(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044173
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/02 20060101AFI20240326BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20240326BHJP
A61K 8/25 20060101ALI20240326BHJP
A61K 8/87 20060101ALI20240326BHJP
A61K 8/88 20060101ALI20240326BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/81
A61K8/25
A61K8/87
A61K8/88
A61Q1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149555
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 昌枝
(72)【発明者】
【氏名】原 和弘
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AB171
4C083AB172
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC242
4C083AC292
4C083AC392
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC582
4C083AC892
4C083AD022
4C083AD042
4C083AD071
4C083AD072
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD172
4C083BB26
4C083CC03
4C083CC05
4C083CC11
4C083CC12
4C083CC14
4C083CC19
4C083DD27
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE06
(57)【要約】
【課題】表情圧により生じるシワの形成を抑制できる、皮膚外用に適した組成物を提供する。
【解決手段】柔軟性ポリマーと球状粉体とを含有する組成物であって、前記柔軟性ポリマーと前記球状粉体との重量比3:1の混合物が形成する膜において測定される、表面の弾性率と内部の弾性率の差が11MPa以下であり、かつ内部の弾性率が10MPa以上である、組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟性ポリマーと球状粉体とを含有する組成物であって、
前記柔軟性ポリマーと前記球状粉体との重量比3:1の混合物が形成する膜において測定される、表面の弾性率と内部の弾性率の差が11MPa以下であり、かつ内部の弾性率が10MPa以上である、組成物。
【請求項2】
前記柔軟性ポリマーが、アクリル酸系ポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アクリル酸系ポリマーが、アクリル酸アルキルコポリマー塩である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記球状粉体が、シリカ、ナイロン、及びウレタンから選択される一種又は二種以上を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記柔軟性ポリマーと前記球状粉体との含有量の重量比が1:8~8:1で含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記柔軟性ポリマーの含有量が組成物全体の0.05~1.5重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記球状粉体の含有量が組成物全体の0.05~3重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
化粧料である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料などの皮膚外用に好適な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シワは、加齢、ストレス、紫外線暴露などの要因により引き起こされる皮膚の老化症状のひとつであり、見た目に分かりやすいことから顔の印象に大きく影響する。そのため、シワとその改善方法に対する関心は非常に高い。
シワが形成されるメカニズムは複雑であり完全には解明されていないが、これまでに判明したシワ発生原因に基づいてシワ改善剤が種々提案されている(特許文献1,2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2009/093534号
【特許文献2】国際公開2017/221973号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
出願人の先の研究において、表情を作る際に、皮膚が縮んで皮膚同士が衝突したり皮膚が伸びたりするときに皮膚にかかる圧力(表情圧ともいう)により皮膚が伸縮すると、シワが生じやすくなることに着目した(特願2021―209853)。特に、瞬きなどで皮膚の伸縮が繰り返される目元の皮膚には表情圧がかかりやすいためシワが生じやすく、老けた印象を与えるため改善する要請がある。
