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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044198
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20240326BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20240326BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20240326BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 8/23 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 8/24 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/60
A61Q5/02
A61Q5/12
A61K8/23
A61K8/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149597
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000113274
【氏名又は名称】ホーユー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 由季
(72)【発明者】
【氏名】辻 比奈子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA121
4C083AB171
4C083AB281
4C083AB292
4C083AB351
4C083AB352
4C083AB431
4C083AC241
4C083AC242
4C083AC33
4C083AC552
4C083AC792
4C083AC852
4C083AD041
4C083AD191
4C083AD202
4C083BB21
4C083CC33
4C083CC36
4C083CC38
4C083DD06
4C083DD15
4C083DD23
4C083EE03
4C083EE26
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、容易に溶解でき、溶解後の溶液が粘度のある溶液とすることができる化粧料を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、25℃において粘度200mPa・s以上である液体組成物と、粉末状又は粉末を圧縮成形して成形した固形物状の固体組成物を備えることを特徴とする、化粧料を提供する。
この化粧料によれば、液体組成物に溶解させやすく、溶解させた後の溶液が粘度を有するものとすることができる。また、固体組成物に含まれる増粘剤の含有量を少なくでき、溶解させやすい化粧料とすることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃において粘度200mPa・s以上である液体組成物と、粉末状又は粉末を圧縮成形して成形した固形物状の固体組成物を備えることを特徴とする、化粧料。
【請求項2】
前記固体組成物は、成分(B)として、糖類、リン酸塩又は硫酸塩を含有することを特徴とする、請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
前記固体組成物は、成分(A)として、直接染料を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項4】
前記液体組成物は、シャンプー組成物又はトリートメント組成物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項5】
前記粉末を圧縮成形して成形した固体組成物は、25℃で固体の成分(C)(ただし、成分(B)を除く)として、フィロケイ酸塩鉱物粉末、ケイ素酸化物、飽和脂肪酸、エステル類、ワックス類、硬化植物油、脂肪又はポリエーテルから選ばれる少なくとも一種以上を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の化粧料。
【請求項6】
25℃において粘度200mPa・s以上の液体組成物に溶解して使用することを特徴とする、圧縮成形された固体組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水に溶解させて使用する、粉末状や固形物の毛髪化粧料が知られている。
毛髪化粧料は、粘度の低い液状であると、毛髪に適用した際に、毛髪から滴り落ちて均一に塗布できず、染毛ムラが生じる虞があることから、毛髪にとどまることができる程度の粘度が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-124176
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、水に粉末状や固形物の毛髪化粧料を溶解させて粘度ある溶液にする場合、その毛髪化粧料に粘度を向上させる成分を含有させる必要が生じるが、粘度成分を多く含有させると水に溶解しにくくなる傾向がある。
また、毛髪化粧料に限らず、水に溶解させて粘度ある溶液にする場合、粉末状や固形物に粘度成分を多く含有するものは、水に溶解させにくく、溶け残りが発生して品質の悪化につながる虞がある。
さらに近年、化粧料などの一定の粘度のある液体組成物に、粉末状や固形物を溶解させてそれらの成分の機能を追加した化粧料としたい要望がある。
そこで、本発明の課題は、一定以上の粘度のある液体組成物に容易に溶解できる、粉末状又は粉末を圧縮成形して成形した固形物状の固体組成物の化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、25℃において粘度200mPa・s以上である液体組成物と粉末状又は固形物状の固体組成物とを備えることにより、液体組成物に溶解させやすく、溶解させた後の溶液が粘度を有するものとすることができるという知見に至り、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[6]を提供する。
[1]25℃において粘度200mPa・s以上である液体組成物と、粉末状又は固形物状の固体組成物とを備えることを特徴とする、化粧料。
この化粧料によれば、25℃において粘度200mPa・s以上の液体組成物に粉末状又は固形物状の固体組成物を溶解させることで、固体組成物に含まれる増粘剤の含有量を少なくでき、溶解させやすい化粧料とすることができる。
