量の増量サービスを案内する。
【0022】
電力拠出側制御部では、契約電力量の拠出の要求がないときの、蓄電容量の増量サービスによる増量分の利用価値を導出し、導出した前記利用価値に基づいて、前記蓄電容量の増量サービスを承認するか否かを判定する。
【0023】
電力拠出装置側が、調整力指令側制御部側からの案内を受諾し蓄電容量の増量サービスが実施されると、顧客が家庭用発電システムにおける蓄電池の蓄電容量の増加による不利益を被ることなく、かつ、蓄電池の蓄電容量の増加分をVPPに参加するときの1件あたりの調整力の増加に割り当てることができる。
【0024】
第2の発明に係る蓄電池の蓄電容量増量サービス制御装置において、前記調整力指令側制御部が、前記電力拠出側制御部から取得した前記電力使用量情報から前記蓄電池の使用状況を予測し、予測結果に基づいて、案内する前記増量サービスによる増量分を算出する、ことを特徴としている。
【0025】
第2の発明に係る蓄電池の蓄電容量増量サービス制御装置において、前記調整力指令側制御部が、前記電力拠出側制御部から取得した前記電力使用量情報から前記蓄電池の使用状況を予測し、予測結果に基づいて、前記蓄電池の蓄電容量の増量サービスの案内の要否を判定する、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0026】
以上説明した如く本発明では、顧客が家庭用発電システムにおける蓄電池の蓄電容量の増加による不利益を被ることなく、かつ、蓄電池の蓄電容量の増加分をVPPに参加するときの1件あたりの調整力の増加に割り当てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本実施の形態に係る仮想発電システムの全体構成図である。
【
図2】本実施の形態に係る仮想発電システムの命令系統の処理の流れを示すブロック図である。
【
図3】本実施の形態に係る調整力指令側(例えば、リソースアグリゲータ)による、増量サービス要否判定実行ルーチンを示す制御フローチャートである。
【
図4】本実施の形態に係るリソース側(電力拠出制御装置)における、増量サービス通知時実行ルーチンを示す制御フローチャートである。
【
図5】リソース側と、調整主体側とにおける、蓄電池の増設検討過程と、増設後の双方のメリットを図式化した説明図である。
【
図6】本実施の形態の仮想発電システムにおける実施例1及び実施例2を実現するために用いられる特性図であり、(A)はVPP無しの場合の蓄電池容量-価値特性図、(B)はVPP有りの場合の蓄電池容量-価値特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[仮想発電システム]
【0029】
図1は、本実施の形態に係る仮想発電システム10(VPP/バーチャル・パワー・プラント)の概略図が示されている。
【0030】
仮想発電システム10は、大概的には、さまざまな再生可能エネルギーや蓄電池、自家発電装置などの電源を束ね、その地域にまるで大きな1つの発電所があるかのように電力を安定的に供給できる仕組みを言う。
【0031】
本実施の形態に係る仮想発電システム10は、仮想的(バーチャル)に、例えば、同一エリア内の電力供給源(後述する、発電システム16)をコントロールするシステムであり、従来の、所謂大規模発電所にとって代わる電力インフラとして機能させる。
【0032】
仮想発電システム10は、仮想発電所を活用し得る電力市場(一般送配電事業者が需給バランスを整える需給調整市場等)12と、電力市場12から調整力指令(詳細後述)を受ける複数の調整主体14と、複数の調整主体の各々からの調整力指令に基づいて、発電システム16からの電力の拠出を制御する複数の電力拠出制御装置18とによって構成される。
【0033】
なお、電力市場12は、一般送配電事業者に限定されるものではなく、例えば、発電部門や小売部門に特化した事業者が独自に調整力を調達する場合を含む。
【0034】
