(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004419
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】樹木診断システム及び樹木診断方法
(51)【国際特許分類】
A01G 7/00 20060101AFI20240109BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20240109BHJP
G01N 25/18 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
A01G7/00 603
G01N21/27 A
G01N25/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104095
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】519280391
【氏名又は名称】株式会社ウリプカス
(74)【代理人】
【識別番号】100139996
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 洋子
(72)【発明者】
【氏名】若松 美津子
【テーマコード(参考)】
2G040
2G059
【Fターム(参考)】
2G040AA05
2G040AB08
2G040AB12
2G040BA01
2G040BA25
2G040CA01
2G040CA11
2G040CA23
2G040CA24
2G040DA06
2G040DA24
2G040GA01
2G040HA05
2G040HA14
2G040HA16
2G040ZA01
2G059AA05
2G059BB20
2G059EE02
2G059EE12
2G059FF01
2G059HH01
2G059HH02
2G059JJ01
2G059KK04
2G059MM05
2G059PP06
(57)【要約】
【課題】短時間で多くの樹木を診断できる能率化を図った経済的且つ実用的に有用な樹木診断システムを提供すること。
【解決手段】
ドローン10に搭載され樹木からの太陽光の反射波を受信しマルチスペクトル画像情報を生成するマルチスペクトルカメラ100、このマルチスペクトル画像情報から特定樹木を識別する第一の判断部200及び樹木特定部300、特定樹木に外観診断を実施し不健全木候補を判断する外観診断実施部400及び第二の判断部500並びに応力波速度測定を実施し不健全木の判断を行う応力波速度測定実施部600及び第三の判断部700とから構成されることを特徴とする樹木診断システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔操作可能なドローンに搭載され、樹木から反射される太陽光の特定波長を上空から取得してマルチスペクトル画像情報を生成するマルチスペクトル画像情報生成手段と、
このマルチスペクトル画像情報生成手段にて生成された上記マルチスペクトル画像情報につき、予め設定された第一の診断情報を参照して当該マルチスペクトル画像情報が予め設定された第一の閾値内か否かを判断する第一の判断手段と、
この第一の判断手段にて上記第一の閾値外と判断された上記マルチスペクトル画像情報に対応する樹木を特定する樹木特定手段と、
この樹木特定手段にて特定された樹木に対し外観診断を実施して外観診断情報を取得する外観診断実施手段と、
この外観診断実施手段により取得された外観診断情報につき、予め設定された第二の診断情報を参照して当該外観診断情報が予め設定された第二の閾値内か否かを判断する第二の判断手段と、
この第二の判断手段にて上記第二の閾値外と判断された上記外観診断情報に対応する樹木に対し応力波速度測定を実施して当該樹木の応力波速度測定情報を取得する応力波速度測定実施手段と、
この応力波速度測定実施手段により取得された応力波速度測定情報につき、予め設定された第三の診断情報を参照して当該応力波速度測定情報が予め設定された第三の閾値内か否かを判断する第三の判断手段を具備することを特徴とする樹木診断システム。
【請求項2】
上記マルチスペクトル画像情報生成手段が搭載されるドローンの飛行経路を記憶管理する飛行経路記憶管理手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の樹木診断システム。
【請求項3】
