(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044216
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】組み合わせ寝具およびオーバーレイ型マットレス
(51)【国際特許分類】
A47C 27/00 20060101AFI20240326BHJP
A47C 19/12 20060101ALI20240326BHJP
A47C 19/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
A47C27/00 Z
A47C19/12 Z
A47C19/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149618
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】509180658
【氏名又は名称】株式会社バイオフェイス東京研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100110434
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 勝
(72)【発明者】
【氏名】溝垣 友通
【テーマコード(参考)】
3B096
【Fターム(参考)】
3B096AA00
(57)【要約】
【課題】 マットレスと組み合わせて敷寝具として使用される組み合わせ寝具であって、広い範囲の表面を確保しながら十分に睡眠できる構造の組み合わせ寝具を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明の組み合わせ寝具は、床面上に配される台と、前記台の上面に載置されるマットレスからなる組み合わせ寝具であって、複数の部分台をそれらの上面が連続するように合わせて前記台が構成され、前記マットレスは前記台の上面のほぼ全面を覆うサイズに形成されることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面上に配される台と、前記台の上面に載置されるマットレスからなる組み合わせ寝具であって、
複数の部分台をそれらの上面が連続するように合わせて前記台が構成され、
前記マットレスは前記台の上面のほぼ全面を覆うサイズに形成される
ことを特徴とする組み合わせ寝具。
【請求項2】
請求項1記載の組み合わせ寝具であって、前記マットレスのサイズは140cm角よりも大きく400cm角よりも小さくされることを特徴とする組み合わせ寝具。
【請求項3】
請求項1記載の組み合わせ寝具であって、前記マットレスの厚みは、1cm乃至9cmの範囲であることを特徴とする組み合わせ寝具。
【請求項4】
請求項1記載の組み合わせ寝具であって、前記マットレスの表面反発力は、ゴルフボールを高さ60cmから自由落下させた場合に、最初の反発力での到達高さが約25cm以上であることを特徴とする組み合わせ寝具。
【請求項5】
請求項1記載の組み合わせ寝具であって、前記マットレスは、単位面積当たりの重さが1.2kg/m2もしくはそれ以上であることを特徴とする組み合わせ寝具。
【請求項6】
請求項1記載の組み合わせ寝具であって、前記マットレスは発泡性合成樹脂材、高反発ポリエステル綿熱処理材、もしくはこれらの組み合わせからなることを特徴とする組み合わせ寝具。
【請求項7】
請求項1記載の組み合わせ寝具であって、前記複数の部分台は、同等サイズの箱を組み合わせてなることを特徴とする組み合わせ寝具。
【請求項8】
請求項1記載の組み合わせ寝具であって、前記部分台は、折りたたみ可能な部材であることを特徴とする組み合わせ寝具。
【請求項9】
請求項1記載の組み合わせ寝具であって、前記部分台は、折りたたみ可能な段ボールであることを特徴とする組み合わせ寝具。
【請求項10】
請求項1記載の組み合わせ寝具であって、前記部分台は、液体を収納できる容器であることを特徴とする組み合わせ寝具。
【請求項11】
請求項1記載の組み合わせ寝具であって、前記複数の部分台の連続された上面は一部に斜面を含むことを特徴とする組み合わせ寝具。
【請求項12】
複数の部分台を合わせた台の連続する上面に載置可能なオーバーレイ型マットレスであって、前記オーバーレイ型マットレスのサイズは前記台の上面のほぼ全面を覆うサイズからなることを特徴とするオーバーレイ型マットレス。
【請求項13】