調整力指令とは、当該調整力指令を受けてから電力の拠出までの応動時間、及び要求される電力量(要求電力量)を継続して拠出する継続時間帯が設定された電力拠出を要求する指令情報である。電力市場12は、調整主体14へ、調整力指令を出力する。
【0035】
ここで、電力市場12の内、需給調整市場が発信する調整力指令には、電力を拠出するまでの応動時間、及び予め定められた要求電力量を継続して拠出する継続時間帯の違いにより、以下の表1に示す5種類の調整力が存在する。
【0036】
【0037】
本実施の形態に係る仮想発電システム10の電力市場12では、表1における、「三次調整力[1]([1]の丸付き数字の代替表示)を目的とする調整力とした調整力指令を送出し、電力拠出制御装置18の制御により、各家庭に設置された発電システム16から電力を拠出するようにしている。
【0038】
なお、目的とする調整力は、「三次調整力[1]([1]の丸付き数字の代替表示)に限らず、一次調整力及び二次調整力を目的としてもよい。
【0039】
図1に示される如く、調整主体14は階層化されており、本実施の形態では、上層側としての複数のアグリゲーションコーディネータ20と、下層側としての複数のリソースアグリゲータ22とで構成され、2階層構造となっている。
【0040】
なお、階層数は2階層に限定されるものではなく、3以上の階層であってもよい。また、1階層でアグリゲーションコーディネータ20が直接複数のリソース24を制御してもよい。リソース24とは、1つのリソースアグリゲータ22が管理する、複数の発電システム16及び電力拠出制御装置18の集合体である。
【0041】
上層側のアグリゲーションコーディネータ20は、電力市場12から要求される調整力指令を、下層側のリソースアグリゲータ22に分担する役目を有する。
【0042】
リソースアグリゲータ22は、アグリゲーションコーディネータ20から、自身が担当する調整力指令(例えば、応動時間及び継続時間帯が同一で、要求電力量が異なる指令)を受ける。
【0043】
複数のリソースアグリゲータ22の各々に接続されたリソース24の各々は、電力拠出制御装置18を備えている。
【0044】
電力拠出制御装置18は、発電システム16から出力され、リソースアグリゲータ22へ拠出する電力の拠出を管理する。
【0045】
発電システム16は、図示しない商用電源による電力と、太陽光発電部26の発電による電力と、蓄電池28に蓄積された電力とを併用し、各家庭の電力供給源となるコージェネレーションシステムである。
【0046】
太陽光発電部26による発電、及び蓄電池28の充放電は、商用電源からの電力を含め、システム制御部29によって一括管理され、家庭で消費される電力に見合う電力を供給している。
【0047】
電力拠出制御装置18は、システム制御部29による家庭内の電力供給制御に加え、リソースアグリゲータ22からの調整力指令に基づき、発電システム16の太陽光発電部26で発電した電力、及び蓄電池28の蓄積された電力を、リソースアグリゲータ22へ拠出する電力(拠出電力)として利用するように制御する。
【0048】
図2は、
図1で説明した電力市場12、調整主体14(アグリゲーションコーディネータ20及びリソースアグリゲータ22)、及び電力拠出制御装置18(発電システム16からの電力拠出制御主体)を連携して、電力市場12への電力拠出のための調整力指令制御、及び電力拠出時の拠出電力監視制御のための機能ブロック図である。
【0049】
なお、
図2の機能ブロック図の各ブロックは、各部のハード構成を限定するものではなく、機能別に分類したものであり、一部又は全部を調整力指令制御プログラム及び拠出電力監視制御プログラムに基づき動作するソフトウェアで構築してもよい。
【0050】
また、複数のアグリゲーションコーディネータ20、複数のリソースアグリゲータ22、複数のリソース24は、それぞれ同一構成であるので、その内の1つの構成の説明を説明し、その他については構成の説明を省略する。
【0051】
(アグリゲーションコーディネータ20)
【0052】
アグリゲーションコーディネータ20は、電力市場12から調整力指令を受ける調整力受信部30を備えている。本実施の形態で受け取る調整力指令は、表1に示す三次調整力[1]([1]の丸付き数字の代替表示)である。
