(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024044226
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】管内底蓋構造
(51)【国際特許分類】
E02D 27/12 20060101AFI20240326BHJP
E02D 5/30 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
E02D27/12 A
E02D5/30 A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149632
(22)【出願日】2022-09-20
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】522373138
【氏名又は名称】有限会社サンワテック
(74)【代理人】
【識別番号】100126402
【弁理士】
【氏名又は名称】内島 裕
(72)【発明者】
【氏名】阿保 悠介
【テーマコード(参考)】
2D041
2D046
【Fターム(参考)】
2D041AA02
2D041BA13
2D046CA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】現場等で部品を簡易に組み立てて低コストで強度の高い完成形とすることができ、部品の取り扱いが便利で、運搬時の製品の損傷リスクが低く、補強鉄筋を設置する際の作業スペースが広く確保された管内底蓋構造を提供すること。
【解決手段】管軸方向を上下方向に向けて設置されコンクリートが充填される管の内部に配置されて前記コンクリートを堰き止める底蓋1と、前記底蓋を前記管の内部の所定の高さに位置決めする4本の吊下部材2と、4個の第一の連結部材3と、4個の第二の連結部材4と、4個の緩み止め部材5であって前記第一の連結部材の緩み止めとなる前記緩み止め部材とを組み立てて完成形となる管内底蓋構造であって、吊下部材が前記底蓋に対して垂直となるように、連結される管内底蓋構造。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管軸方向を上下方向に向けて設置されコンクリートが充填される管の内部に配置されて前記コンクリートを堰き止める底蓋と、
前記底蓋を前記管の内部の所定の高さに位置決めする4本の吊下部材と、
4個の第一の連結部材と、
4個の第二の連結部材と、
4個の緩み止め部材であって前記第一の連結部材の緩み止めとなる前記緩み止め部材と
を組み立てて完成形となる管内底蓋構造であって、
前記底蓋は、周縁部の四隅にそれぞれ穴部を備え、
前記吊下部材は、略棒状で上方が一部曲げられた形状をなし、前記管の上端縁に係止するための曲げ部と、下端部に所定の長さ寸法にネジ切りされたネジ部を備え、
それぞれの前記第一の連結部材はそれぞれの前記ネジ部に嵌合され、それぞれの前記吊下部材が前記底蓋に対して垂直となるように、前記底蓋の下面側に配置されたそれぞれの前記緩み止め部材であってそれぞれの前記ネジ部に嵌合された前記緩み止め部材を介して、それぞれの前記吊下部材が前記底蓋に対して垂直となるように、それぞれの前記ネジ部がそれぞれの前記穴部に挿通されたそれぞれの前記吊下部材を前記底蓋の前記下面側から固定し、
それぞれの前記第二の連結部材はそれぞれの前記ネジ部に嵌合され、それぞれの前記ネジ部がそれぞれの前記穴部に挿通されたそれぞれの前記吊下部材を前記底蓋の上面側から固定し、
それぞれの前記第一の連結部材およびそれぞれの前記第二の連結部材で挟持することにより前記底蓋にそれぞれの前記吊下部材が連結される
管内底蓋構造。
【請求項2】
管軸方向を上下方向に向けて設置されコンクリートが充填される管の内部に配置されて前記コンクリートを堰き止める底蓋と、
前記底蓋を前記管の内部の所定の高さに位置決めする3本の吊下部材と、
3個の第一の連結部材と、
