(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044210
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240326BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240326BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240326BHJP
H01L 21/3205 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H01L29/78 652M
H01L29/78 652Q
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 658F
H01L29/78 652T
H01L21/88 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149610
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】森谷 友博
【テーマコード(参考)】
5F033
【Fターム(参考)】
5F033GG01
5F033HH07
5F033HH09
5F033HH13
5F033PP15
5F033QQ68
5F033RR22
5F033VV07
5F033XX17
(57)【要約】
【課題】パワーサイクル耐量を向上させることができる半導体装置および半導体装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】おもて面電極2のパッシベーション膜4の開口部4aに露出された部分の表面上に、パッシベーション膜4の開口部4aの側壁から離れて、はんだ濡れ性の高いNi成膜3が設けられている。このおもて面電極2上のNi成膜3に金属配線がはんだ接合される。Ni成膜3上にのみはんだ層が形成され、はんだ層とパッシベーション膜4とは接触しない。また、Alを材料としたおもて面電極2の表面は、Ni成膜3を形成した部分を除く全面を、おもて面電極2の表面を意図的に酸化して形成された酸化アルミニウム膜である表面酸化膜5で覆われている。おもて面電極2とパッシベーション膜4および封止材との間に、おもて面電極2の表面酸化膜5が介在することで、パッシベーション膜4および封止材の密着力が高くなっている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板のおもて面側に設けられた所定の素子構造と、
前記半導体基板のおもて面に設けられ、前記素子構造に電気的に接続された、アルミニウムを含む電極層と、
前記半導体基板のおもて面の最表面に設けられて前記電極層を覆う保護膜と、
前記電極層の前記保護膜の開口部に露出する部分の表面に、前記保護膜の開口部の側壁から離れて設けられた、金属配線がはんだ接合される金属膜と、
前記保護膜の開口部の側壁と前記金属膜との間において前記電極層の表面の全面に設けられた酸化アルミニウム膜と、
を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記電極層の表面は、前記金属膜が設けられ部分を除く全面を前記酸化アルミニウム膜で覆われており、
前記保護膜は、前記酸化アルミニウム膜を介して前記電極層を覆うことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記酸化アルミニウム膜の厚さは、10nmより厚く100nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記金属膜は、ニッケル膜であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記金属膜は、ニッケルめっき膜および金めっき膜の積層膜であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体基板は、炭化珪素からなることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
半導体基板のおもて面側に所定の素子構造を形成する第1工程と、
前記半導体基板のおもて面に、前記素子構造に電気的に接続して、アルミニウムを含む電極層を形成する第2工程と、
前記半導体基板のおもて面の最表面に保護膜を形成して当該保護膜で前記電極層を覆う第3工程と、
前記保護膜に、前記電極層を露出する開口部を形成する第4工程と、
前記電極層の前記保護膜の開口部に露出する部分の表面に、前記保護膜の開口部の側壁から離して、金属配線がはんだ接合される金属膜を形成する第5工程と、
前記電極層の表面のうち、前記金属膜が形成された部分を除く表面を酸化して、少なくとも前記保護膜の開口部の側壁と前記金属膜との間における前記電極層の表面の全面に酸化アルミニウム膜を形成する第6工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第2工程の後、前記第3工程の前に、前記第5工程および前記第6工程を行い、
前記第5工程は、
スパッタリングによって前記電極層の表面の全面にニッケル膜を形成する工程と、
前記ニッケル膜の表面に、前記金属膜の形成領域を覆うレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜をマスクとして前記ニッケル膜をエッチングして前記金属膜となる部分と残すとともに、前記金属膜の周囲を囲むように前記電極層の表面を露出させる工程と、を含み、
前記第6工程は、
前記レジスト膜をマスクとして前記電極層の露出面を酸化して、前記電極層の表面のうち、前記金属膜が設けられ部分を除く全面に前記酸化アルミニウム膜を形成する工程と、
前記レジスト膜を除去する工程と、を含み、
前記第3工程では、前記保護膜は前記酸化アルミニウム膜を介して前記電極層を覆うことを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第4工程の後に、前記第5工程および前記第6工程を行い、
前記第5工程は、
前記電極層の表面に、前記金属膜の形成領域を開口したレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜をマスクとしてめっき処理を行い、前記金属膜としてニッケルめっき膜および金めっき膜を順に積層する工程と、
前記レジスト膜を除去する工程と、を含み、