【0053】
調整力受信部30は、受信した調整力を、調整力配分部32に送出する。調整力配分部32では、管轄する複数のリソースアグリゲータ22の電力拠出能力(事前に情報把握)に応じて、調整力(要求する発電量)を配分する。
【0054】
調整力配分部32は、送信部34に接続されており、管轄する複数のリソースアグリゲータ22に、配分した要求電力量の調整力(配分調整力)を送信する。
【0055】
配分調整力は、基本的には、応動時間及び継続時間帯が同一で、全体として要求する電力量の一部を要求するものである。
【0056】
なお、複数のリソースアグリゲータ22へ送信する配分調整力を、時系列で応動時間及び継続時間帯を異ならせ、総合的に、アグリゲーションコーディネータ20が電力市場12から受けた三次調整力[1]([1]の丸付き数字の代替表示)を満たすようにしてもよい。
【0057】
また、アグリゲーションコーディネータ20は、複数のリソースアグリゲータ22から、図示しない電力供給ラインにより集めた電力に関する情報(電力情報)を監視する上層電力情報監視部35を備えている。
【0058】
上層電力情報監視部35では、各リソースアグリゲータ22からの電力情報に基づき、調整力を監視すると共に、それぞれの電力情報を集約して電力市場12へ拠出する。電力市場12では、三次調整力[1]([1]の丸付き数字の代替表示)で設定された電力を、電力需要家へ提供する。
【0059】
(リソースアグリゲータ22)
【0060】
リソースアグリゲータ22は、配分調整力受信部36を備えており、前述したアグリゲーションコーディネータ20の送信部34から、配分調整力を受信する。
【0061】
配分調整力受信部36は、選択部38に接続され、受信した配分調整力を送出する。
【0062】
選択部38では、リソースアグリゲータ22が担当するリソース24に属する電力拠出制御装置18を選択する。電力拠出制御装置18は、それぞれが担当する発電システム16の能力(事前に情報把握)を監視している。
【0063】
選択部38は、配分調整力送信部40を介して、選択部38で選択した電力拠出制御装置18のそれぞれに対して、要求電力量の調整力(個別調整力)を送信する。
【0064】
また、リソースアグリゲータ22は、複数のリソース24から、図示しない電力供給ラインにより集めた電力に関する情報(電力情報)を監視する下層電力情報監視部42を備えている。
【0065】
下層電力情報監視部42では、リソース24の各電力拠出制御装置18から受けた電力情報に基づき、調整力を監視すると共に、それぞれの電力情報を集約してアグリゲーションコーディネータ20へ拠出する。
【0066】
(リソース24)
【0067】
リソース24は、1つのリソースアグリゲータ22が管理する電力拠出制御装置18の集合体である。
【0068】
電力拠出制御装置18は、それぞれ発電システム16による電力拠出を制御する。
【0069】
発電システム16は、システム制御部29、太陽光発電部26、及び蓄電池28を備えている。システム制御部29は、発電システム16が設置された家屋(家庭等)で消費する電力を制御するものであり、図示しない商用電源からの電力と、例えば、都市ガスを原料とする太陽光発電部26による発電と、主として太陽光発電部26で発電した余剰電力を充電すると共に必要に応じて放電する蓄電池28の充放電とを総合的に制御し、家屋内で消費する電力を確保する。
【0070】
一方、電力拠出制御装置18は、家屋内で消費する電力とは別に、リソースアグリゲータ22から要求された調整力(個別調整力)に基づいて、発電システム16から電力を拠出する制御を行う。
【0071】
(仮想発電システム10の通常稼働制御の流れ)
【0072】
電力拠出制御装置18は、調整力指令に基づき前記発電装置を起動させて、要求電力量を拠出する。このとき、太陽光発電部26の発電と、蓄電池28からの放電とが併用される。
【0073】
電力市場12から調整力指令情報を受信すると、調整力の種類を特定し、各々のリソースアグリゲータに配分調整力を指令する。