[2]前記固体組成物は、成分(B)として、糖類、リン酸塩又は硫酸塩を含有することを特徴とする、[1]に記載の化粧料。
この特徴によれば、これらの成分を含有することで、より溶解させやすい固体組成物とすることができる。
[3]前記固体組成物は、成分(A)として、直接染料を含有することを特徴とする、[1]又は[2]に記載の化粧料。
この特徴によれば、25℃において粘度200mPa・s以上の液体組成物に溶解させやすい直接染料を含有する化粧料とすることができる。
[4]前記液体組成物は、シャンプー組成物又はトリートメント組成物であることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の化粧料。
この特徴によれば、シャンプー組成物又はトリートメントとしての粘度を有した、液体組成物に溶解させやすい化粧料とすることができる。
[5]前記粉末を圧縮成形して成形した固体組成物は、25℃で固体の成分(C)(成分(B)を除く)として、フィロケイ酸塩鉱物粉末、ケイ素酸化物、飽和脂肪酸、エステル類、ワックス類、硬化植物油、脂肪又はポリエーテルから選ばれる少なくとも一種以上を含むことを特徴とする、[1]又は[2]に記載の化粧料。
この特徴によれば、圧縮成形体に成形するための調整がしやすく、溶解もしやすい化粧料とすることができる。
[6]25℃において粘度200mPa・s以上の液体組成物に溶解して使用することを特徴とする、圧縮成形された固体組成物。
この特徴によれば、25℃において粘度200mPa・s以上の液体組成物に溶解しやすい圧縮成形された固体組成物とすることができ、粘度200mPa・s以上の溶液にすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、25℃において粘度200mPa・s以上である液体組成物と粉末状又は粉末を圧縮成形して成形した固形物状の固体組成物とを備えることにより、液体組成物に溶解させやすく、溶解させた後の溶液が粘度を有するものとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る化粧料の実施形態を詳細に説明する。
なお、実施形態に記載する化粧料については、本発明に係る化粧料を説明するために例示したに過ぎず、これに制限されるものではない。
また、実施形態では、シャンプー、コンディショナー、整髪料、育毛剤、発毛剤、ヘアカラー等のヘアケア剤等を含む毛髪化粧料の場合を例に説明する。なお、化粧料とは、毛髪化粧料の他、化粧水、乳液、リップクリーム、日焼け止め、洗顔フォーム、メイク落とし、シェービングフォーム、クレンジングオイル等のフェイスケア剤や、石鹸、ボディソープ、ハンドクリーム、ハンドソープ、制汗剤、入浴剤等のボディケア剤等を含む。
【0009】
本発明は、具体的には、25℃において粘度200mPa・s以上である液体組成物の化粧料に、固体組成物を溶解させることで、液体組成物(化粧料)に固体組成物の成分の機能を付加することができる。例えば、液体組成物として、シャンプー組成物又はトリートメント組成物を使用し、直接染料と特定の賦形剤を含有する固体組成物を溶解させることで、カラーシャンプー組成物又はカラートリートメント組成物とすることができる。なお、シャンプーとは、界面活性剤が配合された洗浄目的のための組成物であり、トリートメントとは、毛髪に感触を向上させる成分が配合された組成物をいう。
この場合に、25℃において粘度200mPa・s以上である液体組成物に対しても粉末状又は粉末を圧縮成形して成形した固形物状の固体組成物を容易に溶解させやすくすることができるものである。
【0010】
(毛髪化粧料)
本発明の毛髪化粧料は、25℃において粘度200mPa・s以上である液体組成物と、粉末状又は粉末を圧縮成形して成形した固形物状の固体組成物とを備え、液体組成物に固体組成物を溶解させて溶液とし、毛髪に適用するものである。固体組成物が、粘度を有する液体組成物に溶解されることで、固体組成物に粘度を向上させる成分(増粘成分)の含有量を低減又は含まないようにすることができ、溶解させやすい効果がある。
【0011】
(液体組成物)
本発明の液体組成物は、200mPa・s以上の粘度を有する液体組成物であれば、特に制限されるものではなく、例えば、粘度が、200mPa・s以上、50000mPa・s以下である。下限値としては、好ましくは1000mPa・sであり、より好ましくは3000mPa・sであり、更に好ましくは5000mPa・sである。一方、上限値としては、好ましくは40000mPa・sであり、より好ましくは30000mPa・sであり、更に好ましくは20000mPa・sである。
上記の粘度の範囲であれば、より固体組成物を溶解させやすく、毛髪化粧料として溶解後の溶液の粘度が毛髪に対して伸びやすく、垂れにくい調和のよい好ましい状態となる。
【0012】
液体組成物は、200mPa・s以上であればよく、市販されているシャンプー組成物やトリートメント組成物を用いることができる。
【0013】
例えば、液体組成物として使用されるシャンプー組成物は、界面活性剤を主成分とし、その他、洗浄力の向上、保存安定性及び良好な使用感等を考慮して、油性成分、炭化水素、カチオン性化合物、高分子物質、タンパク加水分解物、pH緩衝成分、糖類、アミノ酸、ビタミン類、セラミド、キレート剤、香料等が添加された組成物が例示でき、主成分として配合される界面活性剤がカチオン性界面活性剤であることが好ましい。
界面活性剤が、カチオン界面活性剤の場合、硫酸エステル塩型、リン酸エステル塩型、スルホン酸塩型、カルボン酸塩型のアニオン性界面活性剤の1種又は2種以上を含有することがより好ましく、その中でもカルボン酸塩型のアニオン性界面活性剤であることがさらにより好ましい。
【0014】
また、液体組成物として使用されるシャンプー組成物のカチオン界面活性剤の含有量は、0.1質量%以上30質量%以下が適用可能である。下限値としては、より好ましくは0.5質量%以上であり、更に好ましくは1.0質量%以上である。一方、上限値としては、より好ましくは25.0質量%以下であり、更に好ましくは20.0質量%以下である。
【0015】
また、液体組成物として使用されるトリートメント組成物は、界面活性剤を主成分とし、その他、使用感に優れ、ドライ時の指通りをよくするとともに、毛先のぱさつきを緩和することを考慮して、油性成分、炭化水素、カチオン性化合物、高分子物質、タンパク加水分解物、pH緩衝成分、糖類、アミノ酸、ビタミン類、セラミド、キレート剤、香料等が添加された組成物が例示でき、主成分として配合される界面活性剤がカチオン性界面活性剤であることが好ましい。