前記第6工程では、前記レジスト膜を除去することで前記金属膜の周囲を囲むように露出した前記電極層の露出面を酸化して、前記保護膜の開口部の側壁と前記金属膜との間における前記電極層の表面の全面に前記酸化アルミニウム膜を形成することを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記第6工程では、前記酸化アルミニウム膜の厚さを10nmより厚く100nm以下にすることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記半導体基板は、炭化珪素からなることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板(半導体チップ)のおもて面の表(ひょう)面電極(以下、おもて面電極とする)に半導体モジュールへの実装時に金属配線がはんだ接合される半導体装置では、アルミニウム(Al)を材料としたおもて面電極上に、はんだ濡れ性の高いニッケル(Ni)等によるめっき膜が形成されることが知られている。おもて面電極の電極パットとなる部分がパッシベーション膜の開口部に露出され、パッシベーション膜の開口部内においておもて面電極の表面の全面にめっき膜が形成される。
【0003】
図19は、従来の半導体装置の構造を示す断面図である。
図19には、パッシベーション膜104の開口部104aの側壁近傍を拡大して示す。
図19に示す従来の半導体装置110は、半導体基板(半導体チップ)101のおもて面を保護する最表面のパッシベーション膜104の開口部104a内においておもて面電極102上にめっき膜103を備え、半導体モジュールに実装されたときに当該めっき膜103にはんだ層106を介して金属配線(不図示)を接合した配線構造が形成される。
【0004】
おもて面電極102は、シリコンを含むアルミニウム(AlSi)等を材料としたアルミニウム(Al)合金層である。めっき膜103は、ニッケル(Ni)めっき膜および金(Au)めっき膜をこの順に積層してなる積層膜(
図19には「Ni/Auめっき」と図示、
図20においても同様)である。パッシベーション膜104は、半導体基板101のおもて面の最表面に設けられたポリイミド(PolyImide)からなる表面保護膜であり、半導体基板101のおもて面および半導体基板101のおもて面上のおもて面電極102や絶縁層(不図示)を覆って保護する。
【0005】
パッシベーション膜104の開口部104aにのみ、おもて面電極102が露出される。パッシベーション膜104の開口部104aの側壁は、半導体基板101側へ向かうにしたがってめっき膜103側へ突出するように傾斜している。パッシベーション膜104の開口部104a内においておもて面電極102の表面の全面にめっき膜103が形成される。金属配線のはんだ接合時に、パッシベーション膜104の開口部104aの側壁までめっき膜103上をはんだが濡れ広がるため、パッシベーション膜104の開口部104aの側壁とめっき膜103との間の隙間には、はんだ層106が埋め込まれる。
【0006】
したがって、パッシベーション膜104、めっき膜103およびはんだ層106すべてがおもて面電極102の表面上の1つの点(以下、3重点とする)111で接する。この3重点111に半導体装置110のパワーサイクル(断続通電)によって応力がかかり、当該3重点111を起点としておもて面電極102にクラック112が生じることで、半導体装置110が破壊に至る。このクラック112の発生を防止した従来の半導体装置として、上記3重点111をなくすことでパワーサイクル耐量を高めた装置が知られている。
【0007】
図20は、従来の半導体装置の構造の別例を示す断面図である。
図20には、パッシベーション膜104,105の開口部104a,105aの側壁近傍を拡大して示す。
図21は、
図20の半導体基板全体をおもて面側から見た状態を示す平面図である。
図21には、おもて面電極102の外周を破線で示す。
図20,21に示す従来の半導体装置120が
図19に示す従来の半導体装置110と異なる点は、パッシベーション膜104の開口部104aの側壁とめっき膜103との間の隙間を埋め込むようにパッシベーション膜105(
図21にはハッチングで示す)を備える点である。
【0008】
図20,21に示す従来の半導体装置120を作製(製造)するには、まず、半導体基板101のおもて面側に、おもて面素子構造およびおもて面電極102を形成する。次に、半導体基板101のおもて面の全面にパッシベーション膜104を形成した後、パッシベーション膜104を開口して下層のおもて面電極102を露出させる。次に、めっき処理により、おもて面電極102の表面上にめっき膜103を形成する。パッシベーション膜104は、めっき膜103の濡れ広がりを防止するためのマスクとなる。
【0009】
次に、例えばインクジェット方式により、パッシベーション膜104の開口部104aの側壁とめっき膜103との間の隙間を埋め込むようにパッシベーション膜105を形成する。パッシベーション膜105の開口部105aには、めっき膜103が露出される。次に、パッシベーション膜105を硬化(キュア)するための熱処理を行う。次に、めっき膜103の表面上に、はんだ層106を介して金属配線(不図示)を接合する。パッシベーション膜105は、はんだ層106の濡れ広がりを防止するためのマスクとなる。
【0010】
おもて面電極のパッシベーション膜の開口部に露出する部分上にめっき膜を介して金属配線をはんだ接合した従来の半導体装置として、パッシベーション膜の開口部の側壁をおもて面電極の表面に対して傾斜させて、パッシベーション膜の開口部の側壁にめっき膜を密着させた装置が提案されている(例えば、下記特許文献1,2参照。)。
【0011】
下記特許文献1では、パッシベーション膜を半導体基板から離れる方向(最表面側)へ向かうにしたがってめっき膜側へ庇状に迫り出させることで、金属配線のはんだ接合時にパッシベーション膜とめっき膜との界面へのはんだの濡れ広がりを抑制して、はんだがパッシベーション膜とめっき膜との界面からおもて面電極に達することを防止している。
【0012】
下記特許文献2では、パッシベーション膜を半導体基板側(下側)へ向かうにしたがってめっき膜側へ突出させて、おもて面電極の表面上からパッシベーション膜の開口部の傾斜させた側壁上にわたってめっき膜を形成することで、パッシベーション膜の密着力を高めて、おもて面電極およびめっき膜の局所的な腐食を抑制している。
【0013】
また、おもて面電極のパッシベーション膜の開口部に露出する部分上にめっき膜を介して金属配線をはんだ接合した従来の別の半導体装置として、パッシベーション膜とめっき膜とを離間させ、パッシベーション膜の焼結時の変形による応力をめっき膜に伝えないことで、めっき膜の割れを防止した装置が提案されている(例えば、下記特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2013-016538号公報
【特許文献2】特許第6906681号公報
【特許文献3】特許第6436247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上述した