かかる状況に鑑みて、表情圧により生じるシワの形成を抑制できる、皮膚外用に適した組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意研究を行った結果、従来の化粧膜は柔軟性のある被膜剤と柔らかい高分子とを組み合わせてなるものが多く、そのような化粧膜は膜強度が小さい、すなわち膜が軟らかくかつ脆いことに注目した。膜強度が小さい化粧膜は皮膚変形に追従して変形し、表情圧による化粧膜の歪みが局所的に生じ、それが亀裂として残存しやすい。そうすると、亀裂が生じた化粧膜が皮膚に食い込んでシワが刻まれてしまう。
本発明者らは、かかる知見に基づき、膜強度の大きい、すなわち膜が柔軟でありつつ硬さ(剛性)があり壊れにくい化粧膜とすることによりシワを生じにくくできると考えた。膜強度が大きい化粧膜は、皮膚変形に追従して変形するが、化粧膜に局所的に応力がかかりにくく、崩壊したり局所的な歪みが生じたりしにくいため、シワが刻まれにくいと考えられる。そのような膜強度の大きい化粧膜を形成し得る成分として、組み合わせたときに所定の表面及び内部の弾性率を満たす膜を形成する柔軟性のあるポリマーと球状粉体とを組み合わせることに想到して、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]柔軟性ポリマーと球状粉体とを含有する組成物であって、
前記柔軟性ポリマーと前記球状粉体との重量比3:1の混合物が形成する膜において測定される、表面の弾性率と内部の弾性率の差が11MPa以下であり、かつ内部の弾性率が10MPa以上である、組成物。
[2]前記柔軟性ポリマーが、アクリル酸系ポリマーである、[1]に記載の組成物。
[3]前記アクリル酸系ポリマーが、アクリル酸アルキルコポリマー塩である、[2]に記載の組成物。
[4]前記球状粉体が、シリカ、ナイロン、及びウレタンから選択される一種又は二種以上を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[5]前記柔軟性ポリマーと前記球状粉体との含有量の重量比が1:8~8:1で含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[6]前記柔軟性ポリマーの含有量が組成物全体の0.05~1.5重量%である、[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
[7]前記球状粉体の含有量が組成物全体の0.05~3重量%である、[1]~[6]のいずれかに記載の組成物。
[8]化粧料である、[1]~[7]のいずれかに記載の組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の組成物により皮膚上に形成される膜は、皮膚変形に追従して変形するが、膜に局所的に応力がかかりにくく、崩壊したり局所的な歪みが生じたりしにくいため、表情圧をやわらげることができる。そのため、本発明により表情圧によるシワの形成を抑制できる、皮膚外用に適した組成物が提供される。従来のシワ改善剤が化学的なアプローチであったのに対して、塗布膜の物理的な性質によりシワ形成を抑制する点で画期的である。また、従来、粉体を含有する化粧料は、粉体のボカシ効果によりシワを目立たなくさせるものであったが、本発明の組成物において粉体は膜強度を向上させる役割を担うものであるため、本発明のシワ形成抑制効果は従来技術から予測できるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】ポリマー及び/又は粉体により形成される塗布膜の高低差を表す図。高い部分は赤色で、低い部分は青色で示され、矢印(←)は亀裂を示す。
【
図2】ナノインデンテーション(NI)法により測定された、塗布膜の表面と内部の弾性率を示すグラフ(n=3)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」はその前後の数値を含む範囲を意味する。
【0010】
本発明の組成物は、柔軟性ポリマーと球状粉体とを含有する。
本明細書において柔軟性ポリマーとは、応力に応じて柔軟に変形し崩壊しない被膜を形成し得るポリマーをいう。かかる柔軟性があることは、後述の試験例1に記載の被膜に応力をかけたときに亀裂が発生しないことを確認する試験により判断することができる。
【0011】
柔軟性ポリマーとしては、化粧料に通常用いられる親水性の皮膜形成ポリマーが挙げられ、具体的には、任意の置換基を有してもよい、アクリル酸系ポリマー(例えば、ポリアクリル酸、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド、アクリル酸アルキル共重合体、又はこれらの塩等)、ビニル系ポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルメチルエーテル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体、カルボキシビニルポリマー等)、ポリエーテル・ポリウレタン共重合体等が好ましく挙げられる。これらのうち、アクリル酸モノマーの重合体/共重合体であるアクリル酸系ポリマー又はその塩がより好ましく、アクリル酸アルキル共重合体又はその塩がより好ましく、アクリル酸アルキル共重合体アンモニウムがさらに好ましい。