3個の第二の連結部材と、
3個の緩み止め部材であって前記第一の連結部材の緩み止めとなる前記緩み止め部材と
を組み立てて完成形となる管内底蓋構造であって、
前記底蓋は、周縁部の三隅にそれぞれ穴部を備え、
前記吊下部材は、略棒状で上方が一部曲げられた形状をなし、前記管の上端縁に係止するための曲げ部と、下端部に所定の長さ寸法にネジ切りされたネジ部を備え、
それぞれの前記第一の連結部材はそれぞれの前記ネジ部に嵌合され、それぞれの前記吊下部材が前記底蓋に対して垂直となるように、前記底蓋の下面側に配置されたそれぞれの前記緩み止め部材であってそれぞれの前記ネジ部に嵌合された前記緩み止め部材を介して、それぞれの前記ネジ部がそれぞれの前記穴部に挿通されたそれぞれの前記吊下部材を前記底蓋の前記下面側から固定し、
それぞれの前記第二の連結部材はそれぞれの前記ネジ部に嵌合され、それぞれの前記吊下部材が前記底蓋に対して垂直となるように、それぞれの前記ネジ部がそれぞれの前記穴部に挿通されたそれぞれの前記吊下部材を前記底蓋の上面側から固定し、
それぞれの前記第一の連結部材およびそれぞれの前記第二の連結部材で挟持することにより前記底蓋にそれぞれの前記吊下部材が連結される
管内底蓋構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートが充填される管の内部における底蓋構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、橋の橋脚の工事等の際に地盤に埋めて利用される管内底蓋構造として、鋼管の中に管軸方向を上下方向に向けて設置されコンクリートが充填される管の内部に配置されてコンクリートを堰き止める底蓋と、その底蓋を管の内部の所定の高さに位置決めする4本の吊下部材が溶接により予め工場で一体型の製品となるように形成された管内底蓋構造が現場に運搬されて用いられていた(
図11参照)。
【0003】
関連技術として、管軸方向を上下方向に向けて設置されコンクリートが充填される鋼管杭において、鋼管杭の管体の下部に配置されコンクリートを堰き止めるための鋼管内底蓋構造であって、鋼管杭の管内面に対して当接可能で径方向に伸縮する蓋部材と、蓋部材を鋼管杭内の所定の高さに位置決めする吊下げ部材と、を備え、蓋部材は、管内面に当接した状態でコンクリートの荷重による上下方向の移動を規制するように保持された構成とすることで、簡単な構造で、かつ、蓋部材を管内の所定の位置に容易に位置決めできる鋼管内底蓋構造を提供する技術がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の従来製品は、工場で組み立てて溶接された一体型の製品であるため、全体の容積が大きく、取り扱いが非常に不便であった。
【0006】
また、製品として完成した形での運搬が必要であり、車両での運搬中に、底蓋に溶接された吊下部材の溶接箇所が損傷して吊下部材が外れたり、折れたりして、製品として直ぐに使用できなかったり、再度現場で溶接し直す作業が必要となっていた。
特に、底蓋と吊下部材の連結は、底蓋の上面に対して一面側からのみの溶接(しかも13mm等の吊下部材の径の円周分しか溶接できない。)であるので接合の強度が不足して、連結が解除(溶接箇所が分離)してしまい易いという問題点があった。なお、吊下部材の下端部が底蓋に沿うように、例えば長さ寸法が65mm、折り曲げられて溶接されるケースもあるが、それでも接合の強度が不足して、連結が解除(溶接箇所が分離)してしまい易いという事情は同様で、さらに折り曲げられ部分から折れて分離してしまうという問題点もあった。
そして、別の観点からは、吊下部材の下端は底蓋に溶接されているので、運搬の際の振動等により大きく振られ、それにつられて中間部の長尺の棒状部分が撓み、折れたり曲がったりしてしまうことがあり、それに耐えられる材質の強度を確保するためには、吊下部材の材質が限定され高コストにつながるという問題点もあった。
【0007】
また、
