(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044190
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】基板処理方法及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
H01L21/304 645D
H01L21/304 643D
H01L21/304 643A
H01L21/304 647A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149588
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100130580
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 靖
(72)【発明者】
【氏名】宮本 泰治
(72)【発明者】
【氏名】吉田 幸史
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AA22
5F157AA29
5F157AA30
5F157AA35
5F157AA36
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB33
5F157AB90
5F157AC01
5F157BB22
5F157BB73
5F157BC08
5F157BC13
5F157BF12
5F157BF48
5F157BF59
5F157BF96
5F157BG46
5F157CF10
5F157CF14
5F157CF60
5F157CF99
5F157DB02
5F157DB03
(57)【要約】
【課題】基板の表面に設けられた自己組織化単分子膜を、良好に選択的除去することが可能な基板処理方法及び基板処理装置を提供する。
【解決手段】本発明は、表面に自己組織化単分子膜14が設けられた基板Wを処理する基板処理方法であって、酸素原子を含む雰囲気下で、自己組織化単分子膜14に紫外線を照射することにより、自己組織化単分子膜14の表面の撥水性を低下させる紫外線照射工程S104と、紫外線照射工程後の自己組織化単分子膜14に水性自己組織化単分子膜除去液を接触させ、これにより自己組織化単分子膜14を選択的に除去する除去工程S105とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に自己組織化単分子膜が設けられた基板を処理する基板処理方法であって、
酸素原子を含む雰囲気下で、前記自己組織化単分子膜に紫外線を照射することにより、前記自己組織化単分子膜の表面の撥水性を低下させる紫外線照射工程と、
前記紫外線照射工程後の前記自己組織化単分子膜に水性自己組織化単分子膜除去液を接触させ、これにより前記自己組織化単分子膜を選択的に除去する除去工程と、
を含む基板処理方法。
【請求項2】
前記除去工程が、
前記水性自己組織化単分子膜除去液に物理的作用を加えながら、前記水性自己組織化単分子膜除去液を前記紫外線照射工程後の前記自己組織化単分子膜に接触させる工程である請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記除去工程が、
前記水性自己組織化単分子膜除去液に超音波振動を付与しながら、前記水性自己組織化単分子膜除去液を前記紫外線照射工程後の前記自己組織化単分子膜に接触させ、これにより前記自己組織化単分子膜を選択的に除去する工程である請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記除去工程が、
前記水性自己組織化単分子膜除去液に気体を接触させて生成される液滴状の前記水性自己組織化単分子膜除去液を、前記自己組織化単分子膜に接触させることにより、前記自己組織化単分子膜を選択的に除去する工程である請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記紫外線の照射強度が、1mW/cm2以上、50mW/cm2以下の範囲である請求項1~4の何れか1項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記水性自己組織化単分子膜除去液が、少なくとも有機酸を含む請求項1~4の何れか1項に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記水性自己組織化単分子膜除去液の酸解離定数pKaが、-4以上、14以下である請求項1~4の何れか1項に記載の基板処理方法。
【請求項8】
表面に自己組織化単分子膜が設けられた基板を処理する基板処理装置であって、
紫外線を照射する紫外線照射部と、
水性自己組織化単分子膜除去液を前記基板の表面に供給する供給部と、
前記紫外線照射部及び前記供給部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記紫外線照射部に対し、酸素原子を含む雰囲気下で紫外線を前記自己組織化単分子膜に照射させ、これにより前記自己組織化単分子膜の表面の撥水性を低下させ、
前記供給部に対し、前記基板の表面に前記水性自己組織化単分子膜除去液を供給させ、これにより前記自己組織化単分子膜を選択的に除去する基板処理装置。
【請求項9】
前記供給部は超音波付与部を備えており、
前記制御部は、前記超音波付与部を制御することにより、前記水性自己組織化単分子膜除去液に超音波振動を付与する請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記供給部は、液滴状の前記水性自己組織化単分子膜除去液を供給する液滴供給部であり、
前記制御部は、前記液滴供給部を制御することにより、前記水性自己組織化単分子膜除去液に気体を接触させて、液滴状の前記水性自己組織化単分子膜除去液を生成させ、前記自己組織化単分子膜に向けて噴射させる請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記紫外線照射部を制御することにより、前記紫外線の照射強度を1mW/cm2以上、50mW/cm2以下の範囲にする請求項8~10の何れか1項に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記水性自己組織化単分子膜除去液が、少なくとも有機酸を含む請求項8~10の何れか1項に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記水性自己組織化単分子膜除去液の酸解離定数pKaが、-4以上、14以下である請求項8~10の何れか1項に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面に設けられた自己組織化単分子膜を、選択的に除去することが可能な基板処理方法及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造に於いて、基板の特定の表面領域に選択的に膜を形成する技術として、フォトリソグラフィ技術が広く用いられている。例えば、下層配線形成後に絶縁膜を成膜し、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、トレンチ及びビアホールを有するデュアルダマシン構造を形成し、トレンチ及びビアホールにCu等の導電膜を埋め込んで配線を形成する。
【0003】
しかし、近時、半導体デバイスの微細化が益々進んでおり、フォトリソグラフィ技術では位置合わせ精度が十分でない場合も生じている。このため、フォトリソグラフィ技術に替えて、基板表面の特定領域に高精度で選択的に膜を形成する手法が求められている。
【0004】
例えば、特許文献1には、膜形成を望まない基板領域の表面に自己組織化単分子膜(Self-Assembled Monolayer:SAM)を形成し、SAMが形成されていない基板領域に選択的に膜形成をする成膜方法が開示されている。またこの特許文献1では、選択的な膜形成の後、酢酸を用いてSAMを除去することが開示されている。
【0005】
しかし特許文献1に開示の成膜方法では、酢酸によるSAMの選択的除去が十分ではないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は基板の表面に設けられた自己組織化単分子膜を、良好に選択的除去することが可能な基板処理方法及び基板処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の基板処理方法は、前記の課題を解決するために、表面に自己組織化単分子膜が設けられた基板を処理する基板処理方法であって、酸素原子を含む雰囲気下で、前記自己組織化単分子膜に紫外線を照射することにより、前記自己組織化単分子膜の表面の撥水性を低下させる紫外線照射工程と、前記紫外線照射工程後の前記自己組織化単分子膜に水性自己組織化単分子膜除去液を接触させ、これにより前記自己組織化単分子膜を選択的に除去する除去工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