界面活性剤が、カチオン性界面活性剤の場合、モノアルキル(C10-C22)トリメチルアンモニウム塩型のカチオン界面活性剤、ジアルキル(C10-C22)ジメチルアンモニウム塩型のカチオン界面活性剤、アミドアンモニウム塩型(クオタニウム-33等)のカチオン界面活性剤、エーテルアンモニウム塩型のカチオン界面活性剤、エステルアンモニウム塩型のカチオン界面活性剤、中和アンモニウム塩型のカチオン界面活性剤等が例示でき、これらの中でも1種又は2種以上を含有することがより好ましく、その中でもカルボン酸塩型のアニオン性界面活性剤であることがさらにより好ましい。
また、ノニオン界面活性剤をさらに含むことがより好ましく、ノニオン界面活性剤の中でもポリオキシエチレンアルキルエーテル型ノニオン界面活性剤のHLB値が4以上10未満のものと、ポリオキシエチレンアルキルエーテル型ノニオン界面活性剤のHLB値が10以上20以下のものとが1種又は2種以上を含有することがさらにより好ましい。
さらに、上記のカチオン界面活性剤とノニオン界面活性剤を1種又は2種以上を含有することがさらにより好ましい。
【0016】
また、液体組成物として使用されるトリートメント組成物のカチオン界面活性剤の含有量は、0.1質量%以上30質量%以下が適用可能である。下限値としては、より好ましくは0.5質量%以上であり、更に好ましくは1.0質量%以上である。一方、上限値としては、より好ましくは25.0質量%以下であり、更に好ましくは20.0質量%以下である。
【0017】
なお、液体組成物の粘度は、例えばB型粘度計を用い、25℃及び1分間の測定条件で求めることができる。B型粘度計の具体例としては、例えばBL型粘度計VISCOMETER(東機産業社製)を挙げることができる。使用するロータ及び回転速度は、測定機器の測定可能な粘度範囲に従い適宜選択される。例えば、粘度100~250mPa・sの場合は1号ロータ、粘度250~2500mPa・sの場合は2号ロータ、2500~10000mPa・s以上の場合は3号ロータ、10000mPa・s以上の場合は4号ロータを使用し、いずれも回転数12rpmの条件で求めることができる。
以下、本明細書では、粘度は25℃で測定した値であるものとする。
【0018】
液体組成物としては、使用者が固体組成物を使用する際に自ら入手した市販のシャンプー組成物やトリートメント組成物を利用させる場合、固体組成物と液体組成物を組み合わせ一つの商品として市場に流通させる場合のどちらであってもよい。
使用者が自ら入手したものを使用させる場合は、液体組成物を流通させる必要がなく、毛髪化粧料の商品の輸送コスト削減の観点から好ましい。また、使用者が自身の好みに合わせた液体組成物を使用することができる効果もある。
また、固体組成物と液体組成物を組み合わせ一つの商品として市場に流通させる場合は、入手のしにくい液体組成物や固体組成物用に調製された液体組成物を合わせて使用者の手元に届けることができ、使用者の利便性が向上する。
【0019】
(固体組成物)
固体組成物は、粉末状の場合又は粉末を圧縮成形して成形した固形物状とした場合のどちらも含むものである。粉末の固体組成物の形状としては、特に制限されるものではなく、例えば、球状などが挙げられる。また、粉末の粒子径としては、特に制限されるものではないが、例えば平均粒径100~500μm、又は、メッシュ32~150(JIS Z 8801-1:2006)の粉末であることが、原料混合時の混合性、流動性、及び溶解性の点で好ましい。また、粉末を圧縮成形して成形した固形物状の固体組成物の形状としても、特に制限されるものではなく、例えば、円盤状、円柱状、角柱状、球状などが挙げられる。なお、粉末を圧縮成形して成形した固形物状とすることで、輸送や消費者の利便性が向上する。
本発明の固体組成物の製造方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法により製造できる。例えば、粉末状の場合には、各成分を混合することで製造してもよい。また、固形物状の場合には、混合した各成分と添加剤を直接打錠、又は造粒処理した各成分と添加剤を混合して打錠することにより製造することができる。その他、パン型造粒機や転動造粒機により粒状の粒子を製造することもできる。また、ローラーコンパクターなどの圧縮成形機によりフレーク形状に圧縮成形されたものとしてもよい。固体組成物の強度や生産性を向上するという観点から、粉末を圧縮成形して成形した固体組成物は、打錠により形成された(圧縮成形された)打錠品(圧縮成形体)が好ましい。
なお、上記の粉末を圧縮成形して固形物状とする場合、圧縮成形が可能であれば、常温(25℃)で固定でない(液体やゲル状)成分が粉末化加工されない状態で含まれてもよいが、含まれない方が圧縮成形体を作製しやすく好ましい。
【0020】
本発明の毛髪化粧料は、毛髪化粧料として用いる際に、固体組成物を粘度200mPa・s以上である液体組成物に溶解して使用するものであることから、固体組成物に粘度成分を少なく又は含有しないものとすることができ、溶解しやすい固体組成物にすることができる。
言い換えると、粘度の低い水などの溶媒に固体組成物を溶解し、本発明の毛髪化粧料と同じ粘度の毛髪化粧料とする場合、固体組成物の粘度成分の含有量を、本発明の固体組成物よりも多くする必要がある。しかしながら、粘度成分が多く含まれると均一に溶解させにくくなる問題がある。本発明では、予め粘度200mPa・s以上である液体組成物に対し、固体組成物を溶解させることで、固体組成物の増粘成分を少なく又は含まないものとすることができ、溶解がさせやすくなる。
また、固体組成物の液体組成物への溶解性の観点から、粉末を圧縮成形して成形した固体組成物よりも粉末状が好ましく、粉末化する手間がかかる観点からは、粉末化処理により粉末状としたものよりも、常温において固体である物質を細やかな粒状としたものが好ましい。
【0021】
圧縮成形体の形状は、特に制限されるものではなく、例えば、円形錠、楕円形錠、花形錠などが挙げられる。また、圧縮成形体は、必要に応じて2分割、4分割等するための1本以上の割線を設けることができる。
圧縮成形体の大きさ(直径)は、特に制限されるものではなく、例えば、直径が5mm以上50mm以下である。下限値としては、より好ましくは10mmであり、更に好ましくは12mmであり、特に好ましくは14mmである。一方、上限値としては、より好ましくは30mmであり、更に好ましくは18mmであり、特に好ましくは16mmである。
なお、本明細書では、圧縮成形体が円盤状の場合の直径は、円の中心を通る線が外周を交わる点同士を結んだものが該当し、その他の形状の場合の直径は、圧縮成形体中で最も長さのある部分が直径に該当する。
圧縮成形体の厚さは、特に制限されるものではなく、例えば、1.0mm以上20.0mm以下である。下限値としては、より好ましくは2.0mmであり、更に好ましくは2.5mmであり、特に好ましくは3.0mmである。一方、上限値としては、より好ましくは15.0mmであり、更に好ましくは12.0mm、特に好ましくは10.0mmである。
