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  • 特開-ライニング方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044194
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ライニング方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/34 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
B29C63/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149592
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000150615
【氏名又は名称】株式会社長谷工コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】592036519
【氏名又は名称】株式会社P・C・Gテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100188075
【弁理士】
【氏名又は名称】石黒 修
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤井 要
【テーマコード(参考)】
4F211
【Fターム(参考)】
4F211AA31
4F211AD16
4F211AG08
4F211AH43
4F211AR02
4F211SA13
4F211SC03
4F211SD04
4F211SP12
(57)【要約】
【課題】通水能力を維持しつつコンクリート表面等にウレタン樹脂による防水塗膜が形成された場合であっても容易に界面に停留する流体を排出できるように横管を更生する。
【解決手段】コンクリート製平面部からの流体の集まる集水器Wと、地面まで伸びる縦管Vとを連通させる横管1の内壁にライナー層を形成するライニング方法は、横管1の底部に、集水器W側に突出する集水器側突出部2wと縦管V側に突出する縦管側突出部2vとを有するように細管2を配する細管配置工程と、集水器底面Bへの投影が集水器側突出部2wの集水器底面Bへの投影を含むように集水器側突出部2wを覆う養生部材5を配する養生部材配置工程と、溶融状態の樹脂材料を含侵させた含侵織布7を横管1の内壁および細管2の外壁に貼り付ける貼付工程を備える。
これにより、防水塗膜が形成された際でもウレタン樹脂との界面に停留する流体を容易に排出できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート製平面部からの流体の集まる集水器と、地面まで伸びる縦管とを連通させる横管の内壁にライナー層を形成するライニング方法であって、
前記横管は、底部を集水器底面と略同一高さとすることで前記集水器から前記縦管に流体を導いており、
前記横管の底部に、前記集水器側に突出する集水器側突出部と前記縦管側に突出する縦管側突出部とを有するように細管を配する細管配置工程と、
前記集水器底面への投影が前記集水器側突出部の前記集水器底面への投影を含むように前記集水器側突出部を覆う養生部材を配する養生部材配置工程と、
溶融状態の樹脂材料を含侵させた含侵織布を前記横管の内壁および前記細管の外壁に貼り付ける貼付工程とを備えることを特徴とするライニング方法。
【請求項2】
請求項1に記載のライニング方法において、
前記細管配置工程において、前記縦管側突出部に可撓性チューブが予め嵌め込まれていることを特徴とするライニング方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のライニング方法において、
前記細管配置工程の前に前記養生部材配置工程を行うことを特徴とするライニング方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ライニング方法、特にコンクリート製平面部からの流体の集まる集水器と、地面まで伸びる縦管とを連通させる横管の内壁にライナー層を形成するライニング方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ルーフバルコニー等のコンクリート製平面部からの流体の集まる集水器と、地面まで伸びる縦管とを連通させる横管を有する排水設備が知られている。
ここで、横管は、底部を集水器底面と略同一高さとすることで集水器から縦管に流体を速やかに導いている。
【0003】