アクリル酸アルキル共重合体アンモニウムとしては、市販のものを用いることができ、例えば(アクリル酸/アクリル酸エチル/アクリル酸オクチル/メタクリル酸)共重合体アンモニウム「ポリジョイントJN」(大成ファインケミカル株式会社製)を好ましく用いることができる。
【0012】
球状粉体は、真球状、略球状のいずれでもよいが、真球状が好ましい。
球状粉体は球状であればその素材は特に問わず、有機粉末(例えば、ポリアミド樹脂粉末(ナイロン粉末)、ポリエチレン粉末、ポリ(メタ)アクリル酸メチル粉末、ポリスチレン粉末、スチレンとアクリル酸の共重合体樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、ポリ四フッ化エチレン粉末、セルロース粉末等)、シリカなどの無機粉末であってよい。これらのうち、シリカ、ナイロン、ウレタンが好ましく、ナイロン、ウレタンが弾性があるためより好ましい。
球状粉体の大きさとしては特に限定されず、通常化粧料に配合される球状粉体の大きさでよく、例えば、平均粒子径が1~15μm程度のものが挙げられる。
ここで平均粒子径は、透過電子顕微鏡写真中の任意の視野の任意の粒子30個についての体積平均を繰り返し測定することにより算出される値である。
なお、球状粉体は、任意の疎水化処理又は親水化処理されていてもよい。
【0013】
本発明にかかる柔軟性ポリマーと球状粉体としては、これらを組み合わせたときに所定の膜強度を有する膜を形成し得る組み合わせとする。具体的には、柔軟性ポリマーと球状粉体との重量比3:1の混合物により膜を形成させたとき、かかる膜において測定される、表面の弾性率と内部の弾性率の差が11MPa以下であり、かつ内部の弾性率が10MPa以上である。膜の表面及び内部の弾性率は、後述の試験例3のようにナノインデンテーション法で測定することができる。
塗布膜の表面の弾性率は化粧膜を形成する成分の硬さを反映し、内部の弾性率は化粧膜の変形しにくさを反映する。そのため、上記のように内部の弾性率が高く、また表面と内部の弾性率の差が小さい膜を形成することができる柔軟性ポリマーと球状粉体とを用いることにより、柔軟で壊れにくい良好な塗膜を形成できる組成物が提供される。
【0014】
本発明における柔軟性ポリマーと球状粉体との含有量の重量比は、特に限定されないが、1:8~8:1が好ましく、1:4~4:1がより好ましく、1:2~2:1がさらに好ましい。
かかる範囲で組み合わせることにより、組成物が形成する膜の膜強度がより向上する。それにより、肌に塗布した時に表情圧をやわらげてシワ形成を抑制しやすくなる。
【0015】
本発明における柔軟性ポリマーの含有量は、特に限定されないが、組成物全体の0.05~1.5重量%が好ましく、0.1~1.0重量%がより好ましく、0.15~0.5重量%がさらに好ましい。
かかる範囲で組み合わせることにより、組成物が形成する膜の膜強度がより向上する。それにより、肌に塗布した時に表情圧をやわらげてシワ形成を抑制しやすくなる。
【0016】
本発明における球状粉体の含有量は、特に限定されないが、組成物全体の0.05~3重量%が好ましく、0.1~1.5重量%がより好ましく、0.15~1重量%がさらに好ましい。
かかる範囲で組み合わせることにより、組成物が形成する膜の膜強度がより向上する。それにより、肌に塗布した時に表情圧をやわらげてシワ形成を抑制しやすくなる。
【0017】
本発明の組成物の剤型は、水性剤型、乳化剤型、オイルゲル剤型など特に限定されない。
【0018】
本発明の組成物は、塗膜の形成によりシワ形成を抑制し得るため、皮膚外用剤の態様に好適である。皮膚外用剤としては、化粧料、医薬部外品など特に限定されないが、化粧料が特に好ましい。
化粧料としては、スキンケア化粧料、日焼け止め化粧料、メークアップ化粧料がより好ましく挙げられる。スキンケア化粧料としては、乳液、エッセンス、美容液等が好ましく
挙げられる。日焼け止め化粧料としては、顔用、ボディ用など問わない。メークアップ化粧料としては、化粧下地、ファンデーション、コンシーラー、BBクリーム、CCクリーム、マスカラ、アイカラー、チーク、アイブロウカラー等が好ましく挙げられる。これらのうち、スキンケア化粧料がより好ましい。
【0019】
本発明の組成物は、定法に従って製造することができる。
【0020】
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、通常化粧料に用いられる他の成分を任意に配合することができる。
ただし、球状粉体以外の粉体、すなわち球状でない形状、例えば不定形や板状、針状などの形状の粉体は、組成物が形成する被膜を脆くさせやすいため、実質的に含有しないことが好ましい。ここで実質的に含有しないとは、組成物全体の好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、さらに好ましくは0.01重量%以下をいう。
【0021】
その他の任意成分としては、例えば、油剤、アルコール、エーテル、保湿剤、界面活性剤、金属イオン封鎖剤、パール剤、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、ビタミン類、酸化防止剤、防腐剤、水溶性高分子、香料、各種有効成分等が挙げられる。
【0022】