請求項12記載のオーバーレイ型マットレスであって、前記オーバーレイ型マットレスは単位面積当たりの重さが1.2kg/m2もしくはそれ以上であることを特徴とするオーバーレイ型マットレス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の部分台とマットレスを使用する組み合わせ寝具およびオーバーレイ型マットレスに関する。
【背景技術】
【0002】
発泡ウレタン素材などの発泡樹脂を使用した寝具や敷物、クッションなどの日用品は、例えば人々が寝転ぶ場合では通常その発泡樹脂を用いた部分が変形して潰れるとともに接触した部分の表面積を広げた形で体重や圧力を受け止めるように構成されている。発泡樹脂は成型時に気泡を内包するようにしており、成型後では、圧力を受けた場合に気泡部分が大きく変形して体積を縮小させ、圧力を解除したところで形が元に戻る。
【0003】
ところで、家族構成や住宅事情などに依存するものの、複数人数の就眠者が同時にシングルサイズの布団やマットレスなどを並べて使用する場合があり、個々の敷布団やマットレスはシングルサイズ(例えば180cm×90cm)であっても並べて使用することで、キングサイズ(例えば200cm×200cm)に近い使い勝手を利用することができる。このように2台の敷布団やマットレスを並べた場合の隙間を埋めるための隙間パッド(例えば、特許文献1、2参照。)も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3215277号
【特許文献2】実用新案登録第3202978号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、隙間パッドのような部材を配置しても、小さな子供などの場合には、手や足が隙間パットの端部から入り込んで就眠中に健康を損なうような寝方になってしまう恐れもある。また、大きめ寝具などを使って寝転ぶ場所を広く使いたい要求はあるものの、床に対して大きな専有面積を占めるような台を配置することは、住宅事情から敬遠されがちであり、しっかりとした固定式の台やマットを使用する場合には、時として邪魔になることがある。
【0006】
そこで、本発明は、マットレスと組み合わせて敷寝具として使用される組み合わせ寝具であって、広い範囲の表面を確保しながら十分に睡眠できる構造の組み合わせ寝具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の技術的な課題を解決するため、本発明の組み合わせ寝具は、床面上に配される台と、前記台の上面に載置されるマットレスからなる組み合わせ寝具であって、複数の部分台をそれらの上面が連続するように合わせて前記台が構成され、前記マットレスは前記台の上面のほぼ全面を覆うサイズに形成されることを特徴とする。
【0008】
本発明の実施形態にかかる組み合わせ寝具においては、そのマットレスは種々の素材を用いることができるが、例えば発泡性合成樹脂材、高反発ポリエステル綿熱処理材、もしくはこれらの組み合わせから構成することができる。発泡性合成樹脂材の例としては、軟質もしくは硬質のウレタン樹脂、スチレン樹脂、エチレン樹脂、プロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、あるいは塩化ビニル樹脂などを用いることができる。高反発ポリエステル綿熱処理材としては、後述するような製法で調整できるものを使用することができ、さらにポリエステル綿と綿の混紡素材を使用することもできる。
【0009】
本発明の好適な実施形態にかかる組み合わせ寝具に用いられるマットレスについては、所望のサイズに切断することで形成でき、一例としてマットレスの複数の部分台の上面に亘るサイズとしては、140cm角よりも大きく300cm角よりも小さくされ、より好ましくは175cm角以上で245cm角以下のサイズとされ、縦横が同じサイズのものに限定されず、縦横のどちらかが長くなるようなサイズであっても良い。
【0010】
また、本発明の好適な実施形態にかかる組み合わせ寝具に用いられるマットレスについては、例えばそのマットレスの厚みは、1cm乃至4cmの範囲とすることができ、より好ましくは1.5cm乃至3.3cmの範囲とすることができる。また、本発明の一例の組み合わせ寝具のマットレスにおいては、単位面積当たりの重さが1.2kg/m2もしくはそれ以上であり、より好ましくは1.5kg/m2もしくはそれ以上とすることができる。
【0011】
さらに本発明の好適な実施形態にかかる組み合わせ寝具に用いられるマットレスにおいては、マットレスの表面反発力は、例えばゴルフボールを高さ60cmから自由落下させた場合に、最初の反発力での到達高さが約25cm以上であり、より好ましくは約28cm以上に設定することができる。
【0012】