前記の構成によれば、紫外線照射工程は、酸素原子を含む存在下で紫外線を照射する。より具体的には、例えば、酸素(O2)及び水分を含む大気中、又は酸素を供給した状態で紫外線を照射する。これにより、酸素原子、オゾン、OHラジカル等の活性酸素種を生成させる。あるいは、紫外線の照射は、活性酸素種を供給しながら行ってもよい。これにより、自己組織化単分子膜を形成している単分子(有機組成物)の直鎖等の結合部分を切断することができる。その結果、自己組織化単分子膜の表面の撥水性を低下させて改質することができる。
【0010】
また除去工程では、紫外線照射後の自己組織化単分子膜に水性自己組織化単分子膜除去液が供給される。自己組織化単分子膜の表面は紫外線照射によりその撥水性が低下しているため、水性自己組織化単分子膜除去液に対する濡れ性が向上している。これにより、自己組織化単分子膜の表面で水性自己組織化単分子膜除去液が広がりやすくなっており、自己組織化単分子膜の除去を促進することができる。
【0011】
すなわち、前記構成の基板処理方法であると、従来の基板処理方法と比較して、基板の表面に設けられた自己組織化単分子膜の選択的な除去を良好に行うことができる。
【0012】
前記の構成に於いては、前記除去工程が、前記水性自己組織化単分子膜除去液に物理的作用を加えながら、前記水性自己組織化単分子膜除去液を前記紫外線照射工程後の前記自己組織化単分子膜に接触させる工程であることが好ましい。除去工程に於いて、水性自己組織化単分子膜除去液に物理的作用を加えることにより、水性自己組織化単分子膜除去液が自己組織化単分子膜に接触した際、当該自己組織化単分子膜にこの物理的作用を間接的に作用させることができる。その結果、自己組織化単分子膜の基板からの剥離を促進し、自己組織化単分子膜の選択的な除去をさらに良好に行うことができる。
【0013】
前記の構成に於いては、前記除去工程が、前記水性自己組織化単分子膜除去液に超音波振動を付与しながら、前記水性自己組織化単分子膜除去液を前記紫外線照射工程後の前記自己組織化単分子膜に接触させ、これにより前記自己組織化単分子膜を選択的に除去する工程であってもよい。自己組織化単分子膜表面に供給する水性自己組織化単分子膜除去液に、物理的作用として超音波振動を付与することで、当該水性自己組織化単分子膜除去液が自己組織化単分子膜に接触する際に、超音波振動を自己組織化単分子膜に伝搬させることができる。その結果、自己組織化単分子膜が基板から剥離するのを促進し、自己組織化単分子膜の選択的な除去を一層良好に行うことができる。
【0014】
また前記の構成に於いては、前記除去工程が、前記水性自己組織化単分子膜除去液に気体を接触させて生成される液滴状の前記水性自己組織化単分子膜除去液を、前記自己組織化単分子膜に接触させることにより、前記自己組織化単分子膜を選択的に除去する工程であってもよい。自己組織化単分子膜表面に供給する水性自己組織化単分子膜除去液に、物理的作用として気体を接触させることで、液滴状の水性自己組織化単分子膜除去液を自己組織化単分子膜に衝突させて接触させることができる。そして、その衝撃により自己組織化単分子膜が基板から剥離するのを促進し、自己組織化単分子膜の選択的な除去を一層良好に行うことができる。
【0015】
前記の構成に於いては、前記紫外線の照射強度が、1mW/cm2以上、50mW/cm2以下の範囲であることが好ましい。紫外線の照射強度を1mW/cm2以上にすることにより、自己組織化単分子膜表面の撥水性を良好に低下させ、水性自己組織化単分子膜除去液の自己組織化単分子膜に対する濡れ性を良好に維持することができる。
【0016】
前記の構成に於いては、前記水性自己組織化単分子膜除去液が、少なくとも有機酸を含むことが好ましい。水性自己組織化単分子膜除去液が有機酸を含むことにより、水性自己組織化単分子膜除去液の自己組織化単分子膜に対する濡れ性及び浸透性をさらに向上させることができる。これにより、自己組織化単分子膜の選択的な除去を一層良好に行うことができる。
【0017】
前記の構成に於いては、前記水性自己組織化単分子膜除去液の酸解離定数pKaが、-4以上、14以下であることが好ましい。水性自己組織化単分子膜除去液の酸解離定数pKaを-4以上にすることにより、例えば基板上にCu膜等の金属膜やAl2O3膜等が設けられている場合にも、水性自己組織化単分子膜除去液によりこれらの膜が不必要にエッチングされるのを防止又は低減することができる。
【0018】
本発明の基板処理装置は、前記の課題を解決するために、表面に自己組織化単分子膜が設けられた基板を処理する基板処理装置であって、紫外線を照射する紫外線照射部と、水性自己組織化単分子膜除去液を前記基板の表面に供給する供給部と、前記紫外線照射部及び前記供給部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記紫外線照射部に対し、酸素原子を含む雰囲気下で紫外線を前記自己組織化単分子膜に照射させ、これにより前記自己組織化単分子膜の表面の撥水性を低下させ、前記供給部に対し、前記基板の表面に前記水性自己組織化単分子膜除去液を供給させ、これにより前記自己組織化単分子膜を選択的に除去することを特徴とする。
【0019】
前記の構成によれば、制御部は、紫外線照射部に対し、酸素原子を含む雰囲気下で紫外線を前記自己組織化単分子膜に照射させる。より具体的には、例えば、酸素(O2)及び水分を含む大気中、又は酸素を供給した状態で紫外線を照射させる。これにより、酸素原子、オゾン、OHラジカル等の活性酸素種を生成させる。あるいは、制御部は、活性酸素種の供給下で紫外線照射部に紫外線を照射させる。これにより、自己組織化単分子膜を形成している単分子(有機組成物)の直鎖等の結合部分を切断することができる。その結果、自己組織化単分子膜の表面の撥水性を低下させて改質することができる。
【0020】
また制御部は、供給部に対し、紫外線照射後の自己組織化単分子膜に水性自己組織化単分子膜除去液を供給させる。自己組織化単分子膜の表面は、紫外線照射部による紫外線照射により撥水性が低下しているため、水性自己組織化単分子膜除去液に対する濡れ性が向上している。これにより、自己組織化単分子膜の表面で水性自己組織化単分子膜除去液が広がりやすくなっており、自己組織化単分子膜の除去を促進することができる。
【0021】
すなわち、前記構成の基板処理装置であると、従来の基板処理装置と比較して、基板の表面に設けられた自己組織化単分子膜の選択的な除去を良好に行うことができる。
【0022】
前記の構成に於いて、前記供給部は超音波付与部を備えており、前記制御部は、前記超音波付与部を制御することにより、前記水性自己組織化単分子膜除去液に超音波振動を付与するものであってもよい。これにより、超音波振動が付与された水性自己組織化単分子膜除去液を自己組織化単分子膜に供給することができ、当該水性自己組織化単分子膜除去液が自己組織化単分子膜に接触する際に、超音波振動を自己組織化単分子膜に伝搬させることができる。その結果、自己組織化単分子膜が基板から剥離するのを促進し、自己組織化単分子膜の選択的な除去を一層良好に行うことができる。
【0023】
前記の構成に於いて、前記供給部は、液滴状の前記水性自己組織化単分子膜除去液を供給する液滴供給部であり、前記制御部は、前記液滴供給部を制御することにより、前記水性自己組織化単分子膜除去液に気体を接触させて、液滴状の前記水性自己組織化単分子膜除去液を生成させ、前記自己組織化単分子膜に向けて噴射させるものであってもよい。供給部として液滴供給部を用いることにより、液滴状の水性自己組織化単分子膜除去液を自己組織化単分子膜に衝突させて供給することができる。そして、その衝撃により自己組織化単分子膜が基板から剥離するのを促進し、自己組織化単分子膜の選択的な除去を一層良好に行うことができる。
【0024】
前記の構成に於いて、前記制御部は、前記紫外線照射部を制御することにより、前記紫外線の照射強度を1mW/cm2以上、50mW/cm2以下の範囲にすることが好ましい。制御部が、紫外線の照射強度を1mW/cm2以上となるように紫外線照射部を制御することにより、自己組織化単分子膜表面の撥水性を良好に低下させ、水性自己組織化単分子膜除去液の自己組織化単分子膜に対する濡れ性を良好に維持することができる。
【0025】