図12に示すように、底蓋に4本の吊下部材を溶接する場合、溶接作業の余裕(端ギリギリの場合はみ出るリスクも有り作業の難度が格段にあがる。)を得るために、吊下部材は底蓋の周縁部近傍の四隅ではなく、相対的に底蓋の中央付近に寄った溶接位置Yの四箇所に溶接されることとなるので、以下の問題が生じる。
第一に、充填されたコンクリートの真ん中に鉄筋コンクリート用の補強鉄筋を通すときに広いスペースが確保できず、吊下部材と補強鉄筋が干渉(ぶつかって)しまい、十分な数の補強鉄筋をスムーズに通すことができない。第二に、吊下部材の長尺の棒状部分は底蓋に対して略垂直ではなく、相当程度に斜めになる位置関係となり(
図11参照)、したがって吊下部材の下端面を底蓋に正確にぴったり接する角度に斜めにカットする(或いはぴったりの角度に折り曲げる)加工は困難であるし、角度が甘く底蓋と隙間が生じていれば溶接箇所はより外れやすくなってしまう。
【0008】
また、一体型の製品であるため、容積が大きく、現場でも適切な広いスペースを確保するのに苦労することが少なくなかった。
【0009】
また、溶接の際には、機械も電気も必要であり、高コストで環境にも優しく無く、溶接作業に熟練している作業員が作業を担当する必要があり、スケジューリングが煩雑で高コストにつながる面もあった。
【0010】
また、運搬する際にも、一体型の製品であるため、容積が大きくチャーター便で輸送する必要があり輸送コストが高く、さらに上記の損傷リスクを考慮して追加の余分な製品も積み荷とした場合には余計にコストが増加するという問題点があった。
【0011】
同等の問題点は、上記の特許文献1に記載の技術でも同様に解決困難であった。
【0012】
なお、本発明は、試行錯誤によりサンプル製品が開発された、公共事業に用いられる製品レベルのものであり、単なるアイデア段階にとどまるものではない。
【0013】
本発明の目的は、現場等で部品を簡易に組み立てて低コストで強度の高い完成形とすることができ、部品の取り扱いが便利で、運搬時の製品の損傷リスクが低く、補強鉄筋を設置する際の作業スペースが広く確保された管内底蓋構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第一の管内底蓋構造は、
管軸方向を上下方向に向けて設置されコンクリートが充填される管の内部に配置されて前記コンクリートを堰き止める底蓋と、
前記底蓋を前記管の内部の所定の高さに位置決めする4本の吊下部材と、
4個の第一の連結部材と、
4個の第二の連結部材と、
4個の緩み止め部材であって前記第一の連結部材の緩み止めとなる前記緩み止め部材と
を組み立てて完成形となる管内底蓋構造であって、
前記底蓋は、周縁部の四隅にそれぞれ穴部を備え、
前記吊下部材は、略棒状で上方が一部曲げられた形状をなし、前記管の上端縁に係止するための曲げ部と、下端部に所定の長さ寸法にネジ切りされたネジ部を備え、
それぞれの前記第一の連結部材はそれぞれの前記ネジ部に嵌合され、それぞれの前記吊下部材が前記底蓋に対して垂直となるように、前記底蓋の下面側に配置されたそれぞれの前記緩み止め部材であってそれぞれの前記ネジ部に嵌合された前記緩み止め部材を介して、それぞれの前記吊下部材が前記底蓋に対して垂直となるように、それぞれの前記ネジ部がそれぞれの前記穴部に挿通されたそれぞれの前記吊下部材を前記底蓋の前記下面側から固定し、
それぞれの前記第二の連結部材はそれぞれの前記ネジ部に嵌合され、それぞれの前記ネジ部がそれぞれの前記穴部に挿通されたそれぞれの前記吊下部材を前記底蓋の上面側から固定し、
それぞれの前記第一の連結部材およびそれぞれの前記第二の連結部材で挟持することにより前記底蓋にそれぞれの前記吊下部材が連結される。
【0015】
このように構成することで、底蓋と、吊下部材と、第一の連結部材と、第二の連結部材と、緩み止め部材とは、バラバラの別体で組み立てて完成形となる(従来のように底蓋と吊下部材の予めの溶接は不要。)ため、各部品は軽量で取り扱いが容易・便利となり、また運搬が容易(路線便で発送可能、輸送コスト廉価、燃料等の輸送コスト低減、環境負荷軽減)となる。さらに、溶接組立した従来の一体型の製品よりも容積は1/4以下で、省スペースで保管も容易となる。