このような組み合わせ寝具は、台を構成する複数の部分台を有しており、複数の部分台はその状況に応じて種々の部材を以って構成することができる。本明細書において、部分台は広く解釈されるものであり、マットレスを面で支えることのできる部材であれば良い。部分台の例としては、例えば、敷布団やシングルサイズ、クイーンサイズのベッドはもちろんのこと、それ以外にもソファー、クッションや、木箱、段ボール、みかん箱、茶箱、酒類の瓶を運ぶコンテナーなど種々の素材のものや、それらの組み合わせも含む。部分台の一部が建物などに固定してあっても良い。また、必ずしも住居用の敷寝具に限定するものでもなく、病院やホテルなどの業務用や乗り物、その他の施設の一部で人が寝転がってあるいは座って利用する様なあらゆる形態に適用できる。マットレスは必ずしも常時使用するものに限らず、一時的な利用も含む。
【0013】
本実施形態における組み合わせ寝具に用いる部分台は、例えば、同等サイズの箱を組み合わせることもでき、折りたたみ可能な部材、例えば、折りたたみ可能な段ボールを用いることができる。また、水などの液体を収納させる容器を部分台とすることもでき、さらに複数の部分台の連続された上面は一部に斜面を含むようにすることもできる。
【0014】
また、本発明の実施形態にかかるオーバーレイ型マットレスは、上述のような組み立て寝具に使用されるオーバーレイ型マットレスであって、前記オーバーレイ型マットレスのサイズは前記台の上面のほぼ全面を覆うサイズからなることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態の、硬化オーバーレイ型マットレスを一対のマット上で使用する組み合わせ寝具の一例を示す模式的な斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態の組み合わせ寝具の一例に用いる硬化オーバーレイ型マットレスの模式的な上面図である。
【
図3】本発明の実施形態の組み合わせ寝具の使用状態を示す斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態の硬化オーバーレイ型マットレスについて行ったゴルフボールを用いた反発力比較実験を説明する模式図である。
【
図5】本発明の実施形態の組み合わせ寝具に用いる硬化オーバーレイ型マットレスの製造方法の一例を説明するための流れ図である。
【
図6】本発明の実施形態の、硬化オーバーレイ型マットレスを二対のマット上で使用する組み合わせ寝具の一例を示す模式的な斜視図である。
【
図7】本発明の実施形態の、硬化オーバーレイ型マットレスを3つのマット上で使用する組み合わせ寝具の一例を示す模式的な斜視図である。
【
図8】本発明の実施形態の、硬化オーバーレイ型マットレスを4つのマット上で使用する組み合わせ寝具の一例を示す模式的な斜視図である。
【
図9】本発明の実施形態の、硬化オーバーレイ型マットレスを2つの大きさの異なるマット上で使用する組み合わせ寝具の一例を示す模式的な斜視図である。
【
図10】本発明の実施形態の組み合わせ寝具に用いる部分台として、折り畳み式の段ボール箱を使用した例を示す斜視図である。
【
図11】本発明の実施形態の組み合わせ寝具に用いる部分台として、水を収納する容器を使用した例を示す斜視図である。
【
図12】本発明の実施形態の組み合わせ寝具に用いる部分台として、一部に引き出し収納家具を使用した例を示す斜視図である。
【
図13】本発明の実施形態の変形例のマットレスの模式的な断面図である。
【
図14】本発明の実施形態の他の変形例のマットレスの模式的な断面図である。
【
図15】本発明の実施形態の組み合わせ寝具に用いる部分台として、一部に斜面を有する部材を配した組み合わせ寝具の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の組み合わせ寝具の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、硬化オーバーレイ型マットレス10を用いた組み合わせ寝具を説明するための模式的な斜視図であり、並べて配置される一対の部分台としてのマット12、16が配されており、これらマット12、16の間には、並べて配置したとしても僅かな隙間14が存在する。これらマット12、16の上面は寝ようとする者がそれぞれの姿勢で横たわることが可能とされるが、さらにその上面を覆うように硬化オーバーレイ型マットレス10が配置され、全体として大きなサイズのベッドとして利用可能な組み合わせ寝具となる。
【0017】