前記の構成に於いては、前記水性自己組織化単分子膜除去液が、少なくとも有機酸を含むことが好ましい。水性自己組織化単分子膜除去液が有機酸を含むことにより、水性自己組織化単分子膜除去液の自己組織化単分子膜に対する濡れ性及び浸透性を向上させることができる。これにより、自己組織化単分子膜の選択的な除去を一層良好に行うことができる。
【0026】
前記の構成に於いては、前記水性自己組織化単分子膜除去液の酸解離定数pKaが、-4以上、14以下であることが好ましい。水性自己組織化単分子膜除去液の酸解離定数pKaを-4以上にすることにより、例えば基板上にCu膜等の金属膜やAl2O3膜等が設けられている場合にも、水性自己組織化単分子膜除去液によりこれらの膜が不必要にエッチングされるのを防止又は低減することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、保護膜としての自己組織化単分子膜を選択的かつ良好に除去することが可能な基板処理方法及び基板処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理方法の全体的な流れの一例を示すフローチャートである。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る膜形成方法に於ける基板の状態変化の一例を示す模式図であって、同図(a)は自己組織化単分子膜の形成材料を基板表面に供給する様子を表し、同図(b)は基板表面の金属膜形成領域に自己組織化単分子膜が形成された様子を表し、同図(c)は基板表面の金属膜非形成領域に膜が形成された様子を表す。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る膜形成方法に於ける基板の状態変化の一例を示す模式図であって、同図(a)は自己組織化単分子膜に紫外線を照射する様子を表し、同図(b)は基板表面の金属膜形成領域の自己組織化単分子膜が除去された様子を表す。
【
図4】本発明の第1実施形態の基板処理装置に於ける供給装置の概略を表す説明図である。
【
図5】本発明の第1実施形態の基板処理装置に於ける除去装置の概略を表す説明図である。
【
図6】
図6(a)は本発明の第1実施形態に係る除去装置に於ける超音波ノズルの概略を表す斜視図であり、
図6(b)は超音波ノズルの概略を表す縦断面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る基板処理方法の全体的な流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の第2実施形態の基板処理装置に於ける除去装置の概略を表す説明図である。
【
図9】本発明の第2実施形態の除去装置に於ける2流体ノズルの概略を表す断面図である。
【
図10】
図10(a)及び
図10(b)は、Cu膜上のX線光電子スペクトルを表すグラフを表す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1実施形態)
<基板処理方法>
本発明の第1実施形態に係る基板処理方法について、
図1~
図3を参照しながら以下に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る基板処理方法の全体的な流れの一例を示すフローチャートである。
図2(a)~
図2(c)は本発明の第1実施形態に係る膜形成方法に於ける基板の状態変化の一例を示す模式図であって、同図(a)は自己組織化単分子膜の形成材料を基板表面に供給する様子を表し、同図(b)は基板表面の金属膜形成領域に自己組織化単分子膜が形成された様子を表し、同図(c)は基板表面の金属膜非形成領域に膜が形成された様子を表す。
図3(a)及び
図3(b)は本発明の第1実施形態に係る膜形成方法に於ける基板の状態変化の一例を示す模式図であって、同図(a)は自己組織化単分子膜に紫外線を照射する様子を表し、同図(b)は基板表面の金属膜形成領域の自己組織化単分子膜が除去された様子を表す。
【0030】
本実施形態の基板処理方法は、基板Wの表面に膜を形成する際に、基板表面の材質に応じて選択的に成膜するための技術を提供するものである。尚、本明細書に於いて「基板」とは、半導体基板、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板等の各種基板をいう。
【0031】
本実施形態の基板処理方法は、
図1に示すように、基板Wの準備工程S101と、SAMを形成するための自己組織化単分子膜形成工程S102と、膜形成工程S103と、SAMに紫外線を照射する紫外線照射工程S104と、SAMを除去する除去工程S105とを少なくとも含む。
【0032】
基板Wの準備工程S101で準備される基板Wは、
図1及び
図2(a)に示すように、金属膜11が露出して形成された金属膜形成領域と、絶縁膜12が露出して形成された金属膜非形成領域とを含む。基板Wとしては、より具体的には、例えば、任意の配線幅のトレンチが形成された絶縁膜12と、当該トレンチに埋め込まれた金属膜11とを有するものが挙げられる。尚、基板Wの準備工程は、例えば、基板搬入出機構により基板Wを収容する容器であるチャンバ(詳細については後述する。)の内部に基板Wを搬入することを含み得る。
【0033】
金属膜形成領域及び金属膜非形成領域は、
図2(a)では1つずつ形成されているが、それぞれ複数形成されていてもよい。例えば、隣り合う帯状の金属膜形成領域の間に帯状の金属膜非形成領域が介在されるように配置されてもよく、隣り合う帯状の金属膜非形成領域の間に帯上の金属膜形成領域が介在されるように配置されてもよい。
【0034】
また本実施形態の基板Wは、その表面に金属膜形成領域及び金属膜非形成領域のみが設けられている場合に限定されるものではない。例えば、金属膜11及び絶縁膜12とは異なる材料からなる他の膜が、表面に露出して形成される領域が設けられていてもよい。この場合、当該領域が設けられる位置は特に限定されず、任意に設定することができる。
【0035】
金属膜11としては特に限定されず、例えば、銅(Cu)、タングステン(W)、ルテニウム(Ru)、ゲルマニウム(Ge)、ケイ素(Si)、窒化チタン(TiN)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)等からなるものが挙げられる。
【0036】
また絶縁膜12としては特に限定されず、例えば、酸化ケイ素(SiO2)、酸化ハフニウム(HfO2)、ジルコニア(ZrO2)、窒化ケイ素(SiN)等からなるものが挙げられる。
【0037】
SAM形成工程S102で使用される処理液は、SAMを形成する材料(以下、「SAM形成材料」という。)13と、溶媒とを少なくとも含む。SAM形成材料は溶媒に溶解していてもよく、分散していてもよい。
【0038】
SAM形成材料13としては特に限定されず、例えば、モノホスホン酸、ジホスホン酸等のホスホン酸基を有するホスホン酸化合物が挙げられる。これらのホスホン酸化合物は単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0039】
モノホスホン酸としては特に限定されず、例えば、一般式R-P(=O)(OH)2(式中、Rは炭素数1~18で表されるアルキル基;炭素数1~18の範囲内であって、フッ素原子を有するアルキル基;又はビニル基を表す。)で表されるホスホン酸化合物が挙げられる。尚、本明細書に於いて炭素数の範囲を表す場合、その範囲は当該範囲に含まれる全ての整数の炭素数を含むことを意味する。従って、例えば「炭素数1~3」のアルキル基とは、炭素数が1、2及び3の全てのアルキル基を意味する。
【0040】
炭素数1~18で表されるアルキル基は、直鎖状及び分岐状の何れでもよい。さらにアルキル基の炭素数は、10~18の範囲が好ましく、14~18の範囲がより好ましい。また、炭素数1~18の範囲内であって、フッ素原子を有するアルキル基は、直鎖状及び分岐状の何れでもよい。さらにフッ素原子を有するアルキル基の炭素数は、10~18の範囲が好ましく、14~18の範囲がより好ましい。
【0041】
さらに前記R-P(=O)(OH)2で表されるモノホスホン酸としては、具体的には、例えば、以下の化学式(1)~(16)の何れかで表される化合物が挙げられる。
【0042】
【0043】
またモノホスホン酸としては、前述の例示したものの他に以下の化学式(17)~(19)の何れかで表される化合物も用いることができる。
【0044】
【0045】
ジホスホン酸としては、以下の化学式(20)及び(21)の何れかで表される化合物が挙げられる。
【0046】
【0047】
例示したホスホン酸化合物のうち、緻密なSAM形成の観点からは、オクタデシルホスホン酸(Octadecylphosphonic acid)等が好ましい。
【0048】