油剤としては、シリコーン油、極性油、天然油、炭化水素油等が挙げられる。
【0023】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、シクロペンタシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、カプリリルメチコン、トリメチルシロキシケイ酸、(ジメチコン/ビニルジメチコン)クロスポリマー、(ジメチコン/フェニルビニ
ルジメチコン)クロスポリマー等が挙げられる。
【0024】
極性油としては、エチルヘキサン酸セチル、ステアロイルオキシステアリン酸オクチルドデシル、トリイソステアリン、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、トリエチルヘキサノイン、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリ-2-エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ペンタンエリスリトール、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリル、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニンル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル、オクチルメトキシシンナメート、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル等のエステル油が挙げられる。
エステル油は、成分A及び成分Bにより得られる適度なツヤ感をさらに向上させること
ができ、また見た目の粉感を減少させたり、ざらざらした感触を軽減させることができるため、本発明の化粧料に特に好ましく配合し得る。
【0025】
天然油としては、アボカド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、ヒマワリ油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル等が挙げられる。
【0026】
炭化水素油としては、イソドデカン、イソヘキサデカン、スクワラン、水添ポリ(C6-12)オレフィン、水添ポリイソブテン等が挙げられる。
【0027】
アルコールとしては、例えば、セタノール、バチルアルコール、ベヘニルアルコール、パルミトレイルアルコール、ヘプタデカノール、1-ヘプタデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、エライジルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、エライドリノレイルアルコール、リノレニルアルコール、エライドリノレニルアルコール、リシノレイルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキジルアルコール、ヘンエイコサノール、ベヘニルアルコール、エルシルアルコールなどの1価のアルコール;エチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、テトラメチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、2-ブテン-1,4-ジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール等の2価のアルコール;トリメチロールプロパン等の3価のアルコール;ペンタエリスリトール等の4価のアルコール;キシリトール等の5価のアルコール;トリグリセリン、テトラグリセリン、ポリグリセリン等の多価アルコール重合体;デンプン分解糖還元アルコール等の糖アルコール;ポリグリセリン;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2-メチルヘキシルエーテル、エチレングリコールイソアミルエーテル、エチレングリコールベンジルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル等のアルコールアルキルエーテル類;
ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル等のアルコールアルキルエーテル類;
キシルアルコール、セラキルアルコール、バチルアルコール等のグリセリンモノアルキルエーテル類;
ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のアルコール重合体;
グリソリッド;テトラハイドロフルフリルアルコール;POE-テトラハイドロフルフリルアルコール;POP-ブチルエーテル;POP・POE-ブチルエーテル;トリポリオキシプロピレングリセリンエーテル;POP-グリセリンエーテル;POP-グリセリンエーテルリン酸;POP・POE-ペンタンエリスリトールエーテル、等が挙げられる。
【0028】
エーテルとしては、上記アルコールに該当するものの他、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、エチレングリコールジアジベート、エチレングリコールジサクシネート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノフェニルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0029】