なお、本明細書においてマットレスの用語については、広く解されるものであって、単独で使用することも可能であり、例えばキルティングや被覆するカバーなどを備えていても良い。硬化オーバーレイ型マットレス10の上にシーツやタオルを被せて利用することも可能である。また、硬化オーバーレイ型マットレス10の下に配置される台としての一対の部分台も広く解されるものであって、敷布団やシングルサイズ、クイーンサイズなどのベッドはもちろんのこと、それ以外にもソファー、クッションや、木箱、段ボールなど種々の素材のものや、それらの組み合わせも含む。部分台の一方が建物などに固定してあっても良い。また、必ずしも住居用の部分台に限定するものでもなく、病院やホテルなどの業務用や乗り物、その他の施設の一部で人が寝転がってあるいは座って利用する様なあらゆる形態に適用できる。硬化オーバーレイ型マットレスは必ずしも常時使用するものに限らず、一時的な利用も含む。
【0018】
硬化オーバーレイ型マットレス10を構成する素材としては、種々の素材を用いることができるが、ここでは高反発ポリエステル綿熱処理材により硬化オーバーレイ型マットレス10が構成される。また、代替え的には、硬化オーバーレイ型マットレス10を例えば発泡性合成樹脂材、もしくは高反発ポリエステル綿熱処理材と発泡性合成樹脂材の組み合わせから構成することができる。発泡性合成樹脂材を用いる場合では、例えば軟質もしくは硬質のウレタン樹脂、スチレン樹脂、エチレン樹脂、プロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、あるいは塩化ビニル樹脂などを用いることができる。
【0019】
本実施形態の組み合わせ寝具に用いられる硬化オーバーレイ型マットレス10は、硬化されて連続的に形成された硬化ポリエステルシートを所望のサイズに切断して製品化される。硬化ポリエステルシートの複数の部分台の上面に亘るサイズとしては、例えば140cm角よりも大きく400cm角よりも小さくされ、より好ましくは175cm角以上で245cm角以下のサイズとされ、縦横が同じサイズのものに限定されず、縦横のどちらかが長くなるようなサイズであっても良い。このような硬化オーバーレイ型マットレス10のサイズの例としては、
図2のW(幅)とL(長さ)の関係で説明すると、例えば140cm×205cm、160cm×205cm、180cm×205cm、200cm×205cm、240cm×205cm、280cm×205cm、300cm×205cm、400cm×205cmのようなサイズを有することができ、この中でL(長さ)の205cmは200cmのような丁度のサイズとしても良く、幅についても数センチ程度の増減は許容される。また、これらのサイズを有する硬化ポリエステルシートの厚みは、例えば1cm乃至9cmの範囲とされ、より好ましくは1cm乃至4cmの範囲とされる。これらのサイズと厚みは例示であり、切断法や製造方法を調整することで他の平面サイズや厚みにできることは言うまでもない。
【0020】
図3は使用者20、22が本実施形態の硬化オーバーレイ型マットレス10を用いて寝ている状態の模式図である。もし硬化オーバーレイ型マットレス10が存在しない場合では、一対の例えばシングルサイズのマット12、16の間の隙間14に使用者22がはまり込んでしまうような可能性もある。しかし、硬化オーバーレイ型マットレス10を一対のマット12、16の上面を覆うように載置したところで、隙間14には使用者20、22のいずれもが嵌るようなこともなくなり、安心して睡眠をすることができる。ここで本実施形態の硬化オーバーレイ型マットレス10は、発泡樹脂製ではなく熱処理により硬化させていることから、隙間14が数センチ程度に開いた場合でも大きな窪みを生じることなく、使用者20、22を硬化オーバーレイ型マットレス10の上面上に安定して支持することができる。すなわち、使用者20、22は、ウレタンに比べて硬いが十分なクッション性を有する硬化オーバーレイ型マットレス10の上で、隙間14の上であっても過度に沈み込むことも無く寝るときの姿勢を維持することができ、さらに硬化オーバーレイ型マットレス10はその構造に起因して通気性も優れることから、快適な安眠をすることができる。
【0021】
硬化オーバーレイ型マットレス10に用いられる高反発ポリエステル綿熱処理材の材質は、100%のポリエステル綿を主な材料としており、種類の異なるポリエステル綿を配合してシート状に加工し、そのシート状に加工されたポリエステル綿シートを積層したところで熱圧着させ、次いで熱処理を加えて硬化された硬化ポリエステルシートからなる。ここでポリエステル綿とはポリエステル繊維を綿に加工したもので、特徴は弾力性が高いことで知られ、ソファー・布団・クッション・ぬいぐるみなどに使用される綿状の繊維の塊である。ポリエステル綿はちぎって分けることも可能であるが、本実施例では、それらをプレス加工して所要の厚みのシート化を図った硬化ポリエステルシートに仕上げている。完成した硬化ポリエステルシートの重量としては、圧縮されていることから、単位面積当たりの重さが1.2kg/m2もしくはそれ以上であることが望ましく、典型的には硬化ポリエステルシートは1.3kg/m2乃至2.0kg/m2の範囲での重さを有す。