処理液に於ける溶媒としては特に限定されず、例えば、アルコール溶媒、エーテル溶媒、グリコールエーテル溶媒、グリコールエステル溶媒等が挙げられる。アルコール溶媒としては特に限定されず、例えば、エタノール等が挙げられる。エーテル溶媒としては特に限定されず、例えば、テトラヒドロフラン(THF)等が挙げられる。グリコールエーテル溶媒としては特に限定されず、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等が挙げられる。グリコールエステル溶媒としては特に限定されず、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等が挙げられる。これらの溶媒は単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。また、これらの溶媒は、前述の例示したホスホン酸化合物と任意に組み合わせて用いることができる。例示した溶媒のうちホスホン酸化合物を溶解させることができるとの観点からは、アルコール溶媒が好ましく、エタノールが特に好ましい。
【0049】
SAM形成材料13の含有量は、処理液の全質量に対し、0.0004質量%~0.2質量%の範囲内が好ましく、0.004質量%~0.08質量%の範囲内がより好ましく、0.02質量%~0.06質量%の範囲内が特に好ましい。
【0050】
また処理液には、本発明の効果を阻害しない範囲で公知の添加剤を含有させてもよい。添加剤としては特に限定されず、例えば、安定剤、及び界面活性剤等が挙げられる。
【0051】
SAM形成工程S102は、
図1、
図2(a)及び
図2(b)に示すように、処理液を基板Wの表面に接触させ、金属膜11の表面に処理液中に含まれるSAM形成材料13を吸着させることにより、SAM14を形成する工程である。ここで、SAM14は基板Wの金属膜形成領域の金属膜11上にのみ選択的に形成され、金属膜非形成領域には形成されない。SAM14が金属膜11上にのみ形成されるのは、例えば、金属膜11がCu(銅)膜である場合、SAM形成材料13であるホスホン酸化合物のホスホン酸基と、Cu膜表面の-OH基とが以下の化学反応式で表されるように反応するためである。
【0052】
【0053】
処理液を基板Wに接触させる方法としては特に限定されず、例えば、処理液を基板Wの表面に塗布する方法や処理液を基板Wの表面に噴霧する方法、基板Wを処理液中に浸漬させる方法等が挙げられる。
【0054】
処理液を基板Wの表面に塗布する方法としては、例えば、基板Wをその中央部を軸にして一定速度で回転させた状態で、処理液を基板Wの表面の中央部に供給することにより行う方法が挙げられる。これにより、基板Wの表面に供給された処理液は、基板Wが回転することにより生ずる遠心力によって、基板Wの表面中央付近から基板Wの周縁部に向かって流動し、基板Wの表面の全面に拡散される。その結果、基板Wの表面の全面が処理液で覆われて、当該処理液の液膜が形成される。
【0055】
SAM形成工程S102は、例えば、不活性ガスの雰囲気下で行うことができる。
【0056】
SAM形成工程S102に於いては、基板Wの表面に残存する処理液を除去する工程を含み得る。処理液を除去する工程としては特に限定されず、例えば、基板Wを一定速度で回転させることにより遠心力で処理液を振り切る工程等が挙げられる。
【0057】
また、処理液を遠心力により振り切る工程を行う場合、基板Wの回転数としては処理液を十分に振り切れる程度であれば特に限定されないが、通常は800rpm~2500rpmの範囲で設定され、好ましくは1000rpm~2000rpm、より好ましくは1200rpm~1500rpmである。
【0058】
膜形成工程S103は、
図1及び
図2(c)に示すように、目的とする膜15を金属膜非形成領域の絶縁膜12上に形成する工程である。このとき、金属膜形成領域に形成されたSAM14が金属膜11の保護膜としてマスクする機能を果たす。これにより、目的とする膜15を金属膜非形成領域に選択的に形成することができる。
【0059】
目的とする膜15としては特に限定されず、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化コバルト(CoO)、又は酸化ジルコニウム(ZrO2)等からなる膜が挙げられる。またこれらの膜15を形成する方法としては特に限定されず、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成膜)法、ALD(Atomic Layer Deposition:原子層堆積)法、真空蒸着、スパッタリング、メッキ、サーマルCVD及びサーマルALD等が挙げられる。
【0060】
紫外線照射工程S104は、
図1及び
図3(a)に示すように、SAM14に紫外線を照射してSAM14の撥水性を低下させる工程である。
【0061】
本工程は、少なくとも基板Wの表面を、酸素原子を含む雰囲気下にして行われる。例えば、酸素(O2)及び/又は水分を含む雰囲気下(大気下を含む。)で紫外線を照射した場合、酸素原子、オゾン及びOHラジカル等の活性酸素種を生成させることができる。この活性酸素種は、自己組織化単分子膜に接触すると、当該自己組織化単分子膜を形成している単分子(有機組成物)の直鎖等の結合部分を切断することができる。これにより、自己組織化単分子膜の表面の撥水性を低下させ表面改質をすることができる。また本工程は、酸素原子、オゾン及びOHラジカル等の活性酸素種の存在下又は供給下で行ってもよい。
【0062】
照射する紫外線の波長域は380nm以下であれば特に限定されないが、SAM14の表面の撥水性低下を促進するとの観点からは、254nm以下であることが好ましい。
【0063】
紫外線の照射強度は、1mW/cm2以上、50mW/cm2以下であることが好ましく、3mW/cm2以上、30mW/cm2以下であることがより好ましく、5mW/cm2以上、20mW/cm2以下であることが特に好ましい。紫外線の照射強度を1mW/cm2以上にすることにより、SAM14表面の撥水性を低下させ、後述の水性自己組織化単分子膜除去液のSAM14に対する濡れ性を良好に維持することができる。
【0064】
紫外線の照射時間は、1分間以上、60分間以下であることが好ましく、5分間以上、30分間以下であることがより好ましく、10分間以上、20分間以下であることが特に好ましい。紫外線の照射時間を1分間以上にすることにより、SAM14表面の撥水性を低下させ、後述の水性自己組織化単分子膜除去液のSAM14に対する濡れ性を良好に維持することができる。
【0065】
紫外線の照射回数は特に限定されないが、1度である方が好ましい。これにより、膜15等の損傷を防止又は低減することができる。
【0066】
紫外線照射後のSAM14表面の接触角(23℃)は、DIW(Deionized Water)に対し0°以上、40°以下であることが好ましく、0°以上、30°以下であることがより好ましく、0°以上、20°以下であることが特に好ましい。接触角が40°以下であると、除去液に対する濡れ性を良好に維持することができる。その結果、SAM14の選択的な除去を良好に行うことができる。尚、接触角の測定方法として特に限定されず、例えば、後述の方法を採用することができる。
【0067】
除去工程S105は、
図1及び
図3(b)に示すように、膜15を形成する工程の実行後に、金属膜形成領域に形成されたSAM14を除去する工程である。本工程に於いてSAM14の除去は、超音波振動を付与した水性自己組織化単分子膜除去液(以下、「除去液」という。)を少なくともSAM14に接触させることにより行う。SAM14は、紫外線照射工程S104に於いて撥水性が低下するように表面改質されているため、除去液のSAM14に対する濡れ性が向上している。そのため、除去液によるSAM14の溶解をより効果的に行うことができる。また、除去液には超音波振動が付与されているため、SAM14に接触した際、SAM14に超音波振動を伝搬させることができる。その結果、除去液のSAM14に対する浸透性を向上させ、SAM14の基板Wからの剥離を促進させることができる。これにより本工程では、
図3(b)に示すように、金属膜非形成領域にのみ膜15が選択的に形成され、かつ金属膜11が露出した基板Wを得ることができる。ここで、SAM14の除去とは、SAM14が除去液で溶解して除去される場合の他、基板Wから脱離(剥離)する場合を含む意味である。
【0068】
除去液としては、水性であり、SAM14を選択的に除去できるものであれば特に限定されない。除去液は水性であるため、撥水性が低下するように表面改質されたSAM14の表面に対しては、良好な濡れ性を発揮させることができる。尚、本明細書に於いて「水性」とは、水で希釈可能な液体組成、又は水を含む液体組成を有することを意味する。除去液としては、具体的には、例えば、マレイン酸、メチルホスホン酸、酢酸等の有機酸や、塩酸等を含むものが挙げられる。また、除去液には、水性溶媒が含まれていてもよい。水性溶媒としては、水等が挙げられる。