遠隔操作可能で飛行経路を記憶可能とするドローンにて複数の樹木の健全状態を診断する樹木診断方法であって、
上記ドローンに搭載され熱赤外線センサ機能を有するマルチスペクトルカメラにより上記樹木から反射される太陽光の特定波長を上記樹木の上空から取得してマルチスペクトル画像情報として生成し、
このマルチスペクトル画像情報につき、予め設定された第一の診断情報を参照して当該マルチスペクトル画像情報が予め設定された第一の閾値内か否かを判断し、
この判断にて上記第一の閾値外と判断された上記マルチスペクトル画像情報に対応する樹木を特定し、
この特定された樹木に対し外観診断を実施して外観診断情報を取得し、
この外観診断情報につき、予め設定された第二の診断情報を参照して当該外観診断情報が予め設定された第二の閾値内か否かを判断し、
この判断にて上記第二の閾値外と判断された上記外観診断情報に対応する樹木に対し応力波速度測定を実施して当該樹木の応力波速度測定情報を取得し、
この応力波速度測定情報につき、予め設定された第三の診断情報を参照して当該応力波速度測定情報が予め設定された第三の閾値内か否かを判断し、
この判断にて上記第三の閾値外と判断された上記応力波速度測定情報に対応する樹木を不健全樹木と判断するようにしたことを特徴とする樹木診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹木が健全木か不健全木であるかの診断手法の改善を図った樹木診断システム及び樹木診断方法、特にマルチスペクトル画像を用いることにより能率化を図った樹木診断システム及び樹木診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、街路樹または都市公園内に於ける樹木は、その成長とともに大径木化や老齢化が進むことにより、倒伏や落枝による重大な事故等が発生する虞があった。また、災害または病害虫の悪影響により、同様に倒伏や落枝による重大事故等発生リスクの虞があった。
【0003】
このため、樹木の点検・診断を適切且つ確実に継続的に実施することが推奨されている。この点検・診断は、通常、専門知識及び経験を有する人による巡視や立ち寄りによる目視点検により行われる。目視点検の結果、変状や異常が見つかった樹木に対しては、当該樹木の健全状況の診断、所謂樹木診断が行われることになる。
【0004】
特許文献1には、コンピュ-タによる樹木診断システムとそのシステムに使用する樹木診断カルテが開示されている。このものにあっては、全ての登録樹木の診断、治療、樹勢回復及び育成等についての管理を総合的且つ時期を失せずに的確に行うことを可能としたものである。
【0005】
特許文献2には、電波を樹木に照射して樹木による電波の透過損失を検出し、樹木に含まれる水分の脱水率を算出することにより樹木の健康状態を診断する樹木診断方法及び装置が開示されている。このものにあっては、樹木に電波を照射するための放射電波と、放射電波が樹木を透過した後の透過電波の強度比から透過損失を算出し、透過損失の標準偏差値から樹木の脱水率を算出することにより樹木の診断を行うものである。
【0006】
特許文献3には、腐朽の有無や心材の有無等の樹木の内部状態を非破壊で高速に診断可能とする樹木診断装置及び樹木診断方法が開示されている。このものにあっては、照射される電波の受信位置を走査することで、樹木の内部状況を判定するものである。
【0007】
特許文献4及び特許文献5には、関心領域の空撮画像から標的物体を迅速且つ精密に検出するための航空画像からの自動物体検出のための方法及びシステムが開示されている。これらのものにあっては、一定の領域の数値表層モデルや標的物体の数値表層モデル画像を得て、領域及び標的物体の数値表層モデル画像に基づいて領域内の標的物体を検出し、検出した標的物体を人工知能によって認識することにより標的物体の位置を取得して認識された標的物体の数を算出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許3741174号公報
【特許文献2】特開2005-292099号公報
【特許文献3】特許7000174号公報
【特許文献4】米国特許第10546195号公報
【特許文献5】米国特許第10699119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1乃至特許文献3に開示されたものは、樹木一本ずつを対象とした点検・診断手法であり、樹木一本ずつにつき人が介在して点検・診断を行う必要がある。即ち、樹木一本ずつにつき、人的作業が発生するものである。