【0074】
アグリゲーションコーディネータ20から、配分調整力指令を受信すると、担当するリソース24から応動する電力拠出制御装置18の選択を行い、選択した電力拠出制御装置18へ、個別調整力を指令し、監視する。
【0075】
リソースアグリゲータ22から、個別調整力指令を受信すると、発電システム16のシステム制御部29による制御の一部又は全部を、電力拠出制御装置18へ移行する。
【0076】
太陽光発電部26は、発電中ではない場合は起動し、発電中の場合は、蓄電池28に蓄電されている電力量を確認し、太陽光発電部26の発電による電力量を確認し、発電による電力量に応じて、蓄電池28による電力を補填する。すなわち、発電では不足する電力量を、蓄電池28の放電により補填する。
【0077】
所定調整時間(継続時間帯に相当)が経過すると(例えば、継続時間帯は、三次調整力[1]([1]の丸付き数字の代替表示)の場合は、3時間である)、発電システム16の制御を通常制御(システム制御部29による制御)に移行し、電力拠出制御は終了する。
【0078】
[蓄電容量増量サービス制御]
【0079】
本実施の形態における、[仮想発電システム]の項では、仮想発電システム10の制御系の構成、及び、調整力指令に基づく通常稼働制御について説明した。
【0080】
ところで、発電システム16を利用した仮想発電システム10において、比較的効果な蓄電池28は、顧客が消費するのに必要十分な蓄電容量としており、その分、仮想発電システム10の契約電力量(1件あたりの調整力)に制限がある。
【0081】
そこで、本実施の形態では、調整主体14側(リソースアグリゲータ22及び、それよりも上流側)で発電システム16に設置されている蓄電池28の蓄電量の増量サービス制御を構築した。
【0082】
蓄電池28の蓄電容量の増量分は、調整力の契約電力量としての対価は受けられないが、調整力に基づく契約電力量の拠出の要求がないときは、顧客側で、蓄電池28に蓄電されている電力で自由に利用可能とすることで、増量サービス制御は、調整主体14及び顧客側の双方で有利となる制御体系となっている
【0083】
増量サービス制御は、仮想発電システム10で構築されているネットワークを利用して、調整主体14側(例えば、リソースアグリゲータ22)と、顧客側(例えば、電力拠出制御装置18)とが通信することで実現可能である。
【0084】
すなわち、調整主体14側が、各発電システム16に設置されている現在の蓄電池28の蓄電容量を取得して蓄電容量の増量サービスを案内する。一方、電力拠出制御装置18が、蓄電容量の増加の利用価値と、VPPへの貢献価値とに基づいて、増量サービスの承認を判定し、増量サービスの利用を要求する。
【0085】
以下に、蓄電容量増量サービス制御の作用を、
図3及び
図4のフローチャートに従い説明する。
【0086】
図3は、調整力指令側(例えば、リソースアグリゲータ22)による、増量サービス要否判定実行ルーチンを示す制御フローチャートである。なお、この増量サービス要否判定実行ルーチンは、リソースアグリゲータ22に限定されるものではなく、リソースアグリゲータ22よりも上層の調整主体14(例えば、アグリゲーションコーディネータ20等)で実行してもよい。
【0087】
ステップ100では、増量サービス対象とするリソース24側の発電システム16を特定し、次いで、ステップ102へ移行して、特定の発電システム16から、電力使用情報を取得して、ステップ104へ移行する。
【0088】
ステップ104では、電力使用情報から、特定の発電システム16の蓄電池28の使用状況を予測し、次いで、ステップ106へ移行して、増量サービスが必要か否か(要否)を判定し、ステップ108へ移行する。
【0089】
ステップ108では、ステップ106での要否判定において、増量サービスが必要と判定されたか否かを判断する。
【0090】