【0069】
除去液に於ける有機酸の濃度としては特に限定されないが、通常は、除去液の全質量に対し、1質量%以上、100質量%以下であることが好ましく、1質量%以上、50質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上、20質量%以下であることが特に好ましい。
【0070】
また除去液の酸解離定数pKaは、-4以上、14以下であることが好ましく、0以上、10以下であることがより好ましく、1.96以上、4.76以下であることが特に好ましい。除去液としてpKaが-4以上のものを用いることにより、Cu膜等の金属膜11やAl2O3膜等の膜15が、除去液により不必要にエッチングされるのを防止又は低減することができる。
【0071】
除去液をSAM14に接触させる方法としては特に限定されず、例えば、除去液を基板Wの表面に塗布する方法や除去液を基板Wの表面に噴霧する方法、基板Wを除去液中に浸漬させる方法等が挙げられる。
【0072】
除去液を基板Wの表面に塗布する方法としては、例えば、基板Wをその中央部を軸にして一定速度で回転させた状態で、除去液を基板Wの表面の中央部に供給することにより行う方法が挙げられる。これにより、基板Wの表面に供給された除去液は、基板Wが回転することにより生ずる遠心力によって、基板Wの表面中央付近から基板Wの周縁部に向かって流動し、基板Wの表面の全面に拡散される。その結果、基板Wの表面の全面が除去液で覆われて、当該除去液の液膜が形成される。
【0073】
除去工程S105は、例えば、不活性ガスの雰囲気下で行うことができる。
【0074】
除去工程S105に於いては、基板Wの表面に残存する除去液を除去する工程を含み得る。除去液を除去する工程としては特に限定されず、例えば、基板Wを一定速度で回転させることにより遠心力で除去液を振り切る工程等が挙げられる。
【0075】
また、除去液を遠心力により振り切る工程を行う場合、基板Wの回転数としては除去液を十分に振り切れる程度であれば特に限定されないが、通常は800rpm~2500rpmの範囲で設定され、好ましくは1000rpm~2000rpm、より好ましくは1200rpm~1500rpmである。
【0076】
以上のように、本実施形態の基板処理方法によれば、SAM14の除去工程S105の前に予め紫外線を照射してSAM14の撥水性を低下させるので、除去液をSAM14の表面に良好に濡れさせることができる。また除去液には、物理的作用として超音波振動が付与されているため、除去液がSAM14に接触する際、超音波振動を伝搬させることで、除去液のSAM14への浸透性を向上させ、SAM14の基板Wからの剥離を促進させることができる。その結果、本実施形態の基板処理方法であると、従来の基板処理方法と比較して、SAM14の選択的な除去を良好に行うことができる。
【0077】
<基板処理装置>
次に、第1実施形態に係る基板処理装置について、
図4~
図6に基づき説明する。
図4は、本実施形態の基板処理装置に於ける除去液の供給装置を表す説明図である。
図5は、本実施形態に係る基板処理装置の除去装置を表す説明図である。
図6(a)は、本実施形態の除去装置に於ける超音波ノズルの概略を表す斜視図であり、
図6(b)は超音波ノズルの概略を表す縦断面図である。
【0078】
本実施形態の基板処理装置は、
図4及び
図5に示すように、除去液を供給するための供給装置100と、SAM14を除去するための除去装置200と、基板処理装置の各部を制御するための制御部300とを少なくとも備える。
【0079】
[供給装置]
本実施形態に係る供給装置100は、
図4に示すように、除去液を除去装置200に供給する機能を有しており、除去液タンク111と、加圧部112と、配管113とを少なくとも備える。
【0080】
除去液タンク111は、除去液タンク111内の処理液を撹拌する撹拌部、及び除去液タンク111内の処理液の温度調整を行う温度調整部を備えてもよい(何れも図示しない。)。撹拌部としては、除去液タンク111内の除去液を撹拌する回転部と、回転部の回転を制御する撹拌制御部を備えるものが挙げられる。撹拌制御部は制御部300と電気的に接続され、回転部は、例えば、回転軸の下端にプロペラ状の攪拌翼を備えている。制御部300が撹拌制御部に動作指令を行うことで回転部を回転させ、これにより攪拌翼で除去液を撹拌させることができる。その結果、除去液タンク111内で、除去液の濃度及び温度を均一にすることができる。
【0081】
加圧部112は、除去液タンク111内を加圧する気体の供給源である窒素ガス供給源116、窒素ガスを加圧するポンプ(図示しない)、窒素ガス供給管114及び窒素ガス供給管114の経路途中に設けられたバルブ115を備える。窒素ガス供給源116は窒素ガス供給管114により除去液タンク111と管路接続されている。除去液タンク111内には、制御部300と電気的に接続した気圧センサ(図示しない)を設けることができる。この場合、制御部300は、気圧センサが検出した値に基づいてポンプの動作を制御することにより、除去液タンク111内の気圧を大気圧より高い所定の気圧に維持することができる。また、バルブ115も制御部300と電気的に接続させることにより、バルブ115の開閉を制御部300の動作指令によって制御することができる。
【0082】
配管113は除去装置200と管路接続されている。配管113の途中経路にはバルブ113aが設けられている。バルブ113aは制御部300と電気的に接続されており、バルブ113aの開閉を制御部300の動作指令によって制御することができる。制御部300の動作指令によりバルブ113a及びバルブ115が開栓されると、処理液が配管113を介して除去装置200に供給(圧送)される。
【0083】
[除去装置]
次に、除去装置200について、
図5に基づき説明する。
本実施形態に係る除去装置200は、金属膜11上に形成されたSAM14を除去することが可能な枚葉式の除去装置である。
【0084】
除去装置200は、
図5に示すように、基板Wを保持する基板保持部210と、基板Wの表面Wfに除去液を供給する供給部220と、基板Wを収容する容器であるチャンバ230と、除去液を捕集する飛散防止カップ240と、紫外線照射部250とを少なくとも備える。また、除去装置200は基板Wを搬入又は搬出する搬入出手段(図示しない)を備えることもできる。
【0085】
基板保持部210は基板Wを保持する手段であり、
図5に示すように、基板表面Wfを上方に向けた状態で基板Wを略水平姿勢に保持して回転させるものである。この基板保持部210は、スピンベース212と回転支軸213とが一体的に結合されたスピンチャック211を有している。スピンベース212は平面視に於いて略円形形状を有しており、その中心部に、略鉛直方向に延びる中空状の回転支軸213が固定されている。回転支軸213はモータを含むチャック回転機構214の回転軸に連結されている。チャック回転機構214は円筒状のケーシング215内に収容され、回転支軸213はケーシング215により、鉛直方向の回転軸周りに回転自在に支持されている。
【0086】
チャック回転機構214は、制御部300のチャック駆動部(図示しない)からの駆動により回転支軸213を回転軸周りに回転することができる。これにより、回転支軸213の上端部に取り付けられたスピンベース212が回転軸J周りに回転する。制御部300は、チャック駆動部を介してチャック回転機構214を制御して、スピンベース212の回転速度を調整することができる。
【0087】
スピンベース212の周縁部付近には、基板Wの周端部を把持するための複数個のチャックピン216が立設されている。チャックピン216の設置数は特に限定されないが、円形状の基板Wを確実に保持するために、少なくとも3個以上設けることが好ましい。本実施形態では、スピンベース212の周縁部に沿って等間隔に3個配置する。それぞれのチャックピン216は、基板Wの周縁部を下方から支持する基板支持ピンと、基板支持ピンに支持された基板Wの外周端面を押圧して基板Wを保持する基板保持ピンとを備えている。
【0088】
供給部220は基板保持部210の上方位置に配置されており、供給装置100から供給される除去液を基板Wの表面Wf上に供給する。供給部220は、
図5、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、超音波付与部と、アーム222とを備える。
【0089】