【0010】
特許文献4及び特許文献5に開示されたものは、特定領域に於ける標的物体の数を認識できるようにしたものに過ぎない。
【0011】
不健全木による倒伏や落枝による重大事故等の発生リスクを考慮すると、街路樹または都市公園内に於ける樹木のみが診断対象ではなく、丘陵または野山他に植林された樹木並びに自然に育った樹木も定期的な診断対象とすることが望ましい。
【0012】
しかしながら、樹木診断に於いては、依然として一本ずつ人的作業が強いられているのが実情である。また、専門性を要する診断ゆえマンパワーも限られ、定期的な樹木診断の実施は容易ではない。しかも、診断に要する時間、費用及び管理に要する負荷・負担は、相当なものである。
【0013】
本発明は上記事情を考慮してなされたもので、短時間で多くの樹木を診断対象とすることができる能率化を図った樹木診断システム及び樹木診断方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、診断に要する時間、費用及び管理の面に於いて優位で、経済的且つ実用的に有用な樹木診断システム及び樹木診断方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、深い専門知識や経験を要することなく樹木診断を可能とする樹木診断システム及び樹木診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記目的を達成するために以下の通りの構成とすることを特徴とする。
【0015】
(1) 本発明の樹木診断システムは、遠隔操作可能なドローンに搭載され、樹木から反射される太陽光の特定波長を上空から取得してマルチスペクトル画像情報を生成するマルチスペクトル画像情報生成手段と、このマルチスペクトル画像情報生成手段にて生成された上記樹木のマルチスペクトル画像情報につき予め設定された第一の診断情報を参照して当該マルチスペクトル画像情報が予め設定された第一の閾値内か否かを判断する第一の判断手段と、この第一の判断手段にて上記第一の閾値外と判断された上記マルチスペクトル画像情報に対応する樹木を特定する樹木特定手段と、この樹木特定手段にて特定された樹木に対し外観診断を実施して外観診断情報を取得する外観診断実施手段と、この外観診断実施手段により取得された外観診断情報につき、予め設定された第二の診断情報を参照して当該外観診断情報が予め設定された第二の閾値内か否かを判断する第二の判断手段と、この第二の判断手段にて上記第二の閾値外と判断された上記外観診断情報に対応する樹木に対し応力波速度測定を実施して当該樹木の応力波速度測定情報を取得する応力波速度測定実施手段と、この応力波速度測定実施手段により取得される応力波速度測定情報につき予め設定された第三の診断情報を参照して当該応力波速度測定情報が予め設定された第三の閾値内か否かを判断する第三の判断手段を具備することを特徴とする。
【0016】
(2) 上記(1)の構成にあって、上記マルチスペクトル画像情報生成手段が搭載されるドローンの飛行経路を記憶管理する飛行経路記憶管理手段を設けたことを特徴とする。
【0017】
(3) 遠隔操作可能で飛行経路を記憶可能とするドローンにて複数の樹木の健全状態を診断する樹木診断方法であって、
上記ドローンに搭載され熱赤外線センサ機能を有するマルチスペクトルカメラにより上記樹木から反射される太陽光の特定波長を上記樹木の上空から取得してマルチスペクトル画像情報として生成し、このマルチスペクトル画像情報につき予め設定された第一の診断情報を参照して当該マルチスペクトル画像情報が予め設定された第一の閾値内か否かを判断し、この判断にて上記第一の閾値外と判断された上記マルチスペクトル画像情報に対応する樹木を特定し、この特定された樹木に対し外観診断を実施して外観診断情報を取得し、この外観診断情報につき予め設定された第二の診断情報を参照して当該外観診断情報が予め設定された第二の閾値内か否かを判断し、この判断にて上記第二の閾値外と判断された上記外観診断情報に対応する樹木に対し応力波速度測定を実施して当該樹木の応力波速度測定情報を取得し、この応力波速度測定情報につき予め設定された第三の診断情報を参照して当該応力波速度測定情報が予め設定された第三の閾値内か否かを判断し、この判断にて上記第三の閾値外と判断された上記応力波速度測定情報に対応する樹木を不健全樹木と判断するようにしたことを特徴とする。
【0018】