なお、コンクリート製平面部は、降り注いだ雨水等の流体が、併設される集水器に流れ込むように形成されており、集水器底面は、横管への流体の移動がスムースになるように略水平となるように形成されている。
このような排水設備では経年劣化により堆積するスケール等の影響で管の内径が狭まり近年多発する集中豪雨等に対応できず設備の補修に迫られる場合がある。
【0004】
ここで、排水設備の補修において、横管内に蛇腹管を新たに設置する方法が一般的に行われている。
しかし、元の横管内に蛇腹管を設置するため、元の横管より必然的に内径は小さくなり、不可避的に通水能力は減少することになる。また、蛇腹管は構造上どうしても内径が小さくなる部分があるため、さらなる通水能力の減少を招いてしまう。
さらに、ごみなどが蛇腹の凹凸部分に嵌り込み通水能力が大きく減少することも多々あった。
【0005】
そこで、対策として横管の内壁にライナー層を形成するライニング方法による横管の更生が考えられる(特許文献1参照)。
ここでのライニング方法は、元管の内周にFRP製の内管を貼り付けることで元管の更生と耐震補強を兼ねることができる所謂パイプ・イン・パイプ方式によるものである。
具体的には、例えば、溶融状態の樹脂材料を含侵させた筒状の含侵織布をバルーン式圧接具で拡径させて横管の内壁に圧接させ、その後、含侵織布を硬化させることで横管の内壁にライナー層を形成している。
【0006】
これにより、含侵織布の厚みはそれほど厚いものではないため、元の横管に対する縮径量は少なく、また、新たに形成されるライナー層の表面も平滑なものとなっている。
このため、通水能力を維持しつつ、横管を更生することができる。
【0007】
近年、排水設備の補修に合わせて、集水器を含めたルーフバルコニー等のコンクリート製平面部にウレタン樹脂による塗膜を形成する防水対策を行うことが一般的に行われている。
しかし、ウレタン樹脂による防水塗膜が形成されると気密性が高くなりコンクリート表面からの水分蒸発が阻害され、ウレタン樹脂による防水塗膜との界面に水分が溜まり込む所謂水ぶくれが生じる虞があり対策が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4181439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、通水能力を維持しつつコンクリート表面等にウレタン樹脂による防水塗膜が形成された場合であってもウレタン樹脂との界面に停留する流体を容易に排出できるように横管を更生することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示のライニング方法は、コンクリート製平面部からの流体の集まる集水器と、地面まで伸びる縦管とを連通する横管の内壁にライナー層を形成するものである。
ここで、横管は、底部を集水器底面と略同一高さとすることで集水器から縦管に流体を速やかに導いている。
【0011】
また、ライニング方法は、以下に説明する細管配置工程、養生部材配置工程、および、貼付工程を備える。
細管配置工程では、横管の底部に、集水器側に突出する集水器側突出部と縦管側に突出する縦管側突出部とを有するように細管を配する。
【0012】
養生部材配置工程では、集水器底面への投影が集水器側突出部の集水器底面への投影を含むように集水器側突出部を覆う養生部材を配する。
そして、貼付工程では、溶融状態の樹脂材料を含侵させた含侵織布を横管の内壁および細管の外壁に貼り付ける。
【0013】
これにより、横管の底部に、集水器側に突出する集水器側突出部と縦管側に突出する縦管側突出部とを有するように細管が配されているため、集水器底面直上に集水器側突出部が開口していることになる。
【0014】
このため、集水器を含むコンクリート表面等にウレタン樹脂による防水塗膜が形成されてもウレタン樹脂との界面からの水等の流体は集水器底面に導かれ、さらに細管によって縦管へと速やかに導かれる。
なお、コンクリート表面は当初より集水器に流体が流れ込むように緩い傾斜が設けられているため、ウレタン樹脂とコンクリートとの界面に停留する流体も集水器へと向かうことになる。
【0015】
また、集水器底面への投影が集水器側突出部の集水器底面への投影を含むように集水器側突出部を覆う養生部材を配しているため、貼付工程での溶融樹脂の滴下等による細管内部への樹脂の侵入等を抑制することができる。
さらに、コンクリート表面等にウレタン樹脂による防水塗膜が形成される際にも養生部材により、細管内部へのウレタン樹脂の侵入を防ぐことができる。
なお、これらの樹脂材の粘度は高いため養生部材による集水器側突出部の区画には極端な液密性の必要はない。