超音波付与部は、超音波ノズル221と、超音波発振器(図示しない。)とを備える。超音波ノズル221は、水平に延設されたアーム222の先端部に取り付けられており、除去液を吐出する際にはスピンベース212の上方に配置される。超音波ノズル221は、胴部221aと、胴部221aの下部に設けられたノズル先端部221bとを有し、全体形状が有蓋円筒形状となっている。
【0090】
超音波ノズル221は、その内部に除去液を充填することが可能な充填空間FSを有している。ノズル先端部221bは、下方に向かうに従い先細りとなっており、
図6(b)に示すように、縦断面の形状に於いては略V字形となっている。ノズル先端部221bには、充填空間FS内に供給された除去液を基板Wの表面に向けて吐出するための吐出口228が設けられている。吐出口228の開口面積は、胴部221aの横断面(処理液の吐出方向と略直交する断面)の面積に比べて小さくなっている。そのため、ノズル先端部221bの横断面の面積は、上部(胴部221aの横断面)から下部(吐出口228の開口面)に向かうに従い徐々に縮径している。胴部221aの側面には充填空間FSに除去液を供給する供給口224が設けられている。供給口224は、供給装置100の配管113と連通接続している。
【0091】
また超音波ノズル221は、
図6(b)に示すように、胴部221aの内部に於いて超音波振動子225を備えている。超音波振動子225は、吐出口228と対向するように、胴部221aの上壁面に設けられている。超音波振動子225には、ケーブル226が電気的に接続されており、ケーブル226は、超音波発振器に電気的に接続されている。さらに超音波発振器は制御部300と電気的に接続されており、制御部300からの動作指令に応じて超音波振動子225に超音波を発振させ、充填空間FS内の除去液に超音波振動を付与する。これにより、除去液中にキャビテーションを発生させ、微少な気泡を生じさせる。超音波振動子225の表面には、石英又は高純度SiC(炭化珪素)の薄板が貼り付けられている。尚、超音波ノズル221は、耐薬品性の観点からPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)又は石英で形成されているが、胴部221aをPTFEとし、ノズル先端部221b(または吐出口228の周辺部のみ)を石英として組み合わせて構成してもよい。
【0092】
さらに超音波ノズル221は、胴部221a内部に於ける超音波振動子225の下方に、複数の板状部材227が設けられている。複数の板状部材227は、除去液の流れを阻害しないように設けられるのが好ましい。
図6(b)では、複数の板状部材227は、相互に等間隔となるように、かつ除去液の吐出方向Pと略平行に配列して設けられている。板状部材227を設けることで、除去液中に発生するキャビテーションによる気泡の量を増加させることができる。尚、板状部材227は、超音波ノズル221と同様、耐薬品性を有する材料により作製されたものが好ましい。
【0093】
また供給部220は、
図5に示すように、供給部昇降機構223をさらに有している。供給部昇降機構223は、アーム222に接続されている。
【0094】
供給部昇降機構223は制御部300と電気的に接続されており、制御部300からの動作指令に応じて供給部220を昇降させることができる。これにより、供給部220の超音波ノズル221を、基板保持部210に保持されている基板Wに接近又は離隔させ、基板Wの表面Wfとの間の離間距離を調整することができる。
【0095】
尚、基板Wを除去装置200内に搬入出させる際には、制御部300の動作指令により供給部昇降機構223を作動させ、供給部220を上昇させる。これにより、超音波ノズル221と基板Wの表面Wfとを一定の距離に離隔させることができ、基板Wの搬入出を容易にすることができる。
【0096】
飛散防止カップ240は、スピンベース212を取り囲むように設けられる。飛散防止カップ240は昇降駆動機構(図示しない)に接続され、上下方向に昇降可能となっている。基板Wの表面Wfに除去液を供給する際には、飛散防止カップ240が昇降駆動機構によって所定位置に位置決めされ、チャックピン216により保持された基板Wを側方位置から取り囲む。これにより、基板Wやスピンベース212から飛散する除去液を捕集することができる。
【0097】
紫外線照射部250は、除去装置200の内部に於いて、基板保持部210に保持された基板Wの表面Wfに紫外線を照射することが可能なように、当該基板保持部210の上方(
図5の矢印Zで示す方向)に配置される。紫外線照射部250は、複数の光源部251と、石英ガラス252とを少なくとも備える。
【0098】
図5に示す光源部251は線光源であり、その長手方向が
図5のYで示す方向と平行となるように配置されている。また、各光源部251は、相互に等間隔となるように矢印Xで示す方向に配列されている。但し、本発明の紫外線照射部はこの態様に限定されるものではない。例えば、リング状の紫外線照射部であって、相互に直径が異なるものが同心円状に配置される態様であってもよい。また、紫外線照射部は点光源であってもよい。この場合、複数の紫外線照射部が面内で相互に等間隔となるように配置されるのが好ましい。
【0099】
光源部251の種類としては、紫外線が照射される限り特に限定されず、他の放射線や紫外線領域以外の波長域を含んでいてもよい。光源部251は、具体的には、例えば、低圧水銀ランプ(主波長:185nm、254nm)、高圧水銀ランプ(主波長:365nm)、エキシマUVランプ(主波長:272nm)、メタルハライドランプ(250~450nm)及びUV(ultraviolet)-LED(Light Emitting Diode)等を用いることができる。また、複数の光源部251は同種であってもよく、異種であってもよい。光源部251として異種のものを複数用いる場合、ピーク波長や光強度等を相互に異ならせて配置することができる。
【0100】
石英ガラス252は、光源部251と基板Wの間に配置されている。石英ガラス252は板状体であり、水平方向に平行となるように設けられている。また、石英ガラス252は、紫外線に対して光透過性、耐熱性及び耐食性を有しており、光源部251から照射される紫外線を透過させて、基板Wの表面Wfへの照射を可能にしている。さらに石英ガラス252は、光源部251をチャンバ253内の雰囲気から保護することができる。
【0101】
以上の説明に於いては、本発明の基板処理装置に於ける除去装置が基板Wに対して1枚毎に処理を行う枚葉式である場合を例にして説明した。しかし本発明の基板処理装置はこの態様に限定されるものでなく、本発明の基板処理装置の他の形態として除去装置が複数枚の基板に対して一括して処理を行うバッチ式の形態である場合にも適用可能である。
【0102】
[制御部]
制御部300は、基板処理装置の各部と電気的に接続しており、各部の動作を制御する。制御部300は、演算部と、記憶部とを有するコンピュータにより構成される。演算部としては、各種演算処理を行うCPUを用いる。また、記憶部は、基板処理プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM及び制御用ソフトウェアやデータ等を記憶しておく磁気ディスクを備える。磁気ディスクには、基板処理条件に関するデータが予め格納されている。基板処理条件としては、例えば、超音波発振器を駆動させるための駆動条件や、紫外線照射のための照射条件、除去液の基板Wへの供給条件等が含まれる。CPUは、基板処理条件をRAMに読み出し、その内容に従って基板処理装置の各部を制御する。
【0103】
(第2実施形態)
<基板処理方法>
本発明の第2実施形態に係る基板処理方法について、
図7を参照しながら以下に説明する。
図7は、本発明の第2実施形態に係る基板処理方法の全体的な流れの一例を示すフローチャートである。
【0104】
第2実施形態の基板処理方法は、
図7に示すように、第1実施形態の基板処理方法と比較して、除去工程S105に於いて、除去液に対する超音波振動の付与に代えて、除去液に気体を接触させて液滴状の除去液を生成させ、この液滴状の除去液を用いてSAM14の選択的な除去を行う点が異なる。この様な構成によっても、SAM14の選択的な除去を良好に行うことができる。尚、以下では、
図7に示す基板Wの準備工程S101、自己組織化単分子膜形成工程S102、膜形成工程S103及び紫外線照射工程S104の各工程は、第1実施形態と同様であるため、それらの詳細な説明を省略する。
【0105】
本実施形態の除去工程S105’は、先ず、除去液に気体を接触させて混合し、除去液と気体とからなる混合流体を形成し、この混合流体を基板Wの表面に向けて噴射供給する。混合流体は、除去液の微小な液滴を含む。この除去液の液滴が気体の流れに乗って基板Wの表面に衝突する。この衝突によりSAM14に衝撃を加え、SAM14が基板Wの表面から剥離するのを促進させる。