上記構成によれば、短時間で多くの樹木を診断対象とすることができ、樹木診断の能率化を図れるものである。
【0019】
また、上記構成によれば、樹木診断に要する人、時間、費用及び管理の面に於いて大きな改善が図れて優位となり、経済的且つ実用的に有用である。
【0020】
さらに、上記構成によれば、深い専門知識や多くの経験を要することなく樹木診断ができるため、診断対象範囲の拡大及び倒伏や落枝による重大事故等発生リスクの早期低減化を実現でき、安心・安全に寄与できるものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、短時間で多くの樹木を診断対象とすることができ、能率化を図った樹木診断を提供できる。
また、本発明によれば、樹木診断に要する時間、費用及び管理の面に於いて優位性を確保できるので、経済的且つ実用的に優れた効果を奏する。
さらに、本発明によれば、専門知識の深さや実務経験に左右されず正確且つ適切な樹木診断が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係わる樹木診断システムの全体構成を模式的に示す図である。
【
図2】同実施形態に係わり、マルチスペクトルカメラの機能構成を模式的に示す図である。
【
図3】同実施形態に係わり、第一の判断部、樹木特定部、外観診断実施部、第二の判断部、応力波速度測定実施部及び第三の判断部他を内設するPCの機能構成を概略的に示す図である。
【
図4】同実施形態に係わり、樹木診断処理全体の流れを概略的に示す図である。
【
図5】同実施形態に係わり、外観診断処理の流れを示す図(フローチャート)である。
【
図6】同実施形態に係わり、精密診断処理の流れを示す図(フローチャート)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下本発明の一実施形態につき、図面を参照して説明する。
【0024】
本実施形態に係わる樹木診断システムは、遠隔操作可能なドローン10、ドローン10に搭載され熱赤外線センサ機能を有し樹木からの太陽光の反射波を受信してマルチスペクトル画像情報を生成する機能を有するマルチスペクトル画像情報生成部たるマルチスペクトルカメラ(以下「カメラ」)100、このマルチスペクトル画像情報を参照して第一の判断を行う機能を有する第一の判断部200、第一の判断部200の判断情報を参照して特定の樹木を識別・特定する機能を有する樹木特定部300、特定された樹木に対して外観診断を実施する機能を有する外観診断実施部400、この外観診断情報を参照して第二の判断を行う機能を有する第二の判断部500、第二の判断部500の判断情報を参照して応力波速度測定を実施する機能を有する応力波速度測定実施部600及びこの応力波速度測定情報を参照して不健全木か否かを判断する機能を有する第三の判断部700とから構成される。
【0025】
さて、ドローン10は、地上から電波で送出されてくる制御信号を受信して地表から高さ150m未満の空域を飛行可能なものである。また、ドローン10には、各種信号情報を送出する送信部(不図示)が設けられており、実際の飛行経路情報を飛行経路記憶管理部800に送出するよう機能構成されている。
【0026】
カメラ100は、例えば赤、緑、青、レッドエッジ及び近赤外線用の五つの高解像度マルチバンドセンサー(マルチバンドセンサー部120)に熱赤外線センサー(熱赤外線センサー部140)を統合したマルチスペクトルカメラであり、特定波長を取得してマルチスペクトル画像及び熱赤外線画像(両者を併せて「マルチスペクトル画像情報」とする)を生成(画像生成部160にて生成)する機能を有する。即ち、樹木から反射される太陽光の特定波長を上空から取得し、マルチスペクトル画像情報を生成する機能を有する。生成されたマルチスペクトル画像情報は、インターフェース180を介して外部へ送出される。
なお、本実施形態では、マルチスペクトル画像及び熱赤外線画像の両者を併せてマルチスペクトル画像情報としたが、マルチバンドセンサー部120にて取得し生成したもののみをマルチスペクトル画像情報としてもよい。
【0027】
第一の判断部200は、パーソナルコンピュータ(PC)20に内設されている。