固体組成物の大きさ、厚さを上記範囲とすることにより、毛髪適用時に用いる場合の分量調節がし易い大きさとなり、不必要な量の使用を防止したり、毛髪適用時に追加したりすることを容易なものとすることができる。
また、固体組成物の大きさを20.0mm以上とすることで、小児、高齢者などによる誤飲を防止することができる。
【0022】
圧縮成形体が水を含有する前の硬度は、圧縮成形体が固形物としての形態が保てていればよく、特に制限されるものではないが、例えば、25℃、湿度が75%の条件下において、硬度が、0.001kgf以上、10.0kgf以下である。下限値としては、より好ましくは0.005kgfであり、更に好ましくは0.01kgfである。一方、上限値としては、より好ましくは8.0kgfであり、更に好ましくは5.0kgfであり、更により好ましくは3.0kgfである。
【0023】
また、圧縮成形された固定組成物を水(25℃)に浸し3秒後の硬度は、特に制限されるものではなく、例えば、硬度が、0.0kgf以上、3.0kgf以下である。下限値としては、より好ましくは0.5kgfであり、更に好ましくはkgfである。一方、上限値としては、より好ましくは1.0kgfであり、更に好ましくは0.5kgfであり、更により好ましくは0.1kgfである。
なお、硬度が0.0kgfとは、圧縮成形体が液体組成物に崩壊した状態をいう。
また、硬度の測定は、アズワン株式会社製の錠剤硬度計アナログタイプTH-1にて行った測定値であり、最小測定数値は、0.1kgfである。
圧縮成形体の硬度を上記範囲とすることにより、液体組成物を含む前の輸送や保管時等の利便性の観点と、圧縮成形体の使用時に液体組成物に浸して圧を加えた際に崩しやすいという観点の利便性の両立を備えることができる効果がある。
【0024】
次に、圧縮成形体の製造方法について説明する。
圧縮成形体の製造方法は、化粧料、医薬部外品、医薬品などの技術分野において使用されている通常の手段を用いることができる。圧縮成形体の製造工程としては、混合した各成分と添加剤を直接打錠してもよいし、造粒処理した各成分と添加剤を混合して打錠してもよい。
造粒方法は、特に制限されるものではなく、例えば、乾式造粒法、流動層造粒法、転動造粒法、撹拌造粒法、噴霧造粒法などが挙げられる。
混合工程に用いる混合機は、特に制限されるものではなく、例えば、タンブラー混合機、V型混合機、ダブルコーン混合機、無限ミキサーなどが挙げられる。
打錠工程に用いる打錠機は、特に制限されるものではなく、例えば、単発打錠機、ロータリー式打錠機が挙げられる。
【0025】
次に、本発明の毛髪化粧料の使い方について説明する。
固体組成物は、毛髪等に用いる前に、粘度200mPa・s以上である液体組成物を含ませて溶解させてから毛髪化粧料として用いるものである。例えば、一方の手に固体組成物を載せ、そこに適量の液体組成物を含ませて、他方の手で固体組成物を溶解させて使用するものである。このようにすることで、固体組成物の液体組成物への溶解を素早く行うことができる。
また、圧縮成形体の場合、圧縮成形体に毛髪化粧料を含ませた後、手で圧をかけて使用してもよい。圧を掛けることにより、圧縮成形体が崩れたり変形したりすることで、表面積を大きくでき素早く溶解させることができる。
【0026】
また、本発明の毛髪化粧料は、例えば、固体組成物の溶解時に使用される容器とセットにして、毛髪化粧料キットとすることもできる。このようにすることで、携帯性に優れ、また、容器を備えていることにより、液体組成物への溶解を容易に行うことができる。
また、容器には、固体組成物に使用する液体組成物の量を計量する計量線が設けられていることが好ましい。溶解する液体組成物の量を計量できることで、適切な液体組成物の量で固体組成物を溶解でき、適切な濃度の溶液にすることができる。
なお、溶解時に使用される容器は、液体組成物が入れられた容器に固体組成物を投入し溶解させるための容器のほか、溶解する水の量を計量するためにのみ使用され、固体組成物を溶解させるための容器として使用しない場合のどちらの場合であってもよい。
【0027】
次に、本発明の固体組成物の含有成分について、詳細に説明する。
なお、下記の直接染料(成分(A))、賦形剤(成分(B))及び滑沢剤(成分(C))について、常温(25℃)において固体である物質を細かな粒状としたもの、又は常温において固体ではないものであっても、例えばスプレードライやドラムドライ等の粉末化処理により粉末状となったもの使用することができる。粉末の形状としては、特に制限されるものではなく、例えば、球状などが挙げられる。また、粉末の粒子径としては、特に制限されるものではないが、例えば平均粒径100~500μm、又は、メッシュ32~150(JIS Z 8801-1:2006)の粉末であることが、原料混合時混合性、流動性、及び溶解性の点で好ましい。
上記の直接染料(成分(A))、賦形剤(成分(B))及び滑沢剤(成分(C))が、常温(25℃)において固体である物質のものを使用することで粉末化処理する手間を省略でき、圧縮成形体とする際の調整が容易となる点で好ましい。
【0028】
(直接染料)
成分Aである直接染料は、毛髪に付着又は浸透して染毛する色を有するものであり、化粧料、医薬部外品、医薬品などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、酸性染料、塩基性染料、天然染料、ニトロ染料、HC染料、分散染料などが挙げられる。また、これらの直接染料は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0029】
酸性染料の具体例としては、例えば、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号の(1)、赤色105号の(1)、赤色106号、赤色227号、赤色230号の(1)、黄色4号、黄色5号、黄色202号の(1)、黄色202号の(2)、黄色203号、だいだい色205号、だいだい色207号、だいだい色402号、緑色3号、緑色204号、緑色401号、紫色401号、青色1号、青色2号、青色202号、かっ色201号、黒色401号等が挙げられる。
【0030】