図20,21に示す従来の半導体装置120では、めっき膜103でのクラック発生防止のために、めっき膜103の形成後に形成されるパッシベーション膜105のキュア温度は250℃以下程度であり十分に高くすることができないため、パッシベーション膜105の密着力が低い。金属配線のはんだ接合中にパッシベーション膜105が剥がれると、パッシベーション膜104、めっき膜103およびはんだ層106の3重点111(
図19参照)が形成されてしまうため、パワーサイクル耐量が低くなる。
【0016】
例えば、おもて面電極102を内側(半導体基板101の中央側)に一部を凹ませた略矩形状の平面形状とし、おもて面電極102の一部凹んだ凹部内にゲートパッド107を配置した場合を
図21に示す。パッシベーション膜104の開口部104aは、おもて面電極102と略同じ平面形状を有し、おもて面電極102のほぼ全面を露出する。パッシベーション膜104の開口部104a内においておもて面電極102の全面にめっき膜103が形成されており、めっき膜103はおもて面電極102と略同じ平面形状を有する。
【0017】
パッシベーション膜105は、パッシベーション膜104の開口部104aの側壁とめっき膜103との間の隙間を埋め込み、かつ開口部105aにめっき膜103を露出する。パッシベーション膜105のキュア温度を低いことで、めっき膜103への金属配線のはんだ接合中にパッシベーション膜105が剥離121することが発明者により確認された。このパッシベーション膜105の剥離121の箇所で、パッシベーション膜104の開口部104aの側壁とめっき膜103との間の隙間にはんだが濡れ広がってしまう。
【0018】
この発明は、上述した従来技術による課題を解消するため、パワーサイクル耐量を向上させることができる半導体装置および半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置は、次の特徴を有する。半導体基板のおもて面側に、所定の素子構造が設けられている。
前記半導体基板のおもて面に、アルミニウムを含む電極層が設けられている。前記電極層は、前記素子構造に電気的に接続されている。保護膜は、前記半導体基板のおもて面の最表面に設けられて前記電極層を覆う。前記電極層の前記保護膜の開口部に露出する部分の表面に、前記保護膜の開口部の側壁から離れて、金属膜が設けられている。前記金属膜には、金属配線がはんだ接合される。前記保護膜の開口部の側壁と前記金属膜との間において前記電極層の表面の全面に、酸化アルミニウム膜が設けられている。
【0020】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記電極層の表面は、前記金属膜が設けられ部分を除く全面を前記酸化アルミニウム膜で覆われている。前記保護膜は、前記酸化アルミニウム膜を介して前記電極層を覆うことを特徴とする。
【0021】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記酸化アルミニウム膜の厚さは、10nmより厚く100nm以下であることを特徴とする。
【0022】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記金属膜は、ニッケル膜であることを特徴とする。
【0023】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記金属膜は、ニッケルめっき膜および金めっき膜の積層膜であることを特徴とする。
【0024】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記半導体基板は、炭化珪素からなることを特徴とする。
【0025】
また、上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、次の特徴を有する。半導体基板のおもて面側に所定の素子構造を形成する第1工程を行う。前記半導体基板のおもて面に、前記素子構造に電気的に接続して、アルミニウムを含む電極層を形成する第2工程を行う。前記半導体基板のおもて面の最表面に保護膜を形成して当該保護膜で前記電極層を覆う第3工程を行う。前記保護膜に、前記電極層を露出する開口部を形成する第4工程を行う。前記電極層の前記保護膜の開口部に露出する部分の表面に、前記保護膜の開口部の側壁から離して、金属配線がはんだ接合される金属膜を形成する第5工程を行う。前記電極層の表面のうち、前記金属膜が形成された部分を除く表面を酸化して、少なくとも前記保護膜の開口部の側壁と前記金属膜との間における前記電極層の表面の全面に酸化アルミニウム膜を形成する第6工程を行う。
【0026】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第2工程の後、前記第3工程の前に、前記第5工程および前記第6工程を行う。前記第5工程では、まず、スパッタリングによって前記電極層の表面の全面にニッケル膜を形成する工程を行う。次に、前記ニッケル膜の表面に、前記金属膜の形成領域を覆うレジスト膜を形成する工程を行う。次に、前記レジスト膜をマスクとして前記ニッケル膜をエッチングして前記金属膜となる部分と残すとともに、前記金属膜の周囲を囲むように前記電極層の表面を露出させる工程を行う。前記第6工程では、まず、前記レジスト膜をマスクとして前記電極層の露出面を酸化して、前記電極層の表面のうち、前記金属膜が設けられ部分を除く全面に前記酸化アルミニウム膜を形成する工程を行う。次に、前記レジスト膜を除去する工程を行う。前記第3工程では、前記保護膜は前記酸化アルミニウム膜を介して前記電極層を覆うことを特徴とする。
【0027】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第4工程の後に、前記第5工程および前記第6工程を行う。前記第5工程では、まず、前記電極層の表面に、前記金属膜の形成領域を開口したレジスト膜を形成する工程を行う。次に、前記レジスト膜をマスクとしてめっき処理を行い、前記金属膜としてニッケルめっき膜および金めっき膜を順に積層する工程を行う。次に、前記レジスト膜を除去する工程を行う。前記第6工程では、前記レジスト膜を除去することで前記金属膜の周囲を囲むように露出した前記電極層の露出面を酸化して、前記保護膜の開口部の側壁と前記金属膜との間における前記電極層の表面の全面に前記酸化アルミニウム膜を形成することを特徴とする。
【0028】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記第6工程では、前記酸化アルミニウム膜の厚さを10nmより厚く100nm以下にすることを特徴とする。
【0029】
また、この発明にかかる半導体装置の製造方法は、上述した発明において、前記半導体基板は、炭化珪素からなることを特徴とする。
【0030】
上述した発明によれば、電極層上の金属膜への金属配線のはんだ接合時、はんだの濡れ広がりは金属膜上で止まるため、当該金属膜上にのみはんだ層が形成され、保護膜とはんだ層とが接触しない。したがって、従来構造(
図19参照)のように半導体装置のパワーサイクルによるおもて面電極の表面への局所的な応力集中箇所となる3重点(パッシベーション膜、めっき膜およびはんだ層が1つの点で接する箇所)は形成されない。