【0022】
硬化オーバーレイ型マットレス10に用いられる硬化ポリエステルシートは、種類の異なるポリエステル綿を配合することで得られるシートであり、特に低融点ポリエステル綿を混ぜることで、熱処理時に一時的に溶けたポリエステル綿と溶けないポリエステル綿が混在する状態を作り、そこから極めて短い時間の冷却処理により、低融点ポリエステル綿を瞬時に固化させて全体的に硬く反発係数の高い硬化ポリエステルシートが得られることになる。一例を挙げれば、低融点ポリエステル綿は10乃至25%の重量比であり、再生ポリエステル綿は20乃至50%の重量比、通常のポリエステル綿は30乃至60%の重量比で均一に各ポリエステル綿を混ぜ合わせてポリエステル綿シートを得る。低融点ポリエステル綿としては、全体的に低融点のポリエステル繊維を綿状にしたものも使用することができ、芯はポリエステル綿とし、鞘の部分は共重合ポリエステルあるいはポリエチレンとなるような芯鞘で組成が異なるような繊維を用いることもできる。通常のポリエステル綿としては例えば12乃至18デニールの太ささのものを使用し、低融点ポリエステル綿としては例えば4乃至6デニールの太さの繊維を使用できる。
【0023】
製造時においては、例えば通常のポリエステル綿と、ペットボトルなどの再生資源を綿状に加工した再生ポリエステル綿と、低融点ポリエステル綿を均一になるように混ぜ、シート状のポリエステル綿シートを製造する。このシートを重ねるように折り返して、少しずつ送り、複数枚のポリエステル綿シートを熱圧着させる。具体的には熱ローラーなどにより圧力を加えて繊維を板状に加圧し、その際には低融点ポリエステルが溶融してシート内の隅々まで至るような温度に維持される。この加熱のため、比較的に大きさ規模の熱処理装置が使用され、熱圧着によりシート内の低融点ポリエステルの成分が溶融されながらポリエステル綿シートが熱処理装置内を搬送され、熱処理装置の最後に位置するブロワーで冷却風を当てて、溶融していた融点の低いポリエステル成分を硬化させる。圧縮されたポリエステル綿シートは固い状態となって硬化し、シート材の体積を減らして硬化されることになる。
【0024】
なお、硬化ポリエステルシートには、所望の難燃剤などを加えることも可能であり、抗菌性や防カビ性の材料を混ぜることも可能であるが、所望の難燃剤や抗菌性や防カビ性の材料については最終的な製品に塗布するようにしても良い。また、ウェブ状で熱処理装置から排出された硬化ポリエステルシートは、所要のサイズに切断され、カバーなどを付与して硬化オーバーレイ型マットレスが構成されることとなる。
【0025】
このような組み合わせ寝具の載置されるマットレスについては、本件発明者はその高反発性能についての試験を行っている。
図4はゴルフボールの落下試験を示す図である。ゴルフボールの落下試験は、ある一定の高さ、本試験では60cmの高さから、一定のゴルフボール22を本実施形態の硬化ポリエステルシートと比較例として高反発ポリウレタン材の表面にそれぞれ自由落下させ、それぞれシート表面で跳ねて到達した最大高さを計測した。すると、次の表1に示すように、本実施形態の硬化ポリエステルシート18では、大きく跳ね上がって最大33乃至40cm程度の高さまでの跳ね上がりが測定された。これに対して、比較例としての高反発ポリウレタン材20に対してゴルフボール22を自由落下させた場合では、約6cmの高さまでしか跳ね上がりがなく、その反発係数が著しく異なることが示された。
【0026】
【0027】
本実施形態の硬化オーバーレイ型マットレスに用いられる硬化ポリエステルシートは概ねどのような厚みでも高い反発力を示す傾向があり、例えば厚み(高さ)が10cmを越える硬化ポリエステルシートでは、約60cmの高さからゴルフボールを落下させた場合に、約45cm程度もしくはそれ以上となり、厚みが薄い場合には跳ね上がり高さが低くなる傾向がある。例えば硬化ポリエステルシートの厚みが1~2cm程度の薄い場合には、25~30cm程度となり得る。なお、ゴルフボールもそれぞれ反発が異なるため、いわゆる公認球(重さ:45.93グラム以内、直径:42.67mm以上、反発係数:0.800以内)を使用した。
【0028】
次に、本実施形態の硬化オーバーレイ型マットレスに用いられる硬化ポリエステルシートの製造工程の流れについて簡単に