保湿剤としては、例えば、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、コレステリル-12-ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、dl-ピロリドンカルボン酸塩、短鎖可溶性コラーゲン、ジグリセリン(EO)PO付加物、イザヨイバラ抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、メリロート抽出物等が挙げられる。
【0030】
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0031】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸セッケン(例えば、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等);高級アルキル硫酸エステル塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等);アルキルエーテル硫酸エステル塩(例えば、POEラウリル硫酸トリエタノールアミン、POEラウリル硫酸ナトリウム等);N-アシルサルコシン酸(例えば、ラウロイルサルコシンナトリウム等);高級脂肪酸アミドスルホン酸塩(例えば、N-ミリストイル-N-メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリッドナトリウム、ラウリルメチルタウリッドナトリウム等);リン酸エステル塩(POEオレイルエーテルリン酸ナトリウム、POEステアリルエーテルリン酸等);スルホコハク酸塩(例えば、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、モノラウロイルモノエタノールアミドポリオキシエチレンスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム等);アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えば、リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、リニアドデシルベンゼンスルホン酸等);高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩(例えば、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム等);N-アシルグルタミン酸塩(例えば、N-ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N-ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N-ミリストイル-L-グルタミン酸モノナトリウム等);硫酸化油(例えば、ロート油等);POEアルキルエーテルカルボン酸;POEアルキルアリルエーテルカルボン酸塩;α-オレフィンスルホン酸塩;高級脂肪酸エステルスルホン酸塩;二級アルコール硫酸エステル塩;高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩;ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム;N-パルミトイルアスパラギン酸ジトリエタノールアミン;カゼインナトリウム等が挙げられる。
【0032】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩(例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等);アルキルピリジニウム塩(例えば、塩化セチルピリジニウム等);塩化ジステアリルジメチルアンモニウムジアルキルジメチルアンモニウム塩;塩化ポリ(N,N’-ジメチル-3,5-メチレンピペリジニウム);アルキル四級アンモニウム塩;アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩;アルキルイソキノリニウム塩;ジアルキルモリホニウム塩;POEアルキルアミン;アルキルアミン塩;ポリアミン脂肪酸誘導体;アミルアルコール脂肪酸誘導体;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0033】
両性界面活性剤としては、例えば、イミダゾリン系両性界面活性剤(例えば、2-ウンデシル-N,N,N-(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)-2-イミダゾリンナトリウム、2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等);ベタイン系界面活性剤(例えば、2-ヘプタデシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)等が挙げられる。
【0034】