【0016】
さらに、溶融状態の樹脂材料を含侵させた含侵織布を横管の内壁および細管の外壁に貼り付けたとしても、含侵織布の厚みがそれほど厚いものではないため、横管の内径を極端に縮径させることにはならない。
なお、細管部分による内径の減少量もそれほど大きくはない。
【0017】
以上より、本開示のライニング方法は、通水能力を維持しつつコンクリート表面等にウレタン樹脂による防水塗膜が形成された場合であってもウレタン樹脂の防水塗膜との界面に停留する流体を容易に排出できるように横管を更生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)細管配置工程の部分断面説明図であり、(b)養生部材配置工程の部分断面説明図であり、(c)貼付工程の部分断面説明図である(実施例)。
図2】バルーン式圧接具の設置説明図である(実施例)。
図3】ウレタン樹脂の塗膜形成例説明図である(実施例)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示を実施するための形態を実施例に基づいて説明する。
なお、以下の実施例は具体的な一例を開示するものであり、本開示が以下の実施例に限定されないことは言うまでもない。
【実施例0020】
[実施例の構成]
実施例のライニング方法の構成を、図1、2を用いて説明する。
ライニング方法は、コンクリート製平面部からの流体の集まる鋳鉄製の集水器Wと、地面まで伸びる縦管Vとを連通させる横管1の内壁にライナー層を形成することで、横管1を更生する。
ここで、横管1は、底部を集水器底面Bと略同一高さとすることで集水器Wから縦管Vに流体を速やかに導いている。
【0021】
なお、コンクリート製平面部とは、ルーフバルコニー等であり、横管1は、金属製円筒管であり内径が約50mm等となっている。
また、実施例においては横管1と縦管Vとはエルボ管を介しての接続であるが、横管1と縦管Vとが直接接続されるものであってもよい。
さらに、横管1は樹脂製であってもよい。
【0022】
[実施例の特徴]
実施例のライニング方法は、以下に説明する細管配置工程、養生部材配置工程、および、貼付工程を備える。
細管配置工程では、横管1の底部に、集水器W側に突出する集水器側突出部2wと縦管V側に突出する縦管側突出部2vとを有するように細管2を配する。
ここで、細管2は金属製円筒管であり外径が約4mmとなっている。
また、縦管側突出部2vには可撓性チューブ3である樹脂製のチューブが予め嵌め込まれている。
【0023】
養生部材配置工程では、集水器底面Bへの投影が集水器側突出部2wの集水器底面Bへの投影を含むように集水器側突出部2wを覆う養生部材5を配する。
ここで、養生部材5は断面略逆V字型の銅製であり、集水器側突出部2wを跨ぐように覆っている。
【0024】
そして、貼付工程では、溶融状態の樹脂材料を含侵させた含侵織布7を横管1の内壁および細管2の外壁に貼り付ける。
なお、樹脂材料は、例えば、エポキシ樹脂のプレポリマーと硬化剤との混合物であり、溶融状態の樹脂材料を含侵させる前の織布はガラス繊維や炭素繊維等の強化繊維が用いられている。
【0025】
ここで、含侵織布7を横管1の内壁および細管2の外壁に貼り付けるとあるが、具体的には、筒状の含侵織布7をバルーン式圧接具で拡径させて横管1の内壁および細管2の外壁に圧接させる。その後、含侵織布7を硬化させることでライナー層を形成している(図2参照)。
なお、バルーン式圧接具は、横管1の内周および細管2の外周の形状に追随させるように含侵織布7を圧接するため、横管1の内周および細管2の外周に不要な隙間が形成されず、内径減少量を最小限に抑えている。
また、形成されるライナー層の厚みは約2mmとなっている。
【0026】
[実施例の効果]
実施例のライニング方法は、以下に説明する細管配置工程、養生部材配置工程、および、貼付工程を備える。
細管配置工程では、横管1の底部に、集水器W側に突出する集水器側突出部2wと縦管V側に突出する縦管側突出部2vとを有するように細管2を配する。
【0027】
養生部材配置工程では、集水器底面Bへの投影が集水器側突出部2wの集水器底面Bへの投影を含むように集水器側突出部2wを覆う養生部材5を配する。
そして、貼付工程では、溶融状態の樹脂材料を含侵させた含侵織布7を横管1の内壁および細管2の外壁に貼り付ける。
【0028】
これにより、横管1の底部に、集水器W側に突出する集水器側突出部2wと縦管V側に突出する縦管側突出部2vとを有するように細管2が配されているため、集水器底面B直上に集水器側突出部2wが開口していることになる。
【0029】