PC20は、メモリ28に格納された所定のプログラム情報を参照して全体の制御処理を司る機能を有する中央制御処理部22、外部から送出されてくる各種情報を受信しメモリ28の所定の記憶領域に格納する機能を有する入力部24、各種情報を出力し外部へ送出等する出力・送出機能を有する出力部26及び各種作業を行うための作業領域及び中央制御処理部22が各種制御処理・管理をするために参照するプログラム情報を格納する記憶領域であるプログラム情報記憶領域並びに各種情報を格納する記憶領域を有するリード/ライト可能なメモリ28を有し、それぞれが信号線29を介して接続されている。
マルチスペクトル画像情報は、例えば、カメラ100のインターフェース180を介してPC20へ送出され、PC20の中央制御処理部22の管理下で入力部24を介してメモリ28の所定の記憶領域にリード/ライト可能に格納される。
【0028】
第一の判断部200は、予め設定された第一の診断情報を参照して、上記マルチスペクトル画像情報が予め設定された第一の閾値内か否かを判断する機能を有する。
即ち、第一の判断部200は、メモリ28の第一の診断情報記憶領域28aを参照して、上記マルチスペクトル画像情報が第一の閾値内か否か、また第一の閾値外である場合どの程度外れているかを判断する機能を有する。これにより、葉の状態を「枯れた葉」(閾値からσ超外れたもの)、「ストレスを受けた葉」(閾値からσ以内で外れたもの)または「健康な葉」(閾値内)の何れに該当するかを判断する。なお、上記第一の閾値は、第一の診断情報の一部として、第一の診断情報記憶領域28aに格納されていてもよい。
【0029】
樹木特定部300は、PC20に内設され、第一の判断部200にて第一の閾値外と判断された「枯れた葉」または「ストレスを受けた葉」に該当する樹木が存する位置を、中央制御処理部22の管理下でマルチスペクトル画像情報の中から特定する機能を有する。この特定された樹木の情報は、中央制御処理部22の管理下でメモリ28の所定の記憶領域にリード/ライト可能に格納される。
【0030】
なお、樹木特定部300は、PC20外に設けられてもよく、また、カメラ100内に設けられてもよい(不図示)。この場合、上記マルチスペクトル画像情報は、PC20の出力部26を介して樹木特定部300に送出される。樹木特定部300は、送出されてくる上記マルチスペクトル画像情報を、内設される出入力部を介して受信する。
そして、樹木特定部300は、受信したマルチスペクトル画像情報の中から、「枯れた葉」または「ストレスを受けた葉」に該当する樹木が存する位置を特定し、この特定された樹木の情報を、上記出入力部を介してPC20に送出する。PC20は、送出されてくる特定された樹木の情報を、中央制御処理部22の管理下で入力部24を介して受信し、メモリ28の所定の記憶領域にリード/ライト可能に格納する。
換言すると、第一の判断部200及び樹木特定部300による特定は、ドローン10に搭載されたカメラ100にて樹木が存する敷地A全体を撮影した画像を解析して、敷地Aに存する不健全木を特定する空撮診断である。
【0031】
ここで、上記第一の閾値は、例えば、NDVI(Normalized Difference Vegetation Index:正規化植生指標)を基準に設定することができる。
この場合、第一の判断部200は、カメラ100が生成したマルチスペクトル画像情報からNDVIを算出すると共に、算出結果について、以下の基準(第一の閾値)に従い、判断を行う。なお、マルチスペクトル画像情報からNDVIを算出するための情報は、上記第一の診断情報の一部として、第一の診断情報記憶領域28aに格納されている。
<第一の閾値をNDVI=0.1超1.0以下に設定した場合>
第一の閾値内(NDVIの値が、0.1超1.0以下):健康な葉
第一の閾値の上限から0.9以上1.1未満外れたもの(NDVIの値が、-0.1超0.1以下):ストレスを受けた葉
第一の閾値の上限から1.1以上2以下(NDVIの値が、-1.0以上-0.1以下):枯れた葉
なお、上記第一の閾値は、適宜変更することができる。
【0032】
この場合、樹木特定部300は、第一の判断部200の判断結果に基づき、マルチスペクトル画像情報の中から、「枯れた葉」または「ストレスを受けた葉」に該当する樹木が存する位置を特定する。
そして、その特定された樹木の情報は、以下の基準に従い、マルチスペクトル画像情報と合わせた情報(画像)として、PC20内に設けられる表示部(不図示)に表示することができる。
健康な葉:赤色
ストレスを受けた葉:黄色
枯れた葉:青色
また、特定された樹木の情報とマルチスペクトル画像情報とを合わせた情報は、中央制御処理部22の管理下でメモリ28の所定の記憶領域にリード/ライト可能に格納される。