非イオン性界面活性剤としては、ポリエーテル変性シリコーン類(例えば、ポリエチレングリコール-10ジメチコン、ポリエチレングリコール-12ジメチコン等);ポリグリセリン変性シリコーン類(例えば、ポリグリセリル-3ジシロキサンジメチコン、ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン等);ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ペンタ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等);グリセリン脂肪酸類(例えば、モノ綿実油脂肪酸グリセリル、モノエルカ酸グリセリル、セスキオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、α,α’-オレイン酸ピログルタミン酸グリセリル、(モノステアリン酸/リンゴ酸)グリセリル等);プロピレングリコール脂肪酸エステル類(例えば、モノステアリン酸プロピレングリコール等);POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等);グリセリンアルキルエーテル等の非親水性非イオン性界面活性剤が挙げられる。また、ポリグリセリン脂肪酸エステル(例えば、モノオレイン酸ポリグリセリル、モノステアリン酸ポリグリセリル等);POEソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、POEソルビタンモノオレエート、POEソルビタンモノステアレート、POEソルビタンテトラオレエート等);POEソルビット脂肪酸エステル類(例えば、POEソルビットモノラウレート、POEソルビットモノオレエート、POEソルビットペンタオレエート、POEソルビットモノステアレート等);POEグリセリン脂肪酸エステル類(例えば、POEグリセリンモノステアレート、POEグリセリンモノイソステアレート、POEグリセリントリイソステアレート等のPOEモノオレエート等);POE脂肪酸エステル類(例えば、POEジステアレート、POEモノジオレエート、ジステアリン酸エチレングリコール等);POEアルキルエーテル類(例えば、POEラウリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEステアリルエーテル、POE-ベヘニルエーテル、POE-2-オクチルドデシルエーテル、POEコレスタノールエーテル等);POEアルキルフェニルエーテル類(例えば、POEノニルフェニルエーテル等);プルロニック型類(例えば、プルロニック(登録商標)等);POE・POPアルキルエーテル類(例えば、POE・POPセチルエーテル、POE・POP-2-デシルテトラデシルエーテル、POE・POPモノブチルエーテル、POE・POP水添ラノリン、POE・POPグリセリンエーテル等);テトラ POE・テトラPOPエチレンジアミン縮合物類(例えば、テトロニック等);POEヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体(例えば、POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油、POE硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE硬化ヒマシ油トリイソステアレート、POE硬化ヒマシ油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、POE硬化ヒマシ油マレイン酸等);POEミツロウ・ラノリン誘導体(例えば、POEソルビットミツロウ等);アルカノールアミド(例えば、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミド等);POEプロピレングリコール脂肪酸エステル;POEアルキルアミン;POE脂肪酸アミド;ショ糖脂肪酸エステル;アルキルグルコシド;アルキルエトキシジメチルアミンオキシド;トリオレイルリン酸等の親水性非イオン性界面活性剤も挙げられる。
【0035】
金属イオン封鎖剤としては、例えば、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジフォスホン酸、1-ヒドロキシエタン-1,1-ジフォスホン酸四ナトリウム塩、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、コハク酸、エデト酸、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸3ナトリウム等が挙げられる。
【0036】
パール剤としては、例えば、ジステアリン酸グリコール、チタンマイカ等が挙げられる。
【0037】
アミノ酸としては、例えば、中性アミノ酸(例えば、スレオニン、システイン等);塩基性アミノ酸(例えば、ヒドロキシリジン等)等が挙げられる。また、アミノ酸誘導体として、例えば、アシルサルコシンナトリウム(ラウロイルサルコシンナトリウム) 、アシ
ルグルタミン酸塩、アシルβ-アラニンナトリウム、グルタチオン、ピロリドンカルボン酸等が挙げられる。
【0038】
有機アミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、トリイソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール等が挙げられる。