このため、集水器Wを含むコンクリート表面等にウレタン樹脂による防水塗膜が形成されてもウレタン樹脂との界面からの水等の流体は集水器底面Bに導かれ、さらに細管2によって縦管Vへと速やかに導かれる。
なお、コンクリート表面は当初より集水器Wに流体が流れ込むように緩い傾斜が設けられているため、ウレタン樹脂とコンクリートとの界面に停留する流体も集水器Wへと向かうことになる。
【0030】
また、集水器底面Bへの投影が集水器側突出部2wの集水器底面Bへの投影を含むように集水器側突出部2wを覆う養生部材5を配しているため、貼付工程での溶融樹脂の滴下等による細管2内部への樹脂の侵入等を抑制することができる。
さらに、コンクリート表面等にウレタン樹脂による防水塗膜が形成される際にも養生部材5により、細管2内部へのウレタン樹脂等の侵入を防ぐことができる。
なお、これらの樹脂材の粘度は高いため養生部材5による集水器側突出部2wの区画には極端な液密性の必要はない。
【0031】
すなわち、実施例における養生部材5のように開口している場合であっても、図3に示すように、塗布時にウレタン樹脂は養生部材5を超えて横管1側まで内部侵入することはない。換言すると、養生部材5がウレタン樹脂に埋もれる場合であっても、養生部材5の集水器底面Bへの投影面部分は、鋳鉄表面がむき出しとなっていることになる。
【0032】
結果として、集水器側突出部2wは、集水器底面Bの鋳鉄表面と養生部材5上の樹脂材層との間で開口していることになる。
すなわち、集水器側突出部2wの周囲は、養生部材5によって集水器底面Bと樹脂材層とを分かつことで空間が形成されているため、この空間において樹脂材層を伝う流体は表出しやすくなっている。
【0033】
さらに、溶融状態の樹脂材料を含侵させた含侵織布7を横管1の内壁および細管2の外壁に貼り付けたとしても、含侵織布7の厚みがそれほど厚いものではないため、横管1の内径を極端に縮径させることにはならない。
なお、細管2部分による内径の減少量もそれほど大きくはない。
【0034】
以上より、本開示のライニング方法は、通水能力を維持しつつ、コンクリート表面等にウレタン樹脂による防水塗膜が形成された場合であってもウレタン樹脂の防水塗膜との界面に停留する流体を容易に排出できるように横管1を更生することができる。
【0035】
また、実施例のライニング方法は、細管配置工程において、縦管側突出部2vに可撓性チューブ3が予め嵌め込まれている。
細管2は、縦管側突出部2vを有することで縦管V内に流体を滴下することができるが、可撓性チューブ3を用いることでより確実に流体を縦管Vまで導くことができる。
なお、縦管側突出部2vに可撓性チューブ3が嵌め込まれているため、横管1の縦管V側の開口端から可撓性チューブ3を離すことができ、貼付工程におけるバルーン式圧接具と可撓性チューブ3との干渉を防ぐこともできる(図2参照。)。
【0036】
[変形例]
本願発明はその要旨を逸脱しない範囲で様々な変形例を考えることができる。
例えば、実施例では、細管配置工程の後に養生部材配置工程を行っていたが、細管配置工程の前に養生部材配置工程を行ってもよい。
換言すると、細管配置工程において、集水器側突出部2wに養生部材5が予め配されていてもよい。これにより、細管2に予め養生部材5が固定されているため、現場での養生部材5の配置の手間を省くことができる。
【0037】
実施例では、貼付工程において、含侵織布7はバルーン式圧接具を用いて横管1の内壁等に貼り付けられていたが、含侵織布7を、横管1の集水器W側の開口端から内外周を反転させながら横管1の縦管V側に向けて横管1の内周に侵入させつつ横管1の内壁等に貼り付けてもよい。
【0038】
実施例では、貼付工程において、含侵織布7は横管1の集水器W側の開口端までとなっていたが、この開口端を超えて養生部材5を覆うものであってもよい。その際、養生部材5が含侵織布7に埋もれる場合であっても、養生部材5の集水器底面Bへの投影面部分は、鋳鉄表面がむき出しとなっていることになる。
この場合も結果として、集水器側突出部2wは、集水器底面Bの鋳鉄表面と養生部材5上の樹脂材層との間で開口していることになる。
【0039】
実施例では、横管1は水平配置であったが、水平方向に対して緩い角度で傾けられるように配置されるものであってもよい。これにより、集水器Wからより効率的に流体を縦管Vへと導くことができる。
【0040】
実施例では、細菅2は金属製であったが、樹脂製であってもよい。
これにより、細菅2の入手性がよりよくなるとともに、現場での加工もより容易なものとなる。
【符号の説明】
【0041】
1 横管 2 細管 3 可撓性チューブ 5 養生部材 7 含侵織布
W 集水器 V 縦管 B 集水器底面
図1
図2
図3