塩基性染料の具体例としては、例えば、Basic Blue 3、Basic Blue 6、Basic Blue 7、Basic Blue 9、Basic Blue 26、Basic Blue 41、Basic Blue 47、Basic Blue 75、Basic Blue 99、Basic Blue 124、Basic Brown 4、Basic Brown 16、Basic Brown 17、Basic Green 1、Basic Green 4、Basic Orange 1、Basic Orange 2、Basic Orange 31、Basic Red 1、Basic Red 2、Basic Red 22、Basic Red 46、Basic Red 51、Basic Red 76、Basic Red 118、Basic Violet 1、Basic Violet 3、Basic Violet 4、Basic Violet 10、Basic Violet11:1、Basic Violet 14、Basic Violet 16、Basic Yellow 11、Basic Yellow 28、Basic Yellow 57、Basic Yellow 87等が挙げられる。
【0031】
天然染料の具体例としては、例えば、クチナシ色素、ウコン色素、アナトー色素、銅クロロフィリンナトリウム、パプリカ色素、ラック色素、ヘナ等が挙げられる。
【0032】
ニトロ染料の具体例としては、例えば、4-ニトロ-o-フェニレンジアミン、2-ニトロ-p-フェニレンジアミン、2-アミノ-4-ニトロフェノール、2-アミノ-5-ニトロフェノール、ピクラミン酸、ピクリン酸、及びそれらの塩等が挙げられる。本発明では、染毛力向上の観点から、好ましくはピクラミン酸、4-ニトロ-o-フェニレンジアミンが挙げられる。
【0033】
HC染料の具体例としては、例えば、HC Blue No.2、HC Blue No.5、HC Blue No.6、HC Blue No.9、HC Blue No.10、HC Blue No.11、HC Blue No.12、HC Blue No.13、HC Blue No.16、HC Orange No.1、HC Orange No.2、HC Orange No.3、HC Red No.1、HC Red No.3、HC Red No.7、HC Red No.10、HC Red No.11、HC Red No.13、HC Red No.14、HC Violet No.1、HC Violet No.2、HC Yellow No.2、HC Yellow No.4、HC Yellow No.5、HC Yellow No.6、HC Yellow No.9、HC Yellow No.10、HC Yellow No.11、HC Yellow No.12、HC Yellow No.13、HC Yellow No.14、HC Yellow No.15等が挙げられる。
【0034】
分散染料の具体例としては、例えば、Disperse Black 9、Disperse Blue 1、Disperse Blue 3、Disperse Blue 7、Disperse Brown 4、Disperse Orange 3、Disperse Red 11、Disperse Red 15、Disperse Red 17、Disperse Violet 1、Disperse Violet 4、Disperse Violet 15等が挙げられる。
【0035】
直接染料を添加することにより、毛髪化粧料の染毛性を向上させることができる。これらの直接染料の中でも、染毛性、液体組成物への溶解性、地肌汚れや溶解時の手汚れの観点から、塩基性染料又はHC染料が好ましい。
【0036】
固体組成物における直接染料の含有量は、適宜設定されるが染毛性の観点から、含有量の下限値は、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは3.0質量%以上、さらに好ましくは5.0質量%以上である。また、固体組成物における直接染料の含有量の上限値は、好ましくは30.0質量%以下、より好ましくは20.0質量%以下、さらに好ましくは10.0質量%以下である。
【0037】
(賦形剤)
成分Bである賦形剤は、固体組成物のかさ及び水などへの溶解性や崩壊性を調節するものであり、また、圧縮成形体とする際に成形性をよくし、化粧料、医薬部外品、医薬品、食品などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、糖類、、リン酸塩、硫酸塩などが挙げられる。
賦形剤の具体例としては、例えば、ラクトース、白糖、グルコース、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、グアーガム、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]グアーガムなどのカチオン化グアーガム、カラギーナン、ジェランガム、ペクチン、アラビアガム、ローストビンガム等の単糖類、二糖類及び多糖類、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、クロスカルメロース等のセルロース及びセルロース誘導体、マンニトール、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチト-ル、グリセリン等の糖アルコール、リン酸カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウムなどが挙げられる。また、これらの賦形剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
賦形剤を添加することにより、固体組成物の大きさを調節及び溶解性及び崩壊性の調節をすることができる。
【0038】
固体組成物における賦形剤の含有量は、適宜設定されるが、例えば、含有量の下限値は、好ましくは60.0質量%以上、より好ましくは70.0質量%以上、さらに好ましくは80.0質量%以上である。また、固体組成物における賦形剤の含有量の上限値は、好ましくは95.0質量%以下、より好ましくは90.0質量%以下、さらに好ましくは85.0質量%以下である。
【0039】
また、賦形剤の中でも硫酸塩が好ましく、硫酸塩の中でも硫酸ナトリウム(成分(B1))がより好ましい。硫酸ナトリウムを使用して圧縮成形体とした場合、粘度のある液体組成物に溶解させる場合であっても容易に溶解させることができ、特に好ましい。
固体組成物における硫酸ナトリウム(成分(B1))の含有量は、適宜設定されるが、例えば、含有量の下限値は、好ましくは20.0質量%以上、より好ましくは30.0質量%以上、さらに好ましくは40.0質量%以上である。また、固体組成物における硫酸ナトリウムの含有量の上限値は、好ましくは95.0質量%以下、より好ましくは90.0質量%以下である。
【0040】
また、賦形剤(成分(B))の質量に対する直接染料(成分(A))の質量の比(A/B)は、特に制限されるものではないが、0.01以上0.5以下であることが好ましい。質量の比の下限値は、より好ましくは0.05、更に好ましくは0.075以上である。また、質量の比の上限値は、より好ましくは0.2、更に好ましくは0.15以下である。
