(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044219
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】膜電極接合体、貼り合わせ方法、電気化学セル、スタック、電解装置
(51)【国際特許分類】
C25B 9/19 20210101AFI20240326BHJP
C25B 13/02 20060101ALI20240326BHJP
C25B 13/04 20210101ALI20240326BHJP
【FI】
C25B9/19
C25B13/02 302
C25B13/04 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149622
(22)【出願日】2022-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】吉永 典裕
(72)【発明者】
【氏名】小野 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】菅野 義経
(72)【発明者】
【氏名】中野 義彦
(72)【発明者】
【氏名】平澤 博明
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021DB04
4K021DB32
4K021DB43
4K021DB53
4K021DC03
(57)【要約】
【課題】実施形態は、耐久性に優れた膜電極接合体を提供する。
【解決手段】 実施形態の膜電極接合体は、第1電極と、第2電極と、第1電極と第2電極の間に設けられた電解質膜と、第1電極の外周に設けられ、第1開口部を有し、第1開口部内に第1電極を収容し、電解質膜と接する第1シール、又は、第2開口部を有し、第2開口部内に第2電極を収容し、電解質膜と接する第2シール及び第1シールと、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極の間に設けられた電解質膜と、
前記第1電極の外周に設けられ、第1開口部を有し、前記第1開口部内に前記第1電極を収容し、前記電解質膜と接する第1シール、又は、第2開口部を有し、前記第2開口部内に前記第2電極を収容し、前記電解質膜と接する第2シール及び前記第1シールと、
を有する膜電極接合体。
【請求項2】
前記電解質膜の前記第1電極側にPt、Re、Rh、Ir、Pd及びRuからなる群より選ばれる1種以上の貴金属を含む貴金属粒子を含む貴金属領域が存在する請求項1に記載の膜電極接合体。
【請求項3】
前記電解質膜の幅をW1とし、前記貴金属領域の幅をW2とする場合、W1-W2は、W1の0.01倍以上0.98倍以下を満たし、
前記電解質膜の長さをL1とし、前記貴金属領域の長さをL2とする場合、L1-L2は、L1の0.01倍以上0.98倍以下を満たす請求項2に記載の膜電極接合体。
【請求項4】
前記電解質膜の幅をW1とし、前記貴金属領域の幅をW2とし、前記第1電極の幅をW3とする場合、W1>W2>W3を満たし、
前記電解質膜の長さをL1とし、前記貴金属領域の長さをL2とし、前記第1電極の長さをL3とする場合、L1>L2>L3を満たす請求項2に記載の膜電極接合体。
【請求項5】
前記電解質膜の幅をW1とし、前記第1電極の幅をW2とし、前記貴金属領域の幅をW3とし、前記電解質膜の長さをL1とし、前記第1電極の長さをL2とし、前記貴金属領域の長さを長さ3とする場合、
前記貴金属領域は、前記電解質膜の第1電極側の面の中心から幅方向にW1の0.8以上0.99倍以下の間に設けられていて、
前記貴金属領域は、前記電解質膜の第1電極側の面の中心から幅方向にL1の0.8倍以上0.99倍以下の間に設けられている請求項2に記載の膜電極接合体。
【請求項6】
前記第1シールは、第1ゴムシート、第1樹脂シート及び第2ゴムシートを含み、
前記第1ゴムシート、前記第1樹脂シート及び第2ゴムシートは積層し、
前記第1樹脂シ-トは、前記第1ゴムシートと前記第2ゴムシートの間に位置し、
前記第2シールは、第3ゴムシート、第2樹脂シート及び第4ゴムシートを含み、
前記第3ゴムシート、前記第2樹脂シート及び第4ゴムシートは積層し、
前記第2樹脂シ-トは、前記第3ゴムシートと前記第4ゴムシートの間に位置する請求項1に記載の膜電極接合体。
【請求項7】
前記第1シールのヤング率は、5[℃]以上100[℃]以下の範囲内において、0.001[GPa]以上5[GPa]以下であり、
前記第2シールのヤング率は、5[℃]以上100[℃]以下の範囲内において、0.001[GPa]以上5[GPa]以下である請求項1に記載の膜電極接合体。
【請求項8】
前記第1シールは、第1ゴムシート、第1樹脂シート及び第2ゴムシートを含み、
前記第1ゴムシート、前記第1樹脂シート及び第2ゴムシートは積層し、
前記第1樹脂シ-トは、前記第1ゴムシートと前記第2ゴムシートの間に位置し、
前記第1ゴムシートの内側面は、前記第1電極の側面と接し、
前記第1ゴムシートの前記電解質を向く面は、前記電解質膜と接し、
前記第1樹脂シートの内側面は、前記第1電極の側面と接し、
前記第2シールは、第3ゴムシート、第2樹脂シート及び第4ゴムシートを含み、
前記第3ゴムシート、前記第2樹脂シート及び第4ゴムシートは積層し、
前記第2樹脂シ-トは、前記第3ゴムシートと前記第4ゴムシートの間に位置し、
前記第3ゴムシートの内側面は、前記第2電極の側面と接し、
前記第3ゴムシートの前記電解質を向く面は、前記電解質膜と接し、
前記第2樹脂シートの内側面は、前記第2電極の側面と接する請求項1に記載の膜電極接合体。
【請求項9】
前記第1シールは、前記貴金属領域が存在しない領域の前記電解質膜と接する請求項2に記載の膜電極接合体。
【請求項10】
前記第1シールは、前記貴金属領域が存在しない領域の前記電解質膜と接し、
前記第1シールは、前記貴金属領域が存在する領域の前記電解質膜と接する請求項2に記載の膜電極接合体。
【請求項11】
前記第1電極は、基材と触媒層を有し、
前記触媒層の面積あたりに含まれる金属量は、0.02[g/cm2]以上1.0[g/cm2]以下であり、
前記触媒層の気孔率は、10[%]以上90[%]以下である請求項1に記載の膜電極接合体。
【請求項12】
前記電解質膜の幅をW1とし、前記第1電極の幅をW3とする場合、W1-W3は、W1の0.01倍以上0.2倍以下を満たし、
前記電解質膜の長さをL1とし、前記第1電極の長さをL3とする場合、L1-L3は、L1の0.01倍以上0.2倍以下を満たす請求項1に記載の膜電極接合体。
【請求項13】
前記電解質膜の幅をW1とし、前記第2電極の幅をW4とする場合、W1-W4は、W1の0.01倍以上0.2倍以下を満たし、
前記電解質膜の長さをL1とし、前記第2電極の長さをL4とする場合、L1-L4は、L1の0.01倍以上0.2倍以下を満たす請求項1に記載の膜電極接合体。
【請求項14】
第1プレス板上に設けられた電解質膜を、第2プレス板上に設けられ、第1開口部を有する第1シールと前記第1開口部内に設けられた第1電極を向かい合わせる工程と、
前記向かい合わせた部材を加熱して貼り合わせる工程と、
前記加熱して貼り合わせた部材を冷却する工程と、
前記第1プレス板及び前記第2プレス板を取り除く工程と、
任意に前記第1シールを剥がす工程と、
を有する第1シールを用いて電解質膜と第1電極を貼り合わせ方法。
【請求項15】
第1プレス板上に設けられた電解質膜を、第2プレス板上に設けられ、第2開口部を有する第2シールと前記第2開口部内に設けられた第2電極を向かい合わせる工程と、
前記向かい合わせた部材を加熱して貼り合わせる工程と、
前記加熱して貼り合わせた部材を冷却する工程と、
前記第1プレス板及び前記第2プレス板を取り除く工程と、
任意に前記第2シールを剥がす工程と、
を有する第2シールを用いて電解質膜と第2電極を貼り合わせ方法。
【請求項16】
前記第1シールは、第1ゴムシート、第1樹脂シート及び第2ゴムシートを含み、
前記第1ゴムシート、前記第1樹脂シート及び第2ゴムシートは積層し、
前記第1樹脂シ-トは、前記第1ゴムシートと前記第2ゴムシートの間に位置し、
前記第1ゴムシートの内側面は、前記第1電極の側面と接し、
前記第1ゴムシートの前記電解質を向く面は、前記電解質膜と接し、
前記第1樹脂シートの内側面は、前記第1電極の側面と接し、
前記第2シールは、第3ゴムシート、第2樹脂シート及び第4ゴムシートを含み、
前記第3ゴムシート、前記第2樹脂シート及び第4ゴムシートは積層し、
前記第2樹脂シ-トは、前記第3ゴムシートと前記第4ゴムシートの間に位置し、
前記第3ゴムシートの内側面は、前記第2電極の側面と接し、
前記第3ゴムシートの前記電解質を向く面は、前記電解質膜と接し、