また、必要な任意のタイミング・場所で各部品を組み立て可能で、現場の作業スペースを広く確保することは不要となり、さらに組立作業も容易で、例えば、現場作業員がスパナ一本で組み立て可能となる。
また、連結はネジと連結部材で実現するため、従来の一体型に形成するための溶接用の機械も電気も不要となり、さらに、溶接作業に熟練していない作業員でも組み立て作業を担当することができる。
また、連結はネジと連結部材で実現するため、従来のように溶接しないので底蓋や吊下部材の材質変化が無く、溶接の際の熱で部材が固くなって、根元から折れるリスクが無くなる。
また、従来のように溶接しないものの、底蓋の下面側は緩み止め部材(スプリングワッシャー等)と第一の連結部材(高ナット等)が連動しているため振動があっても緩んで外れにくい構造となっている。
また、底蓋の周縁部に穴部が設けられ、底蓋に垂直に吊下部材を位置させることができるので、吊下部材の下端面を略水平断面で容易確実に加工形成することができる。すなわち、従来は溶接が必要であり、底蓋の中央寄りの位置を溶接個所としていため、吊下部材の下端面を底蓋にぴったり接する角度に斜めにカットする加工が必要であったがその作業は困難であり、ぴったり接する角度でない場合は外れやすいという問題があった。また、従来は一体型とするために事前の溶接が必要であり、溶接箇所の余裕を作るために底蓋の中央寄りの位置を溶接個所としていたが、上記の本発明の構成によれば、連結はネジとナット構造で実現するため、連結箇所は底蓋の周縁ギリギリで実現することができる。そして、このように、連結箇所を底蓋の周縁ギリギリで実現可能なため、底蓋の中央付近は広くスペースが空くので、鉄筋コンクリート用の補強鉄筋等の設置作業の際などに干渉(ぶつかったり)しないのでスムーズな作業に貢献することができる。
また、連結はネジと第一の連結部材・第二の連結部材で底蓋を上下両面からがっちり挟みこむ構成であるので、強度が確保される。従来の溶接では、底蓋の上面の片面のみ(例えば、吊下部材の13mmの径の円周分しか溶接できない。)なので連結の強度が弱く外れるリスクがあった。
また、吊下部材の柄部が長いので、従来の溶接による一体型では、下端面が溶接で固定なので、運搬の際に振動等(大きく振られる)で柄部が撓むため、それに耐えることができなく柄部が折れたり曲がったりするリスクがあり、その対応策として吊下部材の材質の強度が必要となり、材質が限定され高コストとなっていたが、本発明では、各部品はバラバラであり運搬時に撓むことは考慮する必要が無く、そのための材質の強度は不要である。
また、上記のような各種の要因により、従来の溶接による一体型では、運搬時等において、溶接箇所等が分離・破損・折れたりして、現場で使いものにならなくなるリスクがあり、一定数の予備の製品を併せて製造・運搬する必要があり、労力・時間・費用がその分余計に発生するという根本的な問題もあった。
【0016】
本発明の第二の管内底蓋構造は、
管軸方向を上下方向に向けて設置されコンクリートが充填される管の内部に配置されて前記コンクリートを堰き止める底蓋と、
前記底蓋を前記管の内部の所定の高さに位置決めする3本の吊下部材と、
3個の第一の連結部材と、
3個の第二の連結部材と、
3個の緩み止め部材であって前記第一の連結部材の緩み止めとなる前記緩み止め部材と
を組み立てて完成形となる管内底蓋構造であって、
前記底蓋は、周縁部の三隅にそれぞれ穴部を備え、
前記吊下部材は、略棒状で上方が一部曲げられた形状をなし、前記管の上端縁に係止するための曲げ部と、下端部に所定の長さ寸法にネジ切りされたネジ部を備え、