【0106】
除去液と混合させる気体としては特に限定されず、例えば、窒素ガス等の不活性ガス等が挙げられる。不活性ガスを用いることにより、除去液の変質等を防止することができる。尚、除去工程S105’は、例えば、不活性ガスの雰囲気下で行うことができる。
【0107】
除去液の種類や、除去液に含有させる有機酸の濃度、酸解離定数pKa等は、第1実施形態で述べたのと同様である。また、除去液の除去方法についても、第1実施形態で述べたのと同様である。従って、これらの説明は省略する。
【0108】
<基板処理装置>
次に、第2実施形態に係る基板処理装置について、
図8及び
図9に基づき説明する。
図8は、本実施形態の基板処理装置に於ける除去装置の概略を表す説明図である。
図9は、本実施形態の基板処理装置に於ける2流体ノズルの概略を表す断面図である。
【0109】
本実施形態の基板処理装置は、
図8に示すように、除去装置200’に於ける供給部として液滴供給部260を用いる点が主として異なる。本実施形態の供給装置は、第1実施形態の場合と基本的に同一の構成を有するものを用いることができる(
図4及び
図5参照)。従って、その説明は同一符号を付して省略する。
【0110】
液滴供給部260は、基板保持部210の上方位置に配置されており、供給装置100から供給される除去液の液滴を基板Wの表面Wf上に供給する。液滴供給部260は、
図8及び
図9に示すように、2流体ノズル261と、アーム274とを備える。
【0111】
2流体ノズル261は、除去液に気体を衝突(接触)させて除去液の液滴を生成し、液滴状の除去液を噴出する。本実施形態の2流体ノズル261は、ケーシング(ノズル)外で除去液に気体を衝突させて混合流体を形成する、外部混合型の二流体ノズルである。2流体ノズル261は、ケーシングを構成する外筒262と、外筒262に内嵌された内筒263とを備える。
【0112】
外筒262及び内筒263は、何れも円筒状の外形を有し、中心軸Lを共有する同軸状に配置されている。また、外筒262の下端面262aは、中心軸Lと直交するリング状の面となっている。2流体ノズル261は、少なくとも除去液の液滴を噴射する際、この中心軸Lが、基板Wの表面に垂直になるように(すなわち、下端面262aが基板Wの表面と平行になるように)対向して配置される。
【0113】
内筒263には、円筒状となるように中心軸Lに沿って内部空間264が形成されている。この内部空間264は、内筒263の下端で円形状に開口する。内部空間264の上端は、供給装置100の配管113と管路接続されている。供給装置100から配管113を介して供給される除去液は、内部空間264に流入し、その下端の開口265から吐出(中心軸Lに沿って下向きに吐出)される。すなわち、内部空間264は除去液の流路として機能し、開口265は除去液の吐出口として機能する。以下に於いて、内部空間264を「除去液流路264」ともいう。また、内部空間264の下端の開口265を「除去液吐出口265」ともいう。
【0114】
内筒263は、大径部分263aと、大径部分263aの下方に連続して設けられた小径部分263bとを備える。小径部分263bは、大径部分263aよりも外径が小さい。内筒263の外側に嵌められる外筒262の内径は、大径部分263aの外径と等しく、外筒262は、その下端部分を除いてほぼ一定の内径を有している。小径部分263bの外側面と外筒262の内側面との間には間隙266が形成される。この間隙266は、中心軸Lを中心とした断面リング状の空間であり、外筒262の下端でリング状(すなわち、除去液吐出口265を取り囲むリング状)に開口する。
【0115】
間隙266の上端付近には、外筒262の内外面を貫通して設けられた導入管267の一端が連通している。導入管267の他端は、気体供給源273に管路接続された配管273a(後述する。)と管路接続されている。配管273a及び導入管267を介して気体供給源273から供給された気体は、間隙266に流入し、その下端の開口268から吐出される。つまり、間隙266は気体の流路であり、開口268は気体の吐出口である。以下に於いて、間隙266を「ガス流路266」ともいう。また、間隙266の下端の開口268を「ガス吐出口268」ともいう。
【0116】
小径部分263bの下端付近には、その外周面から径方向外方に向けて張り出すフランジ269が形成される。フランジ269には、これを貫通する貫通孔270が形成されており、ガス流路266に流入した気体は、この貫通孔270を通過する際に流れる方向を変換されて、中心軸Lのまわりを旋回するように流れる旋回流となって流れる。
【0117】
小径部分263bに於ける、フランジ269が形成されている部分よりも下側の部分には、フランジ269の下側面から中心軸Lに沿って突出する円筒状の短筒部271が形成されている。短筒部271は、その中心軸が中心軸Lと一致するように配置されている。短筒部271の外径は、外筒262の下端面262aの内縁径よりも小さくなっている。そのため、前述の開口268は、短筒部271の下端面と外筒262の下端面262aとの間で、中心軸Lを取り囲むリング状に形成されている。
【0118】
外筒262の内壁面における、短筒部271の周りを取り囲む部分は、下方に向かうに従って内径が小さくなる縮径形状に形成されている。そのため、短筒部271の周囲の空間272に流入したガスの旋回流は、当該空間272内で、旋回するにつれ中心軸Lに近づく渦巻き状の気流となって、ガス吐出口268から吐出される。ガス吐出口268から吐出された渦巻き状の気流は、除去液吐出口265から中心軸Lに沿って吐出される除去液を取り囲むように流れて、中心軸L上のある収束点Fに収束するように進む。そして、収束点F及びその付近に於いて、除去液と気体とが衝突して混合されて、液滴状の除去液が形成される。さらに、生成された液滴状の除去液は、気体の気流によって加速されて噴流となる。
【0119】
また液滴供給部260は、液滴供給部昇降機構223’をさらに有している。液滴供給部昇降機構223’は、アーム274に接続されている。
【0120】
液滴供給部昇降機構223’は制御部300’と電気的に接続されており、制御部300’からの動作指令に応じて液滴供給部260を昇降させることができる。これにより、液滴供給部260の2流体ノズル261を、基板保持部210に保持されている基板Wに接近又は離隔させ、基板Wの表面Wfとの間の離間距離を調整することができる。
【0121】
前述の通り、2流体ノズル261は、気体供給源273と配管273aを介して接続されている。配管273aの経路途中には、バルブ273bが設けられている。
【0122】
バルブ273bは制御部300’と電気的に接続されており、バルブ273bの開閉を制御部300’の動作指令によって制御することができる。また、除去液を供給する供給装置100のバルブ113aの開閉も制御部300’の動作指令によって制御される。従って、2流体ノズル261から吐出される除去液の吐出態様(具体的には、吐出開始タイミング、吐出終了タイミング、吐出される液滴の種類、吐出流量、吐出される液滴の勢い等)は、制御部300’によって制御することができる。
【0123】
尚、本実施形態では、2流体ノズル261として外部混合型の2流体ノズルを例にして説明した。しかし、本発明はこの態様に限定されるものではない。例えばケーシング内で除去液に気体を衝突させて液滴状の除去液を生成する内部混合型の2流体ノズルを用いることもできる。
【0124】
[制御部]
制御部300’は、第1実施形態の場合と同様、演算部と、記憶部とを有するコンピュータにより構成される。記憶部の磁気ディスクには、紫外線照射のための照射条件の他、除去液の液滴を基板Wに供給するための供給条件等が含まれる。また、演算部に用いられるCPUは、第1実施形態の場合と同様、基板処理条件をRAMに読み出し、その内容に従って基板処理装置の各部を制御する。
【0125】
(その他の事項)
本実施形態の供給装置や除去装置は、基板処理装置以外の様々な装置に利用されてもよく、又は単独で使用されてもよい。
以上の説明に於いては、本発明の最も好適な実施態様について説明した。しかし、本発明は当該実施態様に限定されるものではない。前述の実施形態及び各変形例に於ける各構成は、相互に矛盾しない範囲内で変更、修正、置換、付加、削除及び組合せが可能である。例えば、各実施形態では、除去液に対し超音波振動を付与したり、除去液を液滴にしてSAM表面に噴射したりしてSAMを除去する方法を説明した。しかし、本発明はこの態様に限定されるものではない。本発明は、SAMの除去工程の前に、SAMに対し少なくとも紫外線を照射してその撥水性を低下させるものであればよい。