なお、特定された樹木の情報の上記表示部への表示方法(色分け等)は、適宜変更することができる。
【0033】
外観診断実施部400は、PC20に内設され、樹木特定部300にて特定された樹木について、中央制御処理部22の管理下で所定の外観診断により外観診断情報を取得する機能を有する。外観診断としては、打音診断、空洞の有無・深度確認、病害虫の有無・確認、子実体(キノコ)の有無及び樹皮状態等である。これらの外観診断情報は、根、幹及び大枝別に夫々樹木診断票情報として、メモリ28の所定の記憶領域にリード/ライト可能に格納される。
【0034】
なお、外観診断実施部400は、PC20外に設けられてもよい(不図示)。
この場合、樹木特定部300にて特定された樹木の情報は、PC20の出力部26を介して外観診断実施部400に送出される。外観診断実施部400は、送出されてくる上記特定された樹木の情報を、内設される出入力部を介して受信する。
そして、外観診断実施部400は、取得した外観診断情報を、上記出入力部を介してPC20に送出する。PC20は、送出されてくる外観診断情報を、中央制御処理部22の管理下で入力部24を介して受信し、メモリ28の所定の記憶領域にリード/ライト可能に格納する。
【0035】
第二の判断部500は、PC20に内設され、外観診断実施部400により取得される樹木診断票情報について、中央制御処理部22の管理下で予め設定された第二の診断情報を参照して当該樹木診断票情報が予め設定された第二の閾値内か否かを判断する機能を有する。
【0036】
即ち、第二の判断部500は、メモリ28の第二の診断情報記憶領域28bを参照して、当該樹木診断票情報から「不健全木のおそれ」があるか否か、換言すると精密診断を要するか否かを判断する機能を有する。なお、上記第二の閾値は、第二の診断情報の一部として、第二の診断情報記憶領域28bに格納されていてもよい。
【0037】
応力波速度測定実施部600は、PC20に内設され、第二の判断部500にて「不健全木のおそれあり」と判断された樹木について、中央制御処理部22の管理下で精密診断となる応力波速度測定を実施する機能を有する。この精密診断は、対象樹木に打ち込みセンサーを等間隔にセットし、樹木の円周方向に各々の打ち込みセンサーを順に軽打することにより発生するエネルギー(応力波)が受信用センサーに到達するまでの時間を測定するものである。例えば、応力波速度測定実施部600に受信センサーが設けられ、測定された結果の情報(応力波速度測定情報)は、メモリ28の所定の記憶領域にリード/ライト可能に格納される。
【0038】
なお、応力波速度測定実施部600は、PC20外に設けられてもよい(不図示)。この場合、応力波速度測定実施部600は、応力波速度測定情報を、内設される出入力部を介してPC20に送出する。PC20は、送出されてくる応力波速度測定情報を、中央制御処理部22の管理下で入力部24を介して受信し、メモリ28の所定の記憶領域にリード/ライト可能に格納する。
【0039】
第三の判断部700は、PC20に内設され、メモリ28の第三の診断情報記憶領域28cを参照して、中央制御処理部22の管理下で上記応力波速度測定情報が予め設定された第三の閾値内か否かを判断する機能を有する。第三の判断部700が第三の閾値外と認識した樹木は、不健全木と判断される。
なお、上記第三の閾値は、第三の診断情報の一部として、第三の診断情報記憶領域28cに格納されていてもよい。
【0040】
飛行経路記憶管理部800は、ドローン10の送信部から送出されてくる実際の飛行経路情報を入力部24を介して受信し、中央制御処理部22の管理下でメモリ28の飛行経路情報記憶領域28dにリード/ライト可能に格納する機能を有する。ここで、飛行経路記憶管理部800は、PC20に内設することなく、ドローン10にスタンドアロン的に設けてもよく、また単独で設けてもよいことは勿論である。
【0041】
なお、PC20には、大容量データ等をリード/ライト可能なデータベース(DB)が外部接続されている。
【0042】
上記構成につき、樹木診断の流れを以下に説明する。
【0043】
敷地Aに存する樹木を対象に樹木診断を行う場合、先ず、ドローン10にて敷地Aの上空から空撮診断処理(
図4のステップS100乃至ステップS300参照)が実施される。
【0044】
即ち、ドローン10に搭載されたカメラ100が樹木から反射される太陽光の反射波である特定波長を上空から受信・取得し、これに基づきマルチスペクトル画像情報を生成する(ステップS100)。