【0039】
高分子エマルジョンとしては、例えば、アクリル樹脂エマルジョン、ポリアクリル酸エチルエマルジョン、アクリルレジン液、ポリアクリルアルキルエステルエマルジョン、ポリ酢酸ビニル樹脂エマルジョン、天然ゴムラテックス等が挙げられる。
【0040】
pH調整剤としては、例えば、乳酸-乳酸ナトリウム、クエン酸-クエン酸ナトリウム、コハク酸-コハク酸ナトリウム等の緩衝剤等が挙げられ、通常は内相(水性成分)のpHの調整のために用いられる。
【0041】
ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、B1、B2、B6、C、E及びその誘導体
、パントテン酸及びその誘導体、ビオチン等が挙げられる。
【0042】
酸化防止剤としては、例えば、トコフェロール類、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール、ピロ亜硫酸塩、没食子酸エステル、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、ケファリン、ヘキサメタフォスフェイト、フィチン酸、エチレンジアミン四酢酸等が挙げられる。
【0043】
防腐剤としては、例えば、パラベン類、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0044】
水溶性高分子としては、例えば、植物系高分子(例えば、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアーガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(カッソウエキス)、デンプン(コ
メ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、グリチルリチン酸);微生物系高分子(例え
ば、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、ブルラン等);動物系高分子(例えば、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等)等の天然の水溶性高分子、
デンプン系高分子(例えば、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等);セルロース系高分子(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル、セルロース硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、セルロース末等);アルギン酸系高分子(例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等)等の半合成の水溶性高分子、
ビニル系高分子(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等);ポリオキシエチレン系高分子(例えば、ポリエチレングリコール20,000、40,000、60,000等);アクリル系高分子(例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等);ポリエチレンイミン;カチオンポリマー等の合成の水溶性高分子が挙げられる。
【0045】
各種有効成分としては、例えば、消炎剤(例えば、サリチル酸誘導体、ヒノキチオール、酸化亜鉛、アラントイン等);美白剤(例えば、胎盤抽出物、ユキノシタ抽出物、アルブチン等);各種抽出物(例えば、オウバク、オウレン、シコン、シャクヤク、センブリ、バーチ、セージ、ビワ、ニンジン、アロエ、ゼニアオイ、アイリス、ブドウ、ヨクイニン、ヘチマ、ユリ、サフラン、センキュウ、ショウキュウ、オトギリソウ、オノニス、ニンニク、トウガラシ、チンピ、トウキ、海藻等)、賦活剤(例えば、ローヤルゼリー、感光素、コレステロール誘導体等);血行促進剤(例えば、ノニル酸ワレニルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β-ブトキシエチルエステル、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、タンニン酸、α-ボルネオール、ニコチン酸トコフェロール、イノシトールヘキサニコチネート、シクランデレート、シンナリジン、トラゾリン、アセチルコリン、ベラパミル、セファランチン、γ-オリザノール等);抗脂漏剤(例えば、硫黄、チアントール等);抗炎症剤(例えば、トラネキサム酸、チオタウリン、ヒポタウリン等)等が挙げられる。
【実施例0046】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
<試験例1>柔軟性を有するポリマーの検討
人工皮革に、試料を15mg/cm2均一に塗布し、50℃下で3時間乾燥させた。乾燥後の人工皮革の両端を手で引張り人工皮革の引張り方向の長さを1.2倍に伸ばし、引張りを解除したあとの塗布膜の状態を目視で観察した。試料として、アクリレーツコポリマー(アグゾノーベル株式会社製)、(アクリレーツ/ジメチコン)コポリマー(信越化学工業株式会社)、(アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル)コポリマー、及び(アクリレーツ/メチルスチレン/スチレン)コポリマーアンモニウムの混合ポリマー(株式会社岐阜セラツク製造所)を用いた場合は塗布膜に亀裂が生じたが、(アクリル酸/アクリル酸エチル/アクリル酸オクチル/メタクリル酸)共重合体アンモニウム(ポリジョイントJN(大成ファインケミカル株式会社製))を用いた場合は塗布膜に亀裂は生じなかった。