【発明の効果】
【0031】
本発明にかかる半導体装置および半導体装置の製造方法によれば、パワーサイクル耐量を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】実施の形態1にかかる半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
【
図2】
図1の切断線A-A’における断面構造を示す断面図である。
【
図3】
図2のパッシベーション膜の開口部の側壁近傍を拡大して示す断面図である。
【
図4】実施の形態1にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その1)。
【
図5】実施の形態1にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その2)。
【
図6】実施の形態1にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その3)。
【
図7】実施の形態1にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その4)。
【
図8】実施の形態1にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その5)。
【
図9】実施の形態1にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その6)。
【
図10】実施の形態1にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その7)。
【
図11】実施の形態1にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その8)。
【
図12】実施の形態2にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。
【
図13】実施の形態2にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その1)。
【
図14】実施の形態2にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その2)。
【
図15】実施の形態2にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その3)。
【
図16】実施の形態2にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その4)。
【
図17】実施の形態2にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その5)。
【
図18】実施の形態3にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。
【
図19】従来の半導体装置の構造を示す断面図である。
【
図20】従来の半導体装置の構造の別例を示す断面図である。
【
図21】
図20の半導体基板全体をおもて面側から見た状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置および半導体装置の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および-は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0034】
(実施の形態1)
実施の形態1にかかる半導体装置の構造について説明する。
図1は、実施の形態1にかかる半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
図2は、
図1の切断線A-A’における断面構造を示す断面図である。
図1,2では、はんだ層6を図示省略する。
図2には、おもて面電極2の外周を破線で示す。
図3は、
図2のパッシベーション膜の開口部の側壁近傍を拡大して示す断面図である。
図3には、はんだ層6を介してニッケル(Ni)成膜3に金属配線(不図示)を接合した状態を示す。
【0035】
図1,2に示す実施の形態1にかかる半導体装置10は、半導体基板(半導体チップ)1のおもて面の表(ひょう)面電極(おもて面電極:電極層)2上にNi成膜(金属膜:Ni膜)3を備え、半導体モジュール(または半導体モジュールに実装される部品となるパッケージ:不図示)に実装されたときに当該Ni成膜3にはんだ層6(
図3参照)を介して金属配線(不図示)が接合される。ここでは、半導体基板1は、炭化珪素(SiC)を半導体材料としているが、これに限らず例えばシリコン(Si)を半導体材料としてもよい。
【0036】
おもて面電極2は、アルミニウム(Al)を材料として例えばスパッタリングにより形成(成膜)される。おもて面電極2は、例えばシリコンを含むアルミニウム(AlSi)等のAl合金成膜である。おもて面電極2は、活性領域のほぼ全域を占めるように設けられ、半導体基板1のおもて面側の所定の素子構造(不図示)に電気的に接続される。所定の素子構造とは、例えば、MOSゲート(金属-酸化膜-半導体(Metal Oxide Semiconductor)の3層構造からなる絶縁ゲート)構造等である。
【0037】
活性領域とは、半導体装置10がオン状態のときに主電流が流れる領域である。活性領域は、例えば略矩形状の平面形状を有し、半導体基板1の略中央に配置される。活性領域と半導体基板1の端部との間は、所定の耐圧構造が配置されたエッジ終端領域である。エッジ終端領域は、活性領域の周囲を囲んで、半導体基板1のおもて面側の電界を緩和して耐圧を保持する機能を有する。耐圧とは、半導体装置10が使用電圧で誤動作や破壊を起こさない範囲として許容される電圧である。
【0038】
半導体基板1のおもて面の最表面に、ポリイミド(PolyImide)からなるパッシベーション膜4が設けられている。パッシベーション膜4は、半導体基板1のおもて面およびおもて面電極2や絶縁層(不図示)を覆って保護する表面保護膜である。パッシベーション膜4の開口部4aに、おもて面電極2の一部が露出されている。おもて面電極2のうち、パッシベーション膜4の開口部4aに露出する部分は、おもて面電極2の電位を外部に引き出すため外部接続用の金属配線をはんだ接合する電極パッドとして機能する。
【0039】
パッシベーション膜4の開口部4a内においておもて面電極2上に、パッシベーション膜4の開口部4aの側壁から離れてNi成膜3が設けられている。Ni成膜3は、スパッタリングにより形成(成膜)される。Ni成膜3によって、おもて面電極2の表面のはんだ濡れ性が向上し、おもて面電極2への金属配線のはんだ接合性が向上される。また、Ni成膜3をパッシベーション膜4の開口部4aの側壁から離れて配置することで、Ni成膜3上にのみはんだ層6が形成され、はんだ層6とパッシベーション膜4とが接触しない。