【0045】
この生成されたマルチスペクトル画像情報について、第一の判断部200は、メモリ28の第一の診断情報記憶領域28aの第一の診断情報を参照して当該マルチスペクトル画像情報が第一の閾値内か否かを判断する(ステップS200)。これにより、樹木の葉の状態が「枯れた葉」、「ストレスを受けた葉」または「健康な葉」の何れに該当するかが判断されることになる。
【0046】
そして、樹木特定部300は、この判断にて第一の閾値外(「枯れた葉」または「ストレスを受けた葉」)と判断されたマルチスペクトル画像情報に対応する樹木を特定する(ステップS300)。これにより、外観診断を要する樹木、即ち不健全木候補の特定がなされる。
【0047】
次に、特定された不健全木候補に対して、外観診断が実施される(ステップS400)。
【0048】
これは、外観診断実施部400が、不健全木候補に対して外観診断を実施して、その結果を樹木診断票情報として取得し(
図5のステップS420参照)、第二の判断部500が、この取得した樹木診断票情報に基づき、メモリ28の第二の診断情報記憶領域28bを参照して、「不健全木のおそれ」があるか否か(第二の閾値内か否か)を判断する(ステップS440)。これにより、外観診断の実施された不健全木候補が精密診断を要するか否かが判明する(ステップS460、ステップS480)。
【0049】
最後に、精密検査が必要と判断された樹木に対して精密診断が実施される(ステップS500)。
【0050】
これは、応力波速度測定実施部600が、精密診断が必要とされた樹木に対して応力波速度測定を実施して当該樹木の応力波速度測定情報を取得し(
図6のステップS520参照)、第三の判断部700が、メモリ28の第三の診断情報記憶領域28cを参照して、この取得した応力波速度測定情報が第三の閾値内か否かを判断する(ステップS540)。この判断により第三の閾値外とされたものについては(ステップS540のY)、不健全木に該当すると判断される(ステップS560)。
【0051】
斯様な樹木診断の実施後、後日定期的または不定期に同地域にて樹木診断を実施する場合、実施した飛行経路が飛行経路記憶管理部800にて管理されているので、同じ飛行経路での空撮診断が行える。
【0052】
上記実施形態によれば、空撮診断により対象樹木を特定可能としたので、従来のように全ての樹木を一本ずつ人手によって確認した上で、診断対象となる樹木を選出する必要がなくなり、短時間で多くの樹木の選出及び診断ができ、樹木診断の能率化向上を図れるものである。従って、樹木診断に要する人、時間、費用及び管理の面に於いて極めて大きな改善が図れ、経済的且つ実用的に有用である。
【0053】
また、上記実施形態によれば、深い専門知識や多くの経験を要することなく診断対象樹木を特定できるため、従来マンパワー不足で実現できなかった地域をも容易に診断対象とすることができ、倒伏や落枝による重大事故等発生リスクの早期低減化を図れ、安心・安全に寄与できるものである。
【0054】
さらに、上記実施形態によれば、ドローン10による空撮診断により、人が入り難い危険な地域であっても、従来に比べて容易に診断対象樹木を特定できるため、積極的な自然環境保全に寄与できるものである。
【0055】
上記実施形態では、第一の判断部200、樹木特定部300、外観診断実施部400、第二の判断部500、応力波速度測定実施部600、第三の判断部700及び飛行経路記憶管理部800をPC20に内設したが、これに限定される必要はない。他に例えば、夫々が独立して設置されてネットワークを介して接続されるよう構成されてもよいことは勿論である。
【0056】
また、不健全木候補を特定する空撮診断に於いては、マルチスペクトル画像情報に航空写真を例えば同一縮尺にて重ね合わせるよう構成してもよいことは勿論である。これにより、さらに精度よく不健全木候補の特定が誰でも容易に行えるものである。
【0057】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない限り種々の変形が可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0058】
10 …ドローン
100 …マルチスペクトルカメラ(マルチスペクトル画像情報生成部)
200 …第一の判断部
300 …樹木特定部
400 …外観診断実施部
500 …第二の判断部
600 …応力波速度測定実施部
700 …第三の判断部
800 …飛行経路記憶管理部