図5を参照しながら説明する。一例として、本実施形態の硬化オーバーレイ型マットレスに用いられる硬化ポリエステル枕部材の製造では、巨大なベルトコンベヤーを配した製造ラインを利用することができ、初めに、製造に従事する職人が原料のポリエステル綿として、通常のポリエステル綿、再生ポリエステル綿、および低融点ポリエステル綿を手などでちぎりながらシート加工機に導入する(手順S10)。このシート加工機では、導入されたポリエステル綿を良く混ぜることができ、混ぜ合わされたポリエステル綿を平たく押し伸ばす(手順S12)。次に、流れ作業の中でシート加工機から排出されたポリエステル綿シートを何枚かの枚数のシートが重なるように積層させ(手順S14)、次いで熱ロールで加熱しながら積層されたシートを圧縮する(S16)。この圧縮工程で積層されていたポリエステル綿シートはその厚みが大きく減少されるように加工される。本実施形態の硬化ポリエステルシートの製造工程では、圧縮した後に引き続いて熱処理を施して(手順S18)、通常のポリエステル綿が圧縮されたまま熱を付与して低融点ポリエステル綿を溶かしで全体に広げ、最後に冷却風を当てることで瞬時に硬化させて硬化ポリエステルシートを固めることができる。硬化された硬化ポリエステルシートは、大きな糸鋸やレーザービームなどの切断装置を利用して切断され(手順S20)、最終的には大型のサイズの硬化ポリエステルシートからなる硬化オーバーレイ型マットレスを得ることができる(手順S22)。
【0029】
以上のように、本実施形態の組みあわせ寝具は、圧縮されて固化した高反発ポリエステル綿熱処理材などを用いるため、並んで配置された複数の敷寝具の上面に載置された場合に、窪みを作らずに使用者の就寝時の姿勢を安定させることができ、首痛や腰痛などの就寝時の姿勢に起因するような健康障害の発生を未然に防止できる。また、就寝時だけに限らず、例えばマットレスを使用した運動をするときにも隙間の窪みの発生を抑えることができ、使用者における怪我などの発生も未然に防止できる。
【0030】
図6は硬化高反発オーバーレイ型マットレス10を用いた組み合わせ寝具を示す斜視図である。
図6では、台部62は100cm×100cmの例えば段ボール製であり、組み立てることで上面が正方形の箱体である。このような台部62を縦横に2つずつ並べて台部とし、これに硬化高反発オーバーレイ型マットレス10を載置しても十分な寝具として機能する。段ボールであれば持ち運びや保管に場所を大きく占有することも無く、例えばキャンプや避難所などの一時的に使用する場合に重宝する。台部62の間の隙間の上であっても過度に沈み込むことも無く寝るときの姿勢を維持することができ、さらに硬化高反発オーバーレイ型マットレス10はその構造に起因して通気性も優れることから、使用者は快適に睡眠をとることができる。
【0031】
図7は3つのマット32、34、36の上面に硬化高反発オーバーレイ型マットレス30を用いた組み合わせ寝具を示す。ここで3つのマット32、34、36は例えば同じサイズで120cm×200cmであり、3つ並べた面を覆うようにマットレス30は例えば370cm×205cmの超大型サイズとされる。
【0032】
図8は4つのマット32、34、36、39の上面に硬化高反発オーバーレイ型マットレス30を用いた組み合わせ寝具を示す。ここで3つのマット32、34、36、39は例えば同じサイズで100cm×200cmであり、3つ並べた面を覆うようにマットレス30は例えば420cm×205cmの超大型サイズとされる。このようなサイズでは大人20が2名、子供22が2名のような利用も可能である。
【0033】
図9は2つのマット32、38の上面に硬化高反発オーバーレイ型マットレス30を用いた組み合わせ寝具を示す。ここで2つのマット32、38は例えば同じサイズではなく、一方のマット32は120cm×200cmであり、他方のマット38は240cm×200cmである。これらマット32、38の2つ並べた面を覆うようにマットレス30は配設され、例えば370×205cmの超大型サイズとされる。
【0034】
図10は組み立て寝具に用いられる台の一例を示す組み立て図であり、(a)は台の元となる段ボール72を展開した状態で積み上げた様子を示し、(b)はそれぞれ段ボール72を平たい直方体の箱型に組み立てて、それを3行3列のマトリクス状に床面上に配置した様子を示す。このように折り畳み式の段ボール72を利用することで、例えば通常は倉庫などに場所を取らない形で収納し、災害時には組み立てて台として並べ、その上には図示しない硬化高反発オーバーレイ型マットレス10を載置することができる。
【0035】