【0040】
すなわち、おもて面電極2の表面上においてパッシベーション膜4、Ni成膜3およびはんだ層6のすべてが1つの点で接する箇所(従来構造の3重点111に相当:
図19参照)は存在しない。このため、半導体装置10のパワーサイクル(断続通電)によるおもて面電極2への局所的な応力集中を抑制することができる。パッシベーション膜4の開口部4aの側壁は、半導体基板1のおもて面に略垂直であってもよし、半導体基板1側へ向かうにしたがってNi成膜3側へ突出するように傾斜していてもよい。
【0041】
Ni成膜3は、パッシベーション膜4の開口部4aよりも表面積が小さく、パッシベーション膜4の開口部4aと略同じ形状(ここでは例えば矩形状)の平面形状を有する。Ni成膜3の表面に、はんだ層6を介して金属配線が接合される。はんだ層6は、Ni成膜3上にのみ、Ni成膜3の全面に形成される。はんだ層6の側面は、例えばパッシベーション膜4側へ向かうにしたがってパッシベーション膜4側へ突出するように傾斜している。金属配線とは、例えばリードフレーム等の銅(Cu)配線である。
【0042】
パッシベーション膜4の開口部4aの側壁とNi成膜3との間において、おもて面電極2の表面には、表面酸化膜5(ハッチング部分)が設けられている。表面酸化膜5は、Ni成膜3の形成と同じレジストマスク13(
図8参照)を用いて、おもて面電極2の表面を意図的に酸化させて形成した酸化アルミニウム(Al
2O
3)膜である。表面酸化膜5の厚さt1は、おもて面電極2の自然酸化によって生じる酸化アルミニウム膜の厚さよりも厚く、例えば10nm以上100nm以下程度である。
【0043】
表面酸化膜5は、Ni成膜3に接し、Ni成膜3の外周に沿ってNi成膜3の周囲を囲む。表面酸化膜5は、おもて面電極2とパッシベーション膜4との間をおもて面電極2の端部まで延在する。表面酸化膜5は、おもて面電極2の表面のうち、Ni成膜3が形成された部分を除く全面を覆う。すなわち、おもて面電極2の表面は、表面酸化膜5およびNi成膜3で覆われており、おもて面電極2の表面は露出されていない。表面酸化膜5の表面にはんだ層6は形成されない。
【0044】
表面酸化膜5は、パッシベーション膜4や封止材(不図示)の密着力を向上させる機能を有する。また、表面酸化膜5は、おもて面電極2の腐食を防止するバリア膜として機能する。封止材は、半導体基板1が実装される半導体モジュールの樹脂ケース内に充填されて半導体基板1のおもて面および側面の全体を覆って、半導体基板1を外的要因(光や熱、湿気、塵、機械的外力等)から保護する機能を有する。封止材の材料として、例えばポリイミド等が用いられる。
【0045】
ポリイミドを材料とするパッシベーション膜4や封止材は、Alを材料とするおもて面電極2への密着性が低い。また、おもて面電極2の、パッシベーション膜4や他の金属膜(ここではNi成膜3)で覆われずに露出された表面は、例えば高湿環境下で腐食し、封止材との密着性が低くなる。パッシベーション膜4や封止材が剥離した箇所には半導体装置10のパワーサイクルによって熱応力が集中し、さらに半導体装置10のパワーサイクルで当該剥離の範囲が経時的に広がることで、半導体装置10の寿命が短くなる。
【0046】
実施の形態1においては、おもて面電極2の表面に化学的に安定な表面酸化膜5が設けられている。当該表面酸化膜5によってパッシベーション膜4および封止材の密着力が高くなっている。このため、パッシベーション膜4および封止材の剥離が抑制され、パワーサイクル耐量を向上させることができる。パワーサイクル耐量とは、パワーサイクルで生じる熱応力による半導体装置10の疲労や劣化の進行度合い(寿命)であり、半導体装置10の動作条件や動作環境によって異なる。
【0047】
また、例えば、おもて面電極2が腐食した場合、おもて面電極2の腐食の過程で発生する電荷が蓄積されることで半導体基板1のおもて面側の電界分布が変化してしまうが、実施の形態1においては、パッシベーション膜4の開口部4aの側壁から離れてNi成膜3を配置しても、表面酸化膜5によっておもて面電極2は露出されないため、おもて面電極2の腐食を防止することができる。したがって、半導体基板1のおもて面側の電界分布が設計から変化することを抑制することができる。
【0048】
実施の形態1にかかる半導体装置の製造方法について説明する。
図4~11は、実施の形態1にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。まず、
図4に示すように、炭化珪素からなる半導体基板1のおもて面側に、所定の素子構造(不図示)を形成する(第1工程)。次に、半導体基板1のおもて面の全面に、おもて面電極2となる例えばAlSi等のAl合金成膜(電極層)11を形成する(第2工程)。
【0049】
次に、
図5に示すように、スパッタリングにより、Al合金成膜11の表面の全面にNi成膜12を形成(成膜)する(第5工程)。さらにNi成膜12の表面にスパッタリングにより金(Au)成膜を形成してもよいが、スパッタリングによってAu膜(Au成膜)を形成することで半導体基板1の重金属汚染が起きる虞がある。このため、スパッタリングによるAu成膜は形成しないことがよい。
【0050】
次に、
図6に示すように、Ni成膜12の表面に、金属配線のはんだ接合領域を覆うレジストマスク(レジスト膜)13を形成する(第5工程)。次に、
図7に示すように、レジストマスク13を用いてエッチングによりNi成膜12を選択的に除去することで、後述するモジュール組み立て工程において金属配線がはんだ接合される部分(すなわちNi成膜3)を残すとともに、当該Ni成膜3の周囲を囲むようにAl合金成膜11を露出させる(第5工程)。
【0051】
次に、
図8に示すように、Ni成膜3のエッチングに用いた同一のレジストマスク13をマスクとして用いて、例えば酸素(O
2)雰囲気でのプラズマ酸化または熱酸化により、Al合金成膜11の露出面を酸化して表面酸化膜5を形成する(第6工程)。この酸化処理は、Al合金成膜11の材料の融点未満の温度(例えば400℃以下程度、好ましくは300℃以下程度)で行う。そして、
図9に示すように、レジストマスク13を除去する(第6工程)。
【0052】
上述したようにNi成膜3のエッチングに用いた同一のレジストマスク13をマスクとして用いてAl合金成膜11の露出面を酸化することで、Al合金成膜11の表面のうち、Ni成膜3を残した部分を除く全面に表面酸化膜5を自己整合に形成することができる。これによって、Ni成膜3に接してNi成膜3の周囲を囲み、かつ外側(半導体基板1の端部側)へおもて面電極2の端部まで達する表面酸化膜5が形成される。
【0053】
次に、
図10に示すように、半導体基板1のおもて面に、おもて面電極2の形成領域を覆うレジストマスク14を形成する。Ni成膜3の全体がレジストマスク14に覆われる。次に、