質量の比がこの範囲であると、200mPa・s以上の粘度を有する液体組成物に対する、固体組成物の溶解性がよく、また、圧縮成形しやすいものとすることができる。
【0041】
(滑沢剤)
25℃で固体の成分Cである滑沢剤(ただし、成分(B)は除く)は、粉体成分の付着力を低減して流動性を高めるものであり、化粧料、医薬部外品、医薬品、食品などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、フィロケイ酸塩鉱物粉末、ケイ素酸化物、飽和脂肪酸、エステル類、ワックス類、硬化植物油、脂肪、ポリエーテルなどが挙げられる。
滑沢剤の具体例としては、例えば、タルク、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、炭酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、パルミチン酸、ステアリルフマル酸ナトリウム、ミツロウ、ダイズ硬化油、カカオ脂、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。また、これらの滑沢剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
滑沢剤を添加することにより、圧縮成形体の製造時に、スティッキングなどの打錠障害の発生を抑制することができる。
これらの滑沢剤の中でもステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステルが使用でき、特に好ましくは、ステアリン酸マグネシウムである。
滑沢剤の含有量は、特に制限されるものではなく、例えば、固体組成物の質量に対して0.01質量%以上10.0質量%以下である。下限値としては、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上である。また、上限値としては、好ましくは5.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以下である。
【0042】
(成分(D))
本発明の固体組成物は、(A)成分~(C)成分以外に、(D)炭酸塩を含有することができる。炭酸塩を含有すると、温感作用や、頭皮への心地よい刺激を与えることや、頭皮汚れが落ちやすくなることに伴う洗浄力向上の効果を発揮することができる。炭酸塩は、食品、化粧料、医薬部外品、医薬品などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではない。炭酸塩の具体例としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム等が挙げられる。
【0043】
<その他の成分>
本発明の固体組成物は、上記(A)~(D)成分以外に、必要に応じて上記(A)~(C)成分を除く他の成分を含有してもよい。添加する成分の具体例としては、酸化染料、増粘剤、キレート剤、過酸化水素安定化剤、pH調節剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、安定剤、保存剤、香料、直接染料、着色剤などが挙げられる。
【0044】
(酸化染料)
酸化染料は、酸化剤により酸化重合して発色する染料である。酸化染料には、染料中間体とカプラーがあり、染料中間体は、自身の酸化により発色する物質であり、カプラーは、染料中間体との組み合わせにより種々の色調となる物質である。
染料中間体としては、例えばp-フェニレンジアミン、トルエン-2,5-ジアミン(パラトルイレンジアミン)、N-フェニル-p-フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルアミン、p-アミノフェノール、o-アミノフェノール、p-メチルアミノフェノール、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-フェニレンジアミン、2-ヒドロキシエチル-p-フェニレンジアミン、o-クロル-p-フェニレンジアミン、4-アミノ-m-クレゾール、2-アミノ-4-ヒドロキシエチルアミノアニソール、2,4-ジアミノフェノール、及びそれらの塩が挙げられる。これらの染料中間体の1種又は2種以上を選択して用いることができる。
カプラーは、染料中間体と結合することにより発色する。カプラーとしては、例えばレゾルシン、5-アミノ-o-クレゾール、m-アミノフェノール、α-ナフトール、5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-2-メチルフェノール、m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、トルエン-3,4-ジアミン、2,6-ジアミノピリジン、ジフェニルアミン、N,N-ジエチル-m-アミノフェノール、フェニルメチルピラゾロン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、及びそれらの塩が挙げられる。さらに2,4-ジアミノフェノキシエタノールとして、例えば塩酸2,4-ジアミノフェノキシエタノールが挙げられる。これらのカプラーの1種又は2種以上を選択して用いることができる。また、例えば「医薬部外品原料規格」(2006年6月発行、薬事日報社)に収載された酸化染料を適宜含有してもよい。
固体組成物を水等に溶解した後の溶液中における酸化染料の含有量は特段に限定されないが、例えば0.01~10質量%の範囲内、好ましくは0.1~7質量%の範囲内、より好ましくは0.5~5質量%の範囲内とすることができる。
【0045】
(増粘剤)
増粘剤は、水分に対する溶解性と粘度を有するものであり、化粧料、医薬部外品、医薬品、食品などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、水溶性アクリル酸重合体などが挙げられる。
増粘剤の具体例としては、例えば、カルボキシビニルポリマーなどが挙げられる。また、これらの増粘剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。なお、増粘剤の粘度は、第十七改正日本薬局方に記載の毛細管粘度計法などにより測定することができる。
増粘剤を添加することにより、圧縮成形体の成形性を向上すること、及び圧縮成形体を溶解した水溶液に粘度を付与することができる。増粘剤の含有量は、特に制限されるものではなく、例えば、圧縮成形体の質量に対して0.1質量%以上20.0質量%以下である。
【0046】
(キレート剤)