それぞれの前記第一の連結部材はそれぞれの前記ネジ部に嵌合され、それぞれの前記吊下部材が前記底蓋に対して垂直となるように、前記底蓋の下面側に配置されたそれぞれの前記緩み止め部材であってそれぞれの前記ネジ部に嵌合された前記緩み止め部材を介して、それぞれの前記ネジ部がそれぞれの前記穴部に挿通されたそれぞれの前記吊下部材を前記底蓋の前記下面側から固定し、
それぞれの前記第二の連結部材はそれぞれの前記ネジ部に嵌合され、それぞれの前記吊下部材が前記底蓋に対して垂直となるように、それぞれの前記ネジ部がそれぞれの前記穴部に挿通されたそれぞれの前記吊下部材を前記底蓋の上面側から固定し、
それぞれの前記第一の連結部材およびそれぞれの前記第二の連結部材で挟持することにより前記底蓋にそれぞれの前記吊下部材が連結される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、現場等で部品を簡易に組み立てて低コストで強度の高い完成形とすることができ、部品の取り扱いが便利で、運搬時の製品の損傷リスクが低く、補強鉄筋を設置する際の作業スペースが広く確保された管内底蓋構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第一の実施の形態に係る管内底蓋構造の全体構成を説明する図である。
【
図2】本発明の第一の実施の形態に係る管内底蓋構造の底蓋の構成を示す図である。
【
図3】本発明の第一の実施の形態に係る管内底蓋構造の吊下部材の構成を示す図である。
【
図4】本発明の第一の実施の形態に係る管内底蓋構造の上面視からの構成を示す図である。
【
図5】本発明の第二の実施の形態に係る管内底蓋構造の全体構成を説明する図である。
【
図6】本発明の第二の実施の形態に係る管内底蓋構造の斜視図である。
【
図7】本発明の第二の実施の形態に係る管内底蓋構造の分解斜視図である。
【
図8】本発明の第二の実施の形態に係る管内底蓋構造の底蓋の構成を示す図である。
【
図9】本発明の第二の実施の形態に係る管内底蓋構造の上面視からの構成を示す図である。
【
図10】本発明の第二の実施の形態に係る管内底蓋構造の全体構成を説明する斜視図である。
【
図11】従来の管内底蓋構造の全体構成を説明する図である。
【
図12】従来の管内底蓋構造の底蓋の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1に、本発明の第一の実施の形態に係る管内底蓋構造の全体構成を示す。
【0020】
管内底蓋構造は、主に、管軸方向を上下方向に向けて設置されコンクリートが充填される管(鋼管など)Kの内部に配置されてコンクリート20などを堰き止める底蓋1(鋼板など)と、底蓋1を管Kの内部の所定の高さに位置決めする4本の吊下部材2(
図1中では2本が示されている。異形棒鋼など。)とから構成されている。
【0021】
また、底蓋1と、4本の吊下部材2とは、それぞれ、4個の第一の連結部材(高ナットなど)3と、4個の第二の連結部材(六角ナットなど)4と、4個の緩み止め部材(スプリングワッシャーなど)5とにより連結される。なお、緩み止め部材5は、底蓋1と第一の連結部材3との間に設けられる。
【0022】
本実施形態の管内底蓋構造は、上記の底蓋1、吊下部材2、第一の連結部材3、第二の連結部材4および緩み止め部材5を組み立てて完成形となるものである。
【0023】
図2を参照すると、底蓋1は、円形(例えば、径550mmである。)をなし、その周縁部の四隅(略等間隔に四箇所)にそれぞれ穴部11(例えば、径12.5mmである。)が穿設されている。
【0024】
図3を参照すると、吊下部材2は、略逆J字型(例えば、全長780mmである。)をなし、管Kの上端縁に係止するための略U字状部21と、所定の長さ寸法(例えば、50mmである。)にネジ切りされたネジ部22をその下端部に備える。なお、管Kの上端縁に係止することができるように湾曲していれば形状は限定されなく、略U字状部21は例えば、曲げ部としての略L字状部であってもよい。
【0025】
次に、本実施の形態に係る管内底蓋構造の組み立て手順および使用方法の一例を説明する。