ステップ108で肯定判定(増量サービスが必要)された場合は、ステップ110へ移行して、蓄電池28の蓄電容量の増加量分を算出し、次いで、ステップ112へ移行して、特定の発電システム16へ、蓄電池28の蓄電容量の増量サービスを案内し、ステップ114へ移行する。また、ステップ108で否定判定(増量サービスが不要)された場合は、ステップ114へ移行する。
【0091】
ステップ114では、増量サービス要否判定処理を継続するか否かを判断し、肯定判定された場合は、ステップ100へ戻り、上記工程を繰り返す。また、ステップ114で否定判定された場合は、このルーチンは終了する。
【0092】
図4は、リソース24側(電力拠出制御装置18)における、増量サービス通知時実行ルーチンを示す制御フローチャートである。
【0093】
ステップ120では、調整力指令に基づく契約電力量の拠出がないときの、増量サービスによる増量分の利用価値を算出する。この利用価値の算出は、単純に、増量サービスの増量分の利用率であってもよいし、時系列に利用の変化を算出し、増量サービスがあるときと、ないときの発電量や商用電力の使用量との差分を求め、予め定めた計算式に基づいて、利用価値を百分率で求めるようにしてもよい。
【0094】
次のステップ122では、ステップ120で求めた利用価値をしきい値と比較し、ステップ124へ移行する。しきい値は、リソース24側の、個々の発電システム16で定めればよい。
【0095】
ステップ124では、利用価値が有るか否か(しきい値以上で利用価値有り)を判断し、肯定判定されると、ステップ126へ移行して、蓄電池28の蓄電容量の増量サービスを承諾する通知を出力し、このルーチンは終了する。また、ステップ124で否定判定された場合は、蓄電池28の蓄電容量の増量サービスを受けないので、このルーチンは終了する。
【0096】
図5は、リソース24(発電システム16)側と、調整主体14(リソースアグリゲータ22)側とにおける、蓄電池28の増設検討過程(
図3及び
図4のフローチャートに準ずる。)と、増設後の双方のメリットを図式化した説明図である。
【0097】
図5に示されるように、調整主体14側で増量サービスを案内(例えば、NkWhの増量を案内)すると、リソース24側では、利用価値の検討を行い、利用価値があると判断すると、増量サービスの承諾通知を送出することで、調整主体14では、増量工事の発注を行う。
【0098】
増設工事完了後は、リソース24側の発電システム16の蓄電池28は、NkWh分の増量となり、調整指令時の増量分の利益は無いが、調整力指令がないときは、増量分を自由に利用することができるというメリットがある。
【0099】
一方、調整主体14側では、調整指令時に、NkWh分を増量することができ、仮想発電システム10としての利用の拡大につながる。
【0100】
すなわち、仮想発電システム10は、蓄電容量増量サービス制御を構築することで、調整主体14とリソース24側とで、双方に有益な関係とすることができる。
【0101】
なお、本実施の形態では、発電装置として、太陽光発電部26を適用したが、燃料電池、風力発電等、VPPに拠出可能な発電装置であれば、太陽光発電部26に限定されるものではない。
【実施例0102】
以下に、本実施の形態で説明した処理を適用した実施例1及び実施例2について説明する。
【0103】
[実施例1]
図6に基づき、実施例1について説明する。まず、
図6(A)及び
図6(B)の特性図について説明する。
【0104】
図6は、特定の発電システム16(需要家)における蓄電池容量と、需要家の損益の関係を示す特性図である。横軸は蓄電池容量であり、3kWh~15kWhまで、1kWh毎に区分している。縦軸は、需要家の損益であり、「0」が損益が無い場合であり、プラス側が発電による価値(詳細は、以下で説明)であり、マイナス側が需要家の負担分である。
【0105】
図6(A)は、VPP無しの場合の蓄電池容量-価値特性図である。発電による価値の種類としては、棒グラフの下から順番に、(1)PV自家消費価値、(2)TOU(Time Of Use)価値、及び、(3)レジリエンス価値に分類される。
【0106】
また、
図6(B)は、VPP有りの場合の蓄電池容量-価値特性図である。上記(1)~(3)の価値に対して、(4)VPP価値の特性が追加される。