【0048】
<試験例2>塗布膜の柔軟性の検討
柔軟性ポリマーと球状粉体若しくは非球状粉体との組み合わせ、又は球状粉体若しくは非球状粉体のみとで形成される塗布膜について、柔軟性を検討した。柔軟性ポリマーとしては、ポリジョイントJN(大成ファインケミカル株式会社製)を用いた。球状粉体としてはナイロン(ナイロンSP500(東レ株式会社製))を用いた。非球状粉体としては扁平粉体であるタルクを用いた。まず、粉体単体評価においては、分散媒(シクロヘキサノイン)と粉体を1:1の割合で混合し試験サンプルとした。また、柔軟性ポリマーと粉体とは重量比3:1で均一混合し試験サンプルとした。各試料を工皮革上にドクターブレード(粉体のみの試料は1mil(25.4μm)、柔軟性ポリマーと粉体との混合試料は
3mil(76.2μm))を用いて均一薄膜化し、十分に乾燥させた。乾燥後の人工皮
革を一定の力(500g)と時間(粉体のみの試料は1分間、柔軟性ポリマーと粉体との混合試料は30秒間)で折り曲げた。折り曲げ前後の各塗布膜をワンショット3D形状測
定機(株式会社キーエンス製)で撮影し、塗布膜の高低差を測定した。
結果を
図1に示す。非球状粉体のみ又は柔軟性ポリマーと非球状粉体との組み合わせで形成された塗布膜では折り曲げにより亀裂が入った。球状粉体のみ又は柔軟性ポリマーと球状粉体との組み合わせで形成された塗布膜では折り曲げにより膜の歪みは見られたが、亀裂は認められなかった。
【0049】
<試験例3>塗布膜の表面及び内部の弾性率の測定
柔軟性ポリマーと球状粉体若しくは非球状粉体との組み合わせ、又は球状粉体若しくは非球状粉体のみとで形成される塗布膜の表面及び内部の弾性率をナノインデンテーション法により測定した。柔軟性ポリマーとしては、ポリジョイントJN(大成ファインケミカル株式会社製)を用いた。球状粉体としてはナイロン(ナイロンSP500(東レ株式会社製))、及びシリカ(SATINIER M5(日揮触媒化成社製))を用いた。非球
状粉体としては扁平粉体であるタルクを用いた。柔軟性ポリマーと粉体とを重量比4:1で混合した後、均一分散し、試料とした。
試料1:ポリジョイントJNとタルクとの混合試料
試料2:ポリジョイントJNとSATINIER M5との混合試料
試料3:ポリジョイントJNとナイロンSP500との混合試料
各試料を、人工皮革上にドクターブレード(3mil(76.2μm))を用いて均一
薄膜化し、24時間以上静置して十分に乾燥させた。乾燥後の塗膜について、ナノインデンテーターを用いたナノインデンテーション(NI)法により、表面と内部の弾性率を測定した(n=3)。塗布膜の表面の弾性率はNI測定器の鋭角圧子による測定値であり、化粧膜を形成する成分の硬さを反映する。内部の弾性率はNI測定器の球状圧子による測定値であり、化粧膜の変形しにくさを反映する。
結果を
図2に示す。試料1は、表面の弾性率が25MPa以上であり、内部の弾性率が10MPa未満であり、また塗布膜を観察したところ脆く柔軟性に乏しい膜であった。試料2は、表面の弾性率が21~24MPaであり、内部の弾性率が10MPa以上であり、また塗布膜を観察したところやや柔軟性は低いが壊れにくい膜であった。試料3は、表面の弾性率が21MPa以下であり、内部の弾性率が10MPa以上であり、また塗布膜を観察したところ柔軟で壊れにくい膜であった。これらの結果から、内部の弾性率が高く、また表面と内部の弾性率の差が小さい膜が、柔軟で壊れにくい良好な塗膜となることがわかった。
【0050】
<試験例4>組成物の調製
表1に示す処方で、常法により皮膚外用組成物を調製した。
5名の被験者に、全顔をダブル洗顔した後、20℃、湿度50%の環境下にて、調製した各組成物0.5gを全顔に塗布してもらった。塗布後10分間静置した顔について、以下の評価を行った。
結果を表1にあわせて示す。
(シワになり難さ)
以下の手順で、組成物を塗布した顔において瞬きによる負荷を与えた場合のシワになり難さを評価した。
皮膚計測機器VISIA-Evolution(Canfield Scientif
ic Inc.)を用いて、被験者の左右の頬の写真を撮影した。その後、目を10回強
く瞬きし、再度左右の頬の写真を撮影した。得られた各写真に基づいて、前記機器の解析プログラムにより被験者の両頬の、目立つシワスコアを算出した。瞬きによる負荷をかける前後でのシワスコアの変化率を算出し、以下の基準で3段階評価した。
〇:負荷後のシワスコアが、負荷前に対して100%以下
△:負荷後のシワスコアが、負荷前に対して100%超110%以下
×:負荷後のシワスコアが、負荷前に対して110%超
【0051】
(感触)
組成物を塗布後10分間静置した後の顔の感触について、専門評価者が以下の3段階で評価した。
〇:化粧膜が肌に沿い柔らかな感触がある。
△:やや被膜感がある。
×:硬い被膜感がある。
【0052】
(保湿感)
組成物を塗布後10分間静置した後の顔の保湿感について、専門評価者が以下の3段階で評価した。
〇:十分に潤い保湿感がある。
△:やや乾燥を感じる。
×:肌表面がつっぱり乾燥感がある。
【0053】