図11に示すように、レジストマスク14を用いてエッチングによりAl合金成膜11および表面酸化膜5を選択的に除去(パターニング)し、Al合金成膜11のうち、おもて面電極2となる部分のみを残す。そして、レジストマスク14を除去する。
【0054】
次に、一般的な方法により、半導体基板1のおもて面の全面にパッシベーション膜4形成して開口部4aを開口し、開口部4aの側壁から離れてNi成膜3が配置されるように、おもて面電極2の電極パッドとなる部分を露出させる(第3,4工程)。おもて面電極2の表面はNi成膜3を残した部分を除く全面を表面酸化膜5で覆われているため、パッシベーション膜4の開口部4aの側壁とNi成膜3との間に表面酸化膜5のみが露出される。
【0055】
次に、パッシベーション膜4を硬化(キュア)するための熱処理を行う。パッシベーション膜4のキュア温度は、パッシベーション膜4のキュアに最低限必要な例えば250℃以上で、かつ300℃以下程度であることがよい。パッシベーション膜4のキュア温度を上記上限値以下とすることで、パッシベーション膜4のキュアによって発生する熱応力によるNi成膜3でのクラック発生を防止することができる。
【0056】
また、Ni成膜3でのクラック発生防止のためにパッシベーション膜4のキュア温度を上記上限値以下程度として十分に高くすることができなくても、おもて面電極2の表面酸化膜5によってパッシベーション膜4の密着力が高くなっている。このため、パッシベーション膜4の剥離を抑制することができる。ここまでの工程で、
図1,2に示す半導体装置10が完成する。
【0057】
次に、一般的なモジュール組立工程により、半導体基板1(半導体装置10)を樹脂ケース内の回路基板(不図示)上に実装して、おもて面電極2上のNi成膜3に金属配線(不図示)をはんだ接合し、樹脂ケース内を例えばポリイミド等の封止材で充填する。金属配線のはんだ接合時、はんだの濡れ広がりはNi成膜3上で止まり、Ni成膜3上にのみ、はんだ層6が形成される。これによって、
図3に示す半導体モジュールが完成する。
【0058】
上述したようにパッシベーション膜4の開口部4aの側壁から離れてNi成膜3が配置される。これによって、おもて面電極2への金属配線のはんだ接合時に、はんだの濡れ広がりをNi成膜3上で止めることができる。また、はんだの濡れ広がりがNi成膜3上から外側へ広がっても、パッシベーション膜4の開口部4aの側壁とNi成膜3との間は絶縁膜(表面酸化膜5)であるため、はんだ層6はNi成膜3上にのみ形成される。
【0059】
以上、説明したように、実施の形態1によれば、おもて面電極のパッシベーション膜の開口部に露出された部分(おもて面電極の電極パッドとなる部分)の表面上に、パッシベーション膜の開口部の側壁から離れて、はんだ濡れ性の高いNi成膜が設けられている。このおもて面電極上のNi成膜に金属配線がはんだ接合される。また、Alを材料としたおもて面電極の表面は、Ni成膜を形成した部分を除く全面を、おもて面電極の表面を意図的に酸化して形成された絶縁膜(表面酸化膜)で覆われている。おもて面電極とパッシベーション膜および封止材との間に、おもて面電極の表面酸化膜が介在する。
【0060】
金属配線のはんだ接合時、はんだの濡れ広がりはNi成膜上で止まる。Ni成膜上からパッシベーション膜側へはんだが濡れ広がっても、パッシベーション膜の開口部の側壁とNi成膜との間におもて面電極の表面酸化膜が露出するため、Ni成膜上にのみはんだ層が形成され、従来構造(
図19参照)のように、半導体装置のパワーサイクルによるおもて面電極の表面への局所的な応力集中箇所となる3重点(パッシベーション膜、めっき膜およびはんだ層が1つの点で接する箇所)は形成されない。したがって、パワーサイクル耐量を向上させることができる。
【0061】
また、おもて面電極の表面酸化膜によってパッシベーション膜および封止材との密着性が高くなっている。このため、パッシベーション膜のキュア温度を十分に高くすることができなくても、パッシベーション膜の剥離を抑制することができる。また、おもて面電極の表面酸化膜によっておもて面電極の腐食を抑制することができるため、封止材の剥離を抑制することができる。このように、半導体装置のパワーサイクルによって局所的に応力が集中する箇所(パッシベーション膜および封止材の剥離箇所)が生じにくい。したがって、パワーサイクル耐量を向上させることができる。
【0062】
(実施の形態2)
実施の形態2にかかる半導体装置の製造方法について説明する。実施の形態2にかかる半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトは実施の形態1(
図1参照)と同様である。
図12は、実施の形態2にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。
図12には、
図1の切断線A-A’における断面構造を示す。
図13~17は、実施の形態2にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。実施の形態2にかかる半導体装置20のおもて面電極2に金属配線をはんだ接合した状態は、
図3のNi成膜3および表面酸化膜5を
図12のめっき膜21および表面酸化膜22に代えたものと同様である。
【0063】
図12に示す実施の形態2にかかる半導体装置20の製造方法が実施の形態1にかかる半導体装置10(
図1,2参照)の製造方法と異なる点は、スパッタリングによるNi成膜3に代えて、めっき処理によってNiめっき膜等のめっき膜(金属膜)21を形成した点である。めっき膜21は、実施の形態1のNi成膜3と同様に、パッシベーション膜4の開口部4a内においておもて面電極2上に、パッシベーション膜4の開口部4aの側壁から離れて配置される。めっき膜21は、例えば、Niめっき膜およびAuめっき膜をこの順に積層してなる積層膜(
図12,16,17には「Ni/Au」と図示)である。
【0064】
めっき膜21の表面に、はんだ層6を介して金属配線が接合される。めっき膜21によって、おもて面電極2の表面のはんだ濡れ性が向上し、おもて面電極2への金属配線のはんだ接合性が向上される。めっき膜21をパッシベーション膜4の開口部4aの側壁から離れて配置することで、めっき膜21上にのみはんだ層6が形成され、はんだ層6とパッシベーション膜4とが接触しない。めっき膜21とパッシベーション膜4との間に、おもて面電極2の表面を意図的に酸化させて形成した表面酸化膜22(ハッチング部分)が設けられている。表面酸化膜22は、おもて面電極2とパッシベーション膜4との間には設けられていない。
【0065】
具体的には、まず、実施の形態1と同様に、所定の素子構造(不図示)の形成(第1工程)と、おもて面電極2となるAl合金成膜11の形成(第2工程)と、を順に行う(
図4参照)。次に、
図13に示すように、一般的な方法により、Al合金成膜11をエッチングして選択的に除去(パターニング)し、Al合金成膜11のうち、おもて面電極2となる部分のみを残す。次に、