【実施例0126】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量、条件等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定するものではない。
【0127】
(実施例1)
[基板の準備工程]
先ず、金属膜としてのCu膜(膜厚100nm、金属膜形成領域)が表面に形成された基板を準備した。
【0128】
[SAM及びAl2O3膜の形成]
SAM形成材料としてのオクタデシルホスホン酸(CH3(CH2)17P(=O)(OH)2)(pKa=2.1、pH=3.0)をエタノール溶媒に溶解させ、処理液を調製した。オクタデシルホスホン酸の濃度は、処理液の全質量に対し0.05質量%とした。
【0129】
次に、基板の表面に処理液を塗布し、オクタデシルホスホン酸がCu膜上に吸着してなるSAMを成膜した。
【0130】
さらに、基板の表面にAl2O3膜(膜厚5nm)の形成を行った。具体的には、原子層体積装置(商品名:SUNALE-R、PICOSUN(株)製)を用いてALD法によりAl2O3膜を成膜した。
【0131】
[紫外線照射工程]
次に、SAMの表面に紫外線を照射し、SAMの表面の撥水性が低下するように表面改質を行った。紫外線の照射条件は、以下の通りとした。
紫外線照射部の光源:低圧水銀ランプ(商品名:EUV200WS-51、セン特殊光源(株)製)
紫外線のピーク波長:185nm、254nm
紫外線の照射強度 :10mW/cm2
紫外線の照射時間 :0.25時間
チャンバ内の圧力 :大気圧
チャンバ内の温度 :25℃
チャンバ内の雰囲気:空気
【0132】
[SAMの除去]
次に、Al2O3膜が形成されている基板に対し、SAMの除去を行った。具体的には、濃度1質量%の酢酸(pKa=4.76、pH=2.7)水溶液中に基板を浸漬し、SAMの選択的な除去を行った。これにより、本実施例に係るサンプルを作製した。
【0133】
(比較例1)
本比較例では、Al2O3膜の形成後、紫外線照射工程を行うことなくSAMの除去工程を行った。それ以外は実施例1と同様にして、本比較例に係るサンプルを作製した。
【0134】
(比較例2)
本比較例では、除去液として、濃度1質量%の酢酸水溶液に代えて、塩酸、IPA(イソプロピルアルコール)及びDIWを、塩酸:IPA:DIW=1:50:50の質量比となるように混合した混合溶液を用いた。また、Al2O3膜の形成後、紫外線照射工程を行うことなくSAMの除去工程を行った。それ以外は実施例1と同様にして、本比較例に係るサンプルを作製した。
【0135】
(表面状態の評価)
実施例1、並びに比較例1及び2の各基板について、Cu膜上の表面状態を分析して評価を行った。具体的には、X線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)を用いて、Cu膜表面の状態について分析した。結果を
図10(a)及び
図10(b)に示す。
図10(a)及び
図10(b)は、Cu膜上のX線光電子スペクトルを表すグラフを表す。
【0136】
図10(a)及び
図10(b)から分かる通り、実施例1、並びに比較例1及び2の各基板では、Cu膜上に於いて、Cu原子に固有の結合エネルギー値にピークが最も強く現れた。さらに比較例1及び2の各基板では、Al原子に固有の結合エネルギー値にもピークが現れた。これにより、比較例1及び2では、Al
2O
3膜の形成の際にSAMに残っていたAl原子が、SAMの除去工程後にも残っていることが確認された。その結果、これらの比較例では、SAMがCu膜から良好に除去されず、残っていることが推定された。その一方、実施例1では、Al原子に固有の結合エネルギー値にピークが現れなかった。これにより、実施例1では、SAMがCu膜上から良好に選択除去されていることが確認された。
【0137】
(接触角の測定)
Cu膜の表面に於けるDIWの接触角を、(商品名:DMo-701、(株)協和界面科学製)を使用して、以下の条件で測定した。また、測定は異なる5か所で行い、その平均値を接触角として算出した。結果を表1に示す。
・測定雰囲気:23℃、50%RH
・滴下量:2μL
・液滴の滴下から測定までの時間:1秒
【0138】
【0139】
(実施例2)
本実施例では、除去液として、濃度1質量%の酢酸水溶液に代えて、濃度10質量%のマレイン酸水溶液(pKa=1.96、pH=1.3)を用いた。それ以外は実施例1と同様にして、本実施例に係るサンプルを作製した。
【0140】
(実施例3)
本実施例では、除去液として、濃度1質量%の酢酸水溶液に代えて、濃度10質量%のマレイン酸水溶液(pKa=1.96、pH=1.3)を用いた。また、除去工程に於いては、マレイン酸水溶液中に基板を浸漬する際に、マレイン酸水溶液に超音波振動を付与してSAMの選択的な除去を行った。それら以外は実施例1と同様にして、本実施例に係るサンプルを作製した。
【0141】
(実施例4)
本実施例では、除去液として、濃度1質量%の酢酸水溶液に代えて、濃度10質量%のメチルホスホン酸水溶液(pKa=2.36、pH=1.1)を用いた。それ以外は実施例1と同様にして、本実施例に係るサンプルを作製した。
【0142】
(実施例5)
本実施例では、除去液として、濃度1質量%の酢酸水溶液に代えて、濃度10質量%のメチルホスホン酸水溶液(pKa=2.36、pH=1.1)を用いた。また、除去工程に於いては、メチルホスホン酸水溶液中に基板を浸漬する際に、メチルホスホン酸水溶液に超音波振動を付与してSAMの選択的な除去を行った。それら以外は実施例1と同様にして、本実施例に係るサンプルを作製した。
【0143】
(実施例6)
本実施例では、除去液として、濃度1質量%の酢酸水溶液に代えて、濃度100質量%の酢酸(pKa=4.76)を用いた。それ以外は実施例1と同様にして、本実施例に係るサンプルを作製した。
【0144】
(実施例7)
本実施例では、除去液として、濃度1質量%の酢酸水溶液に代えて、濃度100質量%の酢酸(pKa=4.76)を用いた。また、除去工程に於いては、酢酸中に基板を浸漬する際に、酢酸に超音波振動を付与してSAMの選択的な除去を行った。それら以外は実施例1と同様にして、本実施例に係るサンプルを作製した。
【0145】
(除去性能の評価)
実施例2~7の各サンプルに於けるSAMの除去性能の評価は、Cu膜上のAl原子の残渣比率に基づき行った。
すなわち、各サンプルについて、透過電子顕微鏡(TEM)で各サンプルの断面部の像観察を行いながら、観察領域での元素分析をエネルギー分散型X線分光法(EDX)により行った。EDXによる元素分析は、Al2O3膜及びCu膜に於けるAl原子を対象とした。さらに、以下の式に基づき、Cu膜上のAl原子の残渣比率を算出した。結果を表2に示す。
(Al原子の残渣比率)=(Cu膜上のAl原子量)/(Al2O3膜に於けるAl原子量)×100(%)
【0146】
実施例2~7の何れのサンプルに於いても、Al原子の残渣比率を抑制できることが確認された。特に、除去液に超音波振動を付与してSAMの除去を行った実施例3、5及び7に於いては、Al原子の残渣比率を何れも10%以下に抑制することができた。SAMには、Al2O3膜の成膜に起因して、Al原子が残存している。従って、SAM除去後のCu膜に於いてAl原子の残渣が少ない程、SAMはCu膜上から良好に選択除去されているといえる。実施例2~7の各サンプルでは、何れもCu膜上のAl原子の残渣比率が抑制されており、特に実施例3、5及び7ではAl原子の残渣比率の抑制が良好であることから、各実施例2~7で用いた除去液は何れもSAMの除去に優れているといえる。
【0147】
さらに、実施例2~7の各サンプルに於いては、SAMの除去前後に於いて、Cu膜及びAl2O3膜のエッチングがどの程度抑制されているのかについても確認した。具体的には、TEM観察により、SAMの除去前後に於けるCu膜及びAl2O3膜の膜厚を測定し、Cu膜及びAl2O3膜の膜厚の減少量を算出した。結果を表2に示す。表2から分かる通り、実施例2~7の何れのサンプルに於いても、Cu膜及びAl2O3膜の膜厚の減少量を抑制することができた。特に、実施例2、3、6及び7では、Al2O3膜の膜厚の減少量を、当初の膜厚5nmに対し0.5nm以下に抑制することができた。また、実施例7では、Cu膜の膜厚の減少量を、当初の膜厚100nmに対し3nm以下の減少量に抑えることができた。これにより、実施例2~7の各サンプルでは、何れもCu膜及びAl2O3膜のエッチングが抑制されており、特に実施例2、3、6及び7ではAl2O3膜のエッチングが良好に抑制され、実施例7ではCu膜のエッチングが良好に抑制されたことから、各実施例2~7の基板処理方法は何れもSAMの選択的な除去に優れているといえる。
【0148】