図11は組み立て寝具に用いられる台の他の一例を示す斜視図であり、硬化高反発オーバーレイ型マットレス10の下部に配される台は、複数の部分台を構成する複数の液体収納容器74であり、本実施形態では全部で4つの矩形の液体収納容器74が置かれている。4つの液体収納容器74の上面76は、少しの隙間があるものの例えば240cm×240cm程度の大きさの平面を構成し、その上に硬化高反発オーバーレイ型マットレス10を載置することができる。液体収納容器74は例えばポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂などの樹脂製であり、あるいは塩化ビニル樹脂やその他の軟質の樹脂などにより製造される。液体収納容器74の上面76を柔らかな素材で形成することで、本実施形態の組み立て寝具をウオーターベットにすることも可能である。液体収納容器74の上面には、液体の注入口78が設けられており、そこから水などの液体を注入できる。液体収納容器74に貯蔵されていた水は災害時には、風呂や洗濯、トイレなどの生活用の水としても利用できることになる。
【0036】
図12は組み立て寝具のさらに他の例として引き出し家具を一部に利用した組み立て寝具の例を示す。ロール状で引き出し可能な状態で硬化高反発オーバーレイ型マットレス50が壁に保持具58を介して保持されており、その下部には引き出し56が設けられた収納家具54が配されている。常時は、硬化高反発オーバーレイ型マットレス50は保持具58にロール状で壁際に保持されているが、使用時には硬化高反発オーバーレイ型マットレス50が引き出されて、収納家具54とさらなる部分台として機能する4つの箱52の上に展開する。なお、壁際での硬化高反発オーバーレイ型マットレス50の収納は、ロール状とするのみではなく、折り畳むような方式や別体とし必要な時だけ載せる方式でも良い。
【0037】
図13、14は本発明の硬化高反発オーバーレイ型マットレスの変形例を示す。
図13は2層構造のシートを示しており、下層は硬化ポリエステルシート40であり、上層はウレタンシート42である。それぞれの樹脂層の厚みは任意に調整でき、硬い硬化ポリエステルシート40だけでは固すぎるという場合に、上層のウレタンシート42が柔らかさをもたらす。このような構成でも下層の硬化ポリエステルシート40は芯として機能して、窪みなどの発生を抑えることができる。また、
図14は上層と下層は硬化ポリエステルシート44、40であり、中間層はウレタンシート42である。このような3層構造とすることで、両面を硬化ポリエステルシート44、40の面としながら、シート自体の剛性を中間層のウレタンシート42の厚みで調整できる。
【0038】
図15は組み立て寝具として、硬化高反発オーバーレイ型マットレス66が載置される複数の部分台が3つのマット62と斜面を備えた断面楔状のスペーサー64からなる例である。3つのマット62の上にスペーサー64を載せることで、部分台の上面は斜面を含んだ面となり、その上に硬化高反発オーバーレイ型マットレス66を配することで、硬化高反発オーバーレイ型マットレス66は底面の斜面を反映した形となり、水平面だけではない斜面を有する形に硬化高反発オーバーレイ型マットレス66の形状を変えることができる。
【符号の説明】
【0039】
10 硬化オーバーレイ型マットレス
12、16 マット
14 隙間
20、22 使用者
24 ゴルフボール
26 硬化ポリエステルシート
28 高反発ポリウレタン材
30 硬化高反発オーバーレイ型マットレス
32、34、36、38、39 マット
40、44 硬化ポリエステルシート
42 ウレタンシート
50 硬化高反発オーバーレイ型マットレス
52 箱
54 収納家具
56 引き出し
58 保持具
62 マット
64 スペーサー
66 硬化高反発オーバーレイ型マットレス
72 段ボール
74 液体収納容器
76 上面
78 注入口
【手続補正書】
【提出日】2024-02-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面上に配される台と、前記台の上面に載置されるマットレスからなる組み合わせ寝具であって、
複数の部分台をそれらの上面が連続するように合わせて前記台が構成され、
前記マットレスは低融点ポリエステル綿を含む種類の異なるポリエステル綿を配合することで、熱処理時に一時的に溶けたポリエステル綿と溶けないポリエステル綿が混在する状態を作り、冷却処理により溶けている低融点ポリエステル綿を瞬時に固化させて形成された硬化ポリエステルシートからなり、且つ前記台の上面のほぼ全面を覆うサイズに形成される
ことを特徴とする組み合わせ寝具。
【請求項2】