図14に示すように、次に、一般的な方法により、半導体基板1のおもて面の全面にパッシベーション膜4を形成して開口部4aを開口し、おもて面電極2の電極パッドとなる部分を露出させる(第3,4工程)。
【0066】
そして、パッシベーション膜4を硬化(キュア)するための熱処理を行う。パッシベーション膜4のキュアを段階的に行ってもよい(ステップキュア)。パッシベーション膜4キュア温度(ステップキュアの場合は後工程であるポストキュア(Postcure)温度)は、例えば250℃以上である。パッシベーション膜4のキュア後(ステップキュアの場合はポストキュア後)にめっき膜21を形成する場合、パッシベーション膜4のキュア温度(ステップキュアの場合はポストキュア温度)を例えば380℃程度に十分に高くすることができる。
【0067】
次に、
図15に示すように、半導体基板1のおもて面に、めっき膜21の形成領域を開口したレジストマスク(レジスト膜)31を形成する(第5工程)。レジストマスク31は、表面酸化膜22の形成領域を覆い、パッシベーション膜4の開口部4aの側壁全面に接する。レジストマスク31は、パッシベーション膜4を覆ってもよい。レジストマスク31によって、おもて面電極2の電極パッドとなる部分の露出面積が小さくなる。レジストマスク31は、パッシベーション膜4のキュア前で形成されてもよいが、パッシベーション膜4のキュア後に形成されることがよい。
【0068】
次に、
図16に示すように、一般的なめっき処理により、めっき膜21として、Niめっき膜およびAuめっき膜をこの順に形成する(第5工程)。めっき膜21は、おもて面電極2の露出面上(すなわち、おもて面電極2のレジストマスク31の開口部31aに露出する部分)のみに形成される。めっき処理によってAu膜(Auめっき膜)を形成することで、半導体基板1の重金属汚染を防止することができる。このため、おもて面電極2への金属配線のはんだ接合性を向上させるための金属膜の最表面を、はんだ濡れ性および耐腐食性の高いAu膜(Auめっき膜)とすることができる。
【0069】
そして、
図17に示すように、レジストマスク31を除去する(第5工程)。これによって、レジストマスク31の幅(レジストマスク31の開口部31aの側壁からパッシベーション膜4の開口部4aの側壁までのレジスト厚さ)分だけ、パッシベーション膜4の開口部4aの側壁とめっき膜21との間に隙間が生じ、当該隙間におもて面電極2が露出される。レジストマスク31の形成に代えて、高温度(例えば250℃以上程度)でのキュアによるパッシベーション膜4の熱収縮を利用して、パッシベーション膜4の開口部4aの側壁とめっき膜21との間におもて面電極2を露出させてもよい。この場合、例えば、次のようにパッシベーション膜4をステップキュアすればよい。
【0070】
高温度でのキュアによるパッシベーション膜4の熱収縮を利用する場合、例えば、開口部4aを形成したパッシベーション膜4への前処理であるプレキュア(Precure:仮キュア)後、パッシベーション膜4の開口部4aに露出するおもて面電極2の全面にめっき膜21を形成する。その後、高温度でのポストキュアによってパッシベーション膜4が熱収縮してめっき膜21から離れる方向に後退する。これによって、パッシベーション膜4の開口部4aの側壁とめっき膜21との間に隙間が生じ、当該隙間におもて面電極2が露出される。この場合、めっき膜21でのクラック発生を防止するために、パッシベーション膜4のポストキュア温度は、例えば300℃以下程度であることがよい。
【0071】
次に、めっき膜21およびパッシベーション膜4をマスクとして用いておもて面電極2の露出面を酸化する(第6工程)。表面酸化膜22を形成するための酸化処理条件は、実施の形態1の表面酸化膜5を形成するための酸化処理条件と同じである。これによって、めっき膜21とパッシベーション膜4との間においておもて面電極2の全面に表面酸化膜22が自己整合に形成される。めっき膜21の最表面がAuめっき膜であることで、めっき膜21は酸化されない。ここまでの工程で、
図12に示す半導体装置20が完成する。その後、実施の形態1と同様に一般的なモジュール組立工程を行うことで、実施の形態1と同様に半導体モジュールが完成する。
【0072】
以上、説明したように、実施の形態2によれば、めっき処理を用いておもて面電極の表面のはんだ濡れ性を向上させる金属膜として形成した場合においても、パッシベーション膜の開口部の側壁とNi成膜との間においておもて面電極の表面が絶縁膜(表面酸化膜)で覆われるため、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0073】
(実施の形態3)
実施の形態3にかかる半導体装置として、上述した実施の形態1,2にかかる半導体装置の製造方法を適用して作製(製造)された半導体装置の構造例について説明する。このため、実施の形態3にかかる半導体装置(以下、半導体装置10,20とする)を半導体基板1のおもて面側から見た全体のレイアウトは
図1に示されている。
図18は、実施の形態3にかかる半導体装置の構造を示す断面図である。
【0074】
図18には、活性領域に隣接して配置される同一構造の複数の単位セル(素子の機能単位)のうちの、パッシベーション膜4に覆われた1つの単位セルを示す。すなわち、パッシベーション膜4に覆われた単位セルの最表面はパッシベーション膜4であり、パッシベーション膜4の開口部4a(
図2,12参照)に配置された単位セルの最表面は実施の形態1のNi成膜3(もしくは実施の形態2のめっき膜21)または表面酸化膜5である。
【0075】
図18に示す実施の形態3にかかる半導体装置10,20は、活性領域において半導体基板1のおもて面側にトレンチゲート構造(実施の形態1,2のおもて面電極2が電気的に接続される所定の素子構造に相当)を備えた縦型MOSFET(MOS Field Effect Transistor:MOSゲートを備えたMOS型電界効果トランジスタ)である。
【0076】
半導体基板1は、炭化珪素からなるn+型出発基板41のおもて面上にn-型ドリフト領域52およびp型ベース領域53となる各エピタキシャル層42,43を順にエピタキシャル成長させてなる。半導体基板1は、p型エピタキシャル層43側の主面をおもて面とし、n+型出発基板41側の主面を裏面とする。n+型出発基板41は、n+型ドレイン領域51である。
【0077】
活性領域において半導体基板1のおもて面側には、p型ベース領域53、n+型ソース領域54、p++型コンタクト領域55、ゲートトレンチ56、ゲート絶縁膜57およびゲート電極58で構成されたトレンチゲート構造のMOSゲートが設けられている。p型ベース領域53は、p型エピタキシャル層43の、n+型ソース領域54およびp++型コンタクト領域55を除く部分である。
【0078】
n+型ソース領域54およびp++型コンタクト領域55は、p型エピタキシャル層43にイオン注入により形成された拡散領域である。n+型ソース領域54およびp++型コンタクト領域55は、半導体基板1のおもて面とp型ベース領域53との間に、p型ベース領域53に接してそれぞれ選択的に設けられ、半導体基板1のおもて面でソース電極61にオーミック接触する。