キレート剤は、金属イオンを不活性化するものであり、化粧料、医薬部外品、医薬品などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、配位子を有し、金属イオンを結合するものなどが挙げられる。
キレート剤の具体例としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA、エデト酸)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)及びその塩、ジエチレントリアミン五酢酸及びその塩、ヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP、エチドロン酸)及びその塩などが挙げられる。また、これらのキレート剤は単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
キレート剤を添加することにより、圧縮成形体の溶解性を向上することができる。
【0047】
(pH調節剤)
pH調節剤は、組成物のpHを調節するものであり、化粧料、医薬部外品、医薬品などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、無機酸、有機酸、無機アルカリ、有機アルカリなどが挙げられる。
【0048】
有機酸の具体例としては、例えば、グリコール酸や乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸などのヒドロキシカルボン酸、コハク酸などのジカルボン酸などが挙げられる。
有機アルカリの具体例としては、例えば、モルフォリンなどの揮発性アルカリ成分、モノエタノールアミンなどのアルカノールアミン類、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノールなどのアミノアルコール類、L-アルギニンやL-リジン、L-ヒスチジンなどの塩基性アミノ酸などが挙げられる。また、これらのpH調節剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
pH調節剤を添加することにより、固体組成物を染毛剤、脱色・脱染剤として用いる場合の染毛性や脱色・脱染作用、安全性を向上することができる。
【0049】
(結合剤)
結合剤は、粉体成分の結合力を高めるものであり、化粧料、医薬部外品、医薬品などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、合成樹脂、糖類などが挙げられる。
結合剤の具体例としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエチレングリコール、パラフィン、ゼラチン、などが挙げられる。また、これらの結合剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
結合剤を添加することにより、粉末成分に結合力を与え、安定な圧縮成形体を製造することができる。
【0050】
(安定剤)
安定剤は、有効成分の化学的分解、物理的分解を抑制するものであり、化粧料、医薬部外品、医薬品などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、無機化合物、有機酸、有機酸塩、ビタミン類などが挙げられる。
安定剤の具体例としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸、エデト酸ナトリウム、トコフェロールなどが挙げられる。また、これらの安定剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
安定剤を添加することにより、固体組成物に含有する有効成分の失活を抑制することができる。
【0051】
(保存剤)
保存剤は、微生物などの増殖を抑制するものであり、化粧料、医薬部外品、医薬品などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、安息香酸塩、パラオキシ安息香酸エステル類などが挙げられる。
保存剤の具体例としては、例えば、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、メチルパラベン、プロピルパラベンなどが挙げられる。また、これらの保存剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
保存剤を添加することにより、固体組成物が微生物汚染されることを防ぐことができる。
【0052】
(香料)
香料は、固体組成物の嗅覚での官能感覚を改善するものであり、化粧料、医薬部外品、医薬品などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、エステル類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アセタール類、フェノール類、エーテル類、ラクトン類、フラン類、天然物などが挙げられる。
香料の具体例としては、例えば、ラベンダー油、オレンジ油、レモン油、ローズ油、スペアミント油、ペパーミント油、シナモン油、果実エッセンス、ベンズアルデヒド、ネラール、デカナール、トリルアルデヒド、2-ドデナール、ゲラニオール、テルピネオール、ヒドロキシシトロネラール、ネロール、ノナナール、アセチルセドレン、ウンデカナール、オイゲノール、ゲラニオール、ジャスミンラクトン、シトラール、ダマスコン、ダマセノン、γ-テルピネン、バニリン、アルデヒドC-8、アルデヒドC-9、アルデヒドC-12、2,6-ジメチルオクタナールなどが挙げられる。また、これらの香料は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
香料を添加することにより、固体組成物に香りを付与して嗜好性を高めることができる。
【0053】
(着色剤)
着色剤は、固体組成物の嗜好性や識別性を向上させるものであり、化粧料、医薬部外品、医薬品などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然色素、合成色素などが挙げられる。
着色剤の具体例としては、例えば、コチニール、カルミン、クルクミン、リボフラビン、アンナット、酸化チタン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、タルク、焼成シリカ、食用青色1号、食用青色2号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用緑色3号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号などの食用合成着色料などが挙げられる。また、これらの着色剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