まず、工場等で、底蓋1、吊下部材2、第一の連結部材3、第二の連結部材4および緩み止め部材5の各部品を用意する。
【0026】
次に、典型的には、橋の橋脚の工事現場等へ、車両等により上記の各部品を運搬する。
そして、工事現場等において、各部品を組み立てる。
【0027】
具体的には、4本それぞれの吊下部材2のネジ部22に、それぞれの第二の連結部材(六角ナットなど)4がネジ切りされた根元まで回し込まれて嵌合され、そのうえで、それぞれの吊下部材2のネジ部22を底蓋1のそれぞれの穴部11に底蓋1の上面側から挿通(差し込む)する。そして、底蓋1のそれぞれの穴部11から突出する吊下部材2のネジ部22に対して、緩み止め部材(スプリングワッシャーなど)5を底蓋1の下面側から嵌め込み、さらに第一の連結部材(高ナットなど)3を底蓋1の下面側から緩み止め部材(スプリングワッシャーなど)5が平らになるまで回転させて締めて嵌合する(
図1も参照)。
【0028】
その結果、それぞれの吊下部材2が底蓋1に対して垂直となるように、それぞれの第一の連結部材3が緩み止め部材5を間に介して底蓋1の下面側から固定し、また、それぞれの第二の連結部材4が底蓋1の上面側から固定することとなる。したがって、それぞれの第一の連結部材3およびそれぞれの第二の連結部材4で挟持することにより底蓋1にそれぞれの吊下部材2が連結される管内底蓋構造が実現される。
【0029】
さらに、工事現場等においては、完成された管内底蓋構造を管Kの内部に落とし込む。なお、4本の吊下部材2は、それぞれ略U字状部21により、管Kの上端縁に係止し、管内底蓋構造の全体を、管Kの内部の所定の高さに位置決めすることとなる(
図1および
図4も参照)。
【0030】
その状態で、管Kの内部に、最初に径が大きめの切込砕石(砂利など)10を投入し、管Kの内径と底蓋1の径の差により生じている底蓋1の周囲の隙間を埋めてから、コンクリート20を注入して、固化させる。その際、管Kの上端縁に係止する、4本の吊下部材2のそれぞれの略U字状部21は、底蓋1の上に堆積するコンクリート20(および切込砕石10)の重量を支えるため、それに耐えられる強度が必要となる。
なお、複数の補強鉄筋Hを管Kの内周に沿った位置等に配置することであってもよい(
図4も参照)。
【0031】
次に、以下、本発明の第二の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図5、
図6および
図7に、本実施の形態に係る管内底蓋構造の全体構成を示す。なお、上記の第一の実施の形態と基本的な構成は共通するので重複する説明は適宜省略する。
【0032】
管内底蓋構造は、主に、底蓋1´と、4本の吊下部材2´(
図5中では2本が示されている。)とから構成され、それぞれ、4個の第一の連結部材(高ナットなど)3と、4個の第二の連結部材(六角ナットなど)4と、底蓋1´と第一の連結部材3との間に設けられる4個の緩み止め部材(スプリングワッシャーなど)5とにより連結される。
【0033】
本実施形態の管内底蓋構造も、上記の底蓋1´、吊下部材2´、第一の連結部材3、第二の連結部材4および緩み止め部材5を組み立てて完成形となるものである。
【0034】
図8を参照すると、底蓋1´は、円形(例えば、径530mmである。)をなし、その周縁部の四隅(略等間隔に四箇所)にそれぞれ穴部11´(例えば、径12.5mmである。)が穿設されている。さらに、底蓋1´には、切欠部12が略等間隔に三箇所設けられている。この切欠部12は後述するずれ止めリングRのずれ止めストッパーSとぶつからないようかわすために設けられている。
【0035】
次に、本実施の形態に係る管内底蓋構造の組み立て手順および使用方法の一例を説明する。
まず、工場等で、底蓋1´、吊下部材2´、第一の連結部材3、第二の連結部材4および緩み止め部材5の各部品を用意する。
【0036】
次に、典型的には、橋の橋脚の工事現場等へ、車両等により上記の各部品を運搬する。
そして、工事現場等において、各部品を組み立てる。