【0079】
n+型ソース領域54は、ゲートトレンチ56の側壁でゲート絶縁膜57に接する。p++型コンタクト領域55は、n+型ソース領域54よりもゲートトレンチ56から離れて配置されている。p++型コンタクト領域55は設けられていなくてもよい。p++型コンタクト領域55を設けない場合、p++型コンタクト領域55に代えて、p型ベース領域53が半導体基板1のおもて面に達する。
【0080】
半導体基板1の内部において、p型ベース領域53とn+型ドレイン領域51(n+型出発基板41)との間に、n+型ドレイン領域51に接してn-型ドリフト領域52(n-型エピタキシャル層42)が設けられている。ゲートトレンチ56は、深さ方向に半導体基板1のおもて面からn+型ソース領域54およびp型ベース領域53を介してn-型エピタキシャル層42の内部で終端している。
【0081】
ゲートトレンチ56の内部に、ゲート絶縁膜57を介してゲート電極58が設けられている。p型ベース領域53とn-型ドリフト領域52との間において、ゲートトレンチ56の底面よりもn+型ドレイン領域51側に深い位置に、n型電流拡散領域(不図示)およびp+型領域59が設けられてもよい。n型電流拡散領域およびp+型領域59は、n-型エピタキシャル層42にイオン注入により形成された拡散領域である。
【0082】
n型電流拡散領域は、キャリアの広がり抵抗を低減させる、いわゆる電流拡散層(CSL:Current Spreading Layer)である。n型電流拡散領域は、p+型領域59およびゲートトレンチ56に隣接し、上面(n+型ソース領域54側の面)でp型ベース領域53に接し、下面(n+型ドレイン領域51側の面)でn-型ドリフト領域52に接する。
【0083】
p+型領域59は、図示省略する部分でソース電極61に電気的に接続されており、MOSFETのオフ時に空乏化して(もしくはn型電流拡散領域を空乏化させて、またはその両方)、ゲートトレンチ56の底面のゲート絶縁膜57にかかる電界を緩和させる機能を有する。p+型領域59は、p型ベース領域53と離れて設けられ、深さ方向にゲートトレンチ56の底面に対向する。
【0084】
p+型領域59は、ゲートトレンチ56の底面でゲート絶縁膜57に接してもよいし、ゲートトレンチ56から離れていてもよい。互いに隣り合うゲートトレンチ56間(互いに隣り合う単位セル間)において、ゲートトレンチ56の底面よりもn+型ドレイン領域51側に深い位置に、p型ベース領域53に接し、かつゲートトレンチ56およびp+型領域59と離れてp+型領域が設けられてもよい。
【0085】
この互いに隣り合うゲートトレンチ56間のp+型領域も、MOSFETのオフ時に空乏化して(もしくはn型電流拡散領域を空乏化させて、またはその両方)、ゲートトレンチ56の底面のゲート絶縁膜57にかかる電界を緩和させる機能を有する。このp+型領域、p+型領域59およびn型電流拡散領域が設けられている場合、n-型エピタキシャル層42の、これらの領域を除く部分がn-型ドリフト領域52である。
【0086】
層間絶縁膜60は、半導体基板1のおもて面のほぼ全面に設けられ、すべてのゲート電極58を覆う。層間絶縁膜60のコンタクトホール60aに、n+型ソース領域54およびp++型コンタクト領域55が露出されている。ソース電極61は、コンタクトホール60aを介して半導体基板1にオーミック接触して、n+型ソース領域54、p++型コンタクト領域55およびp型ベース領域53に電気的に接続されている。
【0087】
ソース電極61は、実施の形態1,2のおもて面電極2に相当する。ゲートパッド7(
図1参照)は、活性領域において半導体基板1のおもて面上に、層間絶縁膜60を介して設けられている。ゲートパッド7(
図1参照)は、ソース電極61と同じ階層にソース電極61と離れて設けられている。ゲートパッド7には、ゲート電極58が電気的に接続されている。
【0088】
パッシベーション膜62は、半導体基板1のおもて面の最表面(すなわちソース電極61および層間絶縁膜60の表面)の略全面を覆って、半導体基板1のおもて面を保護する表面保護膜である。パッシベーション膜62は、実施の形態1,2のパッシベーション膜4に相当する。ソース電極61の、パッシベーション膜62の開口部(実施の形態1,2の開口部4aに相当)に露出する部分はソースパッド(電極パッド)として機能する。
【0089】
ソース電極61の、パッシベーション膜62の開口部に露出する部分に、パッシベーション膜62の開口部の側壁から離れて、実施の形態1のNi成膜3(
図2参照)または実施の形態2のめっき膜21が設けられている。ソース電極61の表面は、Ni成膜3(もしくはめっき膜21)を形成した部分を除いて、ソース電極61の表面を意図的に酸化して形成された表面酸化膜5(
図2,12参照)で覆われている。
【0090】
表面酸化膜5は、少なくともパッシベーション膜62とNi成膜3(もしくはめっき膜21)との間にソース電極61の表面に設けられている。半導体基板1の裏面(n+型出発基板41の裏面)全面に、ドレイン電極63が設けられている。ドレイン電極63は、半導体基板1の裏面にオーミック接触して、n+型ドレイン領域51(n+型出発基板41)に電気的に接続されている。
【0091】
以上、説明したように、実施の形態3によれば、実施の形態1,2にかかる半導体装置の製造方法によって作製することができる。
【0092】
以上において本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、トレンチゲート構造に代えて、プレーナゲート構造が設けられていてもよい。また、本発明は、導電型(n型、p型)を反転させても同様に成り立つ。
【産業上の利用可能性】
【0093】
以上のように、本発明にかかる半導体装置および半導体装置の製造方法は、電力変換装置や種々の産業用機械などの電源装置などに使用されるパワー半導体装置に有用であり、特に高湿環境下で用いる半導体装置に適している。
【符号の説明】
【0094】
1 半導体基板
2 おもて面電極
3,12 Ni成膜
4,62 パッシベーション膜
4a パッシベーション膜の開口部
5,22 おもて面電極の表面酸化膜
6 はんだ層
7 ゲートパッド
10,20 半導体装置
11 Al合金成膜
13,14,31 レジストマスク
21 めっき膜
31a レジストマスクの開口部
41 n+型出発基板
42 n-型エピタキシャル層
43 p型エピタキシャル層
51 n+型ドレイン領域
52 n-型ドリフト領域
53 p型ベース領域
54 n+型ソース領域
55 p++型コンタクト領域
56 ゲートトレンチ
57 ゲート絶縁膜
58 ゲート電極
59 p+型領域
60 層間絶縁膜
60a 層間絶縁膜のコンタクトホール
61 ソース電極
63 ドレイン電極
t1 おもて面電極の表面酸化膜の厚さ