着色剤を添加することにより、固体組成物を着色して嗜好性や識別性を高めることができる。
【0054】
その他の添加剤としては、溶解補助剤、界面活性剤、可塑剤、乳化剤、光沢化剤、発泡剤、防湿剤、防腐剤、流動化剤、着香剤、芳香剤、崩壊補助剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。また、これらの添加剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0055】
以上の特徴により、本発明における毛髪化粧料は、圧縮成形体の溶解性、圧縮成形体の成形性を向上させるという効果を発揮することができる。
【0056】
また、本発明の固体組成物は、粉末状又は粉末を圧縮成形して作製した固形物状であることから、顧客に合わせた処方が行いやすい。よって、例えば、顧客の毛髪の状況(例えば、毛髪の長さ、白髪量や毛髪の明度等)や生活習慣(毛髪を切る頻度、外出することが多い等)の情報等が、データベースを備えた情報端末に入力されることで、その顧客に合わせた適切な処方や固体組成物の使用量を提示できる診断方法(顧客サービス方法)が可能となる。
具体的には、顧客の毛髪の状況や生活習慣などの顧客情報が顧客本人又は店員等の第三者により情報端末に入力される入力ステップと、
入力された顧客情報に基づいて、情報端末のデータベースから顧客に最適な圧縮成形体の処方や圧縮成形体の使用量などの診断結果の情報を表示(情報端末の他、紙媒体での表示も含む)する結果表示ステップと、と備えた顧客サービス方法が例示できる。
なお、データベースを有する情報端末が他の情報端末(顧客や店舗に備えられた携帯端末等)と通信可能とし、顧客情報が他の情報端末から入力されてデータベースを有する情報端末に送信され、その診断結果が通信回線を経由して送信されて他の情報端末に表示されるようにしてもよい。
また、診断結果に基づいて、固体組成物が処方され作製されるようにしてもよい。
【実施例0057】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の技術範囲が限定されるものではない。
【0058】
(各剤の組成)
表1に示す各成分を含有する圧縮成形体(錠剤)を作成した。固体組成物は、粒重量2g、φ20mm、圧力5KNで打錠した。打錠に使用した装置は、島津製作所(SHIMADZU)SSP-10A 油圧式 ハンドプレス機である。なお、各表における各成分を示す欄中の数値は当該欄の成分の含有量を示し、その単位は質量%である。表中「(A)」~「(C)」の表記は、本願請求項及び本願明細書に記載の(A)~(C)成分に対応する化合物を示す。
また、表1に示す粘度の液体組成物を用いて固体組成物を溶解することで毛髪化粧料を作成し、下記の評価を行った。なお、比較例1は液体組成物として水を用いた。なお、固体組成物が溶解した後の組成物は、カラートリートメント組成物として使用されるものである。
【0059】
(溶解性(崩壊性)評価)
実施例及び比較例に係る固体組成物の溶解性(崩壊性)について、以下のとおり評価した。10人の専門のパネリスト(パネラー)が目視にて、溶媒(液体組成物として、ホーユー社製のビゲントリートメントリンスを使用)40gを入れた容器に、各実施例及び比較例に記載の組成物1gを入れ、ガラス棒で円を描くように10回混ぜ合わせた後の組成物の溶け残りの発生の有無を、溶け残りが全くない(5点)、溶け残りが僅かにある(4点)、溶け残りが少なく目立たない(3点)、溶け残りが目立つ(2点)、溶け残りが多い(1点)の5段階で評価し、各専門のパネリストの採点結果について平均値を算出した。
(評価基準)
4.6点以上:◎
3.6点以上4.6点未満:○
2.6点以上4.6点未満:●
1.6点以上2.6点未満:△
1.6点未満:×
【0060】
(均染性の評価)
各実施例及び比較例の固体組成物を用いて、白毛毛束を染毛し、得られた染毛毛束について、目視により均染性を評価した。なお、白毛毛束の染毛処理は、次の染毛処理方法により行った。
(染毛処理方法)
各実施例及び比較例の固体組成物3gと、液体組成物を30gを100mL容の混合容器に投入し、撹拌棒を用いて混合して毛髪化粧料を調製した。白毛毛束1gに対して得られた毛髪化粧料3gを、刷毛を用いて塗布し、塗布操作後40分間放置して、染毛処理を行った。染毛処理された毛束は、水洗およびシャンプー洗浄により毛髪化粧料を洗い落し、コンディショナーで処理後、水分をタオルで拭き取り、ドライヤーで乾燥した。
次に、得られた染毛毛束について、色ムラの程度を10名のパネラーが目視で観察し、色ムラがあるか否かを評価(官能評価)した。具体的には、「ムラなく染まっている」場合を「5」、「ほぼムラなく染まっている」場合を「4」、「あまりムラなく染まっている」場合を「3」、「ムラが多い」場合を「2」、「ムラが非常に多い」場合を「1」とした。こうして得られた10名の専門のパネリストの評価の平均点を算出し、均染性の評価とした。
(評価基準)
4.6点以上:◎
3.6点以上4.6点未満:○
2.6点以上4.6点未満:●
1.6点以上2.6点未満:△
1.6点未満:×
【0061】
【表1】
【0062】
表1に示すように、賦形剤として硫酸ナトリウム以外の賦形剤(B2)を使用するよりも、硫酸ナトリウム(B1)を使用した圧縮成型された固体組成物であれば、液体組成物に溶解させやすいことが分かる。
比較例1では、液体組成物として水を使用すると、粘度が低く十分に毛髪に留まることができず、均染性の評価が低下している。
【0063】
【表2】
【0064】
表2に示すように、賦形剤Bとして硫酸ナトリウム(B1)を含有していれば、圧縮成型された固体組成物が液体組成物中においてに容易につぶすことができ、溶解させることができることが分かる。
【0065】
なお、実施例1から実施例13については、本発明の固形物状の固体組成物として、圧縮成形されたカラートリートメント組成物(錠剤)を作製し、評価を行ったが、実施例1から実施例13に示す処方で、圧縮成形することなく粉末状の状態で同じ評価を行ったが、崩壊性以外同様の結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によって、粘度200mPa・s以上である液体組成物と、粉末状又は固形物状の固体組成物を備えることにより、液体組成物に溶解させやすい化粧料を提供することができる。
本発明の粘度200mPa・s以上である液体組成物と、固体組成物は、化粧料の毛髪化粧料の分野の他、医薬部外品、医薬品、食品分野にも適用可能である。
なお、医療分野においての使用とは、飲んだり、塗布したりすることも含み、食品分野においての使用とは、食することも含まれる。