【0107】
また、
図6(B)に示される如く、VPP有りの場合は、増量サービス時の事業者負担(需要家側価値としては、プラスとなる。)分が加味されることになる。
【0108】
(1)PV自家消費価値
PV自家消費価値は、[(売電単価/充放電効率-買電単価)×蓄電池放電量]で得ることができる。
【0109】
自家消費単価の算出に、例えば、スマートメータの購入電力情報を利用することができる。また、充放電量の予測に、例えば、スマートメータの売電電力データを利用することができる。
【0110】
余剰電力量や電力需要量に応じて需要家毎に価値が異なる。また、
図6(A)の特性図で見られるように、余剰電力は有限なので蓄電容量を増やすにつれて価値が飽和することになる。
(2)TOU価値
TOU価値は、時間帯料金等を適用し、夜間や晴天日の日中など電力市場が安い時間帯に充電を行い、高い時間帯に放電を行ったときの価値である。その差益が光熱費削減になる。
【0111】
また、
図6(A)の特性図で見られるように、電力需要パターンに応じて必要な充電量が決まるため、需要家ごとに価値が異なるとともに、蓄電容量を増やすと価値が飽和することになる。
【0112】
(3)レジリエンス価値
レジリエンス価値は、停電対策として蓄電池を保有する価値である。
【0113】
例えば、需要家に対するお客さまアンケートや個別のヒアリングによって、価値を金額に換算する。
【0114】
図6(A)の特性図で見られるように、停電中の電力需要によって価値が決まるため、蓄電容量に対して比例的に価値が増え、一定量を超えると飽和することになる。
(4)VPP価値
VPP価値は、蓄電池をVPPに利用することで生じる価値である。
【0115】
蓄電池容量が小さいと、利用できる調整力が小さく、価値も限定的になる。一方、容量が大きすぎてもパワーコンディショナーの出力上限等で、使える調整力が伸びにくく、また、VPP活用時に単価の高い逆潮流が増えるため、単純な比例にはならない。
【0116】
ここで、実施例1では、以下のような手順で、蓄電増量サービスが実行される。
【0117】
(手順1) 例えば、スマートメータの情報から、需要家情報として、購入電力、及び売電電力データを取得する(
図3のフローチャートのステップ102の処理に相当)。
【0118】
(手順2) 蓄電池容量別の経済メリットの計算を実施し、経済性最良値(VPP無)を抽出する。すなわち、
図6(A)の●点位置(蓄電池容量=6kWh)が抽出される。
【0119】
(手順3) 増量サービス適用時のVPP価値及び事業者負担を追加し、経済性最良値(PP有)を抽出する。すなわち、
図6(B)の■点位置(蓄電池容量=10kWh)が抽出される。
【0120】
手順2及び手順3は、これは、
図3のフローチャートのステップ104の処理に相当する。
【0121】
(手順4) 手順2及び手順3を比較して、増量サービスの要否を判定する。例えば、経済性最良値(VPP無)と経済性最良値(PP有)とが同じ場合は、増量サービスを適用しないが、
図6(B)に示される如く、経済性最良値(VPP無)<経済性最良値(PP有)の場合は、増量サービスを適用することになる(
図3のフローチャートのステップ108の処理に相当)。
【0122】
(手順5) 手順4の結果に基づき、需要家への提案自に見える化(例えば、
図6(B)の特性図を提示)することで、営業利用が可能となる(
図3のフローチャートのステップ110、112の処理の相当)。
【0123】
[実施例2]
以下に、実施例2について説明する。実施例2は、需要家側から増量サービスの提供を依頼する場合についての手順である。
【0124】
この場合、まず、需要家が任意の容量の蓄電池の購入を決断し、提供する側に打診すると、提供側では、増量サービス適用時の損益を、
図6(A)及び
図6(B)の特性図を用いて計算し、購入を決断した蓄電池容量の損益、及び、さらに、需要家に有利な情報(
図6(B)に示す経済性最良値(PP有)が最大値となる蓄電池容量を抽出し、案内する。