【0037】
具体的には、4本それぞれの吊下部材2´のネジ部22´に、それぞれの第二の連結部材(六角ナットなど)4がネジ切りされた根元まで回し込まれて嵌合され、そのうえで、それぞれの吊下部材2´のネジ部22´を底蓋1´のそれぞれの穴部11´に底蓋1の上面側から挿通(差し込む)する。そして、底蓋1´のそれぞれの穴部11´から突出する吊下部材2´のネジ部22´に対して、緩み止め部材(スプリングワッシャーなど)5を底蓋1の下面側から嵌め込み、さらに第一の連結部材(高ナットなど)3を底蓋1の下面側から緩み止め部材(スプリングワッシャーなど)5が平らになるまで回転させて締めて嵌合する(
図5も参照)。
【0038】
その結果、それぞれの吊下部材2´が底蓋1´に対して垂直となるように、それぞれの第一の連結部材3が緩み止め部材5を間に介して底蓋1´の下面側から固定し、また、それぞれの第二の連結部材4が底蓋1´の上面側から固定することとなる。したがって、それぞれの第一の連結部材3およびそれぞれの第二の連結部材4で挟持することにより底蓋1にそれぞれの吊下部材2が連結される管内底蓋構造が実現される。
【0039】
さらに、工事現場等においては、完成された管内底蓋構造を管Kの内部に落とし込む。なお、4本の吊下部材2´は、それぞれ略U字状部21´により、管Kの上端縁に係止し、管内底蓋構造の全体を、管Kの内部の所定の高さに位置決めすることとなる(
図5および
図9も参照)。
この際に、管Kの内部には、ずれ止めリングR(例えば、内側に9mm突出。)のずれ止めストッパーS(例えば、内側に50mm突出。)が三箇所に設けられているが、底蓋1´には、切欠部12が略等間隔に三箇所設けられているため、当該切欠部12をずれ止めストッパーSの凸部に対応する位置関係にして、落とし込むことで、ずれ止めストッパーSとぶつからないようかわすことが可能となっている。なお、ずれ止めリングRおよびずれ止めストッパーSのセットは上下2段に設けられることであってもよい。なお、ずれ止めリングRの位置固定完了後にずれ止めストッパーSは除去される場合もある。
【0040】
その状態で、管Kの内部に、最初に径が大きめの切込砕石(砂利など)10を投入し、管Kの内径と底蓋1の径の差により生じている底蓋1の周囲の隙間を埋めてから、コンクリート20を注入して、固化させる。その際、管Kの上端縁に係止する、4本の吊下部材2´のそれぞれの略U字状部21´は、底蓋1の上に堆積するコンクリート20(および切込砕石10)の重量を支えるため、それに耐えられる強度が必要となる。
なお、複数の補強鉄筋Hを管Kの内周に沿った位置等に配置することであってもよい(
図9も参照)。
【0041】
コンクリート20が固化した後は、コンクリート20は、ずれ止めリングRに固着しているため、その高さ位置が変化する(重力で下方に落下する)ことは無い。従って、4本の吊下部材2´のそれぞれの略U字状部21´は不要となり、固化したコンクリート20から突出している部分を切断除去することであってもよい。
【0042】
上記の各実施の形態によれば、現場等で部品を簡易に組み立てて低コストで強度の高い完成形とすることができ、部品の取り扱いが便利で、運搬時の製品の損傷リスクが低く、補強鉄筋を設置する際の作業スペースが広く確保された管内底蓋構造を実現することができる。
【0043】
また、底蓋と、吊下部材と、第一の連結部材と、第二の連結部材と、緩み止め部材とは、バラバラの別体で組み立てて完成形となる(従来のように底蓋と吊下部材の予めの溶接は不要。)ため、各部品は軽量で取り扱いが容易・便利となり、また運搬が容易(路線便で発送可能、輸送コスト廉価、燃料等の輸送コスト低減、環境負荷軽減)となる。さらに、溶接組立した従来の一体型の製品よりも容積は1/4以下で、省スペースで保管も容易となる。
また、必要な任意のタイミング・場所で各部品を組み立て可能で、現場の作業スペースを広く確保することは不要となり、さらに組立作業も容易で、例えば、現場作業員がスパナ一本で組み立て可能となる。