請求項1記載の組み合わせ寝具であって、前記マットレスのサイズは140cm角よりも大きく400cm角よりも小さくされることを特徴とする組み合わせ寝具。
【請求項3】
請求項1記載の組み合わせ寝具であって、前記マットレスの厚みは、1cm乃至9cmの範囲であることを特徴とする組み合わせ寝具。
【請求項4】
請求項1記載の組み合わせ寝具であって、前記マットレスの表面反発力は、ゴルフボールを高さ60cmから自由落下させた場合に、最初の反発力での到達高さが約25cm以上であることを特徴とする組み合わせ寝具。
【請求項5】
請求項1記載の組み合わせ寝具であって、前記マットレスは、単位面積当たりの重さが1.2kg/m2もしくはそれ以上であることを特徴とする組み合わせ寝具。
【請求項6】
請求項1記載の組み合わせ寝具であって、前記マットレスは発泡性合成樹脂材、高反発ポリエステル綿熱処理材、もしくはこれらの組み合わせからなることを特徴とする組み合わせ寝具。
【請求項7】
請求項1記載の組み合わせ寝具であって、前記複数の部分台は、同等サイズの箱を組み合わせてなることを特徴とする組み合わせ寝具。
【請求項8】
請求項1記載の組み合わせ寝具であって、前記部分台は、折りたたみ可能な部材であることを特徴とする組み合わせ寝具。
【請求項9】
請求項1記載の組み合わせ寝具であって、前記部分台は、折りたたみ可能な段ボールであることを特徴とする組み合わせ寝具。
【請求項10】
請求項1記載の組み合わせ寝具であって、前記部分台は、液体を収納できる容器であることを特徴とする組み合わせ寝具。
【請求項11】
請求項1記載の組み合わせ寝具であって、前記複数の部分台の連続された上面は一部に斜面を含むことを特徴とする組み合わせ寝具。
【請求項12】
複数の部分台を合わせた台の連続する上面に載置可能なオーバーレイ型マットレスであって、前記マットレスは、低融点ポリエステル綿を含む種類の異なるポリエステル綿を配合することで、熱処理時に一時的に溶けたポリエステル綿と溶けないポリエステル綿が混在する状態を作り、冷却処理により溶けている低融点ポリエステル綿を瞬時に固化させて形成された硬化ポリエステルシートからなり、且つ前記オーバーレイ型マットレスのサイズは前記台の上面のほぼ全面を覆うサイズからなることを特徴とするオーバーレイ型マットレス。
【請求項13】
請求項12記載のオーバーレイ型マットレスであって、前記オーバーレイ型マットレスは単位面積当たりの重さが1.2kg/m2もしくはそれ以上であることを特徴とするオーバーレイ型マットレス。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上述の技術的な課題を解決するため、本発明の組み合わせ寝具は、床面上に配される台と、前記台の上面に載置されるマットレスからなる組み合わせ寝具であって、複数の部分台をそれらの上面が連続するように合わせて前記台が構成され、前記マットレスは低融点ポリエステル綿を含む種類の異なるポリエステル綿を配合することで、熱処理時に一時的に溶けたポリエステル綿と溶けないポリエステル綿が混在する状態を作り、冷却処理により溶けている低融点ポリエステル綿を瞬時に固化させて形成された硬化ポリエステルシートからなり、且つ前記台の上面のほぼ全面を覆うサイズに形成されることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明の実施形態にかかる組み合わせ寝具においては、そのマットレスを構成する素材として、特に硬化ポリエステルシートから構成することができる。また硬化ポリエステルシートに組み合わせ可能な発泡性合成樹脂材の例としては、軟質もしくは硬質のウレタン樹脂、スチレン樹脂、エチレン樹脂、プロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、あるいは塩化ビニル樹脂などを用いることができる。高反発ポリエステル綿熱処理材としては、後述するような製法で調整できるものを使用することができ、さらにポリエステル綿と綿の混紡素材を使用することもできる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
また、本発明の実施形態にかかるオーバーレイ型マットレスは、上述のような組み立て寝具に使用されるオーバーレイ型マットレスであって、前記オーバーレイ型マットレスは低融点ポリエステル綿を含む種類の異なるポリエステル綿を配合することで、熱処理時に一時的に溶けたポリエステル綿と溶けないポリエステル綿が混在する状態を作り、冷却処理により溶けている低融点ポリエステル綿を瞬時に固化させて形成された硬化ポリエステルシートからなり、前記オーバーレイ型マットレスのサイズは前記台の上面のほぼ全面を覆うサイズからなることを特徴とする。