前記第2樹脂シートの内側面は、前記第2電極の側面と接する請求項14又は15に記載の貼り合わせ方法。
【請求項17】
請求項1ないし13のいずれか1項に記載の膜電極接合体を用い、
前記第1電極は、アノード電極である電気化学セル。
【請求項18】
請求項1ないし13のいずれか1項に記載の膜電極接合体を用い、
前記第1電極は、アノード電極であるスタック。
【請求項19】
請求項18に記載のスタックを用い、
前記第1電極は、アノード電極又はカソード電極である電解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、膜電極接合体、貼り合わせ方法、電気化学セル、スタック、電解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気化学セルは盛んに研究されている。電気化学セルのうち、例えば、固体高分子型水電解セル(PEMEC:Polymer Electrolyte MembraneElectrolysis Cell)は、大規模エネルギー貯蔵システムの水素生成としての利用が期待されている。十分な耐久性と電解特性を確保するため、PEMECの陰極には白金(Pt)ナノ粒子触媒が、陽極にはイリジウム(Ir)ナノ粒子触媒のような貴金属触媒が、一般に使用されている。また、アンモニアからも水素を得る方法が検討されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】M. Watanabe et al. J. Electrochem. Soc, 143, No. 12, 3847-3852 (1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、水素のリークが少ない膜電極接合体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の膜電極接合体は、第1電極と、第2電極と、第1電極と第2電極の間に設けられた電解質膜と、第1電極の外周に設けられ、第1開口部を有し、第1開口部内に第1電極を収容し、電解質膜と接する第1シール、又は、第2開口部を有し、第2開口部内に第2電極を収容し、電解質膜と接する第2シール及び第1シールと、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
なお、以下の説明では、同一部材等には同一の符号を付し、一度説明した部材等については適宜その説明を省略する。
【0008】
明細書中の物性値は、温度が25[℃]で、圧力が1[atom]における値である。各部材の厚さは、積層方向の距離の平均値である。
【0009】
(第1実施形態)
第1実施形態は、膜電極接合体と膜電極接合体の製造方法に関する。
図1に実施形態の膜電極接合体100の模式断面図を示す。膜電極接合体100は、第1電極1、第2電極2、電解質膜3、第1シール4及び第2シール5を有する。第1電極1は、アノード電極であり、第2電極2は、カソード電極であることが好ましい。実施形態の膜電極接合体100は、水素発生又は酸素発生を行う電気化学セル又はスタックに用いられることが好ましい。膜電極接合体100を構成する部材は、例えば、X-Y面に対して垂直なZ方向に積層している。膜電極接合体100の幅方向をX方向とする。膜電極接合体100の長さ方向をY方向とする。
【0010】
実施形態の膜電極接合体100は、アンモニアを電解生成にも利用可能である。実施形態の膜電極接合体100は、アンモニア合成用の電解装置の膜電極接合体として利用可能である。以下、第1実施形態及び他の実施形態において、水電解を例に説明するが、水電解以外に例えば、超純水をアノードに供給し、アノードで水を分解してプロトンおよび酸素を生成し、電解質膜を生成したプロトンが通り、カソードに供給した窒素とプロトン、電子が結びつきアンモニアが生成するアンモニア合成用の電気分解に用いられる膜電極接合体に利用可能である。実施形態の膜電極接合体100は、アンモニアを電解して水素を生成する膜電極接合体としても利用可能である。実施形態の膜電極接合体は、水素発生装置に利用可能である。以下、第1実施形態及び他の実施形態において、水電解を例に説明するが、水電解以外に例えば、アンモニアをカソードに供給し、カソードでアンモニアを分解してプロトンおよび窒素を生成し、電解質膜を生成したプロトンが通り、アノードでプロトンと電子が結びつき水素が生成するアンモニア分解用の電気分解に用いられる膜電極接合体に実施形態の膜電極接合体100を利用可能である。
【0011】
第1電極1は、第1基材1Aと第1触媒層1Bを有する。第1基材1A上に第1触媒層1Bが設けられている。第1触媒層1Bは、電解質膜3側に設けられている。第1触媒層1Bは、電解質膜3と直接的に接していることが好ましい。
【0012】
第1基材1Aとしては、多孔性で導電性が高い材料を用いることが好ましい。第1基材1Aは、ガスや液体を通過する多孔質な部材である。第1基材1Aは、例えば、カーボンペーパー又は金属メッシュである。金属メッシュとしては、バルブメタルの多孔質基材が好ましい。バルブメタルの多孔質基材としては、チタン、アルミニウム、タンタル、ニオブ、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス及びアンチモンからなる群より選ばれる1種以上の金属を含む多孔質基材又はチタン、アルミニウム、タンタル、ニオブ、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス及びアンチモンからなる群より選ばれる1種の金属の多孔質基材が好ましい。
【0013】
第1触媒層1Bは、触媒金属を有する。第1触媒1Bは、触媒金属の粒子で、触媒金属が担体に担持されていないことが好ましい。第1触媒1Bは、多孔質な触媒層であることが好ましい。触媒金属としては、特に限定されないが、例えば、Ir、Ru及びPtからなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましい。触媒金属は、金属、合金又は金属酸化物であることが好ましい。
【0014】
第1触媒層1Bの面積当たりの金属量は、0.02[mg/cm2]以上1.0[mg/cm2]以下であることが好ましく、より好ましくは0.05[mg/cm2]以上0.5[mg/cm2]以下である。この質量の和は、ICP-MSで測定することができる。
【0015】
第1触媒層1Bの気孔率は、10[%]以上90[%]以下であることが好ましく、30[%]以上70[%]以下であることがより好ましい。第1触媒層1Bの面積当たりの金属量が上記の範囲内で、気孔率が高いとかカソード(第2電極2)で発生した水素が電解質膜3を通って、アノード(第1電極1)にリークした際に、第1触媒層1Bが粗密であるため、第1触媒層1B及び第1基材1Aを水素が通り抜けやすい。実施形態のリーク対策を講じた場合、空孔率が高いことに起因して水素がリークしやすい第1触媒層1Bを用いても水素のリークを効率的に抑えることができる。水素がリークしにくい触媒層を第1触媒層1Bに用いた場合でも、実施形態の膜電極接合体100は、水素リークは効果的に抑制できる。
【0016】
第2電極2は、第2基材2Aと第2触媒層2Bを有する。第2基材2A上に第2触媒層2Bが設けられている。第2触媒層2Bは、電解質膜3側に設けられている。第2触媒層2Bは、電解質膜3と直接的に接していることが好ましい。
【0017】
第2基材2Aとしては、多孔性で導電性が高い材料を用いることが好ましい。第2基材2Aは、ガスや液体を通過する多孔質な部材である。第2基材2Aは、例えば、カーボンペーパー又は金属メッシュである。金属メッシュとしては、バルブメタルの多孔質基材が好ましい。バルブメタルの多孔質基材としては、チタン、アルミニウム、タンタル、ニオブ、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス及びアンチモンからなる群より選ばれる1種以上の金属を含む多孔質基材又はチタン、アルミニウム、タンタル、ニオブ、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス及びアンチモンからなる群より選ばれる1種の金属の多孔質基材が好ましい。
【0018】
第2触媒層2Bは、触媒金属を有する。第2触媒層2Bは、触媒金属の粒子で、触媒金属が担体に担持されていないことが好ましい。第1触媒1Bは、多孔質な触媒層であることが好ましい。触媒金属としては、特に限定されないが、例えば、Pt、Rh、Os、Ir、Pd及びAuからなる群から選択される1種以上を含む。このような触媒材料からなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましい。触媒金属は、金属、合金又は金属酸化物であることが好ましい。
【0019】
第2触媒層2Bの面積当たりの金属量は、0.02[mg/cm2]以上1.0[mg/cm2]以下であることが好ましく、より好ましくは0.05[mg/cm2]以上0.5[mg/cm2]以下である。この質量の和は、ICP-MSで測定することができる。
【0020】
第2触媒層2Bの気孔率は、10[%]以上90[%]以下であることが好ましく、30[%]以上70[%]以下であることがより好ましい。
【0021】
電解質膜3は、プロトン伝導性膜である。電解質膜3としては、スルホン酸基、スルホンイミド基及び硫酸基からなる群より選ばれる1種以上を有するフッ素系ポリマー又は芳香族炭化水素系ポリマーが好ましい。電解質膜3としては、スルホン酸基を有するフッ素系ポリマーが好ましい。スルホン酸基を有するフッ素系ポリマーとしては、例えば、ナフィオン(商標 デュポン社製)、フレミオン(商標 旭化成社製)、セレミオン(商標 旭化成社製)、アクイビオン(aquivion)(商標;Solvay Specialty Polymers社)又は、アシプレックス(商標 旭硝子社製)などを使用することができる。
【0022】
電解質膜3の厚さは、膜の透過特性や耐久性などの特性を考慮して適宜決定することができる。強度、耐溶解性及びMEAの出力特性の観点から、電解質膜3の厚さは、20[μm]以上500[μm]以下が好ましく、50[μm]以上300[μm]以下がより好ましく、80[μm]以上200[μm]以下がさらにより好ましい。
【0023】
電解質膜3は、第1電極1側に貴金属領域3Aを含むことが好ましい。貴金属領域3Aは貴金属粒子を含む。貴金属領域3Aは、電解質膜3の表面に存在することが好ましい。貴金属領域3Aは1つの領域で構成されていることが好ましいが、複数の分離した領域で構成されていてもよい。
【0024】
貴金属粒子は、Pt、Re、Rh、Ir、Pd及びRuからなる群より選ばれる1種以上の貴金属の粒子が好ましい。貴金属粒子は、Pt、Re、Rh、Ir、Pd及びRuからなる群より選ばれる1種以上を含む合金の粒子を含んでもよい。貴金属粒子は、Pt、Re、Rh、Ir、Pd及びRuからなる群より選ばれる1種の貴金属の粒子が好ましい。貴金属粒子は、Pt粒子が好ましい。貴金属粒子は、Re粒子が好ましい。貴金属粒子は、Rh粒子が好ましい。貴金属粒子は、Ir粒子が好ましい。貴金属粒子は、Pd粒子が好ましい。貴金属粒子は、Ru粒子が好ましい。
【0025】
貴金属粒子は、カソード側で発生して電解質膜3を通る水素を酸化させる。貴金属粒子によって水素リークを抑えることができる。貴金属粒子がアノード側に存在するため、カソード側から排出される水素を酸化させにくい。貴金属粒子が存在する領域は、第2電極2(カソード)側の電解質膜3にも存在していてもよい。
【0026】
貴金属粒子の平均外接円直径は、0.5[nm]以上50[nm]以下が好ましく、1[nm]以上10[nm]以下がより好ましく、1[nm]以上5[nm]以下がさらにより好ましい。貴金属粒子の平均外接円直径は、
図1のような断面をSEM(走査型電子顕微鏡)又はTEM(透過型電子顕微鏡)で観察して求められる。
【0027】
第1シール4は、第1電極1の外周に設けられている絶縁部材である。第1シール4は、第1開口部4Aを有する。第1開口部4A内に第1電極1を収容している。第1シール4の電解質膜3側の面は、電解質膜3と接していて、直接的に接していることが好ましい。第1シール4の内側面は、第1電極1と接していて、直接的に接していることが好ましい。
【0028】
第2シール5は、第2電極2の外周に設けられている絶縁部材である。第2シール5、開口部5Aを有する。開口部5A内に第2電極2を収容している。第2シール5の電解質膜3側の面は、電解質膜3と接していて、直接的に接していることが好ましい。第2シール5の内側面は、第2電極2と接していて、直接的に接していることが好ましい。
【0029】
図2、
図3、
図4及び
図5の模式図を参照して、第1電極1、第2電極2、電解質膜3、第1シール4及び第2シール5の位置などの関係について説明する。
図2に、電解質膜3の上面模式図を示す。
図3に、第1シール4の上面模式図a及び断面模式図bを示す。
図4に、第1電極1及び第2電極2の上面模式図a及び断面模式図bを示す。
図5に、第2シール5の上面模式図a及び断面模式図bを示す。
【0030】
以下に説明する内容は電解質膜3を含めた部材の形状が四角形である場合を前提としている。部材の形状が違う場合において、実施形態で説明する第1電極1、第2電極2、電解質膜3、第1シール4及び第2シール5の位置などの関係を適用可能である。幅や長さは、例えば、部材に外接する四角形から求められる。
図3から5に図示した部材の位置及び重なりの関係を考慮して下記の幅や長さの大小関係及び差分の関係などを当てはめることができる。
【0031】
電解質膜3の幅をW1とし、長さをL1とする。電解質膜3の貴金属領域3Aの幅をW2とし、貴金属領域3Aの長さをL2とする。L1≧W1を満たす。L2≧W2を満たす。
【0032】
第1シール4の幅をW0とし、長さをL0とする。L0≧W0を満たす。
【0033】
第1シール4と第2シール5の大きさ及び形状は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0034】
第1電極1の幅をW3とし、長さをL3とする。第1電極1と第2電極2の大きさ及び形状は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。L3≧W3を満たす。
【0035】
W1-W2及びL1-L2が0である(貴金属領域3Aが電解質膜3の第1電極1側の面の全面存在する)場合は、水素リーク低減の効果が少ない。W1-W2は、電解質膜3の幅と貴金属領域3Aの幅の差である。L1-L2は、電解質膜3の長さと貴金属領域3Aの長さの差である。W1-W2>0及びL1-L2>0を満たすことが好ましい。
【0036】
W1-W2は、W1の0.01倍以上0.98倍以下が好ましく、W1の0.02倍以上0.2倍以下がより好ましい。L1-L2は、L1の0.01倍以上0.98倍以下が好ましく、L1の0.02倍以上0.2倍以下がより好ましい。第1電極1側で貴金属領域3Aが存在しない領域は、電解質膜3が大きい場合と小さい場合で水素のクロスオーバー及びリーク低減の効果が変わる場合がある。W1-W2=1[mm]で、L1-L2=1[mm]である場合、電解質膜3が大きい場合は、1[mm]は、相対的に小さいが、電解質膜3が小さい場合は、1[mm]は、相対的に大きい場合がある。
【0037】
W1>W2>W3及びL1>L2>L3を満たすことが好ましい。貴金属領域3Aの大きさが電解質膜3と第1電極1の大きさ間にある。この大小関係を満たすと、第1シール4は、貴金属領域3Aが存在する電解質膜3の面と、貴金属領域3Aが存在しない電解質膜3の面と接し、直接的に接していることが好ましい。貴金属領域3Aが第1電極1よりも大きいことで、第1電極1を通ってリークする水素を貴金属領域3Aで効率的に酸化させることができる。貴金属領域3Aが第1電極1よりも小さい場合、水素は、貴金属領域3Aが存在しない電解質膜3を通って第1電極1から水素リークが生じ易い。
【0038】
第1シール4は、貴金属領域3Aが存在する電解質膜3の面に対して滑りやすいが、貴金属領域3Aが存在しない電解質膜3の面に対して滑りにくい。W1>W2>W3及びL1>L2>L3を満たす場合、第1シール4は、貴金属領域3Aが存在しない滑りにくい電解質膜3の面と接しているために、電解質膜3の膨張収縮を抑えることができる。
【0039】
水素リーク及び第1シール4と電解質膜3の滑りを両方とも防ぐ観点から貴金属領域3Aの幅W2は、電解質膜3の第1電極1側の面の中心から幅方向にW1の0.8倍以上1倍未満(W2/W1は0.8以上1未満)の位置までの間に設けられていて、貴金属領域3Aは、電解質膜3の第1電極1側の面の中心から幅方向にL1の0.8倍以上1倍未満の位置までの間に設けられていることが好ましい。
【0040】
電解質膜3の第1電極1側の面の中心から幅方向に貴金属領域3Aの一方の端までの距離をW5とし、他方の端までの距離をW6とする。W5及W6がW1の0.4倍以上0.5倍未満であることが好ましく、W1の0.45倍以上0.48倍以下であることがより好ましい。W5及びW6が小さいと、電解質膜3大きさに対し第1開口部4Aの大きさが小さいため、小さな第1電極1しか第1シール4は収容できない。W5及びW6が大きいと、第1シール4と電解質膜3が接する面積が小さくなる。
【0041】
電解質膜3の第1電極1側の面の中心から長さ方向に貴金属領域3Aの一方の端までの距離をL5とし、他方の端までの距離をL6とする。L5及びL6がL1の0.4倍以上0.5倍未満であることが好ましく、L1の0.45倍以上0.48倍以下であることがより好ましい。L5及びL6が小さいと、電解質膜3大きさに対し第1開口部4Aの大きさが小さいため、小さな第1電極1しか第1シール4は収容できない。L5及びL6が大きいと、第1シール4と電解質膜3が接する面積が小さくなる。
【0042】
W1-W3は、W1の0.01倍以上0.2倍以下を満たし、L1-L3は、L1の0.01倍以上0.2倍未満を満たすことが好ましい。W1-W3とL1-L3は、実質的には、第1シール4の幅である。第1シール4の幅は、電解質膜3が大きければある程度幅が大きい方が好ましく、電解質膜3が小さければ狭くても十分である。上記観点か、らW1-W3は、W1の0.04倍以上0.1倍以下を満たし、L1-L3は、L1の0.04倍以上0.1倍以下を満たすことがより好ましい。
【0043】
W5とW6の差及び/又はL5とL6の差が大きいと、第1シール4と電解質膜3が接する面が偏りやすい。第1シール4と電解質膜3が接する面が偏ると第1シール4と電解質膜3の滑りやすさが場所によって大きく異なる。上記観点から、W5とW6の差(|W5-W6|)は、W1の0.5倍以上1.5倍以下が好ましく、W1の0.8倍以上1.2倍以下がより好ましい。上記観点から、L5とL6の差(|L5-L6|)は、L1の0.5倍以上1.5倍以下が好ましく、L1の0.8倍以上1.2倍以下がより好ましい。
【0044】
電解質膜3の膨張収縮を防ぐ観点から、第1シール4が電解質膜3の貴金属領域3Aと接している幅(W7又はW8)は、第1シール4が電解質膜3の貴金属領域3Aではない領域と接している幅(W9又はW10)よりも狭いことが好ましい。
【0045】
電解質膜3の膨張収縮を防ぐ観点から、第1シール4が電解質膜3の貴金属領域3Aと接している長さ(L7又はL8)は、第1シール4が電解質膜3の貴金属領域3Aではない領域と接している長さ(L9又はL10)よりも狭いことが好ましい。
【0046】
電解質膜3の幅W1と第1シール4の幅W0は、W0≧W1満たすことが好ましい。電解質膜3の長さL1と第1シール4の長さL0は、L0≧L1を満たすことが好ましい。
【0047】
電解質膜3が第2電極2側にも貴金属領域3Bを有する場合がある。貴金属領域3Bを有する場合などに第2電極2側にも第2シール5があることが好ましい。
図1の膜電極接合体100は、第2シール5を含むが、
図6断面模式図に示す膜電極接合体110は、第2シール5を含まない。実施形態の膜電極接合体100は、貴金属領域3B及び/又は第2シール5が省略されていてもよい。
【0048】
電解質膜3に貴金属領域3Bが存在する場合、貴金属領域3Bの幅をW12とし、貴金属領域3Bの長さをL12とする。L12≧W12を満たす。
【0049】
第2シール5の幅をW11とし、長さをL11とする。L11≧W11を満たす。
【0050】
第2電極2の幅をW4とし、長さをL4とする。L4≧W4を満たす。
【0051】
W1-W12は、W1の0.01倍以上0.98倍以下が好ましく、W1の0.02倍以上0.2倍以下がより好ましい。L1-L12は、L1の0.01倍以上0.98倍以下が好ましく、L1の0.02倍以上0.2倍以下がより好ましい。第2電極2側で貴金属領域3Bが存在しない領域は、電解質膜3が大きい場合と小さい場合で水素のクロスオーバー及びリーク低減の効果が変わる場合がある。W1-W12=1[mm]で、L1-L12=1[mm]である場合、電解質膜3が大きい場合は、1[mm]は、相対的に小さいが、電解質膜3が小さい場合は、1[mm]は、相対的に大きい場合がある。
【0052】
W1>W12>W4及びL1>L12>L4を満たすことが好ましい。貴金属領域3Bの大きさが電解質膜3と第2電極2の大きさ間にある。この大小関係を満たすと、第2シール5は、貴金属領域3Bが存在する電解質膜3の面と、貴金属領域3Bが存在しない電解質膜3の面と接し、直接的に接していることが好ましい。貴金属領域3Bが第2電極2よりも大きいことで、第1電極1を通ってリークする水素を貴金属領域3Bで効率的に酸化させることができる。貴金属領域3Bが第2電極2よりも小さい場合、水素は、貴金属領域3Bが存在しない電解質膜3を通って第1電極1から水素リークが生じ易いことがある。
【0053】
第2シール5は、貴金属領域3Bが存在する電解質膜3の面に対して滑りやすいが、貴金属領域3Bが存在しない電解質膜3の面に対して滑りにくい。W1>W12>W4及びL1>L12>L4を満たす場合、第2シール5は、貴金属領域3Bが存在しない滑りにくい電解質膜3の面と接しているために、電解質膜3の膨張収縮を抑えることができる。
【0054】
水素リーク及び第2シール5と電解質膜3の滑りを両方とも防ぐ観点から貴金属領域3Bは、電解質膜3の第2電極2側の面の中心から幅方向にW1の0.8倍以上0.99倍以下の位置までの間に設けられていて、貴金属領域3Bは、電解質膜3の第2電極2側の面の中心から幅方向にL1の0.8倍以上0.99倍以下の位置までの間に設けられていることが好ましい。
【0055】
電解質膜3の第2電極2側の面の中心から幅方向に貴金属領域3Bの一方の端までの距離をW13とし、他方の端までの距離をW14とする。W13及W14がW1の0.4倍以上0.495倍以下であることが好ましく、W1の0.45倍以上0.48倍以下であることがより好ましい。W13及びW14が小さいと、電解質膜3大きさに対し第2開口部4Bの大きさが小さいため、小さな第2電極2しか第2シール5は収容できない。W13及びW14が大きいと、第2シール5と電解質膜3が接する面積が小さくなる。
【0056】
電解質膜3の第2電極2側の面の中心から長さ方向に貴金属領域3Bの一方の端までの距離をL13とし、他方の端までの距離をL14とする。L13及L14がL1の0.4倍以上0.495倍以下であることが好ましく、L1の0.45倍以上0.48倍以下であることがより好ましい。L13及びL14が小さいと、電解質膜3大きさに対し第2開口部4Bの大きさが小さいため、小さな第2電極2しか第2シール5は収容できない。L13及びL14が大きいと、第2シール5と電解質膜3が接する面積が小さくなる。
【0057】
W1-W4は、W1の0.01倍以上0.2倍以下を満たし、L1-L4は、L1の0.01倍以上0.2倍以下を満たすことが好ましい。W1-W4とL1-L4は、実質的には、第2シール5の幅である。第2シール5の幅は、電解質膜3が大きければある程度幅が大きい方が好ましく、電解質膜3が小さければ狭くても十分である。上記観点か、らW1-W4は、W1の0.02倍以上0.12倍以下を満たし、L1-L4は、L1の0.02倍以上0.12倍以下を満たすことがより好ましい。
【0058】
W13とW14の差及び/又はL13とL14の差が大きいと、第2シール5と電解質膜3が接する面が偏りやすい。第2シール5と電解質膜3が接する面が偏ると第2シール5と電解質膜3の滑りやすさが場所によって大きく異なる。上記観点から、W13とW14の差(|W13-W14|)は、W1の0.5倍以上1.5倍以下が好ましく、W1の0.8倍以上1.2倍以下がより好ましい。上記観点から、L13とL14の差(|L13-L14|)は、L1の0.5倍以上1.5倍以下が好ましく、L1の0.8倍以上1.2倍以下がより好ましい。
【0059】
電解質膜3の膨張収縮を防ぐ観点から、第2シール5が電解質膜3の貴金属領域3Bと接している幅(W15又はW16)は、第2シール5が電解質膜3の貴金属領域3Bではない領域と接している幅(W17又はW18)よりも狭いことが好ましい。
【0060】
電解質膜3の膨張収縮を防ぐ観点から、第2シール5が電解質膜3の貴金属領域3Bと接している長さ(L15又はL16)は、第2シール5が電解質膜3の貴金属領域3Bではない領域と接している長さ(L17又はL18)よりも狭いことが好ましい。
【0061】
電解質膜3の幅W1と第2シール5の幅W11は、W11≧W1を満たすことが好ましい。電解質膜3の長さL1と第2シール5の長さL11は、L11≧L1を満たすことが好ましい。
【0062】
第1シール4は、第1ゴムシート4B及び第1樹脂シート4Cを含む。第1シール4は、第1ゴムシート4B、第1樹脂シート4C及び第2ゴムシート4Dを含むことが好ましい。第1ゴムシート4Bと第2ゴムシート4Dの間に第1樹脂シート4Cが位置する。第1ゴムシート4Bは、第1樹脂シート4Cと積層していることが好ましい。第1ゴムシート4B、第1樹 脂シート4C及び第2ゴムシート4Dは積層していることが好ましい。
【0063】
第1シール4の厚さは、例えば、20[μm]以上2000[μm]以下である。第1シール4の厚さは、第1電極1の厚さの0.6倍以上1.0倍以下が好ましい。
【0064】
第1シール4と電解質膜3の間及び/又は第1電極1の間には、図示しない接着層を設けてもよい。
【0065】
第1シール4のヤング率は、5[℃]以上100[℃]以下の範囲内において、0.001[GPa]以上5[GPa]以下であることが好ましく、0.01[GPa]以上3[GPa]以下であることがより好ましい。第1シール4のヤング率が高いと電解質膜3の膨張収縮を抑えることができる。
【0066】
第1ゴムシート4Bは、エチレンプロピレンジエンゴム、シリコンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、イソプロピレンゴム、スチレンゴム、ブチルゴム、及びエチレンプロピレンゴムからなる群より選ばれる1種又は1種以上を含む天然ゴム又は合成ゴムのシートであることが好ましい。第1ゴムシート4Bのヤング率及び線膨張係数を調整するために、第1ゴムシート4Bは、炭素繊維、金属メッシュ及びフィラーからなる群より選ばれる1種以上を含んでもよい。
【0067】
第1樹脂シート4Cは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性プラスチック及びメラミン樹脂及びエポキシ樹脂等の熱硬化性プラスチックからなる群より選ばれる1種又は1種以上を含む絶縁性のシートである。第1樹脂シート4Cのヤング率及び線膨張係数を調整するために、第1樹脂シート4Cは、炭素繊維、金属メッシュ及びフィラーからなる群より選ばれる1種以上を含んでもよい。
【0068】
第2ゴムシート4Dは、エチレンプロピレンジエンゴム、シリコンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、イソプロピレンゴム、スチレンゴム、ブチルゴム、及びエチレンプロピレンゴムからなる群より選ばれる1種又は1種以上を含む天然ゴム又は合成ゴムのシートであることが好ましい。第2ゴムシート4Dのヤング率及び線膨張係数を調整するために、第2ゴムシート4Dは、炭素繊維、金属メッシュ及びフィラーからなる群より選ばれる1種以上を含んでもよい。
【0069】
第2シール5は、第3ゴムシート5B及び第2樹脂シート5Cを含む。第2シール5は、第3ゴムシート5B、第2樹脂シート5C及び第4ゴムシート5Dを含むことが好ましい。第3ゴムシート5Bと第4ゴムシート5Dの間に第2樹脂シート5Cが位置する。第3ゴムシート5Bは、第2樹脂シート5Cと積層していることが好ましい。第3ゴムシート5B、第2樹脂シート5C及び第4ゴムシート5Dは積層していることが好ましい。
【0070】
第2シール5の厚さは、例えば、20[μm]以上2000[μm]以下である。第2シール5の厚さは、第1電極1の厚さの0.7倍以上1倍以下が好ましい。
【0071】
第2シール5と電解質膜3の間及び/又は第1電極1の間には、図示しない接着層を設けてもよい。
【0072】
第2シール5のヤング率は、5[℃]以上100[℃]以下の範囲内において、0.01[GPa]以上5[GPa]以下であることが好ましく、0.01[GPa]以上3[GPa]以下であることがより好ましい。第2シール5のヤング率が高いと電解質膜3の膨張収縮を抑えることができる。
【0073】
第3ゴムシート5Bは、エチレンプロピレンジエンゴム、シリコンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、イソプロピレンゴム、スチレンゴム、ブチルゴム、及びエチレンプロピレンゴムからなる群より選ばれる1種又は1種以上を含む天然ゴム又は合成ゴムのシートであることが好ましい。第3ゴムシート5Bのヤング率及び線膨張係数を調整するために、第3ゴムシート5Bは、炭素繊維、金属メッシュ及びフィラーからなる群より選ばれる1種以上を含んでもよい。
【0074】
第2樹脂シート5Cは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性プラスチック及びメラミン樹脂及びエポキシ樹脂等の熱硬化性プラスチックからなる群より選ばれる1種又は1種以上を含む絶縁性のシートである。第2樹脂シート5Cのヤング率及び線膨張係数を調整するために、第2樹脂シート5Cは、炭素繊維、金属メッシュ及びフィラーからなる群より選ばれる1種以上を含んでもよい。
【0075】
第4ゴムシート5Dは、エチレンプロピレンジエンゴム、シリコンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、イソプロピレンゴム、スチレンゴム、ブチルゴム、及びエチレンプロピレンゴムからなる群より選ばれる1種又は1種以上を含む天然ゴム又は合成ゴムのシートであることが好ましい。第4ゴムシート5Dのヤング率及び線膨張係数を調整するために、第4ゴムシート5Dは、炭素繊維、金属メッシュ及びフィラーからなる群より選ばれる1種以上を含んでもよい。
【0076】
図7から
図11の工程模式図を参照して、膜電極接合体100の製造方法について説明する。
図7から
図11の工程模式図を参照して説明する膜電極接合体100の製造方法は、膜電極接合体100の製造一部の工程に関する。第1シール4を用いて電解質膜3と第1電極1を貼り合わせる方法は、第1プレス板6上に設けられた電解質膜3(第2電極2が貼り合わせされた電解質膜3も電解質膜3と第2電極2を貼り合わせる工程において、単に電解質膜3と略記)を、第2プレス板7上に設けられ、第1開口部4Aを有する第1シール4と第1開口部4A内に設けられた第1電極1を向かい合わせる工程と、向かい合わせた部材を加熱して貼り合わせる工程と、加熱して貼り合わせた部材を冷却する工程と、第1プレス板6及び第2プレス板7を取り除く工程と、任意に第1シール4を剥がす工程と、を有する。第1シール4の貼り合わせに関する工程は、第2シール5の貼り合わせに転用可能である。
【0077】
図7の工程模式図に示す部材101は、第1プレス板6上に設けられた電解質膜3を、第2プレス板7上に設けられ、第1開口部4Aを有する第1シール4と第1開口部4A内に設けられた第1電極1を向かい合わせる工程に関する。部材101は、第1プレス板6上に設けられた電解質膜3と、第2プレス板7上に設けられた第1電極1とを含む。第1電極1は、第1シール4の第1開口部4A内に収容されている。電解質膜3を第1開口部4Aを有する第1シール4と第1開口部4A内に設けられた第1電極1を向かい合わせる。
【0078】
図8の工程模式図に示す部材102は、向かい合わせた部材101を加熱して貼り合わせる工程に関する。
図7の部材101を
図8の工程模式図に示す部材102のように第1電極1及び第1シール4を電解質膜3と貼り合わせる。貼り合わせにおいて、例えば、120[℃]以上180[℃]以下に加熱して、10[kg/cm
2]以上30[kg/cm
2]以下で1分以上10分以下加圧する。加圧は、大気又は不活性雰囲気で行うことが好ましい。加熱して加圧しているため、
図8の矢印方向に電解質膜3が膨張しようとするが、第1電極1と電解質膜3を貼り合わせる際に第1シール4を用いているために膨張を抑制している。
【0079】
図9の工程模式図に示す部材103は、加熱して貼り合わせた部材102を冷却する工程に関する。その後、部材102を冷却する。部材102を加圧した状態を維持して冷却すると
図9の工程模式図の部材103に示す矢印方向に電解質膜3が収縮しようとする。加熱をする時と冷却する時の両方において第1シール4を用いていることから、加熱時の電解質膜3の膨張が少ないことに起因して冷却時の収縮が少なく、また、収縮時にも電解質膜3の変形を第1シール4が抑制することから、加熱加圧から冷却加圧の過程で電解質膜3の体積変化が抑えられている。
【0080】
図10の工程模式図に示す部材104は、第1プレス板6及び第2プレス板7を取り除く工程に関する。冷却後、プレス板6及びプレス板7を取り外して、
図10の工程模式図に示す部材104が得られる。
【0081】
図11の工程模式図に示す部材105は、第1シール4を剥がす工程に関する。プレス板6及びプレス板7を取り除いた部材104の第1シール4を剥がす。第1シール4は、例えば、大気中又は液中で剥離される。第1シール4を剥離する際に用いられる液体としては、例えば、水が好ましい。その他、第1シール4を剥がしやすくする処理を施してもよい。
【0082】
第1シール4を有する膜電極接合体100を電気化学セル300やスタック400に使用する形態と、第1シール4を剥がしたMEA200を電気化学セル300やスタック400に使用できる。部材105の第1シール4を剥がしてMEA化する際にガスケットを設けてもよい。
図10の部材104は、大気中又は水中で剥離することで、
図11の工程模式図に示す部材105が得られる。
【0083】
加熱加圧から冷却加圧の過程で電解質膜3の体積変化が抑えられていることで、電解質膜3のシワの発生を抑えることができる。電解質膜3にシワが発生すると、シワによって生じる空隙から水素がアノード電極側にクロスオーバーしやすくなる。すると、アノード電極側での水素濃度が高まる可能性がある。第1シール4は、電解質膜3の外周側と強固に接合しているため、前述の水素リークと水素のクロスオーバーの両方を抑えることができる。
【0084】
図12から
図16の工程模式図を参照して、膜電極接合体100の製造方法について説明する。
図12から
図16の工程模式図を参照して説明する膜電極接合体100の製造方法は、膜電極接合体100の製造一部の工程に関する。第2シール5を用いて電解質膜3と第2電極2を貼り合わせる方法は、プレス板6上に設けられた電解質膜3(第1電極1が貼り合わせされた電解質膜3も電解質膜3と第1電極1を貼り合わせる工程において、単に電解質膜3と略記)を、プレス板7上に設けられ、第2開口部5Aを有する第2シール5と第2開口部5A内に設けられた第2電極2を向かい合わせる工程と、向かい合わせた部材を加熱して貼り合わせる工程と、加熱して貼り合わせた部材を冷却する工程と、プレス板6及びプレス板7を取り除く工程と、任意に第1シール5を剥がす工程と、を有する。
【0085】
図12の工程模式図に示す部材106は、第1プレス板6上に設けられた電解質膜3を、第2プレス板7上に設けられ、第2開口部5Aを有する第2シール5と第2開口部5A内に設けられた第2電極2を向かい合わせる工程に関する。部材106は、第1プレス板6上に設けられた電解質膜3と、第2プレス板7上に設けられた第2電極2とを含む。第2電極2は、第2シール5の第2開口部5A内に収容されている。電解質膜3を第2開口部5Aを有する第2シール5と第2開口部5A内に設けられた第2電極2を向かい合わせる。
【0086】
図13の工程模式図に示す部材107は、向かい合わせた部材106を加熱して貼り合わせる工程に関する。
図13の部材106を
図13の工程模式図に示す部材107のように第2電極2及び第2シール5を電解質膜3と貼り合わせる。貼り合わせにおいて、例えば、120[℃]以上180[℃]以下に加熱して、10[kg/cm
2]以上30[kg/cm
2]以下で1分以上10分以下加圧する。加圧は、大気又は不活性雰囲気で行うことが好ましい。加熱して加圧しているため、
図13の矢印方向に電解質膜3が膨張しようとするが、第2電極2と電解質膜3を貼り合わせる際に第2シール5を用いているために膨張を抑制している。
【0087】
図14の工程模式図に示す部材108は、加熱して貼り合わせた部材107を冷却する工程に関する。その後、部材108を冷却する。部材108を加圧した状態を維持して冷却すると
図14の工程模式図の部材108に示す矢印方向に電解質膜3が収縮しようとする。加熱をする時と冷却する時の両方において第2シール5を用いていることから、加熱時の電解質膜3の膨張が少ないことに起因して冷却時の収縮が少なく、また、収縮時にも電解質膜3の変形を第2シール5が抑制することから、加熱加圧から冷却加圧の過程で電解質膜3の体積変化が抑えられている。
【0088】
図15の工程模式図に示す部材109は、第1プレス板6及び第2プレス板7を取り除く工程に関する。冷却後、プレス板6及びプレス板7を取り外して、
図15の工程模式図に示す部材109が得られる。
【0089】
図16の工程模式図に示す部材111は、第2シール5を剥がす工程に関する。第1プレス板6及び第2プレス板7を取り除いた部材109の第2シール5を剥がす。第2シール5は、例えば、大気中又は液中で剥離される。第2シール5を剥離する際に用いられる液体としては、例えば、水が好ましい。その他、第2シール5を剥がしやすくする処理を施してもよい。
【0090】
第1シール4を有する膜電極接合体100を電気化学セル300やスタック400に使用する形態と、第1シール4を剥がしたMEA200を電気化学セル300やスタック400に使用できる。部材105の第1シール4を剥がしてMEA化する際にガスケットを設けてもよい。
図10の部材104は、大気中又は水中で剥離することで、
図11の工程模式図に示す部材105が得られる。
【0091】
加熱加圧から冷却加圧の過程で電解質膜3の体積変化が抑えられていることで、電解質膜3のシワの発生を抑えることができる。電解質膜3にシワが発生すると、シワによって生じる空隙から水素がアノード電極側にクロスオーバーしやすくなる。すると、アノード電極側での水素濃度が高まる可能性がある。第1シール4は、電解質膜3の外周側と強固に接合しているため、前述の水素リークと水素のクロスオーバーの両方を抑えることができる。
【0092】
第2電極2側に第2シート5を用いた場合、第1電極1を電解質膜3に貼り合わせた後に第2電極2を電解質膜3と貼り合わせてもよいし、第2電極2を電解質膜3と貼り合わせた後に第1電極1を電解質膜3と貼り合わせてもよし、第1電極1と第2電極2を同時に電解質膜3と貼り合わせてもよい。第2電極2側に第2シート5を用いない場合、シワの発生を抑制する観点から、第1電極1を電解質膜3と貼り合わせた後に第2電極2を電解質膜3と貼り合わせることが好ましい。第2シール5も貼り合わせ後に剥がして、MEA化する際にガスケットを設けてもよい。
【0093】
貼り合わせの際にシワの発生を抑えているため、シールを剥がしても電解質膜3にシワが発生し難い。第1シール4及び第2シール5を剥がす場合は、シールを剥がしやすくする観点からW1<W0<W2、L1<L0<L2、W1<W11<W2及びL1<L11<L2を満たすことが好ましい。
【0094】
産業用の水素発生装置に用いられる電解質膜3は、サイズが大きく、例えば1辺が10[cm]以上であることに起因して、電解質膜3の膨張収縮の影響が出やすいが、実施形態の膜電極接合体100を採用することで、電解質膜3の膨張収縮を抑制し、大型の膜電極接合体100であってもシワの発生を抑え、信頼性の向上に寄与する。
【0095】
(第2実施形態)
第2実施形態は、電気化学セルに関する。
図12に第2実施形態の電気化学セル200の断面図を示す。水電解を例に電気化学セル200を以下説明するが、水以外にアンモニアなどを分解しても水素を発生させることができる。
【0096】
図17に示すように実施形態2の電気化学セル200は、第1電極(アノード)1と、第2電極(カード)2と、電解質膜3と、アノード給電体21と、カソード給電体22と、セパレーター23と、セパレーター24と、を有する。電気化学セル200において、膜電極接合体100の第1シール4と第2シール5が電解質膜3に貼り合わせられている場合は、
図17の模式図に示す電気化学セル200が用いられる。電気化学セル200において、膜電極接合体100の第1シール4と第2シール5が電解質膜3から剥がされている場合は、
図17の模式図に示す電気化学セル200の第1シール4と第2シール5は、ガスケットなどと置き換えが可能である。
【0097】
第1電極(アノード)1と、第2電極(カード)2と、電解質膜3が接合した膜電極接合体100を用いることが好ましい。アノード給電体21及びカソード給電体23は、ガスや水を通すものであれば良い。また、アノード給電体21及びカソード給電体22は、それぞれセパレーター24、24と一体化してもよい。具体的には、セパレーターに水などの水素源やガスが流れる流路を持つものや、多孔質体をもつものなどであり、これに限定されるわけではない。実施形態の膜電極接合体100を用いた電気化学セル200は、水素リークを抑え、信頼性が高い。
【0098】
図17の電気化学セル200は、図示しない電極がアノード給電体21とカソード給電体23と接続し、アノード1とカソード2で反応が生じる。アノード1には、例えば、水が供給され、アノード1で、水が、プロトン、酸素と電子に分解される。電極の支持体と給電体が多孔質体であり、この多孔質体が流路板として機能する。生成した水と未反応の水は、排出され、プロトンと電子はカソード反応に利用される。カソード反応は、プロトンと電子が反応し、水素を生成する。生成した、水素及び酸素のいずれか一方又は両方は、例えば、燃料電池用燃料として利用される。
【0099】
(第3実施形態)
第3実施形態は、スタックに関する。
図18は、第3実施形態のスタック300を示す模式断面図である。
図18に示す第3実施形態のスタック300は、MEA100又は電気化学セル200を複数個、直列に接続したものである。MEAや電気化学セルの両端に締め付け板31、32が取り付けられている。
【0100】
一枚のMEA100からなる電気化学セル200での水素生成量は少ないため、電気化学セル200を複数、直列に接続したスタック300を構成すると、大量の水素を得ることができる。
【0101】
(第4実施形態)
第4実施形態は、電解装置に関する。
図19に、第5実施形態の電解装置の概念図を示す。水素発生装置400には、電気化学セル200又はスタック300が用いられる。
図19の電解装置は水電解用である。水電解用の電解装置について説明する。例えば、アンモニアから水素を発生させる場合は、膜電極接合体100を用いた別構成の装置を採用することが好ましい。
【0102】
図19に示すように水電解用単セルを直列に積層したものを水電解スタック300として用いる。水電解スタック300には、電源41取り付けられ、アノード・カソード間に電圧が印加される。水電解スタック300のアノード側には、発生したガスと未反応の水を分離する気液分離装置42、混合タンク43がつながっており、混合タンク43には、水を供給するイオン交換水製造装置44からポンプ46で送液し、気液分離装置42から逆止弁47を通して、混合タンク43混合してアノードへ循環させる。アノードで生成した酸素は、気液分離装置42を経て、酸素ガスが得られる。一方、カソード側には、気液分離装置48に連続して水素精製装置49を接続して、高純度水素を得る。水素精製装置49と接続した弁50を有する経路を経て不純物が排出される。運転温度を安定に制御するためスタック及び混合タンクの加熱や、熱分解時の電流密度等の制御することができる。
【0103】
以下、実施形態の実施例を説明する。
【0104】
(実施例A)
アノード(第1電極1)の作製
基材としてサイズが25[cm]×25[cm]、厚み200[μm]のTi不織布基材を用いる。チタン基材にスパッタリングでニッケルとイリジウムをスパッタしシート層を形成する。その後ニッケルのみをスパッタしギャップ層を形成する。このシート層及びギャップ層形成の工程を40回繰り返し面積当たりのIrが0.2[mg/cm2]になるように積層構造を得る。続いて硫酸で洗浄することでニッケルを抜いた触媒構造を得る。
【0105】
カソード(第2電極2)の作製
基材として、サイズが25[cm]×25[cm]、厚みが190[μm]の炭素層を有するカーボンペーパーToray060(東レ社製)を用意する。この基材上に、Pt触媒のローディング密度0.1[mg/cm2]になるように、スパッタリング法により空隙層を含む積層構造を持つ触媒層を形成し、多孔質触媒層を有する電極を得る。この電極は実施例及び比較例の標準カソードとして使用する。
【0106】
電解質膜3はサイズが30[cm]×30[cm]の、ケマーズ社製Nafion115を用い、テトラアンミン白金を水で11[wt%]まで薄めた溶液をスプレーで塗布する。スプレー前に表1のPt含浸サイズ条件になるようにテープでマスクをしたNafion115を用いる。スプレー塗布から10分経過後、純水でリンスし、最後に10wt%の硝酸80℃で1時間煮込むことでPt粒子が含浸された電解質膜3を得る。
【0107】
【0108】
第1シール4及び第2シール5は、サイズが30[cm]×30[cm]の上面にEPDMゴム(エチレンプロピレンジエンゴム)シート、中間にPETフィルム、下面にEPDMゴムシートが重なり一体となったシール材を用いる。第1シール4及び第2シール5の厚さは、カソード2及びアノード1の厚さよりも薄いものを用いる。実施例では、160[μm]の厚さのシール材を用いる。尚、第1シール4及び第2シール5は、アノード1及びカソード2の外周部に配置するため、中心部は電極サイズに合わせてカットして第1開口部4A及び第2開口部5Aを形成した外周部が残った部材を利用する。
【0109】
プレス板には電極に近い方から32[cm]×32[cm]、厚さ0.1[mm]のカプトンシート、その上に32[cm]×32[cm]、厚み2mmのシリコーンゴムシートを、そして最後に32[cm]×32[cm]、厚さ1[mm]のステンレス板を用い、この組み合わせを2セット用意し、アノード側、カソード側から挟み込む。
【0110】
MEAの一体化はホットプレス装置を用いて実施する。まずプレス板のカプトンシート側にカソードを設置し、その外周部にシール材を設置する。この上にPtが含浸された電解質膜3を配置し、さらにアノード及び外周部にシール材を設置する。最後にカプトンシート側を向けたプレス板を設置する。
【0111】
続いてホットプレス装置に入れ、160[℃]、20[kg/cm2]で3分間プレスを実施し、その後25[℃]、20[kg/cm2]で3分間プレス冷却を行うことでMEAを得る。
【0112】
このときの見た目から以下の判断基準で膜のシワのレベルを判断したので表2に記載する。
A:全くシワが無い状態
B:波打ったシワが見られる状態
C:1~3つの膜が折り重なったシワが見られる状態
D:4つ以上、折り重なるシワが見られる状態
【0113】
【0114】
<単セルの作製>
得られたMEA及びガスケットを流路が設けられている二枚の流路付セパレーターの間にセッティングし、PEEC単セル(電気化学セル)を作製する。ガスケットとして180[μm]のEPDMシートをアノード、カソードそれぞれに配置した。また、流路付セパレーターの水素側の出口には背圧弁がついており、水素の内圧を上げることが可能となっている。
【0115】
次に、実施例A及び比較例AのMEAを評価する。測定温度は80[℃]、電流密度2[A/cm2]で定常運転を行う。性能は背圧弁により水素側の圧力を上げた時のカソードからアノードへの水素のクロスリーク量[ppm]を酸素中水素濃度としてガスクロマトグラフで評価する。また印加した電流から換算した水素製造量に対して、得られた水素の量の差をとり、水素リーク量[ppm]も求め比較する。水素リーク量は水素クロスリークでカソードからアノードへ移動した水素量、さらにアノードの酸素と反応して再結合して水に変換された水素量、そしてガスケットの隙間から外部にリークした水素量の和となる。尚、20[%]以上は装置上測定できない。
このときの水素リーク量を以下のA~Cの判断基準で判断したので表2に記載する。
A:5MPaにおいて10000ppm以下の場合
B:5MPaにおいて400000ppm以下の場合
C:5MPaにおいて400000ppmを超える場合
【0116】
表2からシール材があり、電解質膜3よりもPt含浸サイズが少し小さいことでシワがおさえられ、クロスオーバー及び水素リークがおさえられることがわかる。また、Ptの含浸は両面もしくはアノード面に施すことで最も水素のクロスオーバーに効果があることがわかる。一方でシワのでき方や外部への水素リークはPtの含浸面には特に相関は、今回見つからなかった。
【0117】
Pt含浸サイズが増えると少し水素リーク量が増える傾向にあったが、これはPtがあることで端部の摩擦係数が下がって、シール不足になりやすいことを示している。一方でリーク量の増加はわずかであり、本検討の範囲では問題になるレベルではない。
【0118】
比較例A1~A3ではシール材はあるが、Pt含浸サイズが電解質膜3と同じであり、この場合シワが出やすいこと、水素クロスオーバー量は少ないが加圧時に水素リークが急激に増えることがわかる。電解質膜3のシワの影響でガスケットが甘くなり、水素が外にリークしていると言える。
【0119】
比較例A4ではPt含浸をしていない。この場合、電解質膜3のシワは出ないが、水素クロスオーバーが増えてしまうことがわかる。
【0120】
比較例A4~A7ではシール材がなく、電解質膜3に折り重なるシワが発生し、水素が外にリークしていることがわかる。
【0121】
比較例A8~A13ではPtの含浸サイズを膜よりも小さく取っているが、シール材がないため、シワが発生しており、水素が外にリークしていることがわかる。
【0122】
(実施例B)
実施例B-1は、電解質膜3へのPtの含浸量を変えたこと以外は実施例A-1と同じ条件でMEAを作製した。表3に実施例B-1~実施例B-3のPt含浸量及び評価結果を示している。
【0123】
【0124】
実施例BからPt量を増えると水素クロスオーバー量は少し減るが、逆に水素リーク量は増えることがわかる。Ptがあることで端部の摩擦係数が下がって、シール不足になりやすいことを示している。一方でリーク量の増加はわずかであり、本検討の範囲では問題になるレベルではない。
【0125】
(比較例C)
比較例CとしてEPDMゴムのみのシール材、PETフィルムのみのシール材、EPDMゴム+PETフィルムの2層構造のシール材を用いて評価した。シール材を変えたこと以外は実施例A-1と同じ条件でMEAを作製する。比較例Cのシール材を用いた場合のシワ及び水素リーク量を実施例Aと同様に評価し、表4に示す。
【0126】
【0127】
シール材は2層以下の積層又は単相構造の場合に電解質膜3へのシワ及び水素リークを抑制が難しい。
【0128】
明細書中、元素の一部は元素記号のみで表している。
【0129】
以下、実施形態の技術案を付記する。
[技術案1]
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極の間に設けられた電解質膜と、
前記第1電極の外周に設けられ、第1開口部を有し、前記第1開口部内に前記第1電極を収容し、前記電解質膜と接する第1シール、又は、第2開口部を有し、前記第2開口部内に前記第2電極を収容し、前記電解質膜と接する第2シール及び前記第1シールと、
を有する膜電極接合体。
[技術案2]
前記電解質膜の前記第1電極側にPt、Re、Rh、Ir、Pd及びRuからなる群より選ばれる1種以上の貴金属を含む貴金属粒子を含む貴金属領域が存在する技術案1に記載の膜電極接合体。
[技術案3]
前記電解質膜の幅をW1とし、前記貴金属領域の幅をW2とする場合、W1-W2は、W1の0.01倍以上0.98倍以下を満たし、
前記電解質膜の長さをL1とし、前記貴金属領域の長さをL2とする場合、L1-L2は、L1の0.01倍以上0.98倍以下を満たす技術案2に記載の膜電極接合体。
[技術案4]
前記電解質膜の幅をW1とし、前記貴金属領域の幅をW2とし、前記第1電極の幅をW3とする場合、W1>W2>W3を満たし、
前記電解質膜の長さをL1とし、前記貴金属領域の長さをL2とし、前記第1電極の長さをL3とする場合、L1>L2>L3を満たす技術案2又は3に記載の膜電極接合体。
[技術案5]
前記電解質膜の幅をW1とし、前記第1電極の幅をW2とし、前記貴金属領域の幅をW3とし、前記電解質膜の長さをL1とし、前記第1電極の長さをL2とし、前記貴金属領域の長さを長さ3とする場合、
前記貴金属領域は、前記電解質膜の第1電極側の面の中心から幅方向にW1の0.8以上0.99倍以下の間に設けられていて、
前記貴金属領域は、前記電解質膜の第1電極側の面の中心から幅方向にL1の0.8倍以上0.99倍以下の間に設けられている技術案2ないし4のいずれか1案に記載の膜電極接合体。
[技術案6]
前記第1シールは、第1ゴムシート、第1樹脂シート及び第2ゴムシートを含み、
前記第1ゴムシート、前記第1樹脂シート及び第2ゴムシートは積層し、
前記第1樹脂シ-トは、前記第1ゴムシートと前記第2ゴムシートの間に位置し、
前記第2シールは、第3ゴムシート、第2樹脂シート及び第4ゴムシートを含み、
前記第3ゴムシート、前記第2樹脂シート及び第4ゴムシートは積層し、
前記第2樹脂シ-トは、前記第3ゴムシートと前記第4ゴムシートの間に位置する技術案1ないし5のいずれか1案に記載の膜電極接合体。
[技術案7]
前記第1シールのヤング率は、5[℃]以上100[℃]以下の範囲内において、0.001[GPa]以上5[GPa]以下であり、
前記第2シールのヤング率は、5[℃]以上100[℃]以下の範囲内において、0.001[GPa]以上5[GPa]以下である技術案1ないし6のいずれか1案に記載の膜電極接合体。
[技術案8]
前記第1シールは、第1ゴムシート、第1樹脂シート及び第2ゴムシートを含み、
前記第1ゴムシート、前記第1樹脂シート及び第2ゴムシートは積層し、
前記第1樹脂シ-トは、前記第1ゴムシートと前記第2ゴムシートの間に位置し、
前記第1ゴムシートの内側面は、前記第1電極の側面と接し、
前記第1ゴムシートの前記電解質を向く面は、前記電解質膜と接し、
前記第1樹脂シートの内側面は、前記第1電極の側面と接し、
前記第2シールは、第3ゴムシート、第2樹脂シート及び第4ゴムシートを含み、
前記第3ゴムシート、前記第2樹脂シート及び第4ゴムシートは積層し、
前記第2樹脂シ-トは、前記第3ゴムシートと前記第4ゴムシートの間に位置し、
前記第3ゴムシートの内側面は、前記第2電極の側面と接し、
前記第3ゴムシートの前記電解質を向く面は、前記電解質膜と接し、
前記第2樹脂シートの内側面は、前記第2電極の側面と接する技術案1ないし7のいずれか1案に記載の膜電極接合体。
[技術案9]
前記第1シールは、前記貴金属領域が存在しない領域の前記電解質膜と接する技術案2ないし5のいずれか1案に記載の膜電極接合体。
[技術案10]
前記第1シールは、前記貴金属領域が存在しない領域の前記電解質膜と接し、
前記第1シールは、前記貴金属領域が存在する領域の前記電解質膜と接する技術案2ないし5及び9のいずれか1案に記載の膜電極接合体。
[技術案11]
前記第1電極は、基材と触媒層を有し、
前記触媒層の面積あたりに含まれる金属量は、0.02[g/cm2]以上1.0[g/cm2]以下であり、
前記触媒層の気孔率は、10[%]以上90[%]以下である技術案1ないしい10のいずれか1案に記載の膜電極接合体。
[技術案12]
前記電解質膜の幅をW1とし、前記第1電極の幅をW3とする場合、W1-W3は、W1の0.01倍以上0.2倍以下を満たし、
前記電解質膜の長さをL1とし、前記第1電極の長さをL3とする場合、L1-L3は、L1の0.01倍以上0.2倍以下を満たす技術案1ないし11のいずれか1案に記載の膜電極接合体。
[技術案13]
前記電解質膜の幅をW1とし、前記第2電極の幅をW4とする場合、W1-W4は、W1の0.01倍以上0.2倍以下を満たし、
前記電解質膜の長さをL1とし、前記第2電極の長さをL4とする場合、L1-L4は、L1の0.01倍以上0.2倍以下を満たす技術案1ないし12のいずれか1案に記載の膜電極接合体。
[技術案14]
第1プレス板上に設けられた電解質膜を、第2プレス板上に設けられ、第1開口部を有する第1シールと前記第1開口部内に設けられた第1電極を向かい合わせる工程と、
前記向かい合わせた部材を加熱して貼り合わせる工程と、
前記加熱して貼り合わせた部材を冷却する工程と、
前記第1プレス板及び前記第2プレス板を取り除く工程と、
任意に前記第1シールを剥がす工程と、
を有する第1シールを用いて電解質膜と第1電極を貼り合わせ方法。
[技術案15]
第1プレス板上に設けられた電解質膜を、第2プレス板上に設けられ、第2開口部を有する第2シールと前記第2開口部内に設けられた第2電極を向かい合わせる工程と、
前記向かい合わせた部材を加熱して貼り合わせる工程と、
前記加熱して貼り合わせた部材を冷却する工程と、
前記第1プレス板及び前記第2プレス板を取り除く工程と、
任意に前記第2シールを剥がす工程と、
を有する第2シールを用いて電解質膜と第2電極を貼り合わせ方法。
[技術案16]
前記第1シールは、第1ゴムシート、第1樹脂シート及び第2ゴムシートを含み、
前記第1ゴムシート、前記第1樹脂シート及び第2ゴムシートは積層し、
前記第1樹脂シ-トは、前記第1ゴムシートと前記第2ゴムシートの間に位置し、
前記第1ゴムシートの内側面は、前記第1電極の側面と接し、
前記第1ゴムシートの前記電解質を向く面は、前記電解質膜と接し、
前記第1樹脂シートの内側面は、前記第1電極の側面と接し、
前記第2シールは、第3ゴムシート、第2樹脂シート及び第4ゴムシートを含み、
前記第3ゴムシート、前記第2樹脂シート及び第4ゴムシートは積層し、
前記第2樹脂シ-トは、前記第3ゴムシートと前記第4ゴムシートの間に位置し、
前記第3ゴムシートの内側面は、前記第2電極の側面と接し、
前記第3ゴムシートの前記電解質を向く面は、前記電解質膜と接し、
前記第2樹脂シートの内側面は、前記第2電極の側面と接する技術案14又は15に記載の貼り合わせ方法。
[技術案17]
技術案1ないし13のいずれか1案に記載の膜電極接合体を用い、
前記第1電極は、アノード電極である電気化学セル。
[技術案18]
技術案1ないし13のいずれか1案に記載の膜電極接合体を用い、
前記第1電極は、アノード電極であるスタック。
[技術案19]
技術案18に記載のスタックを用い、
前記第1電極は、アノード電極又はカソード電極である電解装置。
【0130】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。水電解セルとして、PEMECを挙げたが、これ以外の電解セルでも、同様に本発明を適用できる。上述したこれら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0131】
1 第1電極
2 第2電極
3 電解質膜
4 第1シール
4A 第1開口部
5 第2シール
6 第1プレス板
7 第2プレス板
21 アノード給電体
22 カソード給電体
23 セパレーター
24 セパレーター
31 締め付け板
32 締め付け板
41 電源
42 気液分離装置
43 混合タンク
44 イオン交換水製造装置
46 ポンプ
47 逆止弁
48 気液分離装置
49 水素精製装置
50 弁
100 膜電極接合体
200 電気化学セル
300 スタック
400 電解装置