また、連結はネジと連結部材で実現するため、従来の一体型に形成するための溶接用の機械も電気も不要となり、さらに、溶接作業に熟練していない作業員でも組み立て作業を担当することができる。
また、連結はネジと連結部材で実現するため、従来のように溶接しないので底蓋や吊下部材の材質変化が無く、溶接の際の熱で部材が固くなって、根元から折れるリスクが無くなる。
また、従来のように溶接しないものの、底蓋の下面側は緩み止め部材(スプリングワッシャー等)と第一の連結部材(高ナット等)が連動しているため振動があっても緩んで外れにくい構造となっている。
また、底蓋の周縁部に穴部が設けられ、底蓋に垂直に吊下部材を位置させることができるので、吊下部材の下端面を略水平断面で容易確実に加工形成することができる。すなわち、従来は溶接が必要であり、底蓋の中央寄りの位置を溶接個所としていため、吊下部材の下端面を底蓋にぴったり接する角度に斜めにカットする加工が必要であったがその作業は困難であり、ぴったり接する角度でない場合は外れやすいという問題があった。また、従来は一体型とするために事前の溶接が必要であり、溶接箇所の余裕を作るために底蓋の中央寄りの位置を溶接個所としていたが、上記の本発明の構成によれば、連結はネジとナット構造で実現するため、連結箇所は底蓋の周縁ギリギリで実現することができる。そして、このように、連結箇所を底蓋の周縁ギリギリで実現可能なため、底蓋の中央付近は広くスペースが空くので、鉄筋コンクリート用の補強鉄筋等の設置作業の際などに干渉(ぶつかったり)しないのでスムーズな作業に貢献することができる。
また、連結はネジと第一の連結部材・第二の連結部材で底蓋を上下両面からがっちり挟みこむ構成であるので、強度が確保される。従来の溶接では、底蓋の上面の片面のみ(例えば、吊下部材の13mmの径の円周分しか溶接できない。)なので連結の強度が弱く外れるリスクがあった。
また、吊下部材の柄部が長いので、従来の溶接による一体型では、下端面が溶接で固定なので、運搬の際に振動等(大きく振られる)で柄部が撓むため、それに耐えることができなく柄部が折れたり曲がったりするリスクがあり、その対応策として吊下部材の材質の強度が必要となり、材質が限定され高コストとなっていたが、本発明では、各部品はバラバラであり運搬時に撓むことは考慮する必要が無く、そのための材質の強度は不要である。
また、上記のような各種の要因により、従来の溶接による一体型では、運搬時等において、溶接箇所等が分離・破損・折れたりして、現場で使いものにならなくなるリスクがあり、一定数の予備の製品を併せて製造・運搬する必要があり、労力・時間・費用がその分余計に発生するという根本的な問題もあったが、そのような問題も生じないという顕著な効果を奏する。
【0044】
[変形例]
上記の各実施の形態では、吊下部材2や吊下部材2´の本数は4本を前提として、底蓋1の穴部11や底蓋1´の穴部11´、第一の連結部材3、第二の連結部材4および緩み止め部材5の各部品の数を対応する4個としているが、その他の本数として吊下部材2や吊下部材2´の本数を3本として、底蓋1の穴部11や底蓋1´の穴部11´、第一の連結部材3、第二の連結部材4および緩み止め部材5の各部品の数を対応する3個とすることでもよい。
なお、同様に吊下部材2の本数を5本以上とすることも可能であるが、補強鉄筋Hとの干渉の問題が生じてくるので、それとの兼ね合いで、吊下部材2や吊下部材2´の本数は3本又は4本が好適ともいえる。
【0045】
最後に、上述する各実施の形態は、本発明の好適な実施の形態であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において形状・大きさ・本数・比率等の種々の変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1、1´ 底蓋
2、2´ 吊下部材
3 第一の連結部材
4 第二の連結部材
